説明

水性塗料組成物

本発明は、
A)少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤と、
B)場合により少なくとも1種の硬化剤と、
C)少なくとも1種の顔料と
を含む水性塗料組成物であって、
少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤が、少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物に基づき、ポリヒドロキシル化合物が、このポリヒドロキシル化合物の全量を基準にして少なくとも50重量%の20℃で液体である少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むことを特徴とする水性塗料組成物に関する。本発明は、下塗り組成物の層とこの層上の仕上塗り組成物の層とを含む多層塗膜中の下塗り組成物としての水性塗料組成物の使用にも関する。この水性塗料組成物は、下塗り組成物の層とこの層上の仕上塗り組成物の層とを含む多層塗膜中の色付与下塗り組成物および/または特殊効果付与下塗り組成物として用いることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン結合剤を含む水性塗料組成物に関する。水性塗料組成物は、車両の多層塗膜と補修塗膜中の顔料入り水性下塗り組成物として特に適する。
【背景技術】
【0002】
環境の理由で、水性塗料組成物は、元の塗膜と補修塗膜の両方に対する車両塗料中でますます用いられつつある。
【0003】
水性塗料組成物において、特に水性下塗り組成物においても、水希釈性ポリウレタン樹脂の優れた特性のゆえに、水性分散液の形で水希釈性ポリウレタン樹脂を主たる結合剤として用いることが慣行になっている。
【0004】
水性下塗り組成物および水性下塗り組成物から得られた塗膜の特性は、用いられるポリウレタンの特定の構造によって実質的に決定される。
【0005】
欧州特許第0,427,979号明細書は、例えば、水分散性結合剤およびアルミニウム顔料を含有する水性塗料組成物であって、この結合剤が、固体100g当たり少なくとも200ミリ当量の化学的に導入されたカーボネート基と固体100g当たり合計で320ミリ当量以下の化学的に導入されたウレタン基および化学的に導入されたウレア基を含む水分散性ポリウレタンポリウレアを含む、水性塗料組成物を記載している。これらの水分散性ポリウレタンポリウレアは、水性メタリック下塗り組成物のための結合剤または結合剤成分として用いられている。
【0006】
また、欧州特許第1,159,323号明細書は、ポリエステルポリオール、ジメチロールプロピオン酸およびジイソシアネートに基づき、アミノ基を含む化合物により鎖延長された水希釈性ポリウレタン分散液を記載している。ポリアミンまたはアミノアルコールは鎖延長のために用いてもよい。
【0007】
しかし、作られた塗膜は、水性塗料組成物を用いる時、従来の溶媒系塗料の高い品質レベルをあらゆる点で達成していない。例えば、特に水性効果下塗り組成物の場合、水性下塗り組成物の長期安定性は十分ではない。例えば、水性組成物の濃縮を貯蔵中に観察できる。これは、12ヶ月を超える長期安定性が要求されるすべての用途において、例えば、車両補修塗膜において許容できない。さらに、欧州特許第1,736,490号明細書は、ヒドロキシルを含まないポリウレタンとヒドロキシルを含むポリウレタンとを含むソフトフィールペイントとして用いられるべき加水分解安定性仕上塗り組成物であって、これらのポリウレタンが少なくとも25重量%の1,4−ブタンジオールを含有するポリカーボネートポリオールを含む加水分解安定性仕上塗り組成物を記載している。
【0008】
さらに、欧州特許第1,736,490号明細書は、ヒドロキシルを含まないポリウレタン/ウレア結合剤と、ヒドロキシル基を含むポリウレタン/ウレア結合剤と架橋剤とを含む水性塗料組成物であって、ポリウレタン/ウレア結合剤の両方が、合成成分として少なくとも25重量%の1,4−ブタンジオールの部分を有するポリカーボネートポリオールを含む、水性塗料組成物を記載している。この水性塗料組成物は、特にプラスチック基材または材木基材上のソフトフィールペイントとして用いられている。
【0009】
従って、例えば、少なくとも12〜24ヶ月にわたり長期安定であり、貯蔵中に濃縮せず、その塗布が完全な光学品質と良好なメタリック効果を有する塗膜をもたらす、車両塗膜(車体および車体部品)中に、特に車両補修塗膜中に用いられるべき、顔料入り水性塗料組成物、特に水性効果下塗り組成物に関する必要事項がなお解決されないままである。得られた塗膜は、例えば、耐薬品性、耐候性および耐機械影響性に関して車両塗膜、特に車両補修塗膜に適用される従来の要件も満たすべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
A)少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤と、
B)場合により少なくとも1種の硬化剤と、
C)少なくとも1種の顔料と
を含む水性塗料組成物であって、少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤が、少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物に基づき、前記ポリヒドロキシル化合物が、このポリヒドロキシル化合物の全量を基準にして少なくとも50重量%の20℃で液体である少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むことを特徴とする水性塗料組成物に関する。
【0011】
好ましくは、少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤は、
a)好ましくは126〜500の分子量を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと、
b)好ましくは300〜5000の数平均分子量Mnを有する少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物であって、ポリヒドロキシル化合物の全量を基準にして少なくとも50重量%の、20℃で液体であり、好ましくは300〜5000、より好ましくは500〜4000の数平均分子量Mnを有する、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む前記少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物と、
