説明

水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法

本発明は、水分散性アクリル重合体粒子、水酸基含有樹脂及び硬化剤を含有する水性塗料組成物であって、該水分散性アクリル重合体粒子が1,100,000以上の重量平均分子量を有し且つ1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である、塗面平滑性等の仕上り性に優れ且つ耐チッピング性、耐水性などの塗膜性能にも優れた水性塗料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上り性、耐チッピング性、耐水性等の性能に優れた塗膜を形成し得る水性塗料組成物及びそれを用いた複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で環境問題に大きな関心が寄せられているが、自動車産業においても生産過程における環境改善の取り組みが積極的に進められている。自動車の製造工程からは、地球温暖化、産業廃棄物、揮発性有機溶剤(VOC)の排出などの問題が発生し、特にVOCについては、そのほとんどが塗装工程から発生するものであり、この対策が急務となっている。
【0003】
自動車車体の外板部は、防食及び美感の付与を目的として、通常、カチオン電着塗料による下塗塗膜、中塗塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されているが、
VOC削減の観点から、中塗塗料及び上塗塗料においても水性化が進められている。
【0004】
また、自動車車体の塗膜は、特に高度の仕上り性及び耐チッピング性(走行中の石はね等による耐損傷性)、耐水性等の塗膜性能に優れた塗膜であることが求められており、耐チッピング性においては特に中塗塗膜が重要な役割を果たしている。
【0005】
しかしながら、従来の水系塗料は、溶剤型塗料に比べ、一般に機械的性質、耐水性等の塗膜性能に劣っている。この欠点を克服するための方策として、例えば、特許文献1には、複層塗膜としたときの耐チッピング性及び耐水性に優れ、上塗り塗膜及び下塗り塗膜との適合性及び仕上り外観に優れた水性中塗塗料組成物及びこれを用いた複層塗膜形成方法として、自己架橋性が導入された特定範囲のTg、酸価及び水酸基価を有する共重合体エマルションを含有する塗料組成物及びこれを用いた複層塗膜形成方法が開示されている。しかし、そこで使用されている共重合体エマルションの重量平均分子量は50,000〜1,000,000程度であり、耐チッピング性等の塗膜性能向上効果が不十分である。
【0006】
一般に、塗膜性能向上のためには、高分子量の樹脂(特に、アクリル樹脂)を使用するのが有効であるが、例えば、粒子内架橋型の高分子量のアクリル樹脂エマルションを使用すると、塗面平滑性等の仕上り性、塗装作業性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2には、高分子量ポリマー水溶液として、特定濃度及び特定粘度範囲の重量平均分子量が500,000〜10,000,000であるアクリルアミド系ポリマー水溶液が開示されている。しかしながら、該ポリマーは主として紙力補強剤等用途のものであり、塗料用途の高分子量アクリル樹脂として使用するには、仕上り性、塗装作業性が不十分であり、また、塗膜の耐水性も不十分となることから、塗料用途に適するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO04/61025号公報
【特許文献2】特開2004−137504号公報
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、塗面平滑性等の仕上り性に優れ、且つ耐チッピング性、耐水性等の性能にも優れた塗膜を形成し得る水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた複層塗膜形
成方法を提供することである。
【0010】
本発明者らは、特に塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上り性に及ぼす塗料中の高分子量の樹脂の影響に着目し、鋭意検討を重ねた結果、今回、水性塗料用途の高分子量樹脂として、特定の吸光度特性を有する、すなわち、ジオキサン溶媒中の特定低濃度の分散液の状態での分光光度計測定による吸光度が特定の値以下である重量平均分子量が1,100,000以上の水分散性アクリル重合体粒子が、上記の目的を達成するのに有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は、水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、該水分散性アクリル重合体粒子(A)が、1,100,000以上の重量平均分子量を有し且つ1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、被塗物にカチオン電着塗料(a)を塗装し加熱硬化させ、次いで中塗塗料(b)を塗装し加熱硬化させた後、上塗塗料(c)を塗装し硬化させることを含んでなる複層塗膜形成方法において、中塗塗料(b)及び/又は上塗塗料(c)として、上記の水性塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
【0013】
本発明の水性塗料組成物において使用される水分散性アクリル重合体粒子は、重量平均分子量が1,100,000以上という高分子量でありながら、1,4−ジオキサン溶媒中の分散液の状態で透明性が極めて高いというユニークな特性を有する。
【0014】
高分子量の重合体粒子を含有する水性塗料においては、該重合体粒子として、通常、架橋している重合体粒子が使用される場合が多く、該重合体粒子は1,4−ジオキサン溶媒中の分散液の状態での透明性が低いものである。このような重合体粒子を使用した水性塗料では、塗膜とした時に、塗膜中において、重合体粒子は海島構造における島状に不均一に分布しやすくなる。
【0015】
これに対し、本発明の水性塗料組成物においては、水分散性アクリル重合体粒子が上記特性を有するものであるので、1,4−ジオキサン溶媒中の分散液の状態での透明性が低い重合体粒子を使用した水性塗料に比べ、高分子量の重合体粒子が塗膜中に均一に連続相的に分布する形態をとることができる。
【0016】
したがって、本発明の水性塗料組成物は、高分子量の重合体粒子を構成成分として含有しているにも拘わらず、フロー性が良好であるため、塗面平滑性等の仕上り性に優れている。
【0017】
本発明の水性塗料組成物は、また、耐チッピング性、耐水性等の塗膜性能にも優れた塗膜を形成することができる。
【0018】
かくして、本発明の水性塗料組成物によれば、塗面平滑性等の仕上り性及び耐チッピング性、耐水性等の塗膜性能のいずれにも優れた塗膜を得ることができるという顕著な効果を奏することができる。
【0019】
以下、本発明の水性塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」ということがある)は、水分散性アクリル
重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)を含んでなるものである。
【0021】
水分散性アクリル重合体粒子(A)
本塗料における水分散性アクリル重合体粒子(A)は、1,100,000以上の重量平均分子量を有し、且つ1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル重合体粒子である。
【0022】
上記吸光度の値が低いほど、1,4−ジオキサン溶媒中の重合体粒子の分散液は透明性が高く、重合体粒子は架橋度が極めて低いことを示す。本塗料における水分散性アクリル重合体粒子(A)は、1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での吸光度の値が0.2以下、好ましくは0.15以下であり、極めて透明度が高いという特徴を有するものである。
【0023】
なお、本明細書において、1,4−ジオキサン溶媒中の分散液は、1,4−ジオキサンを溶媒とする溶液と分散液との両方を包含するものである。
【0024】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、例えば、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを、界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得ることができる。
【0025】
乳化重合せしめ得る重合性不飽和モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)、その他の重合性不飽和モノマー(M−3)、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物(M−4)等を挙げることができる。
【0026】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。さらに、これらの化合物の酸無水物や該酸無水物を半エステル化したモノカルボン酸なども、本明細書において、該モノマー(M−1)に包含されるものとする。
【0027】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、水分散性アクリル重合体粒子(A)にカルボキシル基を導入するためのモノマーであり、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸が一般によく用いられるが、耐水性等の塗膜性能の観点から、特にメタクリル酸が好適である。
【0028】
アクリル酸を使用した場合は、アクリル酸はメタクリル酸に比べて水中での解離度が高いので、生成する重合体粒子におけるカルボキシル基が粒子表面に局在化しやすくなる。これに対し、メタクリル酸を使用した場合は、アクリル酸を使用した場合に比べ、カルボキシル基が粒子内部に均一に分布しやすくなる。このような理由により、メタクリル酸を使用すると、アクリル酸を使用した場合に比べ、塗膜としたときに、親水基であるカルボキシル基が粒子内部に均一に分布することとなるため、塗膜の耐水性(耐白化)が良好になるものと推定される。
