説明

水性塗料組成物

【課題】本発明は、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、造膜性、かつ、耐久性に優れる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水性塗料組成物は、(A)反応性官能基を有する合成樹脂エマルション、(B)溶解度パラメータが7.5〜9.5(cal/cm1/2、水への溶解度が3.0g/100g未満、沸点が250℃以上である溶剤、(C)該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する水溶性化合物、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木構造物に使用する塗料分野においては有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料から、水を溶媒とする水性塗料への転換が図られつつある。これは、塗装作業者や居住者の健康被害を低減するためや、大気環境汚染を低減する目的で行われているものであり、年々水性化が進んできている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、水性塗料によって形成された塗膜は、一般的に溶剤型の塗料による塗膜に比べ、造膜性、乾燥性や、耐久性、耐候性等に劣る傾向があり、このような物性の改善が要望されている。
【0004】
このような要望に応えるため、水性塗料の結合材において、架橋性を有する官能基を導入する手法が採られている。
例えば、特許文献1では、エマルションに、ヒドラジン架橋を導入することにより、造膜性の向上と、形成塗膜の初期の乾燥性、耐久性の向上を図っている。
しかしながら、特許文献1の方法では、エマルション粒子表面の架橋反応、いわゆる粒子間架橋が主に進行すると考えられるため、エマルション粒子同士の融着が十分行われない場合がある。したがって、エマルション粒子間に微細な空隙が生じ、形成塗膜の表面がミクロ的にポーラスな状態となってしまい、塗膜の耐久性、耐候性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
【特許文献1】特許第3212653号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、(A)反応性官能基を有する合成樹脂エマルションと、(C)該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する化合物と、(B)特定の溶剤を含むことにより、(A)合成樹脂エマルション粒子の内部と外部の両方に、(C)反応性化合物が適度に分散し、粒子内部架橋と、粒子間架橋の両方が進行し、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、造膜性、かつ、耐久性にも優れる水性塗料組成物が得られることを見いだし、本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.(A)反応性官能基を有する合成樹脂エマルション、
(B)溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下、水への溶解度が3.0g/100g未満、沸点が250℃以上である溶剤、
(C)該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する水溶性化合物、を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
2.(A)が、カルボニル基を有する合成樹脂エマルションであり、
(C)が、ヒドラジド基含有水溶性化合物であることを特徴とする1.に記載の水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性塗料組成物は、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、造膜性、かつ、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を、実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
【0010】
本発明の水性塗料組成物は、(A)反応性官能基を有する合成樹脂エマルション(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)溶解度パラメータ(ハンセン法)が7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下(好ましくは7.8(cal/cm1/2以上9.2(cal/cm1/2以下、さらに好ましくは8.1(cal/cm1/2以上8.9(cal/cm1/2以下)、水への溶解度が3.0g/100g未満(好ましくは1.0g/100g以下、さらに好ましくは0.5g/100g以下)、沸点が250℃以上(好ましくは260℃以上、さらに好ましくは270℃以上)である溶剤(以下、「(B)成分」ともいう。)、(C)該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する化合物(以下、「(C)成分」ともいう。)を含有するものである。
【0011】
(A)成分は、反応性官能基を有する合成樹脂エマルションであり、後述する(C)成分と反応し、乾燥性を高め、緻密な塗膜を形成するものである。
(A)成分と(C)成分における反応性官能基の組合せとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、ヒドロキシル基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。
【0012】
本発明における(A)成分としては、上述の如き反応性官能基を有する限り、各種の合成樹脂エマルションを使用することができる。具体的には、例えば酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合系等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる(A)成分の反応性官能基としては、特に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エポキシ基から選ばれる少なくとも1種以上が好適である。
【0014】
(A)成分にカルボキシル基を付与するためには、例えば、カルボキシル基含有モノマーを使用して重合すればよい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸またはそのモノアルキルエステル等、あるいはこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等が挙げられる。このうち、特にアクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上が好適である。
【0015】
(A)成分にヒドロキシル基を付与するためには、例えば、ヒドロキシル基含有モノマーを使用して重合すればよい。
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル等が挙げられる。
