説明

水性絵具組成物

【課題】経時的な変色、特に、着色顔料として淡薄色乃至白色の着色顔料や、高彩度顔料、例えば、黄色顔料や橙色顔料を用いてなるときも、経時的な変色がなく、しかも、描画性にすぐれる水性絵具組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、着色顔料と水溶性樹脂と湿潤剤と水を含む水性絵具組成物において、上記水溶性樹脂として還元デキストリンを含むことを特徴とする水性絵具組成物が提供される。着色顔料として酸化チタンが好ましく用いられる。また、水溶性樹脂は、好ましくは、アラビアガム、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、スチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩及びスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩から選ばれる少なくとも1種が併用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性絵具組成物に関し、詳しくは、経時的な変色がなく、しかも、描画性にすぐれる水性絵具組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水性絵具組成物は、一般に、着色顔料、水溶性樹脂、湿潤剤と水とを、必要に応じて、体質顔料や界面活性剤等と共に混練してなる描画彩色用の水性糊状の顔料組成物である。水性絵具組成物において、上記水溶性樹脂は、糊剤とも呼ばれて、着色顔料の定着剤や展色剤として配合されており、従来、供給の安定性やコスト面から、デキストリンが多く用いられている。
【0003】
しかし、デキストリンの水溶液は、経時的に褐色に変色すること、即ち、褐変を起こすことが知られており、従って、デキストリンを含む水性組成物である水性絵具組成物も、同様に、経時的に褐変を起こすことが知られている。特に、水性絵具組成物には、多くの場合、体質顔料として、炭酸カルシウムのようなアルカリ性物質が配合されており、デキストリンは、そのようなアルカリ性物質の存在下に一層、容易に褐変することが知られている。即ち、デキストリンを水溶性樹脂として含み、体質顔料として、炭酸カルシウムのようなアルカリ性物質を含む水性絵具組成物は、経時的に容易に褐変する。
【0004】
従って、デキストリンを水溶性樹脂として含む水性絵具組成物は、着色顔料として、特に、白色乃至淡薄色顔料や彩度の高い着色顔料、例えば、黄色顔料や橙色顔料を用いた場合に、上述したデキストリンの経時的な褐変に基づいて変色する問題がある。濃色乃至黒色の着色顔料を用いた絵具組成物の場合には、自体の着色顔料による発色が強く、デキストリンが経時的に褐変を起こしても、発色に影響を殆ど受けないが、絵具組成物に配合した着色顔料の発色よりも、デキストリンの褐変による発色が相対的に大きい着色顔料、即ち、上記白色乃至淡薄色顔料や、彩度の高い着色顔料、例えば、黄色顔料や橙色顔料を用いた絵具組成物は、デキストリンの経時的な褐変に基づいて、絵具組成物も経時的に変色して、描画に際して、本来の発色を与えない。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、デキストリンを配合した水性絵具組成物に固体酸を配合することによって、水性絵具組成物における経時的な変色を防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
このような水性絵具組成物は、用いる着色顔料が白色を含む淡薄色の着色顔料であるときは、経時的な変色は効果的に防止されるが、紙のような吸収性の描画面以外の描画面、例えば、樹脂、ガラス、金属等からなる描画面、例えば、ペットボトルのような合成樹脂製容器の表面に描画できるように、水性絵具組成物に濡れ剤としてスチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩やスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩を含有させる場合には、上記濡れ剤をアルカリ塩として含有するためには、水性絵具組成物は固体酸を含んでいても、アルカリ性である必要があり、その結果、水性絵具組成物は、依然として、経時的な変色が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−247975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水溶性樹脂としてデキストリンを用いた従来の水性絵具組成物における上述した問題を解決するためになされたものであって、経時的な変色がなく、しかも、描画性にすぐれる水性絵具組成物を提供することを目的とする。
【0009】
特に、本発明は、炭酸カルシウムのようなアルカリ性の体質顔料や、スチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩やスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩のようなアルカリ性の濡れ剤を含有して、そのpHがアルカリ性領域にある場合であっても、経時的な変色がない水性絵具組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による水性絵具組成物は、着色顔料と水溶性樹脂と湿潤剤と水を含む水性絵具組成物において、上記水溶性樹脂として還元デキストリンを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による水性絵具組成物は、水溶性樹脂として、デキストリンに代えて、還元デキストリンを含み、経時的な変色がなく、しかも、描画性にすぐれる。
【0012】
