説明

水性顔料スラリーのレオロジー特性を改良する方法、分散剤及びその使用

本発明は水性顔料スラリーのレオロジー特性を改良する方法に関する。この方法では、分散剤を、顔料粒子を含むスラリーの水性相に、又は顔料粒子を添加する水性相に添加する。分散剤はスチレンアクリレート共重合体を含んでいる。本発明は、また、スチレンアクリレート共重合体を含む第1の成分及び直鎖ポリアクリレートのような従来の分散剤を含む第2の成分からなる、顔料スラリーに用いるための分散剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求の範囲の独立請求項の前文に記載した、水性顔料スラリーのレオロジー特性を改良する方法に関する。また、本発明は分散剤に、及びスチレンアクリレート共重合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙及び板紙には、種々の特性、中でも、紙の強さ、印刷特性及び外観、例えば、平滑性及び光沢性を改良する目的で、様々のコーティングカラー(coating color)が被覆される。コーティングカラーで被覆する過程中に、紙の一方の面又は両面にコーティング組成物の水溶液を塗布する。従来用いられているコーティング組成物には、主成分として顔料及びバインダーが含まれており、さらに補助バインダー、防腐剤、分散剤、消泡剤、潤滑剤、硬化剤、光学光沢剤のような、添加物が含まれることがある。コーティングカラーの主成分は水性スラリーの形状の顔料粒子およびバインダーがある。
【0003】
顔料には数多くの様々のものがある。顔料の起源には各種の鉱物があり、カオリン粘土及び炭酸カルシウムが最も一般的である。
【0004】
顔料には、いわゆる粉砕操作を施さなければならないものがある。その工程では顔料粒子の粒径分布が目的とする用途に適合するように、エネルギーの供給により顔料粒子の大きさが縮小される。例えば、炭酸カルシウム及び石こうは、紙コーティング組成物に使用する前に粉砕される。通常、粉砕操作は湿式粉砕として実施され、その工程中に一つ又は数種の粉砕剤が添加される。殆どの粉砕工程では、最終段階のプロセス工程で、顔料粒子のサイズが変化することは本質的にはないが、それを安定化させる目的で顔料スラリーに粉砕剤が添加される。
【0005】
顔料の中には、紙コーティング組成物用として適切な粒径の顔料が容易に得られる場合には、粉砕することが必要ではないものもある。この種の顔料の例としては、沈降炭酸カルシウム及びカオリンがある。これら顔料は水を使用して直接スラリー化され、そのスラリーには通常分散剤が添加される。
【0006】
同様の分散剤を両方のプロセスに使用することができる。分散剤には、得られるスラリーのレオロジー特性に影響を与えるものがある。顔料スラリー及びコーティング組成物のレオロジー特性はそれらの有用性にとって重要である。スラリーの取扱い性について、例えば、ポンプ輸送及び混合工程では、低−せん断特性が重要であり、また、一方、紙に対してコーティング組成物を塗布する際には、コーティングの作業性(runnability)を良好なものとするためには、コーティング組成物の高−せん断特性が重要である。コーティング組成物の高−せん断特性は、コーティング組成物を調製するのに使用される顔料スラリーの高−せん断特性と直接対比される。紙及び/又は板紙の被覆プロセスに用いるコーティング組成物のレオロジー特性を最適化するにあたって顔料スラリーのレオロジー特性を改善できることは多大な有利点である。
【0007】
従来の分散剤を使用する場合には、分散剤の供給量を通常の分散剤供給量以上に増大しても顔料スラリーのレオロジー特性は改良されない。詳細には、従来の分散剤の供給量を顔料粒子の分散に必要とされる以上に増大させても、得られるスラリーのレオロジー特性に顕著な影響を与えることはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は従来技術に存在する不都合な諸点を最小化し、でき得ればその不都合な諸点を解消することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、顔料スラリーのレオロジー特性を改良する方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、顔料スラリーのレオロジー特性を改良することができる分散剤を提供することにある。
【0011】
このような発明の目的は、請求の範囲の独立請求項に明記した下記の特徴事項を具備する方法及び装置を用いることにより達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る、水性顔料スラリーのレオロジー特性を改良する代表的な方法では、顔料粒子を含むスラリーの水性相に、又は顔料粒子を添加する水性相に、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加する。
【0013】
本発明に係る、顔料スラリー用の代表的な分散剤は、
