説明

水性塗料組成物及び塗装方法

【課題】
被塗面との付着性に優れ、低温環境下でも被塗面の経時による変化等に追随することが可能な柔軟で且つ強靭性を有する塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物及びそれを用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】
共重合体水分散液(A)及び顔料(B)を含む水性塗料組成物であって、共重合体水分散液(A)が、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の共重合割合が50質量%以上であって、組成物中の顔料体積濃度が15〜60%の範囲内であることを特徴とする水性塗料組成物。
なし。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料組成物及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築物壁面等の塗装には、壁表層に発生する小さなクラックに追従し且つ、外部からの水の浸入を抑制するために弾性を有する塗膜を形成する下塗り塗料を塗装し、ついで耐水性、耐候性や仕上がり性等に優れる塗膜を形成する上塗り塗料を塗装する塗装方法が知られている。例えば特許文献1には、カルボニル基含有共重合体水分散液、ヒドラジド化合物及び顔料を含み、形成塗膜の伸び率と顔料体積濃度が特定範囲内である弾性ベース塗料による弾性ベース塗膜上に特定の伸び率を有する上塗り塗料を塗装する塗装方法が開示されている。この塗装方法により形成される複層塗膜によれば、良好な仕上がり外観と高耐久性を有するものであり、長期にわたって建築物の美観を維持することが可能となったが、基材と上塗り塗料の組み合わせによっては、所期の目的を達成できないことがある。
【0003】
そうした問題に対して特許文献2には、カルボニル基がシェル部に偏在したコアシェル型のカルボニル基含有共重合体エマルション及び特定量の顔料を含む水性塗料組成物が記載されている。かかる水性塗料組成物を下地調整用塗料に適用すると、基材と上塗り塗料の組み合わせに関わらず良好な仕上がり外観と高耐久性を有する複層塗装仕上げが可能であるが、該塗膜と基材との付着性が十分とはいえない場合がある。
【0004】
基材との付着性の改良手法として、特許文献3には、アセトアセトキシ基含有不飽和モノマーを含んだモノマー混合物を乳化重合して得られる特定範囲のガラス転移温度を有するエマルション樹脂と、脂肪族ジヒドラジド化合物とを含む水性下塗り材組成物が記載されている。かかる下塗り材組成物によれば、アセトアセトキシ基の一方のカルボニル部分が架橋すること、および、他方のカルボニル部分が基材および旧塗膜と強固な水素結合を形成することなどによって、付着性、初期耐水性等に優れた下塗り塗膜を形成することができるものであるが、低温環境下では塗膜の伸び率が足りずに壁表層に発生する微細なクラックに塗膜が追随できない場合がある。
【0005】
一般に低温環境下では塗膜物性は格段に低下する。低温における塗膜物性を確保するために樹脂のガラス転移温度を下げる手法が知られているが、単にガラス転移温度を調整しただけでは、低温における塗膜の伸び率は向上するものの、常温における塗膜の強靭性が不十分となり、これらを両立させることは非常に困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−190332号公報
【特許文献2】特開2002−309160号公報
【特許文献3】特開2003−201440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被塗面との付着性に優れ、低温環境下でも被塗面の経時による変化等に追随することが可能な柔軟で且つ強靭性を有する塗膜を形成するのに適する水性塗料組成物及びそれを用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記した課題について鋭意検討した結果、共重合体水分散液及び顔料を含む水性塗料組成物において、共重合体水分散液における直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレートの共重合量と顔料濃度を特定範囲に調整することにより、低温での塗膜物性と被塗面との付着性を両立可能な塗膜を形成することができることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は
1. 共重合体水分散液(A)及び顔料(B)を含む水性塗料組成物であって、共重合体水分散液(A)が、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の共重合割合が50質量%以上であって、組成物中の顔料体積濃度が15〜60%の範囲内であることを特徴とする水性塗料組成物、
2. 共重合体水分散液(A)の製造に使用される重合性不飽和モノマーが、共重合体のガラス転移温度が−20℃以下となるように選択されるものである1項に記載の水性塗料組成物、
3. 共重合体水分散液(A)が、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)50〜90質量%、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)0.01〜10質量%、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するメタクリレート及び/又はビニル芳香族化合物(c1)5〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c2)0.05〜5質量%、並びに上記モノマー(a)、(b)、(c1)及び(c2)以外のその他の重合性不飽和モノマー0〜44.94質量%を共重合することにより得られるものである1項または2項に記載の水性塗料組成物、
4. 顔料(B)が、体質顔料と着色顔料を組み合わせたものである1項ないし3項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
5. さらにヒドラジン誘導体(C)を含有する1項ないし4項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物、
6. 被塗面に1項ないし5項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法、
