説明

水性塗料

【課題】
立体感に富む仕上がり性を有し、且つ弾力性に優れた塗膜を形成しうる水性塗料を提供する。
【解決手段】
塗料粒子(I)並びに塗膜形成成分(II)を含んでなる水性塗料であって、塗料粒子(I)が、水性樹脂(A)を含み、該水性樹脂(A)が、不飽和基含有樹脂(a1)に由来するものであることを特徴とする水性塗料、塗料粒子(I)が、不飽和基含有樹脂(a1)、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性多糖類(a3)を含む水性液状組成物を、金属化合物を含有する水性媒体と接触させ、次いで得られる粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a1)を重合させることにより得られるものであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠性があり、立体感のある塗膜を形成するのに適する水性塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子多糖類を塩化カルシウム水溶液等の金属イオンとの作用により、液状粒子をゲル化膜でカプセル化する方法は公知であり、食品、化学、バイオ等の分野で広く用いられている。
【0003】
このようなカプセル化手法として、例えば、特許文献1には、親水性熱硬化性樹脂、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤又はその一部、及び水溶性高分子多糖類を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下した後、次いで得られる粒状ゲルを重合して該粒状ゲル中の熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする酵素又は微生物菌体固定化用粒状生成物の製造方法が開示されている。
【0004】
また、水溶性高分子多糖類の金属イオンによるゲル化の応用例として例えば多彩模様塗料がある。
【0005】
多彩模様塗料とは、一回の塗装で2色以上の多彩な模様をもつ塗膜を形成することができる塗料であり、例えば、分散媒体中に複数の着色粒状ゲルを安定に分散させてなる塗料が挙げられ、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0006】
多彩模様塗料として、例えば特許文献2には、エマルジョン樹脂等の塗膜形成成分を水溶性高分子化合物のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子を含有する着色塗料組成物が開示されている。該組成物によれば、液状着色粒子の融着によって塗膜を形成することから、十分な塗膜物性が得られない場合があった。
【0007】
また、特許文献3には、反応性官能基を有する水性樹脂、着色顔料、水、及び水存在下で反応可能な反応性化合物に由来するゲル化物である着色ゲル粒子を、水性樹脂及び特定の屈折率をもつ体質顔料を含有する透明艶消し塗料中に分散してなる水中水型多彩模様塗料組成物が開示されている。この塗料組成物を用いれば、平滑性及び鮮鋭性に優れ、塗膜物性にも優れた艶消しの多彩模様塗膜を形成せしめることができるが、塗膜の弾力性が十分とはいえず、また、多様化したユーザーの要求に応えるためには立体感を有する塗膜を形成可能な水性塗料の開発が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−210969号公報
【特許文献2】特開昭64−16879号公報
【特許文献3】特開2005−15645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、立体感に富む仕上がり性を有し、弾力性に優れた塗膜を形成しうる水性塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、塗料粒子並びに塗膜形成成分を含んでなる水性塗料において、塗料粒子内に架橋した水性樹脂を含ませることによって、弾力性に富み、仕上がりの立体感に優れた塗膜を形成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は
1. 塗料粒子(I)並びに塗膜形成成分(II)を含んでなる水性塗料であって、塗料粒子(I)が、水性樹脂(A)を含み、該水性樹脂(A)が、不飽和基含有樹脂(a1)に由来するものであることを特徴とする水性塗料、
2. 不飽和基含有樹脂(a1)が、ポリイソシアネート、ポリアルキレングリコール及び不飽和モノヒドロキシエチル化合物を原料とする不飽和基含有ウレタン樹脂である1項に記載の水性塗料、
3. 塗料粒子(I)が、不飽和基含有樹脂(a1)、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性多糖類(a3)を含む水性液状組成物を、金属化合物を含有する水性媒体と接触させ、次いで得られる粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a1)を重合させることにより得られるものである1項または2項に記載の水性塗料、
4. 塗料粒子(I)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(II)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する1項ないし3項のいずれか1項に記載の水性塗料、
5. 塗料粒子(I)が、カルボニル基含有水性樹脂をさらに含み、塗膜形成成分(II)が、カルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、塗料粒子(I)及び/又は塗膜形成成分(II)が、ヒドラジン誘導体を含有する1項ないし4項のいずれか1項に記載の水性塗料、
6. 被塗面に、下塗り塗膜を介して又は介さずに1項ないし5項のいずれか1項に記載の水性塗料を塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水性塗料によれば、塗料粒子内に不飽和基含有樹脂に由来する架橋した水性樹脂が含まれているため、塗料粒子自体強度及び弾性があり、塗膜形成成分とともに塗装に供されることで立体感のある仕上がり性で且つ弾性や耐水性などの性能に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
