説明

水性多彩模様塗料及び塗装方法

【課題】 耐水性及び耐候性に優れ、多彩な意匠感を有する多彩模様塗膜を形成するのに適する水性多彩模様塗料及びこれを用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】
少なくとも2色の着色塗料粒子が分散媒体中に分散してなる水性多彩模様塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、シリカ微粒子を0.5〜30質量部含有することを特徴とする水性多彩模様塗料。着色塗料粒子としては、水性樹脂及び着色剤を含んでなる水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に内包してなるものであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐水性及び耐候性に優れ、多彩な意匠感を有する多彩模様塗膜を形成するのに適する水性多彩模様塗料及びこれを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散媒体中に粒状ゲルを安定に分散させた塗料として例えば多彩模様塗料が良く知られている。多彩模様塗料とは1回の塗装で、2色以上の多彩な模様が得られる塗料であり、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0003】
多彩模様塗料として、特許文献1には、アクリル系モノマーを少なくとも20重量%以上含有するモノマー混合物を共重合してなる、重量平均分子量20,000〜200,000で酸価2以下の共重合体、着色剤及び有機溶剤を主成分とする組成物を混合分散してエナメルとし、これを水系分散媒に分散してなるエナメル分散粒子を1種以上含有する多彩模様塗料組成物が開示されている。この多彩模様塗料組成物は、エナメル分散粒子の安定性が良好で、それから形成される多彩模様塗膜は、多彩な意匠感を有し、耐候性や耐水性に優れているが、環境保全の観点から、該多彩模様塗料中に含まれる有機溶剤量をさらに少なくすることが求められている。
【0004】
有機溶剤の含有量の少ない多彩模様塗料組成物として、例えば特許文献2には、反応性官能基を有する水性樹脂、着色顔料、水、及び水存在下で反応可能な反応性化合物に由来するゲル化物である着色ゲル粒子を、水性樹脂及び特定の屈折率をもつ体質顔料を含有する透明艶消し塗料中に分散してなる水中水型多彩模様塗料組成物が開示されている。この塗料組成物を用いれば、平滑性及び鮮鋭性に優れた艶消しの多彩模様塗膜を形成せしめることができるが、水性樹脂中の水溶性成分が多いことに起因し、形成される多彩模様塗膜は耐水性や耐候性が不十分であるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平09−100426号公報
【特許文献2】特開2005−15645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機溶剤の含有量が少なく、且つ耐水性、耐候性等の性能に優れ、多彩な意匠感を有する多彩模様塗膜を形成するのに適する水性多彩模様塗料を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題に対して鋭意検討した結果、多彩模様塗料中にシリカ微粒子を特定量配合することで、得られる塗膜の耐水性、耐候性が格段に向上することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
1. 少なくとも2色の着色塗料粒子(I)が分散媒体中に分散してなる水性多彩模様塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、シリカ微粒子を0.1〜30質量部含有することを特徴とする水性多彩模様塗料、
2. 着色塗料粒子(I)が、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含んでなる水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル(c)中に内包してなる1項に記載の水性多彩模様塗料、
3. 着色塗料粒子(I)が、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類を含む水性塗料組成物を、金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより得られるものである1項又は2項に記載の水性多彩模様塗料、
4. シリカ微粒子の比表面積が、30〜400m/gの範囲内である1〜3項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料、
5. 水性樹脂(d)を含んでなる塗膜形成成分(II)をさらに含有する1〜4項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料、
6. 水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含んでなる反応性官能基(x)を含有する水性塗料組成物を含有してなる着色塗料粒子(I)並びに反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する塗膜形成成分(II)を含んでなる5項に記載の水性多彩模様塗料、
7. 着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)が、塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(y)と反応する反応性官能基(x)を含有する5または6項に記載の水性多彩模様塗料、
8. 着色塗料粒子(I)に含まれる水性塗料組成物が、架橋剤(e)を含有する6項に記載の水性多彩模様塗料、
9. 塗膜形成成分(II)が、さらに架橋剤(f)を含有する5〜8項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料、
10. 着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)及び塗膜形成成分(II)に含まれる水性樹脂(d)が共に反応性官能基(x)を含有し、塗膜形成成分(II)が、該反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する架橋剤(f)をさらに含有する9項に記載の水性多彩模様塗料、
11. 着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)の配合割合が、着色塗料粒子(I)/塗膜形成成分(II)の固形分質量比で1/99〜80/20の範囲内にある5〜10項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料、
12. バルーン粒子をさらに含有する1〜11項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料、
