説明

水性塗料組成物、有機無機複合塗膜及び金属アルコキシド縮合物分散体及びその製造方法

【課題】 電気的特性や光学的特性、機械的特性などを有する機能性塗膜を与えることができ、かつ保存安定性が良好である、水を主たる媒体とする金属アルコキシド縮合物分散体及びその製造方法、これを用いる水性塗料組成物、並びに該水性塗料組成物を用いて得られる有機無機複合塗膜を提供すること。
【解決手段】 カチオン性樹脂(X)の水性分散体、又はノニオン性樹脂(Y)の水溶液若しくは水性分散体と、シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物とアミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物とを必須成分として縮合して得られる縮合物(I)と、酸(II)と、を含有することを特徴とする水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の金属アルコキシド縮合物を用いる水性塗料組成物、有機無機複合塗膜及び金属アルコキシド縮合物分散体に関する。より詳細には、光学フィルム用コーティング剤や、UV遮蔽用コーティング剤、屋外用コーティング剤等の製品分野へと適用可能である金属アルコキシド縮合物分散体、その製造方法、これを用いる水性塗料組成物及び有機無機複合塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、セラミック、金属、プラスチックなどの基材表面に、種々の目的で無機皮膜を形成させることが行われている。基材表面に無機皮膜を形成させることで基材に電気的特性、光学的特性、機械的特性を付与することが可能となる。このような例として、基材フィルム上に屈折率の異なる材料の薄膜を形成した反射防止フィルム、導電性の高い薄膜を形成した帯電防止フィルム、高誘電率薄膜を用いたトランジスタ絶縁膜等が知られている。この中でも、チタン酸化物は高屈折率や紫外線遮蔽などの機能があり、またジルコニア酸化物は屈折率が高いことから、それぞれ光学的特性を持たせた膜にしばしば用いられている。
【0003】
このような無機皮膜を形成させる方法として、金属アルコキシドを出発物質とするゾルゲル法が知られている。例えば、高屈折率塗膜層がチタンアルコキシドから調製した酸化チタンゾル等と有機ケイ素化合物とから成る反射防止フィルム(例えば、特許文献1参照。)や、高屈折率塗膜層がチタンアルコキシド等の有機金属化合物とアクリル系化合物とから成る反射防止フィルム(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0004】
しかし、これらの金属アルコキシドは水に対する反応性が高く、水系の溶媒に分散させることが困難であるため、一般にコーティング用途に用いるためには有機溶媒を用いなければならない。その結果、環境への有機溶媒の飛散といった点で課題が存在した。これらの背景から、環境への悪影響の少ない、基材に電気的特性や光学的特性、機械的特性を付与することが可能となる金属アルコキシドの水系コーティング剤が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−222504号公報
【特許文献2】特開2001−31871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、電気的特性や光学的特性、機械的特性などを有する機能性塗膜を与えることができ、かつ保存安定性が良好である、水を主たる媒体とする金属アルコキシド縮合物分散体及びその製造方法、これを用いる水性塗料組成物、並びに該水性塗料組成物を用いて得られる有機無機複合塗膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、シラン以外の金属アルコキシド及び/又はその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物及び/又はその部分縮合物とを用いて縮合反応を行うことで、水を主たる媒体とする保存安定性に優れる金属アルコキシド縮合物分散体、及びこれを用いる水性塗料組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、シラン以外の金属アルコキシド化合物(A)及び/又はその部分縮合物とアミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物とを縮合して得られる縮合物(I)を含有することを特徴とするpHが6.5以下の金属アルコキシド縮合物分散体(Z)、及びその製造方法を提供するものである。
【0009】
更に本発明は、カチオン性樹脂(X)の水性分散体、又はノニオン性樹脂(Y)の水溶液若しくは水性分散体と、シラン以外の金属アルコキシド化合物(A)及び/又はその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物とを縮合して得られる縮合物(I)と、酸(II)とを含有することを特徴とする水性塗料組成物、及びこれを用いて得られる有機無機複合塗膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性に優れた金属アルコキシド縮合物分散体を提供することができる。該金属アルコキシド縮合物分散体を含む水性塗料組成物は、電気的特性や光学的特性、機械的特性などを有する、水を主たる媒体とする機能性コーティング剤に好適に用いることができる。更に、該金属アルコキシド縮合物分散体と水性のカチオン性樹脂やノニオン性樹脂とを組み合わせて用いることにより、保存安定性に優れた水性塗料組成物が得られ、該組成物をコーティングすることにより、金属アルコキシド縮合物の連続相中にカチオン性樹脂やノニオン性樹脂が微粒子となって均一に分散あるいは数ナノレベルで複合化した有機無機複合塗膜を得ることができ、任意形状の基材表面の屈折率の調整や、紫外線遮蔽効果、高い比誘電率等を付与することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の水性塗料組成物、有機無機複合塗膜、金属アルコキシド縮合物分散体及びその製造方法を詳細に説明する。本発明において、水を主たる媒体とする金属アルコキシド縮合物分散体とは、金属アルコキシドの加水分解縮合反応終了後に、該反応によって生成するアルコールや、該縮合反応時に用いた有機溶媒を蒸留等の工程を経ることによって全部又はその一部を除去することが可能であり、水を分散媒として用いることができる分散体であって、かつ、保存安定性の向上を目的として、新たに有機溶媒を添加する必要がないものであることを示す。従って、その応用段階において、例えば、造膜助剤としての有機溶媒を添加し混合したものであってもよく、更にカチオン性樹脂やノニオン性樹脂の媒体として有機溶媒が含まれているものを用いて混合して得られる水性塗料組成物であっても良い。
【0012】
〔シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/またはその部分縮合物〕
本発明で用いるシラン以外の金属アルコキシド(A)は特に限定されるものではないが、下記一般式(1)
M(OR (1)
(式中、MはTi、Zr又はAlであり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、aは金属Mの酸化数である。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0013】
このような金属アルコキシド(A)としては、例えば、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトラ−iso−プロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、チタニウムテトラ−sec−ブトキシド、チタニウムテトラ−tert−ブトキシドなどのチタニウムテトラアルコキシド類;ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−iso−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシドなどのジルコニウムテトラアルコキシド類;アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリ−iso−プロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシドなどのアルミニウムトリアルコキシド類が挙げられる。これらの金属アルコキシド類は、単独もしくは二種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの金属アルコキシドの単独部分縮合物あるいは共部分縮合物を本発明に用いることもできる。これらの中でも、チタニウムアルコキシドが好ましく、チタニウムテトラ−iso−プロポキシドまたはチタニウムテトラ−n−ブトキシドがさらに好ましい。
【0014】
これらの金属アルコキシド化合物(A)は、その部分縮合物を用いることも可能である。部分縮合物としては、後述するアミノ基を有するシラン化合物(B)との反応性に優れ、かつ得られる金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の保存安定性に優れる点、並びに工業的な入手容易性と、取り扱い上容易である点から、縮合度として2〜15の範囲であることが好ましく、また、縮合度の異なるものが複数存在している分布品であっても良い。そのような化合物としては、例えば、日本曹達株式会社のチタニウムテトラ−n−ブトキシド縮合物製品「B−2」(平均縮合度2)や、「B−4」(平均縮合度4)、「B−7」(平均縮合度7)、「B−10」(平均縮合度10)等が挙げられる。