塗料粒子(I)
本発明において、水性塗料に含まれる塗料粒子(I)は、水性樹脂(A)を含んでなるものである。かかる水性樹脂(A)は、不飽和基含有樹脂(a1)に由来する樹脂であり、不飽和基含有樹脂(a1)が重合することによってなるものである。
【0013】
水性樹脂(A)のもととなる不飽和基含有樹脂(a1)としては、不飽和基を有し、かつ水に溶解または分散可能な樹脂であればその樹脂種、製法に制限はなく、例えばアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの樹脂に不飽和基を有している樹脂を挙げることができる。
【0014】
本発明においては、塗料粒子(I)に適度な弾性を与えることができることから、かかる水性樹脂(A)が水性ポリウレタン樹脂であることが望ましく、不飽和基含有樹脂(a1)が、不飽和基含有ウレタン樹脂であるとよい。
【0015】
かかる不飽和基含有ウレタン樹脂としては、例えばポリイソシアネート、ポリアルキレングリコール及び不飽和モノヒドロキシエチル化合物を原料とする樹脂であることが塗料粒子(I)の製造安定性、本発明の水性塗料の貯蔵安定性、塗膜の弾性などの点から適している。
【0016】
上記不飽和基含有ウレタン樹脂としては、例えば、分子量400〜6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物;分子量200〜4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の不飽和モノヒドロキシ化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物、などを挙げることができる。
【0017】
本発明において上記塗料粒子(I)としては例えば、不飽和基含有樹脂(a1)、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性多糖類(a3)を含む水性液状組成物を、金属化合物を含有する水性媒体と接触させ、次いで得られる粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a1)を重合させることにより得ることができ、それによって、該不飽和基含有樹脂(a1)に由来する水性樹脂(A)を多糖類金属塩ゲル中に含有してなり、強度があって立体感のある塗料粒子(I)を容易に形成せしめることができる。
【0018】
上記不飽和基含有樹脂(a1)の重合反応を促進するためのレドックス系重合開始剤(a2)としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、−10℃〜50℃程度の比較的低温でラジカル重合を行い得る、酸化剤と還元剤の組み合わせからなる重合開始剤が好適に使用される。
【0019】
酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物類;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類;過酸化水素等が挙げられる。
【0020】
また、還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩類;硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの二価の鉄塩類;N,N−ジメチルアニリン、フエニルモルホリンなどのアミン類;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅などのナフテン酸金属塩類;等を挙げることができる。
【0021】
これらのレドックス系重合開始剤のうち、本発明において特に有利に使用しうるものは、酸化剤が過硫酸塩類又は過酸化水素からなり、還元剤が亜硫酸水素塩類又は二価の鉄塩からなる組み合わせのものである。
【0022】
上記水溶性多糖類(a3)は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約10g/L(25℃)以上の水溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明において、上記不飽和基含有樹脂(a1)、レドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性高分子多糖類(a3)の各成分の相互の使用割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類等に応じて広範にわたって変えることができるが、一般には、不飽和基含有樹脂(a1)100質量部に対し、レドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性高分子多糖類(a3)はそれぞれ下記の割合で使用するのが適当である(カッコ内は好適範囲である)。
【0024】
レドックス系重合開始剤(a2):0.1〜5質量部(0.3〜3.5質量部)
水溶性高分子多糖類(a3):0.5〜15質量部(1〜8質量部)。
【0025】
また、上記レドックス系重合開始剤(a2)は酸化剤と還元剤とを組み合わせて使用されるが、両者の混合割合はモル比で一般に5:1〜1:5、好適には2.5:1〜1:2.5の範囲内とするのが適当である。
【0026】
なお、上記レドックス系重合開始剤(a2)を構成する酸化剤又は還元剤のいずれか一方は、必要に応じて、後述の金属化合物を含有する水性媒体中に、例えば0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の濃度で含有させるようにしてもよい。
【0027】
本発明において上記塗料粒子(I)は、不飽和基含有樹脂(a1)に由来する水性樹脂(A)以外の水性樹脂を包含することができる。
【0028】
かかる不飽和基含有樹脂(a1)に由来する水性樹脂(A)以外の水性樹脂としては、水に溶解又は分散可能な樹脂であってその樹脂種には特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
