説明

水性組成物に添加する無機物質の自己分散特性改良剤としてのグリセロールの使用

【課題】水性組成物に添加する無機物質の自己分散特性改良剤としてのグリセロールの使用。
【解決手段】本発明は、グリセロールおよび/またはポリグリセロールを含む配合組成物の、無機物質の乾式粉砕段階での上記無機物質の水性組成物中への自己分散特性の改良剤としての使用にある。この使用によって最終組成物の直後の粘度が下がり、粘度が経時的に安定する。さらに、水中分散段階で発生する泡の量が減る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性懸濁液、塗料または皮膜分散液のような水性組成物中で用いられる、始めは粉砕された乾燥状態にある無機物質(天然炭酸カルシウムを含む)の分散を容易にする技術的解決方法に関するものである。
【0002】
この解決方法は、乾式粉砕中にグリセロールおよび/またはポリグリセロールを含む配合組成物を使用することをベースにしたものである。グリセロールは再生可能な非化石エネルギー由来の資源であるので、この解決方法は「環境に優しい化学」の概念および「持続可能な発展」に適合したものである。本発明が提案する解決方法は、水への分散が容易であることに加えて、水性塗料および紙加工等の用途で極めて重要な無機物質の水中分散段階での泡の発生を大幅に減らすことができる。
【背景技術】
【0003】
今日の無機産業は化学薬品を大量に消費する産業であり、無機物質に種々の変換(transformation)/改質/加工を行う段階で化学薬品を大量に使用する。天然炭酸カルシウム等の無機材料の乾式粉砕はそうした段階の一つである。
【0004】
粉砕は「粉砕助剤」とよばれる試薬の存在下で行われる。この粉砕助剤の役目は機械的粉砕作用を容易にすることにある。これに関しては非特許文献1および非特許文献2に詳細に記載されている。
【0005】
添加剤に関する従来技術は多数ある。添加剤は3つの種類すなわち弱ブレンステッド酸、弱ブレンステッド塩基およびルイス塩基に分けることができる。弱ブレンステッド酸の第1グループにはギ酸、酢酸、乳酸、亜炭酸、アジピン酸、乳酸、脂肪酸、特にパルミチン酸およびステアリン酸が含まれ、さらにこれらの酸の塩、例えばリグニンスルホン酸塩も含まれる。これらに関する説明は特許文献1(国際特許第WO 2005/063399号公報)および特許文献2(フランス国特許第2 203 670号公報)に記載されている。
【0006】
第2グループは弱ブレンステッド塩基から成る。このグループには特にアルカノールアミン、例えば当業者に周知のTIPA(トリイソプロパノールアミン)およびTEA(トリエタノールアミン)が含まれる。これらに関しては特許文献3(欧州特許第0 510 890号公報)および特許文献4(英国特許第2 179 268号公報)を参照されたい。
【0007】
乾式粉砕助剤の第3グループを構成するルイス塩基にはアルコールが含まれ、これらはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールがある。例えば、特許文献5(国際特許第2002/081 573号公報)および特許文献6(米国特許第2003/019 399号明細書)には乾式粉砕助剤としてのジエチレングリコールの使用が記載されている(表1参照)。特許文献7(国際特許第2005/071 003号公報)にはエチレングリコールである多価アルコールが記載されている。特許文献8(国際特許第2005/026 252号公報)にはトリエタノールアミン、ポリプロピレングリコールまたはエチレングリコールの乾式粉砕助剤が記載されている。
【0008】
天然炭酸カルシウムの乾式粉砕ではこのグリコールベースの化合物が今日最もよく用いられているものであり、その中でもプロピレングリコール(またはモノプロピレングリコール)が最も広く用いられている。この添加剤は粉砕現象を容易にする効率性と低コストで知られている。
【0009】
しかし、この化合物は揮発性有機化合物(VOC)フリーではない。そのためこの添加剤を用いて粉砕された炭酸カルシウム自体もVOCを含む。これは粉砕助剤の一部が鉱物粒子の表面に固定/吸収されて残るためである。いかなる揮発性有機化合物も許容されないという規制のある用途では、このVOC含有量が炭酸カルシウムの使用を制限する障壁になっている。これは特に、欧州指針1999/13/EC(溶剤放出指針)および2004/42/EC(装飾用塗料での溶剤の使用に関するVOC放出量の制限)によってVOC放出量が具体的に制限されている多くの水相組成物、例えば塗料等の場合である。
【0010】
こうした環境保護の観点からの要求に、技術的制約すなわちその無機物質の水性組成物中での自己分散特性を良くするという課題が加わる。具体的には、上記無機物質が粉砕後に水性配合組成物の組成物中で用いられる場合があるということを意味する。すなわち、その無機物質を水中に分散させなければならない。これは例えば乾式粉砕で得た天然炭酸カルシウムを含む水性塗料または紙加工分散液で用いた場合である。
【0011】
このいわゆる自己分散(auto-dispersing) 特性では、無機物質を水性組成物中に導入したときに観察できるように、下記の(1)と(2)が特に顕著になる:
