説明

水性塗料組成物、及び塗装物

【課題】
印刷された金属缶などに加工性や、密着性などの塗膜性能に優れた外面塗膜を形成することができる水性塗料組成物、及びそのような水性塗料組成物により外面塗膜を形成してなる塗装物を提供する。
【解決手段】
アクリル樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、低融点系ワックス(D)を必須成分として含有し、これらの必須成分のうち塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%中に、固形分比で、アクリル樹脂(A)が30〜55重量%、アミノ樹脂(B)が35〜55重量%、ポリエステル樹脂(C)が5〜20重量%の割合で含有させるとともに、塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%に対し、低融点系ワックスを0.2〜3.0重量%の割合で含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性、密着性などの塗膜性能に優れた外面塗膜を形成することができる水性塗料組成物、及びそのような水性塗料組成物により外面塗膜を形成してなる塗装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の飲料品を密封充填する飲料用缶として、缶蓋、缶胴、及び缶底の三部材からなる3ピース缶や、缶蓋、及び底部が一体に成形された有底缶胴の二部材からなる2ピース缶が知られている。
【0003】
これらの飲料用缶うち、2ピース缶にあっては、有底缶胴を形成するに際し、通常、絞り・しごき加工などにより金属素材を有底筒状に形成した後に外面塗装を行い、次いで、缶蓋を取り付けるために開口部を絞るネッキング加工などを施している。
このとき、外面塗装は、必要に応じて下塗り層を設けて文字や図柄などの印刷をし、仕上げワニスを上塗りして外面塗膜(クリアー層)を形成することによってなされるが、その後に行われるネッキング加工などによって、外面塗膜に割れや、剥離が生じてしまうのを避けなければならない(特許文献1〜6参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−77440号公報
【特許文献2】特開平11−106700号公報
【特許文献3】特開2002−155232号公報
【特許文献4】特開2003−147263号公報
【特許文献5】特開2004−26912号公報
【特許文献6】特開2004−175845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来は、コーヒーや、お茶などの陰圧充填型の飲料用缶には3ピース缶、また、炭酸飲料や、ビールなどの陽圧充填型の飲料用缶には2ピース缶というように、飲料品の種類や、その充填方法に応じて使い分けられてきたが、近年、陰圧充填型の飲料用缶にも、薄肉、軽量化などにおいて有利な2ピース缶が広く用いられるようになってきている。そして、2ピース缶の今後の需要の増大が期待される状況下、2ピース缶の利点を生かしつつ、商品の差別化を図るための種々の形態が提案されており、例えば、従来の2ピース缶における缶蓋の代わりに、ねじ式のキャップを用いて開栓後のリシールを可能とした飲料用缶(リシール缶)が新たに登場してきている。
【0006】
しかしながら、この種のリシール缶にあっては、キャップとのねじ嵌合を実現するために、缶胴の口部にねじ加工が施されているが、このようなねじ加工は、缶胴の口部の縮径と、曲げ延ばしを連続的に繰り返して行う過酷な加工方法であり、加工時の負荷は、ネッキング加工のような単なる絞り加工の比ではない。このため、ねじ加工を施す部位に、前記した特許文献に開示されているような従来の外面塗装を行うと、その外面塗膜が加工に耐えきれずに、割れや、剥離などが生じてしまうという問題を有していた。
【0007】
特に、PETボトルのような樹脂製の飲料用容器と同様のボトル形状を有するリシール缶(キャップ付きボトル缶)にあっては、缶胴の最大径に対する口部の縮径率が大きくなっており(例えば、縮径率30〜60%)、大きく縮径させた口部にさらにねじ加工を施すとなると外面塗膜にかかる負荷は格段に大きくなり、割れや、剥離などの問題がよりいっそう顕著なものとなる。
【0008】
さらに、キャップ付きボトル缶のようなリシール缶にあっては、開栓後にキャップの開け閉めを繰り返すと、口部のねじ形状の頂部とキャップとが擦れあうことになるが、このような擦れによって、外面塗膜の割れや、剥離が助長され、外面塗膜に擦れかすが発生してしまうという問題もあった。
【0009】
