説明

水性樹脂組成物及び金属材料

【課題】水性樹脂組成物及び該水性樹脂組成物を金属基材に塗布してなる金属材料に関し、錆の発生を抑制する耐食性を有しつつ親水性を維持する性能に優れた水性樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂(A)によって耐食性を保ちつつ、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)のオキシエチレン基によって親水性を維持、ブロックイソシアネート化合物(C)で硬化する水を含有してなる水性樹脂組成物、この水性樹脂組成物を金属基材に塗布し水が取り除かれ硬化した硬化物によって耐食性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物及び該水性樹脂組成物を金属基材に塗布してなる金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水性樹脂組成物としては、例えば、空調機や冷蔵庫などの熱交換器の金属基材に塗布されて用いられるものが知られている。具体的には、例えば熱交換器用アルミニウム基材に塗布されて用いられ熱交換器用アルミニウムフィンを構成するものが知られている。
【0003】
この種の水性樹脂組成物としては、アルミニウムフィンにおけるカビ等の発生を抑制すべく抗菌剤及びポリウレタン樹脂を含んでなる水性樹脂組成物、及び、アルミニウムフィンの表面に発生した結露水を円滑に流れさせることによって結露水を除去しフィンの通風抵抗を低くすべく、ポリビニルアルコールなどの親水性化合物を含んでなる水性樹脂組成物がそれぞれ提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のごとく抗菌剤及びポリウレタン樹脂を含んでなる水性樹脂組成物は、フィンにおけるカビ等の発生を抑制し得るものの、ポリウレタン樹脂を含むことから親水性が十分でなく、フィン表面に生じた結露水を流れにくくさせ、フィンの通風抵抗を高いものとし得るという問題がある。
また、特許文献1記載のごとく親水性化合物を含んでなる水性樹脂組成物は、親水性化合物の水との親和性があることから、該水性樹脂組成物が塗布されてなるアルミニウムフィンにおいて錆が発生しやすいという問題がある。
【0005】
これに対して、特許文献1においては、抗菌剤及びポリウレタン樹脂を含んでなる水性樹脂組成物をアルミニウム基材に塗布した後、さらに親水性化合物を含んでなる水性樹脂組成物を塗布してアルミニウムフィンを製造することが提案されているが、斯かるアルミニウムフィンは、フィン製造時の作業が繁雑になるという問題がある。
また、斯かるアルミニウムフィンであっても、親水性化合物を含んでなる水性樹脂組成物が表面側にあり、親水性化合物が結露水に溶解して取り除かれやすく、フィン表面の親水性が経時的に低下し得ることから、フィン表面に生じた結露水が時間経過に伴って円滑に流れにくくなりフィンの通風抵抗が経時的に上昇しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−036588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、錆の発生を抑制する耐食性を有しつつ親水性を維持する性能に優れた水性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)および水を含有していることを特徴とする。
【0009】
上記構成からなる水性樹脂組成物によれば、該水性樹脂組成物から水が取り除かれ硬化した硬化物において、ポリウレタン樹脂(A)によって耐食性を保ちつつも、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)のオキシエチレン基によって親水性が維持される。しかも、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)の水酸基とブロックイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基とが反応して前記ポリウレタン樹脂(A)とともに硬化物となることにより、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)が水に溶解して硬化物から取り除かれることが抑制される。従って、本発明に係る水性樹脂組成物は、錆の発生を抑制する耐食性を有しつつ親水性を維持する性能に優れる。
【0010】
また、本発明に係る水性樹脂組成物においては、前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)との重量比が、(A)/(B)/(C)=30〜80/10〜50/5〜30であることが好ましい。前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)との重量比が、(A)/(B)/(C)=30〜80/10〜50/5〜30であることにより、錆の発生を抑制する耐食性を有しつつ親水性を維持する性能により優れるという利点がある。
【0011】
本発明に係る金属材料は、前記水性樹脂組成物を金属基材に塗布してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の水性樹脂組成物は、錆の発生を抑制する耐食性を有しつつ親水性を維持する性能に優れているという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水性樹脂組成物の実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態の水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)および水を含有している。
該水性樹脂組成物においては、ポリウレタン樹脂(A)、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、及びブロックイソシアネート化合物(C)の合計が占める割合が特に限定されるものではないが、通常、10〜50重量%である。
【0015】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、少なくともポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られるものである。また、必要に応じて、分子内に親水性基を有する親水性基含有化合物、又は鎖伸長剤などの化合物をさらに反応させることにより得られる。
【0016】
前記ポリオール化合物としては、分子量400以下の低分子量ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、又は炭化水素系ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0017】