【0029】
これらのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物であり、この水酸基は架橋剤と反応する官能基として作用す
ることができる。該モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートモノマー;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基含有メタクリレートモノマー;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0031】
これらのうち、耐水性等の観点から、水酸基含有メタクリレートモノマーが好適である。また、水酸基含有メタクリレートモノマーのうち、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好適である。
【0032】
これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
その他の重合性不飽和モノマー(M−3)は、上記モノマー(M−1)及び(M−2)以外の、1分子中に1個の重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(8)に列挙する。
(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物: 例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等。
(2)芳香族系ビニルモノマー: 例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー: 1分子中に少なくとも1個のグリシジル基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート: 例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。
(5)重合性不飽和基含有アミド系化合物: 1分子中に少なくとも1個のアミド基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等。
(6)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物: 例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(7)ジエン系化合物: 例えばブタジエン、イソプレン等。
(8)ビニル化合物: 例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
【0034】
これらのその他のビニルモノマー(M−3)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
多ビニル化合物(M−4)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス
(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。なお、多ビニル化合物(M−4)には前記ジエン系化合物は含まれない。
【0036】
これらの多ビニル化合物(M−4)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
水分散性アクリル重合体粒子(A)を製造する際の重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、該重合体粒子の水分散性及び耐水性等の観点から、一般に0.1〜25質量%、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%の範囲内、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、使用する硬化剤の種類及び量により異なるが、硬化性及び塗膜の耐水性等の観点から、一般に0.1〜40質量%、好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲内、そしてその他の重合性不飽和モノマー(M−3)は、一般に35〜99.8質量%、好ましくは65〜99.8質量%の範囲内とすることができる。
【0038】
また、高分子量化及び未反応残存モノマー低減等の観点から、アクリレートモノマー及びスチレンを、両者の合計で、一般に20〜80質量%、特に25〜70質量%、さらに特に30〜60質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0039】
多ビニル化合物(M−4)は、必要に応じて使用することができるが、前記吸光度の値が0.2以下である透明度の高い、換言すれば、極めて架橋度の低い水分散性アクリル重合体粒子とする観点からは、使用する場合においても極少量とするのが好ましい。したがって、多ビニル化合物(M−4)の使用割合は、重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、一般に0〜1質量%、好ましくは0〜0.3質量%、さらに好ましくは0〜0.05質量%の範囲内とすることができる。
【0040】
上記分散安定剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、両性イオン乳化剤などを用いることができる。具体的には、アニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられ、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどを挙げることができる。両性イオン乳化剤としては、例えば、アルキルベタインなどを挙げることができる。
【0041】
分散安定剤としては、水分散性アクリル重合体粒子(A)を形成するビニルモノマーの乳化重合反応における共重合性、本塗料中における水分散性アクリル重合体粒子(A)の分散安定性、本塗料から形成される塗膜の耐水性等の塗膜性能及び環境対策のための残存モノマー削減等の観点から、特に、反応性乳化剤を好適に使用することができる。反応性乳化剤とは、ビニルモノマーとラジカル反応性を有する乳化剤であり、1分子中に重合性不飽和基を有する界面活性剤が包含される。
【0042】
反応性乳化剤の具体例としては、エレミノールJS−1、エレミノールJS−2(以上商品名、三洋化成社製)、S−120、S−180A、S−180、ラテムルPD−104、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430S、ラテムルPD−450(以上商品名、花王社製)、アクアロンHS−10、アクアロンKH−10(以上商品名、第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープSR−1025、アデカリアソープER−10、アデカリアソープER−20、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40(以上商品名、旭電化社製)
、ANTOX MS−60(以上商品名、日本乳化剤社製)等を挙げることができる。
【0043】
上記反応性乳化剤の中でも、特に、1分子中に−(CHCHO)−[ここでnは5〜60、好ましくは10〜55、さらに好ましくは20〜45の整数である]で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤が好適であり、該反応性乳化剤の具体例としては、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40、ラテムルPD−450等を挙げることができる。
【0044】
上記ポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を用いて合成される水分散性アクリル重合体粒子は、水分散性アクリル重合体粒子の主鎖に該反応性乳化剤が有するポリオキシエチレン基が枝状にグラフトした構造となるので、塗料組成物としての塗液状態において、塗料組成物中の顔料、硬化剤等の疎水性成分の分散安定剤的な作用をし、未硬化の塗膜状態においては他の成分との相溶化剤的な作用をするので、本発明の塗料組成物の水分散性アクリル重合体粒子(A)として特に好ましい。
【0045】
上記乳化剤等の分散安定剤は、乳化重合反応において、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
分散安定剤の使用量は、生成する水分散性アクリル重合体粒子を基準にして、一般に0.1〜10質量%、特に1〜7.5質量%、さらに特に1.5〜6質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0047】
また、分散安定剤として、反応性乳化剤を使用する場合、反応性乳化剤の使用量は、生成する水分散性アクリル重合体粒子を基準にして、一般に0.1〜10質量%、特に1.5〜7.5質量%、さらに特に2〜6質量%の範囲内であることが好ましい。
【0048】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム等に代表される過酸化物;これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とを組み合わせてなるいわゆるレドックス系開始剤;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕などのアゾ化合物等を挙げることができる。これらのうち、アゾ化合物が好ましい。
【0049】
また、アゾ化合物の中でも、特に25℃の水に対する溶解度が3質量%以下の水難溶性のアゾ化合物が好ましい。このようなアゾ化合物の具体例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等を挙げることができ、高分子量化の観点から、特に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレートが好ましい。
【0050】