c)イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1個の官能基ならびにイオン基、イオンを形成できる基および非イオン親水性基からなる群から選択された少なくとも1個の基を含む少なくとも1種の化合物と、
d)場合により、ヒドロキシル基および/またはアミノ基および好ましくは32〜300の分子量を有する少なくとも1種の少なくとも二−官能性化合物と、
を含む成分を反応させることにより得られる。
【0012】
好ましくは、水希釈性ポリウレタン結合剤は、(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量、好ましくは100〜450ミリ当量のカーボネート基を含む。より好ましい水希釈性ポリウレタン結合剤は、(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量、好ましくは100〜450ミリ当量のカーボネート基と、(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量、好ましくは100〜300ミリ当量のウレタン基およびウレア基とを含む。
【0013】
驚くべきことに、上述したポリウレタン結合剤に基づく水性特殊効果下塗り組成物が、12〜24ヶ月以内の貯蔵中に濃縮せず、一貫して良好な光学的外観を有するとともに非常に良好な効果またはメタリック効果を示す塗膜をもたらすことが見出された。比較において、固体ポリカーボネートポリオールに基づく類似のポリウレタンは、例えば、貯蔵中、12〜24ヶ月以内、または4〜6ヶ月後でさえも、濃縮する傾向がある。貯蔵中の濃縮は、出発粘度より少なくとも3倍高い粘度に至る場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を非常に詳しく以下で説明する。
【0015】
別々の実施形態の文脈において上および下で分かりやすくするために記載されている本発明の特定の特徴を単一の実施形態における組み合わせで提供してもよいことは認められるであろう。逆に、単一の実施形態の文脈において簡潔のために記載されている本発明の種々の特徴を別々に、またはあらゆる部分的組み合わせにおいて提供してもよい。さらに、文脈によって別段に明確に陳述されない限り、単数における言及は複数も含む場合がある(例えば、「a」および「an」は1または1以上を指す場合がある)。
【0016】
ここでおよび以後用いられるポリウレタンという短い用語は、ポリウレタン結合剤を意味すると解釈するものとする。このポリウレタン結合剤はウレア基も含む。
【0017】
本明細書で以後用いられる液体ポリカーボネートポリオールという短い用語は、20℃で液体であるポリカーボネートポリオールを意味すると解釈されるべきである。
【0018】
本明細書で以後用いられる(メタ)アクリルという用語は、メタクリルおよび/またはアクリルを意味すると解釈されるべきである。
【0019】
別段に陳述されない限り、本明細書において言及されるすべての分子量(数平均分子量と重量平均分子量の両方)は、標準としてポリスチレンおよび液相としてテトラヒドロフランを用いてGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によって決定される。
【0020】
融解温度は、10K/分の加熱速度でDIN 53765−B−10に準拠してDSC(示差走査熱分析)によって決定された。
【0021】
ガラス転移温度は、10K/分の加熱速度でISO 11357−2に準拠してDSC(示差走査熱分析)によって決定された。
【0022】
水性塗料組成物は、塗料組成物を調製するおよび/または被着させる時に水を溶媒または希釈液として用いる塗料組成物である。通常、水性塗料組成物は、塗料組成物の全量を基準にして30〜90重量%の水、および塗料組成物の全量を基準にして場合により、20重量%まで、好ましくは15重量%未満の有機溶媒を含有する。
【0023】
先ず、本発明の水性塗料組成物中で用いられるべきポリウレタンA)をより詳しく説明する。
【0024】
ポリウレタンA)は、好ましくは、500〜20,000の数平均分子量Mnおよび20,000〜500,000の重量平均分子量Mw、0〜150mgKOH/gのヒドロキシル価および15〜50、好ましくは15〜35mgKOH/gの酸価を有する。
【0025】
ポリウレタンA)は、少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物に基づき、前記ポリヒドロキシル化合物は、ポリヒドロキシル化合物の全量を基準にして少なくとも50重量%、好ましくは60〜100重量%の少なくとも1種の液体ポリカーボネートポリオールを含む。液体ポリカーボネートポリオールは、例えば、10〜15℃を未満の融点を有してもよく、従って、DSC曲線において吸熱ピークを示す。液体ポリカーボネートポリオールは、DSC曲線において吸熱ピークを示さない場合もあり、例えば、液体ポリカーボネートポリオールは、DSC曲線における−30℃を上回る吸熱ピークを示さない場合がある。
【0026】
液体ポリカーボネートポリオールは、例えば、0℃以下、好ましくは−50〜0℃のガラス転移温度を有する。
【0027】
以下、ポリカーボネートポリオールの詳細な説明を成分b)の説明において示す。
【0028】
好ましくは、ポリウレタンA)は、成分a)、b)、c)および場合により成分d)および/または更なる成分を反応させることにより製造される。
【0029】
ポリウレタンA)の製造のための成分a)として、所望のいかなる有機ポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートも個々にまたは組合せで用いてもよい。ポリイソシアネートは、例えば、芳香族特性、脂肪族特性および/または脂環式特性のポリイソシアネートであってもよく、好ましくは126〜500の分子量を有してもよい。これらは、エーテル基またはエステル基を含むジイソシアネートも含んでよい。適するジイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1−イソシアナトメチル−5−イソシアナト−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、4,4−ジイソシアナトジフェニルエーテル、1,5−ジブチルペンタメチレンジイソシアネート、2,3−ビス(8−イソシアナトオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−1−メチルシクルヘキシルイソシアネートおよび/または2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートである。
【0030】
