説明

水性被覆溶液及び金属表面の処理方法

金属表面に耐食性被膜を与えるための被覆溶液に関する。被覆溶液は、水溶性珪酸塩と+4未満以下の原子価を有する金属から選択された少なくとも1種の金属イオン(X)とを含有する。前記被覆溶液は、前記珪酸塩が可溶性を維持するように、水性珪酸塩Xのネットワークを形成し、且つ金属表面(Y)に触れて珪酸塩(X)と(Y)とを含んで成る被膜を形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性被覆溶液及び金属表面の処理方法に関する。また、このような被覆溶液及び/またはこのような方法によって処理された金属表面を提供することに関する。
【0002】
さらに具体的には本発明は、金属表面に珪素ネットワークを形成することにより金属表面に耐食性を与える被覆溶液に関し、この金属表面は、+4以下の原子価を有するその他の金属イオンによって置換された少なくとも幾つかのSi原子のシリコンネットワークを有する。この置換がこのネットワークにイオン交換の可能性を与えて、且つ約3の低いpH値に変化させた表面を維持する助けとなる(Iler等、1979)。これらの性質が、多くの利点をもたらし、特にネットワークへ付加金属の陽イオンの結合を可能にする。
【背景技術】
【0003】
基材に耐食性を与えるための金属表面の被膜が知られている。いわゆる「変性被膜」は、特にクロム変性被膜は、鉄、マグネシウム、亜鉛及びそれらの合金の腐食防止のために60年にわたって使用されてきた(Cotell等、1999)。変性被膜は一般的に容易に適用ができ、広い範囲の金属及び合金適用可能であり、所定の条件のもとでは、下塗り及び被膜に対して優れた接着性を備える。
【0004】
クロメート変性被膜は、それらが「自己回復性」性質を付与する場合に、一般的に腐食防止物として優れている(Zhao等、2001)。すなわち、それらが活性な腐食防止物を与える。クロメート変性被膜は、活性な腐食防止物を与え、クロム(VI)が、被膜すなわち水酸化非晶質Cr(III)−Cr(VI)の混合物から放出されて、溶解性Cr(VI)オキシ陰イオンとして腐食溶液に伝播して、損傷位置を減少する。活性な腐食防止物は、変性被膜が腐食に対して1次防止物であるところでは重要である。処理される表面が軽微な機械的または化学的損傷を対照とする場合であっても、このような防止物は維持される。
【0005】
しかしながら、クロムは有毒物質と考えられ、六価の形は廃棄物として環境的に有害である既知の発癌物質である。実際の、最近の立方行為は、Cr(VI)の全体的排除に動いていて、したがって金属仕上げ工業においてその使用は制限される。結果として、動きは、クロムを含まず、珪酸塩、ジルコニウム、チタン、セリウム、リン酸塩、過マンガン酸塩及びヒドロタルサイトを基にした被膜を含む変性被膜を開発することである(Gray、2002)。残念なことに、これらの被膜の幾つかは、クロムベース系統と同等の腐食防止を示し、したがってその用途はある程度の範囲に限定される。活性な腐食インヒビターとして考慮されている見込みのある候補の中では、セリウム化合物、過酸化マンガン塩、モリブデン酸塩、バナジウム酸塩及びリン酸塩である(Sinko、2001)。
【0006】
Ce及びMnを密閉したリチウム−ヒドロタルサイトのような、密閉錯体酸化物が、アルミニウム合金の活性な腐食防止を示すことができることが判明した(Buchheit等、2000)。しかしながら、希土類変性被膜は、陰極反応を抑制する希土類の役割を一般的に当てにするが、安定した酸化物を形成する範囲が狭い(Hinton、1995)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有利なことに、本発明は、耐食性を改良して所定の表面化学的性質を備えた被膜とするために、金属の表面を処理することができる。さらに、有利なことに、本発明は、現存する処理装置、及びこれらの装置に僅かな修正を加えて現存する処理浴に使用することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様にしたがえば、金属表面に耐食性被膜を付与するための被覆溶液が提供される。この被覆溶液は、水溶性珪酸塩と、+4以下の原子価を有する少なくとも1種の金属イオン(X)と含有して、その後、珪酸塩が水溶性を残すような水性珪酸塩−Xネットワークを形成する。金属表面(Y)がこの溶液に触れたとき、この珪酸塩ネットワークのイオン交換特性のために、珪酸塩−X及びYから成る被膜が部分的に形成される。
