説明

水性媒体中に低濃度で含有される1,4−ジオキサンの分解除去装置

【課題】廃水、浸出水などの水性媒体に含有される低濃度の1,4−ジオキサンの分解除去装置を提供する。
【解決手段】(1)1,4−ジオキサンを含有する水性媒体の導入口7、該水性媒体に曝気用の気体を導入して1,4−ジオキサンを気化させる曝気装置10、曝気後の気化した1,4−ジオキサンと曝気用の気体からなる混合気体を紫外線照射装置に導く混合気体出口13、および処理済みの水性媒体を排出する排出口12を配設した曝気槽2、および(2)該混合気体の導入口15、該混合気体の滞留部16および排出口13を有し、該滞留部16に導入された混合気体に含まれる1,4−ジオキサンを分解させるための紫外線照射装置を有する1,4−ジオキサン分解装置3、を備えた水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
【効果】簡便な装置により経済的に1,4−ジオキサンの分解処理が行える。また、種々の水性媒体への適用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水中に低濃度で含まれる難分解性有機物である1,4−ジオキサンの分解技術に関するものであり、さらに詳しくは、1,4−ジオキサンを含む水性媒体をその沸点(100℃)以下の温度に保ち、空気などの気体をバブリングすることにより、1,4−ジオキサンを気化させ、次いで、気化した1,4−ジオキサンを含む気体にUVランプなどを用いて紫外線を照射することにより、1,4−ジオキサンを分解する水性媒体中に含まれる1,4−ジオキサンを分解除去するものである。本発明により廃水、浸出水などに含まれている1,4−ジオキサンを分解除去して環境汚染を防止し人体への悪影響を抑制することができる。
【背景技術】
【0002】
1,4−ジオキサンは環状エーテル構造をしておりその沸点は101℃と比較的低く、水とは無制限に混和する化合物であり、主にセルロースエステル類の溶剤、有機合成反応溶剤、抽出溶剤、染料や医薬品の合成原料、塩素系有機溶剤の安定剤、洗浄剤の調整用溶剤、染色、印刷時の分散剤、潤滑剤などに利用されているが、抽出、反応溶剤や塩素系溶剤の安定剤の使用が主たるものである。
【0003】
1,4−ジオキサンは水溶性であるため、その回収または分解処理が十分になされないと地下水、河川などを汚染しやすく、近年、河川における検出率の高さとその発ガン性により水環境中で注目されている化学物質である。一部の界面活性剤には副生成物として1,4−ジオキサンが含まれているとの報告があることから界面活性剤も汚染原因の一つと考えられるが、発生源については依然として不明な点が多い。界面活性剤または1,4−ジオキサンを使用している事業所、下水処理場において実態調査を行ったところ、1,4−ジオキサンはほとんどの事業所の廃水中に低濃度ではあるが含まれている事例や、溶剤として1,4−ジオキサンを使用している事業所での工程廃水中に1,4−ジオキサンを高濃度に含有していた事例などが報告されている。
【0004】
1,4−ジオキサンは環境中に放出された場合には分解しにくく、除去も困難であるとされているばかりか、動物に対する毒性が認められ、人に対する発ガン性が疑われている物質のひとつである。環境中や廃水中などに混入した場合、例えば、下水処理場での生物反応や固液分離といった物理化学的処理では容易に分解できず、水域環境の汚染が拡大する恐れがあり、廃水中に含まれる1,4−ジオキサンを容易に分解できる方法の開発が望まれている。
【0005】
これまで、廃水などに含まれる1,4−ジオキサンを分解処理する技術が提案されているが、1,4−ジオキサンの酸化分解、あるいは紫外線によるラジカル生成を分解の基本技術とするものが多い。その中のいくつかを挙げると、例えば、廃水中に含有される1,4−ジオキサンを促進酸化法またはフェントン酸化法によるジオキサン分解装置で分解除去する際に、ジオキサン分解の前処理として、廃水に共存する有機物を生物反応槽で分解除去すると共に、廃水を固液分離した分離水をジオキサン分解装置で処理する技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を充填した濾過床に1,4−ジオキサンを含む被処理水を通すことで、1,4−ジオキサン及び有機汚濁物質を粒状吸着材に吸着させ、粒状吸着材を紫外線照射ランプにより照射して光触媒反応を進行させてOHラジカルを生じさせ、該OHラジカルにより、粒状吸着材に吸着した1,4−ジオキサンおよび有機汚濁物質を酸化分解する方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
また、1,4−ジオキサン含有廃水の処理において、促進酸化処理槽内の1,4−ジオキサン含有廃水に対して、オゾン処理と、酸化水素処理または紫外線照射との併用による促進酸化処理を複数段に分けて行うことにより、廃水中に50mg/l以上の高濃度で含有される1,4−ジオキサンを0.1mg/l以下の低濃度まで分解することができる方法が提案されている(特許文献3)。
【0008】
固体、液体または気体に含まれる1,4−ジオキサンを効率よく分解除去することができる1,4−ジオキサンの処理方法として、1,4−ジオキサンを含有する廃水が曝気槽で曝気され、廃水中の1,4−ジオキサンを曝気された空気へ積極的に移行させ、曝気された空気をスクラバー装置で噴霧した水と接触させて1,4−ジオキサンを噴霧した水へ積極的に移行させる。移行させた水は、排出水としてジオキサン分解装置により処理する方法が提案されている(特許文献4)。
