説明

水性組成物の製造方法

水性組成物の製造方法を提供する。この方法は、少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマー、少なくとも一種の界面活性剤及び水を含む混合物を剪断させてミニエマルジョンを生成させ、そして開始剤の存在下にミニエマルジョンを重合させて水性組成物を生成させる。この水性組成物は、これらに限定するものではないが、接着剤、被覆及び積層体などの種々の物品を製造するのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマー、少なくとも一種の界面活性剤及び水を含む混合物を剪断させてミニエマルジョンを生成せしめ、そしてそのミニエマルジョンを重合させて水性組成物を製造する水性組成物の製造方法に関する。本発明の水性組成物は感圧接着剤を含む接着剤、例えばテープ、ラベル、ステッカー、デカルコマニア、装飾ビニル、ラミネート及び壁カバーなどとして有用である。
【背景技術】
【0002】
水系接着剤の製造は一般的には3つの基本工程で達成される。先ず、業界周知の乳化重合プロセスを用いてビニルポリマーのラテックスを製造する。別の工程で少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種の界面活性剤及び水を一緒にし、そしてこの混合物を高剪断として粘着付与剤分散液を製造する。次に、この粘着付与剤分散液を上記ラテックスと一緒にして水系接着剤の製造に有用な水性組成物を製造する。
【0003】
従来技術に記載されている別のプロセスはラテックスの製造中に粘着付与剤を少なくとも一種のモノマーで溶解することを含む。このプロセスは前述のプロセスに記載した粘着付与剤分散工程を回避する。しかしながら、このプロセスは乳化重合プロセスにおいて高スクラップレベルを生じる点で効果的でない。高スクラップレベルは、有用な生成物の収率が低下しそして濾過の問題が生じるので、好ましくない。従って、粘着付与剤とラテックスとを一緒にして、不所望のスクラップラベルを生ずることなく、接着剤を製造することができる改良プロセスに対するニーズがある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従えば水性組成物を製造する方法が提供される。この方法は、少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマー、少なくとも一種の界面活性剤及び水を含む混合物を剪断させてミニエマルジョンを生成せしめ、そしてそのミニエマルジョンを、開始剤の存在下に、重合させて水性組成物を製造することを含む。
【0005】
本発明の方法は重合前に粘着付与剤とビニルポリマーとを一緒にするという利点を有する水性組成物を製造する。従って、ラテックス中に粘着付与剤を分散させる追加のプロセス工程を必要としない。本発明は更にプロセスがミニエマルジョン重合を用いており、粘着付与剤及びモノマーを一般的な乳化重合プロセスを用いて重合させる時に生ずるプロセス上の問題、即ち不所望のスクラップレベルの生成というプロセス上の問題は生じない。本発明の水性組成物は、粘着付与剤を分散させるのに通常必要な界面活性剤を必要としないので従来技術を超える利点も生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
水性組成物を製造する方法が提供される。本発明の方法は混合物を剪断させてミニエマルジョンを生成せしめ、そして、開始剤の存在下に、このミニエマルジョンを重合させて水性組成物を製造する。この混合物は少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマー、少なくとも一種の界面活性剤及び水を含む。
【0007】
水性組成物に所望の性質を生じることができる業界で知られた任意の粘着付与剤を利用することができる。一般的には粘着付与剤はロジン、ロジン誘導体、ロジンエステル、炭化水素樹脂、合成ポリテルペン、天然テルペンなどから選択することができる。更に詳しくは、これらに限定するものではないが、有用な粘着付与剤樹脂は、(1)天然及び変性ロジン並びにそれらの水素化誘導体;(2)天然及び変性ロジンのエステル並びにそれらの水素化誘導体;(3)ポリテルペン樹脂及び水素化ポリテルペン樹脂;(4)脂肪族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;(5)芳香族炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びに(6)脂環族炭化水素樹脂及びその水素化誘導体を含む。これらの粘着付与剤の2種又はそれ以上の混合物は或る種の配合について必要なことがある。
【0008】
天然及び変性ロジン並びにそれらの水素化(又は水素添加)(hydrogenated)誘導体は、これらに限定するものではないが、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、ダイマー化ロジン及び重合ロジンを含む。
【0009】
