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水性塗料組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法
説明

水性塗料組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法

【課題】防食性、耐水性等に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】(I)(a)変性澱粉及び(b)重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下の分散樹脂粒子を含む変性澱粉含有樹脂水分散体、(II)リン酸系防錆顔料、及び(III)窒素含有化合物を含有し、(I)成分の固形分100質量部に対し、(II)成分の含有量が5〜60質量部、(III)成分の含有量が1〜20質量部であることを特徴とする水性塗料組成物、及びこの水性塗料組成物を金属基材表面又は金属基材上の旧塗装面に塗装することを特徴とする塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食性、耐水性等に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築内外装、橋梁、船舶、プラント施設、鉄塔などの構築物の金属面には、一般に、エポキシ樹脂系やアルキド樹脂系の錆止め塗料を塗装後、アルキド樹脂系塗料、アクリルアルキド樹脂系塗料、シリコンアルキド樹脂系塗料などの上塗り塗料が塗装されている(例えば、特許文献1参照)。一方、環境保全や作業環境の改善の面から、様々な塗料分野において、有機溶剤系塗料から水系塗料へと移行しつつあり、上記用途に適用する錆止め塗料においても水性化の検討が種々行なわれている。
【0003】
上記塗装に使用されてきた水性錆止め塗料は、高い防錆性を確保するために防錆顔料を配合する必要があり、従来から防錆顔料としてはクロム酸系や鉛系の防錆顔料が使用されてきた。しかしながら近年、環境保全や安全性の面から使用が規制されており、これに代わる無公害型の防錆顔料としてリン酸系顔料、亜リン酸系顔料、モリブデン酸系顔料、ホウ酸系顔料、シアナミド系顔料などの各種の非クロム系防錆顔料が提案され、それらを用いた水性塗料も種々提案されている(例えば特許文献2〜特許文献5など)。
【0004】
上記の水性化に加え、近年、廃棄後の土壌汚染等の観点から、生分解作用を有する材料を用いたコーティング剤が種々提案されている。例えば特許文献6では、疎水性である澱粉エステルを用いて安定な水分散体とし、仕上り性や耐水性等に優れた塗膜が形成できる水性塗料組成物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−293433号公報
【特許文献2】特開2003−286437号公報
【特許文献3】特開2001−19904号公報
【特許文献4】特開2002−53769号公報
【特許文献5】特開2005−279318号公報
【特許文献6】特開2006−52338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような非クロム系防錆顔料は、その特性として外部から進入する水分に溶解し、金属イオンやキレート力を持った様々なイオンを溶出することで防錆効果を発揮するものが多く、このような非クロム系防錆顔料を水性塗料中に配合すると溶出したイオン成分が水性塗料の安定性を阻害し増粘やゲル化を引き起こす場合があった。
【0007】
本発明の目的は、生分解材料の特性を生かしつつ、塗料の貯蔵安定性に優れ、しかも防食性、耐水性等に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(I)(a)変性澱粉及び(b)重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下の分散樹脂粒子を含む変性澱粉含有樹脂水分散体、(II)リン酸系防錆顔料、及び(III)一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、Rは炭素数4〜22の1価の有機基を示す。Rは、炭素数4〜22の炭化水素基、炭素数4〜22のアシル基又は
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を示し、nは0〜100の整数を示す。nが2以上のとき、複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。)を示す。Rは炭素数2〜3のアルキレン基を示す。mは、2〜100の整数を示す。複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。]で表される窒素含有化合物を含有し、(I)成分の固形分100質量部に対し、(II)成分の含有量が5〜60質量部、(III)成分の含有量が1〜20質量部であることを特徴とする水性塗料組成物、及びこの水性塗料組成物を金属基材表面又は金属基材上の旧塗装面に塗装することを特徴とする塗装方法、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生分解材料の特性を生かしつつ、上記のような非クロム系防錆顔料を特定の窒素含有化合物と組合せて配合することによって、塗料の貯蔵安定性を損なうことなく、防食性、耐水性等に優れた塗膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の水性塗料組成物は、(a)変性澱粉及び(b)重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下、特に50〜500nmの範囲内の分散樹脂粒子を含む変性澱粉含有樹脂水分散体(I)を含有する。分散樹脂粒子の平均粒子径が1000nmを超えると、水分散体の貯蔵安定性、塗膜の仕上がり性などが劣り、実用性が低下するので好ましくない。
【0015】
なお、本明細書において、平均粒子径は、「SALD−3100」(商品名、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置)を用い、試料を脱イオン水にて希釈し、約20℃の温度で測定したときの値である。
【0016】
上記変性澱粉(a)には、澱粉または澱粉分解物に、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基などを、エステル結合及び/又はエーテル結合を介して結合させてなる変性澱粉が包含される。
【0017】
ここで、原料の澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、米澱粉などの各種天然澱粉の1種又は2種以上をブレンドしたものが用いられ、また、澱粉分解物としては、該澱粉に、酵素、酸または酸化剤で低分子量化処理を施したものが挙げられる。この中で、質量平均分子量が5,000〜2,000,000、特に10,000〜1,000,000の範囲内にある澱粉または澱粉分解物が造膜性などの点から好ましい。
【0018】
変性澱粉(a)の好ましい変性方法としてはエステル化変性が挙げられ、好ましい変性基としては炭素数2〜18のアシル基が挙げられる。変性は炭素数2〜18の有機酸を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0019】
変性澱粉(a)の変性程度は、置換度で0.5〜2.8の範囲内が好ましく、特に1.0〜2.5の範囲内が好ましい。置換度が0.5未満では、後述の重合性不飽和モノマー(m1)との溶解性が不十分となり、形成塗膜の仕上がり性等が不十分になることがある。他方、置換度が2.8を超えると、生分解性が遅くなることがある。
【0020】
また変性澱粉(a)は、澱粉の分解温度(約350℃)以下にガラス転移点を有し、熱可塑性を有し且つ生分解性も有するように変性の程度を調節することが望ましく、したがって、変性に使用する置換基の炭素数が多い場合には、低変性レベル、例えば、置換基が炭素数18のステアリル基である場合には、エステル置換度が0.5〜1.8の範囲内となるようにすることが好ましく、反対に、置換基の炭素数が少ない場合には、高変性レベル、例えば、置換基が炭素数2のアセチル基である場合には、エステル置換度が1.5〜2.8の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0021】