【0015】
〔アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/またはその部分縮合物〕
本発明で用いるアミノ基を有するシラン化合物(B)としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(2)
SiR3−b (2)
(式中、bは0〜2の整数であり、Rはアミノ基を有する一価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基、クロル基、又はヒドロキシ基であって、複数個含まれる場合のR、Rは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(2)中の有機基Rとしては、例えば、3−アミノプロピル基、アミノエチル基、p−アミノフェニル基、m−アミノフェニル基、o−アミノフェニル基、3−フェニルアミノプロピル基、3−メチルアミノプロピル基、3−エチルアミノプロピル基、3−ジメチルアミノプロピル基、3−ジエチルアミノプロピル基などが挙げられる。
【0017】
このような化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジエチルメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルメトキシエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルメチルメトキシシラン等の3−アミノプロピルアルコキシシラン類、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン等の3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルアルコキシシラン類、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルエチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルエチルジエトキシシラン等のアミノフェニルアルコキシシラン類、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルエチルジメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルエチルジエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン等の3−(フェニルアミノ)プロピルアルコキシシラン類などが挙げられ、単独または二種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのシラン類の単独部分縮合物あるいは共部分縮合物を本発明に用いることもできる。
【0018】
このようなシラン化合物(B)の中でも、得られる金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の保存安定性に優れる点から、3−アミノプロピルアルコキシシランや3−(2−アミノエチル)アミノプロピルアルコキシシラン、及び/又はそれらの部分縮合物を用いることが好ましい。また、入手の容易さという観点から、3−アミノプロピルアルコキシシラン及び/又はその部分縮合物を用いることがより好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン及び/又はその部分縮合物を用いることがさらに好ましい。ここでいう部分縮合物とは、前述と同意である。
【0019】
〔シラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物〕
また、本発明においては、前述のシラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物の水中における縮合反応速度を制御したり、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)を含む塗料組成物から形成される塗膜の耐水性を向上させたりするために、前記アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物以外のシラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物を併用することが好ましい。
【0020】
前記シラン化合物(C)として特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(3)
SiR4−c
(式中、cは0〜3の整数であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基又はクロル基であって、複数個含まれるR、Rはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物が挙げられる。
【0021】
前記シラン化合物(C)としては、例示するならば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルアルコキシシラン類、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシラン等のトリアルキルアルコキシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン類、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン類が挙げられる。これらのシラン類は、単独もしくは二種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのシラン類の単独部分縮合物あるいは共部分縮合物を本発明に用いることもできる。ここでいう部分縮合物とは、前述と同意である。
【0022】
これらの中でも、反応性が良好であるという観点から、テトラアルコキシシラン類及びアルキルアルコキシシラン類が好ましく、その中でも入手が容易であるという観点からテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0023】
〔縮合物(I)〕
本発明において、金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、必要に応じてアミノ基を有するシラン化合物(B)以外のシラン化合物(C)及び/またはその部分縮合物を縮合させることにより縮合物(I)が得られる。ここで、金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量を(A1)、シラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量を(B1)、シラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量を(C1)とすると、完全縮合後の縮合物(I)の質量(I1)は、(A1+B1+C1)で表すことができる。
【0024】
前記縮合物(I)の完全縮合後の質量(I1)中における、前記シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量(A1)は、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲であることがより好ましく、10〜35質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0025】
また、縮合物(I)の完全縮合後の質量(I1)中における、前記アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量(B1)は、10〜70質量%の範囲であることが好ましく、15〜60質量%の範囲であることがより好ましく、20〜50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0026】
ここで、金属アルコキシド(A)の完全縮合後の質量(A1)は、(A1)=(化合物(A)の仕込み量)/(縮合反応前の化合物(A)の式量)×(完全縮合反応後の化合物(A)の式量)で計算することができ、同じく、アミノ基を有するシラン化合物(B)の完全縮合後の質量(B1)は、(B1)=(化合物(B)の仕込み量)/(縮合反応前の化合物(B)の式量)×(完全縮合反応後の化合物(B)の式量)で、シラン化合物(C)の完全縮合後の質量(C1)は、(C1)=(化合物(C)の仕込み量)/(縮合反応前の化合物(C)の式量)×(完全縮合反応後の化合物(C)の式量)で計算することができる。
【0027】
〔酸(II)〕
本発明で用いる酸(II)は、前記縮合物(I)中に含まれるアミノ基を中和することによってカチオン化させ、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の安定性を高めるために用いるものである。
【0028】
酸(II)としては、特に限定されるものではなく、各種の酸を用いることができる。例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸、リン酸、硝酸といった各種無機酸や、ギ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸といった各種有機酸が挙げられる。また、これらの酸は単独、もしくは2種以上を併用してもよい。これらの中でも、目的とするpHの範囲への調整が容易であり、得られる金属アルコキシド縮合物分散体の保存安定性が良好である点から、pKaが5以下であり、25℃の水に対して2質量%以上溶解する酸が好ましく、この中でも入手のしやすさという観点から、塩酸、酢酸、マレイン酸を用いることが最も好ましい。また、酸(II)の価数が2以上である場合、ここでのpKaはpKを示すものとする。
