説明

水性塗料組成物

【課題】防食性、密着性、高温における耐黄変性、保管時の耐ブロッキング性に優れた水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】(A)メタクリル酸メチル、(B)下記化学式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体、および(C)その他の単量体から得られる共重合体で、かつ(A)100重量部に対して、(B)1〜40重量部、(C)0〜35重量部である共重合体を必須成分とする水性塗料組成物。


ここでR1はHあるいはCH、R2は炭素数1〜10の脂肪族基あるいは脂環族基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食性、密着性、高温における耐黄変性に優れた水性塗料組成物に関する。さらに詳しくは、水道管、ガス管等のいわゆる鋼製管の外面に塗装されて、優れた一時防錆、耐熱黄変性、耐ブロッキング性を発揮する水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水道管、ガス管等の鋼製管の外面に塗装され、後工程の内面塗装までの保管時、実使用時までの保管時、あるいは運搬時に対応した一時防錆のための保護塗料としては、もっぱら有機溶剤に溶解したポリメタクリル酸メチル樹脂が使用されているが、近年、環境問題対策や安全性の観点から有機溶剤型塗料から水性塗料への転換が望まれている。しかしながら、ポリメタクリル酸メチル樹脂を単に水系化したエマルジョンにおいては、溶剤系と比較して、基材への密着性が劣り、従って防食性が不十分であり、また密着性を改善するために、樹脂のガラス転移温度を低下させると、高温下の後加工における黄変が大きくなり、また保管時、運搬時の耐ブロッキング性も劣るという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、防食性、密着性、高温における耐黄変性、保管時の耐ブロッキング性に優れた水性塗料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(A)メタクリル酸メチル、(B)下記化学式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体、および(C)その他の単量体から得られる共重合体で、かつ(A)100重量部に対して、(B)1〜40重量部、(C)0〜35重量部、より好ましくは(A)100重量部に対して、(B)1〜30重量部、(C)0〜30重量部、さらに好ましくは(A)100重量部に対して、(B)1〜20重量部、(C)0〜30重量部である共重合体を必須成分とする水性塗料組成物に関しており、上記課題を解決することができる。
【0005】
【化1】

