説明

水性粘着剤組成物及びこれを用いた粘着シート

【課題】ウレタンフォームのような表面に凹凸を有する基材(発泡体)への密着性、接着性、初期粘着性、保持力に優れるとともに、耐熱性にも優れ、且つVOCの発生を極めて少なくすることのできる水性粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートを提供する。
【解決手段】2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、及びカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体成分を乳化重合して得られるポリマーエマルジョン(A)、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)、ならびに分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)からなる水性粘着剤組成物。また、前記水性粘着剤組成物からなる発泡体用水性粘着剤組成物であり、シートの少なくとも一方の面に、前記水性粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層された粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着テープ又は粘着ラベル等の粘着シートに関する。特に、本発明は、ウレタンフォームのような表面に凹凸を有する基材(発泡体)への密着性、接着性、初期粘着性、保持力に優れるとともに、耐熱性にも優れ、且つVOCの発生を極めて少なくすることのできる水性粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤性の粘着剤は基材への密着性などの諸物性に優れているため、多様な分野で活用されてきたが、近年、環境問題や、粘着剤を塗工する時の安全衛生等の観点から、VOCの発生が比較的少ない水性粘着剤の開発が進められている。しかし、水性粘着剤は有機溶剤性の粘着剤と比べ、基材がウレタンフォームのような表面に凹凸を有する発泡体であるような場合は、基材と粘着剤層との間での剥離が生じやすいという問題がある。このため、VOCの発生が少なく、基材との密着性、接着性、保持力に優れた水性粘着剤を開発すべく、種々の工夫が行われている。
【0003】
たとえば、ラジカル重合性不飽和単量体を界面活性剤の存在下で重合して得られるポリマーエマルジョンと、無機粒子、架橋有機粒子からなる粘着剤(特許文献1参照)や、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体と粘着付与剤として安定化ロジンエステル樹脂を含有する粘着剤組成物(特許文献2参照)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、重合性不飽和カルボン酸、アルコール性水酸基を有する共重合可能なビニルモノマー、アセトアセトキシエチルメタクリレートと、テルペン系粘着付与樹脂とからなる混合物を、乳化重合して得られる水性粘着剤組成物(特許文献3参照)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、85℃を超える軟化点を有する固形樹脂を含む混合物を、乳化重合して得られる水性分散体(特許文献4参照)が開示されている。しかし、これらのいずれもロジン系やテルペン系の粘着付与剤を用いており、VOCの発生を十分に抑制できているわけではなく、また、発泡体への基材密着性、接着性、初期粘着性、保持力、耐熱性も十分なものとはいえなかった。
【0004】
また、ポリオレフィン被着体への接着性、接着保持力を改良するため、たとえば、カルボニル基含有ポリマーのエマルジョンと、分子中に2つ以上のヒドラジノ基を含む化合物と、沸点が100℃以下のケトン系溶剤とを含有する水性粘着剤組成物(特許文献5参照)が開示されている。さらには、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性不飽和モノマー、ロジン系粘着付与樹脂を含有する粘着付与樹脂等からなるモノマー含有エマルジョンを重合して得られるエマルジョン型粘着剤(特許文献6参照)も開示されている。これらはヒドラジノ基を有する架橋剤を用いて基材への接着性を改良するものであるが、ロジン系やテルペン系の粘着付与剤を用いており、VOCが発生するという問題を十分に解決できるものではなかった。
【0005】
さらには、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、アルキル(メタ)アクリレートを含有する重合性単量体成分を乳化重合して得られるアクリル系重合体に、更に油溶性エポキシ化合物により架橋させたアクリル系水性粘着剤(特許文献7参照)、重量平均分子量が40万〜90万であるアクリル系水分散型共重合体と、重量平均分子量が5000〜25万であるアクリル系水分散型低分子量成分とを含有するアクリル系水分散型粘着剤組成物(特許文献8参照)、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと酸性基を有するビニルモノマーを、水溶性アゾ系開始剤を用いて乳化重合することにより得られるアクリル系粘着樹脂に、粘着付与剤としてテルペン系樹脂を用いること(特許文献9参照)が開示されている。これらはエポキシ基を有する架橋剤を用いて基材への接着性を改良するものであるが、ロジン系やテルペン系の粘着付与剤を用いており、VOCの発生を十分に抑制できるものではなかった。
【0006】
一方、基材への接着性等の諸物性だけではなく、VOCの発生を抑制するための提案もなされている。たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体エマルジョンと粘着付与樹脂を含有し、JIS A1901法(小形チャンバー法)で測定した総揮発性有機化合物が3000μg/m以下である水性粘着剤(特許文献10参照)や、ホルムアルデヒドの放散量が3μg/m未満で、且つトルエンの放散量が10μg/g以下である粘着シート(特許文献11参照)が開示されている。しかし、いずれの場合も、発泡体への基材密着性、接着性、初期粘着性、保持力、耐熱性は十分なものであるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−169569号公報
【特許文献2】特開2006−96895号公報
【特許文献3】特開2008−81564号公報
【特許文献4】特開2008−81691号公報
【特許文献5】特開2008−7724号公報
【特許文献6】特開2007−224185号公報
【特許文献7】特開2007−217594号公報
【特許文献8】特開2007−262380号公報
【特許文献9】特開2006−348143号公報
【特許文献10】特開2005−307114号公報
【特許文献11】特開2006−111818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ウレタンフォームのような表面に凹凸を有する基材(発泡体)への密着性、接着性、初期粘着性、保持力に優れるとともに、耐熱性に優れ、且つVOCの発生を極めて少なくすることのできる水性粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を、及びカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体成分を乳化重合して得られるポリマーエマルジョン(A)、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)、ならびに分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)からなる水性粘着剤組成物に関する。
【0010】
また、水性粘着剤組成物は、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)を含有することが好ましい。
【0011】
分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)は、式(1):
【化1】


