説明

水性塗料

【課題】
防錆性と仕上がり外観に優れ、鉛石鹸を含まずに乾燥性が従来の水性アルキッド樹脂よりも優れた塗膜を形成すること。
【解決手段】
(A)樹脂固形分を30〜70重量%含む水性アルキッド樹脂、
(B)フェノール系またはオキシム系皮張り防止剤を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して1〜30重量部、
(C)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選択される1種又は2種以上のアルコール類を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して10〜300重量部、
の上記(A)〜(C)を主成分とする混合物であって、かつ当該混合物のpHが5.0〜9.5である水性塗料とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料に関し、特に金属面や塗装面に対して、仕上がり時の光沢や外観に優れ、かつ乾燥性に優れた塗膜を形成しうる常乾型の水性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製構造物(建築物)の外装や自動車シャーシー等の金属面、塗装面に対する塗装には、通常、錆止め塗料を塗装し、その上にアルキッド樹脂系塗料、アクリルアルキッド樹脂系塗料、シリコンアルキッド樹脂系塗料などの上塗り塗料が塗装されている。かかる塗装工程は、通常、錆止め塗料を1回塗装し、次いで上塗り塗料を1回又は2回重ねるものであり、経済性の点から塗料の下塗上塗兼用化、塗装工程の短縮が求められていた。
【0003】
一方、前述のアルキッド樹脂系の塗料として、特許文献1では、乾性油変性アルキッド樹脂や半乾性油変性アルキッド樹脂を主成分とする水性塗料の製造方法が開示され、また、特許文献2には、エポキシ基含有ビニル共重合体に不飽和脂肪酸を含有する脂肪酸成分と、水酸基/又はアルコキシ基を含有するシリコン樹脂とが結合された酸化硬化型シリコン変性ビニル系樹脂をバインダー成分とする塗料組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、水性アルキッド樹脂と沸点250℃以下の有機溶媒と顔料(チタン系)からなる木材用下塗り水性塗料が開示されている。特許文献4には、多価アルコール及び多塩基酸を原料とするアルキッド樹脂に酸無水物を導入した水性アルキッド樹脂が開示されている。さらに、特許文献5には、アルキッド樹脂をアクリルモノマーで改質したアクリル変性アルキッド樹脂が開示されている。
【特許文献1】特公昭62−47906号公報
【特許文献2】特開2001−293433号公報
【特許文献3】特開2003−286437号公報
【特許文献4】特公平4−50953号公報
【特許文献5】特表2001−512778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来からの水性錆止め塗料は、得られる塗膜の光沢が低く着色に制限があり、またチョーキングを起こし易く、さらに上塗り塗料を重ね塗装する必要がある。また、これまでの水性上塗塗料は防錆性に劣り、やはり下塗り塗料を塗装する必要があり、このように1種類の塗料を用いて1回又は2回の塗装で、防錆性と仕上がり外観両方に優れた塗膜を形成することは困難であった。
【0006】
また、耐薬品性が優れるとされる水性アルキッド塗料においては乾燥性が遅いとう問題もあり、外観、防錆性を維持したままで、乾燥性の良い塗膜を形成することは困難であった。特に、特許文献1では水性アルキッド樹脂の乾燥性を向上させる為にナフテン酸鉛が使用されているが、環境問題の点からみても鉛石鹸の使用は好ましくない。
したがって、本発明は防錆性と仕上がり外観に優れ、かつ鉛石鹸を含まずに乾燥性が従来の水性アルキッド樹脂よりも優れた塗膜を形成できる水性塗料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の基体樹脂成分およびアルコール類と皮張り防止剤からなる水性塗料が防錆性と仕上がり外観に優れ、鉛石鹸を含まずに乾燥性が従来の水性アルキッド樹脂よりも優れた塗膜を形成することを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、請求項1では(A)樹脂固形分を30〜70重量%含む水性アルキッド樹脂、(B)フェノール系またはオキシム系皮張り防止剤を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して1〜30重量部、(C)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選択される1種又は2種以上のアルコール類を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して10〜300重量部、上記(A)〜(C)を主成分とする混合物であって、かつ当該混合物のpHが5.0〜9.5である水性塗料とした。
【0009】