13. 基材表面上に、下塗り塗膜を介して又は介さずに1〜12項のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料を塗装することを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散媒体中に少なくとも2色の着色塗料粒子が分散してなる多彩模様塗料に特定量のシリカ微粒子を含ませることにより、従来は困難であった多彩模様塗膜の耐水性、耐候性を向上させることに成功したものである。また、本発明の水性多彩模様塗料は、貯蔵安定性が良好で、且つ塗装作業性が優れるものであり、形成される多彩模様塗膜の意匠性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、水性多彩模様塗料は、少なくとも2色の着色塗料粒子(I)が分散媒体中に分散してなるものである。
【0010】
着色塗料粒子(I):
本発明において着色塗料粒子(I)は、材料、製造方法など特に制限されるものではなく従来公知のものを使用できるが、例えば、水性樹脂(a)並びに着色剤(b)を含んでなる水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル(c)中に内包してなるものであることが望ましい。
【0011】
水性樹脂(a)
上記水性塗料組成物に含まれる水性樹脂(a)は、着色塗料粒子(I)の耐久性に貢献するものであり、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0012】
上記水性樹脂(a)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂(a)は、着色塗料粒子の製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、例えばカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類及びアンモニア等を例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
水性樹脂(a)は、着色塗料粒子(I)の耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であること好ましい。
【0014】
かかるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0016】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の界面活性剤を使用することができ、適用可能な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0020】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0021】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0022】
着色剤(b):
上記着色塗料粒子(I)の内部に含まれる着色剤(b)としては顔料及び染料を使用することができ、特に着色顔料及び光輝性顔料が好適である。着色顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0023】
他方、染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾ−ルアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
また、上記着色塗料粒子(I)においては、着色剤(b)と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等が挙げられる。
【0025】
上記着色剤(b)の配合量は、着色塗料粒子(I)による着色性、比重、耐久性、耐水性などの観点から、水性樹脂(a)の質量を基準にして、通常0.01〜500質量%、好ましくは0.05〜400質量%の範囲内であることが好適である。
【0026】
本発明において、色調の異なった着色剤を含有する複数の着色塗料粒子を含ませることにより、形成塗膜の意匠性を向上させることができ、いわゆる多彩模様塗料を調製することができる。この場合、着色剤(b)としてメタリック顔料、真珠光沢調顔料等の光輝性顔料を使用すると、多彩模様塗膜に高級感を付与することができ、好適である。
【0027】
多糖類金属塩ゲル(c)
本発明において多糖類金属塩ゲル(c)は、上記水性塗料組成物を粒子内部に含有させるためのゲル化膜を構成し、着色塗料粒子(I)の殻壁となり得る成分である。
【0028】
上記着色塗料粒子(I)は、例えば、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類を含む水性塗料組成物を、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより得ることができ、それによって、該水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル中に含有してなる着色塗料粒子を形成せしめることができる。
【0029】
上記水溶性多糖類は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、一般に約3,000〜約2,000,000の範囲内の数平均分子量を有し且つ約10G/L(25℃)以上の水溶解度を示すものが好適であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
水溶性多糖類は、着色塗料粒子(I)の水中での安定性、着色塗料粒子を作製する際の取扱性、着色塗料粒子(I)を含む塗料から形成される塗膜の耐水性などの観点から、水性樹脂(a)及び水溶性多糖類の合計質量を基準として、通常0.1〜7質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0031】
着色塗料粒子(I)の製造において、着色塗料粒子(I)中の着色剤(b)及び/又は体質顔料の均一分布を容易にするため、水性塗料組成物にさらに増粘剤を含ませることができる。
【0032】
該増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ金属化合物、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該増粘剤の使用量は、水性樹脂(a)の質量を基準にして、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲内であることができる。
【0033】
上記水性塗料組成物は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0034】
本発明において、着色塗料粒子(I)を製造するための水性塗料組成物は、例えば、水性樹脂(a)のエマルションと着色剤(b)のペーストと水溶性多糖類の水溶液を、適宜、上記したその他の成分と共に混合することにより調製することができる。
【0035】
水性塗料組成物を粒状ゲル化せしめる際に用いられる金属イオンの供給源となる金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム等の一価金属や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム等の多価金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、塩化物、硫化物等を挙げることができる。
【0036】
金属化合物における金属としては、形成される着色塗料粒子の強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2属元素、特にカルシウムが好適である。