前記低分子量ポリオールは、分子量400以下のものであり、前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、又はトリメチロールプロパンなどが挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0018】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記低分子量ポリオールと多価カルボン酸とを反応させてなる水酸基末端エステル化縮合物が挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、又はヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0019】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAなどの前記低分子量ポリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、又はショ糖などにアルキレンオキサイドを付加重合したものが挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0020】
前記ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油に水素付加した水添ひまし油、ひまし油脂肪酸又はこれに水素付加した水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールなどが挙げられる。また、ひまし油と他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、従来公知のものが挙げられ、該ポリカーボネートポリオールは、例えば、前記低分子量ポリオールとジフェニルカーボネートとの反応により、又は、前記低分子量ポリオールとホスゲンとの反応により得られる。
【0022】
前記炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0023】
前記ポリオール化合物としては、耐食性に優れることから、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが好ましく、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応させてなるポリエステルポリオール、又は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0024】
前記イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、又は芳香脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0025】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0027】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
また、前記イソシアネート化合物としては、上記のポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、ビューレット化イソシアネート等の変性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などが挙げられる。
【0030】
前記イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記イソシアネート化合物としては、樹脂の変色を抑制できるという点で、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0032】
前記ポリウレタン樹脂(A)としては、水性樹脂組成物の水中における分散安定性をより高めるという点で、分子内に親水性基を有する親水性基含有化合物が反応されてなる親水性ポリウレタン樹脂が好ましい。
該親水性ポリウレタン樹脂としては、分子内にイオン性基を有するイオン性基含有化合物が反応されてなるイオン性基含有ポリウレタン樹脂、分子内にポリオキシエチレン基などの非イオン性親水基を有する非イオン性親水基含有化合物が反応されてなる非イオン性ポリウレタン樹脂が挙げられ、なかでもイオン性基含有ポリウレタン樹脂が好ましい。
該イオン性基含有ポリウレタン樹脂としては、分子内にカルボン酸塩やスルホン酸塩などのアニオン性基を有するアニオン性基含有化合物が反応されてなるアニオン性ポリウレタン樹脂(A1)、分子内に4級化アンモニウム塩などのカチオン性基を有するカチオン性基含有化合物が反応されてなるカチオン性ポリウレタン樹脂(A2)が挙げられる。なかでも、アニオン性ポリウレタン樹脂(A1)が好ましい。
なお、前記アニオン性ポリウレタン樹脂(A1)と前記非イオン性ポリウレタン樹脂(A3)とは、組み合わされて用いられ得る。また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(A2)と前記非イオン性ポリウレタン樹脂(A3)とは、組み合わされて用いられ得る。
【0033】
前記イオン性基含有化合物のうちの前記アニオン性基含有化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、乳酸およびグリシンなどのカルボキシル基含有化合物、タウリンなどのスルホン酸基含有化合物、カルボキシル基やスルホン酸基を含有する化合物を原料とするポリエステルポリオールなどが挙げられる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
前記アニオン性基含有化合物が反応されてなるアニオン性ポリウレタン樹脂は、水酸化ナトリウムなどの無機塩基や、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどの3級アミン化合物で中和することができる。
【0034】
前記イオン性基含有化合物のうちの前記カチオン性基含有化合物としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。
前記カチオン性基含有化合物が反応されてなるカチオン性ポリウレタン樹脂は、塩酸および硫酸などの無機酸、ギ酸および酢酸などの有機カルボン酸などの酸で中和することができる。また、塩化メチルおよび臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸などのジアルキル硫酸などの四級化剤で四級化することができる。
【0035】
前記非イオン性親水基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールなどのポリオキシエチレン基含有ポリオールが挙げられる。また、ポリオキシエチレンモノオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノオールなどのポリオキシエチレン基含有モノオールが挙げられる。
【0036】