【0016】
(A)成分にカルボニル基を付与するためには、例えば、カルボニル基含有モノマーを使用して重合すればよい。
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等が挙げられる。
【0017】
(A)成分にエポキシ基を付与するためには、例えば、エポキシ基含有モノマーを使用して重合すればよい。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジグリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー等が挙げられる。このうち、特に、(メタ)アクリル酸グリシジルが好適である。
【0018】
また、(A)成分を構成するモノマーとして、例えば、次のような他のモノマーも使用することができる。
他のモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、
(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖含有モノマー、
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有モノマー、
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー、
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー、
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー、
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー、
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オタタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー、
スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー、
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー、
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他のモノマー、
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明では、上述したモノマーを、必要に応じ各種添加剤とともに、通常知られる重合法、例えば乳化重合法等により合成樹脂エマルションを製造すればよい。
【0020】
添加剤としては、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等が挙げられ、各種重合法、目的に応じ、必要量添加すればよい。
【0021】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、反応性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤、
エレミノールJS−2(三洋化成工業製)、エレミノールRS−30(三洋化成工業製)、ラテムルS−180A(花王製)、アクアロンHS−05(第一工業製薬製)、アクアロンRN−10(第一工業製薬製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化製)等の反応性乳化剤等が挙げられる。
本発明では、特に、凍結安定性の面からポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤や、ノニオン性乳化剤の使用が好ましい。また耐水性等の面から反応性乳化剤の使用が好ましい。
【0022】
開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の過酸化系開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
【0023】
重合温度としては、特に限定されないが、20℃から90℃程度であればよい。
【0024】
また、得られた合成樹脂エマルションに、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する公知の化合物を付与することによっても、本発明(A)成分を得ることができる。
【0025】
本発明で用いる合成樹脂エマルションの平均粒子径は、特に限定されないが、50nmから1000nm(好ましくは50nmから500nm、さらに好ましくは50nmから300nm)であることが好ましい。
なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値であり、測定温度は25℃である。
【0026】
本発明で用いる合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、特に限定されないが、−30℃から70℃(好ましくは−20℃から60℃、さらに好ましくは−10℃から50℃)であることが好ましい。
なお本発明のガラス転移温度は、フォックス(FOX)の式より計算される値である。例えば、モノマー(1)及びモノマー(2)からなる2成分系において、それぞれのホモポリマーのガラス転移点Tg(1)およびTg(2)が分かっている場合には、該モノマー(1)及び(2)の2成分からなる共重合体のガラス転移点Tgは、次式に示すフォックス(FOX)の式(2成分)により計算値として求めることができる。
1/Tg=W(1)/Tg(1)+W(2)/Tg(2)(但し、W(1)+W(2)=1)
W(1):モノマー(1)の重量分率、W(2):モノマー(2)の重量分率、Tg(1):モノマー(1)のホモポリマーのTg値(単位:K)、Tg(2):モノマー(2)のホモポリマーのTg値(単位:K)
本発明におけるポリマーのTg値は上記の式を多成分系に一般化した式により計算したものである。
【0027】
(C)成分は、(A)成分の反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する水溶性化合物であり、(A)成分と(C)成分が反応し、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、耐久性にも優れる塗膜を得ることができる。
【0028】
(C)成分としては、例えば、
カルボジイミド基を含む化合物として、特開平10−60272号公報、特開平10−316930号公報、特開平11−60667号公報等に記載のもの等、
エポキシ基を含む化合物として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等、
アジリジン基を含む化合物として、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等、
オキサゾリン基を含む化合物として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の重合性オキサゾリン化合物を該化合物と共重合可能な単量体と共重合した樹脂等、
イソシアネート基を含む化合物として、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等、あるいはこれらの誘導体等、