特に、本発明による水性絵具組成物は、炭酸カルシウムのようなアルカリ性の体質顔料や、スチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩やスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩のようなアルカリ性の濡れ剤を含有して、そのpHがアルカリ性領域にある場合であっても、経時的な変色を生じない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による水性絵具組成物は、着色顔料と水溶性樹脂と湿潤剤と水を含む水性絵具組成物において、上記水溶性樹脂として還元デキストリンを含む。
【0014】
本発明において、着色顔料は、着色剤としての機能を有し、従来、水性絵具組成物において、そのような着色剤として知られているものであれば、いずれも用いることができる。
【0015】
しかし、前述したように、着色顔料として、白色顔料乃至淡薄色の着色顔料又は高彩度顔料、例えば、黄色顔料若しくは橙色顔料を用いる水性絵具組成物において、水溶性樹脂として、デキストリンを用いるときは、その経時的な褐変に基づいて、経時的な変色が起こるところ、本発明によれば、デキストリンに代えて、還元デキストリンを用いることによって、そのような経時的な変色を防止することができる。
【0016】
本発明によれば、そのような白色乃至淡薄色の着色顔料の具体例として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛及びリトポンから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。また、黄色顔料の具体例として、例えば、アゾ系黄色顔料、ピラゾロン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、フラバントロン系黄色顔料、カドミウムイエロー、コバルトイエロー及びチタニウムイエローから選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、また、橙色顔料の具体例として、例えば、アゾ系橙色顔料及びアントラキノ系橙色顔料から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0017】
なかでも、本発明によれば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛又はリトポンのような白色顔料を用いる場合であっても、水溶性樹脂として還元デキストリンを用いるとき、経時的な変色が起こらない。特に、本発明においては、着色顔料として酸化チタンが好ましく用いられる。
【0018】
本発明においては、このような着色顔料は、通常、水性絵具組成物において、5〜50重量%、好ましくは、10〜40重量%の範囲で用いられる。
【0019】
水性絵具組成物において、着色顔料の配合割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の粘度が過度に高くなり、伸びが悪くなる。しかし、着色顔料の配合割合が余りに少ないときは、得られる水性絵具組成物が着色力に乏しく、絵具としての用をなさない。
【0020】
本発明によれば、上記着色顔料と共に、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ白、ベントナイトを含むクレー、含水ケイ酸、無水ケイ酸等の体質顔料が用いられる。体質顔料は、通常、水性絵具組成物において、3〜50重量%、好ましくは、5〜40重量%の範囲で用いられる。
【0021】
本発明による水性絵具組成物は、水溶性樹脂として還元デキストリンを用いるので、経時的な褐変を生じない。特に、本発明によれば、体質顔料として、炭酸カルシウムのようにアルカリ性のものを用いても、得られる水性絵具組成物は、経時的な褐変を起さない。着色顔料の場合と同様、水性絵具組成物において、体質顔料の配合割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の粘度が過度に高くなり、伸びが悪くなる。
【0022】
本発明において、湿潤剤は、水性絵具組成物の乾燥性を最適に調節するほか、凍結防止や再溶解性向上剤等として用いられるものであり、その具体例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールやグリコール類が好ましく用いられる。
【0023】
湿潤剤は、水性絵具組成物において、好ましくは、1〜25重量%、特に、2〜15重量%の範囲で用いられる。湿潤剤の配合割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の塗膜が乾燥し難く、使い勝手が悪い。しかし、湿潤剤の配合割合が余りに少ないときは、得られる水性絵具組成物の塗膜が乾燥したとき、脆く、ひび割れを起こしやすい。
【0024】
本発明による水性絵具組成物は、水溶性樹脂、即ち、糊剤として、還元デキストリンが用いられる。デキストリンに代えて、還元デキストリンを用いることによって、上述したように、着色顔料として、白色乃至淡薄色顔料や、高彩度顔料、例えば、黄色顔料や橙色顔料を用いても、経時的な変色が起こらない。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛又はリトポンのような白色顔料を用いる場合であっても、水溶性樹脂として還元デキストリンを用いるとき、経時的な変色が起こらない。
【0025】
還元デキストリンは、デキストリンのカルボニル基を水素添加し、還元して得られる糖アルコールの1つであり(例えば、特開平5−214002号公報)、また、例えば、松谷化学(株)製のH−PDXのような市販品を用いることができる。
【0026】
還元デキストリンは、水性絵具組成物において、通常、3〜40重量%、好ましくは、5〜30重量%、最も好ましくは、8〜28重量%の範囲で用いられる。水性絵具組成物における還元デキストリンの割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の着色力が弱くなって、塗膜が光沢を有するようになる。他方、その割合が余りに少ないときは、得られる水性絵具組成物の描画面への定着性が悪くなる。