NCO基を基準としてアルファ位において親構造上の置換基として1〜12個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖、分枝または環式のアルキル基を含む、4〜25個、好ましくは6〜16個の炭素原子を有する立体封鎖イソシアネートを用いることも可能である。親構造は、芳香族環または脂環式環からなっても、または1〜12個の炭素原子を有する脂肪族の直鎖または分枝の炭素鎖からなってもよい。これらの例は、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,1,6,6−テトラメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジブチルペンタメチレンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、p−およびm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび/または対応する水素添加同族体である。
【0031】
成分b)として使用可能な化合物は、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオールおよび/またはポリ(メタ)アクリレートポリオールまたは対応するジオールである。ポリオールおよびジオールは、個々にまたは互いに組み合わせて各場合に用いてもよい。
【0032】
しかし、化合物b)が、好ましくは300〜5000、より好ましくは500〜4000の分子量Mnを有する少なくとも1種の液体ポリカーボネートポリオールを少なくとも50重量%を含むことが必須である。液体ポリカーボネートポリオールは室温で粘性液体である。液体ポリカーボネートポリオールは、例えば、50,000mPas(50℃で)未満、例えば、500〜20、000mPas(50℃で)の粘度を有する。
【0033】
一般に、ポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート、例えば、ジメチルカーボネートまたはホスゲンをポリオール、好ましくはジオールと反応させることにより得られる炭酸のエステルを含む。液体ポリカーボネートポリオールを調製するために考慮してもよい適するジオールは、例えば、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである。ポリカーボネートポリオールは好ましくは直鎖である。
【0034】
詳しくは、適する液体ポリカーボネートポリオール/ジオールは、1,3−プロパンジオールと1,5−ペンタンジオールの組み合わせ、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールの組み合わせ、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせまたは1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせに基づく液体ポリカーボネートポリオール/ジオールである。より好ましい適する液体ポリカーボネートポリオール/ジオールは、1,3−プロパンジオールと1,5−ペンタンジオールの組み合わせおよび1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせに基づく液体ポリカーボネートポリオール/ジオールである。各組み合わせにおける2種のジオールのモル比は、好ましくは、3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2の範囲内であり、最も好ましくは1:1である。組み合わせにおける1,5−ペンタンジオール:1,6−ヘキサンジオールのモル比も、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2の範囲内であってよく、最も好ましくは1:1であり、1,3−プロパンジオール:1,5−ペンタンジオールのモル比は、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2の範囲内であってもよく、最も好ましくは1:1である。好ましいポリカーボネートポリオールは、40〜150mgKOH/g固体のヒドロキシル価および1000〜2000の数平均分子量Mnを有する。他のジオールも、例えば、ジオールの組合せの全量を基準にして5〜20重量%の範囲までジオールの組み合わせ中に存在してよい。好ましくは、ポリカーボネートポリオールを調製するために用いられるべきジオールの組合せは、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールまたは1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールからなる。ジオールの組合せは、上述したモル比における1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールからもなってよい。ポリカーボネートポリオールは、単一化合物としてまたはポリカーボネートポリオールの混合物として用いてもよい。
【0035】
好ましいポリカーボネートポリオールは、分子当たり5〜15個のカーボネート基を有するポリカーボネートジオールである。ポリカーボネートポリオールは、好ましくは実質的にカルボキシル基を含まない。ポリカーボネートポリオールは、例えば、3mgKOH/g固体未満、好ましくは1mgKOH/g固体未満の酸価を有してもよい。しかし、ポリカーボネートポリオールがカルボキシル基を含むことも可能であり、この場合、ポリカーボネートポリオールは、例えば、50mgKOH/g固体の酸価を有してもよい。
【0036】
ポリカーボネートポリオールおよびジオールは、当業者に知られている従来の方式で製造される。例えば、ポリカーボネートポリオールは、エステル交換反応のために通常用いられる触媒の存在下で、ジアルキルカーボネートと、脂肪族ヒドロキシル化合物の混合物、例えば、主成分として1,5ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールおよび場合により副次成分として他の脂肪族グリコールを含む混合物との間でエステル交換を実施することにより合成してもよい。1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールに基づく適するポリカーボネートポリオールおよびそれらの調製は、例えば、欧州特許第302712号明細書において記載されている。適するポリカーボネートポリオールおよびジオールは、例えば、Duranol(登録商標)、例えば、Duranol(登録商標)T5652、Duranol(登録商標)T5651で旭化成株式会社から市販もされている。
【0037】