【0037】
金属化合物は、25℃の水100gに0.005mg以上、特に0.08mg以上溶解するものであることが望ましい。
【0038】
本発明において、金属化合物として、水酸化カルシウムが特に好適である。
【0039】
金属化合物を水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより一価又は多価の金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。金属化合物を含有する水性媒体における金属化合物の含有量は、通常0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることが望ましい。
【0040】
着色塗料粒子(I)の調製
以上に述べた水性塗料組成物を、金属化合物由来の金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより着色塗料粒子(I)を形成せしめることができる。この接触は、例えば、注射器の先端から水性塗料組成物を水性媒体中に滴下する方法;水性塗料組成物を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から水性塗料組成物を霧化させ、水性媒体中に滴下する方法;水性塗料組成物を水性媒体中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行うことができる。
【0041】
上記方法により、水性樹脂(a)及び着色剤(b)並びに場合により体質顔料及びその他の添加剤成分を含んでなる、水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル(c)中に含有してなる着色塗料粒子(I)を得ることができる。
【0042】
上記の如くして形成される着色塗料粒子(I)の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、本発明の水性多彩模様塗料に求められる仕上がり性などに応じて適宜変えることができ、例えば、水性塗料組成物の組成、水性媒体中の金属イオンの濃度、水性塗料組成物の水性媒体への滴下の仕方、攪拌時の分散力、パス回数等により調整することができる。本発明において、着色塗料粒子(I)の大きさは、一般に10〜15,000μm、好ましくは50〜5,000μmの範囲内であることができ、また、その粒度分布としては、大きさが75μm以上で且つ2,000μm未満の粒子群が全粒子群の全質量の70〜100%、特に85〜98%の範囲内にあることが好ましい。
【0043】
本明細書において、着色塗料粒子(I)の大きさは、着色塗料粒子(I)をふるいにかけた時の通過することができるふるいの最小の呼び寸法(孔眼寸法;網の目の1辺の長さ)を以って近似するものとする。ふるいとしては、呼び寸法(孔眼寸法)が75μm、150μm、250μm、500μm、1,000μm及び2,000μmの6種のふるいを使用する。呼び寸法(孔眼寸法)が2,000μmのふるいを通過することができない着色塗料粒子(I)の大きさは、無作為に選んだ10個の着色塗料粒子(I)の中心を通る線分を定規で測定したときの最大の寸法の平均値とする。また、粒度分布は、全着色塗料粒子(I)群を上記6種のふるいを用いて分級して、各ふるい上に残った粒子群を十分乾燥させ、各ふるい上の着色塗料粒子(I)群の質量を測定し、乾燥した全着色塗料粒子(I)群の質量に対する分率を算出することによって求めることができる。
【0044】
得られる着色塗料粒子(I)は、例えば、適当な大きさの網目をもつ金網などを用いて金属イオンを含有する水性媒体から濾別することができる。また、必要に応じて、着色塗料粒子(I)を下記分散媒体に分散する前に、該分散媒体で洗浄することにより、不純物を取り除くことができる。
【0045】
分散媒体
本発明の水性多彩模様塗料において上記着色塗料粒子(I)は分散媒体中に分散されてなる。本発明において分散媒体とは、水、又は水を主体としてこれに水溶性有機溶媒などの有機溶媒を混合してなる水−有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。
【0046】
シリカ微粒子
本発明の水性多彩模様塗料に必須成分として含有されるシリカ微粒子は、結晶性であってもアモルファスであってもよく、その種類、製造方法に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
【0047】
上記シリカ微粒子の平均粒子径の一例としては、例えば0.1〜30μm、好ましくは0.1〜15μmを挙げることができる。該0.1〜30μmの平均粒子径を有するシリカ微粒子は、一次粒子の凝集体を包含したものである。
【0048】
本明細書において、シリカ微粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)である。
【0049】
本発明において、水性多彩模様塗料の塗装作業性および形成塗膜の耐水性及び耐候性の点から、上記シリカ微粒子の比表面積としては30〜400m/g、好ましくは50〜250m/gの範囲内であることが望ましい。
【0050】
本明細書において比表面積は、シリカ微粒子1g当たりの全表面積(m2/g)を意味するものであり、BET法により窒素ガスの吸着等温線を測定することにより、算出されるものである。
【0051】
また、上記シリカ微粒子は、有機変性されたものであると、多彩模様塗膜の耐水性等の点から好適である。
【0052】
上記有機変性されたシリカ微粒子としては、鉱物由来あるいは合成系のシリカ微粒子の表面等にあるシラノール基にオルガノハロシラン、ジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメチルシラン等を反応結合させて得られた化合物;シリカ微粒子と末端にヒドロキシル基を有するジメチルポリシロキサン又はジメチルハイドロジエンポリシロキサン等を混合して200〜300℃で加熱処理してシリカ微粒子表面にアルキルポリシロキサンを結合させて得られた化合物;シリカ微粒子表面にシリコーンオイルを気相吸着することにより得られる化合物等が挙げられ、これらは1種あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0053】
上記有機変性されたシリカ微粒子において、該シリカ微粒子の炭素含有量としては0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%の範囲内にあることが多彩模様塗膜の耐水性、塗料製造時の安定性の点から望ましい。
【0054】
本明細書において炭素含有量は、JISZ2615金属材料の炭素定量方法に準じて、試料を酸素気流中で加熱し、炭素を二酸化炭素とし、これを水酸化ナトリウムに吸収させてその質量の増加を測定することにより算出されるものである。
【0055】
上記シリカ微粒子の含有量としては、水性多彩模様塗料中の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜15質量部の範囲内であることが望ましい。0.1質量部未満では、多彩模様塗膜の耐水性及び耐候性向上効果が不十分であり、30質量部を超えると、塗装作業性が低下し、得られる多彩模様塗膜の外観が悪くなるので好ましくない。
【0056】