7. 被塗面に1項ないし5項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装した後、該塗面上に上塗り塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性塗料組成物によれば、柔軟で且つ強靭性を有する塗膜を形成することができ、低温環境下でも被塗面の経時による変化等に追随でき、基材表面に対して水の侵入を抑制することが可能な塗膜を形成することができる。また、該塗膜は被塗面との付着性にも優れており、被塗面をシーラー塗布するシーラー工程を省略することも可能である。さらに本発明の水性塗料組成物により形成される塗膜上に上塗り塗装する請求項7に記載の発明により、防水性、耐候性等に優れた複層塗膜を形成することができ、建築物等の美観を長期にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
カルボニル基含有共重合体水分散液
本発明の水性塗料組成物に適用される共重合体水分散液(A)は、直鎖状又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)及びカルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分とするものであり、共重合体中における直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の共重合割合が50質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
上記共重合体水分散液(A)において直鎖状もしくは分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
本発明において直鎖状もしくは分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレートを特定量共重合させることにより、本発明の水性塗料組成物により形成される塗膜の低温における伸び率、常温における塗膜の強靭性さらには被塗面との付着性を向上させる効果がある。
【0013】
本発明において、共重合体水分散液(A)における直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の共重合割合は50質量%以上であることが必須である。上記アクリレート(a)の共重合割合が50質量%未満では、本発明の水性塗料組成物により形成される塗膜の低温における柔軟性、常温における塗膜の強靭性並びに被塗面との付着性が不十分となり好ましくない。
【0014】
上記カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)の具体例としては、(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明において上記共重合体水分散液(A)は、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を有するアクリレート(a)、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)以外に、これら以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を必要に応じて共重合することができる。該その他の重合性不飽和モノマー(c)の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート等の直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状の炭素数が7以上のアルキルを含有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明において共重合体水分散液(A)の製造に使用される重合性不飽和モノマーは、共重合体のガラス転移温度が−20℃以下、好ましくは−30〜−60℃の範囲内となるように選択されることが望ましい。
【0017】
本発明において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
【0018】
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの質量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100〕であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th edition,J.Brandrup・E.H.Immergut 編)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
【0019】
本発明においては、上記その他の重合性不飽和モノマー(c)として、本発明の水性塗料組成物から形成される塗膜の耐水性等の点から、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するメタクリレート及び/又はビニル芳香族化合物(c1)を、顔料分散性の点からカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c2)を使用することが望ましい。
【0020】
本発明において上記のごとき共重合体水分散液(A)の好ましいモノマー組成の例としては、
直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を有するアクリレート(a)が、
50〜85質量%、好ましくは65〜85質量%、
カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)が、
0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜8質量%、
直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するメタクリレート及び/又はビニル芳香族化合物(c1)が、
5〜25質量%、好ましくは5〜20質量%、
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c2)が、
0.05〜5質量%、好ましくは1.0〜3.0質量%、
(a)、(b)、(c1)及び(c2)以外のその他の重合性不飽和モノマーが、
0〜44.94質量%、好ましくは0〜28.95質量%、
を挙げることができる。
【0021】
上記モノマーの重合方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤としての界面活性剤の存在下に、上記重合性不飽和モノマーを共重合することにより容易に製造することができる。
【0022】
また、乳化重合法により得られる乳化重合体を使用することにより最終的に得られる水性塗料組成物の有機溶剤量を低減させ、また共重合体の分子量を高く設定することができ、好適である。