缶胴に形成さる口部は使用者が口にする部分でもあり、外面塗膜の割れや、剥離が生じていると使用者に不快な印象を与え、商品価値を著しく損ねてしまうため、キャップ付きボトル缶に代表されるリシール缶において、縮径した後に、ねじ加工が施された缶胴の口部に印刷を施したものは未だ上市されずにいる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、例えば、キャップ付きボトル缶に代表されるリシール缶の口部に施されるねじ加工のような過酷な加工条件下においても、外面塗膜の割れや、剥離が生じない、加工性や、密着性などの塗膜性能に優れた外面塗膜を形成することができる水性塗料組成物、及びそのような水性塗料組成物により外面塗膜を形成してなる塗装物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、主としてアクリル樹脂と、アミノ樹脂とにより硬化塗膜を形成し、この際、硬化助剤として必要量のポリエステル樹脂を含有させることで、焼き付け硬化後の塗膜に生じる硬化歪みが抑制され、硬化塗膜の加工性、密着性などの塗膜性能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る水性塗料組成物は、アクリル樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び低融点系ワックス(D)を少なくとも含有し、前記塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%中に、前記アクリル樹脂(A)が30〜55重量%、前記アミノ樹脂(B)が35〜55重量%、前記ポリエステル樹脂(C)が5〜20重量%含有されるとともに、前記塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%に対し、前記低融点系ワックスが0.2〜3.0重量%含有される構成としてある。
【0013】
このような構成とすることにより、加工性、密着性などに優れた硬化塗膜を形成することができ、ネッキング加工を施す場合は言うに及ばず、例えば、キャップ付きボトル缶に代表されるリシール缶の口部に施されるねじ加工のような過酷な加工条件下においても、外面塗膜の割れ、剥離などの問題を有効に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係る水性塗料組成物は、硬化塗膜の塗膜性能や、塗工性などを考慮して、各組成成分を適宜選択して調製されるが、前記アクリル樹脂は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを10〜40重量%含有するアクリル系モノマーを共重合させてなり、数平均分子量が5000〜20000、ガラス転移点が−15〜50℃であるのが好ましい。
また、前記アミノ樹脂は、ベンゾグアナミン樹脂及び/又はベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合樹脂であり、トリアジン核一個あたり0.5〜2.0個のイミノ基を有し、数平均分子量が350〜2000であるのが好ましい。
また、前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量が1500〜8000、ガラス転移点が 10〜60℃、水酸基価が20〜150mgKOH/gであるのが好ましい。
また、前記低融点系ワックスは、融点が60℃以下であるのが好ましく、天然系ワックス,合成ワックスの一種、又は二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0015】
また、本発明に係る塗装物は、上記したような塗料組成物により、被塗装物の外面に外面塗膜を形成した構成としてある。
このような構成とすることにより、成形性、密着性などの塗膜性能に優れた外面塗膜が形成された塗装物を得ることができる。
そして、前記被塗装物を金属素地缶とし、開口部の端までにも印刷層を設け、前記印刷層の上に外面塗膜を形成することにより、ねじ加工のような過酷な加工条件下においても、外面塗膜の割れや、剥離などを有効に回避して、例えば、口部にも印刷が施されたキャップ付きボトル缶を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明によれば、水性塗料組成物中の組成成分の含有率を調整し、主としてアクリル樹脂と、アミノ樹脂とにより硬化塗膜が形成されるようにするとともに、硬化助剤として必要量のポリエステル樹脂を含有させることで、焼き付け硬化後の塗膜に生じる硬化歪みを抑制することが可能となる。これにより、硬化塗膜の加工性、密着性などの塗膜性能を向上させることができ、さらに、低融点系ワックスを所定量含有させることにより、硬化塗面の摩擦抵抗を小さくして加工性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態における水性塗料組成物は、アクリル樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、低融点系ワックス(D)を必須成分として含有し、これらの必須成分のうち塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%中に、固形分比で、アクリル樹脂(A)が30〜55重量%、好ましくは、35〜50重量%、アミノ樹脂(B)が35〜55重量%、好ましくは、35〜50重量%、ポリエステル樹脂(C)が5〜20重量%、好ましくは、5〜15重量%の割合で含有されるとともに、塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%に対し、低融点系ワックスが0.2〜3.0重量%、好ましくは、0.5〜2.0重量%の割合で含有されるように調製される。
【0019】
このような配合割合で調製される本実施形態の水性塗料組成物にあっては、主としてアクリル樹脂(A)とアミノ樹脂(B)とにより硬化塗膜が形成されるように、アクリル樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)を主成分として含有させ、硬化助剤として必要量のポリエステル樹脂(C)を含有させた点が特に重要であり、これにより、焼き付け硬化後の塗膜に硬化歪みが生じないようにして、硬化塗膜の加工性、密着性などの塗膜性能を向上させることができる。