本発明において、上記シリカ微粒子は着色塗料粒子(I)、分散媒体のいずれに配合してもよいが、多彩模様塗膜の耐水性をより向上させるためには、分散媒体特に後述する塗膜形成成分(II)に配合されることが望ましい。
【0057】
塗膜形成成分(II)
本発明において水性多彩模様塗料は、多彩模様塗膜の耐水性、耐候性などの点から着色塗料粒子(I)及び分散媒体に加えて必要に応じて塗膜形成成分(II)を含むことができる。塗膜形成成分(II)は、それ自体成膜性を有するものであり、非架橋型及び架橋型のいずれであってもよい。
【0058】
本発明において、塗膜形成成分(II)は、着色塗料粒子(I)との親和性や水性多彩模様塗料としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂(d)を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0059】
塗膜形成成分(II)に含まれる上記水性樹脂(d)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを同様に使用することができ、例えば、着色塗料粒子(I)における水性樹脂(a)について前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0060】
本発明の水性多彩模様塗料が塗膜形成成分(II)を含有する場合、着色塗料粒子(I)内部に含まれる水性塗料組成物と塗膜形成成分(II)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有することが多彩模様塗膜の耐水性、耐候性等の点から好適であり、水性多彩模様塗料が、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含んでなる反応性官能基(x)を含有する水性塗料組成物を含有してなる着色塗料粒子(I)並びに反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する塗膜形成成分(II)を含んでなることが望ましい。
【0061】
上記着色塗料粒子(I)内部に含まれる水性塗料組成物中に含まれる反応性官能基(x)と塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、及びカルボニル基とヒドラジド基等の組み合わせが好適である。
【0062】
本発明において着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)が互いに反応する反応性官能基を含有する場合において、着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)は、塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(y)と反応する反応性官能基(x)を含有することができる。
【0063】
水性樹脂(a)に含有せしめ得る反応性官能基(x)としては、例えば、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等を挙げることができ、特に、カルボニル基及び水酸基が好適である。水性樹脂(a)におけるこれら反応性官能基(x)の含有量は、通常0.05〜2ミリモル/g樹脂、好ましくは0.1〜1ミリモル/g樹脂、さらに好ましくは0.1〜0.5ミリモル/g樹脂の範囲内であることができる。
【0064】
水性樹脂(a)への反応性官能基(x)の導入は、例えば、反応性官能基(x)を含有する重合性不飽和モノマーを適宜その他の重合性不飽和モノマーとともに(共)重合することにより、或いは基体となる樹脂に反応性官能基(x)を含有する化合物を反応せしめることにより行うことができる。
【0065】
また、着色塗料粒子(I)内部に含まれる水性塗料組成物は、塗膜形成成分(II)と反応し、着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)が界面を介して架橋塗膜を形成できるように反応性官能基(y)と反応し得る架橋剤(e)を含有することができる。
【0066】
上記着色塗料粒子(I)に含まれる架橋剤(e)としては、貯蔵安定性が良好である、本発明の水性多彩模様塗料を1液化することができるなどの観点から、ヒドラジン誘導体、メラミン樹脂などが好適である。
【0067】
上記ヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
上記メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドと必要に応じて水及び/又はアルコールを反応させて得られる、分子中にアルキルエーテル基及び/又はイミノ基を有する樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;該メチロールメラミンのアルキルエーテル化合物;メチロールメラミン又はそのアルキルエーテル化合物の縮合物などが挙げられる。メチロールメラミンのアルキルエーテル化物におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。
【0069】
架橋剤(e)としてメラミン樹脂を使用する場合には、必要に応じて、触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸、これらスルホン酸とアミンとの塩などを使用することができる。
【0070】
着色塗料粒子(I)内部に含まれる水性塗料組成物が架橋剤(e)を含む場合、その使用量は、反応相手である反応性官能基(y)1モルに対して、架橋剤中の反応性官能基の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0071】
一方塗膜形成成分(II)は、該着色塗料粒子(I)中に含まれる反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有することが望ましい。
【0072】
塗膜形成成分(II)は、水性樹脂(d)及び必要に応じて架橋剤(f)を含んでなることができ、水性樹脂(d)として、例えば、反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有するものであることが望ましい。
【0073】
上記反応性官能基(y)を含有する水性樹脂は、反応性官能基(y)を通常0.05〜0.5ミリモル/g樹脂、好ましくは0.1〜0.4ミリモル/g樹脂の範囲内で含有することができる。該水性樹脂における反応性官能基(y)としては、例えば、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基等を挙げることができ、特に、カルボニル基、水酸基が好適である。かかる反応性官能基(y)含有水性樹脂としては、例えば、着色塗料粒子における反応性官能基(x)含有水性樹脂について前述したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0074】
上記塗膜形成成分(II)は、適宜、反応性官能基(y)を含有していてもよい水性樹脂(d)に加えて架橋剤(f)を含有することができ、特に、水性樹脂(d)が反応性官能基(y)を含有しない場合には、架橋剤(f)を併用することが望ましい。
【0075】
架橋剤(f)としては、着色塗料粒子中に含まれる反応性官能基(x)と反応可能な官能基(y)を有する化合物であって、具体的には、例えば、ヒドラジン誘導体、メラミン樹脂、ポリイソシアネート架橋剤等を挙げることができる。