ラジカル重合開始剤の使用量は、水分散性アクリル重合体粒子を形成する重合性不飽和モノマーの固形分の合計質量を基準にして、通常0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜3.0質量%、さらに好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲内が適している。
【0051】
乳化重合反応中におけるラジカル重合性不飽和単量体の合計濃度は、通常0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜50質量%、さらに好ましくは1〜50質量%の範囲内であるのが適している。
【0052】
乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃の範囲内とすることができ、また、反応時間は通常3〜24時間、好ましくは5〜20時間、さらに好ましくは7〜16時間程度とすることができる。
【0053】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、通常の均一構造又はコア/シェル構造などの多層構造のいずれであってもよい。
【0054】
コア/シェル構造の水分散性アクリル重合体粒子(A)は、具体的には、例えば、最初にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しない重合性不飽和モノマー成分を乳化重合し、その後、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を多量に含んでなる重合性不飽和モノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。コア部とシェル部との結合は、例えば、コア部の表面に残存するアリルアクリレート、アリルメタクリレート等の多ビニル化合物(M−4)由来の重合性不飽和結合に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合して行なうことができる。
【0055】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、一般に0〜150mgKOH/g、好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。
【0056】
また、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、一般に0.1〜100mgKOH/g、好ましくは0.5〜50mgKOH/g、さらに好ましくは1〜35mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0057】
さらに、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、粒子の分散安定性及び塗膜とした時の平滑性の観点から、10〜500nm、好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0058】
本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子(A)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0059】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性等の塗膜性能の観点から、1,100,000以上の重量平均分子量を有することができ、好ましくは1,100,000〜10,000,000、さらに好ましくは1,200,000〜5,000,000、さらに特に好ましくは1,300,000〜4,000,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0060】
水分散性アクリル重合体粒子の重量平均分子量は、静的光散乱法により求めることができる。具体的には、多角度の光散乱検出装置を使用し、ジムプロット等を作成することにより決定することができる。或いはサイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法により、デバイプロット等を作成することにより決定することができる。
【0061】
本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子の重量平均分子量は、上記のSEC−MALLS法により重量平均分子量の測定を行なうことにより得られるものである。
【0062】
一般に、光散乱法による分子量測定には、以下の光散乱の基礎式:
Kc/R(θ)=1/MwP(θ)+2Ac+・・・ (1)
R(θ)=角度θにおける散乱光(レイリー係数)の還元強度、
c=サンプル濃度、
Mw=重量平均分子量、
=第2ビリアル係数、
K=光学パラメーター、
P(θ)=角度散乱関数、
が用いられるが、本発明における重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法と同様、上記式(1)において、第2ビリアル係数とサンプル濃度との積である第2項以降を無視した式から求めた値である。
【0063】
後記製造例等における測定を含め、本明細書においては、検出器として、DAWN DSP Laser Photometer(Wyatt Technology Co.製)を用い、カラムとして、「KF−806L」を2本、「KF−802」を1本(いずれもShodex社製、商品名)の計3本を用い、溶媒:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1cc/分、サンプル濃度:0.1質量%の条件で測定することができる。
【0064】
試料の調製は、水分散性アクリル重合体粒子(A)のエマルションを常温にて乾燥した後、2.5質量%テトラヒドロフラン溶液を調製し、2時間室温にて溶解させることにより行なった。測定時にテトラヒドロフランでさらに0.1質量%に希釈し、ポアサイズ1μmメンブランフィルターにてろ過したものを測定試料として用いた。
【0065】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の1,4−ジオキサン溶媒中の分散液の状態の吸光度は、水分散性アクリル重合体粒子(A)のエマルションを常温にて乾燥した後、1,4−ジオキサンを溶媒とする1.35%の質量濃度の溶液又は分散液に調製したものを試料とし、分光光度計を用いて、波長330nmの条件で、上記調製した試料の吸光度を測定し、その測定値をセルの長さ(単位:cm)で除して、1cmあたりの吸光度にすることにより求めたものである。分光光度計としては、U−4100(商品名、HITACHI社製)を用いた。
【0066】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、得られる塗膜の仕上り性の観点から、1,4−ジオキサン溶媒中の1.35mass%濃度の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であり、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下であることができる。
【0067】
そのような吸光度の値を持つ水分散性アクリル重合体粒子(A)は、例えば、前述の重合性不飽和モノマーを、分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤としてアゾ化合物、好ましくは水難溶性のアゾ化合物を使用し、80℃以下、好ましくは60〜80℃の温度で乳化重合を行うことにより得ることができる。
【0068】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は塩基性化合物で中和することが好ましい。水分散性アクリル重合体粒子(A)の中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルア
ミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
【0069】
水酸基含有樹脂(B)
本塗料において使用される水酸基含有樹脂(B)の樹脂種には、特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0070】
本発明においては、なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂が好適に用いられる。以下、これらの樹脂についてさらに詳述する。
【0071】
水酸基含有アクリル樹脂
ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーをそれ自体既知の方法で(共)重合することによって合成することができる、前述の水分散性アクリル重合体粒子(A)以外のアクリル樹脂である。合成は乳化重合又は溶液重合のいずれの方法で行ってもよく、両者を併用することもできる。溶液重合により合成する場合、反応に使用する有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールエーテル系、ジプロピレングリコールエーテル系等の親水性有機溶剤を使用することが好ましい。また、該アクリル樹脂は、水分散性の観点から、水酸基に加えてカルボキシル基等の酸基を有していることが好ましい。
【0072】
重合性不飽和モノマーとしては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0073】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0074】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0075】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0076】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタアクリレートを意味する。
【0077】
水酸基含有アクリル樹脂は、耐侯性、仕上り性などの観点から、溶液重合により合成されるものである場合、一般に1,000〜200,000、特に1,500〜150,000、さらに特に2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0078】
