説明

水性樹脂組成物及び該水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物

【課題】
低汚染性を有する塗膜を形成するのに適する水性樹脂組成物及びそれを含む水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】
フッ素化樹脂(I)並びに架橋型樹脂組成物(II)を含有し、フッ素化樹脂(I)が、フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)が、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%を超えるものであって、架橋型樹脂組成物(II)が、フッ素化樹脂(I)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有するか又は自己架橋型であることを特徴とする水性樹脂組成物、該水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物、該水性塗料組成物を用いた塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低汚染性を有する塗膜を形成するのに適する水性樹脂組成物及びそれを含む水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野において水性への転換がされている。一般に、水性塗料は親水性基や乳化剤等により、溶剤型塗料と比較して仕上がり性、耐水性等の性能が劣る傾向にある。しかしながら昨今の市場のニーズに伴い、仕上がり性や耐水性が良好であり、さらには耐汚染性といった高機能を発揮する塗膜を形成するような水性塗料の開発が望まれている。
【0003】
一般に耐汚染性を付与させる手法としては、塗膜を撥水性にする手法と親水性にする手法が知られており、塗料設計者は被塗物及びそれに対して付着しうる汚れ成分の種類や性質等に応じていずれかの手法を選択することができる。
【0004】
塗膜を撥水性にする樹脂として一般に、フッ素樹脂が知られている。例えば特許文献1には炭素数が6〜12のアルキル基を有するパーフルオロアルキルアクリレート、カルボキシル基含有α,β−エチレン性不飽和単量体、ヒドロキシル基含有α,β−エチレン性不飽和単量体及びその他の共重合可能なα,β−エチレン性不飽和単量体を界面活性剤を用いて水中に乳化分散させ、粒径を0.3μm以下の粒子にしてから重合することにより得られる含フッ素アクリル系重合体水性エマルジョンが記載されている。
【0005】
かかる含フッ素アクリル系共重合体水性エマルジョンは水の存在下でも安定に製造でき、該エマルジョンを含む組成物は撥水性を有する膜を形成できるものであるが、撥水性膜ゆえに疎水性の汚れが膜表面に付着しやすい傾向にあった。
【0006】
他方、塗膜表面を親水性にする方法として、塗料中にオルガノシリケートの変性縮合物を配合する方法が知られている(特許文献2参照)。該変性オルガノシリケートは、塗膜中で降雨水等の水分により加水分解され、シラノール基となって塗膜表層を親水化すると考えられている。この方法は降雨水等により付着した汚れ成分を洗い流す自浄作用を発揮することができる利点を有するものであるが、変性オルガノシリケートは水と反応するため、塗料形態を2液にしなければならず、使用直前に計量、混合する手間を要し、また塗膜表面を親水化するまでに時間がかかり、親水化発現までに汚れが付着する問題を有している。
【0007】
また、特許文献3にはフッ素化オレフィン系重合体、フッ素化(メタ)アクリレートと親水性構造単位含有エチレン性不飽和単量体及びその他のエチレン性不飽和単量体とを重合させて得られる共重合体、加水分解性シリル基を有する化合物を必須成分として含有してなり、さらに(メタ)アクリロイル基を含有する単量体の重合体を含んでなる被覆組成物が開示されている。
【0008】
該文献に記載の組成物によれば、フッ素化(メタ)アクリレートと親水性構造単位含有エチレン性不飽和単量体及びその他のエチレン性不飽和単量体とを重合させて得られる共重合体が、パーフルオロアルキル基と親水性構造の作用により加水分解性シリル基を有する化合物と共に膜表面を親水性に改質でき、耐雨垂れ汚染性に優れた塗膜を形成できるものであるが、該共重合体は水及び水系塗料中の樹脂に対して相溶せず、また、加水分解性シリル基を有する化合物は水に対して反応するため水系塗料への適用は困難であるという問題点を有している。
【0009】
【特許文献1】特開平5−17538号公報
【特許文献2】WO99/05228号公報
【特許文献3】特開平10−36754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐汚染性に優れた塗膜を形成するのに適する水性樹脂組成物及びそれを含む水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記した課題を鋭意検討した結果、親水性基含有重合性不飽和モノマーを特定量共重合成分として含有するフッ素化樹脂を架橋型樹脂組成物に添加することにより、膜表面が親水性であり、且つ汚れ物質が付着しにくくなる塗膜を形成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、
1. フッ素化樹脂(I)並びに架橋型樹脂組成物(II)を含有し、フッ素化樹脂(I)が、フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)が、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%を超えるものであって、架橋型樹脂組成物(II)が、フッ素化樹脂(I)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有するか又は自己架橋型であることを特徴とする水性樹脂組成物、
2. フッ素化樹脂(I)が、
フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)1〜50質量%、
親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)30〜95質量%及び
その他の重合性不飽和モノマー(c)0〜69質量%
を共重合成分として含有する1項記載の水性樹脂組成物、
3. フッ素化樹脂(I)と架橋型樹脂組成物(II)との間における架橋系が、水酸基/イソシアネート基架橋系、水酸基/メラミン架橋系、カルボキシル基/オキサゾリン基架橋系、カルボキシル基/カルボジイミド基架橋系、カルボキシル基/金属イオン架橋系よりなる群から選ばれるものである1項または2項に記載の水性樹脂組成物、
4. フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分が水酸基及び/又はカルボキシル基を有する1項ないし3項のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物、