天然及び変性ロジン並びにそれらの水素化誘導体は、これらに限定するものではないが、ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステルを含む。
【0010】
ポリテルペン樹脂は一般に穏当な低い温度でフリーデル−クラフツ触媒の存在下に、ピネンとして知られている二環性モノテルペンのようなテルペン炭化水素の重合から得られる。好ましくは、ポリテルペン樹脂はASTM方法E28−58Tで測定して80〜150℃の軟化点を有する。
【0011】
脂肪族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体は一般に主としてオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から製造される。好ましくは脂肪族石油炭化水素樹脂は環球(Ball and Ring)軟化点が70〜135℃である。
【0012】
芳香族炭化水素樹脂は、例えばスチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン並びにその水素化誘導体のような少なくとも一つのアルキル芳香族モノマーに由来する炭化水素樹脂を含む。アルキル芳香族モノマーは石油蒸留留分から、又はフェノール転化プロセスから製造される原料などのような非石油供給原料から得ることができる。
【0013】
脂環族石油炭化水素樹脂はモノマーとしてジシクロペンタジエンを含む炭化水素混合物を用いて製造することができる。
【0014】
エチレン系不飽和モノマーは粘着付与剤を実質的に溶解することができる、業界で公知の少なくとも一つのアクリル又はビニルモノマーである。ここで「実質的に溶解する」とは少なくとも75重量%の粘着付与剤が特定の濃度でエチレン系不飽和モノマー中で単一相の液体を形成することを意味する。エチレン系不飽和モノマーは単一種のモノマーとして、又は混合物として、添加することができる。適当なエチレン系不飽和モノマーの例としては、これらに限定するものではないが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレンなどのスチレン系モノマー;メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アルキルクロトネート、酢酸ビニル、ジ−n−ブチルマレエート、ジオクチルマレエート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリロニトリルなどのエチレン系不飽和化合物;並びにt−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシ−エチル)エチレンウレア、メタクリルアミドエチレンウレアなどの窒素含有モノマーを含む。
【0015】
前記界面活性剤は業界で知られた任意の一般的な界面活性剤又はそれらの組合せとすることができる。一般には界面活性剤はアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種である。好ましい界面活性剤の例は、これらに限定するものではないが、アルカリアルキルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート、アルキルスルホン酸、脂肪酸、オキシエチル化アルキルフェノール、スルホスクシネート及びそれらの誘導体並びにそれらの混合物である。適当な界面活性剤のリストは論文:McCutcheon’s Emulsifiers&Detergents,North American Edition,MC Publishing Co.,Glen Rock,NJ,1997、に記載されている。好ましくは界面活性剤は小滴/粒子(droplet/particle)の安定性を与え、最小水性相核形成(ミセル状又は均一相)を生ずるものである。
【0016】
界面活性剤は重合可能な2重結合を含む界面活性剤である重合性界面活性剤とすることもできる。重合性界面活性剤は、これらに限定するわけではないが、第一工業製薬(株)より市販のHitenol BC−10,Hitenol HS 20及びHitenol HS 10やCognis Corporationより入手可能なTREM LF40界面活性剤を含む。
【0017】
一般に水性組成物の粘着付与剤部分は水性組成物の全固形分の1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、そして最も好ましくは4〜20重量%である。エチレン系不飽和モノマーからのポリマーは水性組成物の全固形分の60〜99重量%、好ましくは70〜98重量%、そして最も好ましくは80〜96重量%である。界面活性剤は水性組成物の全固形分の0.15〜8%、好ましくは0.5〜2%である。
【0018】
