説明

水性液滴の乾燥促進剤

【課題】微細な水性の噴霧粒子の乾燥を促進する技術を提供する。
【解決手段】炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを含有する、体積平均粒径20〜300μmの水性液滴の乾燥促進剤。これを消臭剤、芳香剤、しわ取り剤等に配合して噴霧粒子の乾燥を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物の噴霧等により生じる水性液滴の乾燥促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレタリー分野等において、対象物に噴霧して用いる各種製品〔以下、噴霧用製品という〕は一般に普及しており、例えば消臭剤、芳香剤、殺虫剤、衣類のしわ除去剤、アイロン補助剤、スプレー式帯電防止剤、花粉やダニアレルゲン対策製品などを挙げることができる。
【0003】
また、これら噴霧用製品をはじめとして、トイレタリー製品においては、有効成分としてあるいは有効成分を安定配合する成分として、界面活性剤、水溶性有機溶剤、シリコーン化合物などを含有している。そのような成分として、アルキルグリセリルエーテルをトイレタリー製品に用いることは公知であり、特許文献1〜6には住居用洗浄剤に応用する技術が開示されている。また、特許文献7、8には、アルキルグリセリルエーテルを殺菌剤として用いる技術が開示されている。さらに特許文献には、アルキルグリセリルエーテルを香料保留剤として用いる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−189796号公報、
【特許文献2】特開平11−256200号公報、
【特許文献3】特開平11−256198号公報、
【特許文献4】特開平11−189790号公報、
【特許文献5】特開2001−49291号公報、
【特許文献6】特開2004−182760号公報
【特許文献7】特開2004−315537号公報、
【特許文献8】米国特許5591442号公報
【特許文献9】特開2003−238985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
噴霧用製品は有効成分を対象物に均一に噴霧することが好ましく、このためには噴霧液滴の粒径を細かくすることが効果的である。しかしながら、細かい噴霧液滴は対象物に均一に噴霧できる反面、対象物以外にも拡散しやすく、床などに液滴が落下付着することが多々発生する。界面活性剤、シリコーン化合物などを含有する場合、落下した液滴がすべるため人が転倒するなどの危険性があり、消臭剤、殺虫剤、芳香剤などの空間に用いる噴霧製品に対しては顕著である。これを改善するためには、床などに付着した液滴が迅速に乾燥することが有効であり、粒径を細かくした噴霧用製品の液滴の乾燥速度を向上させることが強く求められる。特許文献1〜6のような住居用洗浄剤は、トリガー式スプレーヤーを用いて対象物に噴霧して用いられ得るが、それらは泡状に噴霧し、対象物を擦るなどの操作をした後、水ですすぐ操作を行うもので、上記したような微細な噴霧液滴による床すべりの課題については何ら言及されていない。また、特許文献7〜9も同様であり、細かい液滴を噴霧した場合の課題やその解決手段については何ら示唆していない。
【0005】
本発明の目的は、微細な水性の噴霧粒子の乾燥を促進する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル(以下、本発明に係るアルキルグリセリルエーテルという場合もある)を含有する、体積平均粒径20〜300μmの水性液滴の乾燥促進剤に関する。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の乾燥促進剤を含有する、体積平均粒径20〜300μmの粒子として噴霧される水性組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、水性組成物を体積平均粒径20〜300μmの液滴として対象物に噴霧する方法において、水性組成物に炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを有効量含有させることで噴霧液滴の乾燥を促進させる方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体積平均粒径20〜300μmの水性液滴の乾燥を顕著に促進できる乾燥促進剤が提供される。本発明の乾燥促進剤を含有する水性組成物は、体積平均粒径20〜300μmの液滴として対象物(固体表面、空間等)に噴霧する方法に供され、噴霧された水性液滴が速やかに乾燥する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルとしては、好適には炭素数5〜9のアルキル基を有するモノグリセリルエーテル化合物であり、特にアルキル基中に3級又は4級炭素(炭素−炭素結合を3個又は4個有する炭素原子)を1又は2個有する分岐型アルキル基が好ましい。直鎖アルキル型グリセリルエーテルとしては、ペンチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテル、へプチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、ノニルグリセリルエーテルを具体的に例示でき、特にオクチルグリセリルエーテルが好適である。また、分岐アルキル型グリセリルエーテルはイソアミルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、2−メチルペンチルグリセリルエーテル、2−エチルペンチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、2−メチルヘキシルグリセリルエーテルエーテル、2−メチルへプチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、2−ブチルペンチルグリセリルエーテル、2−ブチルヘキシルグリセリルエーテル、3,5,5−トリメチルへキシルグリセリルエーテルを挙げることができ、特にイソアミルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、とりわけ2−エチルヘキシルグリセリルエーテルが好適である。