【0009】
さらに、 短い反応時間において1,4−ジオキサンとダイオキシン類を同時に除去することができる難分解性微量有害物含有水の処理として、被処理液を導入する反応塔において、紫外線ランプによる紫外線照射下で過酸化水素もしくはオゾンを供給し、あるいは過酸化水素とオゾンを供給し、さらにはオゾンと不活性ガスの窒素を交互に供給することにより、被処理液中の溶存酸素およびオゾンを脱気しつつ、反応塔で生成するヒドロキシラジカルによる光化学分解を促進して反応時間を短縮し、1,4−ジオキサンとダイオキシン類を同時的に除去する方法(特許文献5)や、シュウ酸鉄(III)ならびに過酸化水素での処理および光の照射によって廃棄物あるいは地下水からジオキサンなどの有機汚染物を除去する方法が提案されている(特許文献6)。
【0010】
しかしながら、これらの処理技術において、廃水中に共存する有機物を分解除去したり固液分離処理しなければならずその実用化は容易ではない。また、廃水中に有機物が存在すると酸化剤が有機物の分解に消費されてジオキサンの酸化分解が不完全となることや、吸着剤および光触媒の使用が必須であること、それらの必須な材料の性能が経時劣化してくることなどに起因して分解性能を長期間維持することが困難となったり、運転コストに問題を生じることが避けられない。さらに、複数段に分ける処理では処理時間、設備費などの点で効率的ではない、また、回収した1,4−ジオキサンは水溶液として処理されるため水溶液中での処理が可能な方法に限定されるなど、それぞれの技術には問題点を有している。そこで、簡便で経済的であり、しかも優れた1,4−ジオキサンの分解率が得られる処理技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭2005-58854号公報
【特許文献2】特開2008-155184号公報
【特許文献3】特開2005−103401号公報
【特許文献4】特開2005−74409号公報
【特許文献5】特開2005−349351号公報
【特許文献6】特公表平8−504666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、1,4−ジオキサンは単独または他の溶剤との混合で、合成反応溶剤、合成原料として使用され、また、ペット、ポリエチレンなどのフィルムの接着剤、合成樹脂類の接着剤、下地剤、綿の樹脂加工剤の溶剤として、汎用性の高い製品の加工に広く使用されている。また、帯電防止剤や樹脂の改質剤などには原料に由来する1,4−ジオキサンが不純物として含まれていることがある。こうした小さな汚染源が身近に分散していることが水環境や廃棄物処分場浸出水における1,4−ジオキサン濃度が高い原因とも考えられる。
【0013】
かつての水質汚濁問題は水質汚濁防止法等の環境法規制の強化や水質汚濁防止技術の進歩で大きく改善した。例えば、2003年には水道水の水質基準が改正され1,4−ジオキサンの基準値は0.05mg/lと定められた。また、2021年には河川、湖沼、港湾、沿岸海域、公共溝渠、かんがい用水路、その他公共の用に供される水域や水路である公共用水域での基準が0.05mg/lと定められた。しかし、過去に排出された有害物質は底質に蓄積され底質汚染となり、底質の拡散や食物連鎖により新たな汚染源ともなっている。1,4−ジオキサンは環境中に放出された場合に分解しにくく除去することも困難であるばかりか、動物に対する毒性、人に対する発ガン性が疑われている物質のひとつである。このような物質が環境中や廃水中などに混入した場合、生物反応や固液分離といった物理化学的処理では容易に分解できず、水域環境の汚染が拡大する恐水中に含まれる1,4−ジオキサンを容易に分解できる技術の開発が望まれている。
【0014】
そこで本発明者らは、簡便で除去効率に優れた1,4−ジオキサン除去技術を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、水性媒体を曝気することにより簡単に1,4−ジオキサンが気化すること、および気体に含まれている1,4−ジオキサンが紫外線照射により完全に分解することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、1,4−ジオキサンを含む水性媒体を曝気することにより1,4−ジオキサンを気化させて曝気気体との混合気体となし、次いで混合気体に紫外線を照射する水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去技術に係るものである。本発明は、曝気と紫外線照射を組み合わせるという非常に簡便な操作により廃水などから1,4−ジオキサンを分離し、分解することができる新しい技術を提供するものである。
【0015】