アミノ基を含有する化合物として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、オレイルアミン等の脂肪族アミノ基含有化合物;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、DBU等の脂環族アミノ基含有化合物;メタフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミノ基含有化合物;m−キシリレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミノ基含有化合物等、
ヒドラジド基を含む化合物として、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等、
アルコキシシリル基を含有する化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン等、あるいはこれらの縮合物等、または、カルボキシル基、水酸基、スルホン基、オキシアルキレン基等を含有する化合物等、
が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
このような(C)成分水への溶解度は、特に限定されないが3.0g/100g以上、さらには5.0g/100g以上であることが好ましく、また上限は、200g/100g以下、さらには100g/100g以下であることが好ましい。
【0030】
(C)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、1重量部〜100重量部(好ましくは3重量部〜50重量部)であることが好ましい。1重量部より少ない場合は、架橋反応が十分進行せず、初期の乾燥性や、耐久性に劣る場合がある。また、100重量部より多い場合は、耐久性に劣る場合がある。
【0031】
本発明では、特に、(A)成分として、カルボニル基を有する合成樹脂エマルション、(C)成分として、ヒドラジド基含有化合物を使用することが好ましい。このような組み合わせは、緻密な塗膜を形成しやすく、かつ、初期の乾燥性や、耐久性にも優れる塗膜が得られやすい点で好適に用いられる。
【0032】
(B)成分は、溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下、水への溶解度が3.0g/100g未満、沸点が250℃以上である溶剤である。
【0033】
本発明では、(B)成分を加えることにより、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、耐久性に優れ、かつ造膜性にも優れる水性塗料組成物を得ることができるものである。
そのメカニズムは明らかではないが、おそらく次のようなメカニズムではないかと考えられる。
つまり、通常(C)成分は、水溶性の化合物であるため、(A)成分における合成樹脂エマルション粒子中と水等の媒体中とでは、水等の媒体中に多く存在する。したがって、(A)成分と(C)成分の反応は、主に合成樹脂エマルション粒子表面で進行することとなり、粒子間架橋が形成されると考えられる。このような場合、合成樹脂エマルション粒子同士の融着が十分行われず、エマルション粒子間に微細な空隙が生じ、形成塗膜の表面がミクロ的にポーラスな状態となってしまい、塗膜の物性(耐久性、耐候性や、汚れ除去性、下地への追従性等)に悪影響を与える恐れがある。
このような系に(B)成分を加えると、(B)成分が合成樹脂エマルション粒子中に入り込み、合成樹脂エマルション粒子同士の融着を促進し、緻密な塗膜を形成し、塗膜の物性に優れる塗膜を得ることができるものと考えられる。
さらに、(B)成分と(C)成分はある程度の親和性があり、(B)成分が合成樹脂エマルション粒子中へ移動する際にある特定量の(C)成分も合成樹脂エマルション粒子中へ移動するものと考えられる。このようして移動した(C)成分が(A)成分と、合成樹脂エマルション粒子内部で反応するため粒子内部架橋が起こるものと考えられる。
よって、(B)成分を加えることにより、(A)成分と(C)成分の反応が、合成樹脂エマルション粒子表面(粒子間架橋)、及び、合成樹脂エマルション粒子内部(粒子内部架橋)の両方で進行することにより、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、耐久性に優れ、かつ造膜性にも優れる水性塗料組成物が得られるものと考えられる。
【0034】
(B)成分の溶解度パラメータ(ハンセン法)が7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下であることにより、合成樹脂エマルション粒子内部に入り込んだ(B)成分が、合成樹脂エマルション粒子内部で均一に分散するため、造膜過程において、粒子同士の融着がスムーズに、かつ、迅速に行われ、緻密で、耐久性に優れる塗膜を得ることができる。さらに、(B)成分とともに存在する(C)成分も合成樹脂エマルション粒子内部に均一に分散されており、そのような状態で反応が進行するため、より緻密な塗膜を形成し、耐久性に優れる塗膜を得ることができる。
溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2より小さい場合、(B)成分は合成樹脂エマルション粒子の中心付近に集まる傾向があるため、上記効果が得られにくい。また、溶解度パラメータが9.5(cal/cm1/2より大きい場合、(B)成分は合成樹脂エマルション粒子内部の粒子表面付近に集まる傾向があるため、上記効果が得られにくい。
(B)成分の水への溶解度が、3.0g/100g未満(好ましくは1.0g/100g以下、さらに好ましくは0.5g/100g以下)であることにより、(B)成分は、(A)成分の媒体中と合成樹脂エマルション粒子とでは、合成樹脂エマルション粒子内部にリッチに存在する。
(B)成分の沸点は、250℃以上(好ましくは260℃以上、さらに好ましくは270℃以上)である。250℃以上であることにより、上述した効果を確実に得ることができる。250℃より低い場合、早期に揮発してしまい、緻密な塗膜が形成されにくく、耐久性に劣る場合がある。また、揮発性有機化合物(VOC)等の環境面においても、好ましいものではない。
【0035】
このような(B)成分は、上記条件を満たすものであれば、特に限定されず、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等が挙げられる。
【0036】
(B)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、0.5重量部〜50重量部(好ましくは1重量部〜40重量部)であることが好ましい。
【0037】
本発明では、(B)成分とともに、溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下(好ましくは、8.0(cal/cm1/2以上9.0(cal/cm1/2以下)、水への溶解度が3.0g/100g以上(好ましくは、3.0g/100g以上10.0g/100g以下)、沸点が250℃以上である溶剤(以下、「(D)成分」ともいう。)を用いることもできる。このような(D)成分は、合成樹脂エマルション粒子内部の粒子表面付近および/または合成樹脂エマルション粒子外部付近に多く存在するため、造膜過程において、粒子同士の融着がよりスムーズに、かつ、より迅速に行われ、緻密で、耐久性に優れる塗膜を得ることができる。