スチレンアクリレート共重合体を含む第1の成分、及び
直鎖ポリアクリレートのような、従来の分散剤を含む第2の成分、
を含んでなる。
【0014】
本発明に係るスチレンアクリレート共重合体についての代表的な使用は、顔料スラリーのレオロジー特性を改良するために該スラリーに分散剤として使用することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、意外にも、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を顔料スラリーに添加すると、スラリーのレオロジー特性を予測できない程度に改良することができると同時に、スラリーのその他の諸特性を少なくとも従来と同レベルに維持することができることを発見した。このことは、顔料スラリーにスチレンアクリレート共重合体を加えるとスラリー中の顔料粒子の分散状態が改良することを意味する。特には、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加すると、スラリーの高せん断特性が改良され、その結果、紙用コーティング組成物中でのスラリーの性状をも改良する。そのような分散剤の添加量を増大させるとスラリーのレオロジー特性に対して肯定的な影響を及ぼすこと、すなわち、固形分含量が同レベルであるがスチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加していないスラリーの場合と比較して、分散剤の添加量を増大させるに従って、スラリーの高せん断粘度が低下することを見出した。従って、顔料スラリーの高せん断特性を改良するための分散剤としてスチレンアクリレート共重合体を使用することができることを発見した。
【0016】
本発明で顔料スラリーを調製するのに使用できる代表的な顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、仮焼カオリン、タルク、二酸化チタン、石こう、チョーク、サチン白、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物のいずれかである。炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウム(GCC)又は沈降性炭酸カルシウム(PCC)又はこれらの混合物であってもよい。顔料としては炭酸カルシウムであるのが好ましい。
【0017】
本発明に使用する分散剤は、代表的には、第1の成分として、後述するように、スチレンモノマーとアクリレートモノマーとをデンプンの存在下に重合させることにより得たスチレンアクリレート共重合体を含む。また、分散剤は他の構成成分、例えば、未重合のモノマー又はその他の物質を少量含むこともできる。その他の構成成分は、代表的には、5重量%未満、より代表的には3重量%未満の量で用いる。
【0018】
本発明の一つの実施態様によれば、顔料粒子がすでに所望の粒径である場合には顔料を湿式粉砕する最終段階でスチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加する。分散剤の添加は前プロセス工程を経てきた顔料スラリーに対して行われる。顔料スラリーには、この最終のプロセス工程の前の粉砕工程で添加された粉砕剤が含まれてもよい。このような粉砕剤の例としては、一般的には、ナトリウム(Na)−又はカリウム(K)−ポリアクリレートなどのようなポリアクリレート、ポリアクリレート共重合体、又はそれらの混合物が挙げられる。ポリアクリレート共重合体は分岐状又は直鎖状であってもよい。このプロセスは、重質炭酸カルシウム(GCC)、二酸化チタン又は石こうの顔料スラリーを調製するときに特に有用である。
【0019】
本発明の他の実施態様によれば、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤の添加は、粉体状、ペースト状又はケーキ状の顔料、例えば、沈降性炭酸カルシウム又は二酸化チタンのような適切な顔料がスクリューコンベヤーなどのような適切な手段を用いて添加された水性相に対して行われる。そして、最終の顔料スラリーは水性相と顔料紛体とを混合して得られる。このプロセスは、例えば、顔料スラリーをカオリン、二酸化チタン又は針状粒子の顔料から調製するときに採用される。
【0020】
通常、分散剤は、顔料スラリーが顔料100部当たり少なくとも0.1部の分散剤を含むような量で添加される。一般的には、顔料スラリーが、顔料100部当たり0.1〜3.5部、好ましくは0.25〜3.0部、さらに好ましくは0.05〜2.5部、最も好ましくは1.0〜2.0部の分散剤を含むような量で分散剤が添加される。これらの量は共重合体のみを含む又は共重合体と他の剤との混合物を含む分散剤の全量をいう。
【0021】
