説明

水性毛髪洗浄剤

【課題】傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制される水性毛髪洗浄剤を提供する。
【解決手段】成分(A):アニオン界面活性剤、成分(B):特定の構成を有するカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、成分(C):炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテルおよび水を含有する、水性毛髪洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性毛髪洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーリング剤やパーマ剤の普及によりヘアダメージが定常化した近年においては、毛髪洗浄剤には泡立ちや洗浄力等の洗浄剤としての基本的な機能に加えて、コンディショニング効果を付与する機能が重要になってきている。
一般に、毛髪に滑らかさを与えるために、アニオン界面活性剤とシリコーン類を組み合わせて用いたり(特許文献1)、アニオン界面活性剤とカチオン化セルロースを組み合わせて用いることがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−148123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術においては、毛髪に滑らかさが与えられる一方、泡立ち、泡立て時の指の動かし易さ、泡切れおよびすすぎ時の残留感の点で、改善の余地があった。特に、化学処理や熱処理によって損傷した毛髪では、泡立て時の指の動かし易さが満足いくものでないと、洗髪の際に手や指に毛髪が引っかかり、毛髪へのダメージを与える原因となる。また、滑らかさを付与するあまり、泡切れが低下し、すすぎ時に残留感が残り、ヌルつきが取れない場合があった。
【0005】
本発明は、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制される水性毛髪洗浄剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
次の成分(A)、(B)、(C)および水を含有し:
(A)アニオン界面活性剤、
(B)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、
(C)炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテル、
前記成分(B)が、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0である、水性毛髪洗浄剤が提供される。
【0007】
【化1】

【0008】
(上記一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表される前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nは前記アンヒドログルコースの平均重合度を示し、n=50〜5000である。)
【0009】
【化2】

【0010】
(上記一般式(2)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは前記一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0または正の整数である。ただし、R1、R2およびR3のすべてにおけるpおよびqがいずれも0とはならない。また、pおよびqがいずれも0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよびqがいずれも0でなくpおよび/またはqが2以上である場合、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
【0011】
【化3】

【0012】
(上記一般式(3)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制される水性毛髪洗浄剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における水性毛髪洗浄剤は、以下の成分(A)〜(C)および水を含む:
(A)アニオン界面活性剤、
(B)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、
(C)炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテル。
以下、成分(A)〜(C)のそれぞれについて、具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
(成分(A))
成分(A)のアニオン界面活性剤の具体例として、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩型アニオン界面活性剤;
スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤;および
高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸またはその塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩が好ましく、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、下記一般式(11)で表されるものが好ましい。
【0016】
11O(CH2CH2O)uSO3M (11)
(上記一般式(11)中、R11は炭素数10〜18のアルキル基またはアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸を示し、uは質量平均で0.5〜5の数を示す。)
【0017】
これらの中でも特に、すばやい泡立ちと良好な泡の感触を両立する観点から上記一般式(11)中のR11が炭素数12〜14のアルキル基が好ましい。また、エチレンオキシドの組成物中の平均付加モル数は、0.5〜5であるのが好ましく、0.9〜4であるのがより好ましく、1〜3であるのがさらに好ましい。さらに、Mがアンモニウムまたはナトリウムであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0018】
成分(A)の含有量は、泡立ちをさらに向上させる観点から、水性毛髪洗浄剤全体に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上とすることがさらに好ましい。また、泡切れの向上およびすすぎ時の残留感の抑制の観点から、水性毛髪洗浄剤全体に対する成分(A)の含有量は、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
(成分(B))
成分(B)のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「C−HPC」とも呼ぶ。)は、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有する。
【0020】
【化4】

【0021】
上記一般式(1)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に後述する一般式(2)で表される置換基であり、R1、R2およびR3は、同一であっても、異なっていてもよい。また、n個のR1、n個のR2およびn個のR3は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0022】
また、上記一般式(1)において、アンヒドログルコースの平均重合度nは、泡立て時に指を動かし易くする観点から、50以上であり、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。また、すすぎ時の残留感を抑制するとともに上記一般式(1)に示した化合物の製造容易性を向上させる観点から、平均重合度nは、5000以下であり、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、上記一般式(1)における平均重合度nは、50〜5000であり、100〜3000が好ましく、200〜2000がより好ましく、300〜1500がさらに好ましい。
【0023】
なお、本明細書において、上記一般式(1)における平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には後述する実施例に記載の方法により算出される。
【0024】
次に、一般式(2)について説明する。
上記一般式(1)におけるR1、R2およびR3は、下記一般式(2)に示すように、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する。
【0025】
【化5】

【0026】
上記一般式(2)において、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が後述する一般式(3)で表されるカチオン性基を示す。上記一般式(1)中に、複数の上記一般式(2)で表される置換基が存在する場合、該置換基間においてY1およびY2はそれぞれ異なっていてもよい。POはプロピレンオキシ基を示す。
【0027】
上記一般式(2)において、pは上記一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、0または正の整数である。製造容易性をさらに高める観点からは、pが0または1であることが好ましい。
【0028】
また、上記一般式(2)において、qは上記一般式(2)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、0または正の整数である。製造容易性をさらに高める観点からは、qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましい。
【0029】
なお、上記一般式(2)において、R1、R2およびR3のすべてにおけるpおよびqがいずれも0とはならない。すなわち、n個のR1、n個のR2およびn個のR3のうち、少なくとも1つは、上記一般式(2)中のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、上記一般式(2)中のqが0ではない。
【0030】
また、上記一般式(1)中に、複数の上記一般式(2)で表される置換基が存在する場合、該置換基間においてpおよびqの値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0031】
1つの置換基中に含まれるpとqの合計は、製造の容易さの観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。さらに具体的には、上記一般式(1)中のR1、R2およびR3のいずれについても、上記一般式(2)において、pおよびqが0または1であることが好ましい。
【0032】
なお、pおよびqがいずれも0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わないが、製造の容易さの観点から、上記一般式(2)に記載した順序であることが好ましい。
また、pおよびqがいずれも0でなく、かつpおよび/またはqが2以上である場合は、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。
【0033】
次に、一般式(3)について説明する。
上記一般式(2)において、Y1またはY2は、下記一般式(3)で表されるカチオン性基である。
【0034】
【化6】