なお、本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子(A)以外の樹脂の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの分子量の検量線からポリスチレンの分子量に換算して算出した値である。測定は、測定装置として「HLC8120GPC」(東ソー社製、商品名)を使用し、カラムとして「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1cc/分、検出器:RIの条件で行った。
【0079】
水酸基含有アクリル樹脂は、溶液重合により合成されるものである場合、塗膜の硬化性の観点から、一般に10〜250mgKOH/g、特に20〜200mgKOH/g、さらに特に30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましく、また、水性塗料中での分散安定性及び塗膜の硬化性、付着性の観点から、一般に3〜150mgKOH/g、特に4〜100mgKOH/g、さらに特に5〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0080】
他方、乳化重合により合成されるものである場合、水酸基含有アクリル樹脂は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、一般に5〜150mgKOH/g、特に7.5〜120mgKOH/g、さらに特に10〜90mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましく、また、塗膜の耐水性の観点から、一般に0.01〜100mgKOH/g、特に0.05〜90mgKOH/g、さらに特に0.1〜75mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0081】
水酸基含有アクリル樹脂は、酸基を有し且つ水分散する場合、水分散性を向上させるという観点から、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なことが好ましい。その際の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどの第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミンなどの第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミンなどの第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミン化合物;ピリジン;モルホリンなどを挙げることができる。これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物又はポリアミン化合物を使用することが好ましい。
【0082】
水酸基含有ポリエステル樹脂
多塩基酸と多価アルコ−ルとを常法に従いエステル化反応させることによって合成することができるポリエステル樹脂である。該ポリエステル樹脂としては、水分散性の観点から、水酸基に加えてカルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0083】
多塩基酸は、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらの無水物などを挙げることができる。
【0084】
また、多価アルコ−ルは1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどのグリコール類;これらのグリコール類にε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのポリエステルジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール;2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸などのヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
【0085】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂としては、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができ、これらの脂肪酸による変性量は、一般に油長で30重量%以下であることが好ましい。さらに、ポリエステル樹脂としては、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものを使用することもできる。
【0086】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0087】
ポリエステル樹脂へのカルボキシル基の導入は、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を付加させ、ハーフエステル化することにより行うこともできる。
【0088】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、塗膜の耐水性及び付着性の観点から、一般に5〜100mgKOH/g、特に7.5〜80mgKOH/g、さらに特に10〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0089】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、一般に10〜250mgKOH/g、特に25〜200mgKOH/g、さらに特に40〜170mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0090】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、一般に1,000〜200,000、特に1,500〜150,000、さらに特に2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0091】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸基を有し且つ水分散する場合、水分散性を向上させるという観点から、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが好ましい。
【0092】
中和剤としては、前記アクリル樹脂について例示したものを同様に使用することができる。
【0093】
硬化剤(C)
本塗料において使用される硬化剤(C)は、特に制限されるものではなく、塗料分野で通常使用されているものが同様に使用可能であり、例えば、以下に挙げるメラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物などを好適に用いることができる。これらの硬化剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0094】
メラミン樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのメチロールメラミン;メチロールメラミンとアルカノールとのアルキルエーテル化物;メチロールメラミンの縮合物とアルカノールとのエーテル化物などを挙げることができる。ここで、アルカノールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどが挙げられる。
【0095】
メラミン樹脂としては、例えば、トリアジン核1個あたりメチルエーテル化されたメチロール基を平均少なくとも3個有するメラミン樹脂;重量平均分子量が約500〜約1,000の親水性イミノ基含有アルキルエーテル化メラミン樹脂などを好適に使用することができる。
【0096】
メラミン樹脂としては市販品を使用することができ、市販品の商品名としては、例えば、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル212」、「サイメル253」、「サイメル254」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」、「(以上、モンサント社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学社製);「ユーバン20SE」(三井化学社製)などを挙げることができる。
【0097】
また、硬化剤としてメラミン樹脂を使用する場合、硬化触媒として、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのス
ルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩などを使用することができる。
【0098】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物である。
【0099】
ブロック化ポリイソシアネート化合物におけるポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0100】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0101】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0102】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0103】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4′−または4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−トルイジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4′,4′′−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;ジフェニルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0104】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどを挙げることができる。