また、例えば、直鎖ポリアクリレートのような従来の分散剤を水性相に加えることもできる。本発明の一つの実施態様によれば、分散剤は第2の成分を含む。第2の成分は、ポリアクリレート、ポリアクリレート共重合体又はこれらの混合物のような従来の分散剤であってもよい。第2の分散剤成分は、直鎖ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート共重合体、例えば、メタクリル酸とアクリル酸との共重合体、又はメタクリル酸とアクリル酸との共重合体、又はこれらの混合物に基づくものであってもよい。第2の成分の分子量は、一般的には、5,000〜10,000である。このような分散剤の成分それ自体は当業者に知られている。通常、分散剤の第2の成分はナトリウム塩である。
【0022】
従って、分散剤は第1の成分及び第2の成分からなる。この場合、分散剤はスチレンアクリレート共重合体を含む第1の成分と上記した従来の分散剤を含む第2の成分とを含み、通常、第1の成分と第2の成分は、一緒に混合した後、顔料スラリーに添加される。このようにして、スラリー中の顔料粒子の分散状態が最適化され、それと同時に、スラリーのレオロジー特性が改良される。また、従来の分散剤は、スチレンアクリレート共重合体を含む別個の投入流れとは他に、水性顔料スラリーへのさらに別個の投入流れとして添加することも可能である。この実施態様は、顔料が紛体状で添加される水性相に対し、直接、分散剤を添加するプロセスに適切である。
【0023】
分散剤が上述した従来の分散剤、例えば、ポリアクリレートを含む第2の成分を含む場合には、第1の成分対第2の成分の比は、好ましくは55:45〜95:5、さらに好ましくは50:50〜92.5:7.5であり、また70:30〜90:10であってもよい。また、場合によっては、第1の成分対第2の成分の比は、99:1であってもよい。また、ある一実施態様によれば、第1の成分:第2の成分の重量比は50:50〜99:1、好ましくは50:50〜90:10の範囲である。
【0024】
本発明の一つの実施態様によれば、スチレンアクリレート共重合体は唯一の分散剤として使用する。換言すれば、望ましい安定性の顔料スラリーを得る目的で、スチレンアクリレート共重合体を除く、その他の分散剤を使用する必要はない。もし他の分散剤を使用するとすれば、その分散剤の添加量は従来用いられていた量より減少させることができ、それでも、スラリーの安定性を所望のレベルに維持する。
【0025】
本発明で分散剤として使用するスチレンアクリレート共重合体は、エチレン系不飽和モノマー相互間の共重合により得ることができる。適切なスチレンモノマーは、スチレン及び置換スチレン、例えば、α−メチルスチレン又はビニルトルエン又はこれらの混合物であり、また、適切なアクリレートモノマーはC〜C−アルキルアクリレート、C〜C−アルキルメタクリレート又はこれらの混合物であり、例えば、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル又は2−ブチルアクリレート及びこれらに対応するブチルメタクリレート;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート又はプロピルメタクリレート、少なくとも2つの異性体ブチルアクリレートの混合物が好適であり、n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートとの混合物が特に好適である。本発明の一つの最も好適な実施態様によれば、n‐ブチルアクリレートとtert‐ブチルアクリレートとの混合物を重合反応に用いる。2つのモノマーの混合物について、その混合比は10:90〜90:10であってもよい。
【0026】
本発明の一つの好適な実施態様によれば、スチレンアクリレート共重合体はデンプンを含んでいる。スチレンアクリレート共重合体は、好ましくは、米国特許第6,426,381号に記載されたように、すなわち、エチレン系不飽和モノマーをデンプンの存在下でフリーラジカル乳化共重合させることによって得られる。デンプンとしては適切な天然デンプンであればよく、例えば、ジャガイモ、米、トウモロコシ、ワクシーコーン、小麦、大麦(barley)又はタピオカデンプンが挙げられ、ジャガイモデンプンが好ましい。アミロペクチン含有量が80%を超える(>80%)、好適には95%を超える(>95%)デンプンが有利である。デンプンはまた変性されていてもよく、例えば、アニオン化デンプン、カチオン化デンプン又は分解デンプンであってもよい。アニオン化デンプンはカルボキシレート基又はフォスフェート基などのアニオン基を含み、一方、カチオン化デンプンは第4アンモニウム基などのカチオン基を有する。1グルコース単位当たり平均してデンプン中に存在するアニオン基/カチオン基の数を示す置換度(DS)は一般的には0.01〜0.20である。アニオン基及びカチオン基の両者を有する両性デンプンもスチレンアクリレート共重合体を製造する際に使用してもよい。分解デンプンはデンプンを酸化分解、熱分解、酸分解又は酵素分解することによって、好ましくは酸化分解することによって、得られる。酸化剤としては、次亜塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化水素又はこれらの混合物を用いることができる。