【0035】
上記一般式(3)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。これらのうち、C−HPCの水溶性を高める観点から、上記一般式(2)中のY1およびY2のいずれについても、上記一般式(3)において、R4、R5およびR6が、それぞれ独立にメチル基またはエチル基であることが好ましく、いずれもメチル基であることがさらに好ましい。
【0036】
また、上記一般式(3)において、X-はアンモニウム基の対イオンであるアニオン性基を示す。
-はアニオン性基であれば特に限定されない。その具体例としてはアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、アルキル炭酸イオン、およびハロゲン化物イオン等が挙げられる。これらの中では、製造の容易さの観点から、ハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンが挙げられるが、C−HPCの水溶性および化学的安定性の観点から、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0037】
次に、成分(B)の置換度について説明する。
成分(B)において、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)は0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度(m)は0.1〜4.0である。
【0038】
一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、本発明の水性毛髪洗浄剤による洗髪時に、傷んだ毛髪でも、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さおよび泡切れの良さが得られ、すすぎ時の残留感を抑制する観点、および、製造の容易さの観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)は、2.9以下であり、2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。また本発明の水性毛髪洗浄剤による洗髪時の泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さ、泡切れの良さ、およびすすぎ時の残留感を抑制する観点から、0.01以上であり、0.02以上が好ましい。これらの観点を総合すると、0.01〜2.9であり、0.01〜2.0が好ましく、0.02〜1.0がより好ましく、0.02〜0.5がさらに好ましい。
本発明において、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPCの分子中に存在するカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数をいう。
【0039】
また、本発明の水性毛髪洗浄剤による洗髪時に、傷んだ毛髪でも、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さおよび泡切れの良さが得られ、すすぎ時の残留感を抑制する観点、および、製造の容易さの観点から、プロピレンオキシ基の置換度(m)は、4.0以下であり、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.1以下がよりさらに好ましい。また、本発明の水性毛髪洗浄剤による洗髪時に、傷んだ毛髪でも、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さおよび泡切れの良さが得られ、すすぎ時の残留感を抑制する観点から、mは、0.1以上であり、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、mは、0.1〜4.0であり、0.2〜3.0が好ましく、0.5〜2.5がより好ましく、0.8〜2.1がさらに好ましい。
本発明においてプロピレンオキシ基の置換度(m)とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPC分子中に存在するプロピレンオキシ基の平均モル数をいう。
【0040】
カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度との和(k+m)は、3.2以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましく、水性毛髪洗浄剤による洗髪時に、傷んだ毛髪でも、手や指が動かし易い軽い泡質が得られ、洗髪時のヌルつきが抑制され、洗髪後の泡切れに優れる観点から、0.11以上であり、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。これらの観点を総合すると、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とプロピレンオキシ基の置換度との和(k+m)は、0.11〜3.2が好ましく、0.2〜3.0がより好ましく、0.3〜2.5がさらに好ましい。
【0041】
また、上記一般式(1)におけるR1、R2およびR3の構成の組み合わせとして、たとえば、R1については、上記一般式(2)におけるp=1、q=0であり、Y1およびY2の一方が水素原子であり、他方が上記一般式(3)で表されるカチオン性基であって、上記一般式(3)中のR、RおよびRがいずれもメチル基であり、X-が塩化物イオンであって;
2およびR3については、上記一般式(2)におけるp=0、q=0または1である構成が挙げられる。
【0042】
成分(B)のC−HPCの含有量は、泡の安定性を高めて豊かな泡立ちを得るとともに、泡立て時の指の動かし易さをさらに確実に得る観点から、水性毛髪洗浄剤全体に対して、下限は、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上が特に好ましい。また、泡切れの向上、すすぎ時の残留感の抑制の観点から、水性毛髪洗浄剤全体に対して、上限は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。これらの観点を総合すると、C−HPCの含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.02〜5質量%がより好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましく、0.1〜1質量%が特に好ましい。
【0043】
また、本発明における水性毛髪洗浄剤中の成分(A)に対する前記成分(B)の質量割合(成分(B)/成分(A))は、泡の安定性を高めて豊かな泡立ちを得るとともに、泡立て時の指の動かし易さを得る観点から、たとえば0.0005以上とすることができ、0.001以上とすることが好ましく、0.006以上とすることがさらに好ましい。また、泡切れの向上、すすぎ時の残留感抑感の観点から、本発明における水性毛髪洗浄剤中、成分(B)/成分(A)は、たとえば0.5以下とすることができ、0.1以下とすることが好ましく、0.05以下とすることがさらに好ましい。
【0044】
次に、成分(B)のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法を説明する。
C−HPCは、たとえば、以下の(1)〜(3)の製造方法により得ることができる。
(1)セルロースと大量の水および大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合し、カチオン化剤および酸化プロピレンと反応させる方法、
(2)塩化リチウムを含むジメシルアセトアミドを溶媒として用い、さらにアミン類やアルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、カチオン化剤および酸化プロピレンと反応させる方法、または
(3)上記(1)や(2)のように、過剰の水や溶媒を用いず、粉末、ペレット状またはチップ状のセルロースとカチオン化剤、および酸化プロピレンを塩基共存下に反応させる方法。
【0045】
上記(1)〜(3)の製造方法において、カチオン化剤との反応、および酸化プロピレンとの反応はどちらを先におこなってもよく、同時におこなってもよい。
これらの製造方法の中では、製造の容易さの観点から、上記(3)の製造方法が好ましい。
【0046】
上記(3)の製造方法は、好ましくは以下の第一および第二工程を有する。また、本発明において、成分(B)のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースは、好ましくは以下の第一および第二工程を含む製造方法により得られるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースである。
第一工程:パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこない、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこないながらパルプとカチオン化剤の反応をおこなってカチオン化セルロースを得る工程、
第二工程:上記第一工程で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程。
この製造方法により、分子量低下が少なく、水溶性の高いカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースをさらに高い生産性で効率的に製造することができる。
以下、上記(3)の製造方法について、具体的に説明する。
【0047】
(原料セルロース)
C−HPCを製造するためのセルロースは一般に結晶性部位の反応性が低いため、原料セルロースとしては、(i)結晶性を低下させた低結晶性の粉末セルロースや、(ii)結晶性の高いパルプが好適に用いられる。
以下、上記(i)および(ii)を用いる製造方法を順に説明する。
【0048】
((i)低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造)
本製造方法で用いられる低結晶性の粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプから調製することができる。低結晶性粉末セルロースの調製方法は特に限定されない。たとえば、特開昭62−236801号公報、特開2003−64184号公報、特開2004−331918号公報等に記載の方法を挙げることができる。これらの中では、メカノケミカル処理して得られた低結晶性または非結晶性粉末セルロース(以下、総称して「低結晶性粉末セルロース」ともいう。)を使用することがより好ましい。
【0049】
ここで、低結晶性粉末セルロースの「低結晶性」とは、セルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を意味する。具体的には下記式(31)による結晶化度が好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である粉末セルロースが好ましく、特に該結晶化度がほぼ0%である完全非晶化セルロースを用いることが最も好ましい。
結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (31)
(上記式(31)中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度であり、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す)
【0050】
メカノケミカル処理による低結晶性粉末セルロースの製造方法としては、たとえばシート状パルプを粗粉砕して得られるチップ状パルプを粉砕機で処理することによる方法が挙げられる。粉砕機による処理の前にチップ状パルプを押し出し機で処理しておくこともできる。
この方法に用いられる押出機としては、単軸または二軸の押出機、好ましくは二軸押出機が挙げられるが、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものが好ましい。
押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
【0051】
粉砕機としては高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミルまたはボールレースミル等の竪型ローラーミル;
転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミルまたは遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル;
塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミルまたはアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル;
高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル;
乳鉢、または石臼等が挙げられる。これらの中では、結晶化度低下の効率の観点、および生産性の観点から、容器駆動式媒体ミルまたは媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルおよび振動チューブミル等の振動ミルがさらに好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルが特に好ましい。
【0052】
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。このようにすれば、原料パルプと媒体との接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させる効果を顕著に得ることができる。
【0053】
ここで、充填率とは、粉砕機の攪拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。
ボールミルの場合、媒体として用いるボールの材質には特に制限はなく、たとえば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、効率的にセルロースを低結晶化させる観点から、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは1〜50mmである。
また、セルロースの結晶化度を効率的に低下する観点から、粉砕機の処理時間は、好ましくは5分〜72時間、より好ましくは10分〜30時間である。また、粉砕機処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑える観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは5〜200℃の範囲で処理をおこなうことが望ましい。
【0054】
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
ロッドの外径としては、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは5〜50mmの範囲である。ロッドの長さとしては、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるとともにさらに効率的にセルロースを低結晶化させることができる。
ロッドを充填した振動ミルの処理時間、処理温度に特に制限はないが、前述のボールミルと同様の処理時間、処理温度でおこなうことができる。
【0055】
上記の方法によれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能である。
低結晶性粉末セルロースの平均重合度は、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは300〜1500、さらに好ましくは、350〜1350である。
また、低結晶性粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性の良い状態が保てればよく特に限定されないが、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、粉末セルロースの取り扱い性向上の観点から、低結晶性粉末セルロースの平均粒径は、たとえば20μm以上であるが、25μm以上が好ましい。しかしながら、凝集等による微量な粗大粒子の混入を避けるため、反応には必要に応じて300〜1000μm程度の目開きの篩を用いた篩下品を用いるのが好ましい。
【0056】
(低結晶性粉末セルロースのカチオン化)
以上により得られた低結晶性粉末セルロースに、塩基存在下、グリシジルトリアルキルアンモニウム塩を反応させてカチオン化し、カチオン化セルロースを製造する。
カチオン化剤として用いるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド等が挙げられるが、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが入手性の観点から好ましい。
グリシジルトリアルキルアンモニウム塩の添加量は、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さ、泡切れの良さ、すすぎ時の残留感を抑制する観点から、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.01〜3.0倍モルであり、0.02〜2倍モルが好ましく、0.04〜1.0倍モルがより好ましい。