【0027】
本発明においては、必要に応じて、還元デキストリンと共に、第2の水溶性樹脂を用いてもよい。但し、デキストリンを除く。上記第2の水溶性樹脂として、特に限定されるものではないが、アラビアガム、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、スチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩、スチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩等が好ましく用いられる。
【0028】
しかし、なかでも、これらの第2の水溶性樹脂のうち、アラビアガム、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロ−スから選ばれる少なくとも1種を用いることによって、描画時の伸びにすぐれる水性絵具組成物を得ることができる。これらの第2の水溶性樹脂は、絵具組成物において、好ましくは、10重量%以下の範囲で、好ましくは、1〜5重量%の範囲で用いられる。
【0029】
他方、第2の水溶性樹脂として、スチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩及びスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩から選ばれる少なくとも1種を用いることによって、紙のような吸収性の描画面以外の描画面、例えば、樹脂、ガラス、金属等からなる描画面、代表的には、いわゆるペットボトルのような合成樹脂製容器の表面によく描画し得る水性絵具組成物を得ることができる。これらの第2の水溶性樹脂は、絵具組成物において、好ましくは、10重量%以下の範囲で、好ましくは、1〜5重量%の範囲で用いられる。上記アルカリ塩としては、通常、アルカリ金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩が用いられる。
【0030】
勿論、本発明においては、水溶性樹脂として、アラビアガム、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロ−スから選ばれる少なくとも1種とスチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩及びスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩から選ばれる少なくとも1種を併用することも好ましい態様である。
【0031】
水性絵具組成物において、このような第2の水溶性樹脂も、その割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の着色力が弱くなって、塗膜が光沢を有するようになる。他方、その割合が余りに少ないときは、得られる水性絵具組成物の描画面への定着性が悪くなる。
【0032】
本発明による水性絵具組成物は、体質顔料として炭酸カルシウムを含み、及び/又は濡れ剤としてスチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩及びスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩から選ばれる少なくとも1種を含むときは、そのpHはアルカリ性領域、即ち、7を越えて、11以下の範囲にあり、好ましくは、7.5〜11の範囲にあり、特に好ましくは、7.5〜8.5の範囲にある。
【0033】
本発明による水性絵具組成物は、顔料の分散性を高めて、絵具組成物の保存安定性を高めるために、必要に応じて、界面活性剤を含んでいてもよい。また、前述したように、例えば、ペットボトルの表面への描画に用いるときに、ペットボトルの表面で絵具が弾かれないようにするために界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤がそれぞれ単独で、又は併用される。また、シリコーン系界面活性剤も用いられる。
【0034】
界面活性剤を水性絵具組成物に配合する場合は、通常、絵具組成物において、0.01〜10重量%の範囲で配合され、好ましくは、0.1〜5重量%の範囲で配合される。絵具組成物における界面活性剤の割合が余りに多いときは、絵具は、紙のような吸収性の描画面に過度に浸透しやすくなって、伸びが悪くなる。
【0035】
本発明において、水は、水性絵具組成物における溶媒又は分散媒として働くものであって、水性絵具組成物において、通常、15〜55重量%、好ましくは、20〜45重量%の範囲で用いられる。この溶媒又は分散媒としての水の割合が余りに多いときは、得られる水性絵具組成物の粘度が過度に低くなって、顔料が分離する等、保存性に劣るようになり、他方、水の割合が余りに少ないときは、上記水溶性樹脂が十分に溶解せず、得られる水性絵具組成物の粘度が高く、伸びが悪くなる。
【0036】
本発明による水性絵具組成物は、その製造方法において特に限定されるものではなく、例えば、次のような方法によって得ることができる。即ち、水溶性樹脂を水に溶解させ、得られた水溶液に着色顔料と湿潤剤、必要に応じて、更に、体質顔料、界面活性剤、防腐防黴剤、水等を加え、均一に混合、攪拌し、得られた混合物を更にロールミル等の適宜手段によって混練すればよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はそれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例1
還元デキストリン、カルボキシメチルセルロース及びスチレン−アクリル酸樹脂ナトリウム塩をそれぞれ水に溶解させて水溶液とした。この水溶液に酸化チタン顔料、湿潤剤及び水を加え、攪拌して均一な混合物を得た。この混合物を3本ロールミルを用いて混練して、水性絵具組成物を得た。
【0039】
実施例2〜4
表1に示す原料を用いて、実施例1と同様にして、水性絵具組成物を得た。