【0009】
一般的に言えば、被覆層は、所定のpHIEPを有して基板の表面に備わる。ここで、pHIEPはIEP(等電位点)で測定したときに正味の表面電荷がゼロであるところのpHであり、pHIEPより大きなpH値では表面が陰極に帯電し、したがって陰極に帯電したイオンに抵抗する。被膜の断面組成に変化が生じるならば、被膜のpHIEPが大気−被膜表面で最も低く且つ被膜−金属界面で最も高くできるように制御する必要がある。好ましくは、金属表面上に形成された被覆層が約3.5未満のpHIEPを有して(大気−被膜界面)且つ表面水を含み3.5を超えるpHでは金属の被覆表面が陰極に帯電するように、被覆溶液は構成される。さらに好ましくは、形成された被覆層が、大気−被膜表面で2.5未満のpHIEPを有する。
【0010】
本発明は、上述のような被覆溶液が金属表面を覆う被膜をつくり、この金属表面が最大のpH値具体的には3.5より大きなpH値で陰極表面電荷を付与し、幾つかの実施態様では2〜2.5の低さである陰極表面電荷を付与する。この件に関して、酸性雨は約3のpHを有することが注目される。被覆された金属表面上の電荷が、pHIEP以上のpH値で陰性である時、塩化物、硫酸塩及び硝酸塩のイオンのような表面水の中で陰極に帯電された部分は、表面によって抵抗される(Kendig、1999;Sato、1989)。これは基材の腐食を抑制する助けとなる。pH3で被覆された表面の陰極電荷の大きさは、pHIEPが低いときに大きくなり、腐食陰極イオンの強い抵抗を生じる。通常のリン酸塩及びクロム酸塩(III)の化学的変性被膜の典型的なpHIEP値は、それぞれ5.6〜7.0の範囲である(Reinhard、1989)。
【0011】
水溶性珪酸塩はその選択が特に限定されず、その選択が金属イオンXを有する少なくとも幾つかのSi原子を変換できるネットワークの形成を可能にすることを与える。好ましくは、水溶性珪酸塩は、アルカリ金属または珪酸塩アンモニウム、メタ珪酸塩、オルト珪酸塩、ピロ珪酸塩、水ガラス、珪酸、シリカ、コロイドシリカ、二酸化珪素または有機珪酸塩予備硬化剤から選択される。特に、この珪酸塩は、特別な観点から、珪酸塩ナトリウムまたは珪酸塩カリウムからなる群から好ましく選択される。
【0012】
同様に、金属イオンXの選択は特に限定せずに、金属イオンが+4未満または等しい原子価を有し、且つ珪酸塩母相に組み込むことができる。好ましくは、この金属イオンが、Al、B、Zr及びTiからなる群から選択された元素である。
【0013】
この被覆溶液は、1ppmから分散限界までの水溶性珪酸塩の濃度と、4:1から1:100までのXとSiとの比とを有する。好ましくは、XとSiとの比は1:1から1:50までのXとSiとの比を有する。
【0014】
特に好ましい実施態様において、この溶液は活性腐食インヒビターとしてさらに1種以上の付加組成物含み、この活性腐食インヒビターは限定するものでないがCe、Mo、W、Mn及びVのような遷移金属から、または最も好ましくはCeのような希土類(ランタニド)から好ましく選択される。セリウムイオンのような付加イオンが、水性溶液中の珪素を置換する金属イオンXのイオン交換能力を釣り合わせる助けと成り、且つセリウムイオンのようなイオンが被膜の破壊が生じるまで被膜内に保持するような方法で被膜組成物に組み入れられることが分かった。しかしながら、幾つかの結合セリウムがイオン交換となり、したがって活性な腐食防止を与えることが可能である。
【0015】