【0057】
カチオン化時に存在させる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられるが、入手性、汎用性、経済性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化バリウムがより好ましい。塩基の添加量は、セルロースの種類等により異なるが、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対して、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.1〜0.5倍モルが好ましく、0.2〜0.3倍モルがより好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。このようにすれば、セルロースの過度の凝集を抑制し、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましい。
反応温度は、通常10〜85℃であり、好ましくは15〜80℃である。
【0058】
(カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化)
以上により得られたカチオン化セルロースを酸化プロピレンと反応させてヒドロキシプロピル化することによりC−HPCを製造することができる。
ここで、酸化プロピレンの使用量は、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さ、泡切れの良さ、すすぎ時の残留感を抑制する観点から、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.01〜5.0倍モルであり、0.1〜3.0倍モルが好ましい。
【0059】
ヒドロキシプロピル化の触媒としては、塩基または酸を用いることができる。
このうち、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;
水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;および
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類が挙げられる。
また、酸触媒としては、ランタニドトリフラート等のルイス酸触媒等が挙げられる。
これらの中では、原料セルロースの重合度の低下を抑制する観点から、塩基触媒が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがさらに好ましい。これらの触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
触媒の使用量は、特に制限はないが、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり、通常0.05〜1.0倍モルであり、0.1〜0.8倍モルが好ましく、0.2〜0.5倍モルがより好ましい。
【0061】
酸化プロピレンの添加方法に特に制限はなく、たとえば(c)カチオン化セルロースに触媒を添加した後に酸化プロピレンを滴下する方法、(d)カチオン化セルロースに酸化プロピレンを一括で添加し、その後に触媒を徐々に加えて反応させる方法が挙げられるが、上記(c)法がより好ましい。
反応系内の水分含有量は、原料として用いたセルロースに対し100質量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、カチオン化セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80質量%以下が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。
【0062】
本発明においては、カチオン化セルロース、触媒および酸化プロピレンを流動性のある粉末状態で反応させることが好ましいが、カチオン化セルロース粉末と触媒とを予めミキサー等の混合機や振とう機、または混合ミル等で必要に応じて均一に混合分散させた後に、酸化プロピレンを添加して反応させることも可能である。
【0063】
ヒドロキシプロピル化の反応温度は、0〜150℃が好ましいが、酸化プロピレン同士が重合するのを避け、かつ急激に反応が起こるのを避ける観点から、10〜100℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。反応は常圧でおこなうことができる。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下でおこなうのが好ましい。
【0064】
反応終了後は、未反応酸化プロピレンを除去した後、必要に応じて、中和処理、精製処理等をおこなった後、乾燥することにより、本発明のC−HPCを得ることができる。
中和処理は、常法によりおこなうことができる。たとえば触媒として塩基触媒を用いた場合は、酢酸等の酸液、酸と不活性有機溶媒との混合溶液または酸水溶液を添加することによりおこなうことができる。酸の種類は特に限定されず、装置の腐食等を考慮して適宜選択すればよい。精製処理は、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等の溶剤および/または水による洗浄または透析膜によりおこなうことができる。
【0065】
以上、(i)低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造方法を説明した。この製造方法におけるカチオン化、ヒドロキシプロピル化の反応の順序は、原料セルロースのヒドロキシプロピル化をおこなった後にカチオン化をおこなってもよいし、同時におこなってもよいが、カチオン化エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基の置換度の制御の観点から、原料セルロースにカチオン化をおこなった後、ヒドロキシプロピル化をおこなうことが好ましい。
また、(i)低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造方法中、カチオン化反応工程およびヒドロキシプロピル化反応工程においては、主鎖となるセルロース骨格の解裂は実質上生じないため、得られるC−HPCの平均重合度は、低結晶化処理後の粉末セルロースの平均重合度で近似することができる。
【0066】
((ii)結晶性の高いパルプを使用するC−HPCの製造)
(パルプのカチオン化)
本製造方法においては、原料セルロースとして前述の低結晶性粉末セルロースを使用せずに、結晶性の高いパルプを使用する。この場合、パルプの反応性を改善するため、カチオン化の際に低結晶化をおこなうことが好ましい。
具体的には、パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこない、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこないながらパルプとカチオン化剤の反応をおこなうこと、またはパルプに塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこない、その後カチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこないながらパルプとカチオン化剤の反応をおこなうことで、カチオン化セルロースを得ることができる。
このカチオン化を経て得られるC−HPCの水への溶解性の観点から、セルロースのカチオン化においては、初めにパルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこない、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこないながらパルプとカチオン化剤の反応をおこなうことが好ましい。
【0067】
原料セルロースとして用いるパルプの形状は、製造装置内への導入に支障が出ない限り特に限定されないが、操作上の観点からシート状パルプやシート状パルプを裁断または粗粉砕して得られるペレット状またはチップ状パルプや、微粉砕して得られる粉末状セルロースを用いることが好ましい。
原料セルロースとして用いるパルプの結晶化度に限定はない。しかしながら、セルロースの結晶化度低下処理には、通常セルロース鎖の切断に伴う分子量の低下が伴うため、より高分子量のカチオン化セルロースを得るためには、分子量低下の少ない、より結晶性が高いセルロースを用いることが好ましい。また、逆に上記式(31)で示される結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロースも入手が困難である。よって、重合度および入手性の観点から、原料セルロースの上記式(31)で示される結晶化度は10〜95%が好ましく、30〜90%がより好ましく、60〜80%が更に好ましい。
【0068】
原料セルロースの平均重合度にも限定はないが、より高分子量のカチオン化セルロースを得るためには、より重合度の大きい原料セルロースを用いることが好ましい。この観点から、原料セルロースの平均重合度は、好ましくは100〜2000であり、より好ましくは250〜1900、さらに好ましくは、350〜1800である。
【0069】
カチオン化剤の種類並びに量、塩基の種類、粉砕機の種類、低結晶化の方法並びに条件等の好ましい様態は、低結晶化のための粉砕機の処理時間および塩基の量を除き、前述の(i)低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造の項で前述したものに準ずる。
低結晶化のための粉砕機の処理時間については、1分〜5時間が好ましく、2分〜3時間がより好ましく、5分〜2時間が特に好ましい。
また、塩基の量は、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モルあたり0.01当量以上であれば、セルロースとカチオン化剤の反応は速やかに進行し、1当量以下であれば、セルロースとカチオン化剤の反応の収率は高い。この観点から、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モル当たり0.05〜0.8当量が好ましく、0.1〜0.7当量がより好ましく、0.2〜0.6当量が好ましい。
【0070】
また、カチオン化剤および塩基添加後の低結晶化の際にカチオン化は進行するが、反応が不十分である場合、好ましくは10〜100℃、より好ましくは30〜80℃で熟成をおこなうことにより、反応を進行させることができる。
熟成時の水分量、およびその好ましい様態は、原料として低結晶性粉末セルロースの替わりにパルプを用いている点を除き、前述の低結晶性粉末セルロースのカチオン化の場合に準ずる。
また、反応中のセルロース鎖の解裂による分子量の低下を避ける観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下でおこなうのが好ましい。
【0071】
(カチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化)
(ii)結晶性の高いパルプを使用するC−HPCの製造におけるカチオン化セルロースのヒドロキシプロピル化で使用する酸化プロピレン量、触媒、反応条件、反応終了後の処理およびそれらの好ましい様態は、前述した(i)低結晶性の粉末セルロースを使用するC−HPCの製造におけるヒドロキシプロピル化にて前述したものに準ずる。
【0072】
本発明で用いるC−HPCの製造方法としては、泡立ちの良さ、泡立て時の指の動かし易さ、泡切れの良さ、すすぎ時の残留感を抑制する観点から、カチオン化の際に低結晶化をおこない、得られたカチオン化セルロースに対してヒドロキシプロピル化をおこなう、(ii)結晶性の高いパルプを使用するC−HPCの製造方法が好ましい。
【0073】
(成分(C))
成分(C)は、炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテルである。このうち、炭素数8〜10のアルキル基または炭素数8〜10のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテルであることが好ましい。
【0074】
モノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテルが有する炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基としては、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基等が挙げられ、炭素数8〜10の直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましく、このうち2−エチルヘキシル基、イソデシル基が好ましい。
これらの成分(C)は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
成分(C)の含有量は、泡立ちを向上させる観点から、水性毛髪洗浄剤全体に対してたとえば0.01質量%以上とすることができ、0.05質量%以上とすることが好ましく、0.1質量%とすることがさらに好ましい。また、すすぎ時の毛髪のきしみ感を低減する観点から、成分(C)の含有量は水性毛髪洗浄剤全体に対してたとえば5質量%以下とすることができ、4質量%以下とすることが好ましく、3.5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0076】
また、本発明における水性毛髪洗浄剤中の成分(C)に対する成分(B)の質量割合(成分(B)/成分(C))は、泡の安定性を向上させる観点から、0.002以上とすることができ、0.004以上とすることが好ましく、0.01以上とすることがさらに好ましい。また、泡立ちの良さと泡切れ、およびすすぎ時の残留感の抑制とのバランスの観点から、本発明における水性毛髪洗浄剤中、成分(B)/成分(C)は、たとえば50以下とすることができ、5以下とすることが好ましく、2以下とすることがさらに好ましい。
【0077】
本発明における水性毛髪洗浄剤において、成分(A)〜(C)の配合は、成分(A)の含有量が5〜18質量%、成分(B)の含有量が0.02〜5質量%、成分(C)の含有量が0.05〜4質量%であることが好ましい。
また、水の含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤中50質量%以上、95質量%以下が好ましく、60質量%以上、90質量%以下がより好ましい。
【0078】
次に、本発明における水性毛髪洗浄剤の製造方法を説明する。
本発明における水性毛髪洗浄剤の製造方法に特に制限はないが、たとえば、上記第一および第二工程を含む方法により成分(B)のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程と、上記工程で得られた成分(B)、成分(A)、成分(C)および水を混合する工程と、を含む。
【0079】
本発明の水性毛髪洗浄剤においては、以上の成分(A)〜(C)を組み合わせて用いることにより、傷んだ毛髪でも、手や指が動かし易い豊かな泡量と軽い泡質が得られるとともに、泡切れがよく、すすぎ時の残留感が抑制される。この理由は必ずしも明らかではないが、すすぎ時に成分(A)と成分(B)がコアセルベーションすることにより複合体が毛髪表面に析出し、すすぎ後も成分(B)が残留できるようになると推察される。そして、毛髪表面の成分(B)と成分(A)、成分(C)が洗髪に適した泡質をつくるため、ダメージ毛に適用した場合でも、良好な泡立ち性、手や指の動かし易さ、すすぎ時の残留感の抑制効果が得られると考える。
【0080】
本発明における水性毛髪洗浄剤は、以上の成分(A)〜(C)および水以外の成分を含んでもよい。
たとえば、本発明における水性毛髪洗浄剤は、成分(B)以外のカチオン化ポリマーを含む構成とすることができる。成分(B)以外のカチオン化ポリマーとしては、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース誘導体;
カチオン性澱粉;
カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム等のカチオン化ガラクトマンナンおよびその誘導体;
ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体(米国サンドス社製、カルタレチン)等の共重合体、特開昭53−139734号公報に記載されているカチオン性ポリマー、特開昭60−36407号公報に記載されているカチオン性ポリマー等が挙げられる。
このうち、すすぎ時の毛髪のベタつきやきしみ感を低減する観点から、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガムおよびカチオン化ヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0081】
このうち、カチオン化ガラクトマンナンは、マンノースを構成単位とする主鎖としガラクトース単位を側鎖としたガラクトマンナンに、第4級窒素含有基を導入した水溶性カチオン化ポリマーである。ガラクトマンナンは、たとえばマメ科植物の種子の胚乳から得られる。ガラクトースとマンノースの比が1:1のものがフェヌグリークガム、1:2のものがグアーガム、1:3のものがタラガム、1:4のものがローカストビーンガムである。