【0023】
上記共重合体水分散液(A)の製造において使用される乳化剤としては、従来公知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤の例としては、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを挙げることができる。
【0024】
アニオン性乳化剤としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム類、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物;等);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物;等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
両イオン性界面活性剤としては、ジメチルアルキルベダイン類、ジメチルアルキルラウリルベダイン類、アルキルグリシン類等を挙げることができる。
【0027】
上記乳化剤としては、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基を分子中に含有する反応性乳化剤なども使用可能である。
【0028】
上記乳化剤の使用量としては、共重合体水分散液(A)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内とすることができる。
【0029】
また、重合に用いられる重合開始剤としては、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート。tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、 tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0030】
上記重合開始剤の好適な使用量としては、共重合体水分散液(A)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.001〜15質量%の範囲内であることができる。
【0031】
上記の通り得られる共重合体水分散液(A)の共重合体の重量平均分子量は、形成塗膜の伸びの点から、5万〜100万、特に15万〜50万の範囲内にあることが望ましい。
【0032】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0033】
顔料(B)
本発明の水性塗料組成物において用いられる顔料(B)としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラなどの着色顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明において、上記顔料(B)の使用量は、顔料体積濃度が15〜60%の範囲内、好ましくは15〜45%、さらに好ましくは25〜42%の範囲内に調整されることが望ましい。
【0035】
顔料体積濃度が15%未満では、強靭な塗膜が得られなくなり、一方60%を超えると塗膜のひび割れ追従性が低下するので好ましくない。
【0036】
本明細書において顔料体積濃度は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占めるその顔料分の体積割合である。本明細書において、顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は「塗料原料便覧第6版」(社団法人日本塗料工業会)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
【0037】
本発明において、上記顔料(B)は、体質顔料と着色顔料を組み合わせたものであることが望ましい。併用割合としては、体質顔料/着色顔料質量比で99/1〜60/40、好ましくは95/5〜70/30の範囲内であることが、形成塗膜の下地隠蔽性と耐水性の点から好適である。
【0038】
ヒドラジン誘導体(C)
本発明の水性塗料組成物は、形成塗膜の耐水性、付着性、常温における塗膜の強靭性を向上させる目的から、ヒドラジン誘導体(C)を必要に応じて配合することができる。該ヒドラジン誘導体(C)は、共重合体水分散液(A)のカルボニル基と架橋反応する官能基を有しており、その具体例としてはヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾン等が好適に使用できる。以上に述べた化合物は、それぞれ単独で使用することができ又は2種もしくはそれ以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
上記ヒドラジン誘導体(C)の使用量としては、共重合体水分散液(A)固形分に対して0.01〜3.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%の範囲内であることが好適である。
【0040】
また、本発明において、塗装作業性、顔料沈降防止等の点から上記水性塗料組成物は増粘剤を含むことができる。
【0041】
該増粘剤としては、従来公知のものを制限なく使用でき、その具体例としては、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用できる。特にローラー塗装作業性を向上させ、良好な仕上がり性を発揮することから、繊維素誘導体系化合物及びポリエーテル系化合物の組み合わせがよい。繊維素誘導体系化合物及びポリエーテル系化合物を組み合わせる場合、両者の使用割合は、繊維素誘導体系化合物/ポリエーテル系化合物質量比で、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10の範囲内であることが好適である。
【0042】
該増粘剤の使用量としては、共重合体水分散液(A)固形分に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲内であるとよい。
【0043】
本発明において上記水性塗料組成物は、必要に応じて共重合体水分散液(A)以外の他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の水溶性又は水分散性の樹脂を包含してもよい。
【0044】
また、上記水性塗料組成物は、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、防腐剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤等の塗料用添加剤を必要に応じて包含することができる。
