説明

水性顔料分散液、インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】より高い顔料の分散安定性と印字濃度、光沢性等に優れた印刷物を提供することができ、特にインクジェット用記録液として優れた顔料分散水性記録液を提供する。
【解決手段】水性媒体中に、1)顔料と、2)下記一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位と疎水性基を有するビニルアルコール系ポリマー(I)と、3)非イオン性親水基を有するポリマー(II)とを含有する水性顔料分散液。ポリマー(I)とポリマー(II)との併用で、顔料の分散安定性が良好となる上に、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の印字濃度、光沢性も優れたものとなる。


(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)を用いた水性顔料分散液に関する。詳しくは、インクジェットプリンター等の記録液として好適な水性顔料分散液と、この水性顔料分散液を含むインク組成物と、このインク組成物を用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、フルカラー化が容易であること、騒音が少ないこと、高解像度の画像が低価格で得られること、高速印字ができること、などの理由から、パーソナルユース、ビジネスユースの両面から急速に普及しつつある。現在、インクジェットプリンターに用いる記録液としては水性の記録液が主流であり、解像度の高い印刷物が得られるようになってきている。
【0003】
この水性記録液としては、従来、水溶性染料と液媒体を主成分とするものが主流であった。しかし、この水性記録液によって得られる印刷物は、水性記録液が水溶性染料を含むために、耐水性、耐光性、耐オゾン性等が不十分であった。そこで近年、このような染料に代えて、顔料を水性媒体中に分散させた顔料分散型の水性記録液(以下、単に「インク」と言うことがある。)が開発されている。
【0004】
近年では、印刷物の解像度向上に伴い、インク吐出ノズルからの1回のインク吐出量の低下が著しい。そしてインクジェットプリンターの印字速度向上に対する要求が高まっていることから、顔料分散型の水性記録液に対して、より高い顔料分散安定性と印刷物の耐擦過性が求められてきている。これに対して、顔料分散型の水性記録液に、各種の水溶性高分子や水分散性高分子等を顔料分散剤として用いる方法が提案されている。
【0005】
この水溶性又は水分散性高分子としては、例えばポリビニルアルコールやポリビニルアルコールを主成分とするポリビニルアルコール系ポリマー等が、一般的に知られている。
しかし、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と言うことがある。)は結晶性高分子であるため、鹸化度が高過ぎると水への溶解度が低くなる。また、このようなPVAは一般の有機溶媒に対する溶解性が低いので、PVAの高機能化を図る目的で、鹸化度を低くしたPVA(部分鹸化PVA)や、PVAの水酸基を、アルデヒド基を有する化合物と反応させることにより、有機溶媒への溶解性を向上させたPVA(変性PVA)の他、高分子分散剤として有効な特性を持たせるために、PVAに異種のポリマーをブロック的に結合させた、PVA系ブロックコポリマーが知られている。
そして、このようなPVA系ブロックコポリマーを、高分子分散剤として用いることが提案されている。
【0006】
例えば、PVA系ブロックコポリマーとして、PVA系ブロックと他のブロックがイオウ原子含有連結器を介して結合したもの(例えば、特許文献1、2参照)や、エーテル結合を介して結合したもの(例えば、特許文献3、4参照)、窒素原子を介して結合したもの(例えば、非特許文献1、2参照)の他、更には三つのブロックからなるPVA系ブロックコポリマー等が提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、炭素原子を介して結合したPVA系ブロックコポリマーも提案されている(特許文献6)。
【0007】
また、他の水溶性又は水分散性高分子としては、例えばポリエチレングリコールやポリエチレングリコールを主成分とするポリエチレングリコール(以下、「PEG」と言うことがある。)系ランダムコポリマーやブロックコポリマー等が、一般的に知られている。
【0008】
例えば、PEG系ランダムコポリマーとして、PEG系モノマーと他の解離性モノマーや疎水性モノマー等を重合したもの(例えば、特許文献6〜14参照)が、また、三つのブロックからなるPEG系ブロックコポリマー等が提案されている(例えば、特許文献15参照)。
【特許文献1】特開昭59−189113号公報
【特許文献2】特開平6−136036号公報
【特許文献3】特開2001−19770号公報
【特許文献4】特開2001−72728号公報
【特許文献5】特開平7−53841号公報
【特許文献6】特開2005−23297号公報
【特許文献7】特開平2−26631号公報
【特許文献8】特開平6−306317号公報
【特許文献9】特開平8−3500号公報
【特許文献10】特開平10−60345号公報
【特許文献11】特開平10−237369号公報
【特許文献12】特開2000−336292号公報
【特許文献13】特開2001−316423号公報
【特許文献14】特開2003−238849号公報
【特許文献15】特開2004−10733号公報
【非特許文献1】Polymer,39 109 1998
【非特許文献2】Polymer,39 1369 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のPVA系ブロックコポリマーは、PVA系ブロックと他のブロックがイオウ原子を介して結合しているので、耐熱性が低く、インク吐出時などの加熱時や印刷後の乾燥時に着色し易いと言う問題があった。また、特許文献3や4に記載のPVA系ブロックコポリマーは、その製造方法故にコポリマーに導入できるモノマーがカチオン重合性モノマーに限定されている。よって、工業的に有用であるアクリレート系やメタクリレート系モノマーの導入には適応できないという問題があった。