なお、本明細書において、置換度は、澱粉を構成する単糖単位1個あたりの変性剤により置換された水酸基の平均個数であり、例えば、置換度3は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基が全て変性剤により置換されたことを意味し、置換度1は澱粉を構成する単糖単位1個中に存在する3個の水酸基のうちの1個だけが変性剤により置換されていることを意味する。
【0022】
変性澱粉(a)の例としては、50%以上のアミロース含量をもつ無水の澱粉を非プロトン性溶媒中でエステル化試薬と混合して澱粉とエステル化試薬の間で反応させることにより得られる疎水性の生物分解性澱粉エステル生成物(特表平8−502552号公報参照)、ビニルエステルをエステル化試薬として用いて変性された澱粉エステルであって、該ビニルエステルとしてエステル基の炭素数が2〜18のものを用い、非水有機溶媒中でエステル化触媒を使用して澱粉と反応させて得られる澱粉エステル(特開平8−188601号公報参照)、エステル化と共に、ポリビニルエステルのグラフト化がなされている澱粉(特開平8−239402号公報及び特開平8−301994号公報参照)、ポリエステルグラフト鎖を澱粉分子上に有し、該グラフト鎖末端及び澱粉直結の水酸基の一部又は全てがエステル基により封鎖されているポリエステルグラフト重合澱粉と、該ポリエステルグラフト鎖と同一構成成分を有し、末端水酸基の一部または全てがエステル基により封鎖されている独立ポリエステルとが均一混合されてなるポリエステルグラフト重合澱粉アロイ(特開平9−31308号公報参照)等を挙げることができる。
【0023】
さらに好ましい例としては、同一澱粉分子の反応性水酸基の水素を、炭素数2〜4の短鎖アシル基及び炭素数6〜18の長鎖アシル基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉エステル(特開2000−159801号公報参照)、同一澱粉分子の反応性水酸基を、炭素数2〜4の短鎖炭化水素含有基及び炭素数6〜24の長鎖炭化水素含有基で置換した短鎖−長鎖混合澱粉置換誘導体(特開2000−159802号公報参照)等が挙げられる。これらの変性澱粉は、澱粉を母体としているため、生分解性であり、熱可塑性を有し、成形性がよい等の特性を有する。
【0024】
分散樹脂粒子を構成する(共)重合体(b)は、重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合により得ることができる。
【0025】
重合性不飽和モノマー(m1)としては、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1個の重合性不飽和基を含有する化合物を挙げることができ、重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。かくして重合性不飽和モノマー(m−1)としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基含有重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;ポリジメチルシロキサンマクロモノマー等のシロキサンマクロモノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ化アルキル基含有重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、さらにグリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アリルアルコ−ル;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸塩基含有重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−ブチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、グリセロ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレ−ト、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;脂肪酸変性重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらは所望の性能に応じてそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明において、重合性不飽和モノマー(m1)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含んでなることが好適である。
【0027】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。該モノマーの使用により、得られる水分散体の貯蔵安定性などを向上させることができる。
【0028】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.1〜5質量%、特に0.3〜4.5質量%、さらに特に0.5〜4質量%の範囲内が好適である。
【0029】
また、重合性不飽和モノマー(m1)は、少なくともその一部として、炭素数が4以下のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含んでなることが好適である。炭素数が4以下のアルキル基を含有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等のC−Cアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。該モノマーは変性澱粉(a)との相溶性が良好であることから、重合前の段階における分散体の安定性及び重合後の水分散体の貯蔵安定性などに効果がある。
【0030】
炭素数が4以下のアルキル基を含有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、10〜95質量%、特に15〜85質量%、さらに特に20〜75質量%の範囲内が好適である。
【0031】
また、重合性不飽和モノマー(m1)は、少なくともその一部として、脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを含んでなることが好適である。
【0032】
脂肪酸変性重合性不飽和モノマーとしては、脂肪酸由来の炭化水素鎖の末端に重合性不飽和基を有する重合性不飽和モノマーが包含される。脂肪酸変性重合性不飽和モノマーとしては、例えば、脂肪酸をエポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと反応させることにより得られるものを挙げることができる。
【0033】
脂肪酸としては、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸及び不乾性油脂肪酸が挙げられ、乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられ、また、不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、これらの脂肪酸は、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等と併用することもできる。
【0034】
脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを製造するために上記脂肪酸と反応させうるモノマーとしてはエポキシ基を含有する重合性不飽和モノマーが好適であり、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0035】
重合性不飽和モノマー(m1)として、少なくともその一部に、脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを含んでなるものを使用することにより、重合段階における分散体の安定性を向上させることができ、形成塗膜に肉もち感及び酸化硬化性を付与することが可能となる。脂肪酸変性重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.5〜40質量%、特に1〜30質量%の範囲内が好適である。