また、請求項2では(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(D)ドライヤーを1〜30重量部含有させるようにし、請求項3では(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(E)レベリング剤を1〜30重量部含有させるようにし、請求項4では(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(F)アミノアルコールを0.5〜15重量部含有させるようにし、請求項5では混合物のpHを8.0〜9.0とするようにし、請求項6ではそのpHを(G)アンモニア水により調整するようにした。
請求項7では、さらに(H)水を添加するようにし、請求項8では(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(I)着色顔料を5〜100重量部添加するようにし、請求項9では(A)水性アルキッド樹脂が、アクリル変性の水性アルキッド樹脂であるようにし、請求項10では、得られる塗膜の60°グロスが、25℃・50%RHの雰囲気下で乾燥1日後及び乾燥1ヶ月においていずれも60以上であり、JIS K5400の指触乾燥が20分以内であるようにした。
さらに、請求項11では本発明の水性塗料を自動車の下周り塗装用に用いるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水性塗料は鉛石鹸の重金属を使用しておらず、アルコール類、皮張り防止剤と容易に混和し、金属表面などの被着体に塗布した際には短時間で乾燥し、また乾燥すると金属面、塗装面に対して、仕上がりの光沢と外観と乾燥性に優れた塗膜を形成することができる。
また、本発明の水性塗料による被着体表面に形成された塗膜の60°グロスは、25℃・50%RHの雰囲気下で乾燥1日後及び乾燥1ヶ月においていずれも60以上であることから、十分な防錆性、耐久性を有していることがわかる。
さらに、本発明の必須成分であるアルコール類をメタノール、エタノール、n−プロピルアルコールから選択して使用すると、水性塗料としての臭気を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の水性塗料を構成する各要素について詳述する。
本発明に使用できる(A)水性アルキッド樹脂は、多塩基酸成分、多価アルコール成分及び油脂肪酸がエステル化された樹脂であって、かつ水性で塗膜形成能を有するものであれば特に制限されるものでは無い。なお、ここで水性とは水溶性及び/又は水分散性を意味し、特に水溶性タイプが本発明においては望ましい。
【0012】
上記多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上のニ塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸;スルホフタル酸、スルホイソフタル酸及びこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩や低級アルキルエステル化物などが併用される。また酸成分として、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸を分子量調整などの目的で併用することができる。
【0013】
上記多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1.4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール;ポリオキシエチレン基を有する多価アルコールなどを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。また上記酸成分アルコール成分の一部をジメチロールプロピオン酸、オキシピバリン酸、パラオキシ安息香酸など;これらの酸の低級アルキルエステル;ε−カプロラクトンなどのラクトン類などのオキシ酸成分に置き換えることもできる。
【0014】
上記油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキッド樹脂の油長は5〜80%、特に20〜70%程度の範囲内であることが、得られる塗膜の硬化性、強靭性、肉持ち感などの面から好適である。
これらの成分のエステル化反応(エステル交換反応も包含する)は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
【0015】
また、アルコール成分の一部としてエポキシ化合物を使用してエポキシ化合物を部分エステル化したエポキシ変性アルキッド樹脂;アルキッド樹脂に無水マレイン酸を導入してなるマレイン化アルキッド樹脂;マレイン化アルキッド樹脂と水酸基含有アルキッド樹脂とを付加してなるグラフト化アルキッド樹脂;アルキッド樹脂にスチレン、(メタ)アクリル酸エステルなどのビニルモノマーをグラフト重合させたビニル変性アルキッド樹脂、等も本発明のアルキッド樹脂に包含される。 なお、上述の変性アルキッド樹脂の中でも、特にアクリル酸エステルにより変性されたアクリル変性の水性アルキッド樹脂が好適である。
【0016】
さらに、特開2002−356545号に示すように、テレフタル酸を主原料とするポリエステル樹脂を利用して、上述のアルコール成分と多塩基酸成分との混合物中にこのポリエステル樹脂を溶解させ、解重合するとともに、エステル化反応させることにより得られるアルキッド樹脂や、該アルキッド樹脂を無水マレイン酸と反応させて得られるマレイン化アルキッド樹脂、該アルキッド樹脂とエチレン性不飽和基を有さない酸無水物とを反応させて得られる変性アルキッド樹脂、等も本発明のアルキッド樹脂に包含される。
