説明

水性媒体中の腐食を抑制する組成物及び方法

冷却水系のような水溶液系の腐食防止処理の方法と組成物を提供する。本発明の方法では、Al又はMnなどの多価金属イオンを腐食防止剤/付着抑制剤(DCA)とともに水系に使用する。腐食防止剤/DCAは、有機化合物、例えばヒドロキシ酸、ホスホノカルボン酸、ポリヒドロキシコハク酸又はポリマレイン酸もしくはその無水物とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液系と接する金属表面の腐食を低減するための水溶液系の処理であって、処理のカーボンフットプリントの低減に資するため有機阻害剤の投与量を制限した処理に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食とそれに付随する孔食のような影響の問題は、長い間水系のトラブルの元であった。例えば、スケールは様々な水系の内壁に堆積する傾向があり、系の作動効率が大きく低下してしまう。こうして、系の熱伝達機能が大きく損なわれる。
【0003】
腐食は、金属とその環境との電気化学的劣化反応である。これは精錬金属からその天然の状態への逆反応である。例えば、鉄鉱石は酸化鉄である。酸化鉄は鋼鉄へと精錬される。鋼鉄が腐食すると酸化鉄を生じるが、これは放置しておくと金属の損傷又は破壊を生じ、必要な修理がなされるまでその水系を閉鎖しなければならないことがある。
【0004】
通例、冷却水系では、腐食は孔食とともに系の全体的効率に有害であることが判明している。多くの冷却水系では、系の水と接する金属表面の不動態化を促進すべく、オルトリン酸(oPO4)を系の処理に用いている。しかし、農業用肥料のためのP25鉱石の需要増大のためリン系阻害剤の時価が急騰している。また、米国及び欧州の環境規制は、地域の河川・水路へのリン酸排出に関する制限を強めている。
【0005】
そのため、低又は無リン酸処理プログラムの利用が増大しており、通例比較的高い処理投与量(>50ppm)を要する全又は準有機処理プログラムが有効であると注目されている。残念なことに、このような高レベルの有機処理投与量は、系における生物学的食物(カーボンフットプリント)を増加させ、系に有毒な殺生物剤を供給する必要性が高まる。
【0006】
カーボンフットプリント削減の利点は、2つの異なる観点からみることができる。第1の観点では、カーボンフットプリント削減は、有機阻害剤の合成に必要なエネルギー消費量を節約できる。ここで、生成させる必要のある有機物質の量が少ないほど、廃棄物と排出物が減少する。
【0007】
第2に、生物学的増殖のための食物の生成量の低減によって、微生物活性の抑制に必要な殺生物剤の供給量が減る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6585933号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、冷却水系のような水溶液系と接する金属の腐食を抑制する方法であって、水溶液系に多価金属イオンと有機腐食防止又は付着抑制剤化合物を添加することを含む方法に関する。好ましい実施形態では、多価金属イオンはAl及びMnからなる群から選択される。
【0010】
本発明の一実施形態では、腐食防止/付着抑制剤(DCA)化合物は、ヒドロキシ酸、ホスホノカルボン酸、ポリヒドロキシコハク酸及びポリマレイン酸又はポリ無水マレイン酸からなる群から選択される。
【0011】
水系中の多価金属塩の量を約0.1〜10ppmとし、有機腐食防止剤/DCA化合物の量を約1〜50ppm未満とすることができる。現在使用されている多くの完全有機又は有機/低リン酸塩処理と比べて、この有機腐食防止剤/DCA化合物の投与量は低レベルであり、処理のカーボンフットプリントの改善に役立つ。
【0012】
多価金属イオン及び腐食防止/DCA化合物を含有する水性組成物も提供される。該組成物には、モル比で約1部の多価金属イオンと約0.1〜500部の腐食防止剤/DCAとが存在する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、Al及びMnなどの多価金属イオンを使用することにより、工業用冷却塔などの水系内の腐食及び付着抑制を有効にするのに必要なヒドロキシ酸、ホスホノカルボン酸、ポリアルキルヒドロキシコハク酸及びポリマレイン酸又はその無水物の濃度を大幅に低減できるという知見を得た。
【0014】
本発明の第1の態様による水溶液系中での金属の腐食を抑制する方法では、多価金属イオン及び腐食防止又は付着抑制剤(DCA)化合物を水溶液系に添加する。特定の実施形態では、約0.1〜10ppmの多価金属イオンを添加し、腐食防止剤を約1ppm〜50ppm未満の量で供給する。これらの供給レベルは、本発明の最も重要な1つの特徴であり、本発明によって、投与量レベルが低減するので腐食防止剤/DCAのカーボンフットプリントが改善する。つまり、用いる腐食防止剤/DCAの供給レベルを通常あるいは従来より低くすることができる。
【0015】
用いることができる多価金属イオンに関しては、一実施形態では、Mn+2、Ni+2、Al+3及びSn+2からなる群から選択できる。好ましくは、多価金属イオンはAl及びMnから選択される。Al及びMnイオンのために用いることができる塩の例には、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン及び硫酸マンガンアンモニウムがある。Al塩の例には、酢酸アルミニウム、臭素酸アルミニウム、臭化アルミニウム及びこれらの六及び五水和物、塩素酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、塩化アルミニウム及びこれらの六水和物、フッ化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム及びこれらの六水和物、乳酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム及びこれらの水和物が挙げられる。
【0016】
添加することができる腐食防止剤/DCA化合物に関しては、ヒドロキシ酸、ホスホノカルボン酸、ポリヒドロキシコハク酸及びポリマレイン酸又はその無水物が挙げられる。特定の実施形態では、ヒドロキシ酸(B1)は次式で表される。
【0017】
Q−(R1)a−(R2)b−(R3)c−COOH
式中、a、b及びcは、a+b+c>0であることを条件として、約1〜6の整数であり、R1、R2及びR3はランダム又はブロック配列いずれかの繰返し単位であって、独立にC=O又はCYZから選択され、Y及びZは、上記(B1)がその完全な水和形で最低1個のOH基を有するように、独立にH、OH、CHO、COOH、CH3、CH2OH、CH(OH)2、CH2(COOH)、CH(OH)(COOH)、CH2(CHO)及びCH(OH)CHOからなる群から選択される。式中、QはCOOH又はCH2OHのどちらかである。別の実施形態ではヒドロキシ酸がムチン酸、D−サッカリン酸、ケトマロン酸、酒石酸及びクエン酸から選択される。好ましくはD−サッカリン酸である。
【0018】
ホスホノカルボン酸も多価金属イオンと併用する腐食防止剤/DCAとして使用することができる。本発明の一態様では、ホスホノカルボン酸は、ホスホノコハク酸オリゴマー、ホスホノコハク酸及び次式のホスホノポリカルボン酸テロマーから選択することができる。
【0019】
【化1】