【0040】
比較例1〜3
表1に示す原料を用いて、実施例1と同様にして、水性絵具組成物を得た。
このようにして得られたそれぞれの水性絵具組成物について、経時的な変色性と描画時の伸びについて調べた。
【0041】
(絵具組成物のpH)
簡易型pHメータTwin pH B−212((株)堀場製作所製)を用いて、絵具組成物をそのまま、pH測定した。
【0042】
(経時的な褐変性の評価)
50℃の恒温槽で1か月間保存した水性絵具組成物を用いて画用紙上に描画し、得られた描画物を保存前の絵具を用いて描画した描画物と比較して、発色に差異がないときをAとし、幾分、変色が認められるときをBとし、著しい変色があるときをCとした。
【0043】
(伸び)
水平に置いた画用紙上の一箇所に絵具組成物を小豆大の大きさに置いた。丸筆に十分に水を含ませた状態で垂直に立て、上記絵具組成物をその周縁から筆の穂先で溶いた後、画用紙にジグザグに塗り付けながら、筆を一方向に運んだ。この際、絵具組成物の塗り付けを開始した垂直部分で筆を根元まで下ろし、その後、ジグザグに塗り付けながら、筆を一方向に運ぶときに、絵具組成物を塗り付けた垂直部分と斜め部分が半分程度、重なるようにして、筆の運びと描画跡の残り具合から絵具組成物の伸びを評価した。
【0044】
絵具組成物の伸びが悪い場合には、筆が滑らかに滑らず、絵具組成物の塗り付けが不均一になるので、塗り付け部分が掠れたようになって、画筆の毛先の跡が残る。そこで、絵具組成物が非常によく伸びるときをAとし、伸びるが、幾分、筆の毛先の跡が残るときをBとし、全く伸びず、筆の毛先の跡が残るときをCとした。結果を表1に示す。
【0045】
表1における各原料は次のものを示す。
【0046】
酸化チタン顔料:堺化学工業(株)製A−110P
含水ケイ酸:DSL.ジャパン(株)製NO67カープレックス
還元デキストリン:松谷化学(株)製H−PDX
カルボキシメチルセルロース:第一工業製薬(株)製セロゲン7A
スチレン−アクリル酸樹脂ナトリウム塩:ジョンソン・ポリマー製ジョンクリル690のナトリウム塩
デキストリン:松谷化学(株)製ブリティッシュガム70E
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、体質顔料として炭酸カルシウムを含み、及び/又は濡れ剤としてスチレン−アクリル酸樹脂ナトリウム塩を含む本発明による水性絵具組成物(実施例1〜4)は、そのpHがアルカリ性領域にあるにもかかわらず、水溶性樹脂として還元デキストリンを含むので(実施例1〜4)、経時的な変色がないのみならず、描画の際、伸びにもすぐれている。
【0049】
これに対して、水溶性樹脂としてデキストリンを用いた水性絵具組成物(比較例1及び2)は、経時的な変色が著しい。一方、水溶性樹脂として、デキストリンに代えて、カルボキシメチルセルロースルとスチレン−アクリル酸樹脂ナトリウム塩を用いることによっても(比較例3)、経時的な変色を生じない絵具組成物を得ることができるが、しかし、この場合、水溶性樹脂として、カルボキシメチルセルロースルとスチレン−アクリル酸樹脂ナトリウム塩を用いて、透明乃至半透明の絵具組成物を得るには、それらの配合量を多くしなければならず、そして、その配合量を多くすれば、得られる絵具組成物は粘度が高すぎて、描画時の伸びが悪くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料と水溶性樹脂と湿潤剤と水を含む水性絵具組成物において、上記水溶性樹脂として還元デキストリンを含むことを特徴とする水性絵具組成物。
【請求項2】
着色顔料が白色乃至淡薄色顔料又は黄色顔料若しくは橙色顔料である請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項3】
白色乃至淡薄色顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛及びリトポンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項4】
黄色顔料がアゾ系黄色顔料、ピラゾロン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、フラバントロン系黄色顔料、カドミウムイエロー、コバルトイエロー及びチタニウムイエローから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項5】
橙色顔料がアゾ系橙色顔料及びアントラキノ系橙色顔料から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項6】
着色顔料が酸化チタンである請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項7】
第2の水溶性樹脂として更にアラビアガム、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロ−スから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項8】
第2の水溶性樹脂として更にスチレン−アクリル酸樹脂アルカリ塩及びスチレン−マレイン酸樹脂アルカリ塩から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の水性絵具組成物。
【請求項9】
体質顔料として硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ白、クレー、含水ケイ酸及び無水ケイ酸から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の水性絵具組成物。

【公開番号】特開2012−144709(P2012−144709A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271775(P2011−271775)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】