説明

水性塗料組成物

【課題】貯蔵安定性に優れ、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】カルボジイミド基および炭素原子数6〜1,000個の有機基が結合したアシルウレア基を有する変性カルボジイミド化合物(A)並びにカルボキシル基含有樹脂(B)を含む水性塗料組成物は貯蔵安定性に優れ、変性カルボジイミド化合物(A)の有するカルボジイミド基とカルボキシル基含有樹脂(B)の有するカルボキシル基との架橋反応により、優れた耐水性を有する塗膜を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から、塗料からの揮発性有機溶剤(VOC)の排出量を低減するため、有機溶剤を溶媒として用いた溶剤型塗料から水性塗料への転換が進められている。
【0003】
水性塗料には、塗膜形成用樹脂として、水溶性又は水分散性のカルボキシル基含有樹脂が一般に用いられている。該カルボキシル基は、上記塗膜形成用樹脂を水性塗料中に溶解又は分散させるための機能性基としての役割を有する。しかし、塗膜形成後、該カルボキシル基が塗膜中への水の浸透を促進するために塗膜の耐水性を低下させるという、課題があった。
【0004】
このような課題を解決する方法として、上記カルボキシル基との反応性を有するカルボジイミド化合物を、架橋剤として上記水性塗料中に配合することにより、塗膜中に残存するカルボキシル基の量を減らし、さらに塗膜の架橋密度を向上させることによって、塗膜の耐水性や強度等を向上させることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、疎水性セグメント及び親水性セグメントを有するカルボジイミド化合物と、カルボキシル基含有樹脂のエマルションとを含む架橋性塗料組成物が開示されている。該カルボジイミド化合物は自己乳化性であるためにカルボキシル基含有樹脂のエマルションと混合することにより架橋性の塗料組成物を得ることが可能である。しかしながら、該塗料組成物は、塗料の貯蔵中に上記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基とカルボジイミド化合物との反応が進行し、塗料粘度が上がったり、ゲル化したりする場合があり、貯蔵安定性が不十分であった。
【0006】
また、特許文献2には、(A)分子中にメチレン基の炭素に結合したイソシアネート基を少なくとも2個以上有するイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上のイソシアネートと、(B)(A)以外の脂環族又は脂肪族ジイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上のイソシアネートとの脱二酸化炭素縮合反応物の末端イソシアネート基が親水性基で封止されたカルボジイミド化合物を主成分とするカルボジイミド系架橋剤が、架橋対象である高分子樹脂との相溶性、反応性に優れ、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性等を有する優れた塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該カルボジイミド系架橋剤は、上記高分子樹脂との相溶性及び反応性が高いため、該カルボジイミド系架橋剤を使用した塗料は、塗料の貯蔵中に上記高分子樹脂とカルボジイミド系架橋剤との反応が進行し、塗料粘度が上がったり、ゲル化したりする場合があり、貯蔵安定性が不十分であった。
【0007】
また、特許文献3には、反応性及び貯蔵性が良好であって、水性樹脂用架橋剤としての取り扱いを容易にした水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが開示されている。この水性ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを使用することにより、塗料の貯蔵安定性に向上は見られるものの、未だ不十分なレベルであり、貯蔵安定性の更なる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−264128号公報
【特許文献2】特開平10−316930号公報
【特許文献3】特開平2000−7642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成できる水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を行い、特定の構造を有する変性カルボジイミド化合物を含有する水性塗料組成物が、貯蔵安定性に優れ、かつ優れた耐水性を有する塗膜を形成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、完成されたものである。
【0011】
すなわち本発明は、
1.少なくとも2個のカルボジイミド基及び少なくとも1個の一般式(1)で表される2価のアシルウレア基を1分子中に有する変性カルボジイミド化合物(A)、並びにカルボキシル基含有樹脂(B)を含む水性塗料組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Rは炭素原子数6〜1,000個の有機基を表わす)
2.変性カルボジイミド化合物(A)が、イソシアネート基を有していてもよいカルボジイミド化合物(a1)と、少なくとも1個のカルボキシル基及び炭素原子数6〜1,000個の有機基を1分子中に有する有機酸化合物(a2)とを、上記カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基1モルに対して上記有機酸化合物(a2)のカルボキシル基を0.01〜0.7モルの範囲において反応させることにより得られた変性カルボジイミド化合物(A1)である1項に記載の水性塗料組成物。
3.変性カルボジイミド化合物(A1)がイソシアネート基を有する変性カルボジイミド化合物(A1−1)であって、変性カルボジイミド化合物(A)が、変性カルボジイミド化合物(A1−1)と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを反応させてなる変性カルボジイミド化合物(A2)である2項に記載の水性塗料組成物。
4.カルボジイミド化合物(a1)が、ポリイソシアネート化合物(c1)及びカルボジイミド化触媒を含む混合物(I)を反応させることにより得られたカルボジイミド化合物(a1−1)である2又は3項に記載の水性塗料組成物。
5.イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)及び/又は有機酸化合物(a2)がポリオキシアルキレン基を有する化合物であって、該ポリオキシアルキレン基を有する化合物が変性カルボジイミド化合物(A)中に5〜50質量%含有されたものである2〜4項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
6.1〜5項のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品、に関する。
【発明の効果】
【0014】
従来から公知のカルボジイミド化合物とカルボキシル基含有樹脂を含む水性塗料組成物は、貯蔵中に該組成物の粘度が増大し、ゲル化に至る時間が極めて短いという問題を有していた。ところが、上記カルボジイミド化合物の代わりに、特定の有機基が結合したアシルウレア基を有する変性カルボジイミド化合物を用いた本発明の水性塗料組成物は、粘度の増大速度が大幅に低下し、貯蔵安定性に優れている。一方、本発明の水性塗料組成物から得られた硬化塗膜は、従来から公知のカルボジイミド化合物とカルボキシル基含有樹脂を含む水性塗料組成物から得られた塗膜と同等以上の耐水性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
【0016】
本発明の水性塗料組成物は、以下に説明する変性カルボジイミド化合物(A)を含有する。
【0017】
変性カルボジイミド化合物(A)
変性カルボジイミド化合物(A)は、少なくとも2個のカルボジイミド基及び少なくとも1個の一般式(1)で表される2価のアシルウレア基を1分子中に有するものである。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Rは炭素原子数6〜1,000個の有機基を表わす)
変性カルボジイミド化合物(A)としては、イソシアネート基を有していてもよいカルボジイミド化合物(a1)と、少なくとも1個のカルボキシル基及び炭素原子数6〜1,000個の有機基を1分子中に有する有機酸化合物(a2)とを、上記カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基1モルに対して上記有機酸化合物(a2)のカルボキシル基を0.01〜0.7モルの範囲において反応させることにより得られた化合物(A1)を挙げることができる。
【0020】
カルボジイミド化合物(a1)
カルボジイミド化合物(a1)としてはイソシアネート基を有していてもよく、1分子中に少なくとも1個のカルボジイミド基を有する公知の化合物を挙げることができる。
【0021】
カルボジイミド化合物(a1)は、ポリイソシアネート化合物(c1)及びカルボジイミド化触媒を含む混合物(I)を反応させることにより得られたカルボジイミド化合物(a1−1)、及び該カルボジイミド化合物(a1−1)と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを、さらに反応させることにより得られたカルボジイミド化合物(a1−2)からなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボジイミド化合物である。
【0022】
上記カルボジイミド化合物(a1−1)は、既知の方法で製造することができる。具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物(c1)及びカルボジイミド化触媒を含む混合物(I)を混合しながら加熱し、脱二酸化炭素反応を伴う縮合反応によって製造することができる。なお、混合物(I)は、さらにイソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)を、(c1)に含まれるイソシアネート基のモル数が(d1)に含まれるイソシアネート基と反応性の基のモル数よりも大きくなるように含んでいてもよい。
【0023】
上記ポリイソシアネート化合物(c1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、上記ポリイソシアネートと、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)との、付加反応生成物などを挙げることができる。