【0011】
本発明に係るアルキルグリセリルエーテルは、対応するアルコールにエピハロヒドリン及び/またはグリシドールを付加反応させて合成することができるが、一般的に該アルコールにこれらが一つ付加した本発明に係るアルキルグリセリルエーテル以外に、グリセロール基が2個以上付加したアルキルポリグリセリルエーテルが副生する。このような副生物を含んだ反応生成物を本発明に係るアルキルグリセリルエーテルとして使用してもよいが、副生物であるアルキルポリグリセリルエーテルは、本発明に係るアルキルグリセリルエーテルに対して、5質量%以下、更に3質量%以下、更に0.0001〜2質量%、特に0.0001〜1質量%であることが、本発明の効果を得る点で好ましい。
【0012】
本発明に係るアルキルグリセリルエーテルの製造法としては、特開2005−120036号公報、特開2000−212114号公報、特開2000−344701号公報を参考にすることができ、また、必要に応じて蒸留工程を設けることで、アルキルグリセリルエーテル含有量の高い、高純度品を得ることができる。
【0013】
本発明に係るアルキルグリセリルエーテルは、水性組成物の種類や用途等に応じて含有量を調整できるが、水に対しては0.01質量%以上の添加で乾燥促進効果が得られる。
【0014】
本発明は、対象物に噴霧する方法に供させる水性組成物の噴霧液滴が床などに落下付着した場合の床すべりを防止する目的から、水性組成物に由来する水性液滴の乾燥を促進させる技術を開示するものである。界面活性剤、水溶性溶剤、シリコーン化合物を含有する水性組成物は、床に付着した液滴が床すべりの原因となりうるため、本発明はこのような水性組成物から生じた水性液滴を対象とすることが好ましい。
【0015】
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が8〜16、オキシエチレン基の平均付加モル数が1〜4のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜16のアルカンスルホン酸塩、炭素数12〜20の脂肪酸のメチルエステル又はエチルエステルのスルホン化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を挙げることができる。なお、塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカノールアミン塩である。また、非イオン界面活性剤としては、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20であり炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均2〜150モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、アルキル基の炭素数が8〜16であり平均縮合度が1〜3のアルキルグリコシド、アルキル基の炭素数が8〜16のアルキルグルカミドを挙げることができる。両性界面活性剤としてはアルキル基の炭素数が8〜16のN−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチル アンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド、アルカノイル基の炭素数が9〜15のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチル アンモニウムベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシドを挙げることができる。陽イオン界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数7から19のアルカノイル(アルケノイル)オキシエチル基及び/又はアルカノイル(アルケノイル)アミノプロピル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩を挙げることができる。塩としてはハロゲン塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸塩である。
【0016】
本発明では、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を1〜3個有する非イオン界面活性剤、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を1〜3個有する両性界面活性剤、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を1〜3個有する陽イオン界面活性剤が好ましく、特にアルキル基又はアルケニル基の炭素数が10〜20であり炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均2〜150モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、N−アルキル(炭素数8〜20)−N,N−ジメチルアミンオキシド、N−アルカノイル(炭素数7〜19)アミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩から選ばれる界面活性剤を含有する水性組成物において、優れた本発明の効果を享受することができる。
【0017】
シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0018】
本発明ではジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上を含有する水性組成物が、優れた本発明の効果を享受することができる。
【0019】
ジメチルポリシロキサンとしては重量平均分子量千〜100万、好ましくは3千〜50万、特に好ましくは5千〜25万、25℃における粘度が10〜10万mm2/s、好ましくは500〜5万mm2/s、特に好ましくは1千〜4万mm2/sの化合物を挙げることができる。
【0020】