本発明の別の態様において混合物は更に少なくとも一つのゴム化合物を含むことができる。本発明に有用なゴム化合物は少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマーと一緒にすることができるが、又は実質的に溶解することができるものである。天然ゴム及び合成ゴムが本発明において有用である。天然ゴムは、合成資源ではなく、天然資源から得られる。適当なゴム化合物は、これらに限定するものではないが、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴムを含むクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリペンタナマー及びエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体である。
【0019】
粘着付与剤、エチレン系不飽和モノマー、界面活性剤及び水は任意の順序で組合せることができる。しかし、これらの成分のすべては剪断する前に存在していなければならない。本発明の一態様において、粘着付与剤は少なくとも一つのエチレン系不飽和モノマーに溶解させて粘着付与剤/モノマー混合物を形成し、次にこれを界面活性剤及び水を含む水性媒体に分散させて混合物を形成させる。次にこの混合物を剪断させてミニエマルジョンを形成させる。
【0020】
混合物の剪断によってミニエマルジョンが生成する。剪断は業界で公知の任意の手段によることができる。一般に剪断はサイズが50〜500ナノメーターの小滴を形成させる高剪断装置を用いて達成することができミニエマルジョンが生成する。理論的に拘束するつもりはないが、重合前に混合物を剪断して小滴を形成させ、その結果としてミニエマルジョンを形成させることによって、小滴中に核形成サイトを優先的に形成させかつ引き続いて重合サイトを生じさせることが助長されるようである。これは粘着付与剤の沈澱化をひき起す小滴からのモノマーの移行が最小となる。
【0021】
前記ミニエマルジョンは業界で公知の任意の方法で重合して水性組成物を生成することができる。ミニエマルジョンの重合の間に、エチレン系不飽和モノマーは、遊離ラジカル開始の前に、この場合には粘着付与剤である特別に添加した疎水性成分と共に、小さな均質粒子として予備乳化される。適当な開始剤は汎用の開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸アルカリ、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ジ−tertブチルペルオキシド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシドなどを含む。理論で拘束するつもりはないが、粘着付与剤は、重合の軌跡(locus)であるもとの粒子内に一層水溶性モノマーを残留させる。従って、一般の乳化重合であるように、第二の粒子の発生は起らない。前述のミニエマルジョンは米国特許第5,686,518号及びWang et al.,“Emulsion and Miniemulsion Copolymerization of Acrylic Monomers in the Presence of Alkyd Resin,”Journal of Applied Polymer Science,Vol.60,pp.2069−2076(1996)に記載のようにして重合することもでき、これらの文献は引用によってその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0022】
水性組成物が得られるミニエマルジョンの重合プロセスは環元剤又は触媒を必要とすることもできる。適当な還元剤は重合速度を増大させるもので、例えば重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸及びこれらの混合物を含む。
【0023】
適当な触媒は重合反応条件下に重合開始剤の分解を提供して重合速度を増大させる化合物である。適当な触媒は遷移金属化合物を含む。そのような触媒の例としては、これらに限定するつもりはないが、硫酸第一鉄・7水塩、塩化第一鉄、硫酸第一鉄・7水塩と塩化第一鉄のキレート形及びこれらの混合物である。
【0024】
本発明に従った水性組成物のエチレン系不飽和モノマー部分のガラス転移温度(Tg)は60℃以下とするのがよい。周囲温度で水性組成物のフィルムを形成するのが望ましい応用に対しては、Tgは20℃より低いのが好ましい。接着剤組成物に対してはガラス転移温度は−60℃〜10℃の範囲であるのが好ましい。Tgは差動走査熱量計(DSC)を用いて測定する。
【0025】
本発明の水性組成物は接着剤、特に感圧接着剤、被覆(コーティング)、ラミネートを製造するのに使用することができる。感圧接着剤(DSA)は種々の用途、例えばテープ、ラベル、ステッカー、デカルコマニア(decal)、装飾ビニル(decorative vinyls)、ラミネート及び壁カバー(wall coverings)に用いられる。
【0026】