【0010】
そして、非特許文献1、2に記載のPVA系ブロックコポリマーは、その製造方法が紫外線照射による重合方法であるために、工業的実施には不適当であるという問題があった。
【0011】
更に、特許文献5には、単なる一般的な例示の一つとして、コポリマーのブロックとしてPVA系ブロックを用いることができる旨の記載がなされているのみで、具体的な例としてはアクリル系ブロックコポリマーの例しか示されていない。
【0012】
また、特許文献6に記載のPVA系ブロックコポリマーは、顔料分散に単独で使用した場合、分散液の粘度が高くなる傾向があり、ポリマーの添加量に制限があったり、他のポリマーと併用して使用した場合も、写真専用紙における光沢性や普通紙における印字濃度が不十分であるという問題があった。
【0013】
また、PEG系ポリマーは、ポリマー量が多くなると、普通紙での印字濃度が不十分であるという問題があった。
【0014】
よって、より高い顔料の分散安定性と印字濃度、光沢性等に優れた印刷物を提供でき、特にインクジェット用記録液として優れた顔料分散水性記録液の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らはこのような課題を解決すべく、顔料分散型水性記録液について鋭意検討を行った。その結果、顔料分散型の記録液に用いる高分子分散剤として、ビニルアルコール系ポリマー(I)と、オキシアルキレン基、水酸基、アミド基、ピロリドン基、オキサゾリドン基、等に代表される非イオン性親水基を有するポリマー(II)を併用することによって、顔料の分散安定性が良好となるばかりでなく、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の印字濃度、光沢性も優れるということを見出した。
【0016】
また、特に、PVA系ブロックと他のブロックが、置換基を有していても良いアルキレン鎖で連結した、特定の構造を有するポリビニルアルコール系ブロックコポリマーと先述の非イオン性親水基を有するポリマー(II)を併用することによって、先述した効果がより一層顕著となり、特に、この特定のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーにおいて、ポリビニルアルコール系ブロックと連結したブロックがコポリマーであって、且つこのコポリマーが、それを構成する複数種のモノマーの組成がコポリマー鎖に沿って変化している、いわゆる勾配(グラジエント)コポリマーであると、先述した効果が更に顕著となることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、水性媒体中に、
1)顔料と、
2)下記一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位と疎水性基を有するビニルアルコール系ポリマー(I)と、
3)非イオン性親水基を有するポリマー(II)と
を含有することを特徴とする水性顔料分散液(請求項1)、に存する。
【化3】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す)
【0018】
本発明の別の要旨は、この水性顔料分散液を含むことを特徴とするインク組成物(請求項18)、に存する。
【0019】
本発明の更に別の要旨は、このインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするインクジェット記録方法(請求項19)、に存する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水性顔料分散液によれば、印字濃度が高く、にじみが抑制され、印字品位が良く、更に耐光性、耐水性などの堅牢性も良好な印刷物を与えるとともに、粘度が低く、吐出性が良好で且つ保存安定性が良好な、顔料分散型水性記録液を提供することができる。
特に、本発明の水性顔料分散液は、インクジェットプリンター等の記録液に好適に用いることができ、本発明の水性顔料分散液を含むインク組成物を用いて、高品質かつ高耐久性のインクジェット記録物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容には特定されない。
【0022】
本発明の水性顔料分散液は、水性媒体中に、
1)顔料と、
2)特定の構造を有するビニルアルコール構造単位と疎水性基を有するビニルアルコール系ポリマー(I)と、
3)非イオン性親水基を有するポリマー(II)と
を含有することを特徴とする。
【0023】
1.ビニルアルコール系ポリマー(I)の説明
本発明に係るビニルアルコール系ポリマー(I)は、そのポリマー中に下記一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位及び疎水性基を含んでいれば良く、その他は限定されない。ビニルアルコール系ポリマー(I)中には、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位の1種のみが含まれていても良く、2種以上が含まれていても良い。また、疎水性基の1種のみが含まれていても良く、2種以上が含まれていても良い。
【化4】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す)
【0024】
一般式(1)におけるRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基などが挙げられる。Rとしては、中でも、水素原子又は炭素数が少ないアルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特に水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0025】
一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位としては、例えばビニルアルコール、α−メチルビニルアルコール、α−エチルビニルアルコール、α−プロピルビニルアルコール、α−ブチルビニルアルコール、α−ヘキシルビニルアルコール等に由来する構造単位が挙げられる。