5. 架橋型樹脂組成物(II)が、自己架橋型樹脂を含有するものであり、自己架橋型樹脂が、不飽和脂肪酸基及び/又はアルコキシシリル基を有する1項または2項に記載の水性樹脂組成物、
6. フッ素化樹脂(I)の固形分含有量が、架橋型樹脂組成物(II)固形分に対して0を超えて且つ15質量%未満の範囲内である1項ないし5項のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物、
7. 1項ないし6項のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物、
8. 顔料体積濃度が1〜50%の範囲内であることを特徴とする7項に記載の水性塗料組成物、
9. 被塗面に、7項又は8項に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法、
10. 被塗面に、中塗り塗料を塗装し、該中塗り塗面上に7項または8項に記載の水性塗料組成物を塗装する方法であって、中塗り塗料が7項または8項に記載の水性塗料組成物からフッ素化樹脂(I)を除いた組成物であることを特徴とする塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性樹脂組成物によれば、塗膜形成時においてフッ素の表面移行性によりフッ素化樹脂が塗膜表層に移行し、該フッ素化樹脂中に含まれる親水性基を塗膜表層に配向させるために親水性表面を形成することができる。また、該フッ素化樹脂は、水性樹脂組成物中に含まれる架橋型樹脂組成物及び水と相溶性が良好であることから、該水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜は仕上がり性、光沢が良好であり、塗膜形成成分が架橋しているため塗膜表面に汚れ物質が付着しにくく、耐水性等の諸物性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
フッ素化樹脂(I)
本発明においてフッ素化樹脂(I)は、フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合量が、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%を超えるものであることを特徴とする。
【0014】
本発明において、上記フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)は、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜においてフッ素化樹脂(I)を表面配向させるために用いられるものであり、分子中にフッ素と重合性不飽和基を含有する化合物を挙げることができ、特に制限されるものではない。
【0015】
本明細書において、重合性不飽和基はビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基などを挙げることができる。
【0016】
かかるフッ素含有重合性不飽和モノマーの具体例としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有−α−オレフィン類;トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル等のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルおよび(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;下式で表わされるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式において、Rは水素又はメチル基であり、Xは水素、塩素、臭素、分岐していてもよい炭化水素基、フルオロアルキル基であり、mは1〜5の整数であり、nは1〜12の整数であり、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、ここでa+b=2n+1を満たすものである。かかるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては例えば、
CH=CHCOCH、CH=CHCOCH、CH=CHCOCH、CH=CHCOCH11、CH=CHCOCH13、CH=CHCOCH15、CH=CHCOCH17、CH=CHCOCH19、CH=CHCOCH1021、CH=CHCOCH1123、CH=CHCOCH1225、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH、CH=C(CH)COCH11、CH=C(CH)COCH13、CH=C(CH)COCH15、CH=C(CH)COCH17、CH=C(CH)COCH19、CH=C(CH)COCH1021、CH=C(CH)COCH1123、CH=C(CH)COCH1225、CH=CHCO、CH=CHCO、CH=CHCO、CH=CHCO11、CH=CHCO13、CH=CHCO15、CH=CHCO17、CH=CHCO19、CH=CHCO1021、CH=CHCO1123、CH=CHCO1225、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO、CH=C(CH)CO11、CH=C(CH)CO13、CH=C(CH)CO15、CH=C(CH)CO17、CH=C(CH)CO19、CH=C(CH)CO1021、CH=C(CH)CO1123、CH=C(CH)CO1225、CH=C(CH)COCH2CFCHF、CH=C(CH)COCF(CF等が挙げられ、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
上記フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)は、後述のモノマー(b)又は(c)との相溶性の点から、1分子中のフッ素の数は5〜17程度の範囲内にあることが望ましい。
【0020】
