説明

水性眼用処方物

本発明は、ヒトまたは動物の眼の疾患または障害を治療および/または予防するためのシクロスポリンを含有する水性眼用処方物および方法に関する。本眼用処方物および方法は、眼投与、より詳細には、眼の前部への投与に非常に適しており、それらは患者の視力を安定させ、高めおよび/または改善するのに効果的であるため眼に治療効果を与える。より具体的には、本発明は、炎症状態に直接および/または間接的に関連する眼の疾患または障害を予防および/または治療するための眼用処方物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の眼の疾患または障害を治療および/または予防するための眼用処方物および方法に関する。本眼用処方物および方法は、眼投与、より特には、眼の前部への投与に非常に適しており、それらは患者の視力を安定させ、高めおよび/または改善するのに効果的であるため眼に治療効果を与える。より具体的には、本発明は、炎症状態に直接および/または間接的に関連する眼の疾患または障害を予防および/または治療するための眼用処方物および方法に関する。
【0002】
一般用語における眼の疾患または障害は、眼または眼の領域の1つに影響を及ぼす病気である。広く言えば、眼には、眼球、および眼球を構成する組織および体液、眼周囲の筋肉(例えば斜筋および直筋)、ならびに眼球内にあるかまたは眼球に隣接する視神経の部分が含まれる。眼の疾患または障害は、以下に分けることができる:
(i)眼の前部(例えば水晶体嚢の後壁または毛様体筋の前方に位置する、眼周囲の筋肉、眼瞼または眼球組織または体液)に影響を及ぼす前眼部(FOE)の疾患または障害。従って、前眼部の疾患または障害は、主に、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後方にあるが水晶体嚢の後壁の前方にある)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼部を血管化するかまたは神経支配する血管および神経に関係している。前眼部の疾患または障害の例は、前部ブドウ膜炎、アレルギー、無水晶体、偽水晶体、乱視、眼瞼痙攣、白内障、結膜疾患、結膜炎(アレルギー性結膜炎を含む)、角膜疾患、滲出性もしくは炎症性成分を伴う角膜の疾患もしくは混濁、角膜浮腫、角膜潰瘍、ドライアイ症候群、眼瞼疾患、涙器疾患、涙道閉塞症、レーザー誘発性滲出、近視、老眼、翼状片、瞳孔障害、屈折障害および斜視である。緑内障治療の臨床的目標が前眼房内の房水圧亢進を緩和する(すなわち眼内圧を低下させる)ことであり得ることから、緑内障も前眼部の病気であると考えることができる;
ならびに(ii)眼の後部(例えば脈絡膜または鞏膜、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経、ならびに後眼部を血管化するかまたは神経支配する血管および神経)に影響を及ぼす後眼部(BOE)の疾患または障害。後眼部の疾患または障害の例は、脈絡膜の血管新生;急性黄斑部神経網膜症;滲出性眼疾患、より特にはベーチェット病、滲出性網膜症、黄斑変性症(例えば非滲出性加齢性黄斑変性症および滲出性加齢性黄斑変性症);黄斑浮腫、網膜障害、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜動脈閉塞性疾患;網膜中心静脈閉塞;ブドウ膜炎(中間部および前部ブドウ膜炎を含む);網膜剥離;後眼部位または位置に影響を及ぼす眼外傷;眼のレーザー治療が原因で生じたかまたは眼のレーザー治療の影響を受けた後眼部の病気;光化学療法が原因で生じたかまたは光化学療法の影響を受けた後眼部の病気;光凝固;放射線網膜症;網膜上膜障害;網膜静脈分枝閉塞;前部虚血性視神経症;非網膜症性糖尿病性網膜機能不全(non-retinopathy diabetic retinal dysfunction)、網膜色素変性症および緑内障である。緑内障は、治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または喪失による視力の低下を防ぐかまたは視力の低下の発生を減少させること(すなわち神経保護)であり得ることから、後眼部の病気であると考えることができる。
【0003】
眼の炎症は、眼に限局している場合もあるし、より全身化した炎症過程の一部である場合もある。その原因は、感染、アレルギー、免疫学的反応である場合もあるし、手術、創傷に対する応答として起こる場合もあるし、他の原因によって起こる場合もある。眼の炎症は、疼痛、刺激、流涙を引き起こし、眼の視覚機能を脅かし、また、眼の光学的特性を変える場合もある。眼の炎症性疾患としては、ブドウ膜炎、結膜炎(アレルギー性結膜炎を含む)、毛様体炎、鞏膜炎、上鞏膜炎、視神経炎、球後視神経炎、角膜炎、眼瞼炎、角膜潰瘍、結膜潰瘍が挙げられ、直接に炎症性障害ではないが、前記炎症の結果である眼疾患(例えば浮腫、網膜症など)にまで及ぶ。
【0004】
さらに、眼の炎症性疾患は、様々な眼障害、眼の手術または眼の物理的損傷が原因でも起こり得る。
【0005】
眼の炎症性疾患の症状としては、そう痒、発赤、浮腫、潰瘍などが挙げられる。眼の炎症性疾患を有する患者は、眼疾患を有する患者全体の半数以上を占める。それゆえに、眼の抗炎症効果を有する薬剤は医療において重要な役割を果たす。今日、眼の炎症性疾患にはステロイドおよび非ステロイド系薬物が主に用いられている。ステロイド薬物は、眼の炎症性疾患に優れた効果を有し、臨床上不可欠な薬物である。しかしながら、ステロイド薬物は、全身投与しても局所投与しても、重篤な副作用を生む危険性を有している。このような副作用としては、例えば、ステロイド緑内障、感染性眼疾患、ステロイド白内障などが挙げられる。とりわけ、眼の慢性炎症性疾患を有する患者はこのような副作用の危険性が高い。加えて、眼内圧がすでに高まっている特定の患者(例えば緑内障患者)では、このような副作用は到底耐えられるものではない。
【0006】
これらの状況下で、現在利用可能な治療戦略に代わる手段を開発することが強く望まれていた。出願人の1つの戦略は、多用量のコルチコステロイド組成物で認められた治療効果と同じ以上の治療効果をもたらすことができる低用量のコルチコステロイドを使用することである。このような低用量は、前記組成物を用いて実現される可能性があるが、それは前記組成物が特別のアジュバントを含み、前記アジュバントを含まない同等の組成物と比べて高い治療活性を示し得るからであり、そしてそれは、所望の治療効果を得るためには少用量のコルチコステロイドが求められることが多いということを意味している。実際に、本出願人は、驚くべきことに、シクロスポリンにより、コルチコステロイドによって上がった、眼の病変に対する治療効果を改善することができ、より具体的には、コルチコステロイドの投与量が治療価値より低い治療プロトコールを設計することができるということを見い出した。
【0007】
シクロスポリンは、広範囲の有用な薬理学的活性、特に免疫抑制活性および抗炎症活性を有する非極性環状オリゴペプチドの一群である。主なシクロスポリン代謝産物はシクロスポリンAである。
【0008】
シクロスポリンは、T細胞の活性化を阻害し、細胞性免疫応答を抑制する。シクロスポリンは、組織および器官の移植、例えば心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、骨髄、皮膚および角膜の移植、とりわけ他者の組織および器官の移植が原因で起こる免疫応答の抑制に用いられてきた。加えて、シクロスポリンは、血液学的障害(例えば貧血)、様々な自己免疫疾患(例えば全身性紅斑性狼瘡および特発性吸収不良症候群)、ならびに炎症性疾患(例えば関節炎およびリウマチ様障害)の抑制に有用である。シクロスポリンは、例えばドライアイ症候群(Wilson and Perry, 2007, Ophthalmology, 114, 6-9参照)、角膜炎・魚鱗癬・難聴(KID)症候群(Senter症候群(Senter syndrome))の進行性血管化角膜炎(progressive vascularising keratitis)(Derse et al., 2002, Klin Monatsbl Augenheilkd, 219, 383-386)、ステロイド抵抗性アトピー性角結膜炎(Akpek et al., 2004, Ophthalmology, 111, 476-482)、または後区眼内炎症(posterior segment intraocular inflammation)(Murphy et al, 2005, Arch Ophthalmol, 123, 634-641)を有する患者の治療のような眼科学においても有用である。
【0009】
天然起源のシクロスポリンは、主としてシクロスポリンAを、そしてわずかにシクロスポリンB〜Iを含んでなり、真菌であるTrichoderma polysporumから得ることができるが、それらの多くの類似体および異性体と同様に、合成によってもシクロスポリンを得ることができる。シクロスポリンの中で薬学において最も広く研究され用いられているシクロスポリンは、シクロスポリンAである。
【0010】