【0024】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0025】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノールボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0026】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0027】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4'−もしくは4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0028】
上記ポリイソシアネート化合物(c1)としては、形成される塗膜の耐水性の観点から、メチレンビス(シクロヘキサン−4,1−ジイル)ジイソシアネート、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン及び1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物が好ましく、1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン及び1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼンが特に好ましい。
【0029】
上記イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)としては、イソシアネート基と反応性の水酸基を有する化合物(d1−1)、アミノ基を有する化合物(d1−2)、ヒドラジド基を有する化合物(d1−3)等のイソシアネート基と反応性の基を有する化合物を挙げることができ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
水酸基を有する化合物(d1−1)としては、例えば、一価のアルコール(d1−1−1)、ポリオール(d1−1−2)等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記一価のアルコール(d1−1−1)としては、メタノール、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール等の一価のアルコール、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンのカルボン酸モノエステル等の水酸基を1分子中に1個有する化合物が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。また、上記一価のアルコール以外のアルコール成分としては、例えば、;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0032】
上記ポリオール(d1−1−2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリグリセリン、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。
【0033】
上記脂肪族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記脂環族ジオールは、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物であり、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記芳香族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物であり、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記ポリオキシアルキレングリコールは、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体等のポリエーテルジオール類、ポリグリセリン等のポリエーテルポリオール類等を挙げることができる。
【0037】
上記ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸と多価アルコール成分とをエステル化反応又はエステル交換反応せしめることにより得ることができる。また、該ポリエステルポリオールは、ポリオールを開始種とするε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によっても得ることができる。
【0038】
上記ポリカーボネートポリオールは、例えば、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ホスゲン等とを反応せしめることにより得ることができる。
【0039】
脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリグリセリン、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等以外の多価アルコールとしては、例えば、;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
アミノ基を有する化合物(d1−2)としては、例えば、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を好適に使用することができる。該一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、ヒドラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ノールボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン、或いは、HUNTSMAN社のアミノ基を有するポリオキシアルキレン化合物(JEFFAMINEシリーズなど)等を挙げることができる。
【0041】
ヒドラジド基を有する化合物(d1−3)としては、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、琥珀酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,1’−エチレンヒドラジン、1,1’−トリメチレンヒドラジン、1,1’−(1,4−ブチレン)ジヒドラジン等のヒドラジン誘導体を挙げることができる。これらの一分子中にヒドラジド基を2個以上有する化合物は、1種を単独で用いることができ、又は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
上記以外のイソシアナート基と反応性の基を有する化合物(d1)として、例えば、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、2−メルカプトエタノール、α−チオグリセロール等を挙げることができる。
【0043】
ポリイソシアネート化合物(c1)は、上記ポリイソシアネート化合物と、さらにイソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを、反応させて得られた付加反応生成物であってもよい。このものの製造は、上記ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを、無溶剤或いは有機溶媒中に溶解させた後、必要に応じてウレタン化触媒、例えば、ジブチルスズジラウレートを100ppm程度添加し、30〜150℃程度で2〜10時間程度反応させることによって行なうことができる。該反応は、上記ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基のモル数を1モルとした場合、化合物(d1)に含まれるイソシアネート基と反応性の基のモル数を0.99モル以下、好ましくは0.96モル以下、さらに好ましくは0.92モル以下の範囲で行うことができる。化合物(d1)に含まれるイソシアネート基と反応性の基のモル数が0.99モルよりも大きいと、本発明の変性カルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基の濃度が低くなり、水性塗料組成物から得られた塗膜の耐水性が低下することがある。
【0044】
上記カルボジイミド化合物(a1−2)は、上記カルボジイミド化合物(a1−1)と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを、無溶剤或いは有機溶媒中に溶解させた後、必要に応じてウレタン化触媒、例えば、ジブチルスズジラウレートを100ppm程度添加し、30〜150℃程度で2〜10時間程度反応させることによって、得ることができる。
【0045】
上記カルボジイミド化合物(a1−1)の製造において、ポリイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応には、通常、カルボジイミド化触媒が使用される。該カルボジイミド化触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、又はこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシドを使用することができ、反応性の面からは3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。
【0046】
また、上記縮合反応における反応温度は、反応効率と、反応生成物の均一性確保の観点から、80〜180℃の範囲内とすることが好ましい。
【0047】
また、得られる変性カルボジイミド化合物の水分散性を確保する観点から、上記カルボジイミド化合物(a1−1)及び(a1−2)の重合度は2〜30が好ましく、2〜10がさらに好ましい。また、上記縮合反応を速やかに完結させるため、イソシアネート化合物の反応は窒素等の不活性ガスの気流下で行うことが好ましい。
【0048】
有機酸化合物(a2)
少なくとも1個のカルボキシル基及び炭素原子数6〜1,000個の有機基を有する有機酸化合物(a2)は、公知の化合物から適宜選択することができる。該有機基の炭素原子数は、得られた変性カルボジイミド化合物の水分散性の観点から、6〜1,000個、好ましくは7〜600個、さらに8〜300個が好ましい。有機酸化合物(a2)は、具体的には例えば脂肪酸(a2−1)、芳香族酸(a2−2)、カルボキシル基を有するポリエステル(a2−3)等を挙げることができる。