式中、mは約2〜7、好ましくは2〜3、さらに好ましくは平均2〜5である。
【0020】
一実施形態では、ホスホノカルボン酸はホスホノコハク酸及び次式のホスホノポリカルボン酸テロマーの混合物である。
【0021】
【化2】

式中、mは約2.5である。この混合物はRhodia社からBricorr 288という商品名で市販されている。この製品は60%のホスホノコハク酸及び40%のテロマー化合物からなるといわれている。
【0022】
上記のホスホノコハク酸オリゴマー(PSO)は次式で表される。
【0023】
【化3】

この化合物は、米国特許第6572789号の第5欄に式2として記載されている。この特許に報告されているように、PSOを製造するには、マレイン酸又はフマル酸の水性スラリー又は懸濁液にホスフィン酸塩を添加して反応混合物を調製し、次いでラジカル開始剤を添加する。典型的なスラリーの固形含量は約35〜50重量%である。
【0024】
ホスフィン酸塩の添加後、必要に応じて、反応混合物を約40℃〜約75℃に加熱して反応物質を所望のホスホノコハク酸付加体に変換させることができる。反応混合物をNaOH、KOH、NH4OHなどの塩基で一部あるいは完全に中和することができる。
【0025】
ラジカル開始剤の例には過硫酸塩、過酸化物及びジアゾ化合物がある。好ましい開始剤は過硫酸アンモニウムである。ラジカル開始剤はホスフィン酸塩の存在に基づき約10〜15モル%の量で存在することができる。
【0026】
米国特許第6572789号にはさらに、反応をフマル酸(トランス−1,4−ブタン二酸)で行った場合、マレイン酸(シス−1,4−ブタン二酸)に比べて、ビス付加体(上記PSO)の形成が促進されることが報告されている。
【0027】
本発明の別の態様では、腐食防止剤/DCAは次式で表されるポリヒドロキシコハク酸又は誘導体である。
【0028】
【化4】