親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)は、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜表面を親水性に改質させる効果を有するものであり、分子中に親水性基と重合性不飽和基を有する化合物である。親水性基の具体例としては、酸基、水酸基、アミド基、モルホリノ基、アルコキシポリオキシアルキレン基、アミド基を挙げることができ、重合性不飽和基としては上述の基が挙げられ、その具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー等の酸基含有重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC〜Cヒドロキシアルキルエステル、アリルアルコール、上記C〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体などの水酸基を有する(メタ)アクリレート;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アリルアルコール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1、2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1、3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の水酸基含有アリル化合物等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;
下記式
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R1は炭素数が1〜24のアルキル基、pは2又は3の整数、qは2〜200の整数を示す)で表されるアルコキシポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミド基含有重合性不飽和モノマー;モルホリノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン等のモルホリノ基含有重合性不飽和モノマー;等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明においては上記親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)の共重合量が、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%を超えるものであることが必須であり、その合計量は60〜95質量%の範囲内であるとより好ましい。
【0024】
モノマー(b)の共重合割合が30質量%以下であると、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜表面の親水性が不十分となり、好ましくない。
【0025】
本発明において、上記フッ素化樹脂(I)は上記モノマー(a)、(b)以外のその他の重合性不飽和モノマー(c)を必要に応じて共重合していてもよく、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等縮合多環アルキル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;フマル酸エステル化合物;ブチルビニルエーテル 、シクロヘキシルビニルエーテル 、トリエチレングリコールジビニルエーテル 、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル 、ヒドロキシブチルビニルエーテル 、プロペニルエーテルプロピレンカーボネ−ト、ヒドロキシブチルビニルエーテルとイソシアネートとを反応させてなるビニルエーテル末端ウレタンオリゴマー等のビニルエーテル化合物;等を挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記フッ素化樹脂(I)におけるモノマー(a)、モノマー(b)及びモノマー(c)の好適な共重合割合としては、
モノマー(a)が、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%、
モノマー(b)が、30〜95質量%、好ましくは60〜95質量%、
モノマー(c)が、0〜69質量%、好ましくは25〜35質量%、
の範囲内であることができる。
【0027】
上記モノマーの共重合は従来公知の方法で行うことができ、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等によって製造できるが、フッ素化樹脂(I)を目的とする重量平均分子量に調整することが容易であることから、溶液重合法により行うことが望ましい。
【0028】
重合に用いられる重合開始剤としては、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、 tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4'−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0029】
上記重合開始剤の好適な使用量としては、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.001〜15質量%、好ましくは0.2〜8質量%の範囲内であることが望ましい。
【0030】
溶液重合法を適用するにあたり、使用可能な有機溶剤としては、親水性であることが好ましく、その具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル系有機溶剤;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル系有機溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のジプロピレングリコールエーテル系有機溶剤;3−メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。特に、エチレングリコールエーテル系有機溶剤及びプロピレングリコールエーテル系有機溶剤を使用すると水及びモノマー(a)、さらには製造されるフッ素化樹脂(I)ともに溶解可能であり、好適である。
【0031】
上記フッ素化樹脂(I)の重量平均分子量は1000〜50000、特に1000〜30000の範囲内であると、水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜におけるフッ素化樹脂(I)の表面配向性、塗膜表面を親水化する点から好ましい。
【0032】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0033】
また、上記フッ素化樹脂(I)としては、酸基を有していることが望ましく、酸価が10〜400mgKOH/g、好ましくは20〜350mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。フッ素化樹脂(I)の酸価を上記範囲に調整することにより、フッ素化樹脂(I)の水溶性を確保し、これを含む水性樹脂組成物の貯蔵安定性及び水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の親水化に効果がある。