いずれにせよ、シクロスポリンは、分子量1200ダルトンの中性で高親油性疎水性の環状エンデカペプチド(cyclic endecapeptide)である。より具体的には、シクロスポリンは、水への溶解性が低く(例えば25℃で測定したシクロスポリンAの場合、20〜40μg/mL、Ran et al., 2001, AAPS PharmSci Tech, 2(1), Article 2; Akhlaghi and Trull, 2002, Clin. Pharmacokinet, 41, 615-637)、水の存在下で(例えば体液に触れると)沈殿しやすいが、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン、エーテル、クロロホルム、DMSO、DMFなど)には溶解しやすい。しかしながら、これらの溶媒は眼に関する使用に適合しない。このように、シクロスポリンは、水への溶解性が低いために眼用組成物に処方することが非常に難しく、コルチコイドとの組み合わせ物を製造するためには、上述のことを含むこの特別な溶解性の問題を解決する必要がある。
【0011】
シクロスポリンの有効な眼投与に適した、好適な均一用量と適当なバイオアベイラビリティとを提供することができる調製物を見い出すために、数多くの研究が広範囲に行われてきた。このため、親油性であることが知られているシクロスポリンは、先行技術では油性処方物に主として用いられてきた。
【0012】
特許US 4,839,342には、シクロスポリン、特にシクロスポリンAと、オリーブ油、落花生油、ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、鉱油、ワセリン、ジメチルスルホキシド、アルコール、リポソーム、シリコーン油またはそれらの混合物からなる群の中から選択することができる賦形剤とを含有する局所眼用処方物が記載されている。
【0013】
特許出願FR2,638,089には、眼に影響を及ぼす病気(例えば乾性角結膜炎(KCS)すなわちドライアイ)を治療するための、活性物質としてのシクロスポリンと、ビヒクルとしての植物油(例えばオリーブ油、落花生油、ヒマシ油、胡麻油およびトウモロコシ胚芽油)と、さらにワセリンとを含有する局所眼用処方物が記載されている。
【0014】
特許出願EP0760237には、水に不溶の薬学上活性な材料例えばシクロスポリン、植物油由来のC8−C20脂肪酸モノ−、ジ−もしくはトリグリセリドまたはそれらの2つ以上の任意の混合物と、リン脂質と、別の界面活性剤とを含んでなる予備濃縮マイクロエマルション組成物(a pre-concentrate microemulsion composition)が記載されている。
【0015】
バイオアベイラビリティが改善されたシクロスポリン処方物を提供する方法は、さらに、US4,388,307、US6,468,968、US5,051,402、US5,342,625、US5,977,066、およびUS6,022、852に記載されている。
【0016】
しかしながら、前記油性眼用処方物には、眼の耐性が低いことや刺激、そして油によって、例えば炎症またはドライアイ症状のような前記疾患の望ましくない症状がさらに強まる可能性があるというような欠点がある。これらの欠点を最小限に抑えることを目的として、WO95/31211には、油量を減らし、エマルションを形成するために油相を水に分散させ、そしてそれにより、長鎖脂肪酸例えばヒマシ油およびポリソルベート80を含有するトリグリセリドと混合されたシクロスポリンを含んでなる水性および油性エマルション形態の局所眼用処方物を与えることが提案されている。シクロスポリンマイクロエマルション組成物は、US5,866,159、US5,916,589、US5,962,014、US5,962,017、US6,007,840、およびUS6,024,978にさらに記載されている。
【0017】
それでもなお、シクロスポリンを含有する油性局所眼用処方物は、物理的に不安定であり、眼投与に適していない。
【0018】
US5,951,971には、油を含まず、0.01〜0.075%(w/v)の濃度のシクロスポリンと、水と、シクロスポリンの水への溶解性を改善することを目的とした、ポリエトキシル化脂肪酸エステル、ポリエトキシル化アルキルフェニルエーテル、ポリエトキシル化アルキルエーテルおよびそれらの混合物の中から選択される0.1〜3%(w/v)の量の界面活性剤とを含んでなる水性局所眼用処方物が開示されている。同様に、Kuwano et al.(2002, Pharmaceutical Research 19, 108-111)には、シクロスポリンの水への溶解性を改善するため、そして治療レベルのシクロスポリンを送達することができる処方物を製造するために、界面活性剤であるステアリン酸ポリオキシル40(MYS−40)を使用することが提案されている。加えてUS5,951,971では、Tween 80(すなわちポリソルベート80)は、シクロスポリンを所望の濃度で水に可溶化するほど高い活性がないことから、界面活性剤として不適当であることが見い出されている。
【0019】
特許出願US2004106546には、シクロスポリンを含有する水性局所眼用処方物を製造するためにヒアルロン酸と組み合わせてTween 80を使用することが提示されており、ヒアルロン酸は、シクロスポリンの可溶化を可能にする一方で、結膜、角膜、および涙腺における前記処方物のバイオアベイラビリティと前記処方物の眼の耐性とを改善する。
【0020】
よって、シクロスポリンを含有し、眼投与には安全でなく適さないといった種類のまたはそのような濃度で油もしくは誘導体または有機溶媒を含まない新規な水性眼用処方物がなお必要である。
【0021】
本発明の1つの第1の目的は、とりわけ眼科学において使用可能で、局所の眼、眼周囲および眼内投与に安全で適しており、安全でないといった種類のまたはそのような濃度で油または有機溶媒を含まない、上述のような水性処方物を提供することであった。
【0022】
本発明の別の目的は、コルチコステロイド、より具体的には低用量のコルチコステロイドをさらに含有する上述のような水性処方物を提供することであった。
【0023】
本発明の別の目的は、炎症状態に直接および/または間接的に関連する眼の疾患または障害を予防および/または治療するための方法を提供することであった。
【0024】
本発明の別の目的は、患者においてコルチコステロイドの眼の薬理学的効力を高めるための方法を提供することであった。この方法は、少なくとも1つのシクロスポリンと、前記シクロスポリンの不在下では薬理学的活性が低下するような量の少なくとも1つのコルチコステロイドとを含有する医薬処方物を提供することを含んでなる。
【0025】
より具体的には、本発明の目的は、眼の病気を予防および/または治療するための、有効成分としてシクロスポリンとコルチコステロイドとを含んでなる水性医薬処方物を提供することであった。さらに具体的には、本発明の目的は、前眼部の病気を予防および/または治療するための、有効成分としてシクロスポリンとコルチコステロイドとを含んでなる水性医薬処方物を提供することであった。これらの有効成分の物理化学的性質および化学安定性プロフィールの違い、とりわけシクロスポリン(上記参照)のために、これらの薬物を組み合わせて安定した活性のある安全な処方物を開発することは難題であった。さらに、眼およびその他に用いる、水性媒体中の水不溶性薬物の医薬処方物は、生理学的適合性(例えばpH、浸透圧、および懸濁する薬物を含める場合はその粒径)によって受ける制約を満たす必要がある。
【0026】
本願全体を通じて本明細書において用いられる用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文脈において特に断りのない限り、「少なくとも1つの」、「少なくとも第1の」、「1以上の」または「複数」の参照化合物または工程を意味するという意味で用いられる。より具体的には、「少なくとも1つの」および「1以上の」とは、1または1より大きい数を意味し、特別に好ましくは1、2または3である。
【0027】
用語「および/または」とは、本明細書において用いられる場合には必ず、「および」、「または」そして「前記用語によって結ばれた要素の総てまたは任意の他の組み合わせ」という意味を含む。
【0028】
本明細書における用語「約」または「およそ」とは、ある与えられた値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。「約x%」は、xという具体的な数も包含する。
【0029】
本明細書において、用語「含んでなる(comprising)」、「含む(containing)」とは、生成物、処方物および方法を定義するために用いる場合には、その生成物、処方物および方法が参照化合物または工程を含むが他のものを排除しないということを意味するよう意図されている。
【0030】