【0029】
前記酸(II)の添加量としては、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)のpHが6.5以下になるように添加することが必須であり、pHが5.5以下になるように添加することがより好ましい。pHがこれらの値になるように酸(II)を加えることによって、前述のように縮合物(I)中のアミノ基が中和されて得られる金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の安定性が高くなる。
【0030】
〔水(III)〕
本発明における水(III)は、縮合物(I)を分散化させる溶媒として働くものであり、特に限定されるものではないが、イオン性の不純物が含まれていないことが好ましい。金属アルコキシド縮合物分散体(Z)中の水(III)の含有率としては、通常40〜98質量%の範囲であり、50〜95質量%の範囲であることがより好ましい。
【0031】
〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z)〕
本発明の金属アルコキシド縮合物分散体(Z)は、前述のようにシラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、必要により前記アミノ基を有するシラン化合物(B)以外のシラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物を縮合して得られる縮合物(I)と、酸(II)と、水(III)とを含有し、pHが6.5以下であることを特徴とする。金属アルコキシド縮合物分散体(Z)中の縮合物(I)の含有量としては、安定性が良好であるという点から、1〜30質量%の間に調整することが好ましく、3〜20質量%の間に調整することがより好ましい。
【0032】
〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の製造法〕
本発明における金属アルコキシド縮合物分散体(Z)は前記縮合物(I)と酸(II)、水(III)とを含有することを特徴とする。このような縮合物分散体(Z)は、各種の方法で得ることができる。金属アルコキシド化合物(A)及び/又はその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、有機溶媒との混合溶液中に、初期添加水を加えて加水分解縮合させた後、酸(II)と、水を加えて分散体(Z)を合成する方法が好ましい。
【0033】
また、シラン化合物(C)を併用する場合、以下の方法が好ましい方法として挙げられる。第一に、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/またはその部分縮合物と、シラン化合物(C)及び/またはその部分縮合物と、酸(II)と、有機溶媒との混合溶液中に、初期添加水と金属アルコキシド(A)及び/またはその部分縮合物とを、それぞれ同時に該溶液中に滴下させて加水分解縮合させた後、水を加えて分散体(Z)を合成する方法がある。第二に、金属アルコキシド(A)及び/またはその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/またはその部分縮合物と、シラン化合物(C)及び/またはその部分縮合物と、有機溶媒との混合溶液中に、初期添加水を加えて加水分解縮合させた後、酸(II)と、水を加えて分散体(Z)を合成する方法がある。
【0034】
ここで初期添加水とは、金属アルコキシド(A)及び/またはその部分縮合物と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/またはその部分縮合物と、シラン化合物(C)及び/またはその部分縮合物の加水分解反応に用いられる水であって、金属アルコキシド(A)中の金属原子、シラン化合物(B)中のケイ素原子、及びシラン化合物(C)中のケイ素原子の合計モル数に対して、0.1〜5モル用いることが好ましく、0.2〜4モル用いることがより好ましい。
【0035】
加水分解縮合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、ベンゼン、ケロシン、トルエン、キシレン等の炭化水素類や、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、エチルエーテル、ブチルエーテル、2−α−メトキシエタノール、2−α−エトキシエタノール、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類の溶媒が挙げられる。この中では、入手のし易さや、反応のコントロールの容易さという観点から、アルコール類が好ましく、特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール等を用いるのがより好ましい。
【0036】
前記加水分解縮合の反応条件としては、特に限定されるものではなく、0℃〜150℃の温度で、数分〜数日間反応させることにより加水分解縮合させることができる。この中でも反応の制御が容易であることから、50℃〜90℃にて30分〜10時間程度反応させることがより好ましい。
【0037】
本発明において縮合物(I)を合成する際にアルコールが副生するが、このアルコールは蒸留によって除くことができる。蒸留の方法としては、各種の方法を用いることが可能であり、常圧条件または減圧条件で好適にアルコールを除くことができる。アルコールを蒸留によって除く場合、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)の安定性を保つという観点から、縮合物(I)に酸(II)、水(III)を加えた後にアルコールを除く方法が好ましい。また、前記縮合物(I)を合成する際に前記の各種の溶媒を加えた場合も、同様の方法で除くことができる。溶媒除去の容易性の観点から、その沸点が100℃未満の有機溶媒を用いること、又は、水と共沸可能な有機溶媒を用いることが好ましい。
【0038】
〔水性塗料組成物〕
本発明の金属アルコキシド縮合物分散体(Z)は単独でコーティング剤として用いることが可能である。金属アルコキシド縮合物分散体(Z)を塗布、乾燥することにより、縮合物(I)のシラノール基同士の架橋反応が進行し、縮合物(I)からなる塗膜を形成する。
【0039】
また、本発明の水性塗料組成物は、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)と、カチオン性樹脂(X)の水性分散体またはノニオン性樹脂(Y)の水溶液及び/または水性分散体を含有してなるものである。これらのカチオン性樹脂(X)及びノニオン性樹脂(Y)は各々単独、もしくは2種以上混合して使用しても良い。
【0040】
〔カチオン性樹脂(X)〕
本発明で用いるカチオン性樹脂(X)とは、カチオン性の官能基を有する有機化合物であって、水性媒体中で安定に分散した水性分散体を形成するものである。
【0041】
前記カチオン性樹脂(X)は水性媒体中で分散するものであり、その分散した樹脂粒子の平均粒子径としては、得られる複合塗膜の耐磨耗性と透明性を兼備する点から、0.005μm〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.4μmである。
【0042】
前記カチオン性の官能基としては、例えば、第一級から第三級のアミノ基や、ホスフィノ基の塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、プロピオン酸、酪酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の酸との反応物、四級アンモニウム基、四級ホスホニウム基などが挙げられる。
【0043】
前記カチオン性の官能基の含有量としては、カチオン性樹脂(X)が水性媒体中で溶解することがなく、安定な分散体を形成できる範囲であれば、特に限定されるものではないが、通常、該カチオン性樹脂(X)固形分中に、カチオン当量として0.01〜1当量/kg含有していれば水性分散体とすることができ、特にカチオン性樹脂(X)の水性媒体中への分散性と得られる塗膜の耐水性とのバランスに優れる点から、0.02〜0.8当量/kg含有していることが好ましく、0.03〜0.6当量/kg含有していることが特に好ましい。
【0044】
カチオン性樹脂(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値で求められる数平均分子量(Mn)としては、カチオン性樹脂(X)が水性媒体中で溶解せずに安定な分散体を形成できる範囲であれば特に限定されるものではなく、通常1,000〜5,000,000の範囲であり、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲である。
【0045】
カチオン性樹脂(X)の種類としては特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂といったポリビニル系のポリマーや、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の各種のポリマーを使用することができる。
【0046】
これらの中でも、製造の容易さ、金属アルコキシド縮合物分散体(Z)との親和性の良さという観点から、ウレタン樹脂やアクリル樹脂を用いることがより好適である。これらをそれぞれ、カチオン性ウレタン樹脂(X−1)、カチオン性アクリル樹脂(X−2)と以下、呼称する。