前記鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミンが挙げられる。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂(A)としては、前記ブロックイソシアネート化合物(C)と反応することにより、水が取り除かれて硬化した硬化物の特性がより優れたものになり得るという点で、水酸基、第一級アミノ基、第二級アミノ基などの活性水素基を有するポリウレタン樹脂が好ましい。また、該活性水素基を有しイオン性基含有化合物が反応されてなる活性水素基含有イオン性ポリウレタン樹脂がより好ましく、該活性水素基を有しアニオン性基含有化合物が反応されてなる活性水素基含有アニオン性ポリウレタン樹脂がさらに好ましい。
【0038】
前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)は、ポリオキシエチレン基と分子中に少なくとも1つの水酸基とを有する化合物である。好ましくは、非イオン性であって分子中にポリオキシエチレン基と少なくとも1つの水酸基とを有する水酸基含有非イオン性化合物である。
【0039】
前記水性樹脂組成物に、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)が含まれていることにより、水性樹脂組成物から水が取り除かれて硬化した硬化物に親水性を付与することができる。
【0040】
前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)としては、好ましくは、前記低分子量ポリオールにエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを付加重合したオキシエチレン基を有するポリエーテルポリオール化合物;メタノール、エタノール、メトキシエタノールなどのモノアルコールにエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを付加重合したオキシエチレン基を有するポリエーテルモノオール化合物が挙げられる。
なかでも、水性樹脂組成物が硬化した硬化物の親水性をより優れたものにし得る点で、オキシエチレン基を有するポリエーテルモノオール化合物が好ましい。
また、親水性により優れるという点で、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)におけるオキシエチレン基の含有量は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
また、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)の数平均分子量は、2500〜6000であることが好ましい。
【0041】
前記ブロックイソシアネート化合物(C)は、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤と反応させたものであって、加熱することによりイソシアネート基を再生するものである。
【0042】
前記水性樹脂組成物にブロックイソシアネート化合物(C)が含まれていることにより、組成物中の水が除去され加熱されると、少なくとも前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)とブロックイソシアネート化合物(C)とが反応し前記ポリウレタン樹脂(A)とともに硬化物となる。
【0043】
前記ブロックイソシアネート化合物(C)に含まれるイソシアネート化合物としては、上述したイソシアネート化合物、又は、該イソシアネート化合物と上述したポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0044】
前記ブロックイソシアネート化合物(C)に含まれるイソシアネート化合物としては、前記ブロックイソシアネート化合物(C)の水分散性をより高めるという点で、上述したイソシアネート化合物と上述したポリオール化合物と上述した親水性基含有化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが好ましい。
好ましくは、ブロックイソシアネート化合物(C)に含まれるイソシアネート化合物は、上述したイソシアネート化合物と上述したポリオール化合物と上述したイオン性基含有化合物とが反応されてなるイオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーであり、より好ましくは、上述したイソシアネート化合物と上述したポリオール化合物と上述したアニオン性基含有化合物とが反応されてなるアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーである。
【0045】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの調製に用いられるイソシアネート化合物としては、前記芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)がより好ましい。
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの調製に用いられるポリオール化合物としては、前記ポリエーテルポリオールが好ましく、ビスフェノールAにアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールがより好ましい。
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの調製に用いられるアニオン性基含有化合物としては、前記カルボキシル基含有化合物が好ましく、ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0046】
前記ブロック剤としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール等のフェノール系ブロック剤、カプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム、プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系ブロック剤、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系ブロック剤、ジシクロヘキシルアミン、3,5−ジメチルピラゾール等のアミン系ブロック剤が挙げられる。
【0047】
前記アニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーがブロック剤と反応されてなるブロックイソシアネート化合物(C)は、水酸化ナトリウムなどの無機塩基や、トリエチルアミンやジメチルアミノエタノールなどの3級アミン化合物で中和することができる。
【0048】