本発明の別の態様にしたがい、金属表面の処理方法が提供され、この処理方法は、水溶性珪酸塩と+4以下の原子価を有する金属から選択された少なくとも1種の金属イオンXとを含む水性被覆溶液を、金属表面に塗布することを含み、珪酸塩ネットワークに少なくとも幾つかのSi原子を含む珪酸塩ネットワークを有する金属表面上に被覆層が形成され、珪酸塩ネットワークが金属イオンXで置換され且つ被覆された金属表面からの金属イオンYと合体する。
【0016】
本発明の溶液組成に関連して上記の検討したように、種々の選択肢が本発明のこの態様にも適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一つの具体的な実施態様において、金属表面の処理は、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンを含む水性被覆溶液を金属表面に塗布して、珪酸塩アルミニウムの被膜を被覆することを含む。この実施態様において、金属表面が、亜鉛、亜鉛合金または亜鉛メッキした金属表面を含む亜鉛含有金属表面を含む。この実施態様において、珪酸塩アルミニウムの被膜が金属表面に結合するとき、亜鉛イオンが、珪酸塩イオン、アルミニウムイオン及び拡散亜鉛イオンを含む母層を形成するように、珪酸塩アルミニウム被膜組織へと拡散できる。また、その他の金属基材が、好ましい耐食性被膜を与えるために同様の機構を備えることが予想される。例えば、金属表面は、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄、チタン及びそれらの合金を含むことができる。この金属表面は、種々の金属基材上のこの金属、この金属の合金、または他の金属、または他の金属の合金を言及する。
【0018】
一つの実施態様にしたがい、2〜2.5のpHIEPを有する珪酸塩アルミニウムが、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンを含む水性被覆溶液から金属表面に塗布される。これは適切な手段によって達成できる。例えば、吹き付け、塗装及び浸漬によってである。好ましい実施態様においては、水性溶液は、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンから構成され且つさらに任意付加腐食インヒビターとしてCe(IV)/Ce(III)イオンを含み、金属表面に塗布される。これは、拡散層を形成する金属表面で亜鉛イオンの生成を生じる。金属表面近くの拡散層のpHは上昇して、金属表面上に珪酸塩アルミニウム被膜を形成する。この拡散層上の亜鉛イオンは珪酸塩アルミニウム被膜に組み入られて、アルミニウム、珪素、亜鉛、及びセリウムの酸化物を含む母層を形成する。
【0019】
すなわち、本発明の好ましい実施態様にしたがえば、この方法は、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンから構成され且つ任意にセリウムイオンを含む水性溶液中に亜鉛含有金属を浸漬して、金属表面に拡散層を形成することを含み、且つ十分な時間に渡って珪酸塩アルミニウムを前記金属表面に形成する。形成された珪酸塩アルミニウム被膜が、その組織中に亜鉛含有金属表面から拡散する亜鉛イオン任意にセリウムイオンを含む。
【0020】
他の実施態様にしたがい、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンから構成され且つ任意にセリウムイオンを含む水性溶液が準備されて、且つ、亜鉛メッキされる鋼のように亜鉛メッキされる金属表面が水性溶液内に浸漬される。好ましくは亜鉛メッキされた金属表面は、溶融亜鉛から出した新鮮な亜鉛メッキ金属面であり、水性被覆溶液中で急冷される。この水性被覆溶液は、温間亜鉛メッキ用の急冷浴として使用される。したがって、この水性被覆急冷浴は、温間亜鉛メッキする基材をこの浴に浸漬させるときに加熱される。上記機構は拡散を含み、且つ亜鉛イオンの珪酸塩アルミニウムに組み入れることは本発明の実施態様にしたがい有効であると考察される。