(1)水中への導入および混合操作の直後に測定される粘度ができるだけ低い(これによって良好な初期分散状態が特徴付けられる)、
(2)できるだけ短時間の間に粘度が変化する(これは得られた水性組成物のレオロジカル安定性が良いことを意味する)
【0012】
このニーズ(要求)はそうした無機物質の水性媒体中での全ての用途にある。例えば水性懸濁液、塗料および紙加工分散液の場合である。上記の要求事項にさらに、無機物質を水中に分散する際、特に媒体の撹拌作用によって生じる発泡現象を制限するというニーズも追加しなければならない。泡の発生は外見が悪くなるだけでなく、安定性および相分離が問題になる元である(特に、乾式粉砕で得られた炭酸カルシウムを含む水性塗料および紙加工分散液の場合)。
【0013】
本発明者は乾式粉砕で得られる無機物質の水性媒体中への自己分散特性を改良するための研究を続けてきた結果、無機物質用の乾式粉砕剤としてグリセロールおよび/またはポリグリセロールを含む配合組成物を使用する方法を開発した。
【0014】
驚くべきことに、この配合組成物は水性組成物に導入されたときに無機物質の自己分散特性を改良することができる。これは乾式粉砕した同じ無機物質と一緒にプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールを含む組成物では、粘度が直ちに下がり、その粘度の経時的安定性が改良されるということを意味する。さらに、水中への懸濁操作時に発生する泡の量が減る。
【0015】
本発明者は特許文献9(国際特許第WO 2007/138410号公報)が公知であり、この特許では炭酸カルシウム乾式粉砕剤として低分子量ポリアルキレングリコールを使用することを提案していることを知っている。この化合物は炭酸カルシウムの乾式粉砕に効果的であり、VOCフリーである。しかし、このポリアルキレングリコールは再生可能な原料から得られるものではなく、原油のバレルで指数化したそのコストは非常に高い。
【0016】
本発明者は特許文献10(国際特許第WO 2006/132 762号公報)および特許文献11(国際特許第WO 2007/109 328号公報)にはグリセロールを乾式粉砕助剤として用いることが記載されていることを知っている。グリセロールは植物油または動物油を変換(鹸化、エステル交換および脂肪酸合成)して得られる。これは多量に利用可能である再生可能な天然資源である。これはVOCを含まない代替物であり、この代替物は環境の観点および天然資源保護の観点から極めて有利である。全て合成で得られるポリエチレン−グリコール(PEG)ではこれは不可能なことである。
【0017】
しかし、最後の2つの特許文献はセメントの乾式粉砕用のもので、実施例は無く、無機物質の自己分散特性の問題は記載がなく、塗料または紙加工分散液に焦点は全くあてられていない。非特許文献3に記載されているようにグリセロールは粉砕添加剤として周知であるが、得られた粉砕物質の水性組成物中での自己分散特性に関する記載は全くない。
【0018】
本発明者はさらに、未公開の特許文献12(フランス国特許出願第09 5868号)も知っている。この文献は無機物質粉砕プロセスでのグリセロールの使用に焦点を当てている。このプロセスは、所定粒度分布を得るための粉砕能力を増加させ、粉砕エネルギー(いわゆる粉砕エネルギーと分級エネルギー)の原単位を減少させる極めて特殊な機能を有する。この文献も得られた粉砕物質の水性組成物中での自己分散特性には全く言及していない。
【0019】
本発明者はさらに、特許文献13(欧州特許出願第09 015 129.1号公報)についても触れておきたい。この文献には、空気による分級効率を上げるためにグリセロールおよび/または少なくとも一種のポリグリセロールからなる分級助剤添加剤を用いた無機物質用分級プロセス、または、添加剤を用いない空気分級と比べた比分級エネルギーが少なく、種々の環境下、例えば親水性環境下での化合物の分級での使用を可能にする無機物質の分級プロセスが定義されている。しかし、この文献にも得られた粉砕物質の水性組成物中での自己分散特性に関する記載は全くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際特許第WO 2005/063399号公報
【特許文献2】フランス国特許第2 203 670号公報
【特許文献3】欧州特許第0 510 890号公報
【特許文献4】英国特許第2 179 268号公報
【特許文献5】国際特許第WO 2002/081 573号公報
【特許文献6】米国特許第2003/019 399号明細書
【特許文献7】国際特許第WO 2005/071 003号公報
【特許文献8】国際特許第WO 2005/026 252号公報
【特許文献9】国際特許第WO 2007/138410号公報
【特許文献10】国際特許第WO 2006/132 762号公報
【特許文献11】国際特許第WO 2007/109 328号公報
【特許文献12】フランス国特許出願第09 5868号公報
【特許文献13】欧州特許出願第09 015 129.1号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】炭酸カルシウム(Birkhauser Verlag,2001)