上記水性樹脂は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、かかる水性樹脂は、塗料粒子(I)の製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記水性樹脂(A)に併用され得るその他の水性樹脂としては、塗料粒子(I)の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0031】
かかるアクリル系樹脂としては、重合性不飽和モノマーを共重合してなる樹脂が挙げられ、かかる重合性不飽和モノマーとしては例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0033】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤を挙げることができ、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0034】
また、上記塗料粒子(I)は着色剤を包含することもできる。かかる着色剤としては、顔料及び染料を使用することができる。着色顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0035】
他方、染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料等が挙げられ、目的とする色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
また、上記塗料粒子(I)においては、着色剤と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられる。
【0037】
上記着色剤の配合量は、塗料粒子(I)による着色性、比重、耐久性、耐水性などの観点から、塗料粒子(I)に含まれる樹脂の質量を基準にして、通常0.01〜500質量%、好ましくは0.05〜400質量%の範囲内であることが好適である。
【0038】
本発明において上記塗料粒子(I)を製造するための水性液状組成物は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0039】
上記水性液状組成物は、次いで、金属化合物を含有する水性媒体に接触させることによって、該水性液状組成物が粒状でゲル化せしめられる。
【0040】
上記水性液状組成物を粒状ゲル化せしめる際に用いられる金属イオンの供給源となる金属化合物としては、25℃の水100gに0.005mg以上、特に0.08mg以上溶解するものであることが望ましく、例えば、カリウム、ナトリウム等の一価金属や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム等の多価金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、塩化物、硫化物等を挙げることができ、塗膜の耐水性などの点から、水酸化物、酸化物、炭酸塩であることが望ましく、カルシウム塩であるとさらに望ましい。
【0041】
本発明において、上記金属化合物として、水酸化カルシウムを使用すると塗膜の耐水性が良好となり、特に好適である。
【0042】
上記金属化合物を水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。金属化合物を含有する水性媒体における金属化合物の含有量は、通常0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることが望ましい。
【0043】
本発明において水性液状組成物の粒状ゲルを得るための上記水性液状組成物と金属化合物を含有する水性媒体との接触は、例えば、注射器の先端から水性液状組成物を水性媒体中に滴下する方法;水性液状組成物を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から水性塗料組成物を霧化させ、水性媒体中に滴下する方法;水性液状組成物を水性媒体中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行なうことができる。
【0044】
上記の如くして生成せしめた粒状ゲルは、そのまま水性媒体中に分散させた状態で、或いは水性媒体から分離した後、重合させることにより、該粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a1)を重合し、硬化せしめる。これにより粒状ゲルは水に実質的に不溶性で強度が大きく立体感のある塗料粒子(I)となることができる。
【0045】
上記不飽和基含有樹脂(a1)の重合は、特に制限されるものではなく熱重合であっても光重合であってもよい。
【0046】
上記の粒状ゲルは、レドックス系重合開始剤(a2)を含有している場合、室温で放置しておくだけでも重合が進行して必要な機械的強度が得られるまでに硬化されるが、必要に応じ、恒温雰囲気中で重合させてもよい。恒温雰囲気の温度は一般に0℃〜50℃、特に20℃〜40℃の範囲内が好適である。
【0047】
上記の如くして形成される塗料粒子(I)の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、水性塗料(II)に求められる意匠性に応じて適宜変えることができ、例えば、水性液状組成物の組成、水性媒体中の金属イオンの濃度、水性液状組成物の水性媒体への滴下の仕方等により調整することができる。
【0048】
得られる塗料粒子(I)は、例えば、適当な大きさの網目をもつ金網などを用いて金属化合物を含有する水性媒体から濾別することができる。
【0049】
塗膜形成成分(II)
本発明の水性塗料は、上記塗料粒子(I)に加えて塗膜形成成分(II)を含有する。かかる塗膜形成成分(II)は、それ自体成膜性を有するものであり、非架橋型及び架橋型のいずれであってもよい。
【0050】
本発明において上記塗膜形成成分(II)として含まれ得る水性樹脂(B)としては水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを特に制限なく使用することができ、例えば、塗料粒子(I)における水性樹脂(A)以外に併用されるその他の水性樹脂として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0051】
