説明

水性被覆材およびその塗膜

【課題】耐汚染性、耐候性、光沢に優れた塗膜を提供する。
【解決手段】アクリル系重合体(A)、コロイダルシリカ(B)、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤(C)とポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤(D)を含む水性被覆材であり、特定構造のアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用した水性被覆材を用いることにより耐汚染性、耐候性、光沢に優れた塗膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性被覆材とその塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全および安全衛生の観点から、塗料の水性化が進んでいる。特に樹脂成分が水に分散したエマルション型の水性塗料は、その需要の高まりと共に、用途も急速に拡大し、併せて高い要求性能も求められるようになってきている。
しかし、水性塗料は有機溶剤系塗料に比べて耐候性、耐水性、耐汚染性が低いため、これらの課題の解決を目的とした水性塗料の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2には、アクリル系重合体、コロイダルシリカ、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを含む水性被覆材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/075583号パンフレット
【特許文献2】特開2008−13771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1、特許文献2に記載の方法では、得られる塗膜の光沢、耐汚染性、耐候性が不十分であった。本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、アクリル系重合体(A)、コロイダルシリカ(B)、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤(C)とポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤(D)を含む水性被覆材にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性被覆材により、耐汚染性、耐候性、光沢に優れた塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水性被覆材は、アクリル系重合体(A)、コロイダルシリカ(B)、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤(C)とポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤(D)を含むものである。
【0009】
アクリル系重合体(A)
アクリル系重合体(A)を構成するラジカル重合性単量体としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体。
【0010】
ラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート。
【0011】
その他、ダイアセトンアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性単量体等が挙げられる。
【0012】
中でも、アクリル系重合体(A)を重合する際にラジカル重合性単量体中にアリル基を2つ以上有する単量体を0.2〜10質量%と、その他のアクリル系ラジカル重合性単量体90〜99.8質量%を用いると、得られる塗膜の耐汚染性、耐候性がより向上するため好ましい。中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が好ましく、アリル基を3つ有するトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
【0013】
また、本発明では、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、アクリル系重合体(A)を構成するラジカル重合性単量体を共重合することが好ましい。
【0014】
ポリオルガノシロキサン重合体は、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシラン類や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(ジメチルシロキサン環状オリゴマー3〜7量体混合物)等のジメチルシロキサン環状オリゴマー類や、ジメチルジクロロシラン等を原料として合成することができる。得られる樹脂の熱安定性等の性能やコストに優れる点から、ジメチルシロキサン環状オリゴマーを用いることが好ましい。さらに、得られる塗膜の透明性が向上するため、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を共重合することがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体の質量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体の質量平均分子量が10,000以上であれば、得られる塗膜に充分な耐候性が発現し得られやすい。ポリオルガノシロキサン重合体は重合体(A)を構成するラジカル重合性単量体100質量部に対して、0.3〜50質量部用いることが耐汚染性と耐候性の点から好ましい。より好ましくは0.5〜30質量部である。
【0015】
コロイダルシリカ(B)
コロイダルシリカ(B)は、本発明の水性被覆材から得られる塗膜に親水性付与し、それにより耐汚染性を向上させる。さらに、得られる塗膜の硬さ、耐候性も向上させる。
コロイダルシリカ(B)は市販品を使用することができ、水を分散媒にしたものであっても有機溶剤を分散媒としたものであってもよい。
【0016】
コロイダルシリカ(B)としては、例えば、酸性を示す水性コロイダルシリカ、アルカリ性を示す水性コロイダルシリカ、カチオン性コロイダルシリカが挙げられる。
酸性を示す水性コロイダルシリカとしては、例えば、商品名:スノーテックスO(SiO2固形分20%、日産化学工業(株)製)が挙げられる。
【0017】
アルカリ性を示す水性コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製の商品名:スノーテックスXS(SiO2固形分20%)、スノーテックスNXS(SiO2固形分20%)、スノーテックスN(SiO2固形分20%)、スノーテックスS(SiO2固形分30%)、スノーテックスNS(SiO2固形分20%)等が挙げられる。
カチオン性コロイダルシリカとしては、例えば、スノーテックスAK(日産化学工業(株)製、SiO2固形分19%)が挙げられる。
【0018】