カチオン化ガラクトマンナンの市販品として、カチオン化フェヌグリークガムとしてはカチナールCF−100(東邦化学工業社製)が挙げられる。カチオン化グアーガムの市販品としては、ジャガーC−13S、ジャガーC−14S、ジャガーC−17等のジャガーシリーズ(ローディア社製、グアーヒドロキシプロピルトリアンモニウムクロリド)等が挙げられる。また、カチオン化タラガムの市販品としては、カチナールCTR−100、カチナールCTR−200(以上、東邦化学工業社製)等が挙げられる。また、カチオン化ローカストビーンガムの市販品としては、カチナールCLB−100(東邦化学工業社製、ローカストビーンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)等が挙げられる。
【0082】
また、成分(B)以外のカチオン化ポリマーとして用いることができる他の市販品として、マーコート550(NALCO社製、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウム塩の共重合体;CTFA名ポリクォータニウム−7)、ルビクァットFC370(BASF社製、1−ビニル−2−ピロリドンと1−ビニル−3−メチルイミダゾリウム塩の共重合体;CTFA名ポリクォータニウム−16)、ガフクァット755N(ISP社製、1−ビニル−2−ピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体;CTFA名ポリクォータニウム−11)、UcareポリマーJRおよび同LRシリーズ(アマーコール社製、トリメチルアンモニウム置換エポキシドとヒドロキシエチルセルロースとの反応物の塩;CTFA名ポリクォータニウム−10)、ポイズC−60H、ポイズC−80M、ポイズC−150L(以上、花王社製、トリメチルアンモニウム置換エポキシドとヒドロキシエチルセルロースとの反応物の塩;CTFA名ポリクォータニウム−10)等が挙げられる。
【0083】
成分(B)以外のカチオン化ポリマーは、2種以上を併用してもよく、すすぎ時の毛髪のきしみ感を低減する観点から、その含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤全体に対してたとえば0.01〜3質量%とすることができ、0.02〜2質量%とすることが好ましく、0.05〜1質量%とすることがさらに好ましい。
【0084】
本発明における水性毛髪洗浄剤には、さらに洗浄性能を向上させるため、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤を含有させてもよい。
【0085】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド類、モノアルケニルグリセリルエーテル類等が挙げられる。
【0086】
これらのうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン(C8〜C20)脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類、アルキルグリコシド類が好ましい。
【0087】
また、脂肪酸アルカノールアミドも好適であって、モノアルカノールアミド、ジアルカノールアミドのいずれでもよく、炭素数8〜18、特に炭素数10〜16のアシル基を有するものが好ましい。また、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を有するものが好ましく、たとえばオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド等が挙げられる。
【0088】
両性界面活性剤としては、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。このうち、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等がより好ましく、脂肪酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。脂肪酸アミドプロピルベタインは、炭素数8〜18、特に炭素数10〜16のアシル基を有するものが好ましく、特にラウリン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が好ましい。
また、他の両性界面活性剤として、ラウリルヒドロキシスルタイン等のスルタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0089】
これらの非イオン界面活性剤または両性界面活性剤は、水性毛髪洗浄剤中に単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の水性毛髪洗浄剤を水性液状洗浄剤の形態とする場合には、成分(A)とともに、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アルカノールアミドまたはモノアルキルグリセリルエーテルを用いると、起泡力がより良好となるだけでなく、適度な液性が得られるため、特に好ましい。
【0090】
非イオン界面活性剤または両性界面活性剤の含有量は、良好な増泡効果が得られるという観点から、本発明における水性毛髪洗浄剤全体に対してたとえば0.01〜15質量%とすることができ、0.05〜8質量%とすることが好ましく、0.1〜6質量%とすることがさらに好ましい。
【0091】
本発明における水性毛髪洗浄剤には、乾燥後の仕上がり向上のため、さらに、カチオン界面活性剤またはシリコーン類をさらに配合することができる。
【0092】
カチオン界面活性剤としては、たとえば、(i)アルキルトリメチルアンモニウム塩、(ii)アルコキシトリメチルアンモニウム塩、(iii)ジアルキルジメチルアンモニウム塩、(iv)アルキルジメチルアミンおよびその塩、(v)アルコキシジメチルアミンおよびその塩、(vi)アルキルアミドジメチルアミンおよびその塩等が挙げられる。
【0093】
(i)アルキルトリメチルアンモニウム塩
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、たとえば下記一般式で表されるものが挙げられる。
22−N+(CH33-
(上記式中、R22は炭素数12〜22のアルキル基を示し、Z-は塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオンを示す。)
さらに具体的には、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0094】
(ii)アルコキシトリメチルアンモニウム塩
アルコキシトリメチルアンモニウム塩としては、たとえば下記一般式で表されるものが挙げられる。
23−O−R24−N+(CH33-
(上記式中、R23は炭素数12〜22のアルキル基を示し、R24はヒドロキシ基が置換していてもよいエチレン基またはプロピレン基を示し、Z-は上記と同じである。)
さらに具体的には、ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアロキシヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0095】
(iii)ジアルキルジメチルアンモニウム塩
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、たとえば下記一般式で表されるものが挙げられる。
(R252+(CH32-
(上記式中、R25はそれぞれ独立して炭素数12〜22のアルキル基またはベンジル基を示し、Z-は上記と同じである。)
さらに具体的には、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0096】
(iv)アルキルジメチルアミンおよびその塩
アルキルジメチルアミンおよびその塩としては、たとえば下記一般式で表されるものおよびその塩が挙げられる。
26−N(CH32
(上記式中、R26は炭素数12〜22のアルキル基を示す。)
さらに具体的には、ベヘニルジメチルアミンやステアリルジメチルアミンおよびそれらの有機酸塩が挙げられる。
【0097】
(v)アルコキシジメチルアミンおよびその塩
アルコキシジメチルアミンおよびその塩としては、たとえば下記一般式で表されるものおよびその塩が挙げられる。
27−O−R28−N(CH32
(上記式中、R27は炭素素数12〜22のアルキル基を示し、R28はエチレン基またはプロピレン基を示す。)
【0098】
(vi)アルキルアミドジメチルアミンおよびその塩
アルキルアミドジメチルアミンおよびその塩としては、たとえば下記一般式で表されるものおよびその塩が挙げられる。
29−C(=O)NH−R30−N(CH32
(上記式中、R29は炭素数11〜21のアルキル基を示し、R30はエチレン基またはプロピレン基を示す。)
【0099】
上記(i)〜(vi)以外のカチオン界面活性剤としてとしては、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム(アルカノイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムのエチル硫酸塩、アルカノイル基はラノリン由来)、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノエチルトリエチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルトリエチルアンモニウム、メチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、エチル硫酸イソアルカン酸(C14〜C20)アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、エチル硫酸イソアルカン酸(C18〜C22)アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、エチル硫酸イソステアリン酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、エチル硫酸イソノナン酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムおよびアルキルトリメチルアンモニウムサッカリンなどが挙げられる。
【0100】
カチオン界面活性剤は、2種以上を併用してもよく、洗髪時からすすぎ時までの滑らかさの点から、その含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤中の0.01〜10質量%が好ましく、さらには0.02〜6質量%、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0101】
シリコーン類としては、たとえば以下に示すものが挙げられる。
(I)ジメチルポリシロキサン
31(CH32SiO−[(CH32SiO]k−Si(CH3231
(上記式中、R31はそれぞれ独立してメチル基またはヒドロキシ基を示し、kは1〜20,000の数を示す。)
【0102】
ジメチルポリシロキサンの分散粒子の平均粒径は100μm未満が好ましく、さらに好ましくは50μm以下、特に4μm以下、さらに2μm以下であることが好ましい。また、平均粒径は、0.1μm以上であることが使用感やコンディショニング効果の点で好ましい。
【0103】
このようなジメチルポリシロキサンとしては、たとえば、上記式中のkが300〜6,500のジメチルポリシロキサン油を60質量%含み、平均粒径が0.8μmである東レ・ダウコーニング社製の「シリコーンCF2450」、またはkが300〜6,500のジメチルポリシロキサン油を50質量%含み、平均粒径が50μmである東レ・ダウコーニング社製の「シリコーンCF2460」、信越化学社製「KHE−1」として市販されているものを使用することができる。
【0104】
(II)アミノ変性シリコーン
各種のアミノ変性シリコーンが使用できるが、特に平均分子量が約3,000〜100,000の、アモジメチコーン(Amodimethicone)の名称でCTFA辞典(米国、Cosmetic Ingredient Dictionary)第3版中に記載されているものが好ましい。市販品としては、SM 8704C(東レ・ダウコーニング社製)、DC 929(ダウ・コーニング社製)、KT 1989(GE東芝シリコーン社製)、8500 Conditioning Agent、DOW CORNING TORAY SS-3588、DOW CORNING TORAY SILSTYLE 104(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0105】
(III)その他のシリコーン類
上記以外に、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0106】
これらシリコーン類は、2種以上を併用してもよく、洗髪時からすすぎ時までの滑らかさの点から、その含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤中の0.01〜10質量%が好ましく、さらには0.05〜5質量%、特に0.1〜3質量%が好ましい。
【0107】
本発明における水性毛髪洗浄剤は、さらにエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールジ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノアルキルエーテルまたはエチレングリコールジアルキルエーテルを含むパール化剤を含有していてもよい。
【0108】
エチレングリコールモノ脂肪酸エステルとしては、エチレングリコールモノステアリン酸エステル、エチレングリコールモノベヘニン酸エステルなど、エチレングリコールジ脂肪酸エステルとしては、エチレングリコールジステアリルエステル(後述する実施例(表3)においては「エチレングリコールジステアリル」と表記。)、エチレングリコールジベヘニルエステルなどが挙げられる。エチレングリコールモノアルキルエーテルとしてはエチレングリコールモノステアリルエーテルなどが挙げられる。また、エチレングリコールジアルキルエーテルとしてはエチレングリコールジステアリルエーテルなどが挙げられる。
【0109】
これらは2種以上を併用してもよく、またその含有量は、水性毛髪洗浄剤の保存安定性の向上および泡立て時、すすぎ時の滑らかさ向上の点から、本発明の水性毛髪洗浄剤中の0.1〜10質量%が好ましく、さらには0.2〜5質量%、特に0.5〜4質量%が好ましい。
【0110】
また、本発明の水性毛髪洗浄剤には、他のコンディショニング剤として、油剤を含有することができる。油剤としては、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素類;
ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボガド油、オリーブ油、ヒマワリ油、椿油等のグリセリド類;
ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;
セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、グリセリン、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール等のアルコール類;
パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2−エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル類;
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸類;
その他イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、高級アルコール類が好ましく、特にミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヒマワリ油、椿油が好ましい。
【0111】
これらの油剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができ、その含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤中の0.001〜2質量%が好ましく、さらには0.005〜1.5質量%、特に0.01〜1質量%が好ましい。
【0112】
本発明の水性毛髪洗浄剤には、粘度調整剤を含有させてもよく、粘度調整剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、エタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、粘土鉱物、塩類(塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、クエン酸ナトリウム等)などが挙げられ、中でもベンジルアルコール、エタノール、ポリプロピレングリコール、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムが好ましい。粘度調整剤は2種以上を併用してもよく、またその使用量は、泡量、泡質の点から、本発明の水性毛髪洗浄剤中の0.01〜5質量%が好ましく、さらには0.05〜4質量%、特に0.1〜3質量%が好ましい。