【0036】
本発明において、形成塗膜の造膜性と、耐水性、耐久性等の塗膜物性の点から、上記重合性不飽和モノマー(m1)は、使用される全重合性不飽和モノマーからなる(共)重合体のガラス転移温度が−20〜50℃、好ましくは−10〜35℃の範囲内となるように選択することが望ましい。
【0037】
本発明において、ガラス転移温度(絶対温度)は下式から算出される値である。
【0038】
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中のW、W・・・Wは各モノマーの質量%(=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100)であり;T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度はPolymer Hand Book (Second Edition,J.Brandrup・E.H.Immergut 編)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、該モノマーから重量平均分子量が5万程度のホモポリマーを合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定した値を使用する。
【0039】
また形成塗膜の造膜性や、耐水性、耐久性等の塗膜物性などの観点から、使用される全重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体は、一般に250,000以下、特に5,000〜240,000の範囲内の質量平均分子量を有することが望ましい。質量平均分子量が250,000を超えると、水分散体における分散樹脂の平均粒子径が大きくなり、仕上がり性などの塗膜物性が劣る場合がある。本明細書において、質量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した質量平均分子量をポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算した値である。該ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製)を挙げることができる。
【0040】
上記水分散体において、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体(b)との構成比は、(a)/(b)の質量比で、1/99〜85/15、特に5/95〜70/30、さらに特に5/95〜60/40の範囲内が望ましい。
【0041】
上記変性澱粉含有樹脂水分散体における分散樹脂粒子は、上記変性澱粉(a)、重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体(b)に加えて、さらに必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、金属ドライヤーなどの添加剤を構成成分として含んでいても良い。
【0042】
上記のうち、金属ドライヤーとしては、分散樹脂が酸化硬化性を有する基を有する場合などにおいて、形成される塗膜の酸化硬化を促進させるために配合されるものであり、例えば、アルミニウム、カルシウム、セリウム、コバルト、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と酸との塩が挙げられ、該酸としては、例えば、カプリン酸、カプリル酸、イソデカン酸、リノレン酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、オクテン酸、オレイン酸、パルミチン酸、樹脂酸、リシノール酸、大豆油脂肪酸、ステアリン酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。上記金属ドライヤーの使用割合は、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.1〜10質量%、特に0.5〜7質量%の範囲内が好適である。
【0043】
上記変性澱粉含有樹脂水分散体における分散樹脂粒子は、粒子安定性などの観点から、界面活性剤を構成成分として含有していてもよい。該界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好適であり、該アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、レシチン、カゼイン等が挙げられる。
【0044】
また、アニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を1分子中に有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性界面活性剤や、該アニオン性基と重合性不飽和基とを1分子中に有する反応性アニオン性界面活性剤を使用することもできる。該反応性アニオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基を有するものであってもよい。これらは所望の性能に応じてそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。界面活性剤の使用量は、重合時の安定性等の観点から、使用される変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.1〜20質量%、特に0.2〜15質量%、さらに特に0.3〜12質量%の範囲内とすることができる。
【0045】
さらに上記変性澱粉含有樹脂水分散体において、以上に述べた分散樹脂粒子は、該樹脂粒子をコアとし且つ該コア上に1つ以上の重合体外殻をシェルとして設けてなるコア/シェル構造の形態であってもよい。上記変性澱粉(a)を含む分散樹脂粒子の外層をさらに重合体層で被覆することにより、例えば、各層の樹脂組成、設定Tg、設定分子量、(共)重合する官能基の種類などを適宜設定することができるため、目的とする物性を発現するための樹脂設計の自由度を拡大することができる。
【0046】
上記変性澱粉含有樹脂水分散体(I)は、例えば、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)を含んでなる混合物(A)を、水性媒体中に、1000nm以下となるように微分散させ、得られるモノマー乳化物を重合させることにより製造することができる。
【0047】
上記方法によれば、重合段階においても分散体が安定であり、重合後の分散樹脂粒子の平均粒子径を上記範囲内に容易にコントロールすることができる。しかも、上記の方法によれば、変性澱粉(a)が重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体全体に均一に分布した分散樹脂粒子を得ることができる。また上記混合物(A)は、さらに、前述の添加剤を含有することもできる。これにより、添加剤を分散樹脂粒子に含有させることができる。
【0048】
また、変性澱粉含有樹脂の分子量を調整する目的で、上記混合物(A)の重合は連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。該連鎖移動剤としては、メルカプト基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、メルカプトエタノ−ル、チオグリセロ−ル、メルカプト酢酸(チオグリコ−ル酸)、メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。該連鎖移動剤の使用量としては、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.1〜10質量%の範囲内が好適である。
【0049】
上記の製造方法において、混合物(A)を分散乳化させるための水性媒体としては、水、または水を主体としてこれに水溶性有機溶媒などの有機溶媒を溶解してなる水一有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコールと水との混合系を使用することができる。