【0049】
脂肪酸(a2−1)としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、ラウリン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸(9−オクタデカン酸)、リノール酸、リノレン酸、ステアロル酸等が挙げられる。
【0050】
芳香族酸(a2−2)としては、例えば、安息香酸、ナフトエ酸、フタル酸、イソフル酸、テレフタル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、アニス酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸を挙げることができる。
【0051】
カルボキシル基を有するポリエステル(a2−3)としては、例えば、ポリカルボン酸とポリオールとの縮合反応物、ポリ乳酸、ヒドロキシステアリン酸の縮合反応物等を挙げることができる。
【0052】
また、有機酸化合物(a2)としては、水酸基を有する化合物又はアミノ基を有する化合物と、分子内の2つのカルボン酸が縮合した酸無水物基を有する化合物とを、反応させて得られたカルボキシル基含有化合物を用いてもよい。該水酸基を有する化合物としては、前記一価のアルコール(d1−1−1)、ポリオール(d1−1−2)、並びに一価のアルコール(d1−1−1)及び/又はポリオール(d1−1−2)を開始種とするε―カプロラクトンの開環重合反応物、ジメチロールブタン酸又はジメチロールプロピオン酸を開始種とするε―カプロラクトンの開環重合反応物等を挙げることができる。上記アミノ基を有する化合物としては、前記(d1−2)において例示した化合物以外に、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、ココアルキルアミン、牛脂アルキルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、オレイルアミン、硬化牛脂アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、HUNTSMAN社のアミノ基及びポリオキシアルキレン基を有する化合物(JEFFAMINEシリーズ)等を挙げることができる。上記酸無水物基含有化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸無水物、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等を挙げることができる。
【0053】
水酸基を有する化合物又はアミノ基を有する化合物と、酸無水物基含有化合物との反応は、両化合物を混合し、20〜300℃の範囲内で行うことができ、混合物の酸価が反応時間に対してほぼ一定値になった時点で反応を終了することができる。
【0054】
有機酸化合物(a2)は、本発明において上記の化合物に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂等のカルボキシル基を有する樹脂であってもよい。上記した有機酸化合物(a2)の中でも、脂肪酸(a2−1)、芳香族酸(a2−2)、数平均分子量が5,000以下のカルボキシル基を有するポリエステル(a2−3)、ε―カプロラクトンの開環重合反応物から誘導される有機酸化合物、ポリオキシアルキレン基を有する有機酸化合物が特に好ましい。
【0055】
変性カルボジイミド化合物(A)
本発明に係る変性カルボジイミド化合物(A)としては、イソシアネート基を有していてもよいカルボジイミド化合物(a1)と、少なくとも1個のカルボキシル基及び炭素原子数6〜1,000個の有機基を1分子中に有する有機酸化合物(a2)とを、該カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基1モルに対して該有機酸化合物(a2)のカルボキシル基を0.01〜0.7モルの範囲において反応させることにより得られた化合物(A1)を挙げることができる。
上記変性カルボジイミド化合物(A1)は、カルボジイミド化合物(a1)と有機酸化合物(a2)とを含む混合物を、撹拌しながら20〜150℃に加熱して反応させることにより得ることができる。該反応において、カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基と、有機酸化合物(a2)のカルボキシル基とが反応して、アシルウレア基を生成する。上記混合物は、有機溶媒を含んでいてもよい。使用可能な有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン及びアセトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;エチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;並びに、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の混合エーテルアセテート類、トルエン、キシレン、ナフサ等の芳香族溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を挙げることができ、これらは1種類以上を混合して用いることができる。
【0056】
上記反応は、上記混合物の酸価の値が0に達するか、或いは反応時間の経過に対する該混合物の酸価の低下が実質的に認められなくなった時点で終了してよい。
【0057】
上記反応は、カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基1モルに対して有機酸化合物(a2)のカルボキシル基を0.01〜0.7モル、好ましくは、0.01〜0.6モル、さらに好ましくは、0.01〜0.5モルの範囲において行うことができる。該カルボキシル基のモル数が0.01モルよりも小さいと、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性が不十分となることがあり、0.7モルよりも大きいと、本発明の水性塗料組成物から得られる塗膜の耐水性が不十分となることがある。
【0058】
本発明における変性カルボジイミド化合物(A)は、得られる本発明の水性塗料組成物の安定性を確保するために、親水基を有することが好ましい。該親水基は、ノニオン性基が好ましく、特に下記一般式(2)に示すポリオキシアルキレン基の構造を有する親水基が好ましい。
【0059】
【化3】

【0060】
(式中Rは、炭素原子数2〜4個のアルキレン基、nは2より大きい整数を表す)
該親水性基は、変性カルボジイミド化合物(A)の製造において、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)としてポリオキシアルキレン基を有する化合物(d1−POA)及び/又は有機酸化合物(a2)としてポリオキシアルキレン基を有する化合物(a2−POA)を用いることにより、変性カルボジイミド化合物(A)に導入することが可能である。
【0061】
上記ポリオキシアルキレン基を有する化合物(d1−POA)及び有機酸化合物(a2−POA)の合計質量は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性および塗膜の耐水性の観点から、変性カルボジイミド化合物の全固形分100質量部において、5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは、15〜35質量部である。ポリオキシアルキレン基を有する化合物の質量が5質量部よりも小さいと、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性が不十分となることがあり、50質量部よりも大きいと、本発明の水性塗料組成物から得られる塗膜の耐水性が不十分となることがある。
【0062】
本発明の変性カルボジイミド化合物(A)の重量平均分子量は、約400〜1,000,000、好ましくは約600〜500,000、さらに好ましくは約800〜200,000である。
【0063】
なお、本明細書において、数平均分子量又は重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0064】
また、本発明の水性塗料組成物は、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性向上の観点から、変性カルボジイミド化合物(A)は、上記変性カルボジイミド化合物(A1)がイソシアネート基を有するカルボジイミド化合物(A1−1)であって、該カルボジイミド化合物(A1−1)と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とをさらに反応させて得られた変性カルボジイミド化合物(A2)を含むものであってもよい。上記変性カルボジイミド化合物(A2)は、例えば、上記変性カルボジイミド化合物(A1)を、水もしくは水を主成分とする媒体、または有機溶媒に分散または溶解させた後に、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)を混合して、鎖伸長して得ることができる。
【0065】
また、変性カルボジイミド化合物(A)の水または水を主成分とする媒体(以下、「水性媒体」と記す)への分散及び/又は溶解は、変性カルボジイミド化合物(A)をディスパー等を用いて攪拌しながら、必要に応じて乳化剤を使用して、水性媒体を加えることにより行うことができる。次いで、例えば、減圧下にて約30〜80℃程度で有機溶媒を留去することにより、有機溶媒の含有量を少なくした変性カルボジイミド化合物(A)の分散体を得てもよい。
【0066】
本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、変性カルボジイミド化合物(A)のアシルウレア基の当量(g/mol)は、500〜20,000g/mol、好ましくは1,000〜15,000g/mol、さらに好ましくは2,000〜12,000g/molの範囲内であることが好適である。
【0067】
また、得られる塗膜の耐水性の観点から、変性カルボジイミド化合物(A)のカルボジイミド当量(g/mol)は、200〜1,000、好ましくは250〜800、さらに好ましくは300〜700の範囲内であることが好適である。なお、上記カルボジイミド当量は、カルボジイミド基を1mol与えるために必要なポリカルボジイミド化合物の重さ[g]であって、例えば、変性カルボジイミド化合物(A)を製造する際に使用するカルボジイミド化合物(a1−1)及び(a1−2)中のカルボジイミド基の量を調節したり、使用原料中のカルボジイミド化合物(a1−1)、及び(a1−2)の質量比を調節したりすることによって調整することができる。