【0113】
本発明の水性毛髪洗浄剤においては、上記成分のほか、通常の水性毛髪洗浄剤に用いられる成分を目的に応じて適宜配合できる。このような任意成分としては、たとえば、抗フケ剤、ビタミン剤、殺菌剤、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸とその誘導体等の抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、ソルビトール、パンテノール等の保湿剤、染料、顔料等の着色剤、ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻または真珠から得られる蛋白質またはその加水分解物、蜂蜜、ローヤルゼリー、シルクから得られる蛋白質またはその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、アロエ抽出物、ハス抽出物、ザクロ抽出物、ノバラ抽出物、カモミラ抽出物、カンゾウ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等のエキス類、酸化チタン等の前述した成分以外のパール化剤、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シアバター、ローズ水、オレンジ油、ユーカリ油等が挙げられる。本発明の水性毛髪洗浄剤は、成分(A)〜(C)とこれら他の成分とを混合して水に溶解することで製造される。
【0114】
本発明の水性毛髪洗浄剤は、毛髪のツヤやまとまりを向上するとの観点より、毛髪に適用する際のpH(水で20質量倍希釈、25℃)が2〜5であるのが好ましく、3〜4.5がより好ましい。
【0115】
pH調整剤としては、ヒドロキシモノカルボン酸およびジカルボン酸から選ばれる。ヒドロキシモノカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、パントテン酸等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸等が挙げられる。成分(A)、(B)、(C)を併用することで、酸性での泡立ちを向上させる観点から、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸がより好ましい。
【0116】
上記カルボン酸は、2種以上を併用してもよい。上記カルボン酸の含有量は、本発明の水性毛髪洗浄剤中に0.01〜5質量%が好ましい。さらに0.1〜3質量%が好ましく、特に0.3〜2質量%が好ましい。
なお、上記ヒドロキシカルボン酸に加えて、安息香酸等の芳香族カルボン酸を用いることもできる。
また、他のpH調整剤として、これら有機酸と合わせて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化アンモニウム等の塩基を用いてもよい。
【0117】
本発明の水性毛髪洗浄剤の形態は、液状、ゲル状等適宜選択できるが、溶剤として水または低級アルコール、特に水を用いた液状のものが好ましい。
【0118】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0119】
以下の実施例および比較例において、特記しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。また、各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0120】
(1)パルプおよび粉末セルロースの水分含量の測定
パルプ、粉末セルロースの水分量は、赤外線水分計(ケット科学研究所社製、「FD−610」)を用いて測定した。測定温度120℃で、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
【0121】
(2)パルプおよび粉末セルロースの結晶化度の算出
リガク社製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から、前述の式(31)に基づいて算出した。
X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°
測定サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
X線のスキャンスピード:10°/min
得られた結晶化度が負の値をとった場合には、すべて結晶化度0%とした。
【0122】
(3)C−HPCのカチオン化エチレンオキシ基、およびプロピレンオキシ基の置換度の算出
後述する製造例で得られたC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られた精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記式(32)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (32)
【0123】
また、分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、ヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記式(33)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量(式量(OC36OH=75.09)(b(モル/g)を求めた。
b(モル/g)=ガスクロ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (33)
【0124】
以上により得られたaおよびbを下記式(34)および(35)に適用し、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)およびプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
a=k/(162+k×K+m×58) (34)
b=m/(162+k×K+m×58) (35)
(上記式(34)および(35)中、kおよびKは、それぞれ、カチオン化エチレンオキシ基の置換度および式量を示し、mはプロピレンオキシ基の置換度を示す。)
【0125】
(4)平均重合度の測定(銅アンモニア法)
(4−1)パルプおよび粉末セルロースの粘度平均重合度の測定
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、および25%アンモニア水を加えて標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、標線まで上記アンモニア水を満たした。空気の入らないように密封し、12時間、マグネチックスターラーで撹拌して溶解し、測定用溶液を調製した。添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
【0126】
(ii)粘度平均重合度の測定
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置した後、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により相対粘度ηrを求めた。
ηr=t/t0
次に、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を下記式により求めた。
ηsp/c=(η−1)/c
(上記式中、cはセルロース濃度(g/dL)である。)
さらに、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、下記式により粘度平均重合度(DP)を求めた。
DP=2000×[η]
【0127】
(4−2)C−HPCの粘度平均重合度の測定
(iii)測定溶液の調製
精秤したセルロースの替わりに精秤したC−HPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
【0128】
(iv)粘度平均重合度の測定
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(36)で定義する。
cell=u×162/(162+k×K+m×58) (36)
(式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−HPCの質量(g)を示し、k、K、mは、それぞれ上記式(34)および(35)と同じ意味である。)
【0129】
(製造例1)C−HPC(1)の製造
(1−1)チップ化工程
シート状木材パルプ(テンベック社製Biofloc HV10、平均重合度1508、結晶化度74%、水分含量7.6%)をシートペレタイザー(ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
【0130】
(1−2)カチオン化反応工程
上記工程(1−1)で得られたチップ状パルプ2100gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(阪本薬品工業社製、含水量20%、純度90%以上)(以下「GMAC」という。)1170g(セルロースのアンヒドログルコース単位(以下「AGU」という。)1モルあたり0.52モル相当量)をポリ袋中で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「FV−20」:容器全容積69L、ロッドとして、φ30mm、長さ600mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド114本、充填率71%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数60Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)をおこない、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
さらに、振動ミル内に粒状の水酸化ナトリウム284g(AGU1モルあたり0.6モル相当量)を投入した。同様の条件で120分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
【0131】
(1−3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(1−2)で得られたカチオン化セルロース170gを、還流管を取り付けた1Lニーダー(入江商会社製、PNV−1型)に仕込み、70℃に昇温し、酸化プロピレン51g(AGU1モルあたり2.0モル相当量、関東化学社製、特級試薬)を撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応をおこなった。
反応終了混合物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末220gを得た。この粗C−HPC粉末10.0gを採取して乳酸で中和した。プロピレンオキシ基およびカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(1)を得た。
以上の工程における製造条件を表1に示す。
【0132】
また、得られた精製C−HPC(1)の元素分析より、塩素元素含有量は3.80%であった。また、前述した「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」によるヒドロキシプロポキシ基含有量は、36.5%であった。得られた精製C−HPC(1)の平均重合度、カチオン化エチレンオキシ基の置換度およびプロピレンオキシ基の置換度を表1および表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
(製造例2)C−HPC(2)の製造
(2−1)チップ化工程
シート状木材パルプ(テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.0%)をシートペレタイザー(ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
【0136】
(2−2)カチオン化反応工程
上記工程(2−1)で得られたチップ状パルプ100gに、GMAC58.5g(AGU1モルあたり0.2モル相当量)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)をおこない、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
得られた粉状混合物に、48%水酸化ナトリウム水溶液10.3g(AGU 1モルあたり0.23モル相当量)を加えて乳鉢で混合した後、上記バッチ式振動ミルに投入した。同様の条件にて60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
【0137】
(2−3)ヒドロキシプロピル化反応工程
上記工程(2−2)で得られたカチオン化セルロース127gを、製造例1で用いた還流管を取り付けた1Lニーダーに仕込み、70℃に昇温し、酸化プロピレン45g(AGU 1モルあたり2.8モル相当量)を撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応をおこなって薄褐色の粗C−HPC粉末181.0gを得た。
この粗C−HPC粉末について、製造例1に準じて中和、精製、凍結乾燥を行い、精製C−HPC(2)を得た。得られた精製C−HPC(2)の平均重合度、カチオン化エチレンオキシ基の置換度およびプロピレンオキシ基の置換度を表1および表2に示した。
【0138】
(実施例1〜8および比較例1〜4)
表3に示す配合にて水性毛髪洗浄剤を調製し、後述する方法で評価した。評価結果を表3にあわせて示す。なお、pHは水で20質量倍希釈したものの25℃での値である。また、表3中、配合を示す数値の単位は質量%である。
【0139】
(水性毛髪洗浄剤の評価方法)
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ10g(長さ15〜20cm、平均直径80μm)の毛髪束を、パネラー5名が次の方法で処理しながら官能評価を行った。
【0140】
(1)泡立ちの速さ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その際、泡立ちの速さを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:泡立ちが速い
4:やや泡立ちが速い
3:普通と感じる
2:やや泡立ちが遅い
1:泡立ちが遅い
【0141】
(2)泡量の豊かさ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その際、泡量の豊かさを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:泡量が多い
4:泡量がやや多い
3:泡量が普通と感じる
2:泡量がやや少ない
1:泡量が少ない
【0142】
(3)泡質の軽さ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その際、泡質の軽さを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:泡質が軽い
4:泡質がやや軽い
3:泡質が普通と感じる
2:泡質がやや重たい
1:泡質が重たい
【0143】
(4)洗髪時の手指の動かし易さ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その際、洗髪時の手指の動かし易さを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:手指が動かし易い
4:手指がやや動かし易い
3:普通に動かせる
2:手指がやや動かしにくい
1:手指が動かしにくい
【0144】
(5)すすぎ時のヌルつきのなさ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その後、泡の付いた毛束を2L/minの流速の40℃のお湯で濯ぎ中のヌルつきのなさを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:ヌルつきを感じない
4:ヌルつきをあまり感じない
3:ヌルつきは普通に感じる
2:ヌルつきをやや感じる
1:ヌルつきを感じる
【0145】
(6)すすぎ時の泡切れの良さ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その後、泡の付いた毛束を2L/minの流速の40℃のお湯で濯ぎながら、泡切れの良さを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:泡切れが良い
4:泡切れがやや良い
3:泡切れが普通と感じる
2:泡切れがやや良くない
1:泡切れが良くない
【0146】
(7)すすぎ後の残留感のなさ
長さ25cm、幅5.5cm、重さ10gの人毛束を40℃の温水で軽く濯いだ後、余分な水分を取り去り、0.5gの水性毛髪洗浄剤を用いて約30秒間十分に泡立てた。その後、泡の付いた毛束を2L/minの流速の40℃のお湯で濯ぎながら、残留感のなさを以下の5段階基準で官能評価した。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
5:残留感を感じない
4:残留感をあまり感じない
3:普通と感じる
2:残留感をやや感じる
1:残留感を感じる
【0147】
【表3】