【0047】
カチオン性ウレタン樹脂(X−1)は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び必要に応じて併用される鎖伸長剤からなる、カチオン性の官能基を有するウレタン樹脂である。
【0048】
カチオン性ウレタン樹脂(X−1)の原料として用いることができるポリイソシアネートとしては、有機ポリイソシアネートとして、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネート等の各種のものを例示できる。
【0049】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えたダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
環状脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体から得られるポリイソシアネートの具体例としては、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
カチオン性ウレタン樹脂(X−1)の原料として用いることができるポリオールとしては、一分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する各種化合物を挙げることができ、得られる有機無機複合塗膜の可とう性に優れる点から、高分子ポリオールを使用するのが好ましい。高分子ポリオールとしては、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化イソブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の飽和もしくは不飽和の各種の低分子グリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などを脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリクロロプレンジオール、ポリブタジエングリコールの水素化物、ポリイソプレングリコールの水素化物等のポリオレフィンジオール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られたグリコール類、2つ以上のヒドロキシ基およびメルカプト基等の連鎖移動基を1つ有する連鎖移動剤の存在下にアルキル(メタ)アクリレート等の各種のラジカル重合性不飽和単量体を重合させて得られるアクリルポリマー等のマクロモノマー、ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルアルコキシシラン類、ヒマシ油ポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオール等が挙げられる。
【0054】
前述のポリイソシアネートとポリオールとを用いて、本発明で用いることができるカチオン性ウレタン樹脂(X−1)の水性分散体を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、カチオン性の官能基を該ウレタン樹脂(X−1)の主鎖に導入する方法としては、例えば、特開2002−307811号公報に記載のように、前記ポリイソシアネートと前記ポリオールと、分子中に三級アミノ基を有する鎖伸長剤を用いてウレタン樹脂を合成し、該樹脂中の三級アミノ基を酸で中和もしくは四級塩化した後に水性媒体中に分散させる方法や、特開2006−45509号公報に記載のように、側鎖に四級塩化したアミノ基を有するジオールと前記ポリオール、前記ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を合成し、水性媒体中に分散させる方法などがある。
【0055】
上記のアミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
また、前記の四級化する際に使用することができる四級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などを使用することができ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明で用いるカチオン性ウレタン樹脂(X−1)は、樹脂の分散安定性を阻害しない範囲で、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基といった反応性官能基を有していても良い。また、カチオン性ウレタン樹脂(X−1)の分散安定性を高めるために、ノニオン性の親水性基、例えば、ポリエチレンオキサイド鎖や、ポリアミド鎖などを分子中に有していても良い。更に、安定な水性分散体とするために、乳化剤を併用したものであっても良い。
【0058】
本発明で用いることができるカチオン性アクリル樹脂(X−2)は、カチオン性の官能基を含有する水分散型のアクリル樹脂である。このようなカチオン性アクリル樹脂(X−2)の水性分散体の製造方法としては、各種の方法を用いることができるが、例を挙げるならば、有機溶媒中で、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体とカチオン性基を有さないエチレン性不飽和単量体との混合物と、ラジカル重合開始剤を滴下しながら加熱重合させた後、有機溶媒を除去して、カチオン性基を前記酸類で中和して水性媒体中に分散する方法が挙げられる。このとき、水性分散体の安定性を向上させるために乳化剤を併用しても良い。
【0059】
更に、カチオン性アクリル樹脂(X−2)の水性分散体の合成法として、水性媒体中で、アミノ基を有する(メタ)アクリレートとアミノ基を有さない(メタ)アクリレートとの混合物と、ラジカル重合開始剤を滴下しながら加熱重合させる乳化重合法も挙げられる。
【0060】
有機溶媒中でのラジカル重合において用いることができる有機溶媒として、特に限定されるものではない。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族系または脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート、等が挙げられる。これらの有機溶剤はそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、β−(tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0062】
前記カチオン性基を有さないエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有アクリレート類;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基含有メタクリレート類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアミド化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル系化合物が挙げられる。
【0063】
また、前述の各種の(メタ)アクリル系単量体に加えて、種々の(メタ)アクリル系以外のビニル系単量体を併用することもできる。前記(メタ)アクリル系以外の単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸あるいはクロトン酸等の(メタ)アクリル酸以外のカルボキシ基含有モノマー;前記した(メタ)アクリル酸以外のカルボキシ基含有モノマーと各種の1価アルコール類とのエステル;クロトノニトリル、クロトン酸アミドあるいはそのN−置換誘導体等のクロトン酸の誘導体;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミルスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0064】
また、前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酢酸−t−ブチル、過硫酸塩等の過酸化物系の重合開始剤や、アゾビスイソブチロニトリルといったアゾ系の重合開始剤が挙げられる。
【0065】
〔ノニオン性樹脂(Y)〕
本発明で用いるノニオン性樹脂(Y)とは、ノニオン性の親水性官能基を有する有機化合物であって、水性媒体中に溶解あるいは分散するものである。ノニオン性の親水性官能基としては、エーテル基や、ヒドロキシ基、アミド基などが挙げられる。
【0066】
ノニオン性樹脂(Y)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値で求められる数平均分子量(Mn)としては、ノニオン性樹脂(Y)が水性媒体中で溶液あるいは安定な分散体を形成できる範囲であれば特に限定されるものではなく、通常1,000〜5,000,000の範囲であり、好ましくは、5,000〜1,000,000の範囲である。
【0067】
以下、水性媒体中に溶解するノニオン性樹脂(Y)を水溶性ノニオン性樹脂(Y−1)、水性媒体中に分散するノニオン性樹脂を水分散性ノニオン性樹脂(Y−2)と呼称する。
【0068】
水溶性ノニオン性樹脂(Y−1)の例としては、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド等のポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテルやポリエチルビニルエーテル等のポリビニルエーテル、ポリ(N−メチルアクリルアミド)やポリ(N−エチルアクリルアミド)等のポリ(N−アルキルアクリルアミド)などの親水性ポリマーが挙げられる。また、アクリル樹脂や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂等の各種の樹脂中に前記ノニオン性の親水性官能基を含有させ、水中に溶解させたものなどが挙げられる。