【0006】
ここでR1はHあるいはCH、R2は炭素数1〜10の脂肪族基あるいは脂環族基を表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性塗料組成物は、防食性、密着性、高温における耐黄変性、保管時の耐ブロッキング性に優れた塗膜を与えることができる。また水性塗料であるため、従来の溶剤系塗料と比較して、溶剤使用量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水性塗料組成物に使用される共重合体は、(A)メタクリル酸メチルおよび(B)前記式に示すカルボキシル基含有単量体を必須成分としているが、そのカルボキシル基含有単量体(以下、単量体(B)と称する)としては、具体的には、例えば、マロン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、グルタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、アジピン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ピメリン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、スベリン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、アゼライン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、セバシン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの単量体(B)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0009】
(A)メタクリル酸メチルと単量体(B)との混合比率は、素地との密着性および防食性との点から(A)100重量部に対して(B)1〜40重量部の範囲内が好ましく、1〜35重量部がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。単量体(B)の含有量が1重量部未満であれば、素地との密着性が不良であり、40重量部を超えると防食性が低下するため、好ましくない。
【0010】
本発明において使用可能な(A)メタクリル酸メチルおよび単量体(B)以外のその他の単量体(C)としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリレート、また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリレートが挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの単量体(C)はいずれも耐熱黄変性を損なわない範囲で使用可能である。
【0011】
本発明の水性塗料組成物に使用される共重合体の製造方法としては、特に限定されず、具体例は乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。また、溶液重合または塊状重合等で重合して得られた共重合体を塩基性物質で中和後に水に分散させてもよい。
【0012】
乳化重合にて共重合体を得る場合、反応温度としては通常40〜100℃が選ばれる。また、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、公知のものを用いることができる。
【0013】
本発明の水性樹脂組成物を乳化重合で製造するに際して、使用可能な陰イオン性の界面活性剤を例示すると、ラウリル硫酸ナトリウム、アンモニウムのような高級アルキル硫酸のアルカリ塩、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸のナトリウム、アンモニウムのようなアルキルアリールスルホン酸のアルカリ塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸のナトリウム、アンモニウムのようなアルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ塩、ノニルフェノールのポリエトキシエタノール硫酸ナトリウム、アンモニウムのようなアルキルアリールポリエトキシエタノール硫酸または同スルホン酸のアルカリ塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルまたは同スルホン酸のナトリウム、あるいはアンモニウム塩、さらには親水性−疎水性のバランスを有するカルボキシル基含有共重合体のアルカリ塩等が挙げられる。
【0014】
また、ノニオン性の界面活性剤を例示すると、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシエチンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートのようなポリオキシエチレン誘導体類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートのようなソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンがブロック共重合したいわゆるプルロニックタイプ、その他ポリオキシエチレンアルキルアミン類、アルキルアルカノールアミド類、プロペニル基あるいはその他の重合性不飽和基、およびポリオキシエチレン基を含有する反応性乳化剤等が挙げられる。
【0015】
界面活性剤の使用方法は、単量体の重合時点から使用する方法、あるいは重合後水分散化を行う時点で使用する方法があり、どちらの方法でも問題はない。また界面活性剤の使用量については全単量体に対して重量で1.5〜5%が好ましい。
【0016】
溶液重合にて共重合体を得る場合、反応温度としては通常40〜170℃が選ばれる。溶液重合における反応溶剤としては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の親水性溶剤を用いるのが好ましい。また、重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物等、公知のものを用いることができる。
【0017】
乳化重合で作製した共重合体は、塩基性物質で中和することができる。また、溶液重合で作製した共重合体を水分散化するために、この共重合体を塩基性物質で中和することができる。中和に用いる塩基性物質としては、例えば、有機アミンあるいは無機塩基である。かかる塩基性物質としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン、アンモニア、エチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0018】
上記共重合体から得られる水性塗料組成物は、必要により、造膜助剤を含んでいてもよい。 造膜助剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、テキサノール、テキサノールイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの造膜助剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、顔料、顔料分散剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、防カビ剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、艶消し剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでもよい。
【0020】
本発明の水性塗料組成物を塗装するときの塗装方法としては、例えば、エヤースプレー塗装、エヤレススプレー塗装、刷毛塗り塗装、ローラー塗装など、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特別な記載のない限り、実施例及び比較例に記載の「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。
【0022】
〔実施例1〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル80部とコハク酸2−メタクリロイルオキシエチル20部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度49.9%、粘度100mPa・sの水性樹脂組成物(1)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(1)を得た。