【0068】
カルボキシル基含有樹脂(B)
カルボキシル基含有樹脂(B)は、該カルボキシル基と上記変性カルボジイミド化合物(A)が有するカルボジイミド基とを反応させることにより、形成塗膜に架橋構造を導入することができる成分であり、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する樹脂であれば、特に限定されることはなく用いることができる。上記カルボキシル基含有樹脂(B)は、例えば、アクリル樹脂(B1)、ポリエステル樹脂(B2)、ポリウレタン樹脂(B3)、その他樹脂(B4)等を挙げることができ、これらは単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記カルボキシル基含有樹脂(B)は、水性媒体中で使用できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水性媒体に溶解或いは分散させたもの、エマルション重合によって製造されたエマルション樹脂、分散重合によって製造された分散樹脂等を挙げることができる。また、上記エマルション樹脂或いは分散樹脂等は、コア・シェル型のエマルション樹脂又は樹脂であってもよく、水性媒体中で流動性を有する限りにおいては、架橋構造を有していてもよい。カルボキシル基含有樹脂(B)は、必要に応じて界面活性剤、中和剤、有機溶媒等を用いて、水性媒体に、分散又は溶解させたものを使用することができる。
【0069】
本発明の水性塗料組成物から得られる塗膜の耐水性の観点から、上記カルボキシル基含有樹脂(B)の酸価は、2〜200mgKOH/g程度、5〜150mgKOH/g程度が好ましく、8〜100mgKOH/g程度がさらに好ましい。
【0070】
上記した樹脂の中で、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂(B1)は、バルク重合、溶液重合、エマルション重合、分散重合などの公知の重合方法により、カルボキシル基を有する共重合性不飽和単量体及びその他の共重合性不飽和単量体からなる単量体混合物を共重合することによって製造することができる。
【0071】
上記カルボキシル基を有する共重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0072】
上記その他の共重合性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、これらのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和単量体;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和単量体;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和単量体;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和単量体;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和単量体;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートのアミン類付加物等の含窒素重合性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ−ト等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和単量体;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート等のスルホン酸基を有する重合性不飽和単量体;これらスルホン酸基を有する重合性不飽和単量体のナトリウム塩やアンモニウム塩;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和単量体;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和単量体;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和単量体;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和単量体;3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等のカチオン性官能基を有する重合性不飽和単量体等が挙げられる。これら重合性不飽和単量体については単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。該酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。該脂肪族多塩基酸としては、例えば、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。該脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0075】
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物である。該芳香族多塩基酸(a1−1−3)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、クエン酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。上記酸成分は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0077】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール等を使用することができる。
【0078】
上記脂肪族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0079】
上記脂環族ジオールは、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0080】
上記芳香族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
上記脂肪族ジオール、脂環族ジオール及び芳香族ジオール以外の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0082】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の一価のアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0083】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(A1)の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間反応させることにより、エステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法が挙げられる。
【0084】
上記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分及びアルコール成分を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B2)を合成した後、上記アルコール成分を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B2)中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0085】
上記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。上記触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0086】
また、上記カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B2)は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0087】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。
上記モノエポキシ化合物としては、例えば、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)を好適に用いることができる。
【0088】
上記変性するためのポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0089】
上記カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂(B3)は、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物との反応により得られる樹脂であり、ポリオール成分としてカルボキシル基を有するポリオールを使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、変性カルボジイミド化合物(A)の製造に使用することのできる前記ポリイソシアネート化合物(c1)等を挙げることができ、上記ポリオール成分としては変性カルボジイミド化合物(A)の製造に使用することのできるイソシアネート基と反応性の基を有する前記化合物(d1)等を挙げることができ、必要に応じて該ポリオール以外のイソシアネート基と反応性の基を有する化合物を用いることができる。上記カルボキシル基を有するポリオールとしては特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を挙げることができる。
【0090】
上記その他樹脂(B4)としては、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂、フッ素樹脂、天然樹脂等の公知の樹脂が挙げられ、これらは、共重合又は変性等の公知方法によりカルボキシル基を分子に導入されたものを用いることができる。
【0091】
上記カルボキシル基含有樹脂(B)は、必要に応じて中和剤を用いて中和して用いることができる。上記中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミンを挙げることができる。