アミノ変性ジメチルポリシロキサンとしては、アミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、1,500〜40,000g/mol、好ましくは2,500〜20,000g/mol、更に好ましくは、3,000〜10,000g/molである。ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンとしては、付加するエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの量は、ジメチルシロキサンに対して、平均付加モル%で3〜97の化合物を挙げることができる。
【0021】
本発明の技術は、対象物に噴霧する水性組成物を含むトイレタリー製品に応用することができ、具体的には消臭剤、芳香剤、殺虫剤、衣類のしわ除去剤、アイロン補助剤、スプレー式帯電防止剤、花粉やダニアレルゲン対策製品などを挙げることができ、特に消臭剤、芳香剤、衣類のしわ除去剤は、界面活性剤又はシリコーン化合物が配合されることが多く、しかも噴霧液滴が拡散し、床などに落下付着する頻度が高いため本発明の技術が非常に有効になる。特に、各製品の有効成分とを含有する水性組成物をスプレー容器に収容してなるスプレー式の製品に本発明は好適である。
【0022】
消臭剤としては、消臭基剤、界面活性剤及び/又はシリコーン化合物、並びに水を含有する水性組成物からなるものが挙げられる。具体的には下記消臭剤組成物を挙げることができる。
【0023】
<消臭剤組成物>
消臭基剤;0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%
香料組成物;0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%
界面活性剤;0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%
水溶性溶剤;0〜50質量%、好ましくは0.5〜10質量%
本発明に係るアルキルグリセリルエーテル;0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%
その他成分;0〜5質量%
残部;水
【0024】
消臭基剤としては、一般に消臭効果を有することが知られている植物抽出物、シクロデキストリンなどの包接化合物、中和消臭効果を有する緩衝剤を挙げることができる。
【0025】
植物抽出物としてはツバキ科植物、しそ科植物、及び生姜科植物から選ばれる植物の抽出物が消臭効果の点から好ましく、特に緑茶の乾燥葉を減圧条件下、加熱により気化した乾留物、ペパーミントの全草の水蒸気蒸留物、スペアミントの全草の水蒸気蒸留物、ハッカの全草の水蒸気蒸留物、ジンジャーの乾燥根茎の水蒸気蒸留物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
シクロデキストリンとしてはd−グルコースがα−1,4結合により環状に結合したものであり、6個結合したものがα−シクロデキストリン、7個のものがβ−シクロデキストリン、8個のものがγ−シクロデキストリンである。本発明では、α型、β型、γ型−シクロデキストリンのいずれをも使用することができる。
【0027】
また、緩衝剤としては乳酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、フタル酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、ジエチルバルビツル酸の他、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸等の有機酸又はそれらの塩、りん酸、ホウ酸、塩酸等の無機酸又はそれらの塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができる。これらの中でも特にりん酸、塩酸、クエン酸、コハク酸から選ばれる酸と、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルモノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる塩基との組み合わせが効果的な消臭効果を得ることができるため好ましい。
【0028】
香料組成物としては、「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載の香料成分を適宜、香調、用途に従って組み合わせることができる。なお、上記植物精油は香料成分として取り扱われる場合もあるが、その場合には香料組成物、植物精油の合計含有量を0.01〜2質量%とする。
【0029】
香料成分としては消臭効果の点からジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチルから選ばれるジャスモン誘導体を含有することが好ましく、香料組成物中に10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜60質量%含有することが、消臭効果の点から好ましい。また、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、フェノール性化合物のエチレンオキサイド(以下EOと表記する)及び/又はプロピレンオキサイド付加物、芳香族カルボン酸と炭素数1〜5の脂肪族アルコールとのエステル化合物から選ばれる香料成分を香料組成物中に50〜90質量%含有するものが好適である。
【0030】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤を用いることができる。非イオン界面活性剤としては炭素数8〜16のアルキル基及び炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が2〜40のポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤が消臭対象物の浸透性を高める上で重要な成分であり、また、特開2001−095906号公報に記載のように炭素数8〜18のアルキルグリコシド型も良好な結果を得ることができる。さらに、浸透効果及び消臭効果の両方を満足する界面活性剤として上述のアミンオキシド型界面活性剤が好ましく、特にアルカノイル基の炭素数が10〜16のN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシドが好ましい。さらに、消臭効果と殺菌効果による防臭効果を併せ持つ上述の4級アンモニウム塩型界面活性剤、特にモノ又はジアルキル(炭素数8から12)ジメチルアンモニウムクロリド、モノアルキル(炭素数8から12)ジメチルベンジルアンモニウムクロリドが好適である。