(式中、nは1〜22の整数である)で表される化合物であることが好ましい。
【0012】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)0.1〜10質量部を含有することが好ましい。
【0013】
2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は、それぞれエチレン性不飽和単量体成分に対し、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0014】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和単量体成分に対し、0.05〜5質量%であることが好ましい。
【0015】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)1〜15質量部を含有することが好ましい。
【0016】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)0.1〜5質量部を含有することが好ましい。
【0017】
本発明は、前記水性粘着剤組成物からなる発泡体用水性粘着剤組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、シートの少なくとも一方の面に、前記水性粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層された粘着シートに関する。特に、シート(基材)が発泡体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウレタンフォームのような表面に凹凸を有する基材(発泡体)への密着性、接着性(剥離力)、初期粘着性、保持力に優れるとともに、耐熱性に優れ、且つVOCの発生を極めて少なくすることのできる水性粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水性粘着剤組成物は、2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、及びカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体成分を乳化重合して得られるポリマーエマルジョン(A)、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)、ならびに分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)からなる。
【0021】
ポリマーエマルジョン(A)の製造に用いられるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸エステル(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)クリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等)、複素環式ビニル化合物(ビニルピロリドン等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレンレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコール(メタ)アクリレート、ブチレングリコール(メタ)アクリレート等)、アルキルアミノ(メタ)アクリレート(N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等)、ビニルエステル化合物(蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチツク酸ビニル)、モノオレフィン化合物(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等)、共役ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)、アミンイミド基含有ビニル化合物(1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミドなど)、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、アミド基もしくは置換アミド基含有α,β−エチレン性不飽和化合物((メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、スルホン酸基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(スルホン酸アリル、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等)、エチレン性不飽和基含有紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなど)、エチレン性不飽和基含有光安定剤(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなど)等の公知の重合性ビニル化合物があげられる。なかでも、重合性単量体成分の重合時の安定性に優れる点で、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0022】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、α,β−不飽和モノまたはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマー、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸等)、カルボキシル基含有ビニル化合物(フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シュウ酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)があげられる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は、ポリマーエマルジョン(A)中に2種類以上使用する。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体の組み合わせはどのようなものであってもよいが、耐熱性の点からアクリル酸とメタクリル酸の組み合わせが特に好ましい。
【0023】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は、ポリマーエマルジョン(A)の製造に用いられるエチレン性不飽和単量体の全成分(カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体も含む)に対し、それぞれ0.1〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が、エチレン性不飽和単量体の全成分に対し、0.1質量%より少ないと、架橋速度が低下し、十分な架橋密度が確保しにくくなるため、耐熱性、保持力などが不十分となり、5質量%より多いと、粘着物性の低下やコスト高となる傾向にある。
【0024】
例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を2種用いる場合、これらの中でホモポリマーとしたときのガラス転移温度が低い方の単量体を単量体(A)とし、ガラス転移温度が高い方の単量体を単量体(B)とする。この場合、単量体(A)と単量体(B)の質量比が1/5〜5/1であることが好ましい。単量体(A)と単量体(B)の質量比がこの範囲外となると、耐熱保持力や軟化点が低下する傾向にある。特にアクリル酸とメタクリル酸の質量比は、1/3〜3/1であることが好ましい。アクリル酸とメタクリル酸の質量比がこの範囲外となると、耐熱保持力や軟化点が低下する傾向にある。
【0025】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体は、分子中にケト基又はアルデヒド基を有するもので、後述する分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)と架橋反応する成分である。エチレン性不飽和単量体成分に含まれるカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクロレイン、ダイアセトンアクリルアマイド、アルキルビニルケトン(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等)、ダイアセトン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトニトリル(メタ)アクリレート、ホルミルスチレンがあげられる。なかでも、ダイアセトンアクリルアマイド、(メタ)アクロレイン等が、重合時の安定性が優れる点で好ましい。カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体は、ポリマーエマルジョン(A)の製造に用いられるエチレン性不飽和単量体の全成分(2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体も含む)に対し、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましい。カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体が、エチレン性不飽和単量体の全成分に対し、0.05質量%より少ないと、架橋速度が低下し、十分な架橋密度が確保しにくくなるため、耐熱性、保持力などが不十分となり、5質量%より多いと、粘着物性の低下やコスト高となる傾向にある。
【0026】
また、必要に応じて、エチレン性不飽和単量体に架橋性モノマーを使用しても良い。架橋性モノマーとしては、エポキシ基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等)、加水分解性アルコキシシリル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、多官能ビニル化合物(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等)等があげられる。
【0027】
ポリマーエマルジョン(A)のガラス転移温度は、−60〜−10℃であることが好ましく、−60〜−30℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が、−60℃より低いと、ポリマーの凝集力が低く、耐熱性、保持力、ダイカット性等が不十分となり、−10℃より高いと、粘着性が低く特に初期粘着力が不十分となる傾向にある。
【0028】
ポリマーエマルジョン(A)の製造に使用できる界面活性剤は、特に限定されない。具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、セシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルベダイン等の両性界面活性剤、その他反応性界面活性剤等があげられる。これらの界面活性剤は、単独で使用しても混合して使用しても良い。
【0029】
乳化重合において使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過酸化物類、過酸化水素等があげられる。これらの重合開始剤は単独で使用しても、混合して使用しても良い。
【0030】
また、必要に応じて、これら重合開始剤と共に還元剤を使用できる。このような還元剤としては、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等があげられる。
【0031】
更にまた、乳化重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を使用できるが、基材密着性、接着性、初期粘着性、保持力などの物性が問題とならないように使用量を検討すべきで、その用途、仕様に応じて使用量の調整を行う。このような連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、メチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等があげられる。
【0032】
本発明で用いられる粘着付与剤(B)は石油系樹脂からなる。ポリマーエマルジョン(A)に添加する時の作業性や水性粘着剤組成物の貯蔵安定性の点から、エマルジョン型のものを用いることが好ましい。石油系樹脂を用いることにより、ロジン系やテルペン系の粘着付与剤を用いた場合と異なり、トルエンやアセトアルデヒド等のVOCの発生を抑制することができる。石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂又はこれらの水素添加物があげられる。芳香族系炭化水素樹脂は、例えば、炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン)の重合体があげられる。脂肪族系環状炭化水素樹脂は、「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた重合体、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテンなど)の重合体などがあげられる。脂肪族・芳香族系石油樹脂は、スチレン−オレフィン系共重合体などがあげられる。なかでも、ポリオレフィン基材に対する密着性、ポリマーへの相溶性の点で、式(2):
【化2】