【0092】
上記塩基性化合物の使用量は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、カルボキシル基含有樹脂(B)のカルボキシル基に対して0.1〜1.5当量程度が好ましく、0.2〜1.2当量程度がより好ましい。
上記カルボキシル基含有樹脂は、変性カルボジイミド化合物のカルボジイミド基と反応性を有するカルボキシル基以外に、必要に応じて水酸基、アミノ基、イソシアネート基、カルボニル基、ブロック化イソシアネート基、不飽和基等の基を有していてもよい。
【0093】
水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、前記変性カルボジイミド化合物(A)とカルボキシル基含有樹脂(B)を含む。ここで、水性塗料組成物とは、水性媒体に、被膜形成樹脂を分散及び/又は溶解させた組成物を意味する。本発明における水性塗料組成物は、上記変性カルボジイミド化合物(A)とカルボキシル基含有樹脂(B)に加え、さらに該樹脂(A)及び該樹脂(B)以外の樹脂、顔料、有機溶媒、硬化触媒、架橋剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等を含有することができる。また、上記水性塗料組成物中の水性媒体の含有質量は、10〜90質量%程度が好ましく、20〜80質量%程度がより好ましく、30〜70質量%程度がさらに好ましい。上記水性媒体中の水の含有質量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
【0094】
上記水性塗料組成物において、変性カルボジイミド化合物(A)の配合量は、変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計固形分100質量部を基準として、3〜80質量部、好ましくは4〜75質量部、さらに好ましくは5〜70質量部である。
上記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、防錆顔料等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0095】
上記水性塗料組成物が、顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計固形分100質量部を基準として、一般に200質量部以下、好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下の範囲内であることが好適である。
【0096】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0097】
本発明の樹脂組成物が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、本組成物中の変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常1〜180質量部、好ましくは3〜160質量部、さらに好ましくは5〜140質量部の範囲内である。
【0098】
また、上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム、タルクを好適に使用することができる。
【0099】
本発明の水性塗料組成物が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、本樹脂組成物中の変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常150質量部以下、好ましくは130質量部以下、さらに好ましくは110質量部以下の範囲内である。
【0100】
また、上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などを挙げることができ。これらの光輝性顔料は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
【0101】
本発明の水性塗料組成物が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、本樹脂組成物中の変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)の合計固形分100質量部を基準として、通常80質量部以下、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下の範囲内である。
【0102】
本発明の水性塗料組成物は、変性カルボジイミド化合物(A)及びカルボキシル基含有樹脂(B)、並びに、必要に応じて、顔料、疎水性溶媒、硬化剤及びその他の塗料用添加剤を、公知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって、調製することが出来る。硬化剤としては、メラミン−ホルマリン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等のアミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート等を挙げることができる。また、水性媒体としては、脱イオン水などの水、又は水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0103】
本発明の水性塗料組成物の固形分濃度は、通常、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましく、15〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0104】
本発明の水性塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装、ロールコーター塗装、刷毛塗装、ローラー塗装などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0105】
本発明の水性塗料組成物の塗布量は、硬化膜厚として、通常、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは15〜100μmとなる量であるのが好ましい。
【0106】
本発明の水性塗料組成物は、常温硬化及び加熱硬化のいずれの手段によっても硬化させることができる。このうち、加熱硬化は、通常の塗膜の加熱手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、行うことができる。加熱温度は、40〜300℃が好ましく、60〜240℃がより好ましく、80〜200℃がさらに好ましい。また加熱時間は、5秒〜60分間が好ましく、10秒〜40分間がより好ましい。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、本明細書においてはJIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態の塗膜をも未硬化塗膜は含むものとする。
【0107】
本発明の水性塗料組成物は、金属基材、有機基材、無機基材、複合基材等の上に、単独で塗装してもよいし、または複層塗膜の上塗り、中塗り、下塗りの何れの層に適用して塗装してもよい。
【0108】
上記水性塗料組成物は、塗装され、常温硬化又は加熱硬化により硬化塗膜が得られる。該硬化塗膜において、変性カルボジイミド化合物(A)に含まれるカルボジイミド基と、カルボキシル基含有樹脂(B)に含まれるカルボキシル基との反応によりアシルウレア基が生成し、架橋構造を持たせることができる。
【0109】
従来から公知のカルボジイミド化合物とカルボキシル基含有樹脂を含む水性塗料組成物は、貯蔵中に該組成物の粘度が増大し、ゲル化に至る時間が極めて短いという問題を有していた。これは、前者のカルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基とカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基との反応が、水等の媒体により該反応の基質濃度が低くなるにも拘らず、進行してしまうことを示している。ところが、本発明の水性塗料組成物は、粘度の増大速度が大幅に低下し、貯蔵安定性に優れている。その理由は明らかではないが、該組成物に含まれる変性カルボジイミド化合物のアシルウレア基が立体障害となって、上記反応を阻害しているためであると考えている。一方、本発明の水性塗料組成物から得られた硬化塗膜は、従来から公知のカルボジイミド化合物とカルボキシル基含有樹脂を含む水性塗料組成物から得られた塗膜と同等以上の耐水性を有していた。このことは、本発明の組成物が塗装された後の塗膜において、カルボキシル基含有樹脂と変性カルボジイミド化合物との相溶状態を該アシルウレア基が良くするように作用したために、上記立体障害があるにも拘らず、カルボジイミド基とカルボキシル基との反応が阻害されなかったものと推定している。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0111】
<有機酸化合物(a2)の製造例>
[製造例1] 有機酸化合物(a2−1)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、メチルエチルケトン 423部と、ヘキサヒドロ無水フタル酸 154部とを仕込み、窒素雰囲気下25℃とした。四つ口フラスコ中にステアリルアミン 270部を30分かけて滴下し、アミン価が4以下になるまで反応し、酸価135KOHmg/g、固形分50%の有機酸化合物(a2−1)を得た。
【0112】
[製造例2] 有機酸化合物(a2−2)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸 154部と、ステアリルアルコール 270部とを加え、窒素雰囲気下130℃に昇温後2時間反応し、全酸価が約136KOHmg/gであることから、ほぼ全ての酸無水物基が反応したことを確認した。常温に冷却後、メチルエチルケトン 425部を加え固形分50%の有機酸化合物(a2−2)を得た。
【0113】
[製造例3] 有機酸化合物(a2−3)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ブタノール 74部と、ε−カプロラクトン 137部とを加え、窒素雰囲気下160℃に昇温後8時間反応した。130℃に冷却後、四つ口フラスコにヘキサヒドロ無水フタル酸 154部を加え130℃で2時間反応し、全酸価が約167KOHmg/gであることから、ほぼ全ての酸無水物基が反応したことを確認した。常温に冷却後、メチルエチルケトン 365部を加え固形分50%の有機酸化合物(a2−3)を得た。