分解デンプンは一般的には500〜10000の平均分子量(Mn)を有している。その分子量は公知のゲルクロマトグラフィー法によって測定することができる。その固有粘度は、例えば、公知の粘度測定法により測定でき、通常、0.05〜0.12dl/gである。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、本発明に用いるスチレンアクリレート共重合体を得るために、デンプンに代えて他の多糖を使用することが可能である。多糖は遊離のヒドロキシ基を含んでおり、例えば、アミロース、アミロペクチン、カラギーン、セルロース、チトサン、キチン、デキストリン、グアーガム(guarane)及びその他のガラクトマンナン、アラビアゴム、ヘミセルロース成分、及びプルランがある。列挙した多糖の中でも、デキストリンがより好ましく、この場合には、スチレンアクリレート共重合体はデキストリンを含むことになる。
【0028】
スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤は10〜50%の、好ましくは20〜50%の、さらに好ましくは25〜45%の、最も好ましくは30〜40%の固形分含量を有する水性高分子分散液の形で使用することができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、分散剤として使用する場合のスチレンアクリレート共重合体の平均粒径は20〜300nm、好ましくは150nm未満である。また、本発明の一実施態様では、水性分散液中の分散剤の平均粒径は20〜150nm、好ましくは40〜100nm、さらに好ましくは50〜90nmの範囲にある。分散剤の粒径はマルヴェルン・ゼータマスター(Malvern Zetamaster)を使用して測定することができる。理論に拘束されることなく、スチレンアクリレート共重合体の粒径が小さい場合が高せん断粘度値を改良するために効果的であると考えられる。
【0030】
上記分散剤はコーティング組成物の調製に用いる顔料スラリー用の分散剤として使用するのに特に適切である。これに関連して、顔料スラリーは、粒径D50が5μm未満(<5μm)の範囲にある一個又は数個の顔料の微粒子を含む半液状の組成物を意味する。顔料スラリーのブルックフィールド(Brookfield)100粘度は、一般的には、500mPas未満(<500mPas)である。顔料スラリーは一般的には50〜80重量%の顔料を含む。さらにこれに関連して、コーティング組成物は、一個又は数個の顔料粒子の他に、ラテックス及び/又はデンプンのような結合剤を含む半液状の組成物について使用される。コーティング組成物のブルックフィールド100粘度は、一般的には、2500mPas未満(<2500mPas)、さらに好ましくは1000〜2000mPasである。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、スチレンアクリレート共重合体は顔料スラリーの唯一の分散剤として使用される。このことは、顔料スラリーの顔料粒子を分散させるに際して他の分散剤は何も使用しないことを意味する。
【0032】
本明細書及び実施例では、顔料スラリーの組成は、特に断らない限り、当技術分野で慣例のとおり、顔料の全体量を100の値とし、顔料全量に対して他の成分の量を算出することにより記述する。全成分についての割合は乾燥部で説明する。
【実施例】
【0033】
乾燥した未分散のPCC(沈降炭酸カルシウム、95%<1μm)100部を0.55pph(100当たりの部(parts per 100))の従来のNa−ポリアクリレート分散剤、ケミラ社(Kemira)のコロイド(colloid)220(商標)を有する水に添加しスラリー68%の固形分含量とした。10%水酸化ナトリウムを用いてpHを9.9又は9.5(試料4)に調整した。そのスラリーを10分周囲温度でディアフ(Diaf)−混合器中3000rpmで混合した。その後、本発明に係る分散剤1pphを添加し配合2〜4とした。さらに5分間スラリーの混合を継続した。型式DV−IIのブルックフィールド粘度計を100及び50rpmの回転速度で使用し、かつ、スピンドル3を用いて調製したスラリーの粘度を測定した。試料のサイズは乾燥顔料が500g、スラリーの固形分含量が約68%であった。せん断ブロック時(at shear blocking)高せん断粘度をハーキュリーズ(Hercules)Hi−シアDV−10回転式粘度計を使用して測定する。スラリー顔料粘度の評価試験方法はTAPPI(パルプ製紙業界技術協会)試験法T−648(2008年9月有効)にその概要が記載されている。結果を表1に示す。
【0034】
各試料に用いた分散剤は次のとおりである。
参考試料: Na−ポリアクリレート0.55pphの顔料スラリー
試料2: Na−ポリアクリレート0.55pph+スチレンアクリレート共重合体1pphの顔料スラリー
試料3: Na−ポリアクリレート0.55pph+90/10スチレンアクリレート共重合体/Na−ポリアクリレート1pphの顔料スラリー