このため、アクリル樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)の含有量が上記範囲に満たなかったり、ポリエステル樹脂(C)の含有量が上記範囲から外れたりすると、十分な塗膜性能が得られなくなってしまう。
【0020】
また、低融点系ワックスは、塗料用樹脂(A)〜(C)により形成される硬化塗膜に潤滑性を付与するものであり、塗面の摩擦抵抗を小さくして加工性をより向上させる目的で含有され、低融点系ワックスの含有量が上記範囲に満たないと、低融点系ワックスを含有させたことによる加工性の向上が認められなくなってしまう。一方、上記範囲を超えて低融点ワックスが含有されると、硬化塗膜に濁りが生じて、硬化塗膜の透明感が損なわれてしまうおそれがあるだけでなく、焼き付け時にワックスが飛散するなどして周囲を汚染してしまうというような不具合が生じてしまう。
【0021】
本実施形態に用いるアクリル樹脂(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマー;メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,イソプロピル(メタ)アクリレート,n−ブチル(メタ)アクリレート,t−ブチル(メタ)アクリレート,n−ヘキシル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート,イソオクチル(メタ)アクリレート,n−ラウリル(メタ)アクリレート,トリデシル(メタ)アクリレート,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,イソボロニルアクリレート,フェノキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;スチレン,2−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド,N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド,N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド,N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーなどのアクリル系モノマーを原料モノマーに用いて合成することができる。
【0022】
これらの原料モノマーは、単独で、又は二種以上を混合して用いてもよいが、原料モノマー100重量%中に、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを好ましくは10〜40重量%の割合で含有させるのが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを含有させた原料モノマーから合成されたアクリル樹脂(A)は、塗料の焼き付け時に生じるアルコール脱離反応によって、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドに由来するアルコキシル基からメチロール基を生成し、このメチロール基が自己縮合、又はアミド樹脂(B)やポリエステル樹脂(C)と反応して硬化塗膜を形成する。
このため、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量が全原料モノマー中に占める割合が上記範囲に満たないと、塗膜の架橋密度が十分に得られなくなってしまうおそれがある。一方、全原料モノマー中に占める割合が上記範囲を超えると、メチロール基の自己縮合が優先し、アミド樹脂(B)や、ポリエステル樹脂(C)との反応性が低下してしまうおそれがある。
【0023】
本実施形態に用いるアクリル樹脂(A)は、例えば、溶液重合法などによって、上記原料モノマーを有機溶剤中でラジカル重合させることにより得ることができる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル,t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物;2,2−アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物などを、単独、又は二種以上混合して用いることができる。
【0024】
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール,n−ブチルアルコール,イソブチルアルコール等のアルキルアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル,3−メチル−3−メトキシブチルアルコール等のグリコール系溶剤;トルエン,キシレン,ソルベッソ#100(商品名),ソルベッソ#150(商品名)等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン,ヘプタン,オクタン,デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸イソプロピル,酢酸ブチル,酢酸アミル,ギ酸エチル,プロピオン酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを、単独、又は二種以上混合して用いることができる。