【0076】
架橋剤(f)として使用しうるヒドラジン誘導体及びメラミン樹脂としては、着色塗料粒子における架橋剤(e)について前述したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0077】
上記ポリイソシアネート架橋剤としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらジイソシアネートのイソシアヌレート体やビュウレット体等の類似の化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0078】
また、上記ポリイソシアネート架橋剤は、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリイソシアネート化合物にノニオン性乳化剤を反応させてなる水分散性ポリイソシアネートであってもよい。上記ポリイソシアネート化合物と反応させうる該ノニオン性乳化剤としては、ノニオン性乳化剤として前述したものと同様のものを使用することができ、特に、イソシアネート基と反応する活性水素基を有し且つオキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を有するものが好適である。
【0079】
また、上記水分散性ポリイソシアネートは、必要に応じて、一端に活性水素基を有し且つ他端にアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を反応させて変性したものであってもよい。該シランカップリング剤としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0080】
そのような水分散性ポリイソシアネートの市販品としては、例えば、「バイヒジュール3100」、「VPLS2319」(商品名、以上Bayer社製)等を挙げることができる。
【0081】
塗膜形成成分(II)中における架橋剤(f)の含有量は、反応相手の反応性官能基(x)1モルに対して、架橋剤中の反応性官能基(y)の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0082】
本発明において、得られる多彩模様塗膜の耐水性、耐候性の点から、着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)及び塗膜形成成分(II)に含まれる水性樹脂(d)が共に反応性官能基(x)を含有する場合、塗膜形成成分(II)が、該反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する架橋剤(f)をさらに含有することが望ましい。
【0083】
本発明において塗膜形成成分(II)は、着色塗膜を形成するものであっても或いはクリヤー塗膜を形成するものであってもよく、着色塗膜を形成する場合には必要に応じて着色剤を含むことができる。
【0084】
塗膜形成成分(II)に含ませることができる着色剤としては、着色塗料粒子に含ませ得る着色剤(b)として前記で例示したものの中から適宜選択して使用することができる。また、多彩模様塗膜の乾燥性向上、適度な艶、触感向上などの観点から、該塗膜形成成分(II)に前述の如き体質顔料を配合することが望ましい。
【0085】
塗膜形成成分(II)に着色剤及び/又は体質顔料を配合する場合、その合計配合量は、塗膜形成成分(II)中に含まれる樹脂固形分に対して、通常5〜300質量%、好ましくは10〜200質量%、さらに好ましくは15〜150質量%の範囲内であることができる。
【0086】
本発明において、水性多彩模様塗料が着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)を含有する場合において、着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)の配合割合は、多彩模様塗料の用途などに応じて変えることができるが、着色塗料粒子(I)/塗膜形成成分(II)の固形分質量比で、一般に1/99〜80/20、好ましくは20/80〜75/25、さらに好ましくは25/75〜45/55の範囲内にすることができる。
【0087】
また、上記塗膜形成成分(II)は、場合により、バルーン粒子を含有することができ、それによって形成される塗膜の質感や触感などを向上させることができる。該バルーン粒子は、薄いシェル(殻)内に空洞を有する中空状の粒子であり、樹脂系バルーン粒子と無機系バルーン粒子が包含される。該バルーン粒子の空洞には、通常気体(代表的には空気)が封入されるが、場合によっては減圧または真空であってもよい。
【0088】
上記バルーン粒子の平均粒子径の一例としては、例えば0.05〜500μm、好ましくは0.1〜200μmを挙げることができる。
【0089】
本明細書において、バルーン粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(d50)である。
【0090】
樹脂系バルーン粒子におけるシェルは各種の樹脂からなることができ、該樹脂の構成モノマー単位としては、例えば、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて(共)重合せしめられる。また、これらに適当な架橋性モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアクリルホルマール等を少量加えて(共)重合することにより架橋したシェルを形成せしめることもできる。
【0091】
無機質バルーン粒子としては、例えば、ガラスバルーン粒子、シラスバルーン粒子、アルミナバルーン粒子、ジルコニアバルーン粒子、アルミノシリケートバルーン粒子等挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、上記樹脂系バルーン粒子と無機質バルーン粒子とを適宜組み合わせて使用してもよい。
【0092】
上記バルーン粒子の配合量は、塗膜形成成分中の樹脂固形分に対して、通常0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲内であることが望ましい。
【0093】
水性多彩模様塗料
本発明の水性多彩模様塗料は、以上に述べた着色塗料粒子(I)、分散媒体及びシリカ微粒子を、必要に応じて塗膜形成成分(II)及び塗料用添加剤と共に、それ自体既知の方法で混合し、適宜粘度調整及び/又はpH調整することにより調製することができる。また、塗膜形成成分(II)において架橋剤(f)としてポリイソシアネート架橋剤を使用する場合には、該ポリイソシアネート架橋剤は水性多彩模様塗料を塗装する直前に混合することが好ましい。
【0094】
該塗料用添加剤としては、着色塗料粒子について前記で説明した如き中和剤、増粘剤、界面活性剤、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、粉状もしくは微粒子状の活性炭、光触媒酸化チタン、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、艶消し剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、アルキルシリケート縮合物又は該アルキルシリケート縮合物をポリアルキレングリコール等で変性してなる変性アルキルシリケート等の低汚染化剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0095】