本発明において、塗料粒子(I)内部に含まれる水性液状組成物と塗膜形成成分(II)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有することが塗膜の耐水性を向上させることができるので好適であり、塗料粒子(I)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(II)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有するものであることが望ましい。
【0052】
上記塗料粒子(I)内部に含まれる水性塗料組成物中に含まれる反応性官能基(x)と塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせであると、常温一液架橋することができ、好適である。
【0053】
本発明において、得られる塗膜の耐水性、耐候性、貯蔵安定性などを両立させるためには、塗料粒子(I)が、上記水性樹脂(A)以外にカルボニル基含有水性樹脂をさらに含み、塗膜形成成分(II)が、水性樹脂(B)としてカルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、塗料粒子(I)及び/又は塗膜形成成分(II)が、ヒドラジン誘導体を含有することが望ましい。
【0054】
塗料粒子(I)又は塗膜形成成分(II)に含まれ得るカルボニル基と反応するためのヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明において塗膜形成成分(II)は、着色塗膜を形成するものであっても或いはクリヤー塗膜を形成するものであってもよく、着色塗膜を形成する場合には必要に応じて着色剤を含むことができる。
【0056】
塗膜形成成分(II)に含ませることができる着色剤としては、塗料粒子(I)における着色剤として前記で例示したものの中から適宜選択して使用することができる。また、塗膜の乾燥性向上、適度な艶、触感向上などの観点から、該塗膜形成成分(II)に前述の如き体質顔料を配合することが望ましい。
【0057】
塗膜形成成分(II)に着色剤及び/又は体質顔料を配合する場合、その合計配合量は、塗膜形成成分(II)中に含まれる樹脂固形分に対して、通常5〜300質量%、好ましくは10〜200質量%、さらに好ましくは15〜150質量%の範囲内であることができる。
【0058】
上記塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)の配合割合は、得られる塗膜の意匠性、耐水性の点から、塗料粒子(I)/塗膜形成成分(II)の固形分質量比で、1/99〜60/40であり、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜45/55の範囲内にすることができる。
【0059】
上記本発明の水性塗料は、以上に述べた塗料粒子(I)及び塗膜形成成分(II)以外に必要に応じて塗料用添加剤を含ませることができる。
【0060】
該塗料用添加剤としては、塗料粒子(I)について前記で説明した如き中和剤、バルーン粒子、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、アルキルシリケート縮合物又は該アルキルシリケート縮合物をポリアルキレングリコール等で変性してなる変性アルキルシリケート等の低汚染化剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0061】
本発明の水性塗料は、基材表面に塗装することにより、意匠性を有し、立体感があって、耐水性や弾性等の性能に優れた保護塗膜を形成せしめることができる。
【0062】
本発明の水性塗料を適用することができる基材表面としては、例えば、石膏ボード、コンクリート壁、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などを挙げることができる。
【0063】
本発明の水性塗料の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常100〜1,000g/m、好ましくは150〜700g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0064】
本発明の水性塗料の塗装はそれ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。また、ローラーを使用する場合は、ウールローラー、砂骨ローラー等を使用することができる。
【0065】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0066】
本発明の水性塗料は、例えば、基材表面に、予め下塗り塗料を塗装した後、形成される下塗り塗面上に本発明の水性塗料を塗装することができる。
【0067】
上記下塗り塗料としては、基材表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、シーラー、下地調整材等の下塗り塗料を使用することができる。また、通常の上塗り塗料を本発明の水性塗料の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0068】
かかる下地形成用の上塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0069】
下塗り塗料を塗装する場合、必要に応じて、2種以上の下塗り塗装を重ねて行うこともできる。
【0070】
上記下塗り塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテなどの塗装器具を用いて行うことができる。
【0071】
上記下塗り塗料の塗布量は、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、通常1回あたり50〜2,000g/m2、好ましくは70〜1,000g/mの範囲内とすることができる。
【0072】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0073】
