説明

水性懸濁液剤

難溶性薬物に、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン性界面活性剤を配合することにより水性懸濁液剤を調製する。得られた水性懸濁液は、沈降した難溶性薬物の凝集を抑制し、かつ薬物が容器から容易に剥離するので、再分散性の優れた点眼剤、点鼻剤、点耳剤、などの水性懸濁液剤となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)および非イオン界面活性剤を配合することを特徴とする、難溶性薬物の再分散性に優れた水性懸濁液剤に関する。
【背景技術】
難溶性薬物の水性懸濁液剤を長期間保存すると、沈降した薬物粒子がケーキング等の二次凝集を起こしたり、容器に付着または吸着するという問題が生じる。このため、薬物粒子が容易に分散しなくなり、使用時に長時間振とうする必要がある。
難溶性薬物の懸濁化剤として、通常、高分子および/または界面活性剤が使用されている。例えば、再分散性を改善した水性懸濁液剤として、コルチコステロイド、非イオン性高分子、非イオン性界面活性剤および非イオン性等張化剤を含有する組成物(米国特許第5540930号明細書)、液剤の表面張力が低下しはじめる濃度から表面張力の低下が停止する濃度範囲の水溶性高分子と難溶性薬物を含有する水性懸濁液剤(特開平11−29463号公報)、イオン性高分子(カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース)と金属イオンを配合し、粘度を100cP以下とする難溶性薬物の水性懸濁型点眼剤(特開平8−295622号公報)および難溶性薬物、ポリビニルピロリドンおよび水可溶アニオン性高分子(アニオン性多糖、アニオン性ポリビニル系ポリマー、アニオン性高分子ポリペプチド)を含有する水性懸濁液剤(国際公開第2002/15878号パンフレット)が挙げられる。
また、アミノ酸またはポリアミノ酸を配合した組成物として、例えば、ロテプレドノールエタボネートに炭素数2〜7の脂肪族アミノ酸を含有することを特徴とする、長期保存条した後でもpH低下のない水性懸濁液(特開平10−316572号公報)、ポリグルタミン酸を汚れ原因物質の分散剤として使用した洗剤組成物(国際公開第1993/06202号パンフレット)、無機および有機粒子の懸濁化剤としてポリアスパラギン酸を配合した水性懸濁液(米国特許第5284512号明細書)等が知られている。
しかし、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)と非イオン界面活性剤を配合することにより、沈降した薬物粒子の凝集抑制や容器からの剥離が改善された、再分散性のよい水性懸濁液製剤については未だ知られていない。
本発明の目的は、難溶性薬物の再分散性に優れた水性懸濁液剤を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者は、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン界面活性剤を配合することにより、沈降した難溶性薬物の凝集が抑制され、かつ容器からの難溶性薬物の剥離が改善され、再分散性が向上することを見出し、さらに研究をすすめ、本発明を完成した。
本発明のポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)は、側鎖に、例えばアミノ基やカルボキシル基といった極性電荷を帯びた側鎖を有する重合アミノ酸で、より具体的には、モノアミノジカルボン酸である酸性アミノ酸の重縮合体[ポリ(酸性アミノ酸)]およびジアミノモノカルボン酸である塩基性アミノ酸の重縮合体[ポリ(塩基性アミノ酸)]が挙げられる。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)難溶性薬物、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン界面活性剤を含有する水性懸濁液剤、
(2)ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩の下限濃度が0.01w/v%であり上限濃度が1.0w/v%、非イオン界面活性剤の下限濃度が0.05w/v%であり上限濃度が1.0w/v%である上記(1)記載の水性懸濁液剤、
(3)難溶性薬物がステロイドである上記(1)記載の水性懸濁液剤、
(4)ステロイドがロテプレドノールエタボネート、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、フルオロメトロンから選択される少なくとも1種である上記(3)記載の水性懸濁液剤、
(5)ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)がポリ(酸性アミノ酸)である上記(1)記載の水性懸濁液剤、
(6)ポリ(酸性アミノ酸)がポリグルタミン酸である上記(5)記載の水性懸濁液剤、
(7)非イオン界面活性剤がチロキサポールである上記(1)記載の水性懸濁液剤、
(8)点眼剤である上記(1)〜(7)記載の水性液剤、
(9)点鼻剤である上記(1)〜(7)記載の水性液剤、
(10)点耳剤である上記(1)〜(7)記載の水性液剤、
(11)ロテプレドノールエタボネートを0.05〜2w/v%、ポリグルタミン酸またはその塩を0.01〜1.0w/v%、チロキサポールを0.05〜1.0w/v%含有する水性懸濁点眼剤、
(12)難溶性薬物の水性懸濁液剤に、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン性界面活性剤を配合することにより、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法、
(13)ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩の下限濃度が0.01w/v%であり上限濃度が1.0w/v%、非イオン界面活性剤の下限濃度が0.05w/v%であり上限濃度が1.0w/v%で含有することを特徴とする上記(12)記載の方法に関する。