【0021】
被膜組成物の一例は、Al(a)Si(b)Zn(c)Ce(d)であり、0<a≦1、0<b≦1、0<c≦1、0<d≦1及びa+b+c+d=1であり、水性組成物の全体に渡る濃度が1ppmから20wt%の範囲である。
【0022】
さらに本発明に態様にしたがえば、珪酸塩アルミニウム被膜を有する金属表面が提供され、この被膜は、金属表面に被膜を塗布する際に、金属表面から珪酸塩アルミニウム被膜へと拡散する拡散金属イオンをふくむ。この被膜は、大気−被膜表面で3.5未満のpHIEPを有し、すなわち3.5以上のpHIEPの表面水に陰イオンを寄せ付けないことを可能にする。
【0023】
本発明のこの態様は、上述の処理方法と被膜から形成されることが理解されるであろう。そのようなものとして、上述のような好ましい特徴が、本発明のこの態様に適用される。
【0024】
これに関して、具体的な実施態様において、金属表面は、亜鉛含有表面を含み、且つ珪酸塩アルミニウムは任意付加腐食インヒビターとしてセリウムを好ましく含む。
【0025】
本発明の実施態様をさらに詳細に個々に例示する。これらの実施例は、例示のためであって、決して本発明の限定として解釈するものでない。
【0026】
実施例1
セリウムを含む珪酸塩アルミニウム被膜の性能を、室温の圧延した純亜鉛板の上で、290時間天然塩の吹き付け法(NSS)において決定して、半加工品の非被覆亜鉛と比較した(表1)。この被膜は、セリウム、アルミニウム及び珪素に関する初期比率が1:1:5を有する1%溶液中の浸漬から形成された。このNSS試験は、AS2331にしたがい、裸眼で目視しうるピットの数と、3個の同型の試料で平均質量損失結果とを調べた。この板は10×15で1mmの厚みであった。
【0027】
表1.90時間NSSにおける圧延した純亜鉛板上の被膜性能
試料 平均ピット/板 平均質量損失(g/m/日)
CSIRO被膜1 25 7.8
半加工品亜鉛 90 15.7
【0028】
実施例2
圧延した純亜鉛位置を、被覆溶液中で急冷する前に200度に加熱して、実施例1におけるようにNSSによって評価した(表2)。CSIRO被膜2、3および4は、Ce、Al及びSiに関する初期比率が1:1:5を有する1%溶液中から形成され、この溶液で形成された被膜3及び4は、過酸化水素の添加によって、ほとんどがCe(IV)を含有した。CSIRO被膜2及び3は被覆溶液に2分間浸漬され、一方、CSIRO被膜4は5秒間浸漬された。クロメート被膜1は、ジクロマートナトリウムから作られた0.16%のクロメート溶液中に2分間の浸漬によって形成された。
【0029】
表2.312時間NSSにおける加熱した圧延純亜鉛板上の被膜性能
試料 平均ピット/板 平均質量損失(g/m/日)
CSIRO被膜2 90 23.3
CSIRO被膜3 15 19.5
CSIRO被膜4 0 8.0
クロメート被膜1 90 22.3
半加工品亜鉛 90 23.1
【0030】
実施例3
圧延した純亜鉛板上の被膜性能が、500時間NSS試験(実施例1及び2におけるように)を使用して2年間野外暴露および塗装接着を評価した(表3)。海の野外暴露位置での平均塩堆積は、ISO9225にしたがい測定したように、約100mg/日である。板は、珪素豊富エポキシエナメルで塗装されて室温で1日乾燥した。塗装接着は塗装後1週間実施され、1枚の板につき3箇所のテープ引張り型であった。CSIRO被膜5は、Ce、Al及びSi比率が1:1:5の1%溶液中の2分間から形成された。CSIRO被膜8、7及び8は、Ce、Al及びSi比率が1:1:5の溶液中の15秒浸漬した200℃加熱板であった。CSIRO被膜6及び7は1%溶液であり、一方、8は0.1%溶液である。CSIRO被膜8はほとんどがCe(III)溶液であった。クロメート被膜2は、ジクロマートナトリウムから作られた0.16%のクロメート溶液中に16秒間浸漬した200℃板からであった。半加工品亜鉛メッキZ275は、比較用の商業的に入手できる亜鉛メッキ鋼板であった。
【0031】