上記本発明の水性多彩模様塗料は、貯蔵安定性などの観点から、一般に、200〜10,000mPa・s、好ましくは1,000〜4,000mPa・sの範囲内の粘度及び6.0〜13.0、好ましくは7.0〜12.0の範囲内のpHを有することができる。
【0096】
本明細書において、水性多彩模様塗料の粘度は、試料の温度を20℃に調整し、B型粘度計、No.4ロータ、60回転で測定したときの値であり、pHは、試料の温度を20℃にし、pHメータ「TOA HM40V」で測定したときの値である。
【0097】
本発明の水性多彩模様塗料は、有機溶剤の含有量が少なく、且つ耐水性、耐候性、塗膜外観等の性能に優れた保護塗膜を形成することができ、他の意匠性塗料、例えば石材調塗料、砂岩調塗料、皮革調塗料、陶器調塗料等の種々の用途に適用することができる。
【0098】
塗装方法
本発明の水性多彩模様塗料は、基材表面に塗装することにより、多彩な意匠性を有し、耐水性等の性能に優れた保護塗膜を形成せしめることができる。
【0099】
本発明の水性多彩模様塗料を適用することができる基材表面としては、例えば、石膏ボード、コンクリート壁、コンクリートブロック、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などを挙げることができる。
【0100】
本発明の水性多彩模様塗料の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常100〜1,000g/m、好ましくは200〜500g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0101】
本発明の水性多彩模様塗料の塗装はそれ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0102】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。なお、本明細書おいて、40℃未満の乾燥条件下での乾燥を常温乾燥、40℃以上で且つ80℃未満の乾燥条件下での乾燥を強制乾燥、そして80℃以上の乾燥条件下での乾燥を加熱乾燥とする。
【0103】
本発明の水性多彩模様塗料は、例えば、保護塗膜用として、基材表面に、予め下塗り塗料を塗装した後、形成される下塗り塗面上に本発明の水性多彩模様塗料を塗装することができる。
【0104】
上記下塗り塗料としては、基材表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、シーラー、下地調整材等の下塗り塗料を使用することができる。また、通常の上塗り塗料を本発明の塗料組成物の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0105】
かかる下地形成用の上塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、生分解性樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0106】
下塗り塗料を塗装する場合、必要に応じて、2種以上の下塗り塗装を重ねて行うこともできる。
【0107】
上記下塗り塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0108】
上記下塗り塗料の塗布量は、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、通常1回あたり50〜2,000g/m、好ましくは70〜1,000g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0109】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0110】
本発明の水性多彩模様塗料を用いれば、多彩な意匠性を有し、仕上がり性、耐水性等に優れた保護塗膜を形成せしめることができるが、本発明の水性多彩模様塗料の塗膜上には、必要に応じて、それ自体既知の上塗り塗料をさらに塗装してもよい。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0112】
エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に、下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと残りの過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 66部。
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は170nm、pHは8.3であった。
【0113】
(注1) 「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0114】
製造例2
上記製造例1におけるプレエマルションの代わりに下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションを用いる以外は製造例1と同様にして、エマルション(a2)を製造した。エマルション(a2)の固形分は55%であり、平均粒子径は175nm、pHは8.2であった。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 430部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 10部
「ニューコール707SF」(注1) 66部。
【0115】
水性クリヤー塗料の製造
製造例3
1リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、固形分50%の水性クリヤー塗料(C1)を得た。
55%エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注2) 50部
水 279部
「タルク SS」(注3) 250部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注5) 6部。
【0116】
(注2) 「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤。
(注3)「タルク SS」:商品名、日本タルク社製、タルク。
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤。
(注5)「アデカノールUH438」:商品名、アデカ社製、増粘剤。
【0117】
製造例4
上記製造例3において、成分組成を下記のものに変更する以外は製造例3と同様にして、固形分46%の水性クリヤー塗料(C2)を製造した。
55%エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注2) 50部
水 203部
「タルク SS」(注3) 100部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注5) 6部。
「マツモトマイクロスフェアーF−50」(注6) 28部。
(注6)「マツモトマイクロスフェアーF−50」:商品名、松本油脂社製、アクリロニトリル樹脂系バルーン粒子、有効成分15%、平均粒子径15μm。