従来の1,4−ジオキサン分解技術は、いずれも1,4−ジオキサンを含む廃水に直接、オゾンや過酸化水素などの酸化剤を添加したり、紫外線を照射するものであり、その処理装置の構成は比較的複雑なものとなっていたり、また、廃水や1,4−ジオキサンを含む水溶液に直接、酸化剤を添加する場合には、酸化剤が処理後の廃水に残存するとこれを除去する必要があり、水中では酸化剤や紫外線の効率が悪いなどの問題が生じていた。本発明は、簡便で効率の良い1,4−ジオキサン分解処理技術を提供することを目的とするものである。また、本発明は、水中での効率的な1,4−ジオキサンの除去が困難である問題や、複雑な装置を必要とするための設備費の上昇のほか、運転管理、維持費用の増大を来し、経済的なデメリットとなりうる問題を解消する簡便で新しい1,4−ジオキサン分解除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための本発明の水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置は次の(1)ないし(3)の技術的手段からなる。
【0017】
(1)水性媒体に含有される1,4−ジオキサン分解除去装置であって、
)1,4−ジオキサンを含有する水性媒体の導入口、1,4−ジオキサンを含有する水性媒体に曝気用の気体を導入して1,4−ジオキサンを気化させる曝気装置、曝気後の気化した1,4−ジオキサンと曝気用の気体からなる混合気体を紫外線照射装置に導く混合気体出口、および処理済みの水性媒体を排出する排出口を配設した曝気槽、および
)該混合気体の導入口、該混合気体の滞留部および排出口を有し、該滞留部に導入された1,4−ジオキサン含有の混合気体に紫外線を照射して1,4−ジオキサンを分解させるための紫外線照射装置を有する1,4−ジオキサン分解装置、
を備えたことを特徴とする水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
(2)水性媒体が、地下水、廃棄物埋立地浸出水、河川水、下水処理水、生活排水、事業所排水、または上水から選ばれる上記(1)に記載の水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
(3)1,4−ジオキサンを含む水性媒体の加熱装置または含窒素化合物の除去装置を設置した上記(1)または(2)に記載の水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)曝気と紫外線照射を組み合わせた簡便な構成により、人体に有害な1,4−ジオキサンの分解装置を構築し提供することができる。
(2)1,4−ジオキサンの分解装置は従来の曝気装置および紫外線照射装置が利用でき新しい装置の開発を必要としないため経済的に装置を構築し提供できる
(3)1,4−ジオキサンの廃水などからの分離、その分解には、酸化剤、吸着剤、光触媒などの消耗品を必要としないため、全処理工程が経済に実施できる。
(4)1,4−ジオキサンを含有する如何なる種類の水性媒体にも適用することができる。
(5)曝気と紫外線照射工程の管理が容易であり、1,4−ジオキサンの分解が安定して継続的に実施することができる。
(6)水環境保護基準の水質基準を満足する1,4−ジオキサンの分解技術を確立することが可能である。
(7)気体状態の1,4−ジオキサンを分解するため、非常に優れた分解率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】1,4−ジオキサン含有液の温度と曝気後の液中に残留する1,4−ジオキサン濃度の関係を示す。
【図2】1,4−ジオキサン含有液の塩化ナトリウム含有量と曝気後の液中に残留する1,4−ジオキサン濃度の関係を示す。
【図3】1,4−ジオキサン含有液のpH値と曝気後の液中に残留する1,4−ジオキサン濃度の関係を示す。
【図4】1,4−ジオキサン含有液の曝気気体流量と曝気後の液中の残留する1,4−ジオキサンの濃度の関係を示す。
【図5】1,4−ジオキサン含有液の曝気後の混合気体に紫外線を照射した際の気体の滞留時間と1,4−ジオキサン分解率の関係を示す。
【図6】実験時間が、浸出液の曝気後の液中に残留する1,4−ジオキサン濃度と紫外線による1,4−ジオキサンの分解率に与える影響を示す。
【図7】本発明の1,4−ジオキサンの分解除去装置の一例の概念図を示す。
【図8】実施例で使用した実験装置を示す。
【図9】気体中の1,4−ジオキサンと水中の1,4−ジオキサンの紫外線による分解率を対比して示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、1,4−ジオキサンを含む廃水を高温で気体曝気することにより、1,4−ジオキサンを気化させ、気化した1,4−ジオキサンを含む気体に直接、紫外線を照射して1,4−ジオキサンを分解するという方法であり、従来の方法のように廃水に含まれる1,4−ジオキサンを直接、分解しようとする方法とは異なる技術思想に基づくものである。廃水から気化させた1,4−ジオキサンに紫外線照射することにより装置の構成が簡素化されるとともに、気体に紫外線を照射するため、極薄い溶液に照射するよりも効率的に紫外線照射による分解が実施される。また、ジオキサンを含む水性媒体のpHや含有塩類などに悪影響されることはなく、原液をそのままの状態で分解除去できるため、処理する水成媒体を選ばない利点がある。
【0021】
[1,4−ジオキサンを含む水性媒体の曝気処理]