【0026】
ビニルアルコール系ポリマー(I)に含まれる疎水性基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの脂肪族系疎水性基、シクロヘキシル基、イソボルニル基などの脂環式系疎水性基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族系疎水性基が挙げられる。これらの基は無置換であってもよく、更に置換基を有していてもよい。
【0027】
ポリマー構造に一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位及び疎水性基を導入するには、ビニルエーテル系モノマーやビニルエステル系モノマーのようなビニルアルコール構造単位を誘導する重合性モノマーと疎水性基を有する重合性モノマーとを重合してポリマー構造中に導入した後に、ビニルエーテル系モノマーやビニルエステル系モノマーの側鎖部分を、酸又はアルカリを用いた変性反応により一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位に変換してもよい。
【0028】
ここで、ビニルアルコール構造単位を誘導する、ビニルエーテル系モノマーとしては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、nーブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、nーヘキサデシルビニルエーテル、2ークロロエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、トリメチルシリルビニルエーテル、などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
また、ビニルアルコール構造単位を誘導する、ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、これらのα置換体などの1種又は2種以上が挙げられる。
【0030】
また、ビニルアルコール系ポリマー(I)中に含有される、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位及び疎水性基は、変性反応や修飾反応によってポリマー構造中の主鎖及び/又は側鎖部分に導入されていてもよい。
【0031】
ビニルアルコール系ポリマー(I)は、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位及び疎水性基を含んでいれば良く、疎水性基以外の、オキシアルキレン基、水酸基、アミド基、ピロリドン基、オキサゾリン基などに代表される親水性基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基に代表される酸性基、アミノ基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基に代表される塩基性基、更には酸性基や塩基性基及びその塩であるイオン性解離基などの1種又は2種以上を含んでいても良い。中でも、酸性基や塩基性基及びその塩であるイオン性解離基構造を含んでいることが好ましい。
【0032】
ビニルアルコール系ポリマー(I)に含まれる、疎水性基及び必要に応じて含まれるイオン性解離基は、モノマー構造単位としてポリマー構造中に含まれていることが好ましい。
即ち、ビニルアルコール系ポリマー(I)は、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位と疎水性基を有するモノマー構造単位とイオン性解離基を有するモノマー構造単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられるビニルアルコール系ポリマー(I)は、通常、数平均分子量が500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは3000以上であり、かつ、15万以下、好ましくは10万以下、更に好ましくは6万以下、より好ましくは4万以下の範囲のものである。また、その分子量分布(Mw/Mn)は狭い方が好ましく、中でも4以下、特に2以下であることが好ましい。
数平均分子量が小さすぎると本発明の効果が発現せず、又、大きすぎると分散液の粘度が高くなる傾向がある。顔料への吸着力の弱い低分子量成分や、分散液の増粘を引き起こしやすい高分子量成分が出来るだけ少ない方が、均一で安定した分散液が得られるため、分子量分布は狭いほうが好ましい。
【0034】
ビニルアルコール系ポリマー(I)の形態は、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロック以上のマルチブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、スターコポリマー等、特に限定されないが、中でもブロックコポリマーが好ましい。
【0035】
ビニルアルコール系ポリマー(I)の製造法は特に限定されず、例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またこれらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。
【0036】
ビニルアルコール系ポリマー(I)は、ブロックコポリマーの中でも特に、以下の一般式(2)で表されるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーのように、ポリビニルアルコール系ブロックAと、他のブロックBとが、特定の連結基(置換基を有していても良いアルキレン鎖)で連結されているブロックコポリマー(以下、このブロックコポリマーを「本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー」と称す場合がある。)が好ましい。
【0037】
【化5】