【0069】
前記水分散性ノニオン性樹脂(Y−2)の水性分散体の平均粒子径としては、得られる複合塗膜の耐磨耗性と透明性を兼備する点から、0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、0.01μm〜0.4μmであることがより好ましい。
【0070】
このようなノニオン性樹脂(Y−2)の例としては、例えば、アクリル樹脂や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂等の各種の樹脂中に前記ノニオン性の親水性官能基を含有させ、水中で安定に分散させたものなどが挙げられる。例えば、特開2004−331864号公報などに記載されているように、ポリビニルアルコール系重合体セグメント存在下でビニル単量体を乳化重合させることによって得られるブロック重合体水性分散体等が挙げられる。
【0071】
本発明の水性塗料組成物において、前記カチオン性樹脂(X)又はノニオン性樹脂(Y)は、得られる塗膜に柔軟性や可撓性を付与したり、基材との密着性を高めたりする等の目的で、前述の金属アルコキシド縮合物分散体(Z)と併用されるものであり、目的とする物性に応じてその配合量を選択できるものである。本発明で得られる塗膜が、縮合物(I)に由来する性能(高屈折率性等)を損なわないためには、得られる塗膜中における前記カチオン性樹脂(X)又はノニオン性樹脂(Y)の割合が、70質量%以下、好ましくは60質量%以下になるように用いることが好ましい。
【0072】
更に、前記縮合物(I)中の官能基と反応する官能基を二つ以上有する架橋剤(V)を、本発明の水性塗料組成物又は金属アルコキシド縮合物分散体(Z)に配合することができる。これによって、架橋剤(V)が縮合物(I)中の官能基と反応して塗膜の耐水性が向上する。
【0073】
前記縮合物(I)中の官能基と反応しうる官能基としては、グリシジル基、ウレイド基、アクリル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アルデヒド基などの官能基が挙げられる。その中でも塗液のポットライフや、硬化のしやすさという観点から、グリシジル基、アルコキシシリル基が好ましい。このような官能基を有する架橋剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシアルコキシシラン類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリセロールジグリシジルエステル等のジグリシジル類;グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類;その他ポリグリシジルエーテル類あるいはグリシジル基を官能基として有する重合体類等が挙げられる。
【0074】
これらの架橋剤の中で、好ましいものはエポキシアルコキシシラン類であり、その中でも入手が容易であることから3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランまたは、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランがさらに好ましい。これらのエポキシアルコキシシラン類を加える分量としては、前記縮合体(I)中のアミノ基に対して0.1〜10モル当量の範囲で加えるのが好ましく、0.5〜5モル当量の範囲で加えるのがより好ましい。
【0075】
また、本発明の水性塗料組成物又は金属アルコキシド縮合物分散体(Z)に、塗膜耐磨耗性などを向上させることを目的として、無機酸化物微粒子を配合することができる。
【0076】
このような無機酸化物微粒子として、シリカや、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの微粒子がある。このような酸化物微粒子の平均粒子径としては、塗膜の透明性及び塗液の安定性の観点から、5〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましい。なお、この様な無機酸化物微粒子は、それ単独では造膜能を有さず、本願発明の縮合物(I)とは全く異なるものである。
【0077】
また、本発明の水性塗料組成物は、クリアー塗料組成物として用いることもできるが、各種顔料分散体、染料などを混入して、着色塗料用組成物としても用いることができる。
【0078】
本発明の水性塗料組成物又は金属アルコキシド縮合物分散体(Z)には、本発明の効果を妨げない範囲で、様々な増粘剤、濡れ剤、チキソ剤、ワックス、レベリング剤などの添加剤、あるいはフィラー等を加えても良い。
【0079】
本発明の水性塗料組成物の不揮発分としては、特に制限はないが、通常1〜40質量%であり、好ましくは1〜30質量%である。
【0080】
本発明の水性塗料組成物の機材への塗工方法に関しては、特に限定されるものではないが、例を挙げるならば、エアースプレー法、フローコーター法、ロールコーター法などの各種の塗工方法で塗装することができる。
【0081】
本発明の水性塗料組成物の塗装基材の材質の例としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、ABS、ポリカーボネート、PMMA、PET、ポリスチレン等のプラスチック類、ガラス、木材、セメント等が挙げられる。また、塗装基材の形状の例としては、フィルム状、板状、粒状、繊維状の基材等が挙げられる。
【0082】
さらに、基材への密着性向上、基材の着色、基材の保護などを目的として、各種プライマー、シール剤、アンダーコート等を前記各種基材に塗装したのち、本発明の水性塗料組成物を塗装することもできる。
【0083】
本発明の水性塗料組成物の塗装塗膜の膜厚は特に制限されるものではないが、通常0.1μm〜50μmであり、好ましくは1μm〜20μmである。
【0084】
塗装後の乾燥温度としては特に限定されるものではないが、通常20℃〜250℃の間であり、60℃〜200℃の間で乾燥させることが好ましい。また、乾燥時間としては特に限定されるものではないが、通常数秒〜10日程度であり、1分〜5時間程度がより好ましい。
【0085】
〔有機無機複合塗膜〕
本発明の有機無機複合塗膜は、カチオン性樹脂(X)の水性分散体またはノニオン性樹脂(Y)の水溶液及び/または水性分散体と金属アルコキシド縮合物分散体(Z)を含有する水性組成物を塗布することによって得ることができる。ここで、カチオン性樹脂(X)の水性分散体または水分散性ノニオン性樹脂(Y−2)の水性分散体を使用した場合、縮合物(I)の連続相中にカチオン性樹脂やノニオン性樹脂が微粒子として均一に分散している有機無機複合塗膜を得ることができる。また、水溶性ノニオン性樹脂(Y−1)の水溶液を使用した場合、縮合物(I)とノニオン性樹脂が数ナノレベルで複合化している有機無機複合塗膜を得ることができる。
【0086】
金属アルコキシド縮合物分散体(Z)が乾燥過程で連続相を形成する際、これらのカチオン性樹脂(X)及びノニオン性樹脂(Y)がそれ自体凝集して粗大粒子にならないためこのような構造の有機無機複合塗膜を形成すると考えられる。
【0087】
このような有機無機の複合塗膜構造をとることにより、金属アルコキシド縮合物(I)成分由来の性能である高い電気的特性や光学的特性、機械的特性などを発現する塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0089】
実施例1 〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1)の合成〕
温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下で、メタノール 850.0部、メチルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6366」(以下MTMS)) 122.4部、マレイン酸41.8部を加えて均一に溶解させた後、アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6610」(以下APTMS)) 65.0部を加えて均一に溶解させた。その後、65℃に昇温させた後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 34.0部とイソプロピルアルコール(IPA) 150部の混合物と、テトラブトキシチタン部分縮合物(日本曹達株式会社製品「B−7」:平均縮合度7、TiO成分 33.5%(以下B−7)) 104.6部とIPA 598部との混合物をそれぞれ別々に一時間かけて滴下した。その後さらに4時間加熱還流させた。ここに、イオン交換水 984.1部を加えて、さらに65℃にて1時間加水分解縮合反応させた。反応終了後、反応溶液からアルコールを、組成物中30%以下になるように蒸留によってその大部分を除いた後、不揮発分が12.0%になるようにイオン交換水を加えて、金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1)を得た。
【0090】
実施例2 〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−2)の合成〕