【0050】
上記混合物(A)は、高エネルギーせん断能力を有する分散機により微分散させることが望ましい。該分散機としては、例えば、高圧乳化装置、超音波乳化機、高圧コロイドミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌機等が挙げられる。これらの分散機において、混合物(A)に対して10〜1000MPa、特に50〜300MPaの高せん断力を負荷するのが好適である。また、該機械にて乳化を行う前に、混合物(A)をあらかじめディスパー等で予備乳化してもよい。なお、使用する分散装置はこれらに限定されるわけではなく、乳化分散により得られるモノマー乳化物中の乳化粒子の平均粒子径を1000nm以下にすることができるものであればどのような分散機でも使用することができる。
【0051】
混合物(A)を上記の手法により水性媒体中に微分散させることによって得られるモノマー乳化物中の乳化粒子の平均粒子径は、厳密に限定されるものではないが、形成塗膜の透明性、耐水性、製造安定性等の点から、1000nm以下、好ましくは50〜700nm、さらに好ましくは50〜500nmの範囲内が適している。
【0052】
上記モノマー乳化物の重合方法としては、例えば、微分散後のモノマー乳化物を撹拌機を備えた反応器に全量仕込み、重合開始剤を添加し、攪拌しながら加熱する方法等が挙げられる。
【0053】
上記重合開始剤としては、油溶性、水溶性のいずれのタイプのものであってもよく、油溶性の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられ、水溶性の開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4´−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。また、上記重合開始剤は、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤と併用し、レドックス重合系としてもよい。これにより、重合速度を促進したり、低温における重合をも行うことが容易になる。
【0054】
該重合開始剤の使用量は、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)の合計量を基準にして、0.1〜5質量%の範囲内が好ましい。該重合開始剤の添加方法は、その種類や量に応じて適宜選択することができる。例えば、混合物(A)及び/又は水性媒体に含ませてもよく、あるいは重合の際に一括でまたは滴下で添加してもよい。
【0055】
上記変性澱粉含有樹脂水分散体の粒子の機械安定性を向上させるために、該変性澱粉含有樹脂水分散体が酸性基を有する場合には、これを中和剤により中和をすることが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。中和は、中和後の変性澱粉含有樹脂水分散体のpHが5.0〜9.5程度となるよう行うことが望ましい。
【0056】
また、分散樹脂粒子をコア/シェル構造の形態で含んでなる変性澱粉含有樹脂水分散体は、例えば、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)を含んでなる混合物(A)を、水性媒体中に、平均粒子径が1000nm以下となるように微分散させ、得られる乳化物を重合させることにより得られる分散液(B)中に、重合性不飽和モノマー(m2)を含むモノマー成分(C)を添加してさらに重合することにより製造することができる。
【0057】
上記モノマー成分(C)は分散液(B)にそのまま滴下することもできるが、一般には、あらかじめモノマー成分(C)を水性媒体中に分散し、得られるモノマー乳化物を分散液(B)に滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物中の乳化粒子の平均粒子径は特に制限されるものではない。
【0058】
該方法により、上記変性澱粉(a)を含む分散樹脂粒子の外層がさらに重合性不飽和モノマー(m2)の(共)重合体層で被覆されたコア/シェル構造の形態の樹脂粒子を含んでなる変性澱粉含有樹脂水分散体(I)を製造することができる。
【0059】
また、上記水性樹脂組成物は、変性澱粉(a)及び/又は(共)重合体(b)中に存在する官能基と反応可能な官能基を有する化合物を含有することもできる。変性澱粉(a)及び/又は(共)重合体(b)中に存在する官能基と反応可能な官能基を有する化合物を含有させることにより、形成塗膜の耐水性、耐久性などをより向上させることができる。該化合物は、該官能基を1分子中に2個以上含有することが望ましい。そのような官能基の組み合わせとしては、例えば、エポキシ基−アミノ基、エポキシ基−酸基、カルボニル基−ヒドラジド基、水酸基−イソシアネート基、カルボキシル基−金属イオン、カルボキシル基−カルボジイミド基、カルボキシル基−オキサゾリン基等が挙げられる。
【0060】
本発明では上記変性澱粉含有樹脂水分散体(I)に加え、必要に応じて、水溶性またはエマルション型のアクリル樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂などの樹脂;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子;シェラック、ロジン等の天然樹脂;「日食セルエース」(商品名、日本食品化工製、トウモロコシ種皮により得られるキシロース及びアラビノースを構成成分とする多糖類)等の改質樹脂を適宣選択し組み合わせて含有せしめることができる。
【0061】
上記のうち、特に形成塗膜の防食性の点から、水性エポキシ樹脂(IV)が好適に使用できる。
【0062】
水性エポキシ樹脂(IV)は、例えば、エポキシ樹脂(d)を必要に応じて乳化剤などを用いて水分散化することによって得られる。
【0063】
エポキシ樹脂(d)としては、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個含有する重量平均分子量が200以上の樹脂であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/F型エポキシ樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などのポリフェノール類と、エピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか又はこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとを共重合させてなるエポキシ基含有アクリル系共重合体;エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂;エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0064】
上記エポキシ樹脂は、目的に応じて、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。特に好適なエポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0065】
上記エポキシ樹脂(d)は、一般に200〜6000、特に300〜2000さらに特に350〜2000の範囲内の質量平均分子量及び一般に100〜3000、特に150〜1000、さらに特に175〜1000の範囲内のエポキシ当量を有することが好ましい。
【0066】
上記水性エポキシ樹脂(IV)は、エポキシ樹脂(d)に前述の脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂(e)を水性化することにより得られるものであっても良い。
【0067】
上記脂肪酸変性エポキシ樹脂(e)において、脂肪酸とエポキシ樹脂(d)の使用割合は、脂肪酸のカルボキシル基とエポキシ樹脂(d)のエポキシ基との当量比が、0.75:1〜1.25:1好ましくは0.8:1〜1.2:1の範囲内であることが好適である。
【0068】
上記脂肪酸変性エポキシ樹脂(e)の水性化手法としては、特に限定されるものではないが、上記脂肪酸変性エポキシ樹脂に乳化剤を混合し、水性媒体中に分散する方法、上記脂肪酸変性エポキシ樹脂がカルボキシル基を有する場合には、該カルボキシル基を塩基性物質にて中和した後、水性媒体中に分散する方法、等が挙げられる。