本発明の1,4−ジオキサンの分解除去装置が適用される水性媒体としては特に制限はなく、例えば、地下水、廃棄物埋立地浸出水、河川水、下水処理水、生活廃水、事業所廃水、上水などから選ばれる。これらの水性媒体中に共存することがある有機物、金属塩などの汚染物を除去する前処理などを必要とすることはなく原水に直接本発明の分解除去装置を適用することができる。また、例えば、1,4−ジオキサンを1.0〜700mg/l含有する原水に適用することによりその濃度を、例えば、0.01mg/l以下の含有量にまで低減させることができる。
【0022】
1,4−ジオキサンを含む水性媒体を曝気処理し、含有されるジオキサンを気化するに当たっては、水性媒体の温度は高いほど気化率が向上する。例えば、1,4−ジオキサンを2.65mg/l含有する溶液では曝気を6時間継続した後には1.33mg/lに低減するのに対して、45℃では0.15mg/l、80℃では0.01mg/l以下となる。したがって、曝気温度は高いほどよいが多量の溶液を昇温することが必要となり多大なエネルギーが消費されるので処理の目的、対象溶液、処理溶液の量などに応じて曝気温度は、通常、常温〜90℃の間で選択されるが、特に25〜80℃の範囲から選択することが好ましい。
【0023】
曝気処理するための気体としては特に制限されることはなくいずれの気体をも使用することができる、例えば、窒素ガス、空気、窒素ガスと酸素ガスの混合体、不活性ガスなどが使用される。曝気ガスの溶液中への流入量は溶液1容量に対して少なくとも5容量の曝気ガスを注入するのがよい。30容量以上のガスで曝気すると、曝気を終了したガス中の1,4−ジオキサン濃度が低下するため効率的な分解除去は望めない恐れがある。曝気時間は0.5〜7時間の範囲で連続することで十分1,4−ジオキサンを気化することができる。これらの曝気条件は適宜変更することが可能である。曝気処理は、連続式あるいは回分式で行なうことができ通常の曝気処理に採用されている装置が利用できる。
【0024】
1,4−ジオキサンを含む水性媒体を曝気処理するに当たっては、前処理と称される工程は特に必要ではない。すなわち、原水を直接曝気することにより実用上十分な1,4−ジオキサンの気化が進行する。例えば、1,4−ジオキサンを含む水性媒体に塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどを添加して、そのpHを2〜11の範囲に調整した後曝気処理した場合でも、処理した後の溶液中に残存する1,4−ジオキサン濃度はほぼ同じである(実施例1参照)。したがって、曝気処理に当たってのpH調整は必ずしも必要ではない。また、1,4−ジオキサンを含む水性媒体中に塩類として代表的な、塩化ナトリウム(NaCl)を1〜20重量%添加した後曝気処理をしたところ、曝気処理した後の溶液中に含まれる残留1,4−ジオキサンは、塩の濃度が上がるにしたがって低下している。したがって、溶液中での塩の存在は好結果を生じる(実施例2参照)。また、アンモニアが存在する溶液の曝気処理では、アンモニアの存在は1,4−ジオキサンの気化にはほとんど影響をおよぼさない(実施例3参照)。
このように、1,4−ジオキサン溶液中に共存する塩やアンモニアなどの含窒素化合物が1,4−ジオキサンの気化に特に悪影響を及ぼさないか、逆によい結果を生ずることがあることは、本発明を有機物、塩、含窒素化合物など種々の不純物を高濃度で含有する廃水や浸出水に適用する際に非常に大きな利点となる。
【0025】
廃棄物処理場からの浸出水は、通常、1,4−ジオキサンを0.005〜10mg/l含有し、さらに、塩化物イオンの典型であるNaClを、通常、300〜80000mg/lを含有している。また、含窒素化合物のうちアンモニアを10〜1000mg/lを含有している。本発明はこのような塩化物イオンや含窒素化合物類を多量に含有する浸出水の処理に適している。
【0026】
【表1】

【0027】
[気化した1,4−ジオキサンの紫外線による分解]
1,4−ジオキサンは曝気に利用した気体中に含まれて水性媒体から分離される。気化した1,4−ジオキサンを含む気体に紫外線を照射することにより1,4−ジオキサンは分解され無害な状態となり排出される。1,4−ジオキサンを分解するために必要とされる紫外線照射強度は実験的に容易に求めることができるものであり、照射強度の下限値は気体中の1,4−ジオキサンの濃度、気体の流量、照射室の容量などにより適宜決定されるが、上限値は特に限定はされない。紫外線照射は0.5〜40秒間行うことにより1,4−ジオキサンの大部分は分解される。例えば、約6秒間の照射により99.9%以上の1,4−ジオキサンは分解して無害化される。
一方、水に溶解している1,4−ジオキサンの分解は困難であり、分解率が約20%以下にとどまるのに対し、気化した1,4−ジオキサンに紫外線を照射すると約85%以上の分解率が達成される。このことは実施例10および図7に示した実験結果から明らかであり、本発明の1,4−ジオキサン分解処理方法およびその装置が従来技術からは予測できない分解率を示している。
【0028】
紫外線照射による1,4−ジオキサンの分解は、共存する物質に影響されることがある。例えば、ジオキサン含有気体中に酸素を含んでいることにより1,4−ジオキサンの分解が促進される。酸素ガスを20%、窒素ガスを70%含有するように調製した合成空気ではジオキサンの分解率が向上する(実施例7参照)。酸素ガスが5〜30%の範囲で1,4−ジオキサンの分解率の促進が認められるが、経済的な見地からは空気を使用することが最も好ましい。1,4−ジオキサンを含有する気体は、曝気処理に使用した気体に由来するものであるから、曝気処理に酸素ガスを含有する気体(例えば空気)を使用することが好ましいこととなる。