【0025】
このようにして得られたアクリル樹脂(A)は、合成用溶剤を除去するとともに、アンモニアや、ジメチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,アミノエタノール,ジエチルアミノエタノール,ジメチルアミノエタノール等の有機アミンなどの揮発性塩基の水溶液により、アクリル樹脂(A)中のカルボン酸を中和することによって、水性媒体中に溶解、又は分散させることができる。
【0026】
本実施形態で用いるアクリル樹脂(A)は、数平均分子量が5000〜20000であるのが好ましく、より好ましくは5000〜15000である。また、ガラス転移点Tgは−15〜50℃であるのが好ましく、より好ましくは−10〜40℃である。
数平均分子量が上記範囲に満たないと、低分子量化に伴い硬化塗膜の強靱性が低下するおそれがある。一方、数平均分子量が上記範囲を超えると、高分子量化に伴って粘度が高くなり、水性塗料化が困難になるおそれがある。
また、ガラス転移点Tgが上記範囲に満たないと、十分な塗膜硬度や、耐傷つき性が得られなくなってしまうおそれがある。一方、ガラス転移点Tgが上記範囲を超えると、溶融粘度が高くなり水性塗料化が困難となるおそれがある。
【0027】
また、本実施形態に用いるアミノ樹脂(B)は、例えば、尿素,メラミン,ベンゾグアナミン,アセトグアナミン,ステログアナミン,スピログアナミン,ジシアンジアミド等のアミノ成分のアミノ基に、ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,ベンツアルデヒド等のアルデヒド成分を付加してメチロール化した後に、アルコールにより重縮合反応と、エーテル化を進行させることによって合成することができるが、本実施形態では、アミノ樹脂(B)の自己縮合反応を抑制する観点から、ベンゾグアナミン樹脂,ベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合樹脂を、単独、又は混合して用いるのが好ましい。
【0028】
このようなアミノ樹脂(B)の合成に用いるアルコールとしては、メチルアルコール,エチルアルコール,n−プロピルアルコール,イソプロピルアルコール,n−ブチルアルコール,イソブチルアルコール,t−ブチルアルコール等のアルキルアルコール;エチレングリコールモノプロピルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類を挙げることができ、これらのアルコールは、単独、又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
このようにして得られるアミノ樹脂(B)は、イミノ基、メチロール基、メチロール基の一部がアルコールによりエーテル化されたメトキシ基を有するが、トリアジン核一個あたり0.5〜2.0個のイミノ基を有しているのが好ましく、より好ましくは1.0〜2.0個である。
トリアジン核一個あたりのイミノ基が上記範囲に満たないと、反応性が低下する傾向にあり、硬化塗膜の形成に支障を来して十分な塗膜性能が得られなくなってしまうおそれがある。一方、トリアジン核一個あたりのイミノ基が上記範囲を超えると、アミノ樹脂(B)の自己縮合反応が生じ易くなる傾向にあり、塗料としての経時安定性に劣ったものとなってしまうおそれがある。
【0030】
本実施形態で用いるアミノ樹脂(B)の数平均分子量は、350〜2000であるのが好ましく、より好ましくは500〜1500である。
数平均分子量が上記範囲に満たないと、十分な塗膜性能が得られないだけでなく、焼き付け過程でヒュームが発生してしまうおそれがある。一方、数平均分子量が上記範囲を超えると、溶解性、分散性が低下してしまい、水性塗料化が困難になるおそれがある。
【0031】
また、本実施形態に用いるポリエステル樹脂(C)は、多塩基酸と、多価アルコールとの重縮合反応により合成することができ、多塩基酸としては、例えば、(無水)フタル酸,イソフタル酸,テレフタル酸等の芳香族二塩基酸;テトラヒドロ(無水)フタル酸,ヘキサヒドロ(無水)フタル酸,1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸;(無水)マレイン酸,フマル酸,(無水)コハク酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸等の脂肪族二塩基酸などを、単独、又は二種以上混合して用いることができる。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,ネオペンチルグリコール,1,2−プロパンジオール,1,3−ブタンジオール,1,4−ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール,2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール,2−エチル−1,3−ヘキサンジオール,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール,1,9−ノナンジオール,2−メチル−1,8−オクタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,キシレングリコール,水添ビスフェノールA等の脂肪族二価アルコール;トリメチロールエタン,トリメチロールプロパン,グリセリン,ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコールを、単独、又は二種以上混合して用いることができる。