【0105】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、ブロック剤でブロック化されたポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、ブロック剤が脱離してイソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができるようになる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0106】
硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、例えば、有機錫化合物を用いることができる。
【0107】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、以上に述べた水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)をそれ自体既知の方法で塗料化することにより調製することができる。
【0108】
本発明の水性塗料組成物における水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)の配合割合は、水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)の合計樹脂固形分を基準として、固形分(不揮発分)として、水分散性アクリル重合体粒子(A)は一般に1〜80質量%、好ましくは3〜70質量%、さらに好ましくは5〜60質量%の範囲内、水酸基含有樹脂(B)は一般に1〜90質量%、好ましくは3〜80質量%、さらに好ましくは5〜70質量%の範囲内、そして硬化剤(C)は一般に5〜60質量%、好ましくは7.5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%の範囲内であるのが適している。
【0109】
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じて、顔料を配合することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などの光輝性顔料等を好適に用いることができる。これらの顔料は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0110】
顔料の配合量は、水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)の合計樹脂固形分100質量部に対して、合計で、一般に0〜250質量部、特に3〜150質量部の範囲内が適している。
【0111】
本発明の水性塗料組成物には、さらに必要に応じて、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤などを適宜配合することができる。
【0112】
本発明の水性塗料組成物は、仕上がり性、耐チッピング性などの塗膜性能に優れた塗膜を得ることができるので、例えば、自動車の中塗塗料、上塗塗料などとして好適に用いることができる。
【0113】
本発明の水性塗料組成物の塗装は、被塗物に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより行なうことができる。これらの塗装方法においては、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。この中でも特に静電印加による回転霧化塗装が好ましい。また、塗装は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回行うことができる。本発明の水性塗料組成物の膜厚は、硬化塗膜に基いて、通常3〜100μm、特に5〜60μmの範囲内が好ましく、塗膜は、例えば、約120〜約170℃、特に約130〜約160℃の温度で10〜40分間加熱することにより硬化させることができる。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉などの乾燥炉を用いて行うことができる。必要に応じて、加熱硬化を行なう前に、溶媒等の揮発成分の揮散を促進するために、約50〜約80℃の温度で3〜10分間程度プレヒートを行なってもよい。
【0114】
被塗物としては、特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板などの鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などの金属基材;各種プラスチック素材などが挙げられる。また、被塗物は、これらの材料から形成される自動車、二輪車、コンテナなどの各種車両の車体などであってもよい。
【0115】
該被塗物は、金属基材や上記車体などの金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
【0116】
また、これらの被塗物は、あらかじめ、下塗塗装(例えば、カチオン電着塗装など)及び場合によりさらに中塗塗装などを行なったものであってもよい。
【0117】
被塗物は、さらに、中塗塗面上に、着色塗料等を上塗塗装することにより塗膜が形成されてなるものであってもよい。
【0118】
本発明の水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて添加される添加剤などを混合し、必要に応じて、水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。その際の適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常約20〜約60秒、好ましくは約25〜約50秒の範囲内である。また、本塗料の塗装固形分濃度は、通常約5〜約65質量%、好ましくは約10〜約45質量%の範囲内である。
【0119】
複層塗膜形成方法
本発明によれば、被塗物に、カチオン電着塗料(a)を塗装し加熱硬化させ、次いで中塗塗料(b)を塗装し加熱硬化させた後、上塗塗料(c)を塗装し硬化させることを含んでなる複層塗膜形成方法において、中塗塗料(b)及び/又は上塗塗料(c)として、本発明の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする複層塗膜形成方法(以下、「本方法」ということがある)が提供される。
【0120】
被塗物としては、前述のものを挙げることができる。
【0121】
本方法に従い上記被塗物に塗装されるカチオン電着塗料(a)としては、金属基材の塗装に際しプライマーとして通常用いられるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、有機酸又は無機酸で中和して水溶化又は水分散化することができる塩基性の水溶性又は水分散性樹脂、例えば、樹脂骨格中に多数のアミノ基を有するエポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系などの樹脂に、中和剤、顔料(着色顔料、体質顔料、防錆顔料など)、親水性溶剤及び水、さらに必要に応じて、硬化剤、添加剤などを配合してなる水性塗料を挙げることができる。塩基性の水溶性又は水分散性樹脂を水溶化又は水分散化するための中和剤としては、例えば、酢酸、ヒドロキシル酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリシンなどの有機酸;硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸を使用することができる。これらの中和剤の使用量は、上記樹脂のアミン価(通常、約30〜約200mgKOH/gの範囲内にある)に対する中和当量が約0.1〜約1.0の範囲内となるようにするのが適当である。
【0122】
カチオン電着塗料(a)は、固形分含有率が通常5〜40質量%、好ましくは8〜30質量%の範囲内となるように脱イオン水で希釈し、pHが5.5〜8.0の範囲内にある電着浴を調製し、常法により、被塗物にカチオン電着塗装することができる。形成される電着塗膜の膜厚は、通常約10〜約40μm、特に約15〜約30μmの範囲内が好ましい。形成されるカチオン電着塗膜は、約140〜約210℃、好ましくは約160〜約1
80℃の温度で10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。
【0123】
次いで、該電着塗膜上に、中塗塗料(b)が塗装される。中塗塗料(b)としては、本発明の水性塗料組成物又は本塗料以外の中塗塗料を用いることができる。
【0124】
本塗料以外の中塗塗料としては、それ自体既知の中塗塗料を使用することができ、具体的には、例えば、基体樹脂としてのアルキド樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、硬化剤としてのアミノ樹脂とを含有する中塗塗料を好適に使用することができる。該アルキド樹脂及び/又はポリエステル樹脂は、通常60〜140mgKOH/g、特に70〜120mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び10〜50mgKOH/g、特に15〜45mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。また、硬化剤としてのアミノ樹脂としては、例えば、アルキルエーテル化メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが適している。基体樹脂と硬化剤の配合割合は、合計固形分質量を基準にして、アルキド樹脂及び/又はポリエステル樹脂は一般に65〜85%、特に70〜80%の範囲内、そしてアミノ樹脂は通常35〜15%、特に30〜20%の範囲内であることが好ましい。また、硬化剤として、上記アミノ樹脂の代りに、ポリイソシアネート化合物やブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。さらに、体質顔料、着色顔料、その他の塗料用添加剤などを必要に応じて配合することができる。本塗料以外の中塗塗料の形態は、有機溶剤系、水系のいずれであってもよいが、VOC量削減の観点からは、水系の塗料であることが好ましい。