【0029】
曝気することにより気化した1,4−ジオキサンを含有する気体は、廃水などと接触する間に廃水に含まれている特に揮発性不純物を同時に気化し含有することがある。特に、揮発性の物質であるアンモニアなどの含窒素化合物は曝気後の気体中に含有される可能性が大きい。そこで、アンモニアが共存している1,4−ジオキサンの紫外線による分解を検討したところ、1,4−ジオキサンの分解率は若干ながら低下することが判明した(実施例9参照)。産業廃棄物最終処分場から排出される浸出水には、表1に示すように含窒素化合物が含まれていることから、前処理または曝気処理した後に含窒素化合物を除去することが好ましい。曝気処理後の混合気体中の含有される含窒素化合物は吸着などの従来技術で簡単に除去することができる。しかし、本発明では、アンモニアなどを多量に含んでいる産業廃棄物最終処分場からの浸出水を試験した実施例9に示すように、アンモニアの共存にも関わらず1,4−ジオキサンの分解率を99.9%以上に保つことができる。
【0030】
[曝気処理した後の1,4−ジオキサン濃度の測定]
曝気処理した後の水性媒体中の1,4−ジオキサン濃度の測定は次のようにして行なった。曝気処理した後の1,4−ジオキサン含有液2mlを純水100mlで希釈し、この希釈液を活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に10ml/minで流し入れ、次いで純水20mlを流し洗浄する。活性炭カートリッジに窒素ガスを流し十分乾燥させる。その後、活性炭カートリッジにアセトン2ml緩やかに流し入れ、流出したアセトンを共栓付き試験管にうける。このアセトン中の1,4−ジオキサン含有量をGC-MS(JEOL製JMS-Q1000GC)で測定して曝気後の1,4−ジオキサンの濃度を算出した。
【0031】
[紫外線照射処理した後の1,4−ジオキサン濃度の測定]
紫外線照射処理した後の1,4−ジオキサン濃度の測定は次のようにして行なった。曝気した気体はUVランプ(ミヤカワ製 U字型冷陰極UVランプ3W TCGU60-100P)の2重管内(空間容積21ml)に送り込みUVを照射した。照射された気体は活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に送り、気体中の1,4−ジオキサンを吸着させる。次いで、上述の方法で1,4−ジオキサン含有液の濃度を測定し、気化した1,4−ジオキサン量を算出した。
【0032】
[本発明の1,4−ジオキサン分解除去装置]
本発明の水性媒体に含有される1,4−ジオキサンの分解除去装置は、例えば、(1)1,4−ジオキサンを含有する水性媒体に曝気用の気体を導入する曝気装置10、1,4−ジオキサンを含有する水性媒体の導入口7、曝気後の気化した1,4−ジオキサンと曝気用気体からなる混合気体を紫外線照射装置に導く混合気体出口13、および処理済みの水性媒体を排出する排出口12を配設した曝気槽2、および(2)上記混合気体の導入口15、混合気体の滞留部16および混合気体の排出口19を有し、該滞留部16内の混合気体に紫外線を照射するための紫外線ランプ17を有する紫外線照射装置3からなる。その概要の一例を図7に示す。
【0033】
1,4−ジオキサンを含有する廃水などの水性媒体は、前処理槽1に導入し必要とする前処理を行なうことが好ましい。本発明において、前処理は必ずしも必要ではないが、水性媒体を加熱し適温に保持することにより1,4−ジオキサンの分解除去を向上させることができる。また、前処理槽によりアンモニアなどの含窒素化合物や沈殿物を除去することによりその後の処理を効率よく行なうことができることがある。例えば、1,4−ジオキサンを含有する廃水は導入口4より前処理槽1内に導入されそこに配設されている加熱手段6により廃水5は、例えば60℃に加熱される、加熱された廃水は次いで曝気槽2に導入される。曝気槽2の内部下部には曝気用の気体(空気など)11を槽内に吹込む曝気装置10が設けられ、廃水9中の1,4−ジオキサンは気化されてガスと共に上部空間部8へと曝気気体と共に移動する。1,4−ジオキサンが除去された廃水は、排出口12から排出されて放流されるか、または必要とされる次の処理へ送られる。
【0034】
1,4−ジオキサンを含有する混合ガスは混合気体出口13から導入口15を通して紫外線照射装置3に導入され、混合ガスが通過または滞留する滞留部16において、紫外線が照射されて1,4−ジオキサンが分解除去される。1,4−ジオキサンが除去された混合気体は外界へと放出されるか、必要に応じて次の処理へと導入される。浸出水などを処理する際に混合気体中に含有されることがあるアンモニアなどは、前記前処理槽1において除去するか、曝気処理後の混合気体からアンモニア吸着除去装置14などにより除去することができる。
本発明の1,4−ジオキサン分解除去する水性媒体の浄化処理装置を構成する個々の装置類は従来技術を利用するものであり、市販の装置を組み合わせることにより構築することができる。また、これら一連の処理は、回分式あるいは連続式のいずれの方式によっても実施することができる。いずれの方式にしても曝気処理および紫外線照射処理において必要且つ十分な滞留時間を確保することにより1,4−ジオキサンの分解除去を実現することができる。