【0045】
上記本発明の水性塗料組成物は、形成塗膜の塗膜物性が非常に良好であり、柔軟で且つ強靭な塗膜を形成させることができる。具体的には23℃における伸び率を300%以上、特に300〜900%とすることができ、−20℃における伸び率を70%以上、特に70〜200%、23℃における最大応力が、1.3N/mm以上、特に1.3〜3.0N/mmとすることができる。
【0046】
本明細書において、柔軟性及び強靭性の指標となる形成塗膜の伸び率及び最大応力は、試料を離型紙(200mm×200mm)にドクターブレードを用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%の条件で2週間、乾燥及び養生した後、塗膜を剥離して、乾燥膜厚約1mmの遊離塗膜を得、この遊離塗膜の破断伸び率及び最大応力を、引張試験機(商品名「オートグラフAG2000B型」、島津製作所(株)製)を用い、23℃又は−20℃の温度で、引張速度200mm/分の条件で測定することにより得られる。
【0047】
塗装方法
本発明方法は、被塗面に上記の通り得られる本発明の水性塗料組成物を塗装する塗装方法である。
【0048】
被塗面としては、例えば、石膏ボード、コンクリート面、モルタル面、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック、金属などの基材面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系などの塗膜面を挙げることができる。
【0049】
また、必要に応じて上記被塗面は従来公知のシーラーを用いてシーラー塗装したものであってもよい。
【0050】
上記本発明の水性塗料組成物の塗布量としては、例えば0.1〜2kg/m好ましくは、0.2〜1.5kg/mの範囲内とすることができる。
【0051】
本発明の水性塗料組成物を塗装するための塗装手段としては、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどのそれ自体既知の塗装器具を用いて行うことができる。
【0052】
形成塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれかを採用することができる。
【0053】
また、本発明は被塗面に上記水性塗料組成物を塗装した後、該塗面上に上塗り塗装することを特徴とする塗装方法である。
【0054】
本発明方法で使用される上塗り塗料としては、特に制限なく従来公知の仕上がり面の着色や光沢の付与、また耐候性、防水性などを付与しうる水系または有機溶剤系の塗料が適用でき、該塗料は架橋型であっても非架橋型であってもよい。
【0055】
上記上塗り塗料の例としては例えば、アクリル樹脂エマルション系塗料、イソシアネート架橋硬化型塗料を挙げることができる。
【0056】
アクリル樹脂エマルション系塗料としては、アクリル樹脂エマルションを基体樹脂成分とするものであり、該アクリル樹脂エマルションと架橋反応する架橋剤を加えたものであっても良く、ウレタン系樹脂エマルション、フッ素系樹脂エマルション等を必要に応じて配合したものであってもよい。
【0057】
上記イソシアネート架橋硬化型塗料は、イソシアネート硬化剤とイソシアネート基と反応する活性水素を有する主剤からなる2液型の塗料が好適であり、該主剤としては、例えばフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂などの水酸基含有樹脂を基体樹脂とするものが好適に使用できる。
【0058】
上記上塗り塗料は、本発明の水性塗料組成物を塗布した後に該塗面上に塗布するものであるが、塗装方法としてはローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどの公知の塗装器具が使用できる。上塗り塗料の塗布量としては、0.1〜0.5kg/m2 程度が適当であり、形成塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれかを採用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0060】
共重合体水分散液の製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水300部、Newcol 707SF(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルションのうち3質量%分及び下記触媒水溶液のうち30質量%分を添加し、攪拌した。添加20分後から下記プレエマルションの97質量%分と下記触媒水溶液の70質量%分を4時間かけて滴下した。
プレエマルション
脱イオン水 287部
メタクリル酸 16部
スチレン 80部
n−ブチルアクリレート 664部
ダイアセトンアクリルアミド 40部
「Newcol 707SF」 53部
触媒水溶液
過硫酸アンモニウム 1.5部
脱イオン水 120部
滴下終了後、脱イオン水56部を加え、これをさらに2時間75℃に保持した後、40℃以下に降温した。次いでアンモニア水でpH8〜9に調整し、固形分50%の共重合体水分散液(A−1)を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は30万であった。
【0061】
製造例2〜7
上記製造例1において、モノマー組成を表1とする以外は製造例1と同様にして共重合体水分散液(A−2)〜(A−7)を製造した。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1〜17及び比較例1〜4
下地調整用水性塗料の製造
上記製造例で得た共重合体水分散液に、表2に示す成分を配合し、攪拌混合して各下地調整用水性塗料を得た。尚、表2中における(注1)〜(注7)は下記の通りである。
【0064】
【表2】

【0065】
(注1)体質顔料:比重2.7の炭酸カルシウム、
(注2)着色顔料:比重4.1の酸化チタン、
(注3)「テキサノール」:商品名、イーストマン・ケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、
(注4)増粘剤1:2.5%ヒドロキシエチルセルロ−ス水溶液、
(注5)増粘剤2:ウレタン会合型増粘剤「アデカノールUH−526」、旭電化製、
(注6)消泡剤:「SNデフォ−マ−A63」、サンノプコ社製、
(注7)分散剤:「ノプコサントK」、サンノプコ社製。
【0066】
評価試験
(*1)形成塗膜の伸び率、最大応力:
試料を離型紙(200mm×200mm)にドクターブレードを用いて塗装し、温度23℃、相対湿度50%の条件で2週間、乾燥及び養生した後、塗膜を剥離して、乾燥膜厚約1mmの遊離塗膜を得、この遊離塗膜の伸び率及び最大応力を、引張試験機(商品名「オートグラフAG2000B型」、島津製作所(株)製)を用い、23℃又は−20℃の温度で、引張速度200mm/分の条件で測定した。値が大きいほど良好である。
(*2)ゼロスパン試験:
フレキシブル板の裏面の中央部に幅が1mm、深さ3mmの溝をつけた板の表面に対して各下地調整用水性塗料を乾燥膜厚が1mmとなるように塗装し、温度23℃、相対湿度50%の条件で2週間、乾燥及び養生した後、その後、フレキシブル板の裏面の中央部の溝を塗膜を傷つけないように指で加圧し、フレキシブル板のみを割ったものを試験体とし、この試験体をオートグラフAG2000B型(島津製作所)に取り付け−10℃雰囲気で引張速度20mm/分の条件で引張試験を行った。
○: 伸び3.0mm以上
×: 伸び3.0mm未満。
(*3)塗装作業性
各下地調整用水性塗料をモルタル板上に砂骨ローラーで塗布量が約1.0kg/mとなるように塗装し、その時の作業性、仕上り性に関して官能評価した。
〇:塗装時のハネ、タレが少なく、ローラーが動かしやすく、均一にムラなく滑らかに仕上がっており、塗膜外観に異常がない。
×:塗装時のハネ、タレが多いものや、ローラーが動かし難く、均一に仕上がり難いまたは、塗膜外観が悪い。
(*4)付着性
フレキシブル板上にシーラーを介してアクリル塗膜(「アレスアクアグロス」:商品名、水性アクリル樹脂系上塗塗料、関西ペイント社製)を塗装したものを被塗板とした。該被塗板に、各下地調整用水性塗料を乾燥膜厚1mmになるように引き塗り塗装を行ない、20℃、7日間養生し、1mm間隔で100ケの碁盤目状のカットを入れ、この部分に粘着テープを密着させ瞬時にはがした際に、剥離を生じていない枡目の数によって評価した。
〇:残存個数が80個以上、△:残存個数が40〜79個、×:残存個数が39個以下。
【0067】
塗装
実施例18〜38及び比較例5〜8
上記で得た各下地調整用水性塗料を、モルタル板(90×300×20mm)上に砂骨ローラーで塗布量が約1.0kg/mとなるように塗装し、20℃・75%RHで1日乾燥させた。次にこの下地調整塗膜上に下記上塗塗料をエアレススプレーにより塗布量が約0.2kg/mとなるように塗装し、20℃・75%RHで7日乾燥させて塗装仕上げ板を得た。次いで得られた塗装仕上げ板を下記性能試験に供した。結果を表3に示す。尚、表3におけるa〜dの上塗塗料種、及び性能試験方法は下記の通りである。
【0068】
【表3】

【0069】
上塗塗料種a.「アレスアクアシリコンAC」:商品名、関西ペイント社製、水性アクリルシリコン樹脂系塗料、b.「リベルトップ」:商品名、関西ペイント社製、水酸基含有樹脂及びイソシアネート硬化剤を含む2液型水性アクリルウレタン樹脂系塗料、c.「アレスアクアレタン」:商品名、関西ペイント社製、水性アクリル樹脂エマルション系塗料、d.「アレスアクアグロス」:商品名、関西ペイント社製、水性反応硬化型アクリル樹脂エマルション系上塗塗料。
【0070】
(*5)仕上り外観:各塗装仕上げ板の塗膜表面の仕上り外観を目視で評価した。
〇:光沢があり、均一にムラなく仕上っている、×:上塗塗料の吸い込みムラ等で均一に仕上っていない。
(*6)複層塗膜でのゼロスパン試験
フレキシブル板の裏面の中央部に幅が1mm、深さ3mmの溝をつけた板の表面に対して各下地調整用水性塗料を砂骨ローラーで塗布量が約1.0kg/mとなるように塗装し、20℃・75%RHで1日乾燥させ、その後下地調整材塗膜上に各上塗塗料をエアレススプレーにより塗布量が約0.2kg/mとなるように塗装し、20℃・75%RHで7日乾燥させた後、フレキシブル板の裏面の中央部の溝を複層塗膜を傷つけないように指で加圧し、フレキシブル板のみを割ったものを試験体とし、この試験体をオートグラフAG2000B型(島津製作所)に取り付け−10℃雰囲気で引張速度20mm/分の条件で引張試験を行った。
○: 伸び3.0mm以上であり、3.0mmまで亀裂なし。
×: 伸び3.0mm未満で、上塗り塗膜に下塗り塗膜まで達する穴又は裂けが発生する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体水分散液(A)及び顔料(B)を含む水性塗料組成物であって、共重合体水分散液(A)が、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)の共重合割合が50質量%以上であって、組成物中の顔料体積濃度が15〜60%の範囲内であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
共重合体水分散液(A)の製造に使用される重合性不飽和モノマーが、共重合体のガラス転移温度が−20℃以下となるように選択されるものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
共重合体水分散液(A)が、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するアクリレート(a)50〜90質量%、カルボニル基含有重合性不飽和モノマー(b)0.01〜10質量%、直鎖又は分岐状の炭素数が6以下のアルキル基を含有するメタクリレート及び/又はビニル芳香族化合物(c1)5〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c2)0.05〜5質量%、並びに上記モノマー(a)、(b)、(c1)及び(c2)以外のその他の重合性不飽和モノマー0〜44.94質量%を共重合することにより得られるものである請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
顔料(B)が、体質顔料と着色顔料を組み合わせたものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
さらにヒドラジン誘導体(C)を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
被塗面に請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
被塗面に請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装した後、該塗面上に上塗り塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2007−277451(P2007−277451A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107407(P2006−107407)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】