【0017】
上記アルキッド樹脂を水性とするためには、例えば、アルキッド樹脂を高酸価のものとし、アミン化合物などの塩基性化合物で中和して水性化する方法、アルキッド樹脂中にポリオキシエチレン基なのどの親水基を導入し、この親水基の働きにより水中に自己乳化させる方法、アルキッド樹脂を乳化剤の存在下にてディスパー型攪拌機などのような高速攪拌機を使用し、水中に強制攪拌して水中に分散させる方法、さらにアルキッド樹脂を低酸価のものとし、高速攪拌機で得られた水分散アルキッド樹脂粒子を、水分散性を向上させ、粒子径をさらに小さくそろえる目的で、微粒化する特定の高エネルギーせん団能力を有する分散機を用いて水中に分散させる方法、これらを併用した方法などを挙げることができる。
【0018】
上記水性アルキッド樹脂のうち、得られる塗膜の防食性・耐水性の点から、特に乳化剤は添加しないあるいはできるだけ少なく、かつ低酸価のアルキッド樹脂を水分散化したものが好適である。具体的には酸価20以下、好ましくは10未満のアルキッド樹脂が好適である。
【0019】
アルキッド樹脂のエマルジョン粒子の平均粒子径は、一般に小さい方が得られる塗膜の光沢、ガスバリヤー性に有利であり、特に400nm以下、好ましくは100〜300nmが好適である。また、水性アルキッド樹脂の最低造膜温度を5℃とすることで、塗料化において造膜助剤を配合せず、もしくは少量配合とでき、塗料中に沸点250℃以下の有機溶剤量(VOC)を2%以下にすることが可能となる。
【0020】
上記アルキッド樹脂は、上述したように通常水に分散又は溶解した状態で安定化されているが、本発明においては、この水性液中のアルキッド樹脂固形分濃度は30〜70重量%であることが望ましい。前記範囲を逸脱すると水性液としての安定性が崩れて分離したり、塗膜形成に悪影響を及ぼすことがある。
また、本発明の水性塗料の主成分として配合されるアルキッド樹脂の固形分は、本発明の水性塗料全体の10〜40重量%とすることが望ましく、さらに好ましくは20〜30重量%。10重量%をしたまわると塗膜が薄くなり十分な防錆性能を発揮し難くなり、40重量%以上では乾燥性が悪くなってしまうからである。
【0021】
上記した水性アルキッド樹脂の市販品としては、Resydrol AY466w/38WA(クラリアントジャパン社製 樹脂固形分38重量%)、WATERSOL BCD−6040(大日本インキ化学工業社製 樹脂固形分38重量%)、アクリセット376(日本触媒社製 樹脂固形分50重量%)などが挙げられる。
【0022】
本発明では上記の水性アルキッド樹脂に、必要に応じて、従来公知の常温乾燥型の水性樹脂を所定の性能を低下させない範囲内で併用することができ、該水性樹脂としては、例えばアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコン樹脂系、フッ素樹脂系などが挙げられる。
【0023】
本発明に使用される皮張り防止剤(B)としては、メチルエチルケトンオキシムなどのオキシム系皮張り防止剤、2,6−ジ−第三−ブチル−P−クレゾール(B.H.T)、ブチル化ヒドロキシアニゾール(B.H.A)、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)等フェノール系の皮張り防止剤が挙げられるが、なかでもメチルエチルケトンオキシムが好適である。
【0024】
これら皮張り防止剤の添加量は、(A)水性アルキッド樹脂の固形分100重量部に対して1〜30重量部配合することが好ましく、さらに好ましくは2〜5重量部である。前記範囲内で配合することで、塗膜全体の硬化が均一に行われ、塗膜表面の乾燥性が向上する。1重量部未満の添加では、塗膜が均一に硬化せず端部より徐々に硬化するため、波打つような島模様が発現してしまう可能性があり、30重量部を超えると塗膜表面の均一性が失われ表面が荒れた状態になったままで硬化してしまう場合がある。
【0025】
本発明の水性塗料に含まれるアルコール(C)は、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選択される1種又は2種以上であり、(A)水性アルキッド樹脂の樹脂固形分100重量部に対して10〜300重量部、好ましくは50〜200重量部の範囲で添加される。10重量部未満の添加では塗膜の乾燥速度向上の効果が確認できず、300重量部を超えると塗膜がつや消し状態あるいは正常に成膜せず、荒れた表面状態になる可能性がある。
【0026】
本発明ではさらに、本発明の(A)水性アルキッド樹脂の樹脂固形分100重量部に対してドライヤー(D)を1〜30重量部、好ましくは2〜10重量部配合することで、塗膜全体の乾燥を促進することが可能である。1重量部未満の添加ではその効果が確認できず、また、30重量部を超えると塗膜表面に気泡のようなつぶつぶや塗膜表面にくすみが発生してしまい悪影響がある。