の構造式で表される骨格を有する石油系樹脂、又はこの石油系樹脂を水素化した式(3):

【化3】


の構造式で表される骨格を有する石油系樹脂が好ましい。これらの石油系樹脂は単独で使用してもよく、または混合して使用しても良い。また、式(2)の構造式で表される骨格を有する石油系樹脂を、部分的に水素化したものであっても良い。石油系樹脂中の芳香環に対する水素化率は50〜100%が好ましく、50%より少なくなると、臭気、色調、加熱安定性、耐候性が悪化する。石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)は、粘着性を付与する効果に優れているという点から、数平均分子量が600〜1000であることが好ましい。また、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)は、粘着性を付与する効果に優れているという点から、軟化点が80〜150℃であることが好ましい。石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)は、ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、1〜15質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。1質量部より少ないと、ポリオレフィンに対する密着性が低下し、15質量部より多いと、ポリマーとの相溶性が悪くなり、ポリマー皮膜が白化する傾向にある。
【0033】
分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)は、すでに述べたように、ポリマーエマルジョン(A)中のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体由来のケト基又はアルデヒド基と架橋反応を行うものであるが、ホルムアルデヒドなどの低分子有機化合物のキャッチャー剤としても有効に働くため、VOCの発生を低く抑えることが可能となる。分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)としては、例えば、多価カルボン酸のジヒドラジド類(コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド)、1,3,5−トリ(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどが挙げられる。なかでも、反応性、水への溶解度の点からアジピン酸ジヒドラジド、1,3,5−トリ(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートが好ましい。
【0034】
分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)は、ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。0.1質量部より少ないと、架橋効率が低く、かつ低分子有機化合物のキャッチャー効果も低くなるため有効ではない。5質量部より多いと、化合物が析出したり、架橋が早すぎ基材への投錨不良を起こす場合がある。また、化合物(C)中のヒドラジノ基と、カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体とのモル比は1/10〜10/1であることが好ましい。10/1より化合物(C)中のヒドラジノ基とカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体とのモル比が大きい、すなわちヒドラジノ基が多くなると、化合物が析出したり、架橋が早すぎ基材への投錨不良を起こす場合があり、1/10より化合物(C)中のヒドラジノ基とカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体とのモル比が小さい、すなわちヒドラジノ基が少なくなると、架橋効率が低く、かつ低分子有機化合物のキャッチャー効果も低くなるため有効ではない。
【0035】
さらに、本発明の水性粘着剤組成物は、基材密着性、接着性、初期粘着性、保持力、耐熱性の観点から、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)を含有することが好ましい。架橋剤(D)は、ポリマーエマルジョン(A)との架橋反応性、ポリマーエマルジョン中への分散性の点から、水溶性であることが好ましい。架橋剤(D)中のエポキシ基は、カルボキシル基、アミノ基又はヒドロキシル基等と反応するものであり、ポリマーエマルジョン(A)中の(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来のヒドロキシル基と好適に架橋反応を行う。本発明の水性粘着剤組成物を用いて粘着シートの加工を行なった場合、架橋剤(D)による架橋反応は加工後も徐々に進行するため、粘着シートの加工後に養生期間を設けることで、基材密着性、接着性、初期粘着性、保持力、耐熱性が向上することとなる。
【0036】
分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)の分子構造は特に限定されないが、例えば、式(1):
【化4】


(式中、nは1〜22の整数である)で表される化合物、式(4):
【化5】


(式中、mは1〜11の整数である)で表される化合物、式(5):

【化6】


(式中、Rは水素又は式(6):
【化7】


で表される基である)で表される化合物、式(7):
【化8】


(式中、pは2又は3である)で表される化合物、式(8):
【化9】


で表される化合物、式(9):