【非特許文献2】Beitrag zur Aufklarung der Wirkungsweise von Mahlhilfsmitteln(Freiberger Forschungshefte,VEB Deutscher Verlag fur Grundstoffindustrie, Leipzig, Germany, 1975)
【非特許文献3】「粉砕剤の存在下での炭酸カルシウムの乾式粉砕に関与する物理化学機構の理解」、Mathieu Skrzypczak、Ecole Centrale de Lyon,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明者は、発泡現象を減らすとともに、水性組成物中での無機物質の自己分散特性を改良する研究を続けた結果、乾式粉砕で得られる無機物質の乾式粉砕操段階でグリセロールおよび/またはポリグリセロールを含む配合組成物を使用する方法を開発した。
【0023】
従って、本発明はグリセロールおよび/またはポリグリセロールを含む配合組成物の、無機物質の乾式粉砕段階での、無機物質の水性組成物中への自己分散特性の改良剤としての使用にある。
【0024】
この自己分散特性の改良とは「従来の粉砕助剤の存在下であること以外は同じ乾式粉砕段階で得られる同じ無機物質を含む同じ水性組成物に対する」ものであるということは理解できよう。既に述べたように、自己分散(auto-dispersing) 特性とは、乾式粉砕無機物質を導入した水性組成物で、粘度を直後(または24時間後)に測定し、粘度の経時変化を測定して評価する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の対象は、ドロマイト、タルク、二酸化チタン、アルミナ、カオリンおよび炭酸カルシウムの中から選択される無機物質の水中自己分散特性の改良剤としての使用であって、下記(i)または(ii)、(iii)を特徴とする使用にある:
上記配合組成物は、
(i)水溶液または純粋な形のグリセロールから成るか、
(ii)グリセロールと水溶液または純粋な形をした下記の一種または複数の化合物との組合せ:エチレングリコール、モノプロピレングリコール、トリエチレングリコール、無機酸または無機酸塩、ギ酸またはクエン酸またはギ酸塩またはクエン酸塩、有機ポリ酸または有機ポリ酸塩、アルカノールアミン、ポリエチレンイミン、分子量(重量)が200g/モル〜20,000g/モル、好ましくは600g/モル〜6,000g/モルのポリアルキレングリコールポリマー、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物、一種または複数のポリグリセロールから成り、
(iii)グリセロールの非存在下で、一種または複数のポリグリセロールを含み、且つ、
上記無機物質の乾式粉砕段階の少なくとも一つで用いる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】25℃、100回転/分でのブルックフィールド(登録商標)粘度(mPa.s)の変化を炭酸カルシウムの乾燥重量に対する分散剤の乾燥重量パーセントの関数で表したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「純粋な形(pure form)」とはその化合物を含む配合組成物が他の化合物を含まないことを意味する。
本発明の使用は粉砕助剤の形態および種類に応じて下記の6つの変形例にすることができる:
第1変形例:純粋な形のグリセロール
第2変形例:水溶液中のグリセロール
第3変形例:水溶液または純粋な形をした、グリセロールと上記(ii)に記載の化合物の少なくとも一種との組み合わ、
第4変形例:一種または複数のポリグリセロール
第5変形例:純粋な形の一種または複数のポリグリセロール。
第6変形例:水溶液配合組成物中の一種または複数のポリグリセロール。
【0028】
第1変形例の使用の特徴は上記配合組成物が純粋な形のグリセロールから成る点にある。
第2変形例の使用の特徴は上記配合組成物が水とグリセロールとから成る点にある。この第2変形例の使用ではさらに、上記配合組成物がその全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のグリセロールを含み、残部は水から成る点に特徴がある。
【0029】
第3変形例の使用の特徴は上記配合組成物が水溶液または純粋な形で、グリセロールと一種または複数の上記化合物とから成る点にある。この第3変形例でのさらに他の特徴は無機酸がリン酸である点にある。
この第3変形例の使用では、無機塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩であり、好ましくは元素周期表のIまたはII族のカチオンの塩であることに特徴がある。この第3変形例の使用では、ギ酸またはクエン酸の上記塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩であり、好ましくは元素周期表のIまたはII族のカチオンの塩である点に特徴がある。
【0030】