【0069】
上記乳化剤としては、上記変性澱粉含有樹脂水分散体(I)の説明で列記した中から適宜選択できる。配合量としては、樹脂固形分に対して0.1〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲内が好適である。
【0070】
また、上記水性エポキシ樹脂(IV)は、脂肪酸及びエポキシ樹脂(d)を反応させてなる脂肪酸変性エポキシ樹脂に、重合性不飽和モノマー(f)を反応させてなる樹脂を水性化することにより得られるものであってもよい。
【0071】
上記重合性不飽和モノマー(f)と反応させる前の脂肪酸変性エポキシ樹脂において、上記脂肪酸とエポキシ樹脂(d)の使用割合は、脂肪酸のカルボキシル基とエポキシ樹脂(d)のエポキシ基との当量比が、0.5:1〜1.3:1好ましくは0.5:1〜1.2:1の範囲内であることが好適である。
【0072】
上記重合性不飽和モノマー(f)としては、上記変性澱粉含有樹脂水分散体(I)における各重合性不飽和モノマーの説明で例示した中から適宜選択して使用できる。
【0073】
脂肪酸変性エポキシ樹脂と重合性不飽和モノマー(f)との反応は、例えば、これらを重合開始剤等と混合し、60〜150℃程度の範囲内で通常1〜10時間程度加熱反応することにより行うことができる。この場合において、脂肪酸変性エポキシ樹脂と重合性不飽和モノマー(f)の使用割合は、脂肪酸変性エポキシ樹脂100質量部に対し重合性不飽和モノマー(f)が10〜2000質量部、好ましくは25〜1000質量部の範囲内であることが望ましい。
【0074】
また、脂肪酸変性エポキシ樹脂と重合性不飽和モノマー(f)との反応を効率よく進行させるために、脂肪酸変性エポキシ樹脂がエポキシ基を、重合性不飽和モノマー(f)がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを夫々含んでいてもよい。カルボキシル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、重合性不飽和モノマー(f)中に0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%含有されることが望ましい。重合性不飽和モノマー(f)がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有すると、水分散性又は顔料分散性を向上させることもでき、好適である。
【0075】
脂肪酸変性エポキシ樹脂と重合性不飽和モノマー(f)との反応において、水素引き抜きによるグラフト化反応とエポキシ基/カルボキシル基によるエステル化反応の順番は適宜選択することができ、また同時に行うことも可能である。
【0076】
上記重合性不飽和モノマー(f)により変性された脂肪酸変性エポキシ樹脂の水性化方法としては、特に限定されるものではなく、該脂肪酸変性エポキシ樹脂に乳化剤を混合し、水性媒体中に分散する方法、該脂肪酸変性エポキシ樹脂がカルボキシル基を有する場合には、該カルボキシル基を塩基性物質にて中和した後、水性媒体中に分散する方法、等が挙げられる。また、水性化後に必要に応じて系中の有機溶剤を留去させ除去することもできる。
【0077】
本発明において、上記水性エポキシ樹脂(IV)がエポキシ基を有する場合には、さらにアミン系硬化剤を用いることができる。アミン系硬化剤としては、2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましく、特に限定されるものではないが、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環式ポリアミン等やそれらのエポキシ付加物、マンニッヒ変性化物、ポリアミドの変性物を使用することが可能である。そのままでも使用しても、必要に応じて溶剤の除去等の精製工程を行っても良く、また水を加えて均一化しても良く、更に良好な水分散性を付与するために必要に応じ、酢酸等の有機酸によりアミノ基を中和して水分散を行っても良い。
【0078】
本発明においては、得られる塗膜の防食性や耐水性の点から、変性澱粉含有樹脂水分散体(I)及び水性エポキシ樹脂(IV)を、樹脂固形分比で100:0〜50:50、好ましくは95:5〜60:40(質量比)の範囲内で併用することができる。
【0079】
本発明の水性塗料組成物は、リン酸系防錆顔料(II)を必須成分として含有する。
【0080】
防錆顔料(II)としては、例えばMg、K、Ca、Ba、Zn及びAlから選ばれる少なくとも1種の金属の、リン酸塩、亜リン酸塩、ポリリン酸塩、リンモリブデン酸塩などが挙げられ、これらの具体例としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン・ケイ酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、及びこれらの水和物などが挙げられる。これらは各種の表面処理がなされたものであっても良い。これらのうち、特にリン酸亜鉛系、リン酸カルシウム系、トリポリリン酸二水素アルミニウム系から選ばれる少なくとも1種であることが防食性の点から望ましい。
【0081】
本発明においては防錆顔料(II)として、特に防食性の点から、水抽出液の電気伝導度が0.05mS/cm以上、好ましくは0.10mS/cm以上、さらに好ましくは0.15mS/cm以上の亜リン酸塩を含むことが望ましい。
【0082】
ここで水抽出液の電気伝導度(mS/cm)は、JIS K 5101−18:2004(顔料試験方法−第18部:電気抵抗率)に記載の方法に準じて、各防錆顔料を5質量%濃度になるように脱イオン水に加えて、40℃で5日間放置した後の水抽出液について測定されるものである。
【0083】
防錆顔料(II)の配合割合は、塗料の貯蔵安定性や形成塗膜の防食性向上の観点から、変性澱粉含有樹脂水分散体(I)の固形分100質量部に対して、5〜60質量部程度であり、さらに5〜50質量部程度であるのがより好ましい。
【0084】
本発明ではさらに必要に応じて顔料分として、塗料分野で既知の着色顔料、体質顔料等を配合することができる。
【0085】
本発明では、上記防錆顔料(II)を含む顔料成分を次に説明する窒素含有化合物(III)と共に水性媒体中に分散して顔料分散液とすることが、顔料分散安定性、貯蔵安定性の向上の点から好適である。
【0086】
本発明の水性塗料組成物は、下記一般式(1)で表される窒素含有化合物(III)を必須成分として含有する。
【0087】
【化3】

【0088】
[式中、Rは炭素数4〜22の1価の有機基を示す。Rは、炭素数4〜22の炭化水素基、炭素数4〜22のアシル基又は
【0089】
【化4】

【0090】
(式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を示し、nは0〜100の整数を示す。nが2以上のとき、複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。)を示す。Rは炭素数2〜3のアルキレン基を示す。mは、2〜100の整数を示す。複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。]。
【0091】
で示される炭素数4〜22の1価の有機基としては、例えば、炭素数4〜22の炭化水素基、炭素数4〜22のアシル基等を挙げることができる。
【0092】
及びRで示されるアルキレン基としては、それぞれ直鎖状のアルキレン基であっても分岐状のアルキレン基であってもよい。またRで示されるアルキレン基は、炭素数2〜3であるのが好ましく、炭素数2であることが更に好ましい。
【0093】
mは、2〜50の整数であるのが好ましく、2〜25の整数であるのがより好ましく、2〜15の整数であるのが更に好ましく、3〜10の整数であることが最も好ましい。nは、0〜50の整数であるのが好ましく、1〜25の整数であるのがより好ましく、2〜15の整数であるのが更に好ましく、3〜10の整数であることが最も好ましい。
【0094】
窒素含有化合物(III)としては、上記一般式(1)で表される窒素含有化合物である限り、特に制限されない。該化合物(III)としては、例えば、以下に説明する窒素含有化合物(III−1)〜(III−4)を用いることが好ましい。
【0095】