表3.500時間NSSにおける2年間野外暴露および塗装接着の圧延純亜鉛板上の被
膜性能
NSS性能 野外暴露性能 塗装接着
試料 平均ピット 平均質 平均ピット 平均質 除去塗装
/板 量損失 /板 量損失 %
(g/m2/day)
CSIRO被膜5 1 5.2 81.4 4.2 <5
CSIRO被膜6 5 5.6 58.5 2.9 35-65
CSIRO被膜7 5 6.5 56.1 3.0 0
CSIRO被膜8 80 15.1 75.7 3.9 0
クロメート 5 5.8 62.9 3.2 5-15
被膜2
半加工品 70 15.6 76.6 3.9 5-15
亜鉛
半加工品亜鉛 20 8.5 87.1 4.4 15-35
メッキZ275
【0032】
セリウムを含有する珪酸塩アルミニウム被膜の亜鉛メッキした鋼の急冷被膜性能が、天然塩吹き付け及び積み重ね試験の双方で、クロメート被膜と比較された(表4)。亜鉛メッキした鋼の急冷被膜は、試料を亜鉛メッキするため450度の溶融亜鉛に清浄にして溶剤を加えた鋼板を浸漬することを含み、引き上げたときに、熱い試料が5秒間急冷被覆溶液に浸漬される。セリウム含有珪酸塩アルミニウム被膜(CSIRO亜鉛メッキ急冷1)は、Ce、Al及びSi比率が1:1:5の0.1%溶液から形成された。クロメート急冷は、ジクロマートナトリウムから作られた0.05%の標準クロメート急冷溶液中で行なわれた。NSS試験は72時間であり、且つ前述の実施例のように実施された。一方、「積み重ね」試験は、次に詳細を示す工業規格であった。
【0033】
二組の対の板を、互いに積み重ねて、100%のRH(相対湿度)チャンバーに配置して、且つ25°(6時間)及び10°(2時間)の間を30周期(240時間)循環させた。この鋼板は、亜鉛メッキ前に10cm×5cmで1mmの厚みであった。その結果は、CSIRO急冷被膜が標準クロメート急冷被膜に適合する性能を与え、一方双方が水冷亜鉛メッキ鋼試料より著しく優れて前もって成形されることを実証する。
【0034】
表4.72時間NSS及び240時間積み重ね試験における亜鉛メッキした鋼の急冷
被膜性能
NSS性能 積み重ね試験
試料 平均ピット 平均質 平均質
/板 量損失 量利得
(g/m2/day) (mg)
CSIRO急冷1 0 2.7 1.5
亜鉛メッキ 3 4.0 2.0
クロメート急冷1
亜鉛メッキ * 34.2 49.6
水急冷1
*ピット数のような著しい亜鉛除去が計数できなかった。
【0035】
実施例5
異なる溶液組成物の亜鉛メッキした急冷被膜性能が、NSS試験と、実施例4のような「凝縮(condensation)」試験(表5)とで試験したが、「積み重ね」試験が、他の全ての試験が同一であるならば、2枚の組の1枚の板だけを使用する「凝縮」試験に変更したのを除く。珪酸塩イオンとアルミニウムイオンとの間の相乗作用効果が、酸性条件またはアルカリ条件のどちらでも明確に見られた。CSIRO亜鉛メッキ空冷2はCe:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液であり、亜鉛メッキクロメート急冷2はジクロマートナトリウムから作られた0.05%の標準クロメート急冷溶液であった。
【0036】
表5.72時間NSS試験と240時間凝縮試験における亜鉛メッキした鋼の急冷被
膜性能
NSS性能 凝縮試験
試料 平均ピット 平均質 平均質
/板 量損失 量利得
(g/m2/day) (mg)
塩基性珪酸塩イオン 20 10.7 71.6
酸性珪酸塩イオン 2 9.3 26.7
酸性アルミニウム * 36.8 6.2
イオン
塩基性アルミニウム * 34.5 45.1
イオン
酸性珪酸塩+ 0 2.8 8.7
アルミニウムイオン
塩基性珪酸塩+ 0 5.1 23.4
アルミニウムイオン
CSIRO亜鉛メッキ 0 1.9 1.5
急冷2
亜鉛メッキ 5 8.3 0
クロメート急冷2
*ピット数のような著しい亜鉛除去が計数できなかった。
【0037】
実施例6