【0034】
本明細書において酸価(mgKOH/g)は、試料1g(樹脂の場合は固形分)に含まれる酸基のモル量と同じモル量に相当する水酸化カリウムのmg数で表したものである。ここで水酸化カリウムの分子量は56.1とする。
【0035】
架橋型樹脂組成物(II)
本発明において架橋型樹脂組成物(II)は、本発明の水性樹脂組成物の塗膜形成成分として用いられるものであり、上記フッ素化樹脂(I)以外の樹脂であって、塗膜形成時に架橋反応が進行することで架橋塗膜を形成することが可能な樹脂組成物である。
【0036】
また、架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分としては、重量平均分子量が50000を超えるものであることが望ましく、さらに100000以上の重量平均分子量を有するものであることが形成塗膜の耐水性等の塗膜物性の点から好ましく、また、水に溶解又は分散可能なものであることが望ましい。
【0037】
上記架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分が分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、該樹脂成分は、フッ素化樹脂(I)との相溶性、水性樹脂組成物の貯蔵安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、特にカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール等のアミン類;アンモニア等などを例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明において上記架橋型樹脂組成物(II)としては、上記フッ素化樹脂(I)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有するか又は自己架橋型であることを特徴とする。
【0039】
本発明において上記架橋型樹脂組成物(II)が上記フッ素化樹脂(I)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有する場合において、上記フッ素化樹脂(I)と架橋型樹脂組成物(II)との間における架橋系の具体例としては、特に制限されるものではないが、水酸基/イソシアネート基架橋系、水酸基/メラミン架橋系、カルボキシル基/オキサゾリン基架橋系、カルボキシル基/カルボジイミド基架橋系、カルボキシル基/金属イオン架橋系等を挙げることができる。
【0040】
上記架橋系を形成しうる架橋性官能基は、フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)のいずれに有していてもよいが、塗膜形成時におけるフッ素化樹脂(I)の表面移行性、親水性発現、耐汚染性などの点から、フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分が水酸基及び/又はカルボキシル基を有し、架橋型樹脂組成物(II)が、水酸基又はカルボキシル基と反応可能な官能基を有する架橋剤を含有していることが望ましい。
【0041】
フッ素化樹脂(I)と架橋型樹脂組成物(II)が上記構成を有していることにより、フッ素化樹脂(I)が架橋型樹脂組成物(II)と共に架橋することで架橋塗膜に取り込まれることが可能となり、塗膜の親水性を長期に渡って発揮することができる。
【0042】
本発明において、上記架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分としての水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂としては、その樹脂種に特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0043】
本発明においては、上記樹脂成分が、フッ素化樹脂(I)との相溶性や耐候性等の点からアクリル系樹脂であることが望ましい。
【0044】
かかる水酸基及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系樹脂としては、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び/又はカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー並びに必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーを共重合することにより得ることができる。
【0045】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート;アリルアルコール等の水酸基含有アリル化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
上記水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂は、必要に応じてその他重合性不飽和モノマーも共重合成分として含有することができる。
【0048】
かかるその他重合性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状の炭化水素基を有する直鎖又は分岐状(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物等;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
上記モノマーの重合方法としては、従来公知の方法で行うことができ、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等によって製造できるが、乳化重合法により行うことが塗膜物性及び最終的に得られる組成物の有機溶剤の含有量を少なくできる点から望ましい。
【0050】
また、必要に応じて重合性不飽和モノマーを含む混合物を、水性媒体中に平均粒子径が500nm以下になるように微分散させ、得られるモノマー乳化物を重合させる方法等も適用可能である。
【0051】
本明細書において、平均粒子径は、試料を脱イオン水にて希釈し、「SALD−3100」(商品名、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置)を用いて、常温(20℃程度)にして測定したときの値とする。
【0052】
また、重合時に使用する水性媒体としては、水、又は水を主体としてこれに水溶性有機溶媒などの有機溶媒を混合してなる水−有機溶媒混合溶液などを挙げることができる。
【0053】
上記モノマーの重合において乳化剤を使用する場合は、従来公知の乳化剤を使用することができ、適用可能な乳化剤の例としては、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤などを挙げることができる。
【0054】
アニオン性乳化剤としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム類、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;等);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物;等);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物;等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
両イオン性界面活性剤としては、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類等を挙げることができる。
【0057】
上記乳化剤としては、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基を分子中に含有する反応性乳化剤なども使用可能である。
【0058】
上記乳化剤を使用する場合その使用量としては、上記アクリル系樹脂の製造に使用される全重合性不飽和モノマーに対して0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内とすることができる。
【0059】
本発明において、フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分が水酸基を有する場合において、この水酸基の反応相手となる架橋剤としては、ポリイソシアネート、メラミン樹脂を例示することができる。
【0060】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらジイソシアネートのイソシアヌレート体やビュウレット体等の類似の化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
また、上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリイソシアネート化合物にノニオン性乳化剤を反応させてなる水分散性ポリイソシアネートであってもよい。上記ポリイソシアネート化合物と反応させうる該ノニオン性乳化剤としては、ノニオン性乳化剤として前述したものと同様のものを使用することができ、特に、イソシアネート基と反応する活性水素基を有し且つオキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を有するものが好適である。
【0062】
また、上記水分散性ポリイソシアネートは、必要に応じて、一端に活性水素基を有し且つ他端にアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を反応させて変性したものであってもよい。該シランカップリング剤としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
そのような水分散性ポリイソシアネートの市販品としては、例えば、「バイヒジュール3100」、「VPLS2319」(商品名、以上Bayer社製)、「スタフィロイドWD−220」(商品名、三井武田ケミカル社製)等を挙げることができる。
【0064】
ポリイソシアネート化合物の配合量は、フッソ化樹脂(I)及び上記水酸基含有樹脂に含まれる水酸基1モルに対して、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0065】
メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドと必要に応じて水及び/又はアルコールを反応させて得られる、分子中にアルキルエーテル基及び/又はイミノ基を有する樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;該メチロールメラミンのアルキルエーテル化合物;メチロールメラミン又はそのアルキルエーテル化合物の縮合物などが挙げられる。メチロールメラミンのアルキルエーテル化物におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。
【0066】
メラミン樹脂の配合量は、フッ素化樹脂(I)及び上記水酸基含有樹脂に含まれる水酸基1モルに対して、メラミン樹脂中のアルキルエーテル基及び/又はイミノ基の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0067】
フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)がカルボキシル基を有する場合において、このカルボキシル基の反応相手となる架橋剤となりうる化合物としては、ポリオキサゾリン化合物、ポリカルボジイミド化合物、金属化合物等を挙げることができる。
【0068】
ポリオキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、2,2'−p−フェニレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2'−テトラメチレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2'−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)の如き低分子量のポリ(1,3−オキサゾリン)化合物;さらには、2−ビニル1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリンの如き1,3−オキサゾリン基含有ビニル系単量体の単独重合体もしくはこれと共重合可能な各種のビニル系単量体とを共重合せしめて得られる、1,3−オキサゾリン基を含有するビニル系重合体が挙げられる。
【0069】
市販品としては、日本触媒化学工業(株)製の「エポクロスK−1000」、「エポクロスK−1020E」、「エポクロスK−1030E」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」、「WS−500」などが挙げられる。
【0070】
上記ポリオキサゾリン化合物の配合量は、フッ素化樹脂(I)及び上記カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基1モルに対して、ポリオキサゾリン化合物中のオキサゾリン基の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0071】
ポリカルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、特に限定されるものではないが、水溶性又は水分散性であることが望ましく、カルボジイミド当量が100〜800、好ましくは200〜600の範囲内にある化合物であることが望ましい。