(式中、Aは一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位を含むポリビニルアルコール系ブロックを示し、
Bは疎水性基を有するモノマー構造及びイオン性解離基を有するモノマー構造を含むブロックであって、Bは疎水性セグメントB’と、ブロックA、セグメントB’以外の親水性又は疎水性セグメントB''とを含むブロックを示し、
、X、X及びXは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、
m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【0038】
<ポリビニルアルコール系ブロックAについて>
一般式(2)におけるポリビニルアルコール系ブロックAは、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位を有するポリビニルアルコール系ブロックである。このポリビニルアルコール系ブロックAは、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位を有していればよく、例えば一般式(1)の水酸基の一部がアシル基で保護されていても良い。
【0039】
該アシル基としては、水酸基の保護基として一般的なものであれば特に限定されないが、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ペンチルカルボニル基、ネオペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ヘプチルカルボニル基、デシル基、ラウロリル基、ミリストリル基、パルミトイル基、ステアロイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、フェニルブチルカルボニル基、ジフエニルメチルカルボニル基、トリフエニルメチルカルボニル基、ナフチルメチルカルボニル基、ナフチルエチルカルボニル基等のハロゲン原子及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良い、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基;アクリロイル基、イソプロペニルカルボニル基、3−ブテニルカルボニル基、メタクロイル基、アリルカルボニル基、1,1−ジメチルアリルカルボニル基、クロトノイル基、3−メチルアリルカルボニル基、2,3−ジメチルアリルカルボニル基、3,3−ジメチルアリルカルボニル基、シンナモイル基、3−シクロヘキシルアリルカルボニル基等の、炭素数2〜20のアルケニルカルボニル基;炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を1〜3個有していても良いベンゾイル基又はナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基などの1種又は2種以上が挙げられ、このうち好ましくはアセチル基、クロロアセチル基、アリルカルボニル基、ベンゾイル基又はベンジルカルボニル基である。中でも、アセチル基であることが好ましい。
【0040】
ポリビニルアルコール系ブロックAにおいて、ビニルアルコール構造単位の水酸基のアシル化率は、適宜選択し決定すればよい。アシル化によりポリマーの水溶性向上という効果が奏されるが、アシル化率が過度に高いとポリマーが非水溶性となるため、一般的には、ポリビニルアルコール系ブロックA中のトータルユニット数の20%以下、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0041】
また、このポリビニルアルコール系ブロックAには、一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位以外の構造単位の1種又は2種以上を有していても良い。例えば酸性基のアルカリ金属塩を有するモノマー構造単位を導入することにより、顔料の分散安定性が向上するという効果が奏されるが、その導入量が過度に多いと本発明の効果が失われてしまう場合があるため、その含有量は、通常、ポリビニルアルコール系ブロックA全体に対して15モル%以下であり、特に10モル%以下であることが好ましい。
【0042】
ビニルアルコール構造単位以外の構造単位としては例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセ卜ンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩と4級塩、N−メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジアセ卜ンメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩と4級塩、N−メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸及びその塩とエステル、イタコン酸及びその塩とエステル等のジカルボン酸類及びそのエステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等のビニル系モノマー構造単位が例示されるが、これらに限定されるものではなく、その他公知のビニル系モノマー構造単位であってよい。
【0043】
ポリビニルアルコール系ブロックAの数平均分子量は、一般的には500以上、中でも800以上、特に1000以上であり、且つその上限は100000以下、中でも50000以下、更には30000以下、特に10000以下であることが好ましい。分子量が小さ過ぎると、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの水溶性が低下することで顔料分散性が低下したり、印刷物の耐擦過性が低下する場合がある。逆に大きすぎても、水性顔料分散液の粘度が高くなりすぎてしまうことにより、顔料分散性が低下したり、またこのような水性顔料分散液を記録液として用いた場合には、記録液の吐出性が低下する場合がある。
【0044】
<ポリビニルアルコール系ブロックAと、ブロックBとの連結基について>