実施例1と同様の反応容器に、窒素気流下で、IPA 343.1部、MTMS 50.1部、B−7 73.5部、マレイン酸0.7部を加えて均一に溶解させた後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 8.1部とIPA 24.5部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、70℃まで昇温させて5時間加熱還流させた。得られた反応溶液を25℃まで冷却し、さらにIPA 400.0部、MTMS 34.4部、APTMS 45.2部を加えて均一に溶解させた後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 5.5部とIPA 100.0部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、70℃に昇温させた後、反応溶液を攪拌しながら、さらに5時間加熱還流させた。ここに、マレイン酸 23.3部とメタノール93.0部の混合物を加えた後、イオン交換水 805.0部を加えて、さらに70℃にて1時間加水分解縮合反応させた。反応終了後、反応溶液からアルコールを組成物中30%以下になるように蒸留によってその大部分を除いた後、得られた溶液が不揮発分12.0%になるようにイオン交換水を加えて、金属アルコキシド縮合物分散体(Z−2)を得た。
【0091】
実施例3 〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−3)の合成〕
実施例1と同様の反応容器に、窒素気流下で、IPA 619.0部、B−7 73.5部、MTMS 84.5部、マレイン酸 0.75部、APTMS 45.2部を加えて均一に溶解した後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 13.6部とIPA 250部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、70℃まで昇温させて5時間加熱還流させた。ここに、酢酸 24.1部とメタノール93.0部の混合物を加えた後、イオン交換水 805.0部を加えて、さらに70℃にて1時間加水分解縮合反応させた。反応終了後、反応溶液からアルコールを組成物中30%以下になるように蒸留によってその大部分を除いた後、得られた溶液が不揮発分12.0%になるようにイオン交換水を加えて、金属アルコキシド縮合物分散体(Z−3)を得た。
【0092】
実施例4〜6、8、9及び比較例3〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−4)〜(Z−6)、(Z−8)〜(Z−9)及び比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−3)の合成〕
実施例3の場合と同様に、表1〜3に記載の配合で金属アルコキシド縮合物分散体(Z−4)〜(Z−6)、(Z−8)〜(Z−9)及び比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−3)を合成した。
【0093】
実施例7 〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−7)の合成〕
実施例1と同様の反応容器に、窒素気流下で、IPA 800.0部、テトラブトキシチタン(日本曹達株式会社製品「B−1」(以下B−1)) 100.0部、APTMS 210.6部を加えて均一に溶解した後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 21.2部とIPA 200部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、70℃まで昇温させて4時間加熱還流させた。ここに、マレイン酸 136.6部とメタノール546.4部の混合物を加えた後、イオン交換水 1490.0部を加えて、さらに70℃にて1時間加水分解縮合反応させた。反応終了後、反応溶液からアルコールを組成物中30%以下になるように蒸留によってその大部分を除いた後、得られた溶液が不揮発分15.0%になるようにイオン交換水を加えて、金属アルコキシド縮合物分散体(Z−7)を得た。
【0094】
比較例1 [比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−1)の合成]
実施例1と同様の反応容器に、窒素気流下で、IPA 139.7部及び、B−7 29.9部、MTMS 20.4部、マレイン酸 0.3部を加えて均一に攪拌した後、反応溶液を攪拌しながら、イオン交換水 3.3部とIPA 10部の混合物を一時間かけて滴下漏斗を用いて滴下した。その後、70℃まで昇温させて4時間加熱還流させた。ここにイオン交換水 83.6部を加えて攪拌したところ、比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−1)が得られた。比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−1)は白濁しており、室温で数日保管後に沈降がみられた。
【0095】
比較例2 [比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−2)の合成]
実施例1と同様の反応容器に、窒素気流下で、メタノール 250.0部、テトラメトキシシラン部分縮合物(コルコート株式会社製品「メチルシリケート51」(以下MS51)) 50.0部、マレイン酸 6.7部を加えて均一に溶解させた後、イオン交換水 7.6部を加えて攪拌し、さらにアミノプロピルトリメトキシシラン 10.5部を加えて室温で数分攪拌して均一に溶解した。その後、66℃まで昇温させて1時間加水分解縮合反応させた後、イオン交換水 225.0部を加えて、さらに1時間66℃にて加熱還流させた。反応終了後、反応溶液からメタノールを組成物中30%以下になるように蒸留によってその大部分を除いた後、得られた溶液が不揮発分15.0%になるようにイオン交換水を加えて、比較用縮合物分散体(Z’−2)を得た。
【0096】
〔金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1〜9)中のアルコール含有量測定方法〕
金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1〜9)中のアルコール含有量を、ジメチルスルホキシドを標準物質としたH−NMR(日本電子株式会社製品LA300)によって測定した。
【0097】
実施例1〜9で得た金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1〜9)及び比較例1〜3で得た比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−1〜3)の、完全縮合後の縮合物(I)中の、完全縮合後の金属アルコキシド化合物(A)と完全縮合後のシラン化合物(B)の含有量、完全縮合後の金属アルコキシド縮合物(I)の含有量、pHについて表1〜3にまとめた。
【0098】
以下、実施例1〜9で得た金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1〜9)及び比較例1〜3で得た比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−1〜3)中に含まれる完全縮合後の金属アルコキシド縮合物(I)をそれぞれ(I−1〜9)及び(I’−1〜3)と記載する。
【0099】
〔金属アルコキシド縮合物分散体の保存安定性試験〕
実施例1〜9及び比較例2〜3で合成した金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1)〜(Z−9)、及び比較用金属アルコキシド縮合物分散体(Z’−2〜3)をそれぞれ40℃の恒温槽にて静置保存し、経時の粘度を測定することによって保存安定性試験を行った。その結果を表1〜2の下部に示す。
【0100】
評価基準
◎:40℃にて一ヶ月保存後の粘度増加が30%以下。
○:40℃にて一ヶ月保存後の粘度増加が100%以下。
×:40℃にて一ヶ月保存後の粘度増加が100%より大きい。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表1〜2の脚注:
IPA:イソプロピルアルコール
B−1:テトラブトキシチタン(日本曹達株式会社製品「B−1」)
B−7:テトラブトキシチタン部分縮合物(日本曹達株式会社製品「B−7」:平均縮合度7、TiO成分 33.5質量%)
APTMS:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z‐6610」)
MTMS:メチルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z‐6366」)
TEOS:テトラエトキシシラン
MS51:テトラメトキシシラン部分縮合物(コルコート株式会社製品「メチルシリケート51」
ZA60:ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド(マツモト交商株式会社製品「ZA60」:成分濃度85質量%)
ASBD:アルミニウムトリ−sec−ブトキシド(川研ファインケミカル株式会社製品「ASBD」)
【0105】
合成例1 〔カチオン性ウレタン樹脂(X−1−1)の水性分散体の調製〕
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)590部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ−n−ブチルアミン378部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量)を得た。