【0118】
製造例5
上記製造例4において、成分組成を下記のものに変更する以外は製造例4と同様にして、固形分46%の水性クリヤー塗料(C3)を製造した。
55%エマルション(a2) 750部
「TEXANOL」(注2) 61部
水 192部
「タルク SS」(注3) 100部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注5) 6部
「マツモトマイクロスフェアーF−50」(注6) 28部。
【0119】
白顔料ペーストの製造
製造例6
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、ディスパーで30分間均一になるまで攪拌することにより、白顔料ペーストを得た。
水 45部
「スラオフ72N」(注7) 3部
「DISPER BYK−190」(注8) 6部
「TITANIX JR−605」(注9) 100部。
(注7)「スラオフ72N」:商品名、日本エンバイロケミカルズ社製、防腐剤。
(注8)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、分散剤。
(注9)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白。
【0120】
着色塗料粒子用の水性塗料組成物の製造
製造例7
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、着色塗料粒子用の水性塗料組成物(A−1)を得た。
白顔料ペースト 154部
55%エマルション(a1) 250部
「TEXANOL」(注2) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注5) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部。
【0121】
製造例8〜17
上記製造例7において、配合組成を下記表1に示す配合組成に変える以外は製造例7と同様にして、水性塗料組成物(A−2)〜(A−11)を製造した。
【0122】
【表1】

【0123】
(注10) 赤顔料ペースト:「ユニラント88赤」(商品名、横浜化成社製)を顔料含有量が約30%になるように調整したカラーペースト。
(注11) 緑顔料ペースト:「ユニラント88緑」(商品名、横浜化成社製)を顔料含有量が約20%になるように調整したカラーペースト。
(注12) アルミニウムペースト:攪拌混合容器に、アルミニウム顔料ペースト「MG−51」(旭化成社製、アルミニウム含有量66%、炭化水素系及び石油系有機溶剤34%)45.5部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及びリン酸基含有樹脂溶液(注*)3部を添加し、攪拌混合してアルミニウム顔料ペーストを得た。
【0124】
(注*) リン酸基含有樹脂溶液:攪拌器、温度調節器および冷熱器を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、50%リン酸基含有重合性モノマー溶液(注**)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記の混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間で滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。
【0125】
(注**) リン酸基含有重合性モノマー溶液:攪拌器、温度調節器及び冷熱器を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41.1部を入れ、空気通気下でグリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノール5.9部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。
(注13) 「サイメル327」:商品名、三井サイアナミド社製、メラミン樹脂。
【0126】
着色塗料粒子の製造
製造例18
4リットルステンレス容器に、0.15%水酸化カルシウム(注14)水溶液を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度2,500rpmで攪拌しながら、上記で得られた水性塗料組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、着色塗料粒子(I−1)を得た。得られた着色塗料粒子(I−1)は、固形分が20%であり、大きさが75μm以上で且つ500μm未満の着色塗料粒子の割合は全粒子中95%であった。
(注14) 水酸化カルシウム:25℃の水100gに対して0.15g溶解。
【0127】
製造例19
4リットルステンレス容器に、水酸化カルシウム24部と脱イオン水1,200部を仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度1500rpmで攪拌しながら、上記水性塗料組成物(A−2)600部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網にて濾別し、着色塗料粒子(I−2)を得た。得られた着色塗料粒子(I−2)は、固形分が20%であり、大きさが150μm以上で且つ2000μm未満の着色塗料粒子の割合は全着色塗料粒子中95%であった。
【0128】
製造例20〜27
製造例18において、水性塗料組成物(A−1)の代わりに下記表2に示す水性塗料組成物を使用する以外は上記製造例18と同様にして、着色塗料粒子(I−3)〜(I−11)を得た。
【0129】
【表2】

【0130】
製造例29
4リットルステンレス容器に、5%塩化カルシウム水溶液を600部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転速度3000rpmで回転しながら、水性塗料組成物(A−3)660部を徐々に容器内に滴下し、着色塗料粒子を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網にて濾別し、着色塗料粒子(I−12)を得た。着色塗料粒子(I−12)は、固形分が20%であり、大きさが250以上で且つ2000μm未満の着色塗料粒子の割合が80%であった。
【0131】
製造例30
上記製造例29において、水性塗料組成物(A−3)の代わりに水性塗料組成物(A−9)を使用する以外は上記製造例29と同様にして着色塗料粒子(I−13)を得た。着色塗料粒子(I−13)は、固形分が16.5%であり、大きさが250以上で且つ2000μm未満の着色塗料粒子の割合が80%であった。
【0132】
水性多彩模様塗料の製造
実施例1〜16及び比較例1〜2
500ミリリットルのステレンス容器に、下記表3に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、多彩模様塗料(P1)〜(P18)を得た。得られた塗料の性状及び塗膜性能試験結果も併せて表3に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
(注15) 「バイヒジュール3100」:商品名、バイエル社製、水分散性ポリイソシアネート硬化剤。