【0033】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂(C)は、数平均分子量が1500〜8000であるのが好ましく、より好ましくは2000〜6000である。また、ガラス転移点Tgは10〜60℃であるのが好ましく、より好ましくは10〜50℃であり、水酸基価は20〜150mgKOH/gであるのが好ましく、より好ましくは30〜120mgKOH/gである。
数平均分子量が上記範囲に満たないと、焼き付け工程での分解反応、熱処理などにおける加水分解を生じる傾向が強くなり、十分な塗膜性能が得られなくなるおそれがある。一方、数平均分子量が上記範囲を超えると、高分子量化に伴い粘度が上昇し、水性塗料化が困難になるおそれがある。また、ガラス転移点Tgが上記範囲に満たないと、硬化塗膜の硬度が低くなる傾向にある。一方、ガラス転移点Tgが上記範囲を超えると、硬化塗膜の加工性が低下する傾向にある。また、水酸基価が上記範囲に満たないと水酸基が少なくなり、アクリル樹脂(A)や、アミノ樹脂(B)との反応性が低下するため、十分な塗膜性能が得られなくなるおそれがある。一方、水酸基価が上記範囲を超えると、硬化塗膜が脆くなってしまうおそれがある。
【0034】
また、本実施形態に用いる低融点系ワックス(D)は、過酷な加工条件下にあっても、潤滑性を十分に保持できるものであれば、天然系ワックス、合成ワックスのいずれでもよく、天然系ワックスは動物系、植物系、鉱物系のいずれであってもよいが、融点が60℃以下であるのが好ましく、より好ましくは55℃以下である。
植物系ワックスの例としては、カルナウバワックス,綿ワックス,木ロウなどを挙げることができる。動物系ワックスの例としては、ラノリンワックス,ゲイロウ,蜜ろうなどを挙げることができる。鉱物系ワックスの例としては、オゾケライト,モンタンワックスなどを挙げることができる。合成ワックスの例としては、ポリオレフィン系,シリコーン系ワックス,フッ素系ワックスなどを挙げることができる。
これらのワックスは、融点が60℃以下である限り、単独、又は二種以上を混合して用いることができるが、前述した割合で低融点系ワックス(D)を配合させるとともに、液状のワックスや、融点が60℃を超えるワックスを適宜混合して用いることもできる。
【0035】
以上のような必須成分(A)〜(D)を含有する本実施形態の水性塗料組成物には、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸,ドデシルベンゼンスルホン酸,ジノリルナフタレンスルホン酸,リン酸等の酸触媒、又はこれらの酸触媒をアミンブロックしたものを、塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%に対して0.1〜4重量%の割合で添加することができる。また、他の成分として従来公知のレベリング剤、消泡剤などを添加することもでき、本実施形態の効果を損なわない範囲で、他の水溶性樹脂や、水分散性樹脂を添加することもできる。
【0036】
本実施形態の水性塗料組成物は、ロールコート、コイルコート、スプレー、刷毛塗りなどの公知の手段により、各種の基材、例えば、電気メッキ錫鋼板、スチール鋼板、アルミニウム鋼板等の金属板や、これらの金属板にポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを貼り合わせ、又は樹脂コートした樹脂被覆金属板などに塗装し、焼き付けを行うことによって、加工性などの塗膜性能に優れた外面塗膜を形成することができる。
【0037】
特に、本実施形態の水性塗料組成物は、飲料用缶、缶詰用缶などを製造するにあたり、上記したような基材を、例えば、筒状にまるめて端部を溶接、又は接着してなる3ピース缶におけるような缶胴(筒状金属素地缶)としたものの外面、さらには、有底円筒状に加工してなる2ピース缶におけるような有底缶胴(有底円筒状金属素地缶)としたものの外面に、必要に応じて各種文字、図柄などの印刷を施して、外面塗膜(クリアー層)を塗工形成するための塗料として用いるのに好適である。
なお、このような印刷工程は、通常、前者の場合は缶胴を形成する前に行われ、後者の場合は缶胴を形成した後に行われる。
【0038】
そして、本実施形態の水性塗料組成物によれば、加工性などの塗膜性能に優れた外面塗膜を形成することができるので、このような印刷が施された金属素地缶にネッキング加工を施す場合は言うに及ばず、キャップ付きボトル缶に代表されるリシール缶とするために、ねじ部を形成するというような過酷な加工が施される上記各缶胴(金属素地缶)の口部の端まで印刷層を設け、その上に外面塗膜を形成しても、外面塗膜の割れや、剥離などを有効に回避することができる。このため、キャップ付きボトル缶のようなリシール缶においても、その口部にも印刷を施すことが可能となる。
【実施例】
【0039】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