本発明の目的は、物理的安定性の問題を含む上記の欠点をうまく回避し、油または安全でない有機溶媒を加えずにシクロスポリンが溶液中に存在し、安定しており、シクロスポリンの眼のバイオアベイラビリティおよび/または耐性が損なわれない、水性眼用処方物、より具体的には、シクロスポリンを含有する局所処方物を提供することであった。本発明者らは、今般、シクロスポリンを含有する水性眼用処方物中に非イオン性等張化剤と組み合わせて界面活性剤が存在することにより、驚くべきことに、シクロスポリンの可溶化が可能になる一方で、この処方物を眼に局所投与する場合には、結膜、角膜、および涙腺における前記処方物のバイオアベイラビリティと前記処方物の眼の耐性とが改善するということを見い出している。
【0031】
第1の実施形態によれば、本発明は、(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)界面活性剤と(c)非イオン性等張化剤とを含んでなる水性処方物であって、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性が約25℃で約20μg/mLより高い水性処方物を提供する。
【0032】
1つの特別の実施形態によれば、本発明は、(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)界面活性剤と(c)非イオン性等張化剤とを含んでなる水性処方物であって、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性が約25℃で約20μg/mL〜40μg/mL間である水性処方物を提供する。
【0033】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明は、(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)界面活性剤と(c)非イオン性等張化剤とを含んでなる水性処方物であって、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性が約25℃で約40μg/mLより高い水性処方物を提供する。
【0034】
別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、(d)少なくとも緩衝剤をさらに含んでなっており、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性は約20μg/mLより高く、前記水性処方物のpHは少なくとも3ヶ月間、好ましくは9ヶ月間、より好ましくは12ヶ月間、さらに好ましくは24ヶ月間安定している。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の水性処方物は、(d)少なくとも緩衝剤をさらに含んでなっており、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性は40μg/mLより高く、前記水性処方物のpHは少なくとも3ヶ月間、好ましくは9ヶ月間、より好ましくは12ヶ月間、さらに好ましくは24ヶ月間安定している。
【0036】
別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、少なくとも3ヶ月間、好ましくは9ヶ月間、より好ましくは12ヶ月間、さらに好ましくは24ヶ月間安定している。「本発明の水性処方物は安定している」とは、選択温度で(好ましくは約25℃で)3ヶ月、9ヶ月、12ヶ月または24ヶ月後に本発明の水性処方物中に存在するシクロスポリンの量の減少が、前記水性処方物の製造後、好ましくは、濾過工程を行う場合は濾過工程後、初期に存在する量と比べて、最大10%、好ましくは最大5%であることを意味する。特定の実施形態によれば、前記安定性は、本発明の処方物を10℃より低い、より具体的には約2℃〜約8℃間の温度で保存することにより改善することができる。
【0037】
有利な条件によれば、本発明の水性眼用処方物は、約2℃〜8℃ないし約15℃〜25℃間に含まれる温度で保存される。あるいは、本発明の処方物は、2℃〜8℃で一定期間保存され、15℃〜25℃間の温度で別の期間保存される。
【0038】
好ましい実施形態によれば、本発明の水性眼用処方物が、約0.02%のシクロスポリンを含有している場合、それを約2℃〜約8℃間に含まれる温度で保存することが有利である。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明の水性眼用処方物が、約0.01%のシクロスポリンを含有している場合、それを約25℃で保存することが有利である。
【0040】
本願において、用語「シクロスポリン」とは、特定のシクロスポリンを明記しない限り、シクロスポリン類の任意の個々のメンバーおよびそれらの混合物を包含すると理解すべきである。本発明の処方物に含め得るシクロスポリンは、天然起源のものでも合成起源のものでもよい。好ましい実施形態によれば、前記処方物に含まれるシクロスポリンは、シクロスポリンAである。特別の実施形態によれば、前記シクロスポリンは、シクロスポリン類似体例えば特許出願US20070087963において開示されているものである。シクロスポリンAは、例えばNeoral(商標)という商品名で市販されている(Novartis)。シクロスポリンAの構造的および機能的類似体としては、1以上のフッ素化アミノ酸を有するシクロスポリン(例えばUS5,227,467);修飾アミノ酸を有するシクロスポリン(例えばUS5,122,511およびUS4,798,823);および重水素化シクロスポリン、例えばISAtx247(特許出願US20020132763参照)が挙げられる。さらなるシクロスポリン類似体は、US6,136,357、US4,384,996、US5,284,826、およびUS5,709,797に記載されている。シクロスポリン類似体としては、限定されるものではないが、D−Sar([α]−SMe)<3>Val<2>−DH−Cs(209−825)、Allo−Thr−2−Cs、ノルバリン−2−Cs、D−Ala(3−アセチルアミノ)−8−Cs、Thr−2−Cs、およびD−MeSer−3−Cs、D−Ser(O−CHCH−OH)−8−Cs、およびD−Ser−8−Csが挙げられ、これらはCruz et al. (2000, Antimicrob. Agents Chemother. 44, 143-149)に記載されている。
【0041】
1つの特定の実施形態によれば、前記界面活性剤(b)は、眼に関する使用に許容される、非イオン性のものである。
【0042】
別の特定の実施形態によれば、前記界面活性剤(b)は、ポリソルベート、ポロクサマー(例えばポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)コポリマー、プルロニックF−68)、チロキサポールおよびレシチンからなる群の中から選択される。
【0043】
別の特定の実施形態によれば、前記界面活性剤(b)は、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート40(PS40)、ポリソルベート60(PS60)からなる群の中から選択され、好ましい実施形態では、ポリソルベート80(PS80)である。
【0044】
別の特定の実施形態によれば、前記非イオン性等張化剤(c)は、低分子量親水性ポリマー、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよび同様の炭水化物からなる群の中から選択される。
【0045】
別の特定の実施形態によれば、前記非イオン性等張化剤(c)は、低分子量親水性ポリマーであり、より特には、ポリエチレングリコール PEG(例えばPEG 200、PEG 300、PEG 400、PEG 600)、親水性ペプチド、多糖類、ポリエチレンオキシドからなる群から選択される。好ましくは、前記等張化剤は、ポリエチレングリコールであり、好ましくは、PEG 300である。
【0046】
特別の実施形態によれば、本発明は、(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)ポリソルベート80と(c)PEG 300とを含んでなるまたはからなる水性処方物を提供する。
【0047】
別の特定の実施形態によれば、前記緩衝剤(d)は存在し、それは酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、およびホウ酸塩または他の眼科学上許容される緩衝剤からなる群の中から選択される。好ましい実施形態によれば、前記緩衝剤は、前記水性処方物のpHを最大約25℃で少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、24ヶ月間、約4〜約7.5間、好ましくは約5〜約7間に維持するように選択される。好ましい実施形態では、前記緩衝剤は、前記水性処方物のpHを最大約25℃で少なくとも3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、24ヶ月間、約5〜約6.5間に維持するように選択される。
【0048】