【0072】
その具体例としては、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、(以上商品名、日清紡株式会社製)等の市販品を挙げることができる。これらは単独でも2種以上の混合物でも使用できる。
ポリカルボジイミド化合物の配合量は、フッ素化樹脂(I)及び上記カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基1モルに対して、カルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の量が通常0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0073】
上記金属化合物としては、カルボキシル基と金属架橋し得る金属イオンを水性媒体中で生成可能な金属化合物であって、Ba、Fe、Ca、Mg,Cu、Al、Zn及びMnなどの二価以上の金属を基にして作られた化合物を挙げることができ、その具体例としては、MgCO、CaCO、FeCO、BaCO、ZnCO、CuCO及びAl(COなどの金属炭酸化物類;Mg(OH)、Ca(OH)、Zn(OH)、Fe(OH)、Fe(OH)、Ba(OH)、及びAl(OH)などの金属水酸化物;ZnO、MgO、Al及びCaOなどの金属酸化物;アセチルアセトン亜鉛等の有機金属錯体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
上記金属化合物の配合量は、フッ素化樹脂(I)及び上記カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基1モルに対して、金属化合物中の金属イオンの量が通常0.01〜2モル、好ましくは0.05〜1モルの範囲内となるように調整されることが望ましい。
【0075】
本発明において、上記架橋型樹脂組成物(II)は、自己架橋型樹脂を含む自己架橋型であってもよい。これにより、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の親水性を低下させることなく耐水性を向上させる効果がある。自己架橋型樹脂の具体例としては、例えば、不飽和脂肪酸基及び/又はアルコキシシリル基を有する樹脂を挙げることができる。
【0076】
自己架橋型樹脂としての樹脂種としては特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0077】
本発明において、自己架橋型樹脂としては、フッ素化樹脂(I)との相溶性や耐候性等の点から自己架橋型アクリル系樹脂であることが望ましい。
【0078】
かかる自己架橋型アクリル系樹脂としては、例えば、不飽和脂肪酸基含有重合性不飽和モノマー及び/又はアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーと、必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーを共重合することにより得られる樹脂を挙げることができる。
【0079】
不飽和脂肪酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0080】
上記不飽和脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。
【0081】
アルコキシシリル基を含有する重合性不飽和モノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0082】
上記自己架橋型アクリル樹脂は、上記不飽和脂肪酸基含有重合性不飽和モノマー又はアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーなどの自己架橋性基含有重合性不飽和モノマーに、必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーも共重合することができる。かかるその他の重合性不飽和モノマーとしては、上記水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂の説明で挙げたその他重合性不飽和モノマーと同様の化合物を例示することができる。
【0083】
上記モノマーの重合方法としては、従来公知の方法で行うことができ、例えば溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等によって製造できるが、乳化重合法により行うことが塗膜物性及び最終的に得られる組成物の有機溶剤の含有量を少なくできる点から望ましい。また、必要に応じて重合性不飽和モノマーを含む混合物を、水性媒体中に平均粒子径が500nm以下になるように微分散させ、得られるモノマー乳化物を重合させる方法等も適用可能である。
【0084】
上記自己架橋型樹脂の製造において使用可能な乳化剤としては、上記例示の化合物等を挙げることができる。
【0085】
本発明の水性樹脂組成物は、上記フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)を含有してなり、形成塗膜表層の親水性及び耐水性のバランスからフッ素化樹脂(I)の固形分含有量が、架橋型樹脂組成物(II)固形分に対して0を超えて且つ20質量%未満の範囲内、特に0.01〜8質量%の範囲内にあることが望ましい。
【0086】
また、上記水性樹脂組成物は、架橋型樹脂組成物(II)の架橋が進行するための硬化触媒等を必要に応じて含有することができる。
【0087】
水性塗料組成物
本発明は上記の通り得られる水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物である。
【0088】
本発明の水性塗料組成物は、クリヤー塗料としても顔料を含む着色塗料としても適用することができ、顔料を含む場合は、従来公知の顔料を制限なく使用できる。その具体例としては着色顔料としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料などを挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、顔料として、公知の遮熱性顔料を必要に応じて使用してもよい。遮熱性顔料の具体例としては、平均粒子径が300〜2000nmの範囲内の白色顔料、ペリレン系黒色顔料等を挙げることができる。
【0090】
本発明において、顔料を使用する場合、その使用量は、顔料体積濃度が1〜50%の範囲内、好ましくは2〜30%の範囲内に調整されることが、耐汚染性、塗膜表面光沢、仕上がり性、塗膜強度などの点から望ましい。
【0091】