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーにおいては、一般式(2)におけるポリビニルアルコール系ブロックAと他のブロックBとの連結基が、特定の連結基、具体的には置換基を有していても良いアルキレン基であることを特徴とする。
【0045】
一般式(2)において、X、X、X及びXは、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基を示す。それらの中でもアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基としては炭素数1〜20であることが好ましく、これらは直鎖、分岐又は環状の何れでもよく、炭素原子は置換基を有していてもよい。
【0046】
、X、X及びXとしては、具体的には、各々独立して
水素原子;
F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基や置換アルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、3−メチルアリル基、2,3−ジメチルアリル基、3,3−ジメチルアリル基、シンナミル基、3−シクロヘキシルアリル基等のアルケニル基や置換アルケニル基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
フェニル基、ナフチル基等のアリ−ル基における1〜3個の水素原子をメチル基、エチル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等の官能基で置換した置換アリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルブチル基、ジフエニルメチル基、トリフエニルメチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基や置換アラルキル基;
等が挙げられる。
【0047】
中でも置換アリール基においては、置換された官能基は本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの安定性を損なわない範囲で任意のものを使用でき、具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
【0048】
、X、X及びXとしては、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数4以下のアルキル基、アルケニル基、ベンジル基又はフェニル基が好ましく、中でも水素原子、ハロゲン原子、メチル基、アリル基、ベンジル基又はフェニル基が好ましく、特に水素原子又はハロゲン原子が好ましい。
【0049】
m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。中でもm1+m2が1〜3の整数であることが好ましく、特にm1+m2が1又は2であることが好ましい。
【0050】
本発明において、ポリビニルアルコール系ブロックAとブロックBとの連結基の具体例としては、炭素数が比較的少ないアルキレン基やハロアルキレン基が好ましく、特にハロアルキレン基が好ましい。具体的には例えば炭素数1〜3のアルキレン基やハロアルキレン基としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、ジブロモメチレン基又はテトラクロロエチレン基等が挙げられ、中でもクロロメチレン基、ジクロロメチレン基、ジブロモメチレン基又はテトラクロロエチレン基等が好ましい。
【0051】
<ブロックBについて>
一般式(2)中のブロックBは、疎水性基を有するモノマー構造の1種又は2種以上及びイオン性解離基を有するモノマー構造の1種又は2種以上を含むブロックであり、更にブロックBは、疎水性セグメントB’の1種又は2種以上と、先述のポリビニルアルコール系ブロックA及びセグメントB’以外の親水性又は疎水性セグメントB''の1種又は2種以上からなるブロックである。ここでいうセグメントとは、少なくとも2つ以上のモノマー構造からなる連鎖を示す。
【0052】
(ブロックBに含有されるモノマー構造)
ブロックB中に含まれる疎水性基を有するモノマー構造としては以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
【0053】
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、i−デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、i−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレート、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;
酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;
マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;
酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステル類
シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸ジメチル等の環状オレフィン類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングレコール(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレンo−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルフェノール、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン、ベンジルビニルエーテル等の芳香族系化合物;
【0054】
中でも、ベンジル(メタ)アクリレートやスチレンなどの芳香族系化合物が、疎水性基を有するモノマー構造としてブロックB中に含まれることが好ましい。