ポリカーボネートポリオールに加えて、更なるポリオールを成分b)として用いてもよい。適するポリエステルポリオールは、当業者に知られている従来の方式、例えば、有機ジカルボン酸または有機ジカルボン酸無水物と有機ポリオールからの重縮合によって製造される。ポリエステルポリオールの製造のための酸成分は、分子当たり2〜17個の炭素原子、好ましくは16個より少ない炭素原子、特に好ましくは14個より少ない炭素原子を有する低分子量のジカルボン酸またはジカルボン酸無水物を好ましくは含む。適するジカルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、コハク酸、イタコン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。実在する場合、対応する酸無水物を酸の代わりに用いてもよい。分枝を達成するために、より高い官能性のカルボン酸、例えば、トリメリット酸、リンゴ酸およびジメチロールプロピオン酸などの三官能性カルボン酸の一部を添加することも可能である。ポリエステルポリオールの製造のために使用可能なポリオールは、好ましくはジオール、例えば、エチレングリコールなどのグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、2−エチレン−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,4−シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールAおよびネオペンチルグリコールである。ジオールは、より高い価数の少量のアルコールによって変性されていてもよい。用いてもよいより高い価数のアルコールの例は、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、グリセロールおよびヘキサントリオールである。鎖末端一価アルコール、例えば、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、イソデカノール、飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪アルコールなどの分子当たり1〜18個の炭素原子を有する一価アルコールのある比率も用いてよい。
【0038】
ポリカーボネートポリオールに加えて、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリラクトンポリオールも成分b)として用いてよい。例えば、考慮してもよいポリエーテルポリオールは、一般式
H(O−(CHR1nmOH
のポリエーテルポリオールである。
式中、R1は、水素または場合により種々の置換基を有するより低級のアルキル残基(例えば、C1〜C6アルキル)を意味し、nは2〜6を意味し、mは10〜50を意味する。残基R1は、同じであっても異なってもよい。ポリエーテルポリオールの例は、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコールおよびポリ(オキシプロピレン)グリコールまたは異なるオキシテトラメチレン単位、オキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位を含む混合ブロックコポリマーである。
【0039】
ポリラクトンポリオールは、ラクトン、好ましくはカプロラクトンから誘導されるポリオール、好ましくはジオールを含む。これらの生産物は、例えば、イプシロンカプロラクトンをジオールと反応させることにより得られる。ポリラクトンポリオールは、ラクトンから誘導される反復ポリエステル部分によって識別される。これらの反復分子部分は、例えば、以下の一般式の部分であってもよい。
【化1】

式中、nは、好ましくは4〜6であり、R2は水素、アルキル残基、シクロアルキル残基またはアルコキシ残基であり、ラクトン環の置換基中の炭素原子の総数は12を超えない。好ましくは、用いられるラクトンは、nが4の値を有するイプシロン−カプロラクトンである。非置換イプシロン−カプロラクトンは、ここで特に好ましい。ラクトンは個々にまたは組み合わせで用いてもよい。ラクトンとの反応のために適するジオールは、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよびジメチロールシクロヘキサンである。
【0040】
成分b)に加えて、500g/モル未満の分子量を有する1種以上の低分子量多価アルコール、好ましくは二官能性アルコールも場合により用いてよい。こうした化合物の例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールである。
【0041】
好ましくは、成分b)は、60〜100重量%の上述した液体ポリカーボネートポリオールおよび0〜40重量%の他のポリオールからなる。ポリカーボネートポリオールに加えて他のポリオールを用いる場合、ポリエステルポリオール、特にポリエステルジオールが好ましい。より好ましい成分b)は、100重量%の上述した液体ポリカーボネートポリオールまたはジオールからなる。
【0042】
ポリウレタンA)の調製のための成分c)は、イソシアネート基と反応性の少なくとも1個、好ましくは、2個以上、特に好ましくは2個の基および少なくとも1個のイオン基、イオンを形成できる基および/または非イオン親水性基を有する低分子量化合物を含む。考慮してもよいアニオンを形成できる基は、例えば、カルボキシル基、リン酸基およびスルホン酸基である。好ましいアニオン基はカルボキシル基である。考慮してもよいカチオンを形成できる基は、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノ基または第四級アンモニウム、ホスホニウムおよび/または第三級スルホニウム基などのオニウム基である。アニオン基またはアニオンを形成できる基が好ましい。好ましい非イオン親水性基はエチレンオキシド基である。適するイソシアネート−反応性基は、特に、ヒドロキシル基および第一級アミノ基および/または第二級アミノ基である。
【0043】
成分c)として考慮してもよい好ましい化合物は、カルボキシル基およびヒドロキシル基を含む化合物である。こうした化合物の例は、一般式
(HO)xQ(COOH)y
のヒドロキシアルカンカルボン酸である。