【0148】
*1 ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム:エチレンオキシド質量平均付加モル数1
*2 ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム:エチレンオキシド質量平均付加モル数2
*3 C−HPC(1):上記一般式(1)で示されるC−HPCにおいて、カチオン化エキレンオキシ基の置換度(k)が0.3、プロピレンオキシ基の置換度(m)が1.3(製造例1で得られたもの。表2記載。)
*4 C−HPC(2):上記一般式(1)で示されるC−HPCにおいて、カチオン化エキレンオキシ基の置換度(k)が0.3、プロピレンオキシ基の置換度(m)が1.0(製造例2で得られたもの。表2記載。)
*5 2−エチルヘキシルグリセリルエーテル:プロピレンの3量体をオキソ法により転換したアルコール由来のもの
*6 イソデシルグリセリルエーテル:プロピレンの3量体をオキソ法により転換したアルコール由来のもの
*7 HPC(ヒドロキシプロピルセルロース):原料名「HPC−M」(製造元:日本曹達社製)
*8 C−HEC(カチオン化ヒドロキシエチルセルロース):原料名「ポイズ C−80M 」(製造元:花王社製)
*9 カチオン化グアーガム:ジャガーC−13S(ローディア社製)
*10 ジメチルポリシロキサンエマルション:粘度(10000mm2/s)/(10mm2/s)=95/5の混合物、平均粒子径4.0μm、ジメチルポリシロキサン60質量%)
【0149】
(実施例9〜12)
以下に示す組成の水性毛髪洗浄剤を、常法により調製し評価した。なお、pHは各組成物を水で20質量倍希釈し、25℃で測定した値である。
【0150】
(実施例9)シャンプー(pH3.9)
(質量%)
ラウリルエーテル(1)硫酸アンモニウム 12.5%
(花王社製:エマール125A)
C−HPC(1)(製造例1) 0.3%
ラウリルヒドロキシスルタイン 1.7%
(花王社製:アンヒトール20HD)
ラウリン酸 0.4%
(花王社製:ルナックL−98)
リンゴ酸(50%溶液) 0.75%
イソデシルグリセリルエーテル 1.7%
エチレングリコールジステアリル 1.6%
カチオン化グアーガム 0.3%
(ローディア社製:ジャガーC−14S)
ジメチルポリシロキサン 0.5%
ポリプロピレン(7)グリコール(分子量420) 0.1%
(アデカ社製:アデカカーポールDL−30)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
安息香酸ナトリウム 0.1%
エタノール 0.3%
塩化ナトリウム 0.4%
ユーカリエキス 0.1%
カモミラエキス 0.05%
パンテノール 0.05%
シルクエキス 0.05%
アロエエキス 0.05%
海藻エキス 0.05%
オレンジ油 0.05%
水酸化カリウム 適量
香料 適量
精製水 残量
【0151】
実施例9のシャンプーは、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制された。
【0152】
(実施例10)シャンプー(pH3.9)
(質量%)
ラウリルエーテル(1)硫酸アンモニウム 12.5%
(花王社製:エマール125A)
C−HPC(1)(製造例1) 0.3%
イソデシルグリセリルエーテル 1.7%
ラウリルヒドロキシスルタイン 1.0%
(花王社製:アンヒトール20HD)
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 0.8%
(花王社製:アンヒトール20AB)
ラウリン酸 0.4%
(花王社製:ルナックL−98)
リンゴ酸(50%溶液) 0.75%
エチレングリコールジステアリル 1.6%
カチオン化セルロース 0.3%
(花王社製:ポイズM−80)
ポリプロピレン(7)グリコール(分子量420) 0.1%
(アデカ社製:アデカカーポールDL−30)
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液 0.2%
(ルビゾール社製:マーコート550)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
ジメチルポリシロキサン 0.3%
安息香酸ナトリウム 0.1%
エタノール 0.3%
塩化ナトリウム 0.4%
ユーカリエキス 0.1%
カモミラエキス 0.05%
パンテノール 0.05%
シルクエキス 0.05%
アロエエキス 0.05%
海藻エキス 0.05%
オレンジ油 0.05%
水酸化カリウム 適量
香料 適量
精製水 残量
【0153】
実施例10のシャンプーは、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制された。
【0154】
(実施例11)シャンプー(pH5.0)
(質量%)
ラウリルエーテル(1)硫酸アンモニウム 12.5%
(花王社製:エマール125A)
C−HPC(1)(製造例1) 0.3%
イソデシルグリセリルエーテル 1.7%
ラウリルヒドロキシスルタイン 1.7%
(花王社製:アンヒトール20HD)
ラウリン酸 0.4%
(花王社製:ルナックL−98)
リンゴ酸 (50%溶液) 0.2%
ジンクピリチオン 1.0%
エチレングリコールジステアリル 1.6%
カチオン化セルロース 0.3%
(花王社製:ポイズM80)
ポリプロピレン(7)グリコール(分子量420) 0.1%
(アデカ社製:アデカカーポールDL−30)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
ジメチルポリシロキサン 0.5%
安息香酸ナトリウム 0.1%
エタノール 0.3%
塩化ナトリウム 0.4%
水酸化カリウム 適量
香料 適量
精製水 残量
【0155】
実施例11のシャンプーは、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制された。
【0156】
(実施例12)シャンプー
(質量%)
ラウリルエーテル(1)硫酸アンモニウム 12.5%
(花王社製:エマール125A)
C−HPC(1)(製造例1) 0.3%
イソデシルグリセリルエーテル 1.7%
ラウリルヒドロキシスルタイン 1.7%
(花王社製:アンヒトール20HD)
ラウリン酸 0.4%
(花王社製:ルナックL−98)
リンゴ酸(50%溶液) 0.75%
エチレングリコールジステアリル 1.6%
ピロクトンオラミン 0.5%
(ローディア社製: オクトピロックス)
カチオン化グアーガム 0.3%
(ローディア社製: ジャガーC−14S)
PPG−7 0.1%
(アデカ社製: アデカカーポールDL−30)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
ジメチルポリシロキサン 0.5%
安息香酸ナトリウム 0.1%
エタノール 0.3%
塩化ナトリウム 0.4%
水酸化カリウム 適量
香料 適量
精製水 残量
【0157】
実施例12のシャンプーは、傷んだ毛髪でも、泡立ち、泡質が良く、泡立て時に手や指が動かし易く、洗髪時の泡切れに優れ、すすぎ時の残留感が抑制された。
【0158】
本発明は、以下の態様も含む。
<1>
次の成分(A)、(B)、(C)および水を含有し:
(A)アニオン界面活性剤、
(B)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、
(C)炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテル、
前記成分(B)が、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0である、水性毛髪洗浄剤。
【0159】
【化7】