本発明による水性処方物は、前記処方物の総重量に対して約0.004%〜約0,1%間、好ましくは約0,004%〜約0.05%(重量)間のシクロスポリンを好ましくは含んでなる。特別の実施形態によれば、シクロスポリンの有効量は、約0.001%〜約0.049%間(例えば、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、および0.005%)である。好ましい実施形態では、シクロスポリンの有効量は、約0.02%以下であり、さらに好ましい実施形態では、シクロスポリンの有効量は、約0.01%である。
【0049】
有利には、成分(b)の濃度は、前記水性処方物の総重量に対して約0.01〜約5重量%であり、好ましい実施形態では、本発明による処方物は、約0.5重量%未満の成分(b)を好ましくは含んでなる。特別の実施形態では、本発明による水性処方物は、約0.2重量%〜約0.3重量%の成分(b)を好ましくは含んでなる。
【0050】
本発明による水性処方物は、前記処方物の総重量に対して約9重量%未満のPEG300(化合物c)を好ましくは含んでなる。好ましい実施形態では、本発明による水性処方物は、7重量%のPEG300を好ましくは含んでなる。別の実施形態によれば、等モル量のPEG 200、400、または600を用いることができる。
【0051】
別の特定の実施形態によれば、前記緩衝剤(d)は、本発明の水性処方物中に存在し、約0.1%〜約0.5%間で含まれる(例えばクエン酸の場合にはw/v)。
【0052】
別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、(e)少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含んでなっている。1つの好ましい実施形態によれば、前記コルチコステロイド(e)は、治療量以下の有効量で存在し、前記シクロスポリン(a)は、前記治療量以下の有効量のコルチコステロイドによりもたらされる薬理学的効力を、シクロスポリンを含まない場合の同じ量のコルチコステロイドと比べて増強することができる有効量で存在する。
【0053】
本発明によれば、用語「コルチコステロイド」とは、水素化シクロペンタノペルヒドロ−フェナントレン環系によって特徴付けられ、免疫抑制および/または抗炎症活性を有する、いかなる天然または合成化合物をも意味する。天然に存在するコルチコステロイドは、一般的に、副腎皮質で生成される。合成コルチコステロイドはハロゲン化されていてもよい。
【0054】
コルチコステロイドの限定されない例は、1’−α,17−α,21−トリヒドロキシプレグン−4−エン−3,20−ジオン;11−β,16−α,17,21−テトラヒドロキシプレグン−4−エン−3,20−ジオン;11−β,16−α,17,21−テトラヒドロキシプレグン−1,4−ジエン−3,20−ジオン;11−β,17−α,21−トリヒドロキシ−6−α−メチルプレグン−4−エン−3,20−ジオン;11−デヒドロコルチコステロン;11−デオキシコルチゾール;11−ヒドロキシ−1,4−アンドロスタジエン−−3,17−ジオン;11−ケトテストステロン;14−ヒドロキシアンドロスタ−4−エン−3,6,17−トリオン;15,17−ジヒドロキシプロゲステロン;16−メチルヒドロコルチゾン;17,21−ジヒドロキシ−16−α−メチルプレグナ−1,4,9(11)−トリエン−3,20−ジオン;17−α−ヒドロキシプレグン−4−エン−3,20−ジオン;17−α−ヒドロキシプレグネノロン;17−ヒドロキシ−16−β−メチル−5−β−プレグン−9(11)−エン−3,20−ジオン;17−ヒドロキシ−4,6,8(14)−プレグナトリエン−3,20−ジオン;17−ヒドロキシプレグナ−4,9(11)−ジ−エン−3,20−ジオン;18−ヒドロキシコルチコステロン;18−ヒドロキシコルチゾン;18−オキソコルチゾール;21−アセトキシプレグネノロン;21−デオキシアルドステロン;21−デオキシコルチゾン;2−デオキシエクジソン;2−メチルコルチゾン;3−デヒドロエクジソン;4−プレグネン−17−α,20−β,21−トリオール−3,11−ジオン;6,17,20−トリヒドロキシプレグン−−4−エン−3−オン;6−α−ヒドロキシコルチゾール;6−α−フルオロプレドニゾロン、6−α−メチルプレドニゾロン、6−α−メチルプレドニゾロン 21−アセテート、6−α−メチルプレドニゾロン 21−ヘミスクシネートナトリウム塩、6−β−ヒドロキシコルチゾール、6−α,9−α−ジフルオロプレドニゾロン 21−アセテート 17−ブチレート、6−ヒドロキシコルチコステロン;6−ヒドロキシデキサメタゾン;6−ヒドロキシプレドニゾロン;9−フルオロコルチゾン;ジプロピオン酸アルクロメタゾン;アルドステロン;アルゲストン;アルファダーム(alphaderm):アマジノン;アムシノニド;アナゲストン;アンドロステンジオン;酢酸アネコルタブ;ベクロメタゾン;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;ベタメタゾン 17−バレレート;酢酸ベタメタゾンナトリウム;リン酸ベタメタゾンナトリウム;吉草酸ベタメタゾン;ボラステロン;ブデソニド;カルステロン;クロルマジノン;クロロプレドニゾン;酢酸クロロプレドニゾン;コレステロール;シクレソニド;クロベタゾール;プロピオン酸クロベタゾール;クロベタゾン;クロコルトロン;ピバル酸クロコルトロン;クロゲストン;クロプレドノール;コルチコステロン;コルチゾール;酢酸コルチゾール;酪酸コルチゾール;シピオン酸コルチゾール;オクタン酸コルチゾール;リン酸コルチゾールナトリウム;コハク酸コルチゾールナトリウム;吉草酸コルチゾール;コルチゾン;酢酸コルチゾン;コルチバゾール;コルトドキソン;ダツラオロン;デフラザコルト、21−デオキシコルチゾール、デヒドロエピアンドロステロン;デルマジノン;デオキシコルチコステロン;デプロドン;デスシノロン;デソニド;デスオキシメタゾン(desoximethasone);デキサフェン(dexafen);デキサメタゾン;デキサメタゾン 21−アセテート;酢酸デキサメタゾン;リン酸デキサメタゾンナトリウム;ジクロリソン;ジフロラゾン;二酢酸ジフロラゾン;ジフルコルトロン;ジフルプレドナート;ジヒドロエラテリシンa;ドモプレドナート;ドキシベタソール;エクジソン;エクジステロン;エモキソロン(emoxolone);エンドリソン;エノキソロン;フルアザコート;フルシノロン(flucinolone);フルクロロニド;フルドロコルチゾン;酢酸フルドロコルチゾン;フルゲストン(flugestone);フルメタゾン;ピバル酸フルメタゾン;フルモキソニド;フルニソリド;フルオシノロン;フルオシノロンアセトニド;フルオシノニド;フルオコルチンブチル;9−フルオロコルチゾン;フルオコルトロン;フルオロヒドロキシアンドロステンジオン;フルオロメトロン;酢酸フルオロメトロン;フルオキシメステロン;酢酸フルペロロン;フルプレドニデン;フルプレドニゾロン;フルランドレノリド;フルチカゾン;プロピオン酸フルチカゾン;ホルメボロン;ホルメスタン;ホルモコルタール;ゲストノロン;グリデリニン(glyderinine);ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタソール;ハロメタソン;ハロプレドン;ハロプロゲステロン;ヒドロコルタマート;ヒドロコルチオゾンシピオネート(hydrocortiosone cypionate);ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾン 21−ブチレート;アセポン酸ヒドロコルチゾン;酢酸ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンブテプレート(hydrocortisone buteprate);酪酸ヒドロコルチゾン;シピオン酸ヒドロコルチゾン;ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾンプロブテート(hydrocortiosone probutate);リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム;コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム;吉草酸ヒドロコルチゾン;ヒドロキシプロゲステロン;イノコステロン;イソフルプレドン;酢酸イソフルプレドン;イソプレドニデン;エタボン酸ロテプレドノール;メクロリゾン;メコルトロン;メドロゲストン;メドロキシプロゲステロン;メドリソン;メゲストロール;酢酸メゲストロール;メレンゲストロール;メプレドニゾン;メタンドロステノロン;メチルプレドニゾロン;アセポン酸メチルプレドニゾロン;酢酸メチルプレドニゾロン;ヘミコハク酸メチルプレドニゾロン;コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム;メチルテストステロン;メトリボロン;モメタゾン;フロ酸モメタゾン;フロ酸モメタゾン一水和物;ニゾン;ノメゲストロール;ノルゲストメト;ノルビニステロン;オキシメステロン;パラメタゾン;酢酸パラメタゾン;ポナステロン;プレドニカルバート;プレドニソラメート(prednisolamate);プレドニゾロン;プレドニゾロン 21−ジエチルアミノアセテート;プレドニゾロン 21−ヘミスクシネート;酢酸プレドニゾロン;ファルネシル酸プレドニゾロン;ヘミコハク酸プレドニゾロン;プレドニゾロン−21 (β−D−グルクロニド);メタスルホ安息香酸プレドニゾロン;リン酸プレドニゾロンナトリウム;プレドニゾロンステアグラート;テブト酸プレドニゾロン;テトラヒドロフタル酸プレドニゾロン;プレドニゾン;プレドニバール;プレドニリデン;プレグネノロン;プロシノニド;トラロニド;プロゲステロン;プロメゲストン;ラポンティステロン(rhapontisterone);リメキソロン;ロキシボロン;ルブロステロン;スチゾフィリン;チキソコルトール;トプテロン;トリアムシノロン;トリアムシノロンアセトニド;トリアムシノロンアセトニド 21−パルミテート;トリアムシノロンベネトニド;二酢酸トリアムシノロン;トリアムシノロンヘキサアセトニド;トリメゲストン;ツルケステロン;およびウォルトマンニンである。