前記ドライヤーの具体例としては、通常脂肪族カルボン酸塩やナフテン酸塩などの金属石鹸が使用できるが、環境に配慮して鉛を含まないものが好適である。一次ドライヤーとして働くCo、Mn等の金属以外に2次ドライヤーとして働く金属、例えば、Ba、Zr、Ca、Zn、Fe、Cuなどが好適である。尚溶剤系塗料に用いられているドライヤーをそのまま適用してもよいが、水及び水性樹脂に対する安定性、溶解性を考慮し水性塗料用ドライヤーを用いたほうが好ましい。
【0027】
本発明ではさらに、本発明の(A)水性アルキッド樹脂の樹脂固形分100重量部に対してレベリング剤(E)を1〜30重量部(好ましくは2〜10重量部)塗料中に配合することで、造膜時の塗膜表面の均一化が行われ、塗膜の仕上がり、外観が向上することが確認されている。1重量部未満では前述の効果が確認できず、30重量部を超えると表面に粘着性が発現してしまい、ホコリの付着を誘発してしまう可能性がある。
レベリング剤の具体例としては、ポリエーテル系、ポリアルキル系、シリコンオイル、シリコンワニス、メチルポリシロキサンポリアルキルオキシッド、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の界面活性剤が有効である。
【0028】
本発明ではさらに、本発明の(A)水性アルキッド樹脂の樹脂固形分100重量部に対してアミノアルコール(F)0.5〜15重量部(好ましくは1〜10重量部)を塗料中に配合することで、低温高湿時(5℃×80%)の塗膜表面の仕上がりを維持する事が可能で、白化等の塗膜のくすみを防止することが可能である。0.5重量部未満の添加では前述の効果が確認できず、15重量部を超えると塗膜表面にくすみが発生する可能性がある。
【0029】
本発明の水性塗料は、系中に含まれるアルキッド樹脂の安定性を向上する目的で、アンモニア水等のPH調整剤を添加することができる。その添加量は、水性塗料のpHが5.0〜9.5の範囲なるように任意添加するとよい。その場合には25〜28重量%のアンモニアを含むアンモニア水(G)を塗料中に配合することで適度に調整できる。特にpHが8.0〜9.0の場合に水性塗料(水性アルキッド樹脂)として液の安定性が向上できるという好ましい結果が得られる。
【0030】
本発明の水性塗料においては、その造膜性の調整、粘度の調整、塗膜の膜厚の調整などの目的でイオン交換水などの水(H)を任意量添加することができる。通常アルキッド樹脂にアルコールを配合すると粘度が増加するが、水を適量配合することで粘度を低下させることが可能である。
【0031】
本発明ではさらに、本発明の(A)成分の固形分100重量部に対して、(I)着色顔料を1〜100重量部を配合することができる。本発明に使用可能な着色顔料としては、従来公知のものが使用できる。その代表例を挙げると、亜鉛華、チタン白、硫酸鉛、硫化亜鉛、アンチモン白などの白色顔料、ベンガラ、鉛丹、パーマネントレッド等の赤色顔料、クロムオレンジ、パーマネントオレンジなどの橙色顔料、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、紺青等の青色顔料、その他各色の着色顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、等の黒色顔料、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、タルク、クレー、マイカ、珪藻土などの体質顔料などが挙げられる。なお、本発明の水性塗料においては、特にカーボントナーを用いると漆黒性のある着色が可能である。
【0032】
本発明の塗料にはさらに必要に応じて顔料分散剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、硬化触媒、沈降防止剤など通常の塗料用添加剤を配合することができる。
【0033】
本発明の水性塗料は、上述した各成分を任意の順序で順次混合することにより容易に得ることができる。また、途中で混合物のpHを調整する場合は、各成分の順次混合した時点で任意にpH調整剤を添加しながら製造してもよい。
本発明の水性塗料は、従来から公知の塗布方法を用いて被着体に塗布可能である。その一例を挙げると、被着体に所定の膜厚を確保するよう本発明の水性塗料の粘度や樹脂固形分を調整したものを、スプレーガンを用いて被着体に塗布し、25℃、55%の恒温槽にて24時間乾燥させることにより得ることができる。塗膜表面の光沢を保持できる程度に加温することで、塗布後の乾燥性を向上させることもできる。
また、例えば一回のスプレー塗布により形成できる塗膜の膜厚は、概ね20〜80μmであるが、塗膜の膜厚を厚くするため重ね塗りを行うことも可能である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
水性アルキッド塗料の調整(実施例1〜24、比較例1〜3)
容器に表1、2に示される各成分を順次仕込み30分間均一になるまで攪拌し、各水性塗料を得た。なお、表中の配合割合を示す数値は特に断りのない限り重量基準である。
得られた各水性塗料について以下に示す性能評価試験を行った。これらの結果、即ち水性塗料の乾燥性、光沢(1日後、1ヶ月後)、pH、塗膜表面状態を表1、2に併せて示す。
【0036】
なお、表中に示される各成分を表す記号は、下記を意味する。
(A)成分
・「Resydrol AY466w/38WA」:クラリアントジャパン社製、水性アクリルアルキッド樹脂 固形分38重量%