第3変形例の使用のさらに他の特徴は、有機ポリ酸が式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の値を有する整数)を有するか、式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の値を有する整数)の有機ポリ酸のモノ−またはジ−アルカリ塩であるか、一種または複数の下記モノマー:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸、好ましくはシュウ酸、ピメリン酸またはアジピン酸の有機ポリ酸ポリマーの酸の形または元素周期表のI族またはII族の一種または複数のカチオンで部分的または完全に中和された形である点にある。
【0031】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、アルカノールアミンが2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンおよびトリ−イソ−プロパノールアミン(中和されていてもよい)の中から選択され、好ましくはそれらのギ酸またはクエン酸によってまたは有機ポリ酸塩によって中和された形の中から選択される点にある。
【0032】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、ポリアルキレングリコールポリマーがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはエチレン−プロピレングリコールコポリマー(ランダムまたはブロック)である点にある。
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径に等しいか、それ以下である炭水化物がグルコース、フルクトース、スクロース、澱粉またはセルロースであり、好ましくはスクロースである点にある。
【0033】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、ポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0034】
第3変形例での使用でのさらに他の特徴は、上記配合組成物がその全重量に対して20〜95重量%のグリセロール、1〜50重量%の上記化合物および0〜65重量%の水、好ましくは30〜90重量%のグリセロール、10〜45重量%の上記化合物および0〜60重量%の水、好ましくは35〜75重量%のグリセロール、30〜40重量%の上記化合物および5〜50重量%の水を含む点にある(ここで、グリセロール、上記化合物および水の重量パーセントの合計はいずれの場合も100%である)。
【0035】
第4変形例での使用の特徴は、配合組成物がグリセロールの非存在下で一種または複数のポリグリセロールを含む点にある。
このポリグリセロールはジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択されるのが好ましい。
【0036】
第5変形例での使用の特徴は上記配合組成物が一種または複数の純粋な形のポリグリセロールから成る点にある。
この第5変形例での使用のさらに他の特徴はポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0037】
第6変形例での使用のさらに他の特徴は上記配合組成物が水と一種または複数のポリグリセロールとから成る点にある。
この第6変形例での使用のさらに他の特徴は上記配合組成物がその全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のグリセロールを含み、残部は水から成る点にある。
【0038】
第6変形例での使用のさらに他の特徴はポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される点にある。
【0039】
一般に、本発明の使用の特徴は上記無機物質の乾燥重量に対して100〜5,000ppm、好ましくは500〜3,000ppmのグリセロールまたはポリグリセロールを使用する点にある。
一般に、本発明の使用の特徴は無機物質1m2当たり0.1〜1mg、好ましくは0.2〜0.6mg(全乾燥当量)のグリセロールまたはポリグリセロール、と、使用可能な他の化合物とを使用する点にある。
【0040】
一般に、本発明の使用では、セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した平均直径が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmになるまで無機物質を粉砕する。
一般に、本発明の使用では、セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した直径が2μm以下の粒子の重量パーセントが20〜90%、好ましくは30〜60%になるまで無機物質を粉砕する。
一般に、本発明の使用では、無機物質が天然炭酸カルシウムである。
本発明は以下の実施例からより明確に理解できよう。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