【0031】
水溶性溶剤としては一般に使用されるエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが好適であり、エタノールが最も好適である。
【0032】
その他成分としては例えば、特開2001−070431号公報に記載のようにシリコーン化合物を含有することができ、好適には25℃における粘度(ウベローデ粘度計)が10mm2/s〜1,000,000mm2/sのポリジメチルポリシロキサンが好適である。
【0033】
また、以下に芳香剤組成物として好適な例を示す。
<芳香剤組成物>
香料組成物;0.01〜2質量%
界面活性剤;0.01〜5質量%
水溶性有機溶剤;0.01〜50質量%
本発明に係るアルキルグリセリルエーテル;0.01〜2質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%、特に好ましくは0.01〜0.5質量%
残部:水
【0034】
香料組成物は目的の香りを創出する目的から、自由に設計することができ、香料組成物としては、「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載の香料成分を適宜、香調、用途に従って組み合わせることができる。しかしながら香料成分は親油性物質が多く水に対する溶解性が低いため、水溶液に安定に配合する目的から界面活性剤を用いることが好適であり、界面活性剤としてはアルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜16であり炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均2〜20モル付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、アルキル基の炭素数が8〜16であり平均縮合度が1〜3のアルキルグリコシド、アルキル基の炭素数が8〜16のアルキルグルカミドが、香料成分の可溶化などの点から好適である。
【0035】
水溶性溶剤としては一般に使用されるエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが好適であり、エタノールが最も好適である。
【0036】
また、以下にスプレー式衣類のしわ除去剤組成物として好適な例を示す。
<スプレー式衣類のしわ除去剤組成物>
シリコーン化合物;0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%
界面活性剤;0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%
高分子化合物(シリコーン化合物以外のもの);0〜2質量%、好ましくは0.005〜0.5質量%
水溶性有機溶剤;0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜25質量%
本発明に係るアルキルグリセリルエーテル;0.01〜5質量%、好ましくは0.03〜2質量%
その他成分;0〜5質量%
残部:水
【0037】
衣類のしわ除去剤組成物の有効成分としては、繊維に潤滑性を付与できる上述のシリコーン化合物が好ましく、特に特開2005−187987号公報、特開平10−046471号公報、特表平10−508911号公報に記載のポリエーテル変性シリコーン化合物、あるいはアミノ変性シリコーン化合物が好適であり、特に重量平均分子量が1,000〜1,000,000のポリエーテル変性シリコーン、分子量千〜100万、好ましくは3千〜50万、特に好ましくは5千〜25万、25℃における粘度が10〜10万mm2/s、好ましくは500〜5万mm2/s、特に好ましくは1千〜4万mm2/sのジメチルポリシロキサン化合物が好ましい。
【0038】
界面活性剤としては、上記シリコーン化合物を乳化安定化する目的、及び衣類への浸透性を高める目的から配合され、特に非イオン界面活性剤としては炭素数8〜16のアルキル基及び炭素数2又は3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が2〜40のポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤が衣類への浸透性を高める上で効果的である。また、衣類に柔軟効果、帯電防止効果、あるいは抗菌効果を付与する目的から窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が炭素数7から19のアルカノイル(アルケノイル)オキシエチル基、及び/又はアルカノイル(アルケノイル)アミノプロピル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩を挙げることができる。塩としてはハロゲン塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステル塩、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸塩である。
【0039】