本発明のポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)の分子量は通常500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは8000以上で、通常1000000以下、好ましくは500000以下、より好ましくは200000以下、さらに好ましくは150000以下である。
ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、塩酸などの無機酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではい。
ポリ(酸性アミノ酸)としては例えば、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸等が、ポリ(塩基性アミノ酸)としては、例えばポリリジン等が挙げられる。好ましいのはポリ(酸性アミノ酸)であり、さらに好ましいのはポリグルタミン酸である。
ポリグルタミン酸としては、株式会社ペプチド研究所製のポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩が好適に用いられる。
ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩の濃度は、下限が通常0.01w/v%、好ましくは0.025w/v%、より好ましくは0.05w/v%、さらにより好ましくは0.075w/v%、特に好ましくは好ましくは0.1w/v%で、上限が通常1.0w/v%、好ましくは0.8w/v%、より好ましくは0.6w/v%、特に好ましくは0.5w/v%である。
本発明に使用される非イオン界面活性剤としては、チロキサポール、ミリスチン酸ポリオキシル、ポリソルベート80、ポロキサマーおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。好ましいのはチロキサポールである。
非イオン界面活性剤の濃度は下限が通常0.05w/v%、好ましくは0.06w/v%、より好ましくは0.08w/v%、さらに好ましくは0.1w/v%、上限が通常1.0w/v%、好ましくは0.8w/v%、より好ましくは0.6w/v%である。
本発明に使用される難溶性薬物は、第14改正日本薬局方の溶解性を示す用語である「溶けにくい(薬物1gを溶かすに要する溶媒量が100ml以上1000ml未満)」、「極めて溶けにくい(薬物1gを溶かすに要する溶媒量が1000ml以上10000ml未満)」および「ほとんど溶けない(薬物1gを溶かすに要する溶媒量が10000ml以上)」の何れかの溶解性を示すものである。
本発明の水性懸濁液の調製に適した難溶性薬物の粒子径は、たとえば、島津製作所製レーザー回析式粒度分布測定装置SALD−2100型で測定したとき、通常、0.1〜75μm、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは2〜10μmのものである。
本発明に使用される難溶性薬物としては、例えば、ステロイド、消炎鎮痛剤、化学療法剤、合成抗菌剤、抗ウィルス剤、ホルモン剤、抗白内障剤、血管新生抑制剤、免疫抑制剤、プロテアーゼ阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤などが挙げられるが、好ましいのはステロイドである。ステロイドとしては、例えば、ロテプレドノールエタボネート、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、フルオロメトロン、プレドニゾロン、ベタメサゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノニド、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸フルチカゾンなどが挙げられる。好ましいのはロテプレドノールエタボネート、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、フルオロメトロンである。
本発明に使用される難溶性薬物の平均粒子径は、使用する薬物により異なるが、上限が通常75μm、好ましくは40μm、より好ましくは20μmである。
本発明に使用される難溶性薬物の懸濁剤中の濃度は使用する薬物により異なるが、下限が通常0.001w/v%、好ましくは0.003w/v%、より好ましくは0.005w/v%、さらに好ましくは0.01w/v%、上限が通常5w/v%、3w/v%、好ましくは2w/v%である。
ステロイドを使用する場合は、通常、下限が0.003w/v%、好ましくは0.005w/v%、上限が3w/v%、好ましくは2w/v%である。
ロテプレドノールエタボネートの濃度としては下限が0.05w/v%、好ましくは0.1w/v%、より好ましくは0.2w/v%、上限が通常2w/v%、1.5w/v%、好ましくは1w/v%である。
フルオロメトロンの濃度としては下限が通常0.01w/v%、好ましくは0.02w/v%、上限が通常0.5w/v%、好ましくは0.2w/v%である。
酢酸プレドニゾロンの濃度としては下限が通常0.1w/v%、好ましくは0.5w/v%、上限が通常2w/v%、好ましくは1.5w/v%である。
ジフルプレドナートの濃度としては下限が通常0.01w/v%、好ましくは0.02w/v%、上限が通常0.5w/v%、好ましくは0.2w/v%である。
本発明の水性懸濁液におけるステロイドに対するポリ(極性電荷アミノ酸)、非イオン性界面活性剤の使用重量比は通常、1:0.01〜50:0.01〜100、好ましくは1:0.05〜30:0.02〜50である。
ロテプレドノールエタボネートに対するポリ(極性電荷アミノ酸)、非イオン性界面活性剤の使用重量比は通常、1:0.05〜5:0.05〜5、好ましくは1:0.1〜3:0.1〜3である。