【0055】
好ましい実施形態によれば、前記コルチコステロイドは、プレドニゾロン、好ましくは酢酸プレドニゾロンまたはリン酸プレドニゾロンナトリウムである。
【0056】
本明細書において、「少なくとも1つのコルチコステロイドの治療量以下の有効量」は、任意のアジュバントの不在下では、より具体的にはシクロスポリンの不在下では薬理学的効力が低いかまたは全くない、より具体的には抗炎症活性および/または抗アレルギー活性が低いかまたは全くない量と定義される。このような効力の低さまたは不在は、シクロスポリンの不在下で観察されるが、シクロスポリンの存在下では同じまたはほぼ同じ量のコルチコステロイドで薬理学的効力が実証される。これに関して、低量のコルチコステロイドとシクロスポリンとの組み合わせは、強力な薬理学的効力(例えば強力な抗炎症性の薬理学的反応)を有するが、薬物単独の(すなわちシクロスポリンを含まない)用量ではそのような効力はないという現象が観察される。
【0057】
本発明によれば、特別のコルチコステロイドの治療量以下の有効量は、前記コルチコステロイドの眼投与のための最低認可濃度より低い。
【0058】
本発明によれば、コルチコステロイドの治療量以下の有効量は、一般に、約0.01%〜約4%であり、より特には、コルチコステロイドは、約0.01%〜約1.0%(例えば、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)の量で存在する。特別の実施形態では、コルチコステロイドは、約0.01%〜約0.12%の量で存在する。
【0059】
コルチコステロイド用量の推奨用量は、以下のとおりである:
【表1】

【0060】
コルチコステロイドの他の標準推奨用量は、例えば、the Merck Manual of Diagnosis & Therapy (17th Ed. MH Beers et al., Merck & Co.)およびPhysicians' Desk Reference 2003 (57th Ed. Medical Economics Staff et al., Medical Economics Co., 2002)において提供されている。1つの実施形態では、投与するコルチコステロイドの用量は、本明細書において定義するように、プレドニゾロン用量に相当する用量である。例えば、コルチコステロイドの低用量は、プレドニゾロンの低用量に相当する用量と考えてよい。
【0061】
本発明によれば、1つのコルチコステロイドの治療量以下の有効量は、前記コルチコステロイドの最低認可濃度(上記表参照)、または好ましくは前記コルチコステロイドの最低認可濃度の95%以下のいずれかであってよい。例えば、本発明のコルチコステロイドの低濃度は、前記最低認可濃度の90%、85%、80%、70%、60%、50%、25%、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1%であり得る。
【0062】
眼投与では、例えば、ピバル酸クロコルトロンの低濃度w/vは、0.01%〜0.1%間(例えば、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、ヒドロコルチゾンの低濃度は、0.01%〜1.0%間(例えば、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、デキサメタゾンの低濃度は、0.01%〜0.1%間(例えば、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、フルオロメトロンの低濃度は、0.01%〜0.1%間(例えば、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、エタボン酸ロテプレドノールの低濃度は0.01%〜0.2%間(例えば、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、メドリソンの低濃度は、0.01%〜1.0%間(例えば、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、リメキソロンの低濃度は、0.01%〜1.0%間(例えば、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)であり、酢酸プレドニゾロンの低濃度は、0.01%〜0.12%間(例えば、0.12%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、および0.01%)である。
【0063】
1つの特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.12%w/vの酢酸プレドニゾロンと0.02%w/vのシクロスポリンとを含む。
【0064】
別の特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.12%w/v未満の酢酸プレドニゾロンと0.02%w/v未満のシクロスポリンとを含む。
【0065】
別の特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.02%w/v以下のシクロスポリンを含む。
【0066】
1つの特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.12%w/vの酢酸プレドニゾロンと0.01%w/vのシクロスポリンとを含む。
【0067】
別の特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.12%w/v未満の酢酸プレドニゾロンと0.01%w/v未満のシクロスポリンとを含む。
【0068】
1つの特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.024%w/vの酢酸プレドニゾロンと0.01%w/vのシクロスポリンとを含む。
【0069】
別の特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.024%w/v未満の酢酸プレドニゾロンと0.01%w/v未満のシクロスポリンとを含む。
【0070】
別の特別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、0.01%w/v以下のシクロスポリンを含む。
【0071】
別の実施形態によれば、本発明の水性処方物は、(f)沈殿防止剤をさらに含んでなっている。前記沈殿防止剤(f)は、活性薬物粒子を懸濁し、好ましくは適切な期間懸濁状態のままにすることが可能な水溶性ポリマーである。前記沈殿防止剤(f)は、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、カルボマー、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポビドン、天然ガム、ヒアルロン酸、可溶性デンプンからなる群から選択してよい。
【0072】
1つの特定の実施形態によれば、、前記沈殿防止剤(f)は、セルロース誘導体例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースである。
【0073】
特別の実施形態では、前記沈殿防止剤(f)は、セルロース誘導体であり、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosol(商標)、タイプ250 G−Pharm、Aqualon)である。別の実施形態によれば、他の粘度等級のヒドロキシエチルセルロースを用いてよい。
【0074】
前記沈殿防止剤(f)は、約0.05〜5%w/v、約0.2〜2.5%w/v、好ましくは約0.3〜1.75%w/vの濃度で用いることができる。
【0075】