高分子化合物(シリコーン化合物以外のもの)としては、(1)特開2005−256244号公報に記載の主鎖がポリスチレンで、枝部にポリオキシアルキレン鎖を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が5〜200の高分子化合物、(2)アクリル酸、又はメタクリル酸と平均付加モル数5〜200のポリオキシエチレンとのエステル、もしくはアルキル基の炭素数が1〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテルとのエステルをモノマー単位が、全モノマー単位に対して2〜90モル%有する高分子化合物、(3)特開2005−256245号公報に記載、又はその物質である炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、重量平均分子量が1000〜10000のポリオキシアルキレン(アルキレンの炭素数は2又は3)アルキル又はアルケニルエーテル、(4)特表平10−508912号公報に記載のアジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンコポリマー、(5)アジピン酸/エポキシプロピルジエチレントリアミンコポリマー、(6)ポリ(ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート)、(7)ポリビニルアルコール、(8)ポリビニルピリジンn‐オキシド、(9)メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレートコポリマー、(10)アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸コポリマー、(11)ポリアミン樹脂、(12)ポリ四級アミン樹脂、(13)ポリ(エチレンホルムアミド)、(14)ポリ(ビニルアミン)塩酸塩、(15)ビニルアルコール/ビニルアミンコポリマー、(16)特表2002−543302号公報に記載の重合度50〜100,000、好ましくは500〜50,000を有する多糖類、及び(17)特開2005−187987号公報に記載のポリ酢酸ビニルのケン化物を挙げることができる。
【0040】
水溶性溶剤としては一般に使用されるエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールが好適であり、エタノールが最も好適である。
【0041】
その他成分としては香料組成物を挙げることができ、しわ除去剤組成物に消臭効果を付与する目的から上述の消臭及び/又は芳香剤組成物に記載した香料組成物を用いることができる。
【0042】
本発明の水性組成物は、体積平均粒径20〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは30〜150μmの液滴として対象物に噴霧する。このような水性組成物に、本発明に係るアルキルグリセリルエーテルを含有させて上記体積平均粒径を有する液滴として噴霧することで、優れた効果を得ることができる。ここで、本発明でいう体積平均粒径はレーザー回折式粒度分布計(日本電子製)を用いて、噴霧された液体組成物が噴霧手段の噴霧開始位置から噴霧方向に20cm離れた位置において測定し、体積平均で求めた値をいう。
【0043】
また、本発明では粒径500μmを超える液滴の比率が全液滴に対して5体積%以下、好ましくは1体積%以下であることが好適である。この比率も上記測定位置において測定した結果に基づく。
【0044】
このような噴霧液滴を得るための好適な方法としては、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器を用いることが好適であり、例えば特開平10−128188号公報、特開平08−309241号公報、特開平10−028909号公報などに記載のスプレーヤーを具備する容器を用いることができる。
【0045】
目的の粒径の液滴を得る目的から、上記トリガー式スプレーヤーの噴霧口径、吐出量及び水性組成物の動粘度を変化させることによって好ましい分布に制御することができる。それぞれの値は、噴霧粒径分布だけでなく噴霧パターン制御等の目的等によって相互に関係を持つため総合的に最適化されることが好ましいが、噴霧口径は0.1〜1mmが好ましく、更に好ましくは0.2〜0.8mmである。吐出量は1回当り0.1〜2mLが好ましく、更に好ましくは0.25〜1.2mLである。水性組成物の動粘度は0.5〜3mm2/s(25℃)が好ましく、更に好ましくは0.8〜2.4mm2/s(25℃)である。
【0046】
また、水性組成物の粘度は25℃において15mPa・s以下が好ましく、更に好ましくは1〜10mPa・s、特に好ましくは2〜7mPa・sに調整することが好ましい。ここで粘度は、以下のようにして測定されたものである。まず、東京計器社製B型粘度計モデル形式BMに、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備する。試料(水性組成物)をトールビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調製する。恒温に調製された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60r/min.に設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を本発明の粘度とする。噴霧器を構成する部材の材質や形状等は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1
平均EO付加モル数10のポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5質量%、エタノール5質量%、重量平均分子量約1万のヒドロキシエチルセルロース0.01質量%を含有し残部が水である水性組成物(25℃における粘度3.5mPa・s、動粘度1.5mm2/s、比較品)、及び該組成物に2−エチルヘキシルグリセリルエーテルをさらに0.2質量%加えた水性組成物(25℃における粘度3.5mPa・s、動粘度1.55mm2/s、本発明品)を吉野製トリガー式スプレーヤー(噴霧口径0.45mm、吐出量0.65mL)を具備した300ml容器に充填した。これらのスプレーパターンは体積平均粒径80μmで200μmを超える噴霧液滴径の粒子は0.5体積%以下であった。
【0048】
次に303mm×303mmの大きさに切り出したフローリング床材を用意し、その質量を測定した(T1)。次にその表面に上記スプレーヤーを用いて比較品及び本発明品の各組成物を0.4gスプレーし、全体の質量を測定した(T2)。さらに5分間乾燥後の全体の質量を測定し(T3)、〔1−(T3−T1)/(T2−T1)〕×100で求められる乾燥率を算出した。この操作を5回繰り返し平均値を求めた結果、本発明品は平均70%であったが、比較品は30%であり明らかに本発明品の乾燥速度が速いことが立証された。なお、本操作の一連は湿度60%、温度20℃の評価室内で全て行った。