【0160】
(上記一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表される前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nは前記アンヒドログルコースの平均重合度を示し、n=50〜5000である。)
【0161】
【化8】

【0162】
(上記一般式(2)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは前記一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0または正の整数である。ただし、R1、R2およびR3のすべてにおけるpおよびqがいずれも0とはならない。また、pおよびqがいずれも0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよびqがいずれも0でなくpおよび/またはqが2以上である場合、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
【0163】
【化9】

【0164】
(上記一般式(3)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
<2>
前記(B)成分の含有量が、当該水性毛髪洗浄剤全体に対して0.01〜10質量%である、前記<1>に記載の水性毛髪洗浄剤。
<3>
前記成分(A)に対する前記成分(B)の質量割合が、成分(B)/成分(A)=0.0005〜0.5である、前記<1>または<2>に記載の水性毛髪洗浄剤。
<4>
前記成分(C)に対する前記成分(B)の質量割合が、成分(B)/成分(C)=0.002〜50である、前記<1>乃至<3>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<5>
前記成分(A)の含有量が、当該水性毛髪洗浄剤全体に対して3〜20質量%である、前記<1>乃至<4>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<6>
前記成分(C)の含有量が、当該水性毛髪洗浄剤全体に対して0.01〜5質量%である、前記<1>乃至<5>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<7>
前記成分(A)の含有量が5〜18質量%、前記成分(B)の含有量が0.02〜5質量%、前記成分(C)の含有量が0.05〜4質量%である、前記<1>乃至<6>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<8>
前記成分(A)が、下記一般式(11)で表される一種以上:
11O(CH2CH2O)uSO3M (11)
(上記一般式(11)中、R11は炭素数10〜18のアルキル基またはアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミンまたは塩基性アミノ酸を示し、uは質量平均で0.5〜5の数を示す。)である、前記<1>乃至<7>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<9>
前記成分(C)が、炭素数8〜10のアルキル基または炭素数8〜10のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテルである、前記<1>乃至<8>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<10>
前記一般式(1)中のR1、R2およびR3のいずれについても、前記一般式(2)において、pおよびqが0または1である、前記<1>乃至<9>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<11>
前記一般式(2)中のY1およびY2のいずれについても、前記一般式(3)において、R4、R5およびR6が、それぞれ独立にメチル基またはエチル基である、前記<1>乃至<10>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<12>
さらに、水で20質量倍希釈時のpH(25℃)が、2〜5である、前記<1>乃至<11>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<13>
さらに、ヒドロキシモノカルボン酸またはジカルボン酸を、0.01〜5質量%含有する、前記<1>乃至<12>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤。
<14>
前記成分(B)が、下記第一および第二工程を含む製造方法により得られるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースである、前記<1>乃至<13>いずれか一つに記載の水性毛髪洗浄剤:
第一工程:パルプにカチオン化剤を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこない、その後塩基を添加して粉砕機処理による低結晶化をおこないながらパルプとカチオン化剤の反応をおこなってカチオン化セルロースを得る工程、
第二工程:前記第一工程で得られたカチオン化セルロースと酸化プロピレンとを反応させてカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得る工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)および水を含有し:
(A)アニオン界面活性剤、
(B)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、
(C)炭素数4〜12のアルキル基または炭素数4〜12のアルケニル基を有するモノアルキルグリセリルエーテルまたはモノアルケニルグリセリルエーテル、
前記成分(B)が、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜2.9であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.1〜4.0である、水性毛髪洗浄剤。
【化1】