【0106】
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコ内で、ニッポラン980R(日本ポリウレタン工業株式会社製ポリカーボネートポリオール、分子量2000)640部を、メチルエチルケトン390部に溶解した。次いで、イソホロンジイソシアネート133部とオクチル酸第一錫0.2部を加え、75℃で2時間反応させた後、前記3級アミノ基含有ポリオール122部を添加し4時間反応させた後、60℃に冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6011」) 22部を添加して、1時間反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にジメチル硫酸45部を加えて更に60℃で2時間反応させて4級化した後、イオン交換水2080部を滴下することにより水分散化を行い、更に引き続いて減圧下脱溶剤することにより、不揮発分35%で、pH6.5、粒子径0.05μm(大塚電子株式会社製粒径アナライザーFPAR−1000により測定。)、カチオン含有量が0.39当量/kgのカチオン性ポリウレタン樹脂(X−1−1)の水性分散体を得た。
【0107】
合成例2 〔カチオン性アクリル樹脂(X−2−1)の水性分散体の調製〕
攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管および不活性ガスの送入管と排出管とを備えた反応容器に、窒素を導入しながら、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド12部、n−ドデシルメルカプタン0.4部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド 1部、イオン交換水540部を入れ、攪拌しながら内温を80℃に上げ、同温で1時間維持して反応させることによって反応生成物を得た。次に、該反応生成物の存在する反応容器に、別の容器中で予め混合した単量体混合物(ブチルアクリレート220部、メチルメタクリレート180部)と、重合開始剤水溶液〔2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドの5%水溶液〕40部を、各々別の滴下漏斗から3時間かけて滴下し重合させた。滴下中は反応容器内温度を80℃に維持した。滴下終了後、さらに液温を80℃で1時間攪拌し、次いで25℃に冷却し、イオン交換水にて不揮発分が35%になるように調整し、pH3.5、粒子径0.3μm、カチオン含有量0.14当量/kgのカチオン性アクリル樹脂(X−2−1)の水性分散体を得た。
【0108】
合成例3 〔ノニオン性アクリル樹脂(Y−1)の水性分散体の調製〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器にイオン交換水 763部、メルカプト基を有するポリビニルアルコール(株式会社クラレ製品:M−205 重合度400 ケン化度88.0%)100部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら90℃に昇温し2時間保持した。室温まで冷却した後、1規定硫酸水溶液(0.5mol/L)17部を添加し、次いで、メチルメタクリレート(MMA)90部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)10部から成るモノマー混合物を調製し、このモノマー混合物の40部を添加した。ついで、窒素ガスを10分間液面下に吹き込んだ後、70℃に昇温した。過硫酸アンモニウム(APS)の2%水溶液20部を4時間で滴下し、滴下開始1時間後からモノマー混合物の残り全量を2時間で並行して添加した。APSの2%水溶液の添加終了後、2時間攪拌しブロック共重合体(Y−1)を得た。この乳化重合体の不揮発分は20.0%であった。
【0109】
合成例4 〔ポリビニルアルコール(Y−2)水溶液の調製〕
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器にイオン交換水900部、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製品:PVA−217 重合度1700 ケン化度88.0%)100部を仕込んで、窒素ガス気流下に攪拌しながら90℃に昇温し2時間保持した後、室温まで冷却して不揮発分10%のポリビニルアルコール(Y−2)の水溶液を得た。
【0110】
実施例10〜16〔水性塗料組成物1〜7の調製〕
前記合成例1で合成したカチオン性ポリウレタン樹脂(X−1−1)の水性分散体114.3部(固形分40部)を攪拌しながら、ここに金属アルコキシド縮合物分散体(Z−5)555.6部(金属アルコキシド縮合物(I−5)含有量 60部)を徐々に滴下して、水性塗料組成物1を得た。以下同様に、カチオン性樹脂(X)、ノニオン性樹脂(Y)、金属アルコキシド縮合物(I)がそれぞれ表4に書かれた質量比になるように配合して、水性塗料組成物2〜7を調製した。
【0111】
実施例17〜24 〔水性塗料組成物8〜15の調製〕
前記実施例1で合成した金属アルコキシド縮合物分散体(Z−1) 1087.0部(金属アルコキシド縮合物(I−1)含有量100部)を攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6040」(以下GPTMS)) 95.1部を徐々に滴下し、30分間攪拌して水性塗料組成物8を得た。以下同様に、金属アルコキシド縮合物(I)、架橋剤(V)がそれぞれ表5〜6に書かれた質量比率になるように配合して、水性塗料組成物9〜15を調製した。
【0112】
実施例25〔水性塗料組成物16の調製〕
前記合成例1で合成したカチオン性ポリウレタン樹脂(X−1−1)の水性分散体114.3部(固形分40部)を攪拌しながら、ここに金属アルコキシド縮合物分散体(Z−5) 555.6部(金属アルコキシド縮合物(I−5)含有量60部)を徐々に滴下した。さらに、溶液を攪拌しながらGPTMS 71.0部を滴下して30分攪拌後水性塗料組成物16を得た。
【0113】
比較例4〔比較水性塗料組成物1の調製〕
比較例2で合成した比較用縮合物分散体(Z’−2) 806.5部(比較用縮合物(I’−2)100部)を攪拌しながら、ここにGPTMS 118.4部を徐々に滴下して、30分攪拌後比較水性塗料組成物1を得た。
【0114】
【表4】

【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
表4〜表6の脚注:
GPTMS:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6040」)
GPTES:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製品「Z−6041」)
【0118】
実施例26〜41及び比較例5 〔有機無機複合塗膜1〜16及び比較有機無機複合塗膜1〕
実施例10〜25及び比較例4で得た水性塗料組成物1〜16及び比較水性塗料組成物1を、ポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学株式会社製、製品名ユーピロン、膜厚100μm)上に塗布後、130℃で30分乾燥させ、膜厚約5μmの有機無機複合塗膜(塗膜1〜塗膜16)及び比較有機無機複合塗膜1(比較塗膜1)を得た。
【0119】
実施例42〔有機無機複合塗膜17〕
実施例22で得た水性塗料組成物13をポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学株式会社製、製品名ユーピロン、膜厚100μm)上に塗布後、80℃で30分乾燥させ、膜厚約5μmの有機無機複合塗膜(塗膜17)を得た。
【0120】
実施例43〔有機無機複合塗膜18〕
実施例22で得た水性塗料組成物13をポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学株式会社製、製品名ユーピロン、膜厚100μm)上に塗布後、23℃で24時間乾燥させ、膜厚約5μmの有機無機複合塗膜(塗膜18)を得た。
【0121】
実施例44及び比較例6〔有機無機複合塗膜19及び比較有機無機複合塗膜2〕
実施例22で得た水性塗料組成物13及び比較例4で得た比較水性塗料組成物1を、ガラス板上にITOをコーティングした基材上に塗布後、130℃で30分乾燥させ、膜厚約1.5μmの有機無機複合塗膜(塗膜19)及び比較有機無機複合塗膜2(比較塗膜2)を得た。これらの塗膜の比誘電率を測定したところ、塗膜19の比誘電率は8.5、比較塗膜2の比誘電率は5.0であった。
【0122】
耐磨耗性
学振式磨耗試験機(大栄科学精器製作所製品、RT−200)にて評価を行った。
磨耗体:スチールウール(日本スチールウール株式会社製、商品名ボンスター、品番No.0000)
荷重:500g
往復回数:250回
表の数字は、試験前後の塗膜の濁度の差を数値化したものであり、数字が小さいほど耐磨耗性が良好であることを示す。
【0123】
耐汚染性
塗膜に黒マジックでそれぞれ幅10mmの線を引き、4時間経過後にメチルエチルケトンで拭き取り、試験前後の塗膜の変化を目視で判定した。
○:色残りなし。
×:色残りあり。
【0124】
耐水性
下記温度の水中に塗膜を浸漬し、塗膜の表面状態変化の有無を目視で判定した。
◎:40℃の水2週間浸漬後、変化なし。
○:40℃の水1週間浸漬後、変化なし。
△:25℃の水1週間浸漬後、変化なし。
×:25℃の水1週間浸漬後、塗膜が溶解した。
【0125】
耐溶剤性