(D)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、30重量部以下(好ましくは0.1重量部〜20重量部)であることが好ましい。(D)成分が30重量部より多いと、耐久性、耐水性に劣る傾向がある。
このような(D)成分としては、例えば、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が挙げれられる。
【0038】
さらに、本発明では、(B)成分とともに、溶解度パラメータが9.5(cal/cm1/2超、水への溶解度が3.0g/100g未満、沸点が250℃以上である溶剤(以下、「(E)成分」ともいう。)を用いることもできる。このような(E)成分は、合成樹脂エマルション粒子内部の粒子表面付近に多く存在するため、造膜過程において、粒子同士の融着がよりスムーズに、かつ、より迅速に行われ、緻密で、耐久性に優れる塗膜を得ることができる。
(E)成分の含有量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、30重量部以下(好ましくは0.1重量部〜20重量部)であることが好ましい。(E)成分が30重量部より多いと、耐久性、耐水性に劣る傾向がある。
このような(E)成分としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げれられる。
【0039】
溶剤として、(B)成分、(D)成分、(E)成分以外に、本発明の効果を損なわない限り、公知の溶剤を含有してもよい。
【0040】
本発明では、(A)成分と(C)成分の反応を促進させるため、必要に応じ触媒を混合したり、熱を加えることもできる。このような触媒としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸コバルト等の金属塩;塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン化合物などのアルカリ触媒;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)等の有機チタニウム化合物;ジルコニウムテトラキス(セチルアセトネート)等の有機ジルコニウム化合物;ホウ酸等のホウ素化合物等が挙げられる。
【0041】
本発明の水性塗料組成物は、上記成分のほかに、必要に応じ通常用いられる公知の着色顔料、体質顔料、骨材、繊維、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、吸着剤、光触媒等を、単独あるいは併用して配合することにより得ることができる。さらに、適宜水を加えて粘度等を調整することもできる。
本発明では、必要に応じ、造膜助剤その他の揮発性有機化合物を混合することもできるが、その含有量は塗料中に5重量%未満(さらには1重量%未満)とすることが好ましい。本発明は、造膜助剤等の揮発性有機化合物がこのような低含有量であっても、優れた造膜性を示すことができる。
【0042】
例えば、着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、酸化第二鉄、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、クロムグリーン、オーカー、群青、紺青、コバルトグリーン、コバルトブルー等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、金属又は金属酸化物をコーティングしたガラスフレークまたは樹脂フィルム、ホログラム顔料、コレステリック結晶ポリマー顔料等の光輝性顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。なお、顔料容積濃度は、適宜設定することができる。
【0043】
体質顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、寒水石、陶土、チャイナクレー、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられる。
【0044】
このようにして得られた水性塗料組成物は、緻密な塗膜を形成し、初期の乾燥性、耐久性に優れ、かつ造膜性にも優れることから、上塗材として使用することが好ましいが、用途に応じ、下塗材、中塗材等に適用することも可能である。
【0045】
本発明における水性塗料組成物は、例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード、サイディングボード、押出成形板、スレート板、石綿セメント板、繊維混入セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、焼成タイル、磁器タイル、プラスチック板、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上に形成された塗膜(下塗材や既存塗膜等)等に対し適用することができる。
【0046】
水性塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、塗料の形態の応じ、例えば、刷毛、スプレー、ローラー、鏝、へら等の各種塗装器具を用いた塗装や、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。また、塗料の塗付量は、各種用途にあわせて、適宜設定すればよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0048】
・合成樹脂エマルションA:モノマー成分(スチレン、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド)、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%、平均粒子径120nm
・溶剤A:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(水への溶解度:0.001g/100g以下、溶解度パラメータ:8.5、沸点:280℃)
・溶剤B:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(水への溶解度:0.5g/100g、溶解度パラメータ:9.6、沸点:253℃)
・溶剤C:トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル(水への溶解度:3.1g/100g、溶解度パラメータ:8.1、沸点:274℃)
・溶剤D:エチレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度:∞、溶解度パラメータ:9.2、沸点:171℃)
・溶剤E:ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(水への溶解度:0.3g/100g、溶解度パラメータ:9.8、沸点:277℃)
・反応性官能基含有化合物:アジピン酸ジヒドラジド(水への溶解度:8.5g/100g)
【0049】
(実施例1)