【化10】


で表される化合物、式(10):
【化11】


があげられる。なかでも、架橋反応性、ポリマーエマルジョン中への分散性の点で、式(1)で表される化合物が好ましい。式(1)で表される化合物において、nは1〜22であることが好ましく、1〜13であることがより好ましい。また、1〜9であることがさらに好ましい。nが22より大きくなると、取り扱いにくくなる傾向にある。また、式(4)で表される化合物において、mは1〜11であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。mが11より大きくなると、水溶率が低下もしくは、水に不溶となりポリマーエマルジョン中への分散性が悪くなる傾向にある。
【0037】
架橋剤(D)は、ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好ましい。0.1質量部より少ないと、架橋速度が低下し、十分な架橋密度が確保しにくくなるため、耐熱性、保持力などが不十分となり、10質量部より多いと、架橋が早すぎ基材への投錨不良を起こしたり、ポリマーの凝集力が高くなり、接着力、初期粘着力が不十分となる傾向にある。
【0038】
本発明の水性粘着剤組成物を粘着剤として用いる場合の被着体としては、特に限定はされず、紙、プラスチックフィルム、金属、ガラス、織布、不織布、表面に凹凸を有する発泡体があげられるが、なかでも発泡体に好適に用いることができる。発泡体としては、例えば、ポリウレタン製、ゴム製、EPDM製などがあげられる。また、本発明はシートの少なくとも一方の面に、前記水性粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層された粘着シートに関する。シート(基材)の素材は特に限定されるものではなく、紙、プラスチックフィルム、金属、ガラス、織布、不織布、表面に凹凸を有する発泡体等の素材をあげることができるが、なかでもポリウレタン製、ゴム製、EPDM製などの発泡体がシートの素材として好適に用いられる。
【0039】
本発明の水性粘着剤組成物及び粘着シートの用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車、住宅、家電製品等において、防音、防塵、気密及び防湿等の目的で利用することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例、比較例及び参考例中の「部」は質量部を示す。
【0041】
(ポリマーエマルジョン(i)の製造)
還流冷却器、攪拌機、温度計窒素導入管、原料投入口を具備する容積2Lの4つ口フラスコ(以下、反応容器という)に、イオン交換水189部、乳化剤アクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)1部を入れ、内温を78℃まで加温した。一方、単量体として、n−ブチルアクリレート213.5部、2−エチルヘキシルアクリレート213.5部、メチルメタクリレート72部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.29部、アクリル酸5.43部、メタクリル酸5.15部、ダイアセトンアクリルアマイド0.43部、連鎖移動剤として2−エチルヘキシルチオグリコレート0.86部、乳化剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)4.3部及びイオン交換水200部の混合物をホモミキサーで乳化し、単量体エマルジョンを作製した。上記の反応容器中に、単量体エマルジョンの3%を添加し、同時に過硫酸カリウム(以下、KPSという)0.31部を添加して乳化重合を開始した。次いで、反応容器中にKPSを添加してから20分後に、単量体エマルジョンの残り97%と、KPS1.08部をイオン交換水16部で溶解した溶液をそれぞれ3.5時間かけて滴下した。この間、反応容器内は80℃に保った。滴下終了後、1時間、80℃に保ち、熟成を行った。その後、65℃まで冷却し、t−ブチルヒドロパーオキシド1部、重亜硫酸ナトリウム1部及びイオン交換水10を添加し、未反応の単量体を反応させた。65℃のまま、3時間保持した後、35%アンモニア水6部を添加し、冷却を開始した。得られたポリマーエマルジョン(i)は固形分50.9%(測定方法:105℃において1時間乾燥し、残分を測定することで求めた。)、pH8、粘度1700mPa・s(測定方法:23℃において、BL型粘度計でNo.4ローターを用い、10rpmにて測定。以下の実施例、比較例及び参考例において同様の方法にて測定した)、平均粒子径150nm(日機装株式会社製、マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)を測定。以下の実験例において、同様の方法にて測定した)であった。