【0049】
実施例2
実施例1においてポリオキシエチレンラウリルエーテルの代わりにポリエーテル変性シリコーン〔ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、KF6012、信越化学工業(株)〕を0.3質量%用いた以外は同様の方法で評価を行った結果、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルを0.2質量%含有する本発明品のスプレーパターンは体積平均粒径80μm、200μmを超える噴霧液滴径の粒子は0.5体積%以下であり、乾燥率が平均65%に対して2−エチルヘキシルグリセリルエーテルを含有しない比較品の乾燥率が25%となり、明らかに本発明品の乾燥速度が高いことが判る。
【0050】
実施例3
実施例1において2−エチルヘキシルグリセリルエーテルに代えてイソデシルグリセリルエーテルを用いた場合においても同様に乾燥速度の向上が見られる。
【0051】
<配合例1>
表1に本発明の効果を有する消臭剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20〜300μmである水性液滴として空間に噴霧した場合、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、噴霧液滴が床に沈降しても床すべりが起こらない。
【0052】
【表1】

【0053】
1)緑茶の乾燥葉を減圧条件下、加熱により気化した乾留物
2)メチルジヒドロジャスモネート100質量部、リナロール30質量部、イソイースーパー30質量部、テンタローム30質量部、エチレンブラッシレート50質量部、バニリン10質量部、α-メチルイオノン30質量部、サリチル酸シス-3-ヘキセニル30質量部、ジプロピレングリコール残部、合計1000質量部の香料組成物
3)N−ラウロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド
4)N−オクチル−N,N−ジメチル−N−ベンジルアンモニウムクロリド
【0054】
<配合例2>
表2に本発明の効果を有する芳香剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20〜300μmである水性液滴として空間に噴霧した場合、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、噴霧液滴が床に沈降しても床すべりが起こらない。
【0055】
【表2】

【0056】
5)パーライド70質量部、α-イソメチルイオノン30質量部、イソイースーパー30質量部、γ-ウンデカラクトン10質量部、リラール30質量部、リナロール50質量部、ヘキシルシンナミックアルデヒド100質量部、メチルジヒドロジャスモネート50質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル300質量部、ジプロピレングリコール残部、合計1000質量部の香料組成物
6)リリアール100質量部、メチルジヒドロジャスモネート100質量部、メチルイオノンG100質量部、ヘキシルシンナミックアルデヒド100質量部、アンブロキサン50質量部、テンタローム50質量部、ヘリオナール200質量部、フェニルエチルアルコール残部、合計1000質量部の香料組成物
7)平均EO付加モル数10のポリオキシエチレンラウリルエーテル
8)平均縮合度1.3のラウリルグルコシド
【0057】
<配合例3>
表3に本発明の効果を有するしわ除去剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20〜300μmである水性液滴として衣類に噴霧した場合、拡散した噴霧液滴が床に沈降しても、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、床すべりが起こらない。
【0058】
【表3】

【0059】
9)25℃における粘度50,000mm2/sのシリコーン化合物
10)ポリエーテル変性シリコーン(KF−6012、信越化学工業(株)製)
11)平均EO付加モル数12のポリオキシエチレンラウリルエーテル
12)N,N−ジドデシル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド
13)ポリエチレングリコール(平均EO付加モル数90)モノメタクリル酸エステル/メタクリル酸=50/50(質量比)共重合体、重量平均分子量=76,000

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを含有する、体積平均粒径20〜300μmの水性液滴の乾燥促進剤。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥促進剤を含有する、体積平均粒径20〜300μmの粒子として噴霧される水性組成物。
【請求項3】
界面活性剤、及びシリコーン化合物から選ばれる一種以上を含有する請求項2記載の水性組成物。
【請求項4】
乾燥促進剤を0.01〜1.0質量%含有する請求項2又は3記載の水性組成物。
【請求項5】
水性組成物を体積平均粒径20〜300μmの液滴として対象物に噴霧する方法において、水性組成物に炭素数5〜10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを有効量含有させることで噴霧液滴の乾燥を促進させる方法。
【請求項6】
水性組成物が、界面活性剤、及びシリコーン化合物から選ばれる一種以上を含有する請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記アルキルグリセリルエーテルを0.01〜1.0質量%含有する請求項5又は6記載の方法。

【公開番号】特開2007−284538(P2007−284538A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112412(P2006−112412)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】