【0125】
中塗塗料の塗装及び加熱硬化は、本発明の水性塗料組成物の塗装及び加熱硬化について前述した方法と同様にして行なうことができる。
【0126】
次いで、該中塗塗膜上に、上塗塗料(c)が塗装される。上塗塗料(c)としては、本発明の水性塗料組成物又は本塗料以外の上塗塗料を塗装することができる。
【0127】
本塗料以外の上塗塗料としては、それ自体既知の上塗塗料を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂/アミノ樹脂系、アルキド樹脂/アミノ樹脂系、ポリエステル樹脂/アミノ樹脂系、酸樹脂/エポキシ樹脂系などの液状塗料を使用することができる。これらの液状塗料の形態は、有機溶剤系、水系のいずれであってもよい。
【0128】
これらの上塗塗料は、着色顔料が配合された着色塗料、メタリック顔料が配合されたメタリック塗料、これらの顔料を全く又は殆ど含有しないクリヤ塗料などに分類され、本方法では、これらの塗料を適宜組み合わせ1コート方式(1C1B)、2コート方式(2C1B、2C2B)などの方式で塗装することにより、上塗塗膜を形成することができる。
【0129】
具体的には、例えば、上記加熱硬化した中塗塗膜上に、着色塗料を膜厚が約10〜約40μmになるように塗装し、必要に応じて約50〜約80℃の温度で3〜10分間程度プレヒートを行なった後、約100〜約160℃の温度で10〜40分間加熱して行なう1コート方式によるソリッドカラー仕上げ;上記加熱硬化した中塗塗膜上に着色塗料又はメタリック塗料を膜厚が約10〜約30μmになるように塗装し、必要に応じて約50〜約80℃の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なった後、加熱硬化後又は未硬化の状態で、クリヤ塗料を膜厚が約20〜約60μmになるように塗装し、必要に応じて約50〜約80℃の温度で3〜10分間程度プレヒートを行なった後、約100〜約160℃の温度で10〜40分間加熱して行なう2コート1ベイク方式(2C1B)又は2コート2ベイク方式(2C2B)によるソリッドカラー又はメタリック仕上げ方法などを挙げることができる。
【0130】
本発明の複層塗膜形成方法においては、中塗塗料及び上塗塗料のうちの少なくとも一方
として、本発明の水性塗料組成物が使用される。
【0131】
本発明の水性塗料組成物は、上塗塗料として、特に着色塗料又はメタリック塗料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
【0133】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水82部及びアデカリアソープSR−1025(注1)1.0部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで、下記のモノマーと開始剤の乳化物(注2)全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整した。次いで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径140nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて、脱イオン水で希釈し、20℃で測定した)、酸価11mgKOH/g、水酸基価24mgKOH/gの水分散性アクリル重合体粒子1(固形分40wt%)を得た。
【0134】
(注1)アデカリアソープSR−1025: α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メ
チル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタン
ジイル)のアンモニウム塩、アデカ社製、商品名、有効成分25%。
(注2)モノマーと開始剤の乳化物: 脱イオン水55部、ラテムルE−118B(ポリ
オキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王社製、商品名、有効成分2
6%)4部、スチレン10部、メチルメタクリレート53.5部、n−ブチルアク
リレート30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部及びアクリル酸1.5部
、2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部
を混合攪拌して、モノマーと開始剤の乳化物を得た。
【0135】
製造例2〜8
モノマーと開始剤の乳化物を下記表1に示す配合とする以外、製造例1と同様に処理して、水分散性アクリル重合体粒子2〜8を得た。なお、製造例6〜8においては、開始剤として、上記(注2)中の2,2′−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕にかえて、過硫酸アンモニウムを使用した。
【0136】
得られた水分散性アクリル重合体粒子2〜8の固形分濃度、酸価及び水酸基価を、製造例1で得られた水分散性アクリル重合体粒子1の固形分濃度、酸価及び水酸基価と併せて下記表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
(注3)アデカリアソープER−40: α−ヒドロ−ω−(1−(アルコキシ)メチル
−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイ
ル)、アデカ社製、商品名、有効成分60%。
【0139】
水酸基含有樹脂(B)の製造
製造例9
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び精留塔を備えた4つ口フラスコに、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸243.7部、アジピン酸275.9部、トリメチロールプロパン247.2部、ネオペンチルグリコール95.1部及び1,4−シクロヘキサンジメタノール175.7部を入れ、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で2時間保持し、生成した縮合水を精留塔を用いて溜去した。
【0140】
次に、精留塔を水分離器に付け替え、トルエンを適宜加え、230℃で還流状態を保持し、縮合水を水分離器で分離、溜去しながら縮合反応を進め、樹脂酸価が2となった時点でトルエンを減圧下で溜去した。
【0141】
次いで、反応生成物に無水トリメリット酸59.0部を添加し、170℃で30分間付加反応させた後、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100部を加え、温度を80℃とした後、N,N−ジメチルエタノールアミンで中和し、さらに脱イオン水を徐々に添加して水分散を行なうことにより、固形分40%の水酸基含有ポリエステル樹脂(B−1)(pHは6.8)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−1)は、酸価が36mgKOH/g、水酸基価が138mgKOH/g、そして数平均分子量が2000であった。
【0142】
製造例10
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水145部及びNewcol562SF(注4)1.2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)の全量のうちの5%
量及び3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部とを反応容器内に導入し80℃で20分間保持した。
【0143】
その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後30分間熟成を行った。次いで、下記のモノマー乳化物(2)を1.5時間かけて滴下し、2時間熟成した後、1.5%ジメチルエタノールアミン水溶液89部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分25%の水酸基含有アクリル樹脂(B−2)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−2)は、水酸基価が22mgKOH/g、酸価が30mgKOH/g、そして平均粒子径が100nmであった。
【0144】
(注4)Newcol562SF; 日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシエチレンアル
キルベンゼンスルホン酸アンモニウム、有効成分60%。
【0145】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水94.3部、メチルメタクリレート17部、n‐ブチルアクリレート80部、アリルメタクリレート3部及びNewcol562SF1.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0146】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水37.3部、メチルメタクリレート15.4部、n−ブチルアクリレート2.9部、ヒドロキシエチルアクリレート5.9部、メタクリル酸5.1部、Newcol562SF 0.5部、及び3%過硫酸アンモニウム水溶液1.7部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0147】
製造例11