式中、Z1は−O−、−NH−及びジアミノキシリレンから選択される二価基であり、nは1〜約5の整数であり、MはH又は陽イオンであり、R4は独立にH、C1−C4アルキル又はC1−C4置換アルキルから選択される。
【0029】
一実施形態では、ポリヒドロキシコハク酸は次式で表されるポリエポキシコハク酸(PESA)である。
【0030】
【化5】

式中、nは2〜3である。
【0031】
PESAは米国特許第5236332号及び同第4654159号(どちらも本発明の先行技術として援用する)に記載されている。PESAは一般に多酸と呼ばれる。PESAは元々冷却水系に付着抑制剤(DCA)として添加されているが、この化学処理は腐食に対する効果がそれほど大きくないと認められる。しかし、PESAを多価金属イオンと組合せると、単独で用いる場合に予想されるより優れた腐食防止特性が得られる。
【0032】
本発明の他の態様では、ポリヒドロキシコハク酸は次式で表されるアンモニアヒドロキシコハク酸(AM−HSA)である。
【0033】
【化6】

この成分は米国特許第5183590号に記載の方法で製造される。
【0034】
ポリヒドロキシコハク酸の別の例には、以下の一般式で表されるp−キシリレン−HSAがある。
【0035】
【化7】

この化合物は米国特許第5183590号に記載の方法で製造される。
【0036】
本発明の他の実施形態では、ポリマレイン酸(PMA)又はその無水物を腐食防止剤/DCAとして多価金属イオンと併用することができる。驚くべきことには、水性媒体中で重合したPMAは、トルエン、キシレンなどの有機溶剤中で重合したPMAに比べてはるかに良好に機能することを見出した。例えば、本発明にしたがって腐食防止剤/付着抑制剤(DCA)として用いることができるPMAは、鉄、バナジウム及び/又は銅などの金属イオンの存在下、触媒として過酸化水素を用いて水溶液中でマレイン酸モノマーから重合することができる。本発明に用いる水性PMAの例には、SNF社から入手できる分子量(MW)が約630のPMA2Aがある。他の水性PMAには、Akzo Nobel社から入手できるAquatreat802(MW約640)及びJiangsu Jianghai社から入手できる水性PMAがある。水性PMAは水性媒体中で重合したものと定義する。
【0037】
本発明の組成物は、多価金属イオン及び腐食防止剤/DCAの組合せを、好ましくは水溶液又は懸濁液の形態で含む。通常、多価金属塩と腐食防止剤/DCAは、このような組成物中に約1部の多価金属イオン:約0.1〜5,000部の腐食防止剤のモル範囲で存在する。
【0038】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、実施例が特許請求の範囲に限定をあたえると解釈すべきではない。
【実施例】
【0039】
ビーカー腐食試験装置(BCTA)を用いて腐食試験を行った。この試験は水中での低炭素綱電極の腐食を温度120°Fで18時間評価する。水の化学組成は、工業用冷却塔の水の化学組成を模擬すべく、溶解性硬度塩、シリカ及びアルカリ度を加えて変更した。典型的には水の化学組成は以下のものを含む。
【0040】
Ca CaCO3換算で400ppm
Mg CaCO3換算で150ppm
SiO2 SiO2換算で30ppm
Cl Cl換算で283ppm
SO4 SO4換算で450ppm
Mアルカリ度 CaCO3換算で200ppm。
【0041】
水のpHはBCTA試験の開始前に8.0に調整し、試験中はドリフトさせておいた。典型的には、pHは試験中に8.4〜8.6まで上昇した。
【0042】
これらの実験で得た以下の表に示すデータは、18時間の実験の終わりに電気化学的線形分極スキャンで得られた軟鋼腐食速度と水中に暴露した低炭素綱クーポンの腐食外観評価を含んでいる。クーポン外観の評価尺度は以下の通りである。

これらの実験から得られ、下記表に示したデータは、18時間の実験の終了時に電気化学的直線分極スキャンによって得られた軟鋼の腐食速度及びこれらの水に曝露した低炭素鋼試験クーポンの腐食外観の評点を含む。クーポンの腐食外観は以下の評点で表す。
【0043】
評点 クーポン外観
0 完璧;孔食なし
1 シミ状外観
2 1又は2箇所の孔食
3 3箇所以上の孔食
4 4箇所以上の孔食
5 5箇所以上の孔食
6 中程度の孔食密度(30%領域)
7 中程度の孔食密度(50%領域)
8 中程度の孔食密度(70%領域)
9 高い孔食密度(80%領域)
10 高い孔食密度(>90%領域)
外観評点が2以上のクーポンは許容できないとみなす。
【0044】
実施例1
[実験処理]
0.5Al−サッカリン酸(SA)濃度に対する効果
250Ca、100Mg、175Mアルカリ度、4分散剤I、8PESA、0.6PO4
PESA=ポリエポキシコハク酸;分散剤I=アクリル酸/アリルヒドロキシプロピルスルホネートエーテルコポリマー(AA/AHPSE)(米国特許第4717499号参照)
実施例1のデータは、異なる濃度のサッカリン酸への0.5Alの添加がいかに腐食速度を著しく低減し、金属表面の外観を向上するかを示す。この実施例では、SA/Al=20/0.5の組合せで許容できる性能が達成される。Alが存在しない場合、許容できる性能を達成するのに30ppmのサッカリン酸を必要とする。
【0045】
【表1】