試料4: Na−ポリアクリレート0.55pph+Na−ポリアクリレート1pphの顔料スラリー
すなわち、試料2及び3は本発明に係るものであり、参考試料及び試料4では従来の分散剤の量を変えて用いている。
【0035】
【表1】

【0036】
表の結果から、スチレンアクリレート共重合体を含む本発明に係る分散剤を使用する場合には、せん断ブロック時高せん断粘度が、従来のNa−ポリアクリレート分散剤を有するスラリーに比較して低下していることを理解することができる。
【0037】
以上、本発明を現時点で最も実際的でかつ最も好ましい実施態様について記載したが、本発明は上記で説明した具体例に限定されず、特許請求の範囲で規定される技術的範囲内で別の変形例及び均等の技術的解決手段をも包含するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性顔料スラリーのレオロジー特性を改良する方法であって、顔料粒子を含むスラリーの水性相に、又は顔料粒子を添加する水性相に、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
スラリー中の顔料100部当たり少なくとも0.1部の、スチレンアクリレート共重合体を含む分散剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直鎖ポリアクリレートのような従来の分散剤を水性相に添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
顔料粒子がすでに所望の粒径に達しているときは顔料を湿式粉砕する最終段階で分散剤を添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
スチレンアクリレート共重合体を含む第1の成分、及び
直鎖ポリアクリレートのような従来の分散剤を含む第2の成分
を含むことを特徴とする顔料スラリー用の分散剤。
【請求項6】
第1の成分がスチレンアクリレート共重合体を含み、該スチレンアクリレート共重合体は、α−メチルスチレン又はビニルトルエン又はそれらの混合物のような、スチレン又は置換スチレンと、C〜C−アルキルアクリレート、C〜C−アルキルメタクリレート又はこれらの混合物との共重合反応により得られたものであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第2の成分が直鎖ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート共重合体、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸共重合体、又はメタクリル酸及びアクリル酸共重合体、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の分散剤。
【請求項8】
第1の成分:第2の成分の比が50:50〜99:1、好ましくは50:50〜90:10の範囲内にあることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の分散剤。
【請求項9】
スチレンアクリレート共重合体の平均粒径が20〜300nm、好ましくは150nm未満であることを特徴とする請求項5に記載の分散剤。
【請求項10】
スチレンアクリレート共重合体がデンプンを含むものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の分散剤。
【請求項11】
スチレンアクリレート共重合体がデキストリンを含むものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の分散剤。
【請求項12】
顔料スラリーのレオロジー特性を改良するための該スラリーの分散剤としてのスチレンアクリレート共重合体の使用。
【請求項13】
顔料スラリーの高せん断特性を改良するための分散剤としてスチレンアクリレート共重合体を使用することを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
スチレンアクリレート共重合体を固形分含量が10〜50%である水性重合体分散液の形態で使用することを特徴とする請求項12又は13に記載の使用。
【請求項15】
スチレンアクリレート共重合体を顔料スラリーの唯一の分散剤として使用することを特徴とする請求項12に記載の使用。

【公表番号】特表2012−512927(P2012−512927A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541528(P2011−541528)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/FI2009/051013
【国際公開番号】WO2010/070206
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(504186286)ケミラ オイ (18)
【Fターム(参考)】