1つの実施形態によれば、本発明の医薬処方物は、防腐剤(g)をさらに含んでなっている。前記防腐剤は、前記防腐剤がその懸濁液を微生物汚染から保護することができないという程度までに前記界面活性剤と相互作用していないことが好ましい。好ましい実施形態では、安全な防腐剤として塩化ベンザルコニウムを使用してよく、最も好ましくは塩化ベンザルコニウムとEDTAである。エデト酸二ナトリウムは、本処方物での微生物の増殖を抑制するのに効果的であることも分かっている。他の考えられる防腐剤としては、限定されるものではないが、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール、クロロブタノールおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。懸濁液に標準的な抗微生物活性を与え、前記処方物の成分の酸化から保護する防腐剤(または防腐剤の組み合わせ)を使用することが好ましい。
【0076】
これらの防腐剤は、約0.0001〜0.5%w/v、好ましくは約0.001〜0.015%の量で一般的に用いられる。特別の実施形態では、本発明の医薬処方物中に存在する防腐剤は、それぞれ0.01%w/vおよび0.01%w/vの塩化ベンザルコニウムおよびエデト酸二ナトリウムである。
【0077】
本発明の水性処方物のpHは、好ましくは約4〜約8間に(例えば約4〜約7.5)、より好ましくは約4〜約6.5間に含まれる。
【0078】
本発明の水性処方物は、治療的使用に適した、水不溶性薬物を含有する新規な医薬処方物を提供する。本発明は、(i)水溶液の少なくとも1つのシクロスポリンと(ii)水溶液の少なくとも1つのコルチコステロイドとの、すなわち、長期沈殿の後でも所望する場合には迅速な懸濁を可能にするような状態にある、平均粒径が約15μm未満、好ましくは約10μm未満、有利には約5μm未満である複数の粒子として、安定な水性処方物を提供する。
【0079】
本発明の水性処方物は、眼における治療的使用に適している。本発明の水性処方物は、驚くほど安定しており、長期沈殿の後でも所望する場合および必要に応じて迅速な懸濁に適した状態にある。本発明の水性処方物は、さらに、適用した際に不快感を感じさせない。
【0080】
本発明の水性処方物は、無菌調製により作製される。本発明の処方物に使用される総ての材料の純度レベルは、98%より高い。本発明の水性処方物は、前記活性薬物(a)および(e)と、含める場合は沈殿防止剤、界面活性剤、等張化剤、緩衝剤および防腐剤とを完全に混合することにより調製される。
【0081】
本発明は、さらに、本発明の水性処方物の製造のための方法に関する。当業者であれば、各実施形態には、様々な成分を組み合わせるために異なる順序が必要である場合があることは分かる。
【0082】
第1の実施形態によれば、前記方法は、次の工程を含んでなる(プロセスA):
部分Iの調製工程
室温で、所望の量の界面活性剤(b)と所望の量の等張化剤(c)と(例えばそれぞれポリソルベート80とPEG 300と)を合わせ、均一溶液を形成するために混合し、
所望の量のシクロスポリン(a)を加え、完全溶解まで混合する。
【0083】
部分IIの並行調製工程:
前記緩衝剤(d)および/または防腐剤(g)を含める場合は室温で精製水(最終処方物量の約80%)に溶解する。
【0084】
最終処方物のPHを指定値に調整する工程
部分Iおよび部分IIをプールし、シクロスポリンの均一性および完全溶解性を維持するために混合する。
【0085】
pHを調べ、必要に応じて再調整する。
【0086】
激しく混合しながら滅菌精製水で最終量に調整し、この最終処方物を均一になるまで混合する
【0087】
滅菌フィルター(例えば0.2μm)を通じて滅菌容器へと濾過による滅菌を行う。
【0088】
滅菌容器、好ましくは眼用容器に無菌充填する。
【0089】
前記水性処方物が非水溶性コルチコステロイド(例えば酢酸プレドニゾロン)を含有している別の実施形態によれば、前記方法は、次の工程を含んでなる(プロセスB):
部分Iの調製工程
所望の量の界面活性剤(b)を所望の量の等張化剤(c)と混合し
所望の量のシクロスポリン(a)を加え、(a)を完全溶解する
【0090】
部分IIの並行調製工程:
精製水(最終処方物量の約60%)を約65〜70℃に加熱し
所望の量の沈殿防止剤(f)を加え、溶解するまで混合し
この混合物を室温に冷却し、含める場合は所望の量の防腐剤(g)を加える
【0091】
部分Iおよび部分IIをプールし、所望の量の緩衝剤(d)を加え、混合する工程;pHを調整し、精製水で最終量の約90%に量を調整する;この調製物を混合し、必要に応じてpHを再調整する。この混合物を、好適な滅菌フィルターを用いて滅菌濾過し、この混合物に、激しく混合しながら所望の量の滅菌コルチコステロイド(e)を加えてコルチコステロイドの完全で均一な分散液にする。滅菌精製水で最終量に調整し、この最終処方物を均一になるまで混合し、滅菌容器、好ましくは眼用容器に無菌充填する。
【0092】
必要に応じて、部分IIの調製に代替順序を利用してよい。例えば水を加熱し前記ポリマーを添加する前に、まず前記非ポリマー成分を溶解してもよい。とりわけ効率的な高剪断ミキサーが使用可能な場合に利用する別の方法は、加熱によらない室温での部分IIの調製である。部分IIの他の成分の総てまたは一部の添加は、前記ポリマーの溶解前でも溶解後でもよい。当業者であれば、部分IIを調製するために使用することができる様々な手法は分かり、その部分IIは、部分Iおよびコルチコステロイドと合わせると同じ最終生成物が得られる。
【0093】
水不溶性コルチコステロイド(例えば酢酸プレドニゾロン)を含有する前記水性処方物の製造のための代替法を利用してもよい。前記方法は、次の工程を含んでなる(プロセスC):
部分Iの調製工程:
所望の量の界面活性剤(b)を精製水(部分Iの最終量の約85%)に溶解した後、この溶液を約65〜70℃に加熱し
所望の量の沈殿防止剤(f)を加え、溶解するまで混合し、部分Iの最終量の約90%に量を調整し
この混合物に、激しく混合しながら所望の量のコルチコステロイド(e)を加え、最終量に調整し、この最終処方物を均一になるまで混合し、オートクレーブ処理する(例えば121℃で1時間)。この部分のコルチコステロイド濃度は、2.5〜20%、約3〜10%、好ましくは3〜5%であってよい。
【0094】
部分IIAの調製工程:
所望の量の界面活性剤(b)を所望の量の等張化剤(C)と混合し
所望の量のシクロスポリン(a)を加え、(a)を完全溶解する
【0095】
部分IIBの調製工程:
精製水(部分IIの最終量の約75%)を約65〜70℃に加熱し
所望の量の沈殿防止剤(f)を加え、溶解するまで混合し
防腐剤(g)および緩衝剤(d)を溶解し、最終処方物のpHを指定値に調整する
【0096】
部分IIの調製工程:部分IIAおよび部分IIBをプールし、混合する。pHを調べ、必要に応じて再調整する。精製水で最終量に調整する。滅菌フィルター(例えば0.2μm)を通じて滅菌容器へと濾過による滅菌を行う。
【0097】
部分Iおよび部分IIを合わせる工程
部分Iを振盪し、ゆっくり混合しながら部分IIに加え、この最終処方物を滅菌容器、好ましくは眼用容器に無菌充填する。
【0098】
本発明は、さらに、本発明の方法により製造された水性処方物にも関する。
【0099】
本発明の別の態様では、本発明の水性処方物は、エストロゲン(例えばエストロジオール)、アンドロゲン(例えばテストステロン)レチノイン酸誘導体(例えば9−シス−レチノイン酸、13−トランス−レチノイン酸、オールトランスレチノイン酸)、ビタミンD誘導体(例えばカルシポトリオール、カルシポトリエン)、非ステロイド性抗炎症薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSR1;例えばフルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン)、三環系抗鬱薬(TCA;例えばマプロチリン、アモキサピン)、フェノキシフェノール(例えばトリクロサン)、アンチヒスタミニン(例えばロラタジン、エピナスチン)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばイブジラスト)、抗感染薬、プロテインキナーゼC阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、抗アポトーシス薬、増殖因子、栄養素ビタミン、不飽和脂肪酸、および/または本明細書において示す眼障害の治療のための眼用抗感染薬(例えばUS2003/0119786;WO2004/073614;WO2005/051293;US2004/0220153;WO2005/027839;WO2005/037203;WO03/0060026に開示されている化合物参照)からなる群の中から選択される化合物をさらに含むことができる。本発明のさらに他の実施形態では、これらの薬剤の混合物を用いてもよい。