前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)との重量比は、(30〜80)/(10〜50)/(5〜30)であることが好ましく、(40〜70)/(15〜45)/(10〜20)であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、耐食性と親水性をより長期にわたって維持することができる。
【0049】
なお、本実施形態の水性樹脂組成物は、(B)成分以外の親水性付与剤、非イオン性界面活性剤などの界面活性剤、レベリンク剤、抗菌剤、抗カビ剤などの添加剤を含み得る。これら添加剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0050】
本実施形態の水性樹脂組成物は、従来公知の一般的な方法によって製造できる。
【0051】
即ち、前記水性樹脂組成物におけるポリウレタン樹脂(A)、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)は、それぞれ従来公知の一般的な方法によって、例えば有機溶剤の存在下で合成することができる。また、前記ポリウレタン樹脂(A)、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、前記ブロックイソシアネート化合物(C)としては、それぞれ市販されているものを用いることができる。
【0052】
なお、前記ポリウレタン樹脂(A)、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、又は前記ブロックイソシアネート化合物(C)は、あらかじめ水に分散させた水性分散体の態様で得ることができ、それぞれの水性分散体を混合することにより水性樹脂組成物を製造することができる。
【0053】
即ち、前記水性樹脂組成物は、例えば、前記ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体と、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)の水性分散体とを同時に混合して製造することができる。また、前記ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体と前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)とを混合した混合物と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)の水性分散体とを使用前に混合することにより製造することもできる。
【0054】
次に、本発明の金属材料の一実施形態について説明する。
【0055】
本実施形態の金属材料は、前記水性樹脂組成物を金属基材に塗布してなるものである。好ましくは、前記水性樹脂組成物を金属基材に塗布し加熱又は乾燥することにより金属基材上に塗膜が形成されてなるものである。
【0056】
前記金属基材としては、特に限定されるものではなく、鉄基材、銅基材、アルミニウム基材、アルミニウム合金基材、ステンレス基材、又はこれら基材にメッキしたメッキ基材等が挙げられる。
【0057】
前記水性樹脂組成物を金属基材に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、ハケ塗り、ローラーコート、スプレーコート、グラビアコート、リバースロールコート、エアナイフコート、バーコート、カーテンロールコート、ディップコート、ロッドコート、ドクターブレードコート等を採用することができる。
【0058】
金属基材に塗布された水性樹脂組成物を加熱する方法としては、具体的には、例えば、80〜300℃で2秒〜1時間加熱する方法を採用することができる。また、金属基材に塗布された水性樹脂組成物を乾燥する方法としては、そのまま静置する方法を採用することができる。加熱及び乾燥は、同時におこなうこともできる。
【0059】
前記水性樹脂組成物が乾燥された後に金属基材上に形成された塗膜の厚さは、特に限定されるものではなく、通常、0.5μm〜10.0μmである。
【0060】
本実施形態の水性樹脂組成物および金属材料は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の水性樹脂組成物および金属材料に限定されるものではない。
また、一般の水性樹脂組成物および金属材料において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0062】
水性樹脂組成物の製造に際し、以下に示す原料を用いた。
[原料]
ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体
下記(A−1)及び(A−2)
オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)
下記(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(b−1)、(b−2)
ブロックイソシアネート化合物(C)の水性分散体
下記(C−1)
【0063】
<ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体>
(合成例1)
ポリウレタン樹脂(A−1)の水性分散体の合成
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、下記の原料を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量1.5%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
・1,4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオール
商品名「ニッポラン4010」(日本ポリウレタン工業社製 Mw=2,000)
200重量部
・ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(ポリエーテルポリオール)
商品名「ポリエーテルBPX−11」(ADEKA社製 Mw=360)
300重量部
・トリメチロールプロパン(低分子量ポリオール) 10重量部
・ジメチロールプロピオン酸(イオン性基含有化合物) 55重量部
・ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(イソシアネート化合物) 289重量部
・メチルエチルケトン 800重量部
このメチルエチルケトン溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを30重量部加えて中和した後、ホモジナイザーで撹拌しながら水 2700重量部を徐々に加えて乳化分散させた。
その後、エチレンジアミン8重量部を水100gに溶解したものを添加し、1時間撹拌した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、ポリウレタン樹脂(A−1)を30重量%含有する水性分散体を得た。
【0064】
(合成例2)
ポリウレタン樹脂(A−2)の水性分散体の合成