【0114】
[製造例4] 有機酸化合物(a2−4)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管、水分離器を備えた四つ口フラスコに、12−ヒドロキシステアリン酸 300部と、トルエン 53部と、メタンスルホン酸 0.6部とを加え、窒素雰囲気下150℃に昇温後、縮合水を分離しながら酸価が約93になるまで反応した。常温に冷却後、メチルエチルケトン 247部を加え、固形分50%の有機酸化合物(a2−4)を得た。
【0115】
[製造例5] 有機酸化合物(a2−5)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管、水分離器を備えた四つ口フラスコに、ブタン酸 88部と、12−ヒドロキシステアリン酸 600部と、トルエン 121部と、メタンスルホン酸 1.4部とを加え、窒素雰囲気下150℃に昇温後、縮合水を分離しながら酸価が約81になるまで反応した。常温に冷却後、メチルエチルケトン 567部を加え固形分50%の有機酸化合物(a2−5)を得た。
【0116】
[製造例6] 有機酸化合物(a2−6)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ラウリン酸 200部と、ε−カプロラクトン 108部とを加え、窒素雰囲気下180℃に昇温後8時間反応した。ガスクロマトグラフィーでε−カプロラクトンのピークが消失するまで反応し、常温に冷却後、メチルエチルケトン 308部を加え、酸価181KOHmg/g、固形分50%の有機酸化合物(a2−6)を得た。
【0117】
[製造例7] 有機酸化合物(a2−7)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、SURFONAMINE L−100(HUNTSMAN社製、末端アミノ基のメトキシポリオキシアルキレン化合物、ポリオキシエチレン基単位を含む、重量平均分子量約1000)1000部と、ヘキサヒドロ無水フタル酸 154部と、メチルエチルケトン 1154部とを加え、窒素雰囲気下40℃に昇温後、アミン価が1.5以下になるまで反応し、酸価51KOHmg/g、固形分50%の有機酸化合物(a2−7)を得た。
【0118】
[製造例8] 有機酸化合物(a2−8)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ユニオックス M−1000(注1) 1000部と、ヘキサヒドロ無水フタル酸 154部と、メチルエチルケトン 1154部とを加え、窒素雰囲気下40℃に昇温後、全酸価が約50KOHmg/gになるまで反応し、固形分50%の有機酸化合物(a2−8)を得た。
【0119】
(注1)M−1000:日本油脂製、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、重量平均分子量1000、このものは、温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに仕込み、減圧下、90℃で3時間攪拌することにより脱水処理を行ったものを使用した。
【0120】
<変性カルボジイミド化合物(A)の製造例>
[製造例9] 変性カルボジイミド化合物(A−1)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、カルボジイミド化合物(V−05)(注2) 307部を仕込み、70℃に昇温後、ジオール(1,4−ブタンジオール) 23部を仕込んだ。90℃に昇温後30分反応させ、ジブチルスズジラウレートを樹脂固形分(上記カルボジイミド化合物とジオールとの合計質量) 100部に対して、0.03部加え4時間反応後、ユニオックスM−1000(注1) 100部を仕込み、90℃で3時間反応し、NCO価(注3)がほぼゼロであることを確認した。80℃に冷却後、希釈剤1(メチルエチルケトン) 143部と、疎水性鎖を有する有機酸化合物(オレイン酸) 42部とを加え、3時間反応し、酸価がほぼゼロであることを確認した。60℃に冷却後、メチルエチルケトンを減圧しながら留去し、加熱を停め、希釈剤2(脱イオン水) 1101部を徐々に加え、固形分30%の変性カルボジイミド化合物(A−1)の水分散体を得た。
【0121】
(注2)V−05:日清紡績製、イソシアネート基含有カルボジイミド化合物、カルボジイミド当量(g/mol):262、NCO価:8.2
製造例24と30に使用したV−01:日清紡績製、イソシアネート基含有カルボジイミド化合物、カルボジイミド当量(g/mol):313、NCO価:9.8
(注3)NCO価:アクリル樹脂1g中に含まれるイソシアネート基の量をイソシアネート基の質量に換算した値(mg)で、以下に示す測定方法にて追跡した。三角フラスコに試料(g)を小数点以下2桁まではかりとり、ジオキサン10mlを加え、溶解した試料を50℃に加熱し、1/5規定ジブチルアミンのジオキサン溶液10mlを加え、2分間かき混ぜて試料に含まれるイソシアネート基とジブチルアミンを反応させる。次にブロムフェノールブルーのエチルアルコール溶液を2〜3滴加えて1/10規定塩酸溶液で残存するジブチルアミンを滴定し、青色から黄緑色に変化したときを終点とする。
計算式 N=(0.1×42×(A−B)×f)/(0.01×S×W)
(ここでN:NCO価、A:空試験のN/5ジブチルアミン−ジオキサン溶液10mlを中和するのに使用した1/10規定塩酸溶液の量(ml)、B:試料の滴定に使用した1/10規定塩酸溶液の量(ml)、f:1/10規定塩酸溶液のファクター、S:試料の加熱残分(%)、W:試料の質量(g)、42:イソシアネート基の分子量)
[製造例10]〜[製造例25]、[製造例27]、[製造例28]、[製造例31]〜[製造例33] 変性カルボジイミド化合物(A−2)〜(A−17)、(A−19)、(A−20)、(A−23)〜(A−25)
製造例9において、原料及び配合量を表1に記載したものに変更した以外は、製造例9と同様にして製造し、変性カルボジイミド(A−2)〜(A−17)、(A−19)、(A−20)、(A−23)〜(A−25)の水分散体を得た。
【0122】
[製造例26] 変性カルボジイミド化合物(A−18)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、カルボジイミド化合物(V−05) 307部を仕込み、70℃に昇温後、ジオール(1,4−ブタンジオール) 23部を仕込んだ。90℃に昇温後30分反応させ、ジブチルスズジラウレート 0.03部を加え4時間反応したところ、NCO価は約13であった。80℃に冷却後、親水性のオキシエチレン基を含むカルボン酸化合物(a2−7)を固形分で115部を加え、2時間反応し、酸価がほぼゼロであることを確認した。50℃に冷却後、希釈剤2(脱イオン水) 1011部を徐々に加え水分散体を得た後、エチレンジアミン10%水溶液 40部を30分間で滴下した。メチルエチルケトンを減圧留去し、固形分30%の変性カルボジイミド化合物(A−18)の水分散体を得た。
【0123】
[製造例29] 有機酸化合物により変性していないカルボジイミド化合物(A−21)
温度計、サーモスタット、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、カルボジイミド化合物(V−05) 307部を仕込み、70℃に昇温後、ジオール(1,4−ブタンジオール) 23部を仕込んだ。90℃に昇温後30分反応させ、ジブチルスズジラウレートを樹脂固形分100部に対して 0.03部加え4時間反応後、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(ユニオックス M−1000) 100部、90℃で3時間反応し、NCO価がほぼゼロになるまで反応した。加熱を停め、50℃に冷却後、希釈剤2(脱イオン水)を徐々に加え、固形分30%のカルボジイミド化合物(A−21)の水分散体を得た。
【0124】
[製造例30] 有機酸化合物により変性していないカルボジイミド化合物(A−22)
製造例29において、原料及び配合量を表1に記載したものに変更した以外は、製造例29と同様にして製造し、固形分30%のカルボジイミド(A−22)の水分散体を得た。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
<カルボキシル基含有樹脂(B)の製造例>
[製造例34] カルボキシル基含有アクリル樹脂(B−1)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水 55部、「アクアロンKH−10」(第一工業社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、有効成分97%) 0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液 5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。次いで、残りのモノマー乳化物(1)と過硫酸アンモニウム 0.07部との混合物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成した。
【0128】
次いで、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下した。1時間熟成した後、2−(ジメチルアミノ)エタノール 2部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、濾液として平均粒子径100nm[サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈して20℃で測定]のカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−1)のエマルション(固形分濃度45%)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂は、酸価33mgKOH/gであった。
【0129】
モノマー乳化物(1):脱イオン水 42部、「アクアロンKH−10」 0.72部、メチレンビスアクリルアミド 2.1部、スチレン 2.8部、メチルメタクリレート 16.1部、エチルアクリレート 28部及びn−ブチルアクリレート 21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0130】