【0042】
(ポリマーエマルジョン(ii)の製造)
重合に使用する単量体中のアクリル酸を10.86部、メタクリル酸を10.30部とし、反応終了後に添加するアンモニア水を10部とした以外は、ポリマーエマルジョン(i)の製造と同様の操作を行い、ポリマーエマルジョン(ii)を得た。ポリマーエマルジョン(ii)は固形分51.5%、pH8、粘度2000mPa・s、平均粒子径150nmであった。
【0043】
(ポリマーエマルジョン(iii)の製造)
重合に使用するカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体をアクリル酸10.86部のみとし、反応終了後に添加するアンモニア水を6部とした以外は、ポリマーエマルジョン(i)の製造と同様の操作を行い、ポリマーエマルジョン(iii)を得た。ポリマーエマルジョン(iii)は固形分51.0%、pH8、粘度1500mPa・s、平均粒子径150nmであった。
【0044】
(ポリマーエマルジョン(iv)の製造)
重合に使用するカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体をメタクリル酸10.30部のみとし、反応終了後に添加するアンモニア水を6部とした以外は、ポリマーエマルジョン(i)の製造と同様の操作を行い、ポリマーエマルジョン(iv)を得た。ポリマーエマルジョン(iv)は固形分51.2%、pH8、粘度1300mPa・s、平均粒子径150nmであった。
【0045】
(実施例1)
得られたポリマーエマルジョン(i)100部に対し、エマルジョン型石油樹脂系粘着付与樹脂(荒川化学工業株式会社製、アルコンM−100(前記式(2)の構造式からなる骨格を有する石油系樹脂の水素化物、芳香環水素化率56%、数平均分子量800、固形分濃度50%、軟化点100℃)6.6部、アジピン酸ジヒドラジド0.2部、水3.8部、消泡剤(商品名:アデカネートB−940、株式会社ADEKA製)0.1部、防腐剤(商品名:ネオシントールBC−60、住化エンビロサイエンス株式会社製)0.05部、濡れ剤(商品名:サーフィノールSE−F、エアープロダクツジャパン株式会社製)0.1部を加え、さらに増粘剤(商品名:プライマルASE−60、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)0.9部、架橋剤デナコールEX810(ナガセケムテックス株式会社製、前記式(1)で表されるエポキシ基を有する化合物)0.1部を添加し、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0046】
(実施例2)
ポリマーエマルジョン(i)100部の代わりに、ポリマーエマルジョン(ii)100部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0047】
(比較例1)
ポリマーエマルジョン(i)100部の代わりに、ポリマーエマルジョン(iii)100部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0048】
(比較例2)
ポリマーエマルジョン(i)100部の代わりに、ポリマーエマルジョン(iv)100部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0049】
(比較例3)
エマルジョン型石油樹脂系粘着付与樹脂の代わりに、スーパーエステルE−865NT(荒川化学工業株式会社製、ロジン系粘着付与樹脂、固形分50%)6.6部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が18000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0050】
(実施例3)
デナコールEX810を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0051】
(実施例4)
デナコールEX810の代わりに、アクアネートAQ−200(日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート系架橋剤)0.25部を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0052】