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、ブチルセロソルブ50部を入れ、120℃に加温した後、さらに単量体としてスチレン10部、メチルメタクリレート25部、n−ブチルメタクリレート20部、n−ブチルアクリレート25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、アクリル酸5部及びラジカル重合開始剤として2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)6部を混合した混合物を5時間かけて滴下した。次いで、2時間熟成させた後、N,N−ジメチルエタノールアミン(アミンによるカルボキシル基の中和当量が1.0となる量)を添加して中和し、ブチルセロソルブで希釈することにより、固形分65%の水酸基含有アクリル樹脂(B−3)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−3)は、水酸基価が72.5mgKOH/g、酸価が39mgKOH/g、そして数平均分子量が5500であった。
【0148】
製造例12
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン273部、無水コハク酸200部及びカージュラE10P(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、ネオデカン酸モノグリシジルエステル)490部を仕込み、100〜230℃で3時間反応させた(この時点でサンプリングを行なったところ水酸基価は350mgKOH/gで、数平均分子量は580であった)後、さらに、無水トリメリット酸192部を加え、180℃で縮合反応させることにより、水酸基含有ポリエステル樹脂(B−4)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−4)は、酸価が49mgKOH/g、水酸基価が195mgKOH/g、そして数平均分子量が1500であった。
【0149】
製造例13
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器及び精留塔を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール81.3部、トリメチロールプロパン211.3部、ヘキサヒドロ無水フタル酸298.1部、アジピン酸180.8部及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール247.7部を入れ、加熱を開始した。160℃から230℃まで5
時間かけて昇温させた後、230℃で2時間保持し生成した縮合水を、精留塔を用いて溜去した。次に、精留塔を水分離器に付け替え、トルエンを適宜加え、230℃で還流状態を保ち、縮合水を水分離器で分離しながら縮合反応を進め、樹脂酸価が5となった時点でトルエンを減圧下で溜去した。
【0150】
次いで、反応生成物に無水トリメリット酸60.2部を添加し、170℃で30分間付加反応させた後、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル100部を加えた。その後、80℃でN,N−ジメチルエタノールアミンを添加して中和し、さらに脱イオン水を徐々に添加して水分散することにより、固形分40%の水酸基含有ポリエステル樹脂(B−5)(pHは6.8)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−5)は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、そして数平均分子量が1370であった。
【0151】
製造例14
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、ブチルセロソルブ50部を入れ、120℃に加熱し、さらに単量体としてスチレン10部、メチルメタアクリレート60部、n−ブチルアクリレート13.7部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、アクリル酸6.3部及びアゾイソブチロニトリル3部の混合物を5時間かけて摘下し、1時間熟成を行った。次いで、N,N−ジメチルエタノールアミン(アミンによるカルボキシル基の中和当量が1.0となる量)を添加して中和することにより、固形分65%の水酸基含有アクリル樹脂(B−6)を得た。得られた水酸基含有樹脂(B−6)は、酸価が50mgKOH/g、水酸基価が50mgKOH/g、そして数平均分子量が10000であった。
【0152】
水性塗料組成物(水性中塗塗料)の製造1
実施例1
製造例9で得た水酸基含有樹脂(B−1)50部、カーボンMA100(カーボンブラック、三菱化学社製、商品名)1部、JR806(チタン白、テイカ社製、商品名)70部及びMICRO ACE S−3(微粉タルク、日本タルク社製、商品名)10部を混合し、ペイントシェーカーで30分間分散し、顔料分散ペースト1を得た。
【0153】
得られた顔料分散ペースト1 131部に、攪拌しながら順に、製造例1で得た水分散性アクリル重合体粒子1 62.5部、製造例9で得た水酸基含有樹脂(B−1)62.5部及びサイメル212(三井サイテック社製、メトキシ・ブトキシ混合アルキル化メラミン樹脂、商品名)30部を加えて混合攪拌し、さらに、脱イオン水、ジメチルエタノールアミンを加えて、pH8.5、フォードカップNo.4で40秒の粘度に調整して水性塗料組成物1−1を得た。
【0154】
実施例2〜7及び比較例1〜4
下記表2に示す配合で、実施例1と同様にして混合攪拌を行なうことにより、水性塗料組成物1−2〜1−11を得た。
【0155】
なお、以下の表2及び表3におけるVPLS2310は、住化バイエルウレタン社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート系メチルエチルケトオキシムブロックイソシアネート、数平均分子量1000である。
【0156】
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた水性塗料組成物1−1〜1−11を使用して、それぞれについて以下のようにして試験板を作製した。
【0157】
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、りん酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、カチオン電着塗料
)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。
【0158】
該電着塗膜上に、各水性塗料組成物1−1〜1−11を膜厚が35μmとなるように塗装し、140℃で20分間加熱して硬化させた後、水性メタリックベースコートWBC713(関西ペイント社製、商品名、アクリル/メラミン樹脂系水性上塗着色ベースコート塗料)を膜厚が15μmとなるように塗装し、室温で3分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行なった後、有機溶剤型クリヤコート塗料KINO#1200TW(関西ペイント社製、商品名、酸/エポキシ硬化型アクリル樹脂系クリヤ塗料)を膜厚が35μmとなるように塗装し、140℃で30分間加熱して、ベースコート及びクリヤコート両塗膜を一緒に硬化させて試験板を得た。
【0159】
得られた各試験板について下記の性能試験を行なった。性能試験結果も併せて表2に示す。なお、表中、塗料配合中の各成分の配合量はすべて固形分質量である。
【0160】
【表2】

【0161】
耐チッピング性: スガ試験機社製の飛石試験機JA−400型(チッピング試験装置、商品名)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、0.392MPa(4kgf/cm)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを塗面に吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し評価した。
◎:キズの大きさは小さく、水性中塗塗料(本塗料組成物)の塗膜が少し露出してい
る程度。
○:キズの大きさは小さく、水性中塗塗料の塗膜と一部電着塗膜が少し露出している
程度。
△:キズの大きさは小さいが、電着塗膜面や素地の鋼板が少し露出している程度。
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している程度。
【0162】
仕上り性: BYK Gardner社製のWave Scan(商品名)により測定した。Wave ScanによりLong Wave値(LW)及びShort Wave値(SW)が測定される。Long Wave値は、1.2〜12mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の中波肌の具合を評価することができる。Short Wave値は、0.3〜1.2mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の微少肌の具合を評価することができる。また、各Wave Scan値は、測定値が小さいほど塗面平滑性が高いことを示す。目安として、一般にWave Scan値が15未満であれば、塗面平滑性が良好とされる。なお、水平とあるのは、塗装終了後、試験板を水平面に対して0°の角度の水平状態で、セッティング、予備乾燥、加熱硬化を行なったことを、そして垂直とあるのは、塗装終了後、試験板を水平面に対して、90°の角度の垂直状態で、セッティング、予備乾燥及び加熱硬化を行なったことを表わす。
【0163】
耐水性: 試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、80℃の温水中に5時間浸漬し、その後浸漬させたままの状態で80℃から室温まで徐々に冷却した。その後、水中より引き上げた試験板の表面状態を以下の基準で目視で評価した。
○:ツヤ感が良好、
△:ツヤ感が劣る、
×:ツヤ感が劣り、塗面が白く濁っている。
【0164】
水性塗料組成物(水性ベースコート塗料)の製造2
実施例8
製造例10で得た水酸基含有樹脂(B−2)100部に、攪拌しながら順に、製造例11で得た水酸基含有樹脂(B−3)30.8部、製造例12で得た水酸基含有樹脂(B−4)20部、製造例1で得た水分散性アクリル重合体粒子1 25部及びサイメル325(三井サイテック社製、商品名、メトキシ・ブトキシ混合アルキル化メラミン樹脂)31.3部を加えて混合攪拌した。その後、アルミニウム顔料分として20部となる量のアルミペーストGX180A(旭化成社製、商品名、アルミニウムフレークペースト)を攪拌しながら添加して混合分散し、さらに、ジメチルエタノールアミン及び脱イオン水を添加してpH8.0、フォードカップNo.4による測定で20℃にて40秒の粘度となるように調製し、水性塗料組成物2−1を得た。