モノマー乳化物(2):脱イオン水 18部、「アクアロンKH−10」 0.31部、過硫酸アンモニウム 0.03部、メタクリル酸 5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 5.1部、スチレン 3部、メチルメタクリレート 6部、エチルアクリレート 1.8部及びn−ブチルアクリレート 9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0131】
[製造例35] カルボキシル基含有アクリル樹脂(B−2)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル 30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン 10部、メチルメタクリレート 30部、2−エチルヘキシルアクリレート 15部、n−ブチルアクリレート 11.5部、ヒドロキシエチルアクリレート 30部、アクリル酸 3.5部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル 10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル 5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール 3.03部を加え、脱イオン水を徐々に添加することにより、カルボキシル基含有アクリル樹脂(B−2)の溶液(固形分45%)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−2)は、酸価27mgKOH/gであった。
【0132】
[製造例36] カルボキシル基含有アクリル樹脂(B−3)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水 230部、「Newcol 707SF」(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、固形分30%)2.3部を加え、窒素置換後、80℃に保持した。下記組成のモノマー乳化物(3)を4つ口フラスコに滴下する直前に0.7部の過硫酸アンモニウムを加え、該モノマー乳化物(3)を3時間にわたって滴下した。
【0133】
モノマー乳化物(3):脱イオン水 338部、ダイアセトンアクリルアミド 32部、アクリル酸 3.2部、スチレン 97部、メチルメタクリレート 260部、2−エチルヘキシルアクリレート 100部、n−ブチルアクリレート 150部、「Newcol 707SF」 62部、過硫酸アンモニウム 1.2部
滴下終了後30分より、30分間0.7部の過硫酸アンモニウムを7部の脱イオン水に溶かした溶液を滴下し、さらに2時間80℃に保持し、その後約40〜60℃に降温した後、アンモニア水でpHを8〜9に調整し、カルボニル基を含むカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−3)のエマルション(固形分50%)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリル樹脂は、酸価3.9mgKOH/gであった。
【0134】
[製造例37] カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器にネオペンチルグリコール 105部、トリメチロールプロパン 273部、ブチルエチルプロパンジオール 320部、アジピン酸 219部及びイソフタル酸385部を入れ、220℃で6時間撹拌しながら、生成した水を抜きながら縮合反応を行った。その後に、無水トリメリット酸 76部を添加し、170℃で30分間反応させ、約70℃に冷却し、次いでジメチルエタノールアミン 5.5部及び脱イオン水を攪拌しながら約30分で添加して、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)の水分散体(固形分45%)を得た。得られたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)は、重量平均分子量約5000、酸価35mgKOH/gであった。
【0135】
[製造例38] カルボキシル基含有ウレタン樹脂(B−5)
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、UMC(1/1)(ジオール成分が1,6−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、1,6−ヘキサンジオールの質量/1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製) 67.2部、ジメチロールプロピオン酸 4.5部を仕込み、内容物を撹拌しながら80℃まで加熱した。80℃に達した後、28.3部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを1時間かけて滴下した。その後、N−メチルピロリドン 29.9部を添加した後、更に80℃で熟成し、ウレタン化反応を行なった。イソシアネート価が3.0以下になってから加熱をやめ、70℃でトリエチルアミン 3.3部を加えた。次いで50℃を維持した状態で脱イオン水を1時間かけて滴下し、水分散を行うことによりカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B−5)の水分散体(固形分45%)を得た。得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(B−5)は、重量平均分子量29000、酸価21mgKOH/g、平均粒子径100nmであった。
【0136】
[製造例39] カルボキシル基含有オレフィン樹脂(B−6)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた反応容器にアウローレン200(日本製紙株式会社製無水マレイン酸変性ポリオレフィン重量平均分子量:55000〜65000、軟化点:60〜70℃) 100部、テトラヒドロフラン 150部を加え、60℃に加熱して、十分に溶解するまで、攪拌した。溶解を確認した後、THFを減圧留去しながら80℃まで昇温した。攪拌しながらシクロヘキサン 100部、エマノーン1112(商品名、花王ケミカル株式会社製、ポリエチレンオキサイドラウリルエステル) 20部、ニューコール240(商品名、日本乳化剤株式会社製) 6.6部を加えた。その後、50℃まで冷却し、脱イオン水を2時間かけて滴下した。同温度で、シクロヘキサンを減圧しながら留去することで、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂(B−6)の水性分散体(固形分45%)を得た。
【0137】
<水性塗料組成物の製造>
[実施例1] 水性塗料組成物(W−1)の製造
製造例37で得たカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)の水分散体(固形分濃度45%) 55.6部(樹脂固形分25部)、JR−806(テイカ社製、商品名、ルチル型二酸化チタン) 60部、カーボンMA−100(三菱化学社製カーボンブラック) 1部、バリエースB−35(堺化学工業社製硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm) 15部、MICRO ACE S−3(日本タルク社製タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm) 3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P−1)を得た。次に、顔料分散ペースト(P−1) 139.6部、製造例34で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−1)のエマルション(固形分濃度45%) 88.9部(樹脂固形分40部)、製造例37で得たカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)の水分散体(固形分濃度45%) 33.3部(樹脂固形分15部)、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の水分散体(固形分濃度30%) 66.7部(固形分20部)及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−1)を得た。
【0138】
[実施例2]、[実施例4]〜[実施例23]、[実施例29]、[比較例1、2、9〜11]
実施例1において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして、pH8.0、固形分濃度48%、水性塗料組成物(W−2)、(W−4)〜(W−23)、(W−29)、(W−31)、(W−32)及び(W−39)〜(W−41)を得た。
【0139】
[実施例3]
実施例1と同様にして得た顔料分散ペースト(P−1) 139.6部、製造例34で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−1)のエマルション(固形分濃度45%) 88.9部(樹脂固形分40部)、製造例37で得たカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4)の水分散体(固形分濃度45%) 33.3部(樹脂固形分15部)、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の水分散体(固形分濃度30%) 622.2部(固形分186.7部)及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加し、pH8.0、塗料固形分39%の水性塗料組成物(W−2)を得た。
【0140】
[実施例24] 水性塗料組成物(W−24)
製造例35で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−2)の溶液(固形分濃度45%) 55.6部(樹脂固形分25部)、JR−806(テイカ社製、商品名、ルチル型二酸化チタン) 60部、カーボンMA−100(三菱化学社製、商品名、カーボンブラック) 1部、バリエースB−35(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm) 15部、MICRO ACE S−3(日本タルク社製、商品名、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm) 3部及び脱イオン水 5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P−2)を得た。次に、顔料分散ペースト(P−2) 139.6部、製造例34で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−1)のエマルション(固形分濃度45%) 122.2(樹脂固形分55部)部、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の水分散体(固形分濃度30%) 66.7部(固形分20部)及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%の水性塗料組成物(W−24)を得た。