フルオロメトロンに対するポリ(極性電荷アミノ酸)、非イオン性界面活性剤の使用重量比は通常、1:0.2〜30:0.3〜40、好ましくは1:0.5〜25:0.5〜30である。
酢酸プレドニゾロンに対するポリ(極性電荷アミノ酸)、非イオン性界面活性剤の使用重量比は通常、1:0.03〜1.5:0.03〜2、好ましくは1:0.05〜1:0.05〜1.5である。
ジフルプレドナートに対するポリ(極性電荷アミノ酸)、非イオン性界面活性剤の使用重量比は通常、1:0.25〜30:0.3〜40、好ましくは1:0.5〜25:0.5〜30である。
例えば、上記ステロイドを水性懸濁点眼剤として使用する場合は、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎、術後炎症、アレルギー性結膜炎などに用いることができる。その投与量は、上記濃度のステロイドを含有する水性懸濁点眼剤を、用時よく振り混ぜた後、通常1回1〜2滴、1日2〜4回点眼すればよい。なお、年令、症状の程度により、適宜回数を増減できる。
本発明の水性懸濁液剤は難溶性薬物、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)および非イオン界面活性剤の他に、緩衝剤、等張化剤、保存剤、粘稠化剤、キレート剤のような、通常、水性液剤に使用される添加剤を適宜添加してもよい。
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸(イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸)などが挙げられる。
等張化剤としては、例えば、ソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類、ホウ酸などが挙げられる。
保存剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムなどの第四級アンモニウム塩類、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、ソルビン酸、チメロサール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
粘稠化剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
本発明の点眼剤のpHは、通常、4.0〜8.0、好ましくは約5.0〜7.0に調整される。
本発明の水性懸濁液剤は、再分散性が優れているため、医薬(例えば、各種疾病の予防、治療剤)、動物薬などとして、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、サル、イヌ、ウシなど)に用いられる。
本発明の水性懸濁液剤は、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、注射剤、内服剤、ローション剤などとして好適に使用できるが、なかでも点眼剤、点鼻剤、点耳剤が好ましい。
本発明の水性懸濁液剤は、自体公知の調製法、例えば、第14改正日本薬局方、製剤総則の液剤、懸濁剤あるいは点眼剤に記載された方法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例、試験例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、実施例に示すポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩は株式会社ペプチド研究所製の分子量8000以上15万以下のものを使用した。
【実施例1】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
ロテプレドノールエタボネート 0.5g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例2】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
ロテプレドノールエタボネート 0.5g
グリセリン 2.6g
L−グルタミン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例3】
常法に従い、以下の処方の点鼻剤を調製した。
ロテプレドノールエタボネート 0.5g
マンニトール 5.0g
酢酸ナトリウム 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例4】
常法に従い、以下の処方の点耳剤を調製した。
ロテプレドノールエタボネート 0.5g
塩化ナトリウム 0.9g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例5】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
酢酸プレドニゾロン 0.11g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例6】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
酢酸プレドニゾロン 1.1g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例7】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
ジフルプレドナート 0.05g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
【実施例8】
常法に従い、以下の処方の点眼剤を調製した。
フルオロメトロン 0.1g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩 0.3g
チロキサポール 0.3g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