【0165】
実施例9〜14及び比較例5〜8
下記表3に示す配合で、実施例8と同様にして混合攪拌を行なうことにより、水性塗料組成物2−2〜2−11を得た。
【0166】
実施例8〜14及び比較例5〜8で得られた水性塗料組成物2−1〜2−11を使用して、それぞれについて以下のようにして試験板を作製した。
【0167】
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、りん酸亜鉛処理剤)を施した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、カチオン電着塗料)を膜厚が20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。
【0168】
該電着塗膜上に、水性中塗塗料WP305(関西ペイント社製、商品名、アクリル/メラミン樹脂系水性中塗塗料)を膜厚が35μmとなるように塗装し、140℃で20分間加熱して硬化させた後、該中塗塗膜上にベースコート塗料として、各水性塗料組成物2−1〜2−11を膜厚が15μmとなるように塗装し室温で3分間放置してから、80℃で3分間プレヒートを行なった後、有機溶剤型クリヤコート塗料KINO#1200TW(関西ペイント社製、商品名、酸/エポキシ硬化型アクリル樹脂系クリヤ塗料)を膜厚が35μmとなるように塗装し、140℃で30分間加熱して、ベースコート及びクリヤコート両塗膜を一緒に硬化させることにより試験板を得た。
【0169】
得られた各試験板について下記の性能試験を行なった。性能試験結果も併せて表3に示す。なお、表中、塗料配合中の各成分の配合量はすべて固形分質量である。
【0170】
【表3】

【0171】
試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0172】
耐チッピング性: 水性塗料組成物の製造1において記載した方法と同様にして行なった。
【0173】
仕上がり性: 水性塗料組成物の製造1において記載した方法と同様にして、SWを測定した。
【0174】
IV値: レーザー式メタリック感測定装置(アルコープLMR−200、関西ペイント社製、商品名)を用いて測定したIVの値。IVはメタリック塗膜の白さの指標であり、メタリック顔料が塗面に対して平行に均一に配向するほど白くなり、メタリック感がよく、IV値が大きくなるほど白いことを示す。
【0175】
耐水性: 試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、80℃の温水中に浸漬し、5時間経過後、温水中より引き上げた試験板における塗膜の付着性を以下の基準で評価した。
【0176】
素地に達するようにカッターナイフで2mm方眼碁盤目が100個できるようカットを入れ、100個のゴバン目部に粘着セロハンテープを貼着し、それを急激に剥がした後の碁盤目塗膜の残存数を以下の基準で評価した。
○:ゴバン目残存個数 100個/100個
△:ゴバン目残存個数 95〜99個/100個
×:ゴバン目残存個数 95個未満 /100個
【0177】
水性塗料組成物(水性上塗ソリッドコート塗料)の製造3
実施例15
製造例14で得た水酸基含有樹脂(B−6)15.4部、ブチルセロソルブ10部及びJR806(チタン白、テイカ社製、商品名)80部を混合し、ペイントシェーカーで30分間分散し、顔料分散ペースト2を得た。
【0178】
得られた顔料分散ペースト2 105.4部に、攪拌しながら順に、製造例1で得た水分散性アクリル重合体粒子1 62.5部、製造例13で得た水酸基含有樹脂(B−5)87.5部及びサイメル212(三井サイテック社製、商品名、メトキシ/ブトキシ混合アルキル化メラミン樹脂)30部を加えて混合攪拌し、さらに、脱イオン水、ジメチルエタノールアミンを加えて、pH8.5、フォードカップNo.4で、20℃で40秒の粘度に調整して水性塗料組成物3−1を得た。
【0179】
実施例16〜20及び比較例9〜12
下記表4に示す配合で、実施例15と同様にして混合攪拌を行なうことにより、水性塗料組成物3−2〜3−10を得た。
【0180】
実施例15〜20及び比較例9〜12で得られた水性塗料組成物3−1〜3−10を使用して、それぞれについて以下のようにして試験板を作製した。
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、カチオン電着塗料)を膜厚が20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させた。
【0181】
該電着塗膜上に水性中塗塗料WP305(関西ペイント社製、商品名、アクリル/メラミン樹脂系水性中塗塗料)を膜厚が35μmとなるように塗装し、140℃で20分間加熱して硬化させた後、該中塗塗膜上に上塗ソリッドコート塗料として、各水性塗料組成物3−1〜3−10を膜厚が40μmとなるように塗装し、140℃で30分間加熱して上塗ソリッドコート塗膜を硬化させることにより試験板を得た。
【0182】
得られた各試験板について下記性能試験を行なった。性能試験結果も併せて表4に示す。なお、表中、塗料配合中の各成分の配合量はすべて固形分質量である。
【0183】
【表4】

【0184】
光沢: 試験板の20度鏡面反射率(20°光沢値)を測定して評価した。
【0185】
仕上がり性: 水性塗料組成物の製造1において記載した方法と同様にして、SWを測定した。
【0186】
耐水性(外観): 水性塗料組成物の製造1で記載した方法と同様にして、試験板の表面状態を評価した。
【0187】
耐水性(付着): 水性塗料組成物の製造2で記載した方法と同様にして、付着性の評価を行なった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、該水分散性アクリル重合体粒子(A)が、1,100,000以上の重量平均分子量を有し且つ1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が1,100,000〜10,000,000の範囲内の重量平均分子量を有するものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0.1〜25質量%のメタクリル酸を含んでなる重合性不飽和モノマー混合物を共重合することにより得られるものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0.1〜40質量%の水酸基含有メタクリレートモノマーを含んでなる重合性不飽和モノマー混合物を共重合することにより得られるものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、アクリレートモノマー及びスチレンを合計で20〜80質量%含んでなる重合性不飽和モノマー混合物を共重合することにより得られるものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーを、1分子中に−(CHCHO)−[ここでnは5〜60の整数である]で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下に共重合することにより得られるものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、0〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び0.1〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、10〜500nmの範囲内の平均粒子径を有するものである請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、1,4−ジオキサン溶媒中の質量濃度が1.35%の分散液の状態での分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.15以下である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項10】
水酸基含有樹脂(B)が、水酸基含有アクリル樹脂又は水酸基含有ポリエステル樹脂である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項11】
硬化剤(C)が、メラミン樹脂又はブロック化ポリイソシアネート化合物である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項12】
水分散性アクリル重合体粒子(A)、水酸基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)の合計樹脂固形分を基準にして、固形分として、水分散性アクリル重合体粒子(A)を1〜80質量%、水酸基含有樹脂(B)を1〜90質量%、そして硬化剤(C)を5〜60質量%の範囲内で含有する請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項13】
被塗物に、カチオン電着塗料(a)を塗装し加熱硬化させ、次いで中塗塗料(b)を塗装し加熱硬化させた後、上塗塗料(c)を塗装し硬化させることを含んでなる複層塗膜形成方法において、中塗塗料(b)及び/又は上塗塗料(c)として、請求項1〜12のいずれかに記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の水性塗料組成物が塗装された物品。

【公表番号】特表2010−522248(P2010−522248A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537832(P2009−537832)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/JP2008/055990
【国際公開番号】WO2008/123387
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】