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、下記の原料を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量3.0%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
・1,4−ブタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルポリオール
商品名「ニッポラン4009」(日本ポリウレタン工業社製 Mw=1,000)
200重量部
・ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(ポリエーテルポリオール)
商品名「ポリエーテルBPX−11」(ADEKA社製 Mw=360)
400重量部
・トリメチロールプロパン(低分子量ポリオール) 10重量部
・ジメチロールプロピオン酸(イオン性基含有化合物) 40重量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネート化合物) 240重量部
・メチルエチルケトン 800重量部
このメチルエチルケトン溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを30重量部加えて中和した後、ホモジナイザーで撹拌しながら水 2700重量部を徐々に加えて乳化分散させた。
その後、エチレンジアミン16重量部を水100gに溶解したものを添加し、1時間撹拌した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、ポリウレタン樹脂(A−2)を30重量%含有する水性分散体を得た。
【0065】
<オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)>
B−1:メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量2500)
B−2:メトキシポリエチレングリコール(数平均分子量4000)
B−3:ポリエチレングリコール(数平均分子量6000)
B−4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
(数平均分子量3400、オキシエチレン基含有量80重量%)
<オキシエチレン基を有さない親水性化合物(b)>
b−1:ポリビニルアルコール(ケン化度99.85%、重合度1700)
b−2:ポリアクリルアミド(数平均分子量25000)
【0066】
<ブロックイソシアネート化合物(C)の水性分散体>
(合成例3)
ブロックイソシアネート化合物(C−1)の合成
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、下記の原料を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量10%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
・ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(ポリエーテルポリオール)
商品名「ニューポールBPE−40」(三洋化成社製 Mw=約400)
200重量部
・ジメチロールプロピオン酸(イオン性基含有化合物) 70重量部
・ポリメリックMDI
商品名「PAPI−27」(ダウ・ケミカル日本社製) 550重量部
・メチルエチルケトン 800重量部
このメチルエチルケトン溶液を40℃まで冷却し、イソシアネート基と等モルのメチルエチルケトンオキシム180重量部をブロック剤として反応させた後、苛性ソーダ20重量部加えて中和し、その後ホモジナイザーで撹拌しながら水 2700重量部を徐々に加えて乳化分散させた。
これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、ブロックイソシアネート化合物(C−1)を30重量%含有する水性分散体を得た。
【0067】
(実施例1〜9、比較例1〜7)
(A)〜(C)、及び(b)の各成分を表1および表2で示した重量比(固形分)となるように混合し、実施例1〜9および比較例1〜7の水性樹脂組成物を調製した。これを、あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂したアルミニウム板(A1050P:太佑機材社製)に、乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、200℃で5秒間焼き付けることにより試験片を作製した。
【0068】
(比較例8)
あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂したアルミニウム板(A1050P:太佑機材社製)に、ポリウレタン樹脂(A−1)を乾燥膜厚0.7μmとなるように塗布し、200℃で5秒間焼き付けた。続いて、(B)成分および(C)成分を表2に記載の割合で混合した混合物を乾燥膜厚0.3μmとなるように塗布し、200℃で5秒間焼き付けることにより試験片を作製した。
【0069】
各実施例及び各比較例で作製した試験片の評価は下記の方法で行った。
【0070】
<耐食性試験>
試験片に5重量%食塩水を35℃で噴霧し、168時間経過後の白錆の程度を評価した。下記の基準で評価した結果を表1及び表2に示す。
○:発生なし, ×:発生あり
【0071】
<親水性試験>
作製した試験片を用い、25℃で3時間静置した試験片と、流水中に12時間浸漬した後、25℃で3時間乾燥した試験片とについて、それぞれの表面に水滴を滴下し、水接触角を測定した。測定結果を下記の評価基準とあわせて表1及び表2に示す。
◎:40°未満, ○:40°以上50°未満, ×:50°以上
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)、オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)、ブロックイソシアネート化合物(C)および水を含有していることを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(A)と、前記オキシエチレン基を有する水酸基含有化合物(B)と、前記ブロックイソシアネート化合物(C)との重量比が、(A)/(B)/(C)=30〜80/10〜50/5〜30である請求項1に記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性樹脂組成物を金属基材に塗布してなることを特徴とする金属材料。

【公開番号】特開2011−98997(P2011−98997A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252715(P2009−252715)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】