本発明の接着剤は本発明の水性組成物を含み、例えば米国特許第4,879,333号及び同第5728759号(これらは引用によりその全体を本明細書に組み入れるものとする)に開示されているように、業界公知の技術によって製造することができる。例えば、本発明の水性組成物は、業界で公知の技術(例えばロール被覆、カーテン被覆、グラビア印刷、スロットダイ被覆)を用いて下地(基材)上に被覆して接着剤又は被覆組成物を製造することができる。下地は、任意の一般的な下地とすることができ、例えば紙、ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポリプロピレン)、金属(例えばアルミニウム及びスチール)、ガラス、ウレタンエラストマー、下付けした(下塗りした)下地並びに、これらに限定するわけではないが、テレフタレート系ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)などのポリエステルがあげられる。本発明の接着剤又は被覆組成物は室温(周囲温度硬化)、高温(熱硬化)又は放射硬化で硬化することができる。
【0027】
水性組成物のエチレン系不飽和モノマー部分はアクリルPSAの望ましい性質、例えば剥離強度、ループタック及び剪断強度を保持し、一方水性組成物の粘着付与剤部分はこれらの性質を補強又は増大させる。更に詳しくは水性組成物の粘着付与剤部分は典型的には剥離強度及びループタックを増大させる。本発明の接着剤は水性系であることの利点も提供し、そして著しく少ない溶剤、25重量%より少なく1重量%までも低く、そしてゼロ揮発有機成分(VOC)含量ですらある。
【0028】
本発明の水性組成物は感圧接着剤(PSA)を提供するのに適切に使用することができる。或いは他のPSA添加剤、例えば後添加粘着付与剤分散液、可塑剤、溶剤、脱泡剤、中和剤、保恒剤及び界面活性剤などと組合せることができる。これらの添加剤の具体例は、Raw Materials Index(the National Paint&Coatings Association,1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.2005発行)に記載されており、またそのような添加剤及び乳化重合方法の更なる例は米国特許第5,371,148号に認められ、これらを引用により本明細書に組み入れるものとする。
【0029】
後添加粘着付与剤分散液は公知の任意の粘着付与剤分散液とすることができる。水性組成物に後添加することができる粘着付与剤分散液の例は米国特許第4,526,577号、同第4,460,728号及び同第4,411,954号に記載の通りである。水性組成物に後添加できる特に有用な粘着付与剤樹脂分散液は、これらに限定するつもりはないが、本明細書に列記した前記粘着付与剤の分散液とすることができる。
【0030】
本発明に好ましい後添加粘着付与剤樹脂分散液はEastman Chemical Companyより市販の粘着付与剤であるTacolyn 1070,Tacolyn 3179H,Tacolyn 4603(商品名)を含む。
【0031】
本発明に有用な可塑剤はエラストマー可塑化オイルとも呼ばれる公知の物質である。それらはパラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、脂肪族及び芳香族酸のエステル並びにこれらの混合物である。可塑剤は米国特許第2,551,600号に記載されており、その全体を引用により本明細書に組み入れるものとする。
【0032】
本発明の接着剤を形成するのに使用する好ましい可塑剤はEastman Chemical Companyより提供されているジオクチルフタレートである。業界で公知の任意の可塑剤を、所望の接着剤に基づいて使用することができる。市販の接着剤可塑剤の例はHercolyn DE(Eastman Chemical Company),Neville NP10(Neville Chemical Co.)及びShellflex 371(Shell Chemical Co.)である。
【0033】
業界で公知の任意の溶剤を接着剤の所望の性質に基づいて使用することができる。溶剤の例としては、これらに限定するものではないが、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノ−イソブチレート、エチレングリコールモノ−オクチルエーテル、ジアセトンアルコール、TEXANOL(商標)エステルアルコール(Eastman Chemical Company)などがあげられる。これらの溶剤及び融合助剤は反応性溶剤及び融合助剤、例えばジアリルフタレート、MonsantoからのポリグリシジルアリルエーテルSANTOLINK XI−100(商標)及び米国特許第5,349,026号及び同第5,371,148号(引用により本明細書に組み入れるものとする)に記載の他のものを含む。
【0034】
水性組成物に添加される界面活性剤は業界で公知の任意の界面活性剤とすることができる。使用される適当な界面活性剤は本明細書において前述のものである。本発明の水性組成物に添加するのに有用な他の界面活性剤アセチレン酸ジオール及びエトキシル化アセチレン酸ジオールである。アセチレン酸ジオール(acetylenic diol)の例は、これに限定するものではないが、Surfynol 104PG,Surfynol 440,Surfynol PSA336(すべてAir Productsの製品)である。