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
1,4−ジオキサン含有液(2.65mg/l)10mlを試験管に入れ、この試験管を25、35、45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、試験管に設定温度の窒素ガス(99.99%)を100ml/min(20℃)の条件となるよう流量計で制御しながら1、3、6時間送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションした。その後、試験管を恒温槽より取り出し、室温まで冷却後、1,4−ジオキサン含有液2mlを純水100mlで希釈し、この希釈液を活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に10ml/minで流し入れる。その後、純水20mlを流し洗浄する。活性炭カートリッジに窒素ガスを流し十分乾燥させる。その後、活性炭カートリッジにアセトン2mlを緩やかに流し入れ、流出したアセトンを共栓付き試験管にうける。このアセトン中の1,4−ジオキサン含有量をGC-MS(JEOL製JMS-Q1000GC)で測定し、エアレーション後の1,4−ジオキサン含有液中の濃度を算出した。
実験後の1,4−ジオキサン含有液中の濃度を、次の表2と図1に示す。本揮発実験では、廃水温度が高いほど、1,4−ジオキサンの揮散率が高いことが判明した。
【0037】
本実施例で使用した実験装置を図8により簡単に説明する。1,4−ジオキサン含有液は曝気槽23(試験管)に入れられ、恒温槽26中に設置されて液温が設定値に達すると、窒素ボンベ20または合成空気ボンベ21から窒素ガスまたは合成空気が流量計22により流量を制御されながら曝気槽23中の1,4−ジオキサン含有液中に導入される。導入された窒素ガスまたは合成空気は気化した1,4−ジオキサンとともに内側にUVランプが設置された2重管からなる1,4−ジオキサン分解装置24に送られ、紫外線により1,4−ジオキサンは分解される。こうして処理された気体中に残留する1,4−ジオキサンを捕捉するために活性炭カートリッジ25が設置されている。
【0038】
【表2】

【実施例2】
【0039】
NaClをそれぞれ1、10、20%溶かした1,4−ジオキサン含有液(2.65mg/l)10mlを試験管に入れ、この試験管を25、35、45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、試験管に設定温度の窒素ガス(99.99%)を100ml/min(20℃)の条件で1時間送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションした。その後、実験1同様の方法で1,4−ジオキサン含有液中の濃度を測定した。
その結果処理水中の塩分濃度が高いほど、1,4−ジオキサンの揮散率が高いことが判明した。 実験後の1,4−ジオキサン含有液中の濃度を、次の表3と図2に示す。
【0040】
【表3】

【実施例3】
【0041】
HCl、NaOH、NHOHを加えることによりpH調整(2から12)した1,4−ジオキサン含有液(2.85mg/l)10mlを試験管に入れ、この試験管を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、試験管に設定温度の窒素ガス(99.99%)を100ml/min(20℃)の条件で1時間送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションした。その後、実験1同様の方法で1,4−ジオキサン含有液中の濃度を測定した。
その結果、処理液のpH置は1,4−ジオキサンの揮散率にほとんど影響しないことが判明した。 実験後の1,4−ジオキサン含有液中の濃度を、次の表4と図3に示す。
【0042】
【表4】

【実施例4】
【0043】
1,4−ジオキサン含有液(2.27mg/l)10mlを試験管に入れ、この試験管を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、試験管に設定温度の窒素ガス(99.99%)を25、50、75、100ml/min(20℃)の条件で1時間送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションした。その後、実験1同様の方法で1,4−ジオキサン含有液中の濃度を測定した。
その結果、曝気気体流量が大きいほど、揮散率が高いことが判明した。実験後の1,4−ジオキサン含有液中の濃度を、次の表5と図4に示す。
【0044】
【表5】

【実施例5】
【0045】
1,4−ジオキサン含有液(2.27mg/l)10mlを試験管に入れ、この試験管を80℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、試験管に設定温度の窒素ガス(99.99%)を100ml/min(20℃)の条件で1時間送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションした。その後、1,4−ジオキサン含有液の揮発量と、実験1同様の方法で1,4−ジオキサン含有液中の濃度を測定した。