式中、Qは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝の炭化水素残基を表し、xおよびyはそれぞれ1〜3を意味する。こうした化合物の例はクエン酸および酒石酸である。x=2およびy=1のカルボン酸が好ましい。ジヒドロキシアルカン酸の1つの好ましい群は、アルファ,アルファ−ジメチロールアルカン酸である。アルファ,アルファ−ジメチロールプロピオン酸およびアルファ,アルファ−ジメチロール酪酸が好ましい。使用可能なジヒドロキシアルカン酸の更なる例は、ジヒドロキシプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジヒドロキシコハク酸またはジヒドロキシ安息香酸である。成分c)として使用可能な更なる化合物は、アミノ基を含む酸、例えば、アルファ,アルファ−ジアミノ吉草酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエンスルホン酸および4,4−ジアミノジフェニルエーテルスルホン酸である。成分c)として使用可能な更なる化合物は、例えば、二官能性ポリエチレンオキシドジアルコールである。
【0044】
ポリウレタンA)は、第一工程において成分a)、b)およびc)からNCO−官能性ポリウレタンプレポリマーを初期的に調製し、場合により、NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーを成分d)とさらに反応させることにより製造することが可能である。
【0045】
成分a)、b)およびc)を当業者に知られている従来の方式で、例えば50〜120℃、好ましくは70〜100℃の温度で、場合により触媒を添加して、一緒に反応させる。好ましくは、遊離イソシアネート基を有する反応生成物が得られるような量で、すなわち、反応がポリイソシアネートの過剰で行われるような量で成分をここで反応させる。例えば、反応は、1.2:1〜2.0:1、好ましくは1.4:1〜1.9:1のNCO基:OH基の当量比で実施してもよい。NCO−ポリウレタンプレポリマーは、好ましくは3.0〜6.0%、特に好ましくは3.5〜5.0%のNCO含有率を有するべきである。
【0046】
第一工程において得られたNCO基を含むポリウレタンプレポリマーは、その後、第二工程において官能性成分d)と反応させてもよく、よってポリウレタンの分子量の増加をもたらす。本明細書では、成分d)の反応性基とプレポリマーのイソシアネート基との間の実質的に同等のモル比を伴う完全反応を達成しようとする。
【0047】
化合物d)は、少なくとも2個のアミノ基および/またはヒドロキシル基を含む。成分d)として用いてもよいジアミンの例は、分子中に1〜15個の炭素原子を有する脂肪族(脂環式)アルキルアミンおよびその置換誘導体であり、ここで、アルキル基は直鎖および/または分枝であることが可能である。成分d)は第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を含んでもよい。成分d)の例は、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ネオペンチルジアミン、オクタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび2−アミノベンズアミドである。ヒドラジンおよびヒドラジド誘導体も、例えば、ヒドラジン、メチルヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドおよびセバシン酸ジヒドラジドとして用いることが可能である。
【0048】
成分d)として用いてもよいポリアミンの更なる例は、分子中に3個以上、例えば、3個、4個またはそれより多いアミノ基を含む化合物である。これらのポリアミンは、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を含んでもよい。例は、ジエチレントリアミンおよびジプロピレントリアミンなどのトリアミンならびにトリエチレンテトラミンまたはトリプロピレンテトラミンなどのテトラミンである。ポリアミンの更なる例は、テトラエチレンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミンなどの5個以上のアミノ基を有するアミンである。第二工程においてポリウレタンプレポリマーをアミノ官能性化合物と反応させることにより、ウレア基は形成される。成分d)として用いてもよいヒドロキシル官能性化合物の例は、1,2−エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールである。
【0049】
成分d)として使用できる好ましい化合物はエチレンジアミンである。
【0050】
原則として、すべての成分a)〜d)は、当業者に知られている方式で反応させる。個々の各成分のタイプおよび量は、ウレタン基およびウレア基、カーボネート基の含有率、ヒドロキシル価および酸価などの得られたポリウレタンの上述した特性が得られるように選択される。
【0051】
ポリウレタンの十分な水希釈性(water reducibility)を達成するために、ポリウレタンのイオン基またはイオン基に転換可能な基は少なくとも部分的に中和される。ポリウレタン樹脂は、好ましくは、アニオン基、例えば、カルボキシル基を含む。アニオン基は塩基で中和される。塩基性中和剤の例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミンおよびジメチルイソプロパノールアミンなどの第三級アミンである。たとえ好ましくないとしても、中和はLiOH、KOHおよびNaOHのような金属水酸化物によって完全にまたは部分的に行うことも可能である。中和は、NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーと成分d)との反応前または反応後に進行し得る。中和後、NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーまたは最終ポリウレタンは水相に転換される。しかし、中和と水相への転換は同時に進行する場合もある。親水性イオン基に並列に、または親水性イオン基に加えて、ポリウレタンは、十分な水希釈性を提供するために親水性非イオン基を含んでもよい。非イオン親水性基、例えば、エチレンオキシド基が存在する場合、非イオン親水性基は、イオン基に加えて、好ましくはアニオン基に加えて存在することが好ましい。それらに加えて、外部乳化剤を介して水希釈性を得ることが可能である。
【0052】
通常、NCO−官能性のポリウレタンプレポリマーまたはポリウレタンは、水相に転換前に、または水相に転換中に中和される。
【0053】
好ましい実施形態によると、成分a)〜c)を反応させることにより得られたポリウレタンは、成分d)との反応によって鎖延長される。NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーの成分d)との反応は、水相に転換前に、または水相に転換中に進行し得る。より好ましくは、反応は水相において進行する。
【0054】