これらのコロイダルシリカは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水性被覆材中のコロイダルシリカ(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、固形分含有量で0.1〜20質量部であり、0.5〜18質量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜10質量部である。コロイダルシリカ(B)の含有量が0.1質量部以上であれば、得られる形成される塗膜の耐汚染性、耐汚染性が向上する。また、コロイダルシリカ(B)の前記含有量が20質量部以下であれば、形成される塗膜の透明性、耐候性、耐ブリスター性、および耐凍害性を低下させることなく、塗膜の耐汚染性を向上させることができる。
【0019】
また、コロイダルシリカ(B)の平均粒子径は、1〜60nmであることが好ましく、40nm未満であることがより好ましく、20nm未満であることがさらに好ましい。平均粒子径が60nm以下であれば、水性被覆材の乾燥工程においてコロイダルシリカ(B)が塗膜表層に偏在化し耐汚染性が向上しやすくなる。
【0020】
本発明では、特定構造を有するアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用することにより、得られる塗膜の光沢、耐候性が向上する。
【0021】
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤(C) ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルの具体例としては、例えばニューコール707SF、707SN、714SF、723SF、740SF(いずれも日本乳化剤社製)等が挙げられる
前記アニオン系界面活性剤の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましい。アニオン系界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、塗膜の耐汚染性、水性被覆材の調製時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。アニオン系界面活性剤の含有量が10質量部以下であれば、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、水性被覆材の調製時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。
【0022】
ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤(D)(界面活性剤)
ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましく、0.1〜6質量部がさらに好ましい。ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、塗膜の耐汚染性、塗膜の光沢、水性被覆材の調製時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤の含有量が10質量部以下であれば、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、水性被覆材の調製時の安定性、水性被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。
さらに、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤のエチレンオキサイドモル数とプロピレングリコールモル数比(EOモル数/POモル数)が大きいほど耐汚染性、塗膜の光沢は向上する。
【0023】
本発明の水性被覆材には、コーティング材料として優れた性能を発現させる点から、各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、造膜助剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本実施例における「部」は「質量部」を意味する。
水性被覆材の評価は以下に示す方法で行った。
【0025】
<水接触角、光沢、耐候性の評価用試験板の作製>
リン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)に、40℃の雰囲気下で水性被覆材をバーコーター#48にて塗布し、40℃で12時間乾燥した。その後、室温で1日間乾燥したものを、水接触角、耐候性の評価用試験板とした。
【0026】
<水接触角の測定>
CA−X150型FACE接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、評価用試験板の塗膜に0.4μL(画面上目盛りで3目盛り)の水滴を滴下し、30秒経過後の水接触角を測定した。
【0027】
<光沢の測定>
日本電飾(株)製Spectro Color Meter SE2000を用いて塗膜の60°グロスを測定した。
【0028】
<耐候性の評価>
評価用試験板から70mm×50mmの大きさの試験板を切り取り、該試験板をダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)に入れ、試験サイクル:照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RHの条件で耐候性試験を行った。600時間経過後の塗膜の60゜グロスの保持率を耐候性の指標とし、下記基準で判定した。
「◎」:90%以上。
「○」:70%以上、90%未満。
「△」:50%以上、70%未満。
「×」:50%未満、もしくは塗膜の剥離・クラックが生じた。
【0029】
[製造例1] ポリオルガノシロキサン重合体水分散液の調製
下記原料組成物をホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cmの圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、水(90部)及びドデシルベンゼンスルホン酸(10部)を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、前記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、下記水酸化ナトリウム水溶液を加えてポリオルガノシロキサン共重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は18質量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物 98部
γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン 2部
脱イオン水 310部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.7部
水酸化ナトリウム水溶液:
水酸化ナトリウム 1.5部
脱イオン水 30部
【0030】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、及び滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を48℃に昇温した後に下記還元剤水溶液を添加した。また、重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。