[アクリル樹脂の合成]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコ反応容器に、窒素ガス雰囲気下で、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)200重量部、n−ブチルアルコール30重量部、ソルベッソ#150(商品名)60重量部を仕込み、撹拌しながら系の温度を110℃まで昇温した。
そして、アクリル酸50重量部(全原料モノマー100重量%中10重量%)、n−ブチルアクリレート200重量部(同40重量%)、エチルアクリレート100重量部(同20重量%)、スチレン100重量部(同20重量%)、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド50重量部(同10重量%)、過酸化ベンゾイル10重量部のモノマー混合液を調製し、系の温度を保持しつつ、滴下ロートから四時間かけて滴下した。滴下終了一時間後に過酸化ベンゾイルを5重量部添加し、さらに、二時間の反応を行った。
その後、生成溶液を70℃まで冷却し、減圧下で合成用の溶剤を溜出させた後に、ジメチルアミノエタノール水溶液を添加混合して、数平均分子量が10500、ガラス転移点Tgが35℃の水性アクリル樹脂(A1)の溶液(固形分60.2重量%)を得た。
【0041】
また、表1に示すモノマー配合割合(全原料モノマー100重量%に対する重量%)により、上記と同様な操作において、過酸化ベンゾイルの添加量、反応系の保持温度、モノマー混合液の滴下時間、滴下後の保持時間などを適宜調整して、固形分約60重量%の水性アクリル樹脂(A2〜A10)の溶液を得た。
【0042】
以上のようにして得られたアクリル樹脂(A1〜A10)の数平均分子量、ガラス転移点Tgを表1に併せて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
[アミノ樹脂の合成]
(1)ベンゾグアナミン樹脂の合成
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコ反応容器に、ベンゾグアナミン187重量部、パラホルムアルデヒド(濃度80重量%)281重量部、メチルアルコール320重量部を仕込み、水酸化ナトリウム溶液(濃度25重量%)0.7重量部を添加した後に、60℃で一時間加熱した。
その後、反応系溶液がpH3.5になるまで硝酸溶液(濃度60重量%)を添加し、引き続き二時間反応させた。反応終了後、水酸化ナトリウム溶液(濃度25重量%)で中和し、70℃以下の温度で未反応のメチルアルコール、パラホルムアルデヒド、及び水を減圧濾過により除去した。
減圧濾過を行った後、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを加えて数平均分子量が285、トリアジン核一個あたりの残存イミノ基数が2個である固形分70重量%のベンゾグアナミン樹脂(B1)の溶液を得た。
【0045】
また、上記と同様の処方において、溶剤に用いたアルコールの量を変えるとともに、反応温度、反応時間を適宜調整して、ベンゾグアナミン樹脂(B2〜B7)の溶液を得た。
【0046】
(2)ベンゾグアナミン/メラミンの共縮合樹脂の合成
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコ反応容器に、ベンゾグアナミン150重量部、メラミン50重量部、パラホルムアルデヒド(濃度80重量%)300部、メチルアルコール350重量部を仕込み、水酸化ナトリウム溶液(濃度25重量%)1.0部を添加した後に、60℃で三時間加熱した。
その後、反応系溶液のpH3.5になるまで硝酸溶液(濃度60重量%)を添加し、引き続き四時間反応させた。反応終了後、水酸化ナトリウム溶液(濃度25重量%)で中和し、70℃以下の温度で未反応のメチルアルコール、パラホルムアルデヒド、及び水を減圧濾過により除去した。
減圧濾過を行った後、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルを加えて数平均分子量が580、トリアジン核一個あたりの残存イミノ基数が1.7個である固形分71%のベンゾグアナミン/メラミンの共縮合樹脂(B8)の溶液を得た。
【0047】
以上のようにして得られたアミノ樹脂(B1〜B8)の数平均分子量、トリアジン核一個あたりの残存イミノ基数を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
[ポリエステル樹脂の合成]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコ反応容器に、テレフタル酸166重量部、アジピン酸146重量部、ネオペンチルグリコール110重量部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール125重量部を仕込み、撹拌しながら160℃まで加熱して内容物を溶解させた。
その後、縮合水を系外に溜出しながら二時間かけて昇温させた後に、同じ温度で二時間反応させてから、分留管にキシレンを満たして反応系にキシレンを加え、キシレン還流下でさらに縮合反応を進めた。そして、反応物の酸価が10に達した時点で冷却を行い、冷却後にソルベッソ#100(商品名)/ブチルセロソルブ=1/1の混合溶剤300重量部を加えて透明粘調状のポリエステル樹脂(C1)の溶液を得た(固形分70.1重量%)。得られたポリエステル樹脂の酸価は4.8、水酸基価は200、数平均分子量は1000、ガラス転移点Tgは5℃であった。
【0050】
また、上記と同様の処方において、反応時間、反応停止時の酸価を適宜調整して、ポリエステル樹脂(C2〜C5)の溶液を得た。