成分d)の反応性官能基対NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基の当量比は、好ましくは1:2〜1:1の範囲内である。残りのイソシアネート基は、水相に反転中に、または水相に反転後に水と反応することが可能である。NCO−官能性ポリウレタンプレポリマーの鎖延長を水のみで、すなわち、成分d)なしで行うことも可能であるが、好ましくない。
【0055】
得られた水性ポリウレタン分散液は、例えば、25〜50重量%、好ましくは30〜45重量%の固体含有率を有する。
【0056】
水希釈性ポリウレタンA)は、場合により、更なる水希釈性樹脂の一部と組み合わせて用いてもよい。考慮してもよい更なる水希釈性樹脂は、例えば、従来の水希釈性(メタ)アクリルコポリマー、ポリエステル樹脂、および上述した水希釈性ポリウレタン樹脂とは異なる場合により変性されたポリウレタン樹脂である。追加の希釈性樹脂は、ポリウレタンA)樹脂固体を基準にして10〜200重量%の量で用いてもよい。
【0057】
本発明による塗料組成物は、反応性官能基、例えば、ポリウレタンA)のヒドロキシル基および追加の結合剤成分のヒドロキシル基と架橋反応を開始することができる少なくとも1種の架橋剤B)を場合により含んでもよい。使用できる薬剤は特定のいかなる制約も受けない。例えば、自動車塗料および工業用塗料の分野において水性塗料組成物を調製するために通常用いられるすべての硬化剤を用いることが可能である。これらの硬化剤および硬化剤に関する調製方法は当業者に知られており、種々の特許および他の文書において詳しく開示されている。ポリウレタンA)の反応性官能基および場合により存在する追加の結合剤のタイプに応じて、例えば、以下の架橋剤を用いてもよい。遊離イソシアネート基または少なくとも部分的に遮断されたイソシアネート基を有するポリイソシアネート、アミン/ホルムアルデヒド縮合樹脂、例えばメラミン樹脂。好ましい実施形態において、ポリウレタンA)および場合により存在する追加の結合剤はヒドロキシル基を含み、遊離ポリイソシアネート基を有する硬化剤が用いられる。
【0058】
結合剤成分および硬化剤は、ポリウレタンA)および追加の結合剤の反応性官能基、対、硬化剤B)の対応する反応性基の当量比が5:1〜1:5、例えば、好ましくは3:1〜1:3、特に、好ましくは1.5:1〜1:1.5であることが可能であるような比率で用いられる。
【0059】
本発明の水性塗料組成物は少なくとも1種の顔料C)を含む。顔料C)は、上塗りに所望の色および/または効果を与えるいかなる色付与顔料および/または特殊効果付与顔料であってもよい。
【0060】
適する顔料は、白色顔料、着色顔料および黒色顔料、特に、車両塗装における顔料入り下塗り塗料組成物中で典型的に用いられる白色顔料、着色顔料および黒色顔料の中から選択された実質的にあらゆる特殊効果付与顔料および/または色付与顔料である。
【0061】
特殊効果顔料の例は、特殊効果、例えば、観察の角度に応じて異なるカラーフロップおよび/またはライトネスフロップを塗料に付与する従来の顔料、および金属顔料である。金属顔料の例は、アルミニウム、銅または他の金属から作られた金属顔料、例えば、金属酸化物被覆金属顔料、例えば、酸化鉄被覆アルミニウムなどの干渉顔料、例えば、二酸化チタン被覆マイカなどの被覆マイカ、グラファイト効果をもたらす顔料、フレーク状の酸化鉄、液晶顔料、被覆酸化アルミニウム顔料、被覆二酸化ケイ素顔料である。白色顔料、着色顔料および黒色顔料の例は、例えば、二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ペリレン顔料などの当業者に知られている従来の無機顔料または有機顔料である。好ましくは、本発明の塗料組成物は、少なくとも1種の色付与顔料と場合により組み合わせて、少なくとも1種の効果付与顔料を含有する。
【0062】
さらに、本発明の塗料組成物は、従来の塗料添加剤を含有してもよい。従来の塗料添加剤の例は、平滑化剤、高度分散シリカ、高分子ウレア化合物または層状シリケートなどの流動剤、部分架橋ポリカルボン酸またはポリウレタンなどの増粘剤、脱泡剤、湿潤剤、凹み防止剤、分散剤および触媒である。添加剤は、塗料組成物の固体含有率に対して、例えば0.1〜5重量%などの、当業者に周知の従来の量で用いられる。
【0063】
水性塗料組成物は、例えば好ましくは20重量%未満の比率で、特に好ましくは15重量%未満の比率で従来の塗料溶媒を含有してもよい。これらは、例えば、結合剤の製造から発生し得るか、または別個に添加される従来の塗料溶媒である。こうした溶媒の例は、層状シリケート含有組成物の説明において既に上で述べたものである。さらに、本発明の塗料組成物は、全塗料組成物を基準として好ましくは50〜80重量%、特に好ましくは、60〜75 5重量の水を含有する。
【0064】
水性塗料組成物は、例えば、10〜45重量%、好ましくは15〜35重量%の固体含有率を有する。顔料分対樹脂固体分の重量比は、例えば、0.05:1〜2:1である。特殊効果水性下塗り塗料組成物の場合、顔料分対樹脂固体分の重量比は、好ましくは0.06:1〜0.6:1であり、一体色(シングルトーン)水性下塗り塗料組成物の場合、顔料分対樹脂固体分の重量比は、好ましくは、より高い、例えば、0.06:1〜2:1であり、それぞれの場合、固体の重量を基準としている。
【0065】
水性塗料組成物を製造するために、顔料を粉砕するか、または導入するためのペースト樹脂または分散剤を用いることが可能である。
【0066】
本発明は、以下の工程を含む基材の多層塗装のための方法にも関する。
1.場合により前塗装された基材上に水性色付与下塗り組成物および/または水性特殊効果付与下塗り組成物の下塗り層を被着させる工程
2.場合により、工程Iにおいて得られたこの下塗り層を硬化させる工程
3.この下塗り層上に透明仕上塗り組成物の仕上塗り層を被着させる工程
4.場合によりこの下塗り層と一緒に、工程3において被着させた仕上塗り層を硬化させる工程
ここで、水性色付与下塗り組成物および/または水性特殊効果付与下塗り組成物は、上述した水性塗料組成物である。
【0067】
本発明は、特に車両の多層塗装または補修塗装における基材の多層塗膜中の上述した水性塗料組成物の使用にも関する。
【0068】
多層塗装の好ましい方法は、前塗装された基材上に上述した水性塗料組成物の下塗り層を被着させる工程を含む。適する基材は、金属基材およびプラスチック基材、特に、ポリウレタン、ポリカーボネートまたはポリオレフィンとともに、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ステンレススチールまたはそれらの合金などの、自動車産業において知られている基材である。しかし、工業的塗装プロセスからの他の所望のいかなる工業製品も基材として塗装してよい。車体塗装または車体部品塗装の場合、水性塗料組成物は、下塗り剤により従来の方式で前塗装された車両基材上または車両部品基材上および/または下塗り剤表面上に好ましくは吹き付けによって被着させる。