亜鉛メッキした鋼の急冷被膜の性能が、急冷溶液中の試料浸漬時間の関数として、NSS試験と、実施例5のような凝縮試験(表6)とで試験した。CSIRO急冷溶液2はCe:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液であり、クロメート急冷溶液はジクロマートナトリウムから作られた0.05%の標準クロメート急冷溶液であった。
【0038】
表6.72時間NSS試験と240時間凝縮試験における亜鉛メッキした鋼の急冷被
膜性能
NSS性能 凝縮試験
試料 浸漬時間 平均ピット 平均質 平均質
/板 量損失 量利得
(g/m2/day) (mg)
CSIRO 5 0 1.6 8.7
CSIRO 30 0 2.0 13.6
CSIRO 90 0 2.1 9.5
クロメート 5 5 1.0 7.2
【0039】
実施例7
亜鉛メッキした鋼の急冷被膜の性能を、急冷後で塗装前に、時間の関数として塗装接着試験によって評価した。急冷被覆試料は、塗装する前に3ヶ月以上の間、実験室条件(約18℃で50%RH)のもとで大気乾燥をして、且つ実施例3のように試験をした(表7)。CSIROの亜鉛メッキした急冷3は、Ce:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液であり、一方、亜鉛メッキしたクロメート急冷3は、ジクロマートナトリウムから作られた0.05%のクロメート急冷溶液であった。現在の技術が、塗料被膜の塗布以前の時間を超える急冷被覆安定性に関して、標準クロメート急冷被膜を超えて実質的利益を提供することが明らかになった。
【0040】
表7.塗料被膜塗布前の乾燥時間の関数としての亜鉛メッキした鋼の急冷被膜の塗料接
着性能
取り除かれた塗料%
試料 1日 2日 1週間 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月
CSIRO亜鉛 0 0 0 0 0 0
メッキ急冷3
亜鉛メッキ 0 <5 15-35 >65 >65 >65
クロメート急冷3
水急冷 >65 >65 >65 >65 35-65 <5
空冷 >65 >65 >65 >65 15-35 5-15
【0041】
実施例8
亜鉛メッキした鋼の急冷被膜の性能を、溶融亜鉛メッキにおけるアルミニウム含有量の関数として試験をして、NSS試験と実施例5及び実施例6のような凝縮試験とで評価した(表8)。CSIROの亜鉛メッキした急冷試料は、Ce:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液であり、一方、亜鉛メッキしたクロメート試料は、0.05%のクロメート溶液であった。現在の技術は、非常に広範囲の溶融アルミニウム含有量を可能にし、亜鉛メッキの対する窓を開く。
【0042】
表6.72時間NSS試験と240時間凝縮試験における溶融亜鉛メッキ浴内のアルミ
ニウム含有量の関数としての亜鉛メッキした鋼の急冷被膜性能
NSS性能 凝縮試験
Al 試料 平均ピット 平均質 平均質
/板 量損失 量利得
(g/m2/day) (mg)
98 CSIRO亜鉛メッキ急冷4 2 3.1 0
93 亜鉛メッキ * 50.3 0
クロメート急冷4
45 CSIRO亜鉛メッキ急冷5 0 1.9 16.6
48 亜鉛メッキ 5 8.3 0
クロメート急冷4
3 CSIRO亜鉛メッキ急冷6 0 1.6 0.6
3 亜鉛メッキ 2 0.8 0
クロメート急冷4
*ピット数のような著しい亜鉛除去が計数できなかった。
【0043】
実施例9
亜鉛メッキされた急冷被膜の性能が、個々に急冷された四角形の孔断面(SHS)で試験され、150mmの長さで25×25×1.6mmと20×20×2mmとの寸法を有し、3×3のマトリックスに束ね、実施例5、6及び8のような凝縮試験を使用した(表9)。CSIROの亜鉛メッキした急冷7及び8は、Ce:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液であり、一方、亜鉛メッキしたクロメート急冷7及び8は、0.05%のクロメート溶液であった。平均質量利得は9束にしたSHSS試料に対してである。