実施例2
Al及びMn−サッカリン酸(SA)濃度に対する効果
400Ca、150Mg、30SiO2、200Mアルカリ度、4〜8分散剤I又はII、8PESA、1PO4
分散剤II=アクリル酸/アンモニウムアリルポリエトキシサルフェートコポリマー(AA/APES)(米国特許第7094852号参照)
表2のデータは、低濃度のAl及びMnの添加が許容できる性能を与えるのに必要なサッカリン酸の濃度にいかに影響するかを示す。この実施例でのこれらの実験条件下SA/Al=25/0.25及びSA/Mn=25/0.5の組合せで許容できる性能が達成される。Al又はMnなどの二価金属イオンが存在しない場合、許容できる性能を達成するのに35ppmのサッカリン酸を必要とする。
【0046】
【表2】

実施例3
Al−各種のヒドロキシ酸に対する効果
400Ca、150Mg、30SiO2、200Mアルカリ度、4〜8分散剤I又はIII、8PESA
分散剤III=アクリル酸/アリルヒドロキシプロピルスルホネートエーテル/アンモニウムアリルポリエトキシサルフェートターポリマー(AA/AHPSE/APES)(米国特許第7094852号参照)
表3のデータは、二価金属イオンの添加が許容できる性能を与えるのに必要なヒドロキシ酸の濃度にいかに影響するかを示す。
【0047】
表3の実施例3.1〜3.5は、低重合度(DP2〜3)のポリ(エポキシコハク酸)では100ppmで優れた性能が達成されることを示す。0.5ppmのAlを用いると、この物質のカーボンフットプリントを25ppmまで低減、即ちカーボンフットプリント負担を75%低減することができる。
【0048】
表3の実施例3.6〜3.12は、p−キシリレン−HSA(pX−HSA)では80ppmで優れた性能が得られることを示す。一方、pX−HSA/Al=20/1又は10/2で優れた性能を得、つまり、カーボンフットプリント負担を75〜88%低減できる。実施例3.13〜3.15は、アンモニア−HSA(AM−HSA)がAM−HSA/Al=20/0.5でpX−HSAの場合と同等であることを示す。
【0049】
表3の実施例3.16及び3.17は、PSOでは処理を有効にするのに40ppm超えの濃度が必要であることを示す。一方、0.5Alを添加したPSO/Al=40/0.5では優れた性能を与え、カーボンフットプリント負担の低減は50%超えに相当する。
【0050】
表3の実施例3.18及び3.19は、Bricorr288の場合に、有機/Al=3/0.5の比で許容できる性能を達成でき、カーボンフットプリント負担を70%低減することを示す。
【0051】
化合物VI(グルコン酸)の場合、40/0.5ppmの有機/Al比であっても性能は許容できるレベルではなく、したがってこの物質を好ましい化合物のリストから削除した。
【0052】
【表3】

実施例4
Al−各種のポリマレイン酸に対する効果
400Ca、150Mg、30SiO2、200Mアルカリ度、4〜8分散剤I又はIII、8PESA、1PO4
表4のデータは、二価金属イオンの添加が許容できる性能を与えるのに必要なポリマレイン酸の濃度にいかに影響するかを示す。表4の実施例4.1、4.2及び4.3は、有機阻害剤含量を増加するとシステム中の性能が向上するが、処理を有効にするのに20ppm超えの濃度が必要となる一般的な傾向を示す。一方、0.5Alを添加したPMA/Al=10/0.5では優れた性能を与え、カーボンフットプリント負担の低減は50%超えに相当する。
【0053】
表4の実施例4.7〜4.15は、すべてのポリマレイン酸について、スケール及び腐食防止剤(特許品)であるPESAの添加無しでもPMA/Al=15/0.5の比で許容できるレベルの腐食防止が得られることを示す。
【0054】
【表4】