【0069】
仕上塗り層は、場合により短時間フラッシュオフ後に乾燥後または硬化後もしくはウェットオンウェットのいずれかで下塗り層上に被着させてもよい。適する仕上塗り組成物は、原則として、例えば、車両塗装において普通の既知の一切の無着色塗料組成物または透明顔料入り塗料組成物である。ここで、適する仕上塗り組成物は、1成分溶媒仕上塗り組成物または2成分溶媒仕上塗り組成物もしくは水性仕上塗り組成物であってもよい。上塗りは、室温で硬化させてもよく、または、例えば、80℃まで、好ましくは40〜60℃のより高い温度で強制してもよい。しかし、上塗りは、例えば80〜160℃のより高い温度で硬化させてもよい。硬化温度は、任意選択の硬化剤のタイプによってまた用途の分野によっても決定される。
【0070】
本発明による塗料組成物および本方法は、車両補修塗装において特に有利に用いられ得る。車両補修塗装において、特定の色および/または効果の顔料入り塗料組成物は、一般に、異なる色のティントを混合して、塗料に所望の色および/または効果を与えることにより調製される。本発明による塗料組成物も、従って、例えば、色付与下塗り塗料組成物および/または特殊効果付与下塗り塗料組成物の製造のための車両補修塗料中で特に用いられるような「ペイント混合システム」の成分として用いてよい。知られている通り、こうしたペイント混合システムは、所望の色効果/特殊効果を有する塗料をもたらすために混合配合に従い混合され得る、着色効果顔料および/または特殊効果顔料ならびに場合により更なる成分、例えば、結合剤成分を含有する個々の標準化混合用成分の規定数に基づく。
【0071】
以下の実施例は、非常に詳しく本発明を例示しようと意図されている。別段に指示がない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【0072】
実施例1
ポリウレタン分散液AおよびBの調製
20.36重量部のポリカーボネートジオール(本発明によるポリカーボネートジオールA);比較ポリカーボネートジオールB)、6.5重量部のアセトンおよび0.004重量部のジブチル錫ジラウレートをスターラー、コンデンサーおよび熱電対が装備された四つ口ガラス反応器に最初に導入し、混合物を50℃に加熱し、均質化する。9.3重量部のイソホロンジイソシアネートをこの温度で30分以内に分配する。その後、0.5重量部のアセトンを添加する。6.8〜7.2%(溶液を基準として)のNCO含有率に達するまで温度を50℃で維持する。一旦そのNCO含有率に到達すると、1.88重量部のジメチルロールプロピオン酸、1.04重量部のジメチルイソプロピルアミンおよび0.5重量部のアセトンを添加する。その後、3.1〜3.4%(溶液を基準として)のNCO含有率に達するまで温度を50℃で維持する。一旦そのNCO含有率に到達すると、加熱を止め、48.0重量部の脱イオン水を10分以内に添加する。その後、11.32重量部の水の中の0.64重量部のエチレンジアミンの混合物を5分以内に直ちに添加する。その後、温度を70℃に上げ、真空蒸溜を実施してアセトンを除去する。その後、35重量%の固体含有率を脱イオン水の添加によって確立する。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例2
効果顔料含有下塗り塗料組成物の調製
水性下塗り塗料組成物AおよびB(BC AおよびBC B)を調製した。
【0075】
BC A(本発明による)
以下の成分を以下の順序で混合した。
3.8重量部のn−ペンタノール
4.4重量部のn−プロパノール
4.4重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol(登録商標)PM)
10.9重量部の脱イオン水
3.5重量部のN,N−ジメチルエタノールアミンの10%溶液
2.2重量部の分散・不活性化リン酸塩含有アクリル(*
8.7重量部の市販の効果顔料(Xirallic T60−23SW−Galaxy Blue−Merck)
16.4重量部の水性アクリルラテックス(米国特許第7,825,173号明細書、実施例1の水性結合剤ラテックス)
9.2重量部の脱イオン水
30.4重量部のポリウレタン分散液A
5.0重量部の市販増粘剤(Viscalex HV30−Ciba)の10%水溶液
最終PH:7.5〜7.8
最終粘度:1700〜2500mPas(5RPMでブルックフィールド粘度計RVFで測定)
【0076】
BC B(比較)
以下の成分を以下の順序で混合した。
3.8重量部のn−ペンタノール
4.4重量部のn−プロパノール
4.4重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol(登録商標)PM)
10.9重量部の脱イオン水
3.5重量部のN,N−ジメチルエタノールアミンの10%溶液
2.2重量部の分散・不活性化リン酸塩含有アクリル(*
8.7重量部の市販の効果顔料(Xirallic T60−23SW−Galaxy Blue−Merck)
16.4重量部の水性アクリルラテックス(米国特許第7,825,173号明細書、実施例1の水性結合剤ラテックス)
9.2重量部の脱イオン水
30.4重量部のポリウレタン分散液B
5.0重量部の市販増粘剤(Viscalex HV30−Ciba)の10%水溶液
最終PH:7.5〜7.8
最終粘度:1700〜2500mPas(5RPMでブルックフィールド粘度計RVFで測定)
*)リン酸塩含有アクリルは、スチレン(30重量部)/2−エチルヘキシルアクリレート(17.5重量部)/2−エチルヘキシルメタクリレート(20重量部)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(15重量部)/アクリル酸(10重量部)/メタクリロ−オキシ−ホスフェート(7.5重量部、MOP=ヒドロキシエチルメタクリレートとポリリン酸の反応生成物);最終固体:60%)のイソプロパノール中のラジカル重合によって得られる。
【0077】
記載のBC AおよびBC Bの粘度安定性を室温で密閉容器中での時間(t)の関数において追跡した。
【0078】
【表2】

【0079】
結果は、本発明により調製された下塗り塗料組成物(BC A)が比較下塗り塗料組成物(BC B)と比較して著しく改善された安定性を有したことを明確に示している。7ヶ月後、比較BC Bは、組成物の不安定性のゆえにもはや加工できなかった。塗料比較BC Bの粘度は、粘度測定が可能でなかったように増加した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤と、
B)場合により少なくとも1種の硬化剤と、
C)少なくとも1種の顔料と
を含む水性塗料組成物であって、