(注16) 「HDK−H20」:商品名、旭化成ワッカー社製、シリカ微粒子、比表面積170m/g、炭素含有量1.1質量%、平均粒子径1.0μm。
(注17) 「AEROSIL RY200」:商品名、日本アエロジル社製、シリカ微粒子、比表面積100m/g、炭素含有量4.8質量%、平均粒子径1.5μm。
【0135】
塗膜性能試験
試験塗板の作製
スレート板(150×70×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させた後、「ビニデラックス300」(関西ペイント社製、JIS K 5663 1種適合アクリルエマルション系塗料)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とし、この上に各多彩模様塗料を塗布量が300g/mになるようにスプレーで塗装した。その後、メラミンを含まない実施例1〜6、8、9、11〜13、16及び比較例1〜2の試験塗板については、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して、各試験塗板を得た。他方メラミンを含む実施例7、10、14及び15の試験塗板については、電気乾燥機にて80℃で10分乾燥させた後140℃で30分焼き付けを行い、各試験塗板を得た。
【0136】
上記のようにして得られた試験塗板を下記性能試験に供した。
【0137】
(*1)塗膜外観
各試験塗板の塗膜を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:多彩な意匠感、質感が十分あり、非常に良好、
〇:多彩な意匠感、質感があり、良好、
△:模様ムラが認められ、やや不良、
×:ワレやチヂミなど塗膜欠陥あり。
【0138】
(*2)耐水性
各試験塗板を23℃の脱イオン水に7日間浸漬し、引き上げた後、目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:良好、
〇:わずかに艶引けが認められるが、実用レベル、
△:艶引け、白化、フクレが認められる、
×:著しくフクレが認められる、又は塗膜が軟化する。
【0139】
(*3)促進耐候性
JIS K 5600の7−7(塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性(キセノンランプ法))の促進耐候性試験に準じ、試験塗板を1000時間照射した後、目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:良好、
〇:わずかに艶引けが認められるが、実用レベル、
△:艶引け、ワレ、フクレ、ハガレが認められる、
×:著しい艶引け、ワレ、フクレ、ハガレが認められる。
【0140】
(*4)貯蔵安定性
各多彩模様塗料を容量が1リットルの内面コート缶に1kg入れ、40℃の恒温室で60日間貯蔵した。その後、室温に戻し、容器の中の塗料の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。
〇:分離が認められず、着色塗料粒子の合一や破壊も認められない、
△:ソフトケーキングや分離が認められるが、攪拌により均一となる、
×:ハードケーキングや分離が認められ、元に戻らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2色の着色塗料粒子(I)が分散媒体中に分散してなる水性多彩模様塗料中の樹脂固形分100質量部に対して、シリカ微粒子を0.1〜30質量部含有することを特徴とする水性多彩模様塗料。
【請求項2】
着色塗料粒子(I)が、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含んでなる水性塗料組成物を多糖類金属塩ゲル(c)中に内包してなる請求項1に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項3】
着色塗料粒子(I)が、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類を含む水性塗料組成物を、金属イオンを含有する水性媒体と接触させることにより得られるものである請求項1又は2に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項4】
シリカ微粒子の比表面積が、30〜400m/gの範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項5】
水性樹脂(d)を含んでなる塗膜形成成分(II)をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項6】
水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含んでなる反応性官能基(x)を含有する水性塗料組成物を含有してなる着色塗料粒子(I)並びに反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する塗膜形成成分(II)を含んでなる請求項5に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項7】
着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)が、塗膜形成成分(II)中に含まれる反応性官能基(y)と反応する反応性官能基(x)を含有する請求項5または6に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項8】
着色塗料粒子(I)に含まれる水性塗料組成物が、架橋剤(e)を含有する請求項6に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項9】
塗膜形成成分(II)が、さらに架橋剤(f)を含有する請求項5〜8のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項10】
着色塗料粒子(I)に含まれる水性樹脂(a)及び塗膜形成成分(II)に含まれる水性樹脂(d)が共に反応性官能基(x)を含有し、塗膜形成成分(II)が、該反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有する架橋剤(f)をさらに含有する請求項9に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項11】
着色塗料粒子(I)と塗膜形成成分(II)の配合割合が、着色塗料粒子(I)/塗膜形成成分(II)の固形分質量比で1/99〜80/20の範囲内にある請求項5〜10のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項12】
バルーン粒子をさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料。
【請求項13】
基材表面上に、下塗り塗膜を介して又は介さずに請求項1〜12のいずれか1項に記載の水性多彩模様塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2007−231151(P2007−231151A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54506(P2006−54506)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】