実施例5
BTU:各種のポリマレイン酸に対するAl添加の効果
400Ca、150Mg、50SiO2、200Mアルカリ度、pH8.6、8分散剤III、1o−PO4、0.3〜0.5ppmAl、0.2ppm残留塩素
さらに、循環冷却水条件でのこれらのポリマレイン酸の試験により、これらの物質間で大きな性能差があることを示す。表5に示すように、水媒体中で合成したポリマレイン酸は優れた処理効果があるが、溶剤中で合成したものは効果がないという予期しない結果となる。
【0055】
【表5】

本発明の一態様の好ましい処理:
DCA−PMA;Aquatreat802(Akzo Nobel社製) 20〜25ppm
Al塩 0.3〜0.5ppm
リン酸塩 0.1〜1ppm最大
高分子分散剤I、II又はIII
補給水(MU)の自然汚染由来の1ppmのPO4(即ちMU中の約0.2ppmのPO4x運転5サイクル=給水塔に1ppmのPO4)を用いない場合、この好ましい組合せは上手く機能しない。どのような汚染源からのリン酸塩も通常、水系中でオルトリン酸塩に戻る。
【0056】
したがって、本発明の別の態様では、再循環後に残留リン酸塩が約0.1〜1.0ppmの量で存在する種類の冷却水中で用いるのに望ましい処理が得られる。
【0057】
さらに、高分子分散剤の例には、アクリル酸、アクリル酸と低級アルキルアクリレートエステルとのコポリマー及びヒドロキシル化低級アルキルアクリレートを挙げることができる。具体的には、アクリル酸/2−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマーである。別の分類の例には、アクリル酸/アリルエーテルコポリマー及びターポリマー、具体的にはアクリル酸/アリルヒドロキシプロピルスルホネートエーテル及びアクリル酸/アンモニウムアリルポリエトキシサルフェートコポリマー及びターポリマーがある。アクリルアミド及びN−アルキルアクリルアミドホモポリマー又はアクリル酸とのコポリマーも有効であるということができる。これらの高分子分散剤は約2〜25ppm、好ましくは約4〜8ppmの量で存在することができる。
【0058】
以上、本発明をその特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明のその他の数多くの形態及び変更は当業者には自明であろう。特許請求の範囲は、このような本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する自明な形態及び変更を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液系と接触する金属の腐食を抑制する方法であって、水溶液系に(A)多価金属イオンと(B)腐食防止又は付着抑制剤(DCA)化合物を添加することを含む方法。
【請求項2】
前記多価金属イオンがAl及びMnからなる群から選択されるものを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記腐食防止/DCA化合物が(B1)ヒドロキシ酸、(B2)ホスホノカルボン酸、(B3)ヒドロキシコハク酸及び(B4)ポリマレイン酸又はポリ無水マレイン酸からなる群から選択されるものである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記多価金属塩(A)が約0.1〜10ppmの量で存在し、前記腐食防止剤(B)が約1〜50ppm未満の量で存在し、前記水溶液系が冷却水系である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
B1が存在し、B1が次式で表される、請求項4記載の方法。
Q−(R1)a−(R2)b−(R3)c−COOH
式中、a、b及びcは、a+b+c>0であることを条件として、0〜6の整数であり、QはCOOH又はCH2OHであり、R1、R2及びR3はランダム又はブロック配列の繰返し単位であって、独立にC=O又はCYZから選択され、Y及びZは、前記B1がその完全な水和形で最低1個のOH基を有するように、独立にH、OH、CHO、COOH、CH3、CH2OH、CH(OH)2、CH2(COOH)、CH(OH)(COOH)、CH2(CHO)及びCH(OH)CHOからなる群から選択される。
【請求項6】
前記ヒドロキシ酸がムチン酸、D−サッカリン酸、ケトマロン酸、酒石酸及びクエン酸から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドロキシ酸がサッカリン酸である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
B2が存在し、B2がホスホノコハク酸オリゴマー、ホスホノコハク酸及び次式のホスホノポリカルボン酸テロマーから選択されるものを含む、請求項4記載の方法。
【化1】

式中、mは約2.5である。
【請求項9】
前記ホスホノカルボン酸がホスホノコハク酸とホスホノポリカルボン酸テロマーとの混合物である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
B3が存在し、B3が次式で表される、請求項4記載の方法。
【化2】