本明細書において顔料体積濃度は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占めるその顔料分の体積割合である。本明細書において、顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は「塗料原料便覧第6版」(社団法人日本塗料工業会)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
上記本発明の水性塗料組成物は、増粘剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤等の塗料用添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0092】
本発明は、被塗面に、上記水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法である。
【0093】
上記本発明の水性塗料組成物が適用される被塗面としては、新しい基材面や旧塗膜面に適用することができ、該基材としては、特に制限されるものではなく、例えば、コンクリート、モルタル、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、コンクリートブロック、木材、石材等の無機基材;プラスチック等の有機基材;鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属基材等の基材が挙げられ、また、旧塗膜としては、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂などの塗膜が挙げられる。これらの被塗面には、水性又は溶剤型の下塗り材を塗布してもよく、必要に応じて、該下塗り材を塗布した後、上記水性塗料組成物を上塗り材として塗布することができる。
【0094】
本発明の水性塗料組成物は、従来公知の手法で塗装することができる。
【0095】
塗装方法としてはローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどの公知の塗装器具が使用できる。塗布量としては、0.1〜0.5kg/m2程度が適当であり、形成塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれかを採用することができる。
【0096】
また、本発明方法においては、上記水性塗料組成物を塗装する前に中塗り塗装をしてもよい。この場合、中塗り塗料が上記水性塗料組成物からフッ素化樹脂(I)を除いた組成物であると、下塗り塗膜/中塗り塗膜との界面、中塗り塗膜/上塗り塗膜との間の付着性を向上させることができ、望ましい。
【0097】
上記中塗り塗料の塗装方法としてはローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどの公知の塗装器具が使用できる。塗布量としては、0.1〜0.5kg/m2程度が適当であり、形成塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥、強制乾燥、常温乾燥のいずれかを採用することができる。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0099】
フッ素化樹脂溶液の製造
製造例1
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル70部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した後、四つ口フラスコ内液の温度を110℃に保ったまま下記に示す単量体、溶媒及び重合開始剤の混合物を滴下ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後1.5時間110℃に保ち、その後、追加の重合開始剤0.5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル10部に溶解させた開始剤溶液を1.5時間かけて一定速度で滴下し、さらに3時間110℃に保ち、撹拌を続け、フッ素化樹脂溶液を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は約4,200であった。また、不揮発分含有率は43%、酸価は78mgKOH/gであった。
CH=CHCOOCHCH 20部
アクリル酸 10部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 70部
tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート 1.5部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 50部。
【0100】
水性塗料組成物の製造
実施例1〜14及び比較例1〜8
表1記載の成分配合により水性塗料組成物を製造した。
【0101】
【表1】

【0102】
(注1)エマルションA:
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に、下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと残りの開始剤水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 430部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 10部
「ニューコール707SF」 66部。
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、脱イオン水で固形分が40%となるように調整し、エマルション(A)を得た。エマルション(A)の平均粒子径は175nm、pHは8.2であった。
(注2)エマルションB:「WAP−548」(商品名、亜細亜工業株式会社製、アクリルポリオールエマルション、水酸基価24mgKOH/g、固形分40%)
(注3)エマルションC:「サンモールEW−102」(商品名、三洋化成社製、アルコキシシリル基含有エマルション、固形分40%)
(注4)エマルションD:
容器に下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間攪拌し、予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を、高圧エネルギーを加えて流体同士を衝突させる高圧乳化装置にて100MPaで高圧処理することにより、分散粒子の平均粒子径が190nmのモノマー乳化物を得た。
モノマー乳化物組成
脂肪酸変性モノマー(*) 30.15部
スチレン 12部
i−ブチルメタクリレート 7.85部
2−エチルヘキシルアクリレート 15部
メタクリル酸 2部
シクロヘキシルメタクリレート 30部
ダイアセトンアクリルアミド 3部