【0044】
表9.3×3に束ねたSHSについての240時間凝縮試験における亜鉛メッキした鋼
の急冷被膜の評価
急冷被膜 SHS寸法(mm) 平均質量利得(mg)
CSIRO亜鉛メッキ急冷7 25×25×1.6 2.2
亜鉛メッキクロメート 25×25×1.6 4.3
急冷7
CSIRO亜鉛メッキ急冷7 25×25×1.6 10.4
亜鉛メッキクロメート 25×25×1.6 9.7
急冷7
【0045】
実施例10
セリウムを含有する珪酸塩アルミニウム被膜が、Ce:Al:Siの比率が1:1:5の0.1%溶液でもって、純金属(>99%)のマグネシウム、アルミニウム、銅及び鉄、及びアルミニウム合金2024、Galfan(Zn−5%Al)及びZincalume(Zn―55%Al)に塗布された。被膜は目視で確認され、塩化物に対する耐食性が、被覆した表面及び被覆しない表面について単一の塩化ナトリウム結晶を堆積することおよび100%のRHに19時間保存することにより調査された。
本発明の好ましい実施態様について記載するが、発明は本発明の精神または範囲から離脱することなく改良することが影響されることを認識すべきである。
【0046】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面に耐食性被膜を付与するための被覆溶液であって、
水溶性珪酸塩と、+4以下の原子価を有する金属から選択された少なくとも1種の金属イオン(X)とを含み、
前記被覆溶液が、前記珪酸塩が可溶性を維持するように水性珪酸塩−Xのネットワークを形成し、且つ金属表面(Y)に触れて珪酸塩−X及びYを含んで成る被膜が形成される、
金属表面に耐食性被膜を与える被覆溶液。
【請求項2】
前記金属表面に形成された被覆層が約3.5未満のpHIEPを大気−被膜の界面で有するように、前記被覆溶液が構成される請求項1に記載の被覆溶液。
【請求項3】
前記金属表面に形成された被覆層が、2.5未満のpHIEPを大気−被膜の界面で有するように、前記被覆溶液が構成される請求項2に記載の被覆溶液。
【請求項4】
前記水溶性珪酸塩が、アルカリ金属または珪酸塩アンモニウム、メタ珪酸塩、オルト珪酸塩、ピロ珪酸塩、水ガラス、珪酸、シリカ、コロイドシリカ、二酸化珪素または有機珪酸塩予備硬化剤から選択される請求項1に記載の被覆溶液。
【請求項5】
前記水溶性珪酸塩が、珪酸塩ナトリウムまたは珪酸塩カリウムからなる群から選択される請求項4に記載の被覆溶液。
【請求項6】
前記金属イオン(X)が、Al、B、Zr及びTiからなる群から選択された元素である請求項1に記載の被覆溶液。
【請求項7】
1ppmから分散限界までの水溶性珪酸塩の濃度と、4:1から1:100までのXとSiとの比と、を有する請求項1に記載の被覆溶液。
【請求項8】
1:1から1:50までのXとSiとの比を有する請求項7に記載の被覆溶液。
【請求項9】
活性腐食インヒビターとして1種以上の付加組成物含む請求項1に記載の被覆溶液。
【請求項10】
前記付加組成物が、希土類(ランタニド)金属または遷移金属から選択される請求項9に記載の被覆溶液。
【請求項11】
前記付加組成物が、Ce、Mo、W、Mn及びVから選択される請求項10に記載の被覆溶液。
【請求項12】
前記付加組成物が、Ceを含む請求項11に記載の被覆溶液。
【請求項13】
金属表面の処理方法であって、
水溶性珪酸塩と、+4以下の原子価を有する金属から選択された少なくとも1種の金属イオンXとを含む水性被覆溶液を、前記金属表面に塗布することを含み、
被覆層が金属表面上に形成され、前記金属表面が珪酸塩ネットワークに少なくとも幾つかのSi原子を含む珪酸塩ネットワークを有し、前記珪酸塩ネットワークが前記金属イオンXで置換されて且つ被覆された金属表面からの金属イオンYと合体する、
金属表面の処理方法。
【請求項14】
珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンを含む水性被覆溶液を金属表面に塗布して、珪酸塩アルミニウムの被膜を被覆することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属表面が、亜鉛を含有する金属表面を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属表面が、亜鉛、亜鉛合金または亜鉛メッキ金属表面を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2〜2.5のpHIEPを有する珪酸塩アルミニウムが、珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンを含む水性被覆溶液から金属表面に塗布される請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が、吹き付け、塗装または浸漬によって塗布される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンから構成され且つさらに付加腐食インヒビターとしてCe(IV)/Ce(III)イオンを含む水性溶液が、前記金属表面に塗布される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
亜鉛または亜鉛を含む金属が、前記水性溶液中に浸漬される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
珪酸塩イオン及びアルミニウムイオンから構成され且つ任意にセリウムイオンを含む水性溶液中に亜鉛含有金属を浸漬して、金属表面に拡散層を形成することを含み、且つ
十分な時間に渡って珪酸塩アルミニウムを前記金属表面に形成し、形成された珪酸塩アルミニウム被膜が、その組織中に亜鉛含有金属表面から拡散する亜鉛イオン任意にセリウムイオンを含む、
請求項13に記載する方法。
【請求項22】
前記亜鉛含有金属が、亜鉛メッキをした金属である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記亜鉛メッキした金属が、亜鉛メッキした鋼である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記亜鉛メッキした金属が、溶融亜鉛浴からそのまま新しく亜鉛メッキした金属表面を含んで成り、且つ水性被覆溶液中で急冷される請求項22に記載の方法。
【請求項25】
形成された被膜の組成物が、Al(a)Si(b)Zn(c)Ce(d)であり、0<a≦1、0<b≦1、0<c≦1、0<d≦1及びa+b+c+d=1であり、前記水性組成物の全体に渡る濃度が1ppmから20wt%の範囲にある請求項13に記載の方法。
【請求項26】
珪酸塩アルミニウムを有する金属表面であって、
前記被膜が、金属表面に被膜を塗布する際に、金属表面から珪酸塩アルミニウム被膜へと拡散する拡散金属イオンを含み、前記被膜が大気−被膜表面で3.5未満のpHIEPを有する、
珪酸塩アルミニウムを有する金属表面。

【公表番号】特表2006−509106(P2006−509106A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557662(P2004−557662)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001644
【国際公開番号】WO2004/053194
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(591269435)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (23)
【氏名又は名称原語表記】COMMONWEALTH SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH ORGANIZATION
【Fターム(参考)】