用いることができる眼用抗感染薬としては、限定されるものではないが、ペニシリン(アンピシリン、アジシリン(aziocillin)、カルベニシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、およびチカルシリン)、セファロスポリン(セファマンドール、セファゾリン、セフォタキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフトリアキソン、セファロチン、およびモキサラクタム)、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、およびネオマイシン)、種々の薬剤例えばアズトレオナム、バシトラシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、コトリモキサゾール、フシジン酸、イミペネム、メトロニダゾール、テイコプラニン、およびバンコマイシン)、抗真菌薬(アムホテリシンB、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、オキシコナゾール、およびテルコナゾール)、抗ウイルス薬(アシクロビル、エチルデオキシウリジン、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、トリフルリジン、ビダラビン、および(S)−1−(3−ジドロキシ−2−ホスホ−ニルウエトキシプロピル)シトシン((S)-1-(3-dydroxy-2-phospho-nyluethoxypropyl)-cytosine)(HPMPC))、抗悪性腫瘍薬(細胞周期非特異的薬例えばアルキル化剤(クロラムブシル、シクロホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、およびブスルファン)、アントラサイクリン系抗生物質(ドキソルビシン、ダウノマイシン、およびダクチノマイシン)、シスプラチン、およびニトロソ尿素)、代謝拮抗物質例えばピリミジン代謝拮抗薬(シタラビン、フルオロウラシルおよびアザシチジン)、葉酸代謝拮抗薬(メトトレキサート)、プリン代謝拮抗薬(メルカプトプリンおよびチオグアニン)、ブレオマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリシン(vincrisine)およびビンブラスチン)、ポドフィロトキシン(podophylotoxins)(エトポシド(VP−16))、およびニトロソ尿素(カルムスチン、(BCNU))、ならびにタンパク質分解酵素阻害剤例えばプラスミノーゲン活性化因子阻害剤が挙げられる。上記薬剤の局所および結膜下投与のための用量、ならびに硝子体内用量および硝子体半減期は、Intravitreal Surgery Principles and Practice, Peyman G A and Shulman, J Eds., 2nd edition, 1994, Appleton - Longe(この関連節は引用することにより明示的に本明細書の一部とされる)において見つけられ得る。
【0100】
本発明の水性処方物は、眼の病変の治療および/または予防に関して特に興味深いものである。
【0101】
別の実施形態によれば、本発明は、該処置を必要とする患者において、眼疾患、および関連の疾患または病気を抑制、治療、または予防するための方法であって、前記患者に、本発明の水性処方物を投与する工程を含んでなる方法に関する。
【0102】
用語「患者」とは、脊椎動物、特に哺乳類種のメンバーを意味し、限定されるものではないが、飼いならされた動物、スポーツ動物、霊長類(ヒトを含む)が挙げられる。用語「患者」とは、決して特別の疾患状態に限定されず、対象となる疾患を既に発症している患者と病気でない患者の両方を包含する。
【0103】
本明細書において、用語「治療(treatment)」または「治療する(こと)(treating)」とは、予防法および/または治療法を包含する。従って、本発明の処方物および方法は、治療用途に限定されず、予防用途にも用いることができる。そのため、ある状態、障害もしくは病気について「治療する(こと)」または「治療」とは:(i)該状態、障害もしくは病気に悩んでいるかまたは該状態、障害もしくは病気の素因があるが、該状態、障害もしくは病気の臨床もしくは亜臨床症状をまだ経験または表示していない被験体において発症する該状態、障害もしくは病気の臨床症状の発現を阻止または遅延すること、(ii)該状態、障害もしくは病気を抑制すること、すなわち該疾患またはその臨床もしくは亜臨床症状の少なくとも1つの発症を停止または軽減すること、あるいは(iii)該疾患を緩和すること、すなわち該状態、障害もしくは病気またはその臨床もしくは亜臨床症状の少なくとも1つを退行させることを含む。
【0104】
本発明に従って治療または対処することができる眼障害には、限定されるものではないが、滲出性および/または炎症性眼障害が含まれる。好ましい実施形態によれば、本発明により治療することができる眼障害は、前眼部の疾患または障害、すなわち、眼の前部(例えば水晶体嚢の後壁または毛様体筋の前方に位置する、眼周囲の筋肉、眼瞼または眼球組織または体液)に影響を及ぼす疾患または障害である。従って、前眼部の疾患または障害は、主に、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後方にあるが水晶体嚢の後壁の前方にある)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼部を血管化するかまたは神経支配する血管および神経に関係している。前眼部の疾患または障害の例は、前部ブドウ膜炎、アレルギー、無水晶体、偽水晶体、乱視、眼瞼痙攣、白内障、結膜疾患、結膜炎(アレルギー性結膜炎を含む)、角膜疾患、滲出性もしくは炎症性成分を伴う角膜の疾患もしくは混濁、角膜浮腫、角膜潰瘍、ドライアイ症候群、眼瞼疾患、涙器疾患、涙道閉塞症、レーザー誘発性滲出、近視、老眼、翼状片、瞳孔障害、屈折障害および斜視、細菌もしくはウイルスの感染および眼の手術が原因で起こる眼の炎症性疾患、眼の物理的損傷が原因で起こる眼の炎症性疾患、眼の炎症性疾患が原因で起こる症状(そう痒、発赤、浮腫および潰瘍を含む)、紅斑、多形滲出性紅斑、結節性紅斑、環状紅斑、浮腫性硬化症、皮膚炎、血管神経性浮腫、喉頭浮腫、声門浮腫、声門下喉頭炎、気管支炎、鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎、喉頭炎または中耳炎である。緑内障治療の臨床的目標は前眼房内の房水圧亢進を緩和する(すなわち眼内圧を低下させる)ことであることから、緑内障も前眼部の病気であると考えることができる。
【0105】
本発明の医薬処方物の投与は、好ましくは局所であるが、他の投与様式が有効である場合もある。好ましくは、前記眼用処方物は、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形で投与される。
【0106】
当業者であれば、本発明の方法において用いる医薬処方物の期間は、その処方物に使用する化合物の物理化学的および/または薬理学的性質、使用する化合物の濃度、治療する疾患、投与様式ならびに好ましい治療寿命のような因子によって異なることが理解できる。このバランスをとるところは、眼において必要な効果の寿命や治療中の病気によって決まることが多い。
【0107】
本発明の方法による治療の頻度は、治療中の疾患、活性化合物の送達可能な濃度によって決定される。また、投与頻度は、観察によって決定してもよく、前に送達した医薬処方物が肉眼で見えなくなったら用量を送達する。一般的に、化合物の有効量とは、症状の主観的緩和または医師もしくは他の有資格観察者によって指摘される客観的に確認可能な改善のいずれかを提供する量である。
【0108】
眼障害を予防または治療するための本発明の方法に用いるために調製した医薬処方物は、好ましくは、数時間〜数ヶ月、場合によって数年の滞留時間を有し、後者の期間の場合には、かかる期間を得るために特別の送達システムが必要でありかつ/あるいは反復投与が必要である。最も好ましくは、本発明の方法に用いる医薬処方物は、数時間(すなわち1〜24時間)、数日(すなわち1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日)または数週間(すなわち1週間、2週間、3週間、4週間)の滞留時間(すなわち眼内での期間)を有するであろう。また、前記医薬処方物は、少なくとも数ヶ月例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月の滞留時間を有し、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月ないし12ヶ月より長い滞留時間も達成可能である。
【0109】
必要に応じて、本発明の方法または使用は、単独でも、または1以上の従来の治療法と併用しても行うことができる(例えば光化学療法、レーザー手術、レーザー光凝固術または1以上の生物治療もしくは薬品治療。これらの方法は当業者には周知であり、文献において広く開示されている)。様々な治療アプローチを使用することによって、患者により幅広い介入を提供する。1つの実施形態では、本発明の方法に先立ちまたは続いて、外科的介入を行うことができる。もう1つの実施形態では、本発明の方法に先立ちまたは続いて、光化学療法、レーザー手術、レーザー光凝固術を行うことができる。当業者であれば、用いることができる適当な治療プロトコールおよびパラメーターを容易に策定することができる。