【0051】
以上のようにして得られたポリエステル樹脂(C1〜C5)の数平均分子量、ガラス転移点Tg、水酸基価を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[添加ワックス]
塗料に添加するワックスとして、液状のシリコン系ワックス、融点60℃以下のワックス、融点が60℃を超えるワックスを表4に示す比率で配合(配合1〜6)したものを用意した。
なお、表4中の配合量は、塗料用樹脂100重量%に対する各成分の重量%である。
【0054】
【表4】

【0055】
[塗料の調製]
水性アクリル樹脂(A1〜A10)、アミノ樹脂(B1〜B8)、ポリエステル樹脂(C1〜C5)を適宜組み合わせて混合溶解した。
次いで、混合した塗料用樹脂100重量%に対して酸触媒0.2重量%(例えば、p−トルエンスルホン酸など)を添加するとともに、配合1〜6のワックスを適宜組み合わせて、ブチルセロソルブと水で希釈して有機溶剤含有量が20重量%以下で、固形分が45重量%となるように調製した。
【0056】
[塗装サンプル缶の作成]
一方が開口している有底円筒状金属素地缶(容量200mlのキャップ付きボトル缶用)に印刷試験器を用いてインキを転写させた後に、インキが未乾燥の状態のまま、上記のようにして調製された各種の塗料をロールコーターにより外面塗装し、200℃で一分間の焼付を行って塗装サンプル缶を作成した。上記の塗料の塗布量は、対象とする缶1個あたり120mg(乾燥塗膜重量)とした。
また、容量350mlのアルミDI缶用の有底円筒状金属素地缶に対しても、上記と同様にして印刷、外面塗装、及び焼き付けを行うとともに、内面塗料をスプレー塗装して、200℃で一分間の焼付を行って塗装サンプル缶を作成した。上記の塗料の塗布量は、対象とする缶1個あたり130mg(乾燥塗膜重量)とした。
【0057】
[実施例1〜7、比較例1〜8]
上記の塗装サンプル缶を作成するにあたり、添加するワックスを配合3に固定し、アクリル樹脂(A1,A2,A5,又はA7)、アミノ樹脂(B2,B3,B4,又はB5)、ポリエステル樹脂(C2,C3,又はC4)の配合割合を表5に示すように調整した。
なお、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂のそれぞれの配合割合は、これらの塗料用樹脂の合計100重量%中の含有率を重量%で示した。
【0058】
【表5】

【0059】
[実施例8〜13、比較例9〜12]
上記の塗装サンプル缶を作成するにあたり、表6に示すように、塗料用樹脂中のアミノ樹脂をB3、ポリエステル樹脂をC3に、添加するワックスを配合2にそれぞれ固定するとともに、特性を変化させたアクリル樹脂A1〜A10から一のアクリル樹脂を選択して塗料を調製した。
なお、アクリル樹脂(A1〜A10)、アミノ樹脂(B3)、ポリエステル樹脂(C3)の配合比率は、アクリル樹脂(A1〜A10)/アミノ樹脂(B3)/ポリエステル樹脂(C3)=45/45/10(重量%)とした。
【0060】
【表6】

【0061】
[実施例14〜18、比較例13〜15]
上記の塗装サンプル缶を作成するにあたり、表7に示すように、塗料樹脂中のアクリル樹脂をA2、ポリエステル樹脂をC4に、添加するワックスを配合3にそれぞれ固定するとともに、特性を変化させたアミノ樹脂B1〜B8から一のアミノ樹脂を選択して塗料を調製した。
なお、アクリル樹脂(A2)、アミノ樹脂(B1〜B8)、ポリエステル樹脂(C4)の配合比率は、アクリル樹脂(A2)/アミノ樹脂(B1〜B8)/ポリエステル樹脂(C4)=40/50/10(重量%)とした。
【0062】
【表7】

【0063】
[実施例19〜21、比較例16〜17]
上記の塗装サンプル缶を作成するにあたり、表8に示すように、塗料樹脂中のアクリル樹脂をA5、アミノ樹脂をB8に、添加するワックスを配合1にそれぞれ固定するとともに、特性を変化させたポリエステル樹脂C1〜C5から一のポリエステル樹脂を選択して塗料を調製した。
なお、アクリル樹脂(A5)、アミノ樹脂(B8)、ポリエステル樹脂(C1〜C5)の配合比率は、アクリル樹脂(A5)/アミノ樹脂(B8)/ポリエステル樹脂(C1〜C5)=50/40/10(重量%)とした。
【0064】
【表8】

【0065】
[実施例22〜25、比較例18〜19]
上記の塗装サンプル缶を作成するにあたり、表9に示すように、塗料樹脂中のアクリル樹脂をA5、アミノ樹脂をB4、ポリエステル樹脂をC3に、それぞれ固定するとともに、添加するワックスを配合1〜6から選択して塗料を調製し、ワックスの配合を変化させた。
なお、アクリル樹脂(A5)、アミノ樹脂(B4)、ポリエステル樹脂(C3)の配合比率は、アクリル樹脂(A5)/アミノ樹脂(B4)/ポリエステル樹脂(C3)=40/45/15(重量%)とした。
【0066】
【表9】

【0067】
これらの実施例1〜25、比較例1〜19のそれぞれについて、以下の評価項目1〜7について評価試験を行った。表5〜9に、評価結果を併せて示す。
なお、各評価項目における評価試験は、基本的にJIS規格「塗料一般試験方法:K5400、K5600の項」に記載されている内容に準じて行った。また、表5〜9には、各評価項目に示す評点(○、×、△)を記載するが(評価項目2を除く)、評点が二つ記載されているものは、両評点の中間の状態であったことを示している。また、評価項目6以外は、キャップ付きボトル缶用、アルミDI缶用の両方の塗装サンプル缶についての結果である。