この実施例はカララ大理石である天然炭酸カルシウムの乾式粉砕を説明する。粉砕はボールミルおよび分級機を備えた設備で行った。
[表1]は粉砕機に供給する初期炭酸カルシウムの粒度分布である。
【表1】

【0042】
カララ大理石を容量が5.7m3の円筒形ボールミルに導入し、平均径が16mmの8トンのCylpeb(登録商標)鉄粉砕ビーズを用いて粉砕して、下記材料を得た:
(1)メジアン径が1.8μm以下、
(2)55重量%の粒子は直径が2μm以下。
乾式粉砕は連続的に行う。
粉砕材料を粉砕チャンバから出し、セレック(SELEX、登録商標)6S型の分級機に送る。その回転速度および空気流量をそれぞれ5,200回転/分および6,000m3/時に設定して、平均径が所定値以下の粒子分を選別した。この粒子分が最終製品を構成する。平均径がこの値より大きい残りの粒子分はボールミルへ再導入した。
【0043】
粉砕は選別機の供給量が常に4トン/時になり且つボールミルに注入される新しい製品の量がこの装置を出る選別済み製品の量と一致するように行った。
乾式粉砕助剤は、粉砕用に導入した新しい材料に対して一定量の粉砕助剤が維持されるように新しい材料が導入される所の領域で粉砕装置に導入した。
【0044】
【表2】

【0045】
「MPG」と記載した粉砕助剤は75(重量)%のモノプロピレングリコールを含む水溶液から成り、FLUKA(商標)社から入手した。
「PEG」と記載した粉砕助剤は75(重量)%の分子量が600g/モルのポリエチレングリコールを含む水溶液から成り、FLUKA(商標)社から入手した。
「グリセロール」は75(重量)%のグリセロールを含む水溶液を意味する。
各テストでは2,000ppmの活性化合物(すなわち2,667ppmの水溶液)を用いた。
【0046】
次いで、テスト1〜3の炭酸カルシウムを実施例2〜4でテストし、その水中分散時の発泡現象を減らす能力およびその水性配合組成物中に容易に分散する能力を定量化する。
【0047】
実施例2
この実施例では、乾式粉砕で得られる炭酸カルシウムを水中に分散したときに発生する泡の量に対する用いた乾式粉砕剤の効果を説明する。
そのために、蒸留水を用いて40%(乾燥重量)炭酸カルシウム水溶液を調製する。600mlのこの懸濁液を「発泡機」とよばれる設備に導入する。この発泡機は、懸濁液が50 l/分の流量でループ中を循環する遠心ポンプと、懸濁液をポンプに導入するための750mlの高さ20cmの目盛り付き垂直ガラスカラムと、懸濁液再循環回路内に取り付けられた管からの給気とから成る。懸濁液のこの循環は230〜235ml/分の一定流量で空気を連続発泡しながら10分間行う。
10分間の最後に、泡高をカラムの目盛りから直接読み取る。
【0048】
【表3】

【0049】
上記結果から、グリセロールの存在下で乾式粉砕した炭酸カルシウムは、この炭酸カルシウムを水中に分散したときの泡の量を大幅に減らせることが証明される。
【0050】
実施例3
この実施例では、実施例1に従って乾式粉砕した3種の炭酸カルシウムを配合した組成物を用いて塗料を製造する方法を説明する。テスト1(第2)〜3(第2)の各テストでは、各種成分を[表4]に示すグラム比率で撹拌下に混合して、水相の艶消し塗料を製造した。
【表4】

【0051】
Ecodis(商標)P90はCOATEX(商標)社から市販の増粘剤を意味する。
Rheotech(商標)3000はCOATEX(商標)社から市販の増粘剤を意味する。
Mergal(商標)K6NはTROY(商標)社から市販の殺菌剤を意味する。
Byk(商標)034 はBYK(商標)社から市販の消泡剤を意味する。
TiO2 RL68はMillennium(商標)社から市販の二酸化チタン粉末を意味する。
Durcal(商標)2 はOMYA(商標)社から市販の炭酸カルシウムを意味する。
Acronal(商標)290 DはBASF(商標)社から市販の結合剤を意味する。
Texanol(商標)はEASTMANN(商標)社から市販の合体剤を意味する。
【0052】
テスト1(第2)〜3(第2)の各テストでは10および100回転/分でのBrookfield(商標)粘度を当業者に周知な方法に従って測定した。
また、得られた塗料のいくつかの光学特性、例えば白色度L、「"3 Hunterlab filters" Sub-tone"」および85°での光沢度も測定した。実施した方法は特許文献14(フランス国特許第2 872 815号)に具体的に記載されている。結果は[表5]および[表6]に示す。
【特許文献14】フランス国特許第2 872 815号公報
【表5】

【0053】
B10 (mPa.s): 10回転/分で測定したBrookfield(商標)粘度
B100 (mPa.s): 100回転/分で測定したBrookfield(商標)粘度
【表6】

【0054】
乾式粉砕剤としてモノプロピレングリコールを用いる市販対照例と比較して、本発明者はグリセロールを含む配合組成物を使用することによって塗料中の炭酸カルシウムの自己分散特性の改良に成功した。実際には、テスト1(第3)と比較して、テスト3(第3)では良好な初期分散状態を示す初期粘度の低下と、この粘度の副生成物が経時的により少なく、安定性が良いことの両方を確認することができる。しかも、最終光学特性は変わっていない。