「Newcol707SF」 10部
脱イオン水 85部
上記モノマー乳化物546部をフラスコへ移し、脱イオン水95部にて希釈した。攪拌しながら85℃まで昇温させ、過硫酸アンモニウム1部を脱イオン水64.7部に溶解させた開始剤水溶液をフラスコに投入し、該温度を保持しながら3時間攪拌した。さらに、過硫酸アンモニウム0.25部を脱イオン水16.2部に溶解させた開始剤水溶液をフラスコに投入し、該温度を保持しながら3時間攪拌した後40℃まで冷却した。ジメチルアミノエタノールでpHを8.0に調整し、固形分濃度40%、平均粒子径が185nmのエマルションDを得た。
(*)脂肪酸変性モノマー
反応容器にサフラワー油脂肪酸280部及びグリシジルメタクリレート142部を入れ、攪拌しながら反応温度140℃で5時間反応させ、脂肪酸変性モノマーを製造した。
(注5)ポリイソシアネート:「スタフィロイド WD−220」、商品名、三井武田ケミカル社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系水分散性ポリイソシアネート、
(注6)オキサゾリン:「エポクロスWS−500」、商品名、日本触媒社製、水溶性オキサゾリン、オキサゾリン当量220、有効成分40%、
(注7)カルボジイミド:「CARBODILITE E−01」:商品名、日清紡社製、水分散性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量425、有効成分40%、
(注8)メラミン:「サイメル327」:商品名、三井サイアナミド社製、メラミン樹脂、
(注9)二酸化チタン:「TITANIX JR−603」商品名、テイカ社製、
(注10)消泡剤:「SNデフォーマーA63」商品名、サンノプコ社製、
(注11)顔料分散剤:「ノプコサントK」商品名、サンノプコ社製、
(注12)増粘剤:2.5%ヒドロキシエチルセルロース。
【0103】
評価試験
上記で得られた水性塗料組成物を用いて6ミルドクターブレードで引き塗りし、実施例10以外のサンプルについては、25℃で7日間養生し、実施例10のサンプルについては電気乾燥機にて80℃で10分乾燥させた後140℃で30分焼き付けを行い、テストパネルとした。
(*1)表面粘着性
各テストパネルを指触し、タック感を評価した。
◎:全くタックなし、〇:タックが認められるが問題ないレベル、△:タックがはっきりと認められる、×:粘着質。
(*2)水接触角:各テストパネルの表面に脱イオン水を1滴(約15μl)滴下し、水滴の接触角を「コンタクトアングルメータCA−X150型」(商品名、協和化学(株)製)にて測定し、下記を基準として4段階で評価した。
◎55°未満、〇:55以上且つ70°未満、△:70以上且つ75°未満、×:75°以上。
(*3)親水持続性
試験塗膜を上水に浸漬・乾燥後接触角を測定し、上水浸漬前の接触角に対する変化率を算出し、下記を基準として4段階で評価した。
◎:99%以上、〇:95以上且つ99%未満、△:90以上且つ95%未満、×90%未満。
(*4)鏡面光沢度(60°グロス)
各テストパネルの鏡面光沢度(60°グロス)を測定し、下記を基準として4段階で評価した。
◎:80以上、〇:70以上且つ80未満、△:60以上で且つ70未満、×60未満。
(*5)屋外曝露ΔE(東京3ケ月)
各テストパネルを東京都内で3ケ月間屋外暴露を行ない、暴露後の汚れの付着した状態での塗膜表面の汚れ度合を暴露を行っていない塗装板とのE値の差(ΔE)で評価した。
◎:5未満、〇:5以上で且つ10未満、△:10以上で且つ15未満、×:15以上。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化樹脂(I)並びに架橋型樹脂組成物(II)を含有し、フッ素化樹脂(I)が、フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)を共重合成分として含有し、親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)が、フッ素化樹脂(I)の製造に使用される全重合性不飽和モノマー中30質量%を超えるものであって、架橋型樹脂組成物(II)が、フッ素化樹脂(I)に含まれる官能基と反応可能な官能基を有するか又は自己架橋型であることを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項2】
フッ素化樹脂(I)が、
フッ素含有重合性不飽和モノマー(a)1〜50質量%、
親水性基含有重合性不飽和モノマー(b)30〜95質量%及び
その他の重合性不飽和モノマー(c)0〜69質量%
を共重合成分として含有する請求項1記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
フッ素化樹脂(I)と架橋型樹脂組成物(II)との間における架橋系が、水酸基/イソシアネート基架橋系、水酸基/メラミン架橋系、カルボキシル基/オキサゾリン基架橋系、カルボキシル基/カルボジイミド基架橋系、カルボキシル基/金属イオン架橋系よりなる群から選ばれるものである請求項1または2に記載の水性樹脂組成物。
【請求項4】
フッ素化樹脂(I)及び架橋型樹脂組成物(II)に含まれる樹脂成分が、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項5】
架橋型樹脂組成物(II)が、自己架橋型樹脂を含有するものであり、自己架橋型樹脂が、不飽和脂肪酸基及び/又はアルコキシシリル基を有する請求項1または2に記載の水性樹脂組成物。
【請求項6】
フッ素化樹脂(I)の固形分含有量が、架橋型樹脂組成物(II)固形分に対して0を超えて且つ15質量%未満の範囲内である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性樹脂組成物を含む水性塗料組成物。
【請求項8】
顔料体積濃度が1〜50%の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
被塗面に、請求項7又は8に記載の水性塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項10】
被塗面に、中塗り塗料を塗装し、該中塗り塗面上に請求項7または8に記載の水性塗料組成物を塗装する方法であって、中塗り塗料が請求項7または8に記載の水性塗料組成物からフッ素化樹脂(I)を除いた組成物であることを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2007−297490(P2007−297490A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125931(P2006−125931)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】