【0023】
試験板の作製
上述のように調製した水性塗料組成物を、キシレンで脱脂した冷間圧延鋼板(SPCC−SD)(150mm×70mm×0.8mm)にエヤースプレーを使用して乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗装し、80℃の熱風循環式乾燥炉内で10分間乾燥させ、試験板を得た。
【0024】
防食性試験
水性塗料組成物を塗装した試験板をJIS K 5600−6−1に準じ、3%塩化ナトリウム水溶液に96時間浸漬後、錆の評価を行った。錆の評価はJIS K 5600−8−3記載のRiにより表記した。
Ri0:錆面積0%
Ri1:錆面積0.05%
Ri2:錆面積0.5%
Ri3:錆面積1%
Ri4:錆面積8%
Ri5:錆面積40〜50%
【0025】
密着性試験
水性塗料組成物を塗装した試験板を、JIS K 5600−5−6に規定されているクロスカット法に準じて碁盤目密着性試験を行い、テープ剥離後に残ったマスの数により評価した。(「テープ剥離後塗膜残存マス数/全マス数」で記載)
【0026】
耐黄変性試験
水性塗料組成物を4milのアプリケーターですりガラス板に塗布し、室温で1日乾燥させた後に300℃で1時間加熱し、加熱前塗膜との色差△E値を測定した。
【0027】
耐ブロッキング性試験
80℃の熱風循環式乾燥炉内で10分間乾燥させた2枚の試験板を、取り出してから30秒後に塗装面同士を重ね合わせて、10kg/cmの加重を5分間かける。この2枚の試験板同士の付着の有無により評価を行った。
○:試験板同士が簡単に外れる
△:付着が見られるが、手で外すことができる
×:試験板同士を外したときに塗膜の剥がれが見られるまたは試験板同士が外れない
水性塗料組成物(1)についての試験結果は、防食性試験はRi2であり、密着性試験は100/100であり、耐黄変性試験は△E=8であり、対ブロッキング性試験は○であった。
【0028】
〔実施例2〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル85部とヘキサヒドロフタル酸2−メタクリロイルオキシエチル15部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度50.0%、粘度110mPa・sの水性樹脂組成物(2)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(2)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi0であり、密着性試験は100/100であり、耐黄変性試験は△E=9であり、耐ブロッキング性は○であった。
【0029】
〔実施例3〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル95部とコハク酸2−メタクリロイルオキシエチル5部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度50.1%、粘度110mPa・sの水性樹脂組成物(3)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(3)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi0であり、密着性試験は100/100であり、耐黄変性試験は△E=7であり、耐ブロッキング性は○であった。
【0030】
〔実施例4〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル75部とコハク酸2−メタクリロイルオキシエチル5部とメタクリル酸2−エチルヘキシル20部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度49.8%、粘度90mPa・sの水性樹脂組成物(4)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(4)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi0であり、密着性試験は100/100であり、耐黄変性試験は△E=6であり、耐ブロッキング性は○であった。
【0031】
〔実施例5〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル80部とコハク酸2−メタクリロイルオキシエチル10部とメタクリル酸2−エチルヘキシル10部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度50.0%、粘度90mPa・sの水性樹脂組成物(5)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(5)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi0であり、密着性試験は100/100であり、耐黄変性試験は△E=7であり、耐ブロッキング性は○であった。
【0032】
〔比較例1〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸20部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度49.8%、粘度90mPa・sの水性樹脂組成物(6)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、
10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(6)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi4であり、密着性試験は80/100であり、耐黄変性試験は△E=34であり、耐ブロッキング性は○であった。
【0033】
〔比較例2〕
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とした。この反応器に、脱イオン水53部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら73℃〜77℃に昇温した。一方、脱イオン水40部とネオペレックスG−15(花王株式会社製、固形分16%)9部との混合溶液中に、メタクリル酸メチル70部とアクリル酸n−ブチル30部との混合溶液を攪拌下で加えていき、乳化モノマーを作製した。
次に、反応器にペルオキソ二硫酸カリウム1部を加えた後、乳化モノマーを3時間にわたって滴下した。滴下終了後、反応溶液を73℃〜77℃で1時間保持し、さらに78℃〜82℃で2時間保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。その後25%アンモニア水2部を加えた。これにより、固形分濃度50.2%、粘度100mPa・sの水性樹脂組成物(7)を得た。
得られた水性樹脂組成物100部と、ブチルカルビトール15部と、脱イオン水15部と、10%亜硝酸ナトリウム水溶液2部を混合することにより、水性塗料組成物(7)を得た。
試験板を作製し、防食性試験、密着性試験、耐黄変性試験、耐ブロッキング性試験を行った。結果は防食性試験はRi0であり、密着性試験は50/100であり、耐黄変性試験は△E=27であり、耐ブロッキング性は×であった。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の水性塗料組成物は、防食性、密着性、高温における耐黄変性に優れており、そのため、鋼製管外面に塗装される保護塗料として、優れた一時防錆、耐熱黄変性を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタクリル酸メチル、(B)下記化学式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体、および(C)その他の単量体から得られる共重合体で、かつ(A)100重量部に対して、(B)1〜40重量部、(C)0〜35重量部である共重合体を必須成分とする水性塗料組成物。
【化1】

ここでR1はHあるいはCH、R2は炭素数1〜10の脂肪族基あるいは脂環族基を表す。
【請求項2】
共重合体の組成が(A)100重量部に対して、(B)1〜30重量部、(C)0〜30重量部である特許請求項1記載の水性塗料組成物。

【公開番号】特開2011−111542(P2011−111542A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269721(P2009−269721)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000192844)神東塗料株式会社 (48)
【Fターム(参考)】