窒素含有化合物(III−1)は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0096】
【化5】

【0097】
[式中、Rは炭素数4〜22の炭化水素基を示す。R及びR、m及びnは、前記に同じ。]。
【0098】
は、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数8〜14のアルキル基又はアルケニル基であるのが望ましい。これらの内、炭素数6〜18、特に炭素数8〜14のアルキル基であることが、更に好ましい。
【0099】
及びRは、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、それぞれ炭素数2〜3のアルキレン基であるのが好ましく、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが更に好ましい。
【0100】
また、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、上記一般式(2)におけるアルキレンオキサイドの付加モル数の和(m+n)は、2〜100であるが、2〜50であるのが好ましく、3〜30であるのがより好ましく、4〜20であるのが更に好ましい。
【0101】
窒素含有化合物(III−1)は、例えば、脂肪酸又は脂肪酸エステルとアンモニアを加熱して脂肪族ニトリルをつくり、これを水素で還元して、脂肪族アミンを合成し、次いで該脂肪族アミンとアルキレンオキサイドを反応させることによって、製造することができる。
【0102】
上記脂肪酸の具体例としては、例えば、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、椰子油脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられ、上記脂肪酸エステルとしては、例えば、これら脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0103】
上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらの内、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。上記脂肪族アミンとアルキレンオキサイドの反応の際には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;ナトリウムメチラート;アミン等の塩基性触媒を、上記脂肪族アミンに対して0.01〜5モル%程度用いることが好ましい。
【0104】
また、前記アルキレンオキサイドの付加モル数の和(m+n)の調整は、上記脂肪族アミンとアルキレンオキサイドの反応における、該脂肪族アミンと該アルキレンオキサイドの混合比(モル比)を調整することによって行うことができる。
【0105】
窒素含有化合物(III−2)は、一般式(3)で表される化合物である。
【0106】
【化6】

【0107】
[式中、Rは炭素数3〜21の炭化水素基を示す。R、R、m及びnは前記に同じ。但し、1≦m+n≦100である。]。
【0108】
は、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、炭素数3〜21、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数8〜14のアルキル基又はアルケニル基であるのが望ましい。これらの内、炭素数6〜18、特に炭素数8〜14のアルキル基であることが、更に好ましい。
【0109】
及びRは、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、それぞれ炭素数2〜3のアルキレン基であるのが好ましく、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが更に好ましい。
【0110】
また、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、上記一般式(3)におけるアルキレンオキサイドの付加モル数の和(m+n)は、2〜100であるが、2〜50であるのが好ましく、3〜30であるのがより好ましく、4〜20であるのが更に好ましい。
【0111】
上記窒素含有化合物(III−2)は、例えば、脂肪酸又は脂肪酸エステルとアンモニアを反応させて、脂肪族アミドを合成し、得られた脂肪族アミドとアルキレンオキサイドを反応させることによって、製造することができる。上記脂肪酸やアルキレンオキサイドとしては、前述の(III−1)の説明で列記したものが挙げられる。
【0112】
また、前記アルキレンオキサイドの付加モル数の和(m+n)の調整は、前記脂肪族アミドと上記アルキレンオキサイドの反応における、該脂肪族アミドと該アルキレンオキサイドの混合比(モル比)を調整することによって行うことができる。例えば、上記脂肪族アミド1モルに、上記アルキレンオキサイドを20モル反応させることによって得られる窒素含有化合物(III−2)のアルキレンオキサイドの平均付加モル数の和(m+n)は20である。
【0113】
窒素含有化合物(III−3)は、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0114】
【化7】

【0115】
[式中、R及びRは、独立して、炭素数3〜21の炭化水素基を示す。R及びmは前記に同じ。]。
【0116】
及びRは、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、それぞれ、炭素数3〜21、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数8〜14のアルキル基又はアルケニル基であるのが望ましい。これらの内、炭素数6〜18、特に炭素数8〜14のアルキル基であることが、更に好ましい。
【0117】
は、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが好ましい。
【0118】
また、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、上記一般式(4)におけるアルキレンオキサイドの付加モル数mは、2〜100であるが、2〜50であるのが好ましく、3〜30であるのがより好ましく、4〜20であるのが更に好ましい。
【0119】
上記窒素含有化合物(III−3)は、例えば、2級の脂肪族アミドにアルキレンオキサイドを反応させることによって、得ることができる。アルキレンオキサイドとしては、前述の(III−1)の説明で列記したものが挙げられる。
【0120】
アルキレンオキサイドの付加モル数mの調整は、上記脂肪族アミドへのアルキレンオキサイドの付加反応における、該脂肪族アミドと該アルキレンオキサイドの混合比(モル比)を調整することによって行うことができる。
【0121】
窒素含有化合物(III−4)は、下記一般式(5)で表される化合物である。
【0122】
【化8】

【0123】
[式中、R及びR10は、独立して、炭素数4〜22の炭化水素基を示す。R及びmは、前記に同じ。]。
及びR10は、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、それぞれ、炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数8〜14のアルキル基又はアルケニル基であるのが望ましい。これらの内、炭素数6〜18、特に炭素数8〜14のアルキル基であることが、更に好ましい。
【0124】
は、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、炭素数2のアルキレン基(エチレン基)であることが好ましい。
【0125】
また、塗料の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性の点から、上記一般式(5)におけるアルキレンオキサイドの付加モル数mは、2〜100であるが、2〜50であるのが好ましく、3〜30であるのがより好ましく、4〜20であるのが更に好ましい。
【0126】