比較例1
常法に従い、以下の処方の水性懸濁液剤を調製した。
酢酸プレドニゾロン 0.11g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
チロキサポール 0.3g
ポリビニルピロリドン 0.6g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
比較例2
常法に従い、以下の処方の水性懸濁液剤を調製した。
フルオロメトロン 0.1g
グリセリン 2.6g
イプシロンアミノカプロン酸 0.1g
チロキサポール 0.3g
ポリビニルピロリドン 0.6g
エデト酸二ナトリウム 0.001g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
塩酸 適量
滅菌精製水 全量100ml
pH 5.5
試験例1
再分散性試験
上記の実施例5および8の点眼剤を調製し、5mlのポリプロピレン容器に充填した。40℃で2週間保存し、薬物を沈降させた。その後、容器を反転し、40℃で2週間保存し、薬物を容器に付着させた。容器を振とうし、付着した薬物が剥離するまでの振とう回数を測定した。対照として、比較例1および2の水性懸濁液を同様に操作した。
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩とチロキサポールを配合した酢酸プレドニゾロン含有点眼液(実施例5)およびフルオロメトロン点眼液(実施例8)はそれぞれ振とう3回、4回で薬物は容器から剥離した。一方、対照としたポリビニルピロリドンとチロキサポールを配合した酢酸プレドニゾロン水性懸濁液(比較例1)は振とう4回で薬物は容器から剥離したが、細かい凝集塊が観察された。また、フロオロメトロン水性懸濁液(比較例2)は振とう43回で薬物は容器から剥離し、細かい凝集魂が観察された。
ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩とチロキサポールを配合したロテプレドノールエタボネート点眼液(実施例1)およびジフルプレドナート点眼液(実施例7)を同様に操作した結果、ロテプレドノールエタボネート点眼液は振とう7回で、ジフルプレドナート点眼液は振とう3回で薬物は容器から剥離した。また、粒子径の変化は認められなかった。
この結果は、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)と非イオン界面活性剤を配合すると、沈降した難溶性薬物は容器から容易に剥離し、かつ凝集も抑制されることを示す。
【産業上の利用の可能性】
本発明の水性懸濁液剤は、沈降した薬物粒子の容器からの剥離が容易であり、かつ凝集も抑制することができる。従って本発明にかかる再分散性のよい水性懸濁液剤は、点眼剤、点鼻剤、点耳剤に極めて有利に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性薬物、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン界面活性剤を含有する水性懸濁液剤。
【請求項2】
ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩の下限濃度が0.01w/v%であり上限濃度が1.0w/v%、非イオン界面活性剤の下限濃度が0.05w/v%であり上限濃度が1.0w/v%である請求の範囲1記載の水性懸濁液剤。
【請求項3】
難溶性薬物がステロイドである請求の範囲1記載の水性懸濁液剤。
【請求項4】
ステロイドがロテプレドノールエタボネート、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、フルオロメトロンから選択される少なくとも1種である請求の範囲3記載の水性懸濁液剤。
【請求項5】
ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)がポリ(酸性アミノ酸)である請求の範囲1記載の水性懸濁液剤。
【請求項6】
ポリ(酸性アミノ酸)がポリグルタミン酸である請求の範囲5記載の水性懸濁液剤。
【請求項7】
非イオン界面活性剤がチロキサポールである請求の範囲1記載の水性懸濁液剤。
【請求項8】
点眼剤である請求の範囲1〜7のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項9】
点鼻剤である請求の範囲1〜7のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項10】
点耳剤である請求の範囲1〜7のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項11】
ロテプレドノールエタボネートを0.05〜2w/v%、ポリグルタミン酸またはその塩を0.01〜1.0w/v%、チロキサポールを0.05〜1.0w/v%含有する水性懸濁点眼剤。
【請求項12】
難溶性薬物の水性懸濁液剤に、ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩、および非イオン性界面活性剤を配合することにより、水性懸濁液剤の再分散性を向上させる方法。
【請求項13】
ポリ(極性電荷側鎖アミノ酸)またはその塩の下限濃度が0.01w/v%であり上限濃度が1.0w/v%、非イオン界面活性剤の下限濃度が0.05w/v%であり上限濃度が1.0w/v%で含有することを特徴とする請求の範囲12記載の方法。

【国際公開番号】WO2004/073748
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502746(P2005−502746)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001833
【国際出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】