その結果、被処理水の温度が高いほど、1,4−ジオキサンの揮散率が高い傾向を示し、特に80℃では1,4−ジオキサン(1.31mg/l)のほとんどが揮散することが判明した。実験後の1,4−ジオキサン含有液量と濃度を、次の表6に示す。
【0046】
【表6】

【実施例6】
【0047】
1,4−ジオキサン含有液(30〜600mg/l)5mlをガラス容器に入れ、このガラス容器を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、ガラス容器に設定温度の合成空気(N80%+O20%)を100〜1260ml/min(20℃)の条件で送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションする。エアレーションした空気は同じ恒温槽に設置したUVランプ(ミヤカワ製U字型冷陰極UVランプ3W TCGU60-100P)の2重管内(空間容積21ml)に送り込まれ、UVを照射させる。照射された空気は活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に送り、空気中の1,4−ジオキサンを吸着させる。1時間後、合成空気を停止し、1,4−ジオキサン含有液を室温まで冷却し、1,4−ジオキサン含有液の濃度を実験1同様の方法で測定し、気化した1,4−ジオキサン量を算出する。また、活性炭カートリッジにアセトニトリル2mlを緩やかに流し入れ、1,4−ジオキサンを脱着させ、実験1同様の方法で1,4−ジオキサン量を測定し、UV照射による1,4−ジオキサン分解率を算出した。その結果、1,4−ジオキサンを含む気体の紫外線照射容器内での滞留時間が長いほど1,4−ジオキサンの分解率が上昇したことが判明した。
2重管内のガス滞留時間と、2重管内に流れ込んだ1,4−ジオキサン量と、1,4−ジオキサン分解率を次の表7と図5に示す。
【0048】
【表7】

【実施例7】
【0049】
1,4−ジオキサン含有液(147mg/l)5mlをガラス容器に入れ、このガラス容器を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、ガラス容器に設定温度の合成空気(640ml/min(20℃))または窒素ガス(640ml/min(20℃))を送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションする。エアレーションした空気は同じ恒温槽に設置したUVランプ(ミヤカワ製 U字型冷陰極UVランプ3W TCGU60-100P)の2重管内(空間容積21ml)に送り込まれ、UVを照射させる。照射された空気は活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に送り、空気中の1,4−ジオキサンを吸着させる。1時間後、実験6と同様に気化した1,4−ジオキサン量と1,4−ジオキサン分解率を算出した。
その結果、曝気気体が窒素ガスの場合に比べ、酸素を含む空気を使用した方が1,4−ジオキサンの分解率が向上することが判明した。合成空気を使用した場合と窒素ガスを使用した場合の分解率を次の表8に示す。
【0050】
【表8】

【実施例8】
【0051】
1,4−ジオキサン含有液(105mg/l)5mlおよびアンモニア(226mg/l)を含んだ1,4−ジオキサン含有液5mlをガラス容器に入れ、このガラス容器を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、ガラス容器に設定温度の合成空気(640ml/min(20℃))を送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションする。エアレーションした空気は同じ恒温槽に設置したUVランプ(ミヤカワ製 U字型冷陰極UVランプ3W TCGU60-100P)の2重管内(空間容積21ml)に送り込まれ、UVを照射させる。照射された空気は活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に送り、空気中の1,4−ジオキサンを吸着させる。1時間後、実験6と同様に気化した1,4−ジオキサン量と1,4−ジオキサン分解率を算出した。
その結果、廃水中にアンモニアが共存すると1,4−ジオキサンの分解率が低下することが判明した。アンモニアが共存する場合としない場合での1,4−ジオキサン分解率を次の表9に示す。
【0052】
【表9】

【実施例9】
【0053】
1,4−ジオキサン(6.76mg/l)を含んだ産業廃棄物最終処分場の浸出水10mlをガラス容器に入れ、このガラス容器を45℃に設定した恒温槽に設置し、1,4−ジオキサン含有液が設定温度になったのを確認後、ガラス容器に設定温度の合成空気(100ml/min(20℃))を送り、1,4−ジオキサン含有液をエアレーションする。エアレーションした空気は同じ恒温槽に設置したUVランプ(ミヤカワ製 U字型冷陰極UVランプ3W TCGU60-100P)の2重管内(空間容積21ml)に送り込まれ、UVを照射させる。照射された空気は活性炭カートリッジ(Waters製、Sep-Pac AC-2)に送り、空気中の1,4−ジオキサンを吸着させる。実験時間を1、3、6時間とし、実験6と同様の方法で実験後の浸出水中の1,4−ジオキサン濃度とUVによる1,4−ジオキサン分解率を算出した。