前記少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤が、少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物に基づき、前記ポリヒドロキシル化合物が、前記ポリヒドロキシル化合物の全量を基準にして少なくとも50重量%の20℃で液体である少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含むことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の水希釈性ポリウレタン結合剤が、
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
b)ポリヒドロキシル化合物b)の全量を基準にして少なくとも50重量%の20℃で液体である少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物と、
c)イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1個の官能基ならびにイオン基、イオンを形成できる基および非イオン親水性基からなる群から選択された少なくとも1個の基を含む少なくとも1種の化合物と、
を含む成分を反応させることにより得られる、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記水希釈性ポリウレタン結合剤が、(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量のカーボネート基を含む、請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記水希釈性ポリウレタン結合剤が、(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量のカーボネート基と(ポリウレタン結合剤固体100g当たり)少なくとも100ミリ当量のウレタン基およびウレア基とを含む、請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記水希釈性ポリウレタン結合剤A)が、500〜20,000の数平均分子量Mn、20,000〜500,000の重量平均分子量Mw、0〜150mgKOH/gのヒドロキシル価および15〜50の酸価を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のポリヒドロキシル化合物b)が、300〜5000の数平均分子量Mnを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシル化合物b)が、前記ポリヒドロキシル化合物b)の全量を基準にして60〜100重量%の20℃で液体である少なくとも1種のポリカーボネートポリオールを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
前記水希釈性ポリウレタン結合剤が、成分a)、b)およびc)を含み、ヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する少なくとも1種の少なくとも二−官能性化合物d)を更に含む成分を反応させることにより得られる請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
20℃で液体である前記ポリカーボネートが、1,3−プロパンジオールと1,5−ペンタンジオールの組み合わせ、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールの組み合わせ、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせおよび/または1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせに基づく、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項10】
20℃で液体である前記ポリカーボネートが、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールの組み合わせおよび/または1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールの組み合わせに基づく、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項11】
各組み合わせにおける2種のジオールのモル比が3:1〜1:3の範囲内である、請求項9または10に記載の水性塗料組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の顔料C)が効果顔料を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
【請求項13】
下塗り組成物の層と前記層上の仕上塗り組成物の層とを含む多層塗膜中の色付与下塗り組成物および/または特殊効果付与下塗り組成物としての、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性塗料組成物の使用。
【請求項14】
車体および車体部品の塗膜および補修塗膜に対する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性塗料組成物の使用。
【請求項15】
I)場合により前塗装された基材上に、水性色付与下塗り組成物および/または水性特殊効果付与下塗り組成物の下塗り層を被着させる工程と、
II)場合により、工程Iにおいて得られた前記下塗り層を硬化させる工程と、
III)前記下塗り層上に透明仕上塗り組成物の仕上塗り層を被着させる工程と、
IV)場合により前記下塗り層と一緒に、工程IIIにおいて被着させた前記仕上塗り層を硬化させる工程と、
を含む、基材の多層塗装のための方法であって、
前記水性色付与下塗り組成物および/または水性特殊効果付与下塗り組成物が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性塗料組成物である方法。

【公表番号】特表2013−515096(P2013−515096A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544938(P2012−544938)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061264
【国際公開番号】WO2011/075718
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】