式中、Z1は−O−、−NH−及びジアミノキシリレンから選択される二価基であり、nは1〜約5の整数であり、MはH又は陽イオンであり、R4は独立にH、C1−C4アルキル又はC1−C4置換アルキルから選択される。
【請求項11】
B3がポリエチルオキシコハク酸であって、前記式中、R4がいずれもHであり、Z1が−O−であり、MがHであり、nが2である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
B3がアンモニアヒドロキシコハク酸であって、前記式中、R4がいずれもHであり、Z1は−NH−であり、nは2であり、MがいずれもHである、請求項8記載の方法。
【請求項13】
B3がp−ジアミノキシリレン及びヒドロキシコハク酸であって、前記式中、R4がいずれもHであり、MがいずれもHであり、nが2である、請求項8記載の方法。
【請求項14】
B4が存在し、B4が水性媒体中で製造されたポリマレイン酸である、請求項4記載の方法。
【請求項15】
(A)多価金属イオンと(B)腐食防止/DCA化合物とを含む、水性媒体処理用の腐食防止処理組成物。
【請求項16】
腐食防止処理組成物であって、多価金属イオンがAl及びMnから選択され、腐食防止/DCA化合物(B)が、(B1)ヒドロキシ酸、(B2)ホスホノカルボン酸、(B3)ヒドロキシコハク酸及び(B4)ポリマレイン酸又はポリ無水マレイン酸からなる群から選択されるものであり、当該組成物が水性媒体中に存在する、腐食防止処理組成物。
【請求項17】
B1が存在し、B1が次式で表される、請求項16記載の組成物。
Q−(R1)a−(R2)b−(R3)c−COOH
式中、a、b及びcは、a+b+c>0であることを条件として、0〜6の整数であり、QはCOOH又はCH2OHであり、R1、R2及びR3はランダム又はブロック配列の繰返し単位であって、独立にC=O又はCYZから選択され、Y及びZは、前記B1がその完全な水和形で最低1個のOH基を有するように、独立にH、OH、CHO、COOH、CH3、CH2OH、CH(OH)2、CH2(COOH)、CH(OH)(COOH)、CH2(CHO)及びCH(OH)CHOからなる群から選択される。
【請求項18】
前記ヒドロキシ酸がムチン酸、D−サッカリン酸、ケトマロン酸、酒石酸及びクエン酸から選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記ヒドロキシ酸がサッカリン酸である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
B2が存在し、B2がホスホノコハク酸オリゴマー、ホスホノコハク酸及び次式のホスホノポリカルボン酸テロマーから選択されるものを含む、請求項16記載の組成物。
【化3】

式中、mは約2.5である。
【請求項21】
前記ホスホノカルボン酸がホスホノコハク酸とホスホノポリカルボン酸テロマーとの混合物である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
B3が存在し、B3が次式で表される、請求項16記載の組成物。
【化4】

式中、Z1は−O−、−NH−及びジアミノキシリレンから選択される二価基であり、nは1〜約5の整数であり、MはH又は陽イオンであり、R4は独立にH、C1−C4アルキル又はC1−C4置換アルキルから選択される。
【請求項23】
B3がポリエトキシコハク酸であって、前記式中、R4がいずれもHであり、Z1が−O−であり、MがHであり、nが2である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
B3がアンモニアヒドロキシコハク酸であって、前記式中、R4がいずれもHであり、Z1が−NH−であり、nが2であり、MがいずれもHである、請求項22記載の組成物。
【請求項25】
B3がp−ジアミノキシリレンであって、前記式中、R4がいずれもHであり、MがいずれもHであり、nが2である、請求項22記載の組成物。
【請求項26】
B4が存在し、水性媒体中で製造されたポリマレイン酸である、請求項16記載の組成物。
【請求項27】
約0.1〜1.0ppmのオルトリン酸塩を含有する水系に、(A)約0.3〜0.5ppmの多価金属イオンと(B)約1〜25ppmの量のポリマレイン酸又はその無水物を添加することを含む、改良腐食防止方法。
【請求項28】
前記多価金属イオンがAl及びMnから選択され、前記ポリマレイン酸又はその無水物が水性である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
さらに、(C)アクリル酸、アクリル酸コポリマー、アクリルアミド並びにN−アルキルアクリルアミドポリマー及びコポリマーから選択される高分子分散剤を約2〜25ppm含有する、請求項28記載の方法。

【公表番号】特表2012−507627(P2012−507627A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534571(P2011−534571)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/058584
【国際公開番号】WO2010/062461
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】