・「WATERSOL BCD−6040」:大日本インキ化学工業社製、水性アクリルアルキッド樹脂 固形分38重量%
(B)成分
・「Additol XL109」:サーフェス・スペシャリティーズ・ジャパン社製、フェノール系皮張り防止剤
・「Additol XL297」:サーフェス・スペシャリティーズ・ジャパン社製、オキシム系皮張り防止剤
(D)成分
・「ハイキュアMIX」:東栄化工社製、ドライヤー、変性脂肪酸カリウム、コバルト、ジルコニウム含有
(E)成分
・「Additol VXL4930」:サーフェス・スペシャリティーズ・ジャパン社製、変性ポリシロキサン系レベリング剤
(I)成分
・「SAブラックSBB315A」:御国色素社製、着色顔料、カーボンブラック18重量%含有
【0037】
(性能評価試験方法)
・60°グロス(光沢)試験:各水性塗料を隙間150μmのフィルムアプリケーターでガラス板に塗布し、25℃・50%RHの雰囲気下で乾燥1日後、及び乾燥1ヶ月後の60°グロスをJIS K5600 4−7鏡面光沢度の試験方法に準じて測定した。
・指触乾燥試験:各水性塗料を隙間150μmのフィルムアプリケーターでガラス板に塗布し、JIS K5400 6−5の指触乾燥にて評価した。
【0038】
・塗膜表面の状態確認
気泡の有無:塗膜表面に粒状の気泡のようなものがあるかを確認。目視にて確認。
○:気泡がまったくない
△:気泡の発生がうかがえる
×:塗膜全面に気泡が発生
仕上がり:塗膜表面に凹凸がなく均一であるかを確認。目視にて確認。
○:凹凸がまったくなく、塗膜表面に反射する像が映る。
△:じゃっかん凹凸があるが、塗膜表面に反射する像が映る。
×:凹凸があり塗膜表面に反射する像が移らない。
くすみ:塗膜表面がつや消し状態であるかを確認。目視にて確認。
○:くすみがまったくなく、塗膜表面に反射する像が映る。
△:じゃっかんくすみがあるが、塗膜表面に反射する像が映る。
×:くすみがあり塗膜表面に反射する像が移らない。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の水性塗料より得られる塗膜は、人体に有害な鉛石鹸を含まず、高光沢及び適度な防錆性を有するので、一般的な塗料の用途は勿論、自動車や電車などの車両用鋼板の塗料、建築物鋼板の塗料などに広く利用できる。
また、本発明の水性塗料は、被着体へ塗装後の乾燥速度に優れるため、例えば作業時間の短縮を求められる自動車等車検整備に使用される車両の下回り用の車体防錆塗料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂固形分を30〜70重量%含む水性アルキッド樹脂、
(B)フェノール系またはオキシム系皮張り防止剤を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して1〜30重量部、
(C)メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールから選択される1種又は2種以上のアルコール類を(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して10〜300重量部、
上記(A)〜(C)を主成分とする混合物であって、かつ当該混合物のpHが5.0〜9.5である水性塗料。
【請求項2】
前記(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(D)ドライヤーを1〜30重量部含有させた請求項1に記載の水性塗料。
【請求項3】
前記(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(E)レベリング剤を1〜30重量部含有させた請求項1に記載の水性塗料。
【請求項4】
前記(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(F)アミノアルコールを0.5〜15重量部含有させた請求項1に記載の水性塗料。
【請求項5】
前記混合物のpHが8.0〜9.0である請求項1に記載の水性塗料。
【請求項6】
前記pHを(G)アンモニア水により調整した請求項5に記載の水性塗料。
【請求項7】
さらに(H)水を添加する請求項1項記載の水性塗料。
【請求項8】
前記(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して、さらに(I)着色顔料を5〜100重量部添加する請求項1項記載の水性塗料。
【請求項9】
前記(A)水性アルキッド樹脂が、アクリル変性の水性アルキッド樹脂である請求項1項記載の水性塗料。
【請求項10】
得られる塗膜の60°グロスが、25℃・50%RHの雰囲気下で乾燥1日後及び乾燥1ヶ月においていずれも60以上であり、JIS K5400の指触乾燥が25分以内である請求項1に記載の水性塗料。
【請求項11】
自動車の下周り塗装用水性塗料である請求項1に記載の水性塗料。

【公開番号】特開2007−119615(P2007−119615A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314161(P2005−314161)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】