窒素含有化合物(III−4)は、例えば、2級の脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを反応させることによって、得ることができる。アルキレンオキサイドとしては、前述の(III−1)の説明で列記したものが挙げられる。
【0127】
本発明で用いる窒素含有化合物(III)は、分子量が100〜4,000程度であることが好ましく、200〜2,000程度であるのがより好ましく、300〜1,500程度であるのが更に好ましい。また、該化合物(III)は、HLB値が8〜18程度であるのが好ましく、10〜17程度であるのがより好ましく、13〜16程度であるのが更に好ましい。
【0128】
窒素含有化合物(III)のHLB値は、質量分率に基づくグリフィン式:
HLB値=20×(MH/M)
(式中、MHは窒素含有化合物(III)中の親水基部分の分子量を示し、Mは窒素含有化合物(III)の分子量を示す。)によって算出される値である。
【0129】
窒素含有化合物(III)の配合割合は、塗料の貯蔵安定性の向上の観点から、変性澱粉含有樹脂水分散体(I)の固形分100質量部に対して、1〜20質量部程度であり、さらに2〜20質量部程度であるのがより好ましく、2〜15質量部程度であるのが更に好ましい。
【0130】
本発明においては窒素含有化合物(III)として、特に塗料の貯蔵安定性、形成塗膜の耐水性等の点から窒素含有化合物(III−1)が好適である。
【0131】
本発明の水性塗料組成物は、上述の通り、(I)、(II)及び(III)成分を必須として含有するものであり、さらにフラッシュラスト(点錆)抑制の点から、亜硝酸塩、フィチン酸塩、タンニン酸塩、及びポリアミン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性化合物を含むことができる。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸アンモニウムなどが挙げられ、フィチン酸塩としては、例えば、フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどが挙げられ、タンニン酸塩としては、例えば、タンニン酸ナトリウム、タンニン酸カリウム等が挙げられ、ポリアミン化合物としては、例えば、はN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、プロピレンジアミン四酢酸(PDTA)、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP)、及びこれらのアルカリ金属塩、モノアルキルアミンやポリアミン、第四級アンモニウムイオンなどをトリポリリン酸二水素アルミニウムなどの層状りん酸塩にインターカレートしてなる層間化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0132】
上記の塩基性化合物の配合割合は、フラッシュラスト抑制の向上の観点から、水性被膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部の範囲内が適当である。
【0133】
本発明の水性塗料組成物は、上記成分の他に必要に応じて、顔料分散剤、界面活性剤、前述の金属ドライヤー等の硬化触媒、消泡剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、pH調整剤、アルデヒド捕捉剤、層状粘度鉱物、粉状もしくは微粒子状の活性炭等の添加剤を単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0134】
本発明の水性塗料組成物は、鉄、アルミニウム等の金属基材表面又は金属基材上の旧塗装面に適用することができ、旧塗膜としては、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂などの塗膜が挙げられる。これらの被塗面には、本発明の水性塗料組成物を下塗り材として塗布した後、既知の水性上塗り材を塗布することも可能である。
【0135】
本発明の水性塗料組成物は、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装、リシンガン、万能ガン等の方法で塗布することができ、また、乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれであってもよい。本明細書では、40℃未満の乾燥条件を常温乾燥とし、40℃以上で且つ80℃未満の乾燥条件を強制乾燥とし、80℃以上の乾燥条件を加熱乾燥とする。本発明の水性塗料組成物の塗布量としては、例えば、50〜300g/mの範囲内とすることができる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、例中の「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0137】
変性澱粉含有樹脂水分散体の製造
製造例1
ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を、高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置にて150MPaで高圧処理することにより、分散粒子の平均粒子径が250nmのモノマー乳化物を得た。
【0138】
モノマー乳化物組成
エステル化澱粉(A) (注1) 30部
メチルメタクリレート 36部
n−ブチルアクリレート 20部
2−エチルヘキシルアクリレート 12部
メタクリル酸 2部
「Newcol707SF」(注2) 15部
脱イオン水 85部。
【0139】
次いで、上記モノマー乳化物を、攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度計および試薬投入口を備えたガラス製反応容器に移し、脱イオン水にて固形分濃度が45%となるように希釈した。その後85℃まで昇温させ、過硫酸アンモニウム1部を脱イオン水15部に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に添加し、窒素気流下で該温度を保持しながら3時間攪拌した。その後、過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン水2.7部に溶解させた重合開始剤水溶液を添加し、該温度を保持しながら1時間攪拌した後、40℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノールでpHを8.0に調整し、固形分濃度40%、平均粒子径が230nmの変性澱粉含有樹脂水分散体(I−1)を得た。
【0140】
(注1)エステル化澱粉(A):コーンスターチを酸により低分子量化処理した、重量平均分子量が150,000の澱粉分解物に、アセチル基及びラウリル基を有機溶剤中でエステル結合させたものであり、置換度は2.41、変性モル数比はアセチル/ラウリル=1.93/0.48の割合であった。
【0141】
(注2)「Newcol707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%。
【0142】
製造例2
ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を、高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置にて150MPaで高圧処理することにより、分散粒子の平均粒子径が220nmのモノマー乳化物を得た。
【0143】
モノマー乳化物組成
エステル化澱粉(A) (注1) 20部
メチルメタクリレート 36部
n−ブチルアクリレート 26部
2−エチルヘキシルアクリレート 17部
メタクリル酸 2部
脂肪酸変性重合性不飽和モノマー(注3) 5部
「Newcol707SF」(注2) 15部
脱イオン水 85部。
【0144】
次いで、上記モノマー乳化物を、攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度計および試薬投入口を備えたガラス製反応容器に移し、脱イオン水にて固形分濃度が45%となるように希釈した。その後85℃まで昇温させ、過硫酸アンモニウム1部を脱イオン水15部に溶解させた重合開始剤水溶液を反応容器に添加し、窒素気流下で該温度を保持しながら3時間攪拌した。その後、過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン水2.7部に溶解させた重合開始剤水溶液を添加し、該温度を保持しながら1時間攪拌した後、40℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノールでpHを8.0に調整し、固形分濃度40%、平均粒子径が215nmの変性澱粉含有樹脂水分散体(I−2)を得た。