【0035】
水性組成物に添加する中和剤は業界で公知の任意の中和剤とすることができる。適当な中和剤は、これらに限定するものではないが、水酸化アルカリ及びアミンである。水酸化アルカリの例は、これらに限定するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムである。アミンの例はエタノールアミン、トリエチルアミン及びジメチルエタノールアミンである。他の適当な中和剤は水酸化アンモニウム、酸化亜鉛及び酸化亜鉛のアンモニウム錯体である。
【0036】
本発明の水性組成物に添加するのに有用と見出した別の添加剤はポリビニルピロリドン(PVP)である。PVPはBASFから市販のLuviskol K60及びLuviskol K90として得ることができる。
【0037】
本発明をその好ましい態様を示す以下の実施例に基づいて更に説明するが、これらの実施例は単なる例示であって、特に示さない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0038】
以下の試験方法を実施例で用いた。
180°剥離試験(Peel Test)(PSTC−1)
各被覆フィルムからの5個の試験片(1″×12″)をステンレススチール(SS)製パネル上に置き、4.5−1bローラーを各試験片の上を通過させた。これらの試験片の作製5分後にインストロン(Instron)試験機を用いて角度180°で12in/minの速度で引っ張った。報告値は5回の試験の平均である。
【0039】
ループタック(Loop Tack)(ASTM D−903の変形)
各被覆フィルムからの1″×12″試験片の端部をインストロン試験機のグリップ中に置きループを形成した(接着剤側を下に)。試験片をステンレススチール(SS)製のパネルの上に12in/minの速度で下降させ、次に同じ速度で上昇させて粘着性を測定した。報告値は5回の試験の平均値である。
【0040】
保持力(Hold Power)(PSCC−7)
1−ml被覆マイラー(Mylar)フィルムを用いて、試験片を1″×3″に切断した。1″×1″四方の接着剤試料をステンレススチールパネルの中央部に置き、4.51bローラーを用いて2回通過させた。試験片の自由端にクランプを置き幅全体に完全にクランプするようにし、そして負荷が均一に分布するように正しく配列させた。次に試験片をテストスタンドに置き、そして1000gの質量をクランプに加えた。試験片がテストパネルから完全に分離するのに要した時間を記録した。報告値は5回の試験の平均である。
【0041】
例1(実施例):水性組成物の製造
コンデンサー、窒素パージ及び表面下への供給管を備えた1000mL樹脂反応がまに添加した。窒素パージを開始し、内容物を加熱し、80℃に保持した。
【0042】
Eastman Chemical Companyより入手したForal 105E(商標)ロジンエステルを、ブチルアクリレート(348.9g)、メチルメタクリレート(39.7g)及びアクリル酸(7.9g)の混合物に溶解させてモノマー/粘着付与剤混合物を生成させた。水(307.5g)及び界面活性剤(Cytec Industries,West Patterson,New Jerseyから市販のAerosol OT−75)(5.3g)を予め混合して水/界面活性剤混合物を生成させた。次に、前記粘着付与剤/モノマー混合物を前記水/界面活性剤混合物に添加して予備エマルジョンを生成させた。この予備エマルジョンを、IKA(モデルSD−45)回転子(rotor)/固定子(stator)ホモジナイザーを用いて、剪断デバイスを囲むフローセルを通して、100%出力で操作したホモジナイザーで循環させて剪断を与えてミニエマルジョンを生成させた。
【0043】
過硫酸アンモニウム(0.3g)を水(6.3g)に混合し、そして反応器に供給した。メタ重亜硫酸ナトリウム(0.2g)を水(6.3g)に混合し、反応器に装入した。エチレンジアミン四酢酸1%溶液(0.8g)及び硫酸鉄(II)1%溶液(1.7g)をこの反応器に添加した。ミニエマルジョンを反応器に250分かけて供給した。同時に、水(25.2g)、過硫酸アンモニウム(2.0g)及び28重量%水酸化アンモニウム(2.1g)の開始剤フィード並びに水(27.0g)及びメタ重亜硫酸ナトリウム(1.0g)の他の供給も260分間かけて供給した。これらの供給が完了した後、反応器を80℃で15分間保持し、次に水(5.0g)及びイソアスコルビン酸(0.75g)からなる還元体溶液を反応器に15分かけて供給した。水(5.0g)及び70%t−ブチルヒドロペルオキシド(1.1g)の溶液を反応器中に15分かけて供給した。水(5.0g)及び70%t−ブチルヒドロペルオキシド(1.1g)の溶液を同時に15分かけて供給した。次いで反応混合物を冷却した。生成した水性組成物を100メッシュワイヤースクリーンを通して濾過し、濾別可能な固形分又はスクラップを集めた。20gより多いスクラップ物質が集められたら、結果は「>20g」として報告した。