[実施例25] (W−25)の製造
ステンレス容器に、上水 400部、エチレングリコール 100部、「ノプコサントK」(サンノプコ社製、顔料分散剤) 30部、「フジケミHEC KF−100」(旭電化社製、増粘剤) 10部、「SNデフォ−マ−364」(サンノプコ社製、消泡剤) 20部、チタン白 80部を添加し、ディスパーで10分間撹拌後、ペイントシェーカーで10分間分散して顔料分散ペースト(P−3)を得た。製造例36で得たカルボキシル基含有アクリル樹脂(B−3)のエマルション(固形分濃度50%) 200部(樹脂固形分100部)に対して、上記顔料分散ペースト(P−3) 140部をディスパーを用いて攪拌しながら添加し、さらにアジピン酸ジヒドラジド 0.8部、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の(固形分濃度30%) 66.7部(固形分20部)及び「テキサノール」(イーストマンコダック社製、商品名、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート) 10部を添加して攪拌混合し、水性塗料組成物(W−25)を調製した。
【0141】
[実施例26] (W−26)の製造
前記顔料分散ペースト(P−1) 140部、製造例37で得たカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B−4) 122.2部(樹脂固形分55部)、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の水分散体(固形分濃度30%) 66.7部(固形分20部)及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−26)を得た。
【0142】
[実施例27] (W−27)の製造
前記顔料分散ペースト(P−1) 140部、製造例38で得たカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂(B−5) 122.2部(樹脂固形分55部)、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の(固形分濃度30%) 66.7部(固形分20部)及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−27)を得た。
【0143】
[実施例28] (W−28)の製造
前記顔料分散ペースト(P−1) 140部、製造例39で得たカルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂(B−6) 122.2部(樹脂固形分55部)、製造例9で得た変性カルボジイミド化合物(A−1)の(固形分濃度30%) 66.7部及び2−エチル−1−ヘキサノール 10部を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、アデカ社製、ウレタン会合型増粘剤) 1部、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−28)を得た。
【0144】
[実施例30]、[比較例4][比較例5]
実施例25において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例25と同様にして、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−30)(W−34)(W−35)を得た。
【0145】
[比較例3] 水性塗料組成物(W−33)の製造
実施例24において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例24と同様にして、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−33)を得た。
【0146】
[比較例6] (W−36)の製造
実施例26において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例26と同様にして、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−36)を得た。
【0147】
[比較例7] (W−37)の製造
実施例27において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例27と同様にして、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−37)を得た。
【0148】
[比較例8] (W−38)の製造
実施例28において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、実施例28と同様にして、pH8.0、塗料固形分48%の水性塗料組成物(W−38)を得た。
【0149】
<塗料の安定性評価>
実施例1〜30及び比較例1〜11で得られた上記各水性塗料組成物(W−1)〜(W−41)の貯蔵前の酸価と密閉容器中で40℃×1ヵ月貯蔵後の塗料組成物の酸価を測定した。貯蔵中に塗料組成物の酸価が低下した場合は、塗料組成物中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基が、該塗液中のカルボジイミド化合物と反応したために減少したものと考えられる。従って、塗料組成物中の貯蔵後のカルボキシル基の残存率(%)を100×塗料組成物の貯蔵後の酸価÷塗液の貯蔵前の酸価、として計算し、貯蔵性を以下の指標にて評価した。評価結果を表2−1、2−2、2−3に示した。
◎:カルボキシル基の残存率が90%以上
○:カルボキシル基の残存率が80%以上、90%未満
△:カルボキシル基の残存率が70%以上、80%未満
×:カルボキシル基の残存率が70%未満、または塗料組成物がゲル化したとき
<試験板の作成>
実施例1〜30及び比較例1〜11で得られた上記各水性塗料組成物(W−1)〜(W−41)の粘度調整したものを使用して、それぞれについて以下の様にして試験板を作製した。
リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱し硬化させ、その上に上記実施例及び比較例にて製造、粘度調整した各水性塗料組成物(W−1)〜(W−41)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、室温で10分間放置してから、水性塗料組成物(W−29)、(W−30)及び(W−35)を塗装したもの以外について、100℃で20分間加熱して試験板を得た。水性塗料組成物(W−29)、(W−30)及び(W−35)を塗装したものは、23℃で1週間養生して試験板を得た。得られたそれぞれの試験板について下記塗膜性能試験を行なった。
【0150】
<塗膜性能試験>
耐水性試験:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、塗膜の耐水性を下記指標にて評価した。評価結果を表2−1、2−2、2−3に示した。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない。
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のカルボジイミド基及び少なくとも1個の一般式(1)で表される2価のアシルウレア基を1分子中に有する変性カルボジイミド化合物(A)、並びにカルボキシル基含有樹脂(B)を含む水性塗料組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素原子数6〜1,000個の有機基を表わす)
【請求項2】
変性カルボジイミド化合物(A)が、イソシアネート基を有していてもよいカルボジイミド化合物(a1)と、少なくとも1個のカルボキシル基及び炭素原子数6〜1,000個の有機基を1分子中に有する有機酸化合物(a2)とを、上記カルボジイミド化合物(a1)のカルボジイミド基1モルに対して上記有機酸化合物(a2)のカルボキシル基を0.01〜0.7モルの範囲において反応させることにより得られた変性カルボジイミド化合物(A1)である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
変性カルボジイミド化合物(A1)がイソシアネート基を有する変性カルボジイミド化合物(A1−1)であって、変性カルボジイミド化合物(A)が、変性カルボジイミド化合物(A1−1)と、イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)とを反応させてなる変性カルボジイミド化合物(A2)である請求項2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
カルボジイミド化合物(a1)が、ポリイソシアネート化合物(c1)及びカルボジイミド化触媒を含む混合物(I)を反応させることにより得られたカルボジイミド化合物(a1−1)である請求項2又は3に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
イソシアネート基と反応性の基を有する化合物(d1)及び/又は有機酸化合物(a2)がポリオキシアルキレン基を有する化合物であって、該ポリオキシアルキレン基を有する化合物が変性カルボジイミド化合物(A)中に5〜50質量%含有されたものである請求項2〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物が塗装された物品。

【公開番号】特開2012−224748(P2012−224748A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93506(P2011−93506)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】