【0145】
(注3)脂肪酸変性重合性不飽和モノマー:攪拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管、温度計および試薬投入口を備えたガラス製反応容器に、サフラワー油脂肪酸280部及びグリシジルメタクリレート142部を入れ、攪拌しながら反応温度140℃で5時間反応させ、脂肪酸変性重合性不飽和モノマーを得た。エポキシ基とカルボキシル基の反応は残存カルボキシル基の量を測定ることにより定量した。反応が完了するまで約5時間を要した。
【0146】
水性塗料組成物の製造
実施例1〜10及び比較例1〜3
容器に表1に記載の組成(P)に示される各成分を順次仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌を続け、各顔料ペーストを得た。その後、表1に記載の組成(R)に示される各成分を順次添加し、各水性塗料組成物を得た。ついで各水性塗料組成物を下記評価試験に供して評価した。結果を表1に併せて示す。
【0147】
尚、表1中の(注4)〜(注16)は下記の通りである。
(注4)「BYK−190」:商品名、ビックケミー社製、分散剤
(注5)「BYK−028」:商品名、ビックケミー社製、消泡剤
(注6)「BLAUNON L220」:商品名、青木油脂工業社製、ポリオキシエチレンラウリルアミン、前記一般式(2)で、Rがラウリル基であり、R及びRがエチレン基であり、m+n=20である化合物。また、HLB値は16.2
(注7)「エソミンS25」:商品名、ライオンアクゾ社製、前記一般式(2)で、Rが大豆油脂肪酸残基であり、R及びRがエチレン基であり、m+n=15である化合物。また、HLB値は14.2
(注8)「チタン白JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白
(注9)「EXPERT NP−1007」:商品名、東邦顔料社製、リン酸亜鉛/亜リン酸カルシウム、水抽出液の電気伝導度0.663mS/cm
(注10)「EXPERT NP−1020C」:商品名、東邦顔料社製、亜リン酸カルシウム、水抽出液の電気伝導度0.700mS/cm
(注11)「K−White140W」:商品名、テイカ社製、トリポリリン酸アルミニウム/酸化亜鉛、水抽出液の電気伝導度0.447mS/cm
(注12)「モデピクス301」:商品名、荒川化学工業社製、エポキシエステルエマルション
(注13)「ウォーターゾールEFD−5560」:DIC社製、エポキシエステルエマルション
(注14)「TEXANOL」:イーストマンケミカル社製、商品名、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤
(注15)「DICNATE1000W」:大日本インキ社製、商品名、金属ドライヤー、Co含有率3.6%
(注16)「アデカノールUH−420」:商品名、アデカ社製、増粘剤
【0148】
【表1】

【0149】
評価試験方法
(*1)貯蔵安定性
実施例及び比較例で得られた各水性塗料組成物を容量が1Lの内面コート缶に1kg入れ、窒素封入した後、40℃で2週間貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中での状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。
【0150】
○:初期の状態のままであり、変化がない
△:顔料沈降もしくはブツが発生
×:ゲル化
【0151】
(*2)耐水性
実施例及び比較例で得られた各水性塗料組成物を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターで無処理軟鋼板に塗装し、25℃で10日間養生させて膜を作成し、試験板とした。得られた各試験板を上水に3日間浸漬し、その後引き上げて各試験板に生じたサビ、フクレの発生程度について下記の基準で評価した。
【0152】
○:サビ、フクレなどの異常が無い
△:サビ、フクレが少し発生
×:サビ、フクレが著しく発生
【0153】
(*3)防食性
実施例及び比較例で得られた各水性塗料組成物を乾燥膜厚で40μmになるようにアプリケーターで無処理軟鋼板に塗装し、25℃で10日間養生させた後、塗膜面にカッターでクロスカットを入れたものを試験板とした。得られた各試験板を、JIS Z2371塩水噴霧試験に準じて、塩水噴霧に100時間曝した。その後、各試験板に生じたサビ、フクレの発生程度について下記の基準で評価した。
【0154】
◎:カット部の錆幅が1mm未満で、一般部にサビ、フクレなどの異常が無い
○:カット部の錆幅は1〜3mmであるが、一般部にサビ、フクレなどの異常が無い
△:カット部の錆幅は1〜3mmであるが、一般部にサビ、フクレが発生
×:カット部の錆幅は3mmを超え、サビ、フクレが著しく発生

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)(a)変性澱粉及び(b)重合性不飽和モノマー(m1)の(共)重合体を構成成分として含有する平均粒子径が1000nm以下の分散樹脂粒子を含む変性澱粉含有樹脂水分散体、
(II)リン酸系防錆顔料、及び
(III)一般式(1)
【化1】

[式中、Rは炭素数4〜22の1価の有機基を示す。Rは、炭素数4〜22の炭化水素基、炭素数4〜22のアシル基又は
【化2】

(式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を示し、nは0〜100の整数を示す。nが2以上のとき、複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。)を示す。Rは炭素数2〜3のアルキレン基を示す。mは、2〜100の整数を示す。複数のR同士は、同一でも、異なっていてもよい。]で表される窒素含有化合物を含有し、(I)成分の固形分100質量部に対し、(II)成分の含有量が5〜60質量部、(III)成分の含有量が1〜20質量部であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
重合性不飽和モノマー(m1)の少なくとも一部がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーである請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
重合性不飽和モノマー(m1)の少なくとも一部が脂肪酸変性重合性不飽和モノマーである請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
変性澱粉含有樹脂水分散体(I)が、変性澱粉(a)及び重合性不飽和モノマー(m1)を含んでなる混合物(A)を、水性媒体中に、平均粒子径が1000nm以下となるように微分散させ、得られる乳化物を重合させることによって得られる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
リン酸系防錆顔料(II)が、リン酸亜鉛系、リン酸カルシウム系及びトリポリリン酸二水素アルミニウム系の防錆顔料から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
さらに水性エポキシ樹脂(IV)を含有する請求項1ないし5のいずれか1項記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
金属基材表面又は金属基材上の旧塗装面に、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2010−65136(P2010−65136A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232597(P2008−232597)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】