【0044】
上で得られたミニエマルジョンの小滴サイズ並びに粒子サイズ及び生成した水性組成物のpHを求めた。小滴及び粒子のサイズはLeeds & Noothrup,North Wales,PA製のMictrotrac Ultrafine Particle Analygerレーザー光一散乱デバイス(180°バックスキャタリング)を用いて測定した。小滴は約1:50で水に希釈した。この水性組成物の物性データは表Iにまとめた。この例に示された進歩したプロセスは濾別可能なスクラップのレベルが非常に低く(0.10gより小)、本発明方法の有効性を示している。
【0045】
例2(比較例):剪断されていない粘着付与剤変性アクリルラテックス(正規エマルジョンポリマー)
予備エマルジョンに剪断を与えてミニエマルジョンにしなかった以外は、例1の方法に従って粘着付与剤変性アクリルラテックスを製造した。この非剪断粘着付与剤変性アクリルラテックスの物性データを表Iにまとめた。表Iに示したように、この方法では非常に多量のスクラップが生成し、商業上受け入れられるものである。
【0046】
例3(比較例):アクリルラテックスの製造
粘着付与剤を除いた以外は、例1の方法に従ってアクリルラテックスを製造した。このアクリルラテックスの物性データを表Iにまとめた。表Iに示すように、この方法では受け入れ難い量のスクラップが生成した。
【0047】
【表1】

【0048】
例4〜17(実施例)
例4〜17において、例1と同様にして、しかし粘着付与剤の種類及びレベルを変えて、一連の水性組成物を製造した。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表IIIのデータから明らかなように、粘着付与剤、エチレン系不飽和モノマー、界面活性剤及び水を用いて予備エマルジョンを製造し、そしてこの予備エマルジョンに剪断をかけてミニエマルジョンを製造した場合には、スクラップの生成が最小となる。
【0052】
例18〜21(実施例):種々のモノマーを用いる水性組成物の製造
例18〜21において、一定の粘着付与剤の種類及びレベル(Eastman Chemical Companyから得られた10重量%Picco 6100炭化水素樹脂)を用いながら、モノマーの種類を変えた以外は、例1と同じ方法で一連の水性組成物を製造した。
【0053】
【表4】

【0054】
表IVのデータから明らかなように、使用したエチレン形不飽和モノマーには関係なく、生成した水性組成物のスクラップ量は少なかった。
【0055】
例22〜41(実施例):接着試験
【0056】
【表5】

【0057】
表Vに示す成分を含む接着配合物を製造した。この配合物をMylarポリエステルフィルムの上に約1mil乾燥フィルム厚に被覆して被覆フィルムを作製した。この被覆フィルムについて180°剥離、ループタック及び保持強度の試験を行なった。結果は以下の表に示した。
【0058】
【表6】

【0059】
10%、Picco 6100粘着付与剤を用いて例18〜21で製造した水性組成物を接着剤として使用した。データは以下の表に示す。
【0060】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明方法は種々の用途に対して広範囲の所望の性質を有する接着剤として使用できる水性組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の粘着付与剤、少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマー、少なくとも一種の界面活性剤及び水を含む混合物を剪断させてミニエマルジョンを生成せしめ、そしてそのミニエマルジョンを、開始剤の存在下に、重合させて水性組成物を製造する水性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記粘着付与剤がロジン、ロジン誘導体、ロジンエステル、炭化水素樹脂、合成ポリテルペン及び天然テルペンからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粘着付与剤が天然及び変性ロジン並びにそれらの水素化誘導体;天然及び変性ロジンのエステル並びにそれらの水素化誘導体;ポリテルペン樹脂及び水素化ポリテルペン樹脂;脂肪族石油炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;芳香族炭化水素樹脂及びその水素化誘導体;並びに脂環族炭化水素樹脂及びその水素化誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エチレン系不飽和モノマーがスチレン系モノマー、エチレン系不飽和化合物及び窒素含有化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スチレン系モノマーがスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン及びクロロメチルスチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エチレン系不飽和化合物がメチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アルキルクロトネート、酢酸ビニル、ジ−n−ブチルマレエート、ジ−オクチルマレエート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びアクリロニトリルからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素含有モノマーがt−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−(2−メタクリロイルオキシ−エチル)エチレンウレア及びメタクリルアミドエチレンウレアからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記水性組成物の粘着付与剤部分が水性組成物の全固形分の約1〜40重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性組成物の粘着付与剤部分が水性組成物の全固形分の4〜20重量%である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エチレン系不飽和モノマーからのポリマーが水性組成物の全固形分の約60〜99重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エチレン系不飽和モノマーからのポリマーが水性組成物の全固形分の約80〜96重量%である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記界面活性剤が水性組成物の全固形分の約0.15〜8重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粘着付与剤を少なくとも一種のエチレン系不飽和モノマーに溶解させる粘着付与剤/モノマー混合物を形成させ、そして次に、この粘着付与剤/モノマー混合物を界面活性剤及び水を含む水性媒体中に分散させて混合物を生成せしめる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物がゴム化合物を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記剪断を高剪断装置を用いて実施して約50〜500nmのサイズの小滴を形成させてミニエマルジョンを生成せしめる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記開始剤が過硫酸アンモニウム、過硫酸アルカリ、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ジ−tertブチルペルオキシド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル及びベンゾイルペルオキシドからなる群から選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1の方法によって製造された水性組成物。
【請求項18】
請求項13の方法によって製造された水性組成物。
【請求項19】
請求項36の水性組成物を含む接着剤。
【請求項20】
感圧接着剤、被覆及び積層体を生成させるのに前記接着剤を利用する請求項17に記載の接着剤。
【請求項21】
前記水性組成物を下地に被覆することによって前記接着剤を生成せしめる請求項19に記載の接着剤。
【請求項22】
ロール被覆、カーテン被覆、グラビヤ印刷及びスロットダイ被覆からなる群から選ばれる方法によって、前記水性組成物を前記下地に被覆する請求項21に記載の接着剤。
【請求項23】
前記下地が紙、ポリオレフィンフィルム、金属、ガラス、ウレタンエラストマー、下塗りした(ペイントした)下地及びポリエステルからなる群から選ばれる請求項21に記載の接着剤。
【請求項24】
後添加粘着付与分散剤、可塑剤、溶剤、脱泡剤、中和剤、保恒剤及び界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を更に含む請求項19に記載の接着剤。
【請求項25】
請求項1の水性組成物を含む被覆。
【請求項26】
請求項1の水性組成物を含む積層体。
【請求項27】
請求項1の水性組成物を含む物品。

【公表番号】特表2006−509890(P2006−509890A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560892(P2004−560892)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/040068
【国際公開番号】WO2004/055059
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】