本発明の水性塗料を用いれば、意匠性を有し、塗面に立体感があり、耐水性や弾性等に優れた保護塗膜を形成せしめることができるものであるが本発明の水性塗料の塗膜上には、必要に応じて、それ自体既知の上塗り塗料をさらに塗装してもよい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0075】
エチレン性不飽和結合を有する水性ウレタン樹脂の製造
製造例1
容量5リットルの4つ口フラスコに数平均分子量約4000のポリエチレングリコール1000部とイソホロンジイソシアネート111部とを反応容器に入れ、80℃で2時間反応させた。さらにアクリル酸2−ヒドロキシエチル56部とハイドロキノン0.5部とを反応容器に入れ、空気を吹き込みながら80℃で3時間反応させ、次いで水1750.5部を加え、1分子の両末端にエチレン性不飽和結合を有する水性ウレタン樹脂(a1)を得た。かかる水性ウレタン樹脂(a1)の固形分は40%であった。
【0076】
カルボニル基含有エマルションの製造
製造例2
容量2リットルの4つ口フラスコに脱イオン水285部、「Newcol707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。この中に下記組成をエマルション化してなるプレエマルションの3%分及び3部の過硫酸アンモニウムを120部の脱イオン水に溶解させた過硫酸アンモニウム水溶液123部のうち41部を添加し、添加20分後から残りのプレエマルション及び残りの過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけて滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6ヘキサンジオールジアクリレート 5部
ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「Newcol707SF」(注1) 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いでアンモニア水でpH8〜9に調整し、固形分55%のエマルション(b1)を得た。エマルション(b1)の粒子径は170nm、pHは8.3であった。
(注1)「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0077】
白顔料ペーストの製造
製造例3
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより白顔料ペーストを得た。
水 45部
「スラオフ72N」(注2) 3部
「DISPER BYK−190」(注3) 6部
「TITANIX JR−605」(注4) 100部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、日本エンバイロケミカルズ社製、防腐剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、分散剤、
(注4)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白。
【0078】
青顔料ペーストの製造
製造例4
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより青顔料ペーストを得た。
水 65部
モノエチレングリコール 5部
「スラオフ72N」(注2) 1部
「DISPER BYK−190」(注3) 6部
「SNデフォーマー380」(注5) 2部
フタロシアニンブルー 25部
(注5)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤。
【0079】
赤錆顔料ペーストの製造
製造例5
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより赤錆顔料ペーストを得た。
水 65部
モノエチレングリコール 5部
「スラオフ72N」(注2) 1部
「DISPER BYK−190」(注3) 6部
「SNデフォーマー380」(注5) 2部
酸化鉄 30部。
【0080】
黒顔料ペーストの製造
製造例6
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより黒顔料ペーストを得た。
水 65部
モノエチレングリコール 5部
「スラオフ72N」(注2) 1部
「DISPER BYK−190」(注3) 6部
「SNデフォーマー380」(注5) 2部
カーボンブラック 25部。
【0081】
塗料粒子用の水性液状組成物の製造
製造例7
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、塗料粒子用の水性液状組成物(A−1)を得た。
40%水性ウレタン樹脂(a1) 250部
白顔料ペースト 100部
「SNデフォーマー380」(注5) 2部
「アデカノールUH438」(注6) 2部
3%アルギン酸ナトリウム 120部
10%硫酸第一鉄水溶液 8部
10%過硫酸アンモニウム水溶液 7部
(注6)「アデカノールUH438」:商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタン変性物。
【0082】
製造例8〜13
上記製造例7において、配合組成を下記表1に示す配合組成に変える以外は製造例7と同様にして、水性液状組成物(A−2)〜(A−7)を製造した。
【0083】
【表1】

【0084】
(注7)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤。
【0085】
多彩模様塗料用水性クリヤー塗料の製造
製造例14
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間攪拌混合することにより、固形分50%の水性クリヤー塗料を得た。
55%エマルション(b1) 750部
「TEXANOL」(注7) 50部
水 279部
「タルク SS」(注8) 250部
「SNデフォーマー380」(注5) 10部
「アデカノールUH438」 (注6) 6部
(注8)「タルク SS」:商品名、日本タルク社製、タルク。
【0086】
製造例15