(比較例4)
デナコールEX810を添加しなかったこと以外は比較例1と同様の操作を行い、粘度が15000mPa・sの水性粘着剤組成物を得た。
【0053】
(試験片の作成方法)
離型紙の表面に、乾燥後の固形分が60g/mとなるように得られた水性粘着剤組成物を塗布し、105℃で2分間乾燥して粘着シートを作成した。この粘着シートを23℃×50%RHの雰囲気下で、クリアランス1mmのローラーに1回通すことで、ポリエーテル型ウレタン発泡体へ貼り合わせ、試験片を完成させた。
【0054】
得られた試験片の各種物性評価は以下の方法により行った。
(基材密着性)
得られた試験片の粘着剤層面に指を押し当て、ゆっくりと引き剥がした際の粘着剤層、ウレタン発泡体の破壊状態を目視にて評価した。
○;粘着剤層の指への転着は無く、試験片は原型を保持した。或いはウレタン発泡体が破壊し、粘着剤層がウレタン発泡体と密着したまま指に転着した。
×;粘着剤層がウレタン発泡体から離れ、指に転着し、粘着剤層が破壊した。或いは粘着剤層の指への転着は無かったが、粘着剤層がウレタン発泡体から分離した。
【0055】
(90°剥離力)
23℃×50%RHの雰囲気下で、25mm×250mmの試験片を貼合面積が25mm×125mmとなるよう被着体(SUS#304板)に2kgローラーを1往復させて貼合し、20分間放置後の90°剥離力を測定した。剥離速度は300mm/minで行った。
【0056】
(軟化点)
23℃×50%RHの雰囲気下で、25mm×150mmの試験片を被着体(SUS#304板)に2kgローラーを1往復させて貼合し24時間放置した。その後、310gの荷重をかけ、3℃/5min.の速度で昇温し、落下した温度を測定した。貼合面積は25mm×25mmとした。
【0057】
(耐熱90°保持力)
23℃×50%RHの雰囲気下で、50mm×150mmの試験片を貼合面積が50mm×120mmになるように被着体(SUS#304板)に2kgローラーを1往復させて貼合し24時間放置した。その後、80℃雰囲気下で100gの荷重をかけ、20分後のズレまたは落下した時間を測定した。
【0058】
(初期粘着力)
23℃×50%RHの雰囲気下で、25mm×120mmの試験片に、10gの分銅(底面積1cm)を自重で貼り合わせ、3秒放置後の初期粘着力を測定した。剥離速度は200mm/minで行った。
【0059】
(保持力)
23℃×50%RHの雰囲気下で、25mm×150mmの試験片を被着体(SUS#304板)に2kgローラーを1往復させて貼合して20分間放置し、保持力を測定した。試験片には500gの荷重をかけ、1時間後の被着体と試験片とのズレを測定した。貼合面積は25mm×25mmとした。
【0060】
(VOCの測定)
80cmの試験片を用いて、テドラーバック法にて測定を行った。テドラーバック法とは、テドラーバックにセットされた対象製品から放散されるVOCをガス吸着管にて捕集し、その成分を高速液体クロマトグラフ法、またはガスクロマトグラフ質量分析法によって分析・測定する方法である。
【0061】
実施例1〜4、比較例1〜4の工程で得られた、水性粘着剤組成物の各種物性評価結果を表1及び表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例1、2と比較例1〜3及び実施例3,4と比較例4の比較から、本発明の水性粘着剤組成物は、VOCの発生量が少なく、ウレタンフォームのような表面に凹凸を有する基材(発泡体)への密着性、90°剥離力(接着性)、軟化点、耐熱90°保持力、初期粘着性、保持力にも優れていることがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、及びカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体成分を乳化重合して得られるポリマーエマルジョン(A)、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)、ならびに分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)からなる水性粘着剤組成物。
【請求項2】
さらに、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)を含有する請求項1記載の水性粘着剤組成物。
【請求項3】
分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)が、式(1):
【化1】