【0055】
低分子量ポリエチレングリコールを用いて乾式粉砕した炭酸カルシウムと比較した場合、レオロジーレベルと光学特性の両方で性能が同じレベルであることがわかる。従って、グリセロールは低分子量ポリエチレングリコールと同程度の効果があり、しかも、安価であり、さらに最も重要なことには、多量に利用可能である再生可能な天然非食用資源から得られる解決法であるという点にある。すなわち、これはVOCを含まない代替物であり、この代替物は環境の観点および天然資源保護の観点から極めて有利であり、「環境に優しい化学」および「持続可能な発展」の概念に完全に適合する。
【0056】
実施例4
この実施例は、本発明(グリセロールを含む配合組成物)または従来技術(従来の乾式粉砕剤)に従って乾式粉砕した炭酸カルシウムの、アクリル分散剤の存在下での、水相中の分散能力を説明する。
テスト1(第4)〜3(第4)の各テストでは、1リットルのビーカーに、テスト1〜3に従ってそれぞれ乾式粉砕した炭酸カルシウム500gを175gの水に導入した(74重量%乾燥抽出物)。
【0057】
次いで、この媒体に一定量のアクリル分散剤(分子量が5,500 g/モルで、ナトリウム/カルシウムが70/30%モルの、アクリル酸のホモポリマーである)を添加し、撹拌して、ブルックフィールド(Brookfield、登録商標)粘度を25℃、100回転/分で測定する。
分散剤の添加を増やして上記操作を繰り返すことによって、25℃、100回転/分でのブルックフィールド(登録商標)粘度(mPa.s)の変化を、炭酸カルシウムの乾燥重量に対する分散剤の乾燥重量パーセントの関数として追跡できる。対応する曲線は下記の記号を用いて[図1]に示す:
黒い三角:PEGの存在下で乾式粉砕した炭酸塩を用いたテスト1(第4)
黒い四角:MPGの存在下で乾式粉砕した炭酸塩を用いたテスト2(第4)
黒い丸:グリセロールの存在下で乾式粉砕した炭酸塩を用いたテスト3(第4)
【0058】
[図1]から、一定の乾燥抽出物濃度(74%)では、グリセロールの存在下で乾式粉砕した炭酸カルシウムが、所定の粘度レベルを得るのに要する分散剤の容量が最低である炭酸カルシウムであることを明確に示している。換言すれば、この炭酸カルシウムがアクリル分散剤の存在下で水性懸濁液中に入れたときに最も顕著な自己分散特性を示す炭酸カルシウムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロマイト、タルク、二酸化チタン、アルミナ、カオリンおよび炭酸カルシウムの中から選択される無機物質の、配合組成物(formulation)での水中自己分散特性の改良剤としての使用であって、
上記配合組成物は下記(i)または(ii)および(iii):
(i)水溶液または純粋な形のグリセロールから成るか、
(ii)グリセロールと水溶液または純粋な形をした下記の一種または複数の化合物との組合せ:エチレングリコール、モノプロピレングリコール、トリエチレングリコール、無機酸または無機酸塩、ギ酸またはクエン酸またはギ酸塩またはクエン酸塩、有機ポリ酸または有機ポリ酸塩、アルカノールアミン、ポリエチレンイミン、分子量(重量)が200g/モル〜20,000g/モル、好ましくは600g/モル〜6,000g/モルのポリアルキレングリコールのポリマー、回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物、一種または複数のポリグリセロールから成り、
(iii)グリセロールの非存在下で、一種または複数のポリグリセロールを含み、且つ、上記無機物質の乾式粉砕段階の少なくとも一つで用いる、
ことを特徴とする使用。
【請求項2】
上記配合組成物が純粋な形のグリセロールから成る請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記配合組成物が水とグリセロールとから成る請求項1に記載の使用。
【請求項4】
上記配合組成物の全重量に対して25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のグリセロールを含み、残部は水から成る請求項3に記載の使用。
【請求項5】
上記配合組成物が水溶液または純粋な形をしたグリセロールと一種または複数の上記化合物とから成る請求項1に記載の使用。
【請求項6】
無機酸がリン酸である請求項5に記載の使用。
【請求項7】
無機塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩、好ましくは元素周期律表のI族またはII族のカチオンの塩である請求項5に記載の使用。
【請求項8】
ギ酸またはクエン酸の塩がモノ−、ジ−またはトリ−アルカリ塩で、好ましくは元素周期表のI族またはII族のカチオンの塩である請求項5に記載の使用。
【請求項9】
有機ポリ酸が式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の整数)を有するか、式:COOH−(CH2n−COOH(ここで、nは0〜7の整数)の有機ポリ酸のモノ−またはジ−アルカリ塩であるか、一種または複数の下記モノマー:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸、好ましくはシュウ酸、ピメリン酸またはアジピン酸の有機ポリ酸ポリマーの酸の形または元素周期表のI族またはII族の一種または複数のカチオンで部分的または完全に中和された形である請求項5に記載の使用。