第1原料混合物:
SiEm 5部
(固形分0.9部)
単量体 トリアリルシアヌレート 0.5部
メチルメタクリレート 11部
ノルマルブチルメタクリレート 27.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1部
アニオン系界面活性剤
ニューコール707SF(商品名、日本乳化剤(株)製、非反応型アニオン性界面活性剤、固形分30%) 2.1部
(固形分0.63部)
脱イオン水 77部
開始剤 パーブチルH69(日本油脂(株)製) 0.09部
還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン(EDTA) 0.00025部
アスコルビン酸ナトリウム 0.12部
脱イオン水 6.5部

次いで、還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目(外層)の共重合体の構成成分を含む第2原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)と下記開始剤水溶液とを1.75時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持し、滴下終了後は80℃で1.5時間保持した。

第2原料混合物:
単量体 メチルメタクリレート 19部
ノルマルブチルメタクリレート 12部
シクロヘキシルメタクリレート 25.5部
ダイアセトンアクリルアミド 1.5部
メタクリル酸 2部
アニオン系界面活性剤 ニューコール707SF 4.2部
(固形分1.25部)
脱イオン水 21部
開始剤水溶液:
開始剤 パーブチルH69 0.03部
脱イオン水 8部

その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.4部)を添加後、下記原料を順次添加して重合体(A)を得た。
アジピン酸ジヒドラジド水分散液:
アジピン酸ジヒドラジド 0.7部
脱イオン水 1.5部
界面活性剤水溶液:
ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型ノニオン系界面活性剤
L44(商品名、固形分100%、アデカ(株)製) 0.7部
脱イオン水 0.83部
【0031】
重合体(A)の水性分散液に、コロイダルシリカ(B)として、スノーテックスS(商品名、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ:平均粒子径10nm)33.3質量部(固形分10質量部)を添加し、さらに、造膜助剤としてジプロピレングリコールn−ブチルエーテルを10質量部添加して被覆材用混合物を得た。
次に、タイペークR−930(石原産業株式会社製 硫酸法酸化チタン 着色材料)196.3質量部、OROTAN SG(ローム&ハース社製 顔料分散剤)2.1質量部、サーフィノール DF−58(エアプロダクツ社製、消泡剤)0.08質量部、プロピレングリコール29.4質量部、脱イオン水34.3質量部、28%アンモニア水溶液1.8質量部を十分に混合した後、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、次いでガラスビーズ等を300メッシュナイロン紗で濾別したものを評価用のミルベースとした。
前記被覆材用混合物120質量部(固形分40.4質量部)に対し、上記の評価用ミルベース55質量部、RHEOLATE350(RHEOX社製増粘剤)1.5質量部を
順に加え、十分に攪拌した後にフォードカップ #4で100秒〜140秒程度になるよ
うに脱イオン水を加えて粘度を調整した。
その後、再度300メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、試験用の白色系の水性被覆材を作製した。
得られた白色系の水性被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜の水接触角、光沢を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例2〜4]
ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤の種類(P−103(商品名、固形分100%、アデカ(株)製),ペポールB−188(商品名、固形分100%、東邦化学工業(株)製))および量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の水性被覆材を作製した。
得られた白色系の水性被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜の水接触角、光沢を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
[比較例1]
ノニオン系界面活性剤をポリオキシアルキレンアルキルエーテル型ノニオン系界面活性剤であるエマルゲン1150S−60(商品名、固形分60質量%、花王(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の水性被覆材を作製した。
得られた白色系の水性被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜の水接触角、光沢を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例2〜3]
ノニオン系界面活性剤量、コロイダルシリカ量を変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の水性被覆材を作製した。
得られた白色系の水性被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜の水接触角、光沢を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

表1中の略号は下記化合物を示す。
「MMA」:メチルメタクリレート、
「2−HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
「TAC」:トリアリルシアヌレート
「MAA」:メタクリル酸、
「n−BA」:n−ブチルアクリレート、
「DAAm」:ダイアセトンアクリルアミド、
「ADH」:アジピン酸ジヒドラジド。
【0036】
表1から明らかなように、実施例の白色系の水性被覆材から得られる塗膜は、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤を用いることにより、塗膜の水接触角と光沢の両性能が向上する。
これに対して、比較例の白色系の水性被覆材からなる塗膜は、塗膜の水接触角、光沢、耐汚染性をバランスよく発揮することは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の水性被覆材からなる塗膜は、耐汚染性、光沢に優れ、耐候性が良好となる。このような水性被覆材、またその塗膜は、構造物等の躯体保護を目的とする様々な被覆用途に用いることができ、工業上極めて有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合体(A)、
コロイダルシリカ(B)、
ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル型のアニオン系界面活性剤(C)とポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加型のノニオン系界面活性剤(D)を
含む水性被覆材。
【請求項2】
請求項1記載の水性被覆材からなる塗膜。

【公開番号】特開2011−256308(P2011−256308A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133083(P2010−133083)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】