【0110】
本発明はさらに、上記の1以上の従来治療を受けている患者の治療を改善するための方法であって、本発明の水性処方物を含めた前記患者の同時治療を含んでなる方法に関する。
【0111】
当業者であれば、本明細書において記載する本発明は、具体的に記載したもの以外の変形および修飾が可能であることは理解できるであろう。本発明は、かかる総ての変形および修飾を含む。本発明はまた、本明細書において言及するかまたは示した工程、特徴、処方物および化合物を総て、個々にまたはひとまとめにして含み、さらに前記工程もしくは特徴のありとあらゆる組み合わせまたは任意の2つ以上も含む。
【0112】
本書において引用する各文書、参照文献、特許出願または特許は、そのまま引用することにより明示的に本明細書の一部とされ、これは、読者が本書において引用する各文書、参照文献、特許出願または特許を本書の一部として解釈し、考慮すべきであるということを意味する。本書において引用するそのような文書、参照文献、特許出願または特許は、本書では繰り返し記載してないが、これは単に簡潔にするという理由からである。
【0113】
本発明は、本明細書において記載する特定の実施形態によって範囲を限定してはならず、これらの実施形態は例示目的を意図したものに過ぎない。機能的に同等の生成物、処方物および方法は明らかに本明細書において記載する本発明の範囲内である。
【0114】
本明細書において記載する本発明は、1以上の値域を含み得る(例えばサイズ、濃度など)。値域は、範囲を定義している値を含むその範囲内の総ての値と、その範囲に隣接し、その範囲の境界を定義する値に直接隣接する値と同じまたは実質的に同じ結果をもたらす値を含むことは明らかである。
【実施例】
【0115】
実施例1:
1つの実施形態に従って、本発明の水性処方物を以下に詳述する。
プロセスBに従って前記処方物を調製した
化合物 %w/v
シクロスポリンA 0.02
酢酸プレドニゾロン、微粒 0.12
ポリソルベート80 0.30
PEG 300 7.00
塩化ベンザルコニウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 0.01
HEC 250 0.3
クエン酸(一水和物) 0.15
HCl/NaOH pH6.5+/−0.1
精製水 適量 100
【0116】
実施例2:
プロセスAに従って前記処方物を調製した(下記参照):
化合物 %w/v
シクロスポリンA 0.005
ポリソルベート80 0.30
PEG 300 7.00
塩化ベンザルコニウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸(一水和物) 0.15
HCl/NaOH pH6.5+/−0.1
精製水 qsp 100
【0117】
部分I
ポリソルベート80とPEG 300とを合わせ、均一溶液を形成するために混合する。シクロスポリンを加え、完全に溶解するまで混合する。
【0118】
部分II
室温で残りの成分を前記バッチの水の約80に溶解する。
PHを指定値に調整する
部分1を定量的に加え、シクロスポリンの均一性および完全溶解性を維持するために混合する。
pHを調べ、必要に応じて再調整する。
混合しながら十分な水をバッチ量まで加える。
滅菌フィルターを通じて滅菌容器へとバッチを無菌濾過する
滅菌眼用容器へ無菌充填する。
【0119】
実施例3:
1つの実施形態に従って、本発明の水性処方物を以下に詳述する。
プロセスBに従って前記処方物を調製した
化合物 %w/v
シクロスポリンA 0.01
酢酸プレドニゾロン、微粒 0.024
ポリソルベート80 0.30
PEG 300 7.00
塩化ベンザルコニウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 0.01
HEC 250 0.3
クエン酸(一水和物) 0.15
HCl/NaOH pH5.2+/−0.1
精製水 適量 100
【0120】
実施例4:
プロセスBに従って前記処方物を調製した
化合物 %w/v
シクロスポリンA 0.02
酢酸プレドニゾロン、微粒 0.12
ポリソルベート80 0.30
PEG 300 7.00
塩化ベンザルコニウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 0.01
HEC 250 0.3
クエン酸(一水和物) 0.15
HCl/NaOH pH5.2+/−0.1
精製水 適量 100
【0121】
実施例5:
プロセスAに従って前記処方物を調製した(上記参照):
化合物 %w/v
シクロスポリンA 0.005
ポリソルベート80 0.30
PEG 300 7.00
塩化ベンザルコニウム 0.01
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸(一水和物) 0.15
HCl/NaOH pH5.2+/−0.1
精製水 qsp 100
【0122】
実施例6:安定性データ
6.1. 以下の表により、実施例3の組成でのシクロスポリンAの、初期、ならびに25℃(40%相対湿度)および2〜8℃で6ヶ月保存時の安定性データを示す。
【表2】

【0123】
これらの結果は、保存期間中にシクロスポリンA濃度に有意な変化がなかったことを示し、良好な安定性を立証している。さらに、物理的外観、pHまたは浸透圧に関しても、6ヶ月の間に前記処方物において変化はなかった。
【0124】
6.2. 以下の表により、実施例4の組成でのシクロスポリンAの、初期、25℃(40%相対湿度)で3ヶ月保存時および2〜8℃で9ヶ月保存時の安定性データを示す。
【表3】

【0125】
これらの結果は、保存期間中にシクロスポリンA濃度にも物理的外観、pHまたは浸透圧にも有意な変化がなかったことを示し、良好な安定性を立証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)界面活性剤と(c)非イオン性等張化剤とを含んでなる水性処方物であって、前記処方物へのシクロスポリンの溶解性が約28μg/mLより高い、水性処方物。
【請求項2】
前記処方物へのシクロスポリンの溶解性が40μg/mLより高い、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項3】
(d)少なくとも緩衝剤をさらに含んでなり、pHが少なくとも3ヶ月間安定している、請求項1または2に記載の水性処方物。
【請求項4】
前記シクロスポリンがシクロスポリンAである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項5】
前記界面活性剤(b)が、ポリソルベート、ポロクサマー、チロキサポールおよびレシチンからなる群の中から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項6】
前記界面活性剤(b)が、ポリソルベート20(PS20)、ポリソルベート40(PS40)、ポリソルベート60(PS60)およびポリソルベート80(PS80)からなる群の中から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項7】
前記非イオン性等張化剤(c)が、低分子量親水性ポリマー、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよび同様の炭水化物からなる群の中から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項8】
(a)少なくとも1つのシクロスポリンと(b)ポリソルベート80と(c)PEG 300とを含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項9】
0.02%w/v以下のシクロスポリンを含有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性処方物。
【請求項10】
0.02%w/v以下のシクロスポリンを含有している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性処方物。

【公表番号】特表2010−540671(P2010−540671A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528310(P2010−528310)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008482
【国際公開番号】WO2009/046967
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508328855)フォベア、ファルマスティカル、ソシエテ、アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】FOVEA PHARMACEUTICALS SA
【Fターム(参考)】