【請求項10】
アルカノールアミンが2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンおよびトリ−イソ−プロパノールアミン(中和されていてもよい)の中から選択され、好ましくはギ酸またはクエン酸または有機ポリ酸塩によって中和された形の中から選択される請求項5に記載の使用。
【請求項11】
ポリアルキレングリコールポリマーがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはエチレン−プロピレングリコールのランダムまたはブロックコポリマーである請求項5に記載の使用。
【請求項12】
回転半径の二乗平均平方根が無機物質のモード半径以下である炭水化物がグルコース、フルクトース、スクロース、澱粉またはセルロースであり、好ましくはスクロースである請求項5に記載の使用。
【請求項13】
一種または複数のポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される請求項5に記載の使用。
【請求項14】
上記配合組成物が全重量の20〜95重量%のグリセロールと、1〜50重量%の上記化合物と、0〜65重量%の水を含み、好ましくは30〜90重量%のグリセロールと、10〜45重量%の上記化合物と、0〜60重量%の水を含み、さらに好ましくは35〜75重量%のグリセロールと、30〜40重量%の上記化合物と、5〜50重量%の水を含む (いずれの場合もグリセロール、上記化合物および水の重量パーセントの合計は100%) 請求項5〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
上記配合組成物がグリセロールの非存在下で一種または複数のポリグリセロールを含む請求項1に記載の使用。
【請求項16】
一種または複数のポリグリセロールがジ−グリセロール、トリ−グリセロール、テトラ−グリセロール、ペンタ−グリセロール、ヘキサ−グリセロール、ヘプタ−グリセロール、オクタ−グリセロール、ノナ−グリセロールおよびデカ−グリセロールおよびこれらの混合物の中から選択され、好ましくはジ−およびトリ−グリセロールの中から選択される請求項15に記載の使用。
【請求項17】
上記配合組成物が純粋な形をした一種または複数のグリセロールから成る請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
上記配合組成物が水と一種または複数のポリグリセロールとから成る請求項15または16に記載の使用。
【請求項19】
上記配合組成物が全重量の25〜95重量%、好ましくは45〜90重量%、さらに好ましくは75〜85重量%のポリグリセロールを含み、残部は水から成る請求項18に記載の使用。
【請求項20】
上記無機物質の乾燥重量に対して100〜5,000ppm、好ましくは500〜3,000ppmのグリセロールまたはポリグリセロールを使用する請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
1m2の無機物質当たり0.1〜1mg、好ましくは0.2〜0.6mg(全乾燥当量)の上記グリセロールまたは上記ポリグリセロールおよびその他の試薬を使用する請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した平均直径が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmになるまで無機物質を粉砕する請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
セディグラフ(Sedigraph、登録商標)5100で測定した直径が2μm以下の粒子の重量パーセントが20〜90%、好ましくは30〜60%になるまで無機物質を粉砕する請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
無機物質が天然炭酸カルシウムである請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−515808(P2013−515808A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545465(P2012−545465)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003327
【国際公開番号】WO2011/077232
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(398051154)コアテツクス・エス・アー・エス (35)
【出願人】(512164872)オムヤ デヴェロップメント アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】