4リットルステンレス容器に、0.15%水酸化カルシウム(注9)水溶液を1,300部仕込み、温度が25℃になるように調整し、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度2,500rpmで攪拌しながら、上記で得られた作製後5分以内の水性液状組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、粒子を生成させた。次いで容器内液を同温度、同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、塗料粒子(I−1)を得た。得られた塗料粒子(I−1)は、固形分が20%であった。
(注9) 水酸化カルシウム:25℃の水100gに対して0.15g溶解。
【0087】
製造例16
4リットルステンレス容器に、水酸化カルシウム24部、過硫酸アンモニウム2.0部と脱イオン水1,200部を仕込み、温度が25℃になるように調整し、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度1500rpmで攪拌しながら、上記水性液状組成物(A−2)600部を徐々に容器内に滴下し、粒子を生成させた。次いで容器内液を同温度、同回転速度でさらに15分攪拌した後、15分静置させ、200メッシュの金網にて濾別し、塗料粒子(I−2)を得た。得られた塗料粒子(I−2)は、固形分が20%であった。
【0088】
製造例17、19〜20
製造例16において、水性塗料組成物(A−2)の代わりに下記表2に示す水性塗料組成物を使用する以外は上記製造例16と同様にして、塗料粒子(I−3)、(I−5)〜(I−6)を得た。
【0089】
製造例18、21
製造例15において、水性液状組成物(A−1)の代わりに下記表2に示す水性液状組成物を使用する以外は上記製造例15と同様にして、塗料粒子(I−4)、(I−7)を得た。
【0090】
【表2】

【0091】
水性多彩模様塗料の製造
実施例1
500ミリリットルのステレンス容器に、下記に示す配合で、前記で得た塗料粒子、クリヤー塗料などを順次攪拌しながら配合し、水性多彩模様塗料(1)を得た。得られた水性多彩模様塗料(1)は固形分30%、粘度81KUであった。
水性クリヤー塗料 130部
粒状ゲル(I−1)白色 145部
粒状ゲル(I−2)ピンク 15部
粒状ゲル(I−5)灰色 15部
「アデカノールUH−438」(注6) 0.3部
水 30部。
【0092】
実施例2〜4及び比較例1〜2
上記実施例1において配合組成を表3に示す以外は実施例1と同様にして水性多彩模様塗料(2)〜(6)を得た。得られた塗料の性状も併せて表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
塗装
スレート板(150×70×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系シーラー)を塗布量100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させた後、「ビニデラックス300」(関西ペイント社製、JIS K 5663 1種適合塗料)を塗布量100g/mになるようにローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とし、この上に上記で得た各水性多彩模様塗料を塗布量300g/mになるようにスプレーで1回塗装した。その後、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して、各試験塗板を得た。得られた試験塗板を下記性能試験に供した。結果を表3に併せて示す。
【0095】
性能評価
(*1)模様の立体感
◎:良好であり、立体感がはっきりしている、○:良好、△:やや不良、×:平滑で立体感がない。
(*2)耐水性
◎:良好、○:わずかに艶引けが認められるが、実用レベル、△:艶引け、白化、フクレが認められる、×:著しくフクレが認められる、又は塗膜が軟化する。
(*3)貯蔵安定性
各塗料を容量が1Lの内面コート缶に1kg入れ、40℃の恒温室で60日間貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:分離が認められず、塗料粒子の合一や破壊も認められない、△:ソフトケーキングや分離が認められるが、攪拌により均一となる、×:ハードケーキングや分離が認められ、元に戻らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料粒子(I)並びに塗膜形成成分(II)を含んでなる水性塗料であって、塗料粒子(I)が、水性樹脂(A)を含み、該水性樹脂(A)が、不飽和基含有樹脂(a1)に由来するものであることを特徴とする水性塗料。
【請求項2】
不飽和基含有樹脂(a1)が、ポリイソシアネート、ポリアルキレングリコール及び不飽和モノヒドロキシエチル化合物を原料とする不飽和基含有ウレタン樹脂である請求項1に記載の水性塗料。
【請求項3】
塗料粒子(I)が、不飽和基含有樹脂(a1)、酸化剤と還元剤からなるレドックス系重合開始剤(a2)及び水溶性多糖類(a3)を含む水性液状組成物を、金属化合物を含有する水性媒体と接触させ、次いで得られる粒状ゲル中の不飽和基含有樹脂(a1)を重合させることにより得られるものである請求項1または2に記載の水性塗料。
【請求項4】
塗料粒子(I)が、反応性官能基(x)を含有してなり、且つ塗膜形成成分(II)が、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項5】
塗料粒子(I)が、カルボニル基含有水性樹脂をさらに含み、塗膜形成成分(II)が、カルボニル基含有水性樹脂を含んでなり、塗料粒子(I)及び/又は塗膜形成成分(II)が、ヒドラジン誘導体を含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性塗料。
【請求項6】
被塗面に、下塗り塗膜を介して又は介さずに請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2008−7669(P2008−7669A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180752(P2006−180752)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】