(式中、nは1〜22の整数である)で表される化合物である請求項2記載の水性粘着剤組成物。
【請求項4】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する架橋剤(D)0.1〜10質量部を含有する請求項2又は3記載の水性粘着剤組成物。
【請求項5】
2種類以上のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が、それぞれエチレン性不飽和単量体成分に対し、0.1〜5質量%である請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の水性粘着剤組成物。
【請求項6】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体が、エチレン性不飽和単量体成分に対し、0.05〜5質量%である請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の水性粘着剤組成物。
【請求項7】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、石油系樹脂からなる粘着付与剤(B)1〜15質量部を含有する請求項1、2、3、4、5又は6記載の水性粘着剤組成物。
【請求項8】
ポリマーエマルジョン(A)の固形分100質量部に対し、分子中に少なくとも2つのヒドラジノ基を有する化合物(C)0.1〜5質量部を含有する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水性粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれかに記載の水性粘着剤組成物からなる発泡体用水性粘着剤組成物。
【請求項10】
シートの少なくとも一方の面に、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8のいずれかに記載の水性粘着剤組成物から形成される粘着剤層が積層された粘着シート。
【請求項11】
シートが発泡体である請求項10記載の粘着シート。


【公開番号】特開2011−137088(P2011−137088A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298009(P2009−298009)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】