【0068】
評価項目1.塗料の製造性及び安定性
塗料化するに際して、製造性の観点より、樹脂の相溶性、及び塗料の初期粘度の設定について観察した。さらに、塗料として高温保管(37℃)を行った際の経時安定性を調査した。
○:製造面でも、経時安定性の面でも特に問題なし
△:製造面、又は経時安定性の面において若干の難が認められた
×:特に、相溶性や、塗料の初期粘度の設定において難が認められた
【0069】
評価項目2.塗膜の硬化性
JIS規格「鉛筆引っ掻き試験」に準じ、塗装サンプル缶の外面塗膜の硬化性を評価した。
【0070】
評価項目3.耐熱水性
塗装サンプル缶にイオン交換水を充填して熱処理(125℃で30分処理)を行った後に、外面塗膜の状態を評価した。
○:塗膜の白化・浮きがないもの
△:塗膜の白化・浮きが僅かに発生したもの
×:塗膜の白化・浮きが著しいもの
【0071】
評価項目4.塗膜の付着性
JIS規格「付着性(クロスカット法)」に準じ、塗装サンプル缶の外面塗膜に碁盤目状の切れ込みを入れ、付着試験用テープによる塗膜剥離状態を観察した。
○:塗膜の剥離がないもの
△:塗膜のクロスカット部の線上で剥離が僅かに発生したもの
×:塗膜の剥離が面状で生じたもの
【0072】
評価項目5.塗膜の加工性(エリクセン試験)
JIS規格「エリクセン試験」に準じ、塗装サンプル缶の下地の金属板が割れ始める直前までの押出し加工を行い、その際の塗膜の状態を観察した。
○:外面塗膜の擦れ・割れがないもの
△:外面塗膜の擦れ・割れが僅かに発生したもの
×:外面塗膜の擦れ・割れが著しいもの
【0073】
評価項目6.塗膜の加工性(ねじ加工性)
キャップ付きボトル缶用の塗装サンプル缶に対し、口部の縮径率を40%とするとともに、キャップ付きボトル缶としてのネジ加工を行い、ネジ加工が施された口部の外面塗膜の状態を観察した。
○:外面塗膜の擦れ・割れがないもの
△:外面塗膜の擦れ・割れが僅かに発生したもの
×:外面塗膜の擦れ・割れが著しいもの
【0074】
評価項目7.塗膜の耐衝撃性
JIS規格「デュポン式」に準じ、1/2インチの撃芯を塗装サンプル缶に接触させた後、500gの錘を下地の金属板が割れない高さより落下させて、その際の塗膜の状態を観察した。
○:外面塗膜の割れがないもの
△:外面塗膜の割れが僅かに発生したもの
×:外面塗膜の割れが著しいもの
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、例えば、ねじ加工が施されるキャップ付きボトル缶に代表されるリシール缶の口部のように、過酷な加工が施される部分に外面塗装を行う際の外面塗膜を形成するのに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、及び低融点系ワックス(D)を少なくとも含有し、
前記塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%中に、前記アクリル樹脂(A)が30〜55重量%、前記アミノ樹脂(B)が35〜55重量%、前記ポリエステル樹脂(C)が5〜20重量%含有されるとともに、
前記塗料用樹脂(A)〜(C)の合計100重量%に対し、前記低融点系ワックスが0.2〜3.0重量%含有される
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(A)が、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを10〜40重量%含有するアクリル系モノマーを共重合させてなり、数平均分子量が5000〜20000、ガラス転移点が−15〜50℃である請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アミノ樹脂(B)が、ベンゾグアナミン樹脂及び/又はベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合樹脂であり、トリアジン核一個あたり0.5〜2.0個のイミノ基を有し、数平均分子量が350〜2000である請求項1〜2のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(C)の数平均分子量が1500〜8000、ガラス転移点が 10〜60℃、水酸基価が20〜150mgKOH/gである請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記低融点系ワックス(D)の融点が60℃以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記低融点系ワックス(D)が、天然系ワックス及び/又は合成ワックスである請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料組成物により、
被塗装物の外面に外面塗膜を形成したことを特徴とする塗装物。
【請求項8】
前記被塗装物が金属素地缶であり、開口部の端までにも印刷層を設け、前記印刷層の上に前記外面塗膜を形成した請求項7に記載の塗装物。

【公開番号】特開2006−306939(P2006−306939A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128449(P2005−128449)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】