その結果、1,4−ジオキサンを含む実廃水に適用した結果、高い1,4−ジオキサン分解率を示すことが確かめられた。実験後の浸出水の1,4−ジオキサン濃度とUVによる1,4−ジオキサン分解率を、次の表10と図6に示す。
【0054】
【表10】

【実施例10】
【0055】
1,4−ジオキサン含有液から1,4−ジオキサンを空気中に気化させて紫外線により分解する本発明と、ジオキサンを含有する液(水溶液)に直接紫外線を照射した場合と対比した実験を行なった。
[水溶液中の1,4−ジオキサンの分解]
実験条件としては、上記実施例と同じUVランプ(3W)を使用し、ジオキサン含有水溶液の流量は37.8l/h、紫外線照射部での滞留時間は2秒に設定し、1時間実験を行なった。1,4−ジオキサンの滞留部への入り口濃度を変化させながら出口濃度を測定して1,4−ジオキサンの分解率を測定した。実験の結果を表11と図7に示す。
【0056】
【表11】

【0057】
[気体状の1,4−ジオキサンの分解]
空気中での 次に、1,4−ジオキサン含有空気を640ml/min、紫外線照射部での滞留時間を2秒に設定して1時間実験を行なった。1,4−ジオキサンの滞留部への入り口濃度を変化させながら出口濃度を測定してジオキサンの分解率を測定した。実験の結果を表12と図9に示す。
【0058】
【表12】

【0059】
両者の分解率を対比したところ、水溶液中の1,4−ジオキサンの分解率は約18%以下であったが、空気中の1,4−ジオキサンの分解率は約85〜95%を達成することができた。このことは、本発明により、従来の技術では到底達成することができなかった1,4−ジオキサンの高い分解率を得ることができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は廃水中に低濃度で含まれる難分解性有機物である1,4−ジオキサンの分解方法に関するものであり、本発明により廃水、浸出水などに低濃度で含まれている1,4−ジオキサンを分解除去することが可能となり、水域環境の汚染防止効果が期待される新しい技術を提供することができる。水道水や公共用水の環境基準を満たすことが可能な水処理技術として実用的な技術が提供される。また、本発明は、人の健康障害、特に発ガン性があるとされる1,4−ジオキサンの簡便で経済的な分解除去技術を提供するものであり、人類の環境、衛生に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0061】
1:前処理槽
2:曝気槽
3:分解装置
4:1,4−ジオキサン含有水性媒体導入口
5:1,4−ジオキサン含有水性媒体
6:加熱装置
7:前処理後の1,4−ジオキサン含有水性媒体導入口
8:曝気槽空間部
9:1,4−ジオキサン含有水性媒体
10:曝気装置
11:曝気用気体導入口
12:曝気処理後の水性媒体排出口
13:1,4−ジオキサンと曝気用気体の混合気体の出口
14:含窒素化合物除去装置
15:混合気体の分解槽への導入口
16:1,4−ジオキサン滞留部
17:紫外線ランプ
18: 1,4−ジオキサンを分解した混合気体の排出管
20:窒素ボンベ
21:合成空気ボンベ
22:流量計
23:曝気槽(試験管)
24:UVランプが設置された2重管
25:活性炭カートリッジ
26:恒温槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体に含有される1,4−ジオキサン分解除去装置であって、
(1)1,4−ジオキサンを含有する水性媒体の導入口、1,4−ジオキサンを含有する水性媒体に曝気用の気体を導入して1,4−ジオキサンを気化させる曝気装置、曝気後の気化した1,4−ジオキサンと曝気用の気体からなる混合気体を紫外線照射装置に導く混合気体出口、および処理済みの水性媒体を排出する排出口を配設した曝気槽、および
(2)該混合気体の導入口、該混合気体の滞留部および排出口を有し、該滞留部に導入された1,4−ジオキサン含有の混合気体に紫外線を照射して1,4−ジオキサンを分解させるための紫外線照射装置を有する1,4−ジオキサン分解装置、
を備えたことを特徴とする水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
【請求項2】
水性媒体が、地下水、廃棄物埋立地浸出水、河川水、下水処理水、生活排水、事業所排水、または上水から選ばれる請求項1に記載の水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。
【請求項3】
1,4−ジオキサンを含む水性媒体の加熱装置または含窒素化合物の除去装置を設置した請求項1または2に記載の水性媒体中の1,4−ジオキサンの分解除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−194395(P2011−194395A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133176(P2010−133176)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【分割の表示】特願2010−61320(P2010−61320)の分割
【原出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(510075055)株式会社ソイルテック (2)
【Fターム(参考)】