合成樹脂エマルションA50重量部、溶剤A3重量部、反応性官能基含有化合物3重量部、酸化チタン分散液(酸化チタン60重量%)35重量部、水10重量部、消泡剤0.5重量部加え、プロペラ型攪拌羽根で30分間攪拌することにより水性塗料組成物1を製造した。得られた水性塗料組成物1について、次の各種試験を行った。
【0050】
(初期乾燥性試験)
作製した水性塗料組成物1を20℃、65%RH(以下、「標準状態」という)にて、150×120×3mmの透明なガラス板にWET膜厚が150μmとなるようにアプリケーター引きし、水浸漬したときに、塗膜が流出しなくなるまでの時間を測定した。
その結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
【0051】
(造膜性試験)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m塗付し、温度23℃、相対湿度50%(以下、「標準状態」ともいう。)で24時間養生し、さらにその上に、アクリル樹脂(Tg:−30℃)、酸化チタン、炭酸カルシウム、寒水石を主成分とする外装厚塗材E(樹脂含有量23重量%)をスプレーで2kg/m塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料組成物1を刷毛にて500g/m塗付し、温度2℃で24時間乾燥させた。24時間後の塗膜の割れの有無を目視にて評価した。結果は「○」であった。
◎:塗膜の割れ数0
〇:塗膜の割れ数1〜5
△:塗膜の割れ数6〜10
×:塗膜の割れ数11以上
【0052】
(耐久性試験)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をローラーで150g/m塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料組成物1をスプレーにて300g/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。耐久性試験では、14日間乾燥後、23℃の水に240時間浸漬し、192時間浸漬前後の光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製)にて測定し、光沢保持率を算出することによって評価した。評価は次の通りである。結果は「◎」であった。
◎:光沢保持率80%以上
○:光沢保持率70以上以上80%未満
△:光沢保持率60以上以上70%未満
×:光沢保持率60%未満
【0053】
(実施例2)
合成樹脂エマルションA50重量部、溶剤A3重量部、溶剤C1重量部、反応性官能基含有化合物3重量部、酸化チタン分散液(酸化チタン60重量%)35重量部、水10重量部、消泡剤0.5重量部加え、プロペラ型攪拌羽根で30分間攪拌することにより水性塗料組成物2を製造した。得られた水性塗料組成物2について、実施例1と同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「○」であった。
耐久性試験の結果は「◎」であった。
【0054】
(実施例3)
合成樹脂エマルションA50重量部、溶剤A3重量部、溶剤B1重量部、反応性官能基含有化合物3重量部、酸化チタン分散液(酸化チタン60重量%)35重量部、水10重量部、消泡剤0.5重量部加え、プロペラ型攪拌羽根で30分間攪拌することにより水性塗料組成物3を製造した。得られた水性塗料組成物3について、実施例1と同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「◎」であった。
耐久性試験の結果は「◎」であった。
【0055】
(実施例4)
合成樹脂エマルションA50重量部、溶剤A3重量部、溶剤B0.5重量部、溶剤C0.5重量部、反応性官能基含有化合物3重量部、酸化チタン分散液(酸化チタン60重量%)35重量部、水10重量部、消泡剤0.5重量部加え、プロペラ型攪拌羽根で30分間攪拌することにより水性塗料組成物4を製造した。得られた水性塗料組成物4について、実施例1と同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「◎」であった。
耐久性試験の結果は「◎」であった。
【0056】
(実施例5)
合成樹脂エマルションA50重量部、溶剤A3重量部、溶剤E1重量部、反応性官能基含有化合物3重量部、酸化チタン分散液(酸化チタン60重量%)35重量部、水10重量部、消泡剤0.5重量部加え、プロペラ型攪拌羽根で30分間攪拌することにより水性塗料組成物3を製造した。得られた水性塗料組成物3について、実施例1と同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「◎」であった。
耐久性試験の結果は「◎」であった。
【0057】
(比較例1)
溶剤Aを溶剤Bに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、水性塗料組成物を得、同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、塗膜が流出しなくなるのに約30分以上かかってしまった。
造膜性試験の結果は「◎」であった。
耐久性試験の結果は「◎」であった。
【0058】
(比較例2)
溶剤Aを溶剤Cに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、水性塗料組成物を得、同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、その結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「△」であった。
耐久性試験の結果は「△」であった。
【0059】
(比較例3)
溶剤Aを溶剤Dに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、水性塗料組成物を得、同様の試験を行った。
初期乾燥性試験の結果、その結果、約20分で塗膜が流出しなくなった。
造膜性試験の結果は「△」であった。
耐久性試験の結果は「△」であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性官能基を有する合成樹脂エマルション、
(B)溶解度パラメータが7.5(cal/cm1/2以上9.5(cal/cm1/2以下、水への溶解度が3.0g/100g未満、沸点が250℃以上である溶剤、
(C)該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する水溶性化合物、を含有することを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
(A)が、カルボニル基を有する合成樹脂エマルションであり、
(C)が、ヒドラジド基含有水溶性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。



【公開番号】特開2007−70614(P2007−70614A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215100(P2006−215100)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】