(上記一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表される前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nは前記アンヒドログルコースの平均重合度を示し、n=50〜5000である。)
【化2】

(上記一般式(2)中、Y1およびY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは前記一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0または正の整数である。ただし、R1、R2およびR3のすべてにおけるpおよびqがいずれも0とはならない。また、pおよびqがいずれも0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基と前記プロピレンオキシ基の付加順序は問わず、さらにpおよびqがいずれも0でなくpおよび/またはqが2以上である場合、ブロック結合またはランダム結合のいずれであってもよい。)
【化3】

(上記一般式(3)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、当該水性毛髪洗浄剤全体に対して0.01〜10質量%である、請求項1に記載の水性毛髪洗浄剤。
【請求項3】
前記成分(A)に対する前記成分(B)の質量割合が、成分(B)/成分(A)=0.0005〜0.5である、請求項1または2に記載の水性毛髪洗浄剤。
【請求項4】
前記成分(C)に対する前記成分(B)の質量割合が、成分(B)/成分(C)=0.002〜50である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の水性毛髪洗浄剤。
【請求項5】
前記成分(C)の含有量が、当該水性毛髪洗浄剤全体に対して0.01〜5質量%である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の水性毛髪洗浄剤。
【請求項6】
前記一般式(1)中のR1、R2およびR3のいずれについても、前記一般式(2)において、pおよびqが0または1である、請求項1乃至5いずれか一項に記載の水性毛髪洗浄剤。
【請求項7】
前記一般式(2)中のY1およびY2のいずれについても、前記一般式(3)において、R4、R5およびR6が、それぞれ独立にメチル基またはエチル基である、請求項1乃至6いずれか一項に記載の水性毛髪洗浄剤。

【公開番号】特開2012−232933(P2012−232933A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102878(P2011−102878)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】