メチルエチルケトンを染み込ませたガーゼで500g荷重をかけてラビング試験を50往復行い、試験前後の塗膜の変化を目視判定した。
○:変化なし。
△:一部塗膜白化。
×:塗膜全面白化。
【0126】
塗膜状態
塗膜の状態を目視で評価した。
○:塗膜が透明。
×:塗膜に割れを生じた。
【0127】
屈折率
硬化塗膜の屈折率をMETRICON社製品「プリズムカプラー モデル2010」によって測定した。
【0128】
紫外−可視光透過率
日立ハイテクノロジーズ株式会社製品「U3500」によって、フィルムの紫外−可視光(波長200nm〜800nm)透過率(%T)を測定した。
【0129】
比誘電率
実施例44及び比較例6で得た塗膜19及び比較塗膜2の比誘電率を、BAS社製品「ALS760」によって、測定周波数:1000Hzで測定した。
【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【0132】
【表9】

【0133】
実施例38によって得られた有機無機複合塗膜13を塗装したポリカーボネートフィルムの紫外−可視光透過率のチャート及び基材として用いたポリカーボネートフィルムの紫外−可視光透過率のチャートを図1及び図2に示す。これらの紫外−可視光透過率チャートを比較することにより、本発明の有機無機複合塗膜が300nmの波長付近の紫外光を一部遮蔽することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】実施例38によって得られた有機無機複合塗膜13が塗装されたポリカーボネートフィルムの紫外−可視光透過率のチャートである。横軸は光の波長(nm)、縦軸は光の透過率(%T)を示す。
【図2】基材として用いたポリカーボネートフィルムの紫外−可視光透過率のチャートである。横軸は光の波長(nm)、縦軸は光の透過率(%T)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性樹脂(X)の水性分散体、又はノニオン性樹脂(Y)の水溶液若しくは水性分散体と、
シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物と、
アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、を必須成分として縮合して得られる縮合物(I)と、
酸(II)と、を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)が下記一般式(1)
M(OR (1)
(式中、MはTi、Zr又はAlであり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、aは金属Mの酸化数である。)
で表される化合物である請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)がチタニウムテトラアルコキシドである請求項1記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記酸(II)が酢酸、マレイン酸、及び塩酸からなる群から選ばれる一種以上の酸である請求項1〜3の何れか一項記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記縮合物(I)が、更にアミノ基を有するシラン化合物(B)以外のシラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物を併用して縮合したものである請求項1〜4の何れか一項記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
前記アミノ基を有するシラン化合物(B)が、下記一般式(2)
SiR3−b (2)
(式中、bは0〜2の整数であり、Rはアミノ基を有する一価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基、クロル基、又はヒドロキシ基であって、複数個含まれる場合のR、Rは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物である請求項1〜5の何れか一項記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
前記縮合物(I)の完全縮合後の質量(I1)中における、前記シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量(A1)が5〜50質量%である請求項1〜6の何れか一項記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
前記縮合物(I)の完全縮合後の質量(I1)中における、前記アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物の完全縮合後の質量(B1)が10〜70質量%である請求項1〜7の何れか一項記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項記載の水性塗料組成物を基材上に塗布し乾燥して得られることを特徴とする有機無機複合塗膜。
【請求項10】
有機無機複合塗膜における前記カチオン性樹脂(X)又はノニオン性樹脂(Y)の質量割合が70質量%以下である請求項9記載の有機無機複合塗膜。
【請求項11】
シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物と、
アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、を必須成分として縮合して得られる縮合物(I)と、
酸(II)と、水(III)とを含有し、pHが6.5以下であることを特徴とする金属アルコキシド縮合物分散体。
【請求項12】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)が下記一般式(1)
M(OR (1)
(式中、MはTi、Zr又はAlであり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、aは金属Mの酸化数である。)
で表される化合物である請求項11記載の金属アルコキシド縮合物分散体。
【請求項13】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)がチタニウムテトラアルコキシドである請求項11記載の金属アルコキシド縮合物分散体。
【請求項14】
前記酸(II)が酢酸、マレイン酸、及び塩酸からなる群から選ばれる一種以上の酸である請求項11〜13の何れか一項記載の金属アルコキシド縮合物分散体。
【請求項15】
前記シラン化合物(B)が、下記一般式(2)
SiR3−b (2)
(式中、bは0〜2の整数であり、Rはアミノ基を有する一価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基、クロル基、又はヒドロキシ基であって、複数個含まれる場合のR、Rは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物である請求項11〜14の何れか一項記載の金属アルコキシド縮合物分散体。
【請求項16】
シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物と、
アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物と、
アミノ基を有するシラン化合物(B)以外のシラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物と、を
シラン以外の金属アルコキシド(A)及び/又はその部分縮合物中の金属原子のモル数と、アミノ基を有するシラン化合物(B)及び/又はその部分縮合物中のケイ素原子のモル数と、シラン化合物(C)及び/又はその部分縮合物中のケイ素原子のモル数と、の合計モル数に対して、0.1〜5倍モルの水を用いて縮合反応を行うことを特徴とする金属アルコキシド縮合物分散体の製造方法。
【請求項17】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)が下記一般式(1)
M(OR (1)
(式中、MはTi、Zr又はAlであり、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、aは金属Mの酸化数である。)
で表される化合物である請求項16記載の金属アルコキシド縮合物分散体の製造方法。
【請求項18】
前記シラン以外の金属アルコキシド(A)がチタニウムテトラアルコキシドである請求項16記載の金属アルコキシド縮合物分散体の製造方法。
【請求項19】
前記シラン化合物(B)が、下記一般式(2)
SiR3−b (2)
(式中、bは0〜2の整数であり、Rはアミノ基を有する一価の有機基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基、クロル基、又はヒドロキシ基であって、複数個含まれる場合のR、Rは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
で表される化合物である請求項16〜18の何れか一項記載の金属アルコキシド縮合物分散体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−235238(P2009−235238A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83254(P2008−83254)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】