【0055】
一方、イオン性解離基を有するモノマー構造としては、例えば、以下に例示する酸性基をもつモノマー、及びそのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
【0056】
<酸性基を有するモノマー>
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー;
ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー;
ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー
【0057】
イオン性解離基を有するモノマー構造としては、更に、以下の塩基性基をもつモノマー、及びそのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等のモノマー構造が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
【0058】
<塩基性基をもつモノマー>
ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン
【0059】
イオン性解離基を有するモノマー構造としては、中でも、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)及び/又はアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)をイオン性解離基として有するモノマー構造がブロックB中に含まれることが好ましい。
【0060】
<セグメントB’、B''>
ブロックBにおけるセグメントB’及びB''の配置順序は任意であるが、ポリビニルアルコール系ブロックAに近い方から、B’、B''の順に配置されていることが好ましく、更にセグメントB''は親水性セグメントであることが好ましい。このような配置を採ることによって、水性顔料分散液における顔料の分散安定性が極めて良好となるばかりでなく、印刷物の耐擦過性も同時に向上する。この理由は定かではないが、以下のようなことが考えられる。
【0061】
ポリビニルアルコール系ブロックAは水溶性で且つ結晶性を示すブロックである。よって連結基を介してこのブロックAと結合するブロックB中に、疎水性セグメントB’、親水性セグメントB''を、連結基からこの順に配置することで、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマー両末端側が親水性となる。そして、この親水性部分に挟まれた疎水性セグメントB’が、疎水性である顔料表面に吸着する。
【0062】
このようにポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが吸着した顔料同士は、疎水性セグメントB’の両側にある親水性部分によって、水性媒体中でお互いに反撥するので、水性顔料分散液中での凝集が抑制され、分散安定性が良好となると考えられる。
ブロックB中のセグメントB''として、イオン性解離基を有するモノマー構造からなる親水性セグメントを用いることで、ポリビニルアルコール系ブロックAによる構造的な反撥と、このセグメントB''の電気的反撥の両方を利用することができるので、更に分散が安定し、好ましい。
【0063】
更に、ブロックB中のポリマー構造をグラジエントコポリマー構造とすると顔料分散安定性が向上するので好ましい。
グラジエントコポリマー構造とは、ポリマーの主鎖に沿って、含有される少なくとも2種類以上のモノマー構造の分布が増加するか若しくは減少する構造のことを示す。
ブロックB中のポリマー構造をグラジエントコポリマー構造とすることで、顔料分散安定性が向上する理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
【0064】
高分子分散剤となる本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーと顔料とを水やアルコール類等の水性媒体中で接触させ、水性顔料分散液を製造する際に、疎水性のポリマー鎖はその疎水性故に、水性媒体中においてポリマー鎖自身が凝集することが考えられる。そしてこの凝集体は、顔料分散時においても凝集が解けないくらい、堅固なものとなる場合が考えられ、このような疎水性ポリマー鎖では、疎水性である顔料表面を広く覆うことが困難であると考える。
【0065】
しかし、上述の疎水性セグメントB’において、疎水性を有するモノマー構造以外に親水基を有するモノマー構造を含んだグラジエントコポリマー構造とすることによって(例えばスチレンモノマーを主とする疎水性セグメントB’が(メタ)アクリル酸系モノマー等の親水性基を有するモノマーを含むことによって)、水性媒体中で疎水性セグメントB’の構造に柔軟性を持たせることができるので、水性媒体中での顔料分散時においても堅固な凝集体となることを抑制できると考えられる。そして、このような疎水性セグメントを有するポリビニルアルコール系ブロックコポリマーは、顔料表面をより広く覆うことができると考えられる。
このように、疎水性である顔料表面を広く覆うことで、顔料表面の疎水性を低減することが可能となり、水性媒体中における顔料の分散安定性が向上する、と考えられる。
【0066】
更に親水性セグメントB''においても親水性モノマー以外に疎水性のモノマーを含んだグラジエントコポリマー構造とすることが好ましく、更に好ましくはセグメントB’とセグメントB''が連続したグラジエントコポリマー構造であることが好ましい。
【0067】
ブロックBの数平均分子量は、一般的には500以上であり、且つその上限は50000以下、特に20000以下であることが好ましい。
分子量が小さすぎると、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの顔料への吸着力が低下するため、顔料の分散性が低下する場合がある。逆に大きすぎても水溶性が極端に低下することにより、顔料の分散が困難になったり、また、顔料分散液の粘度が増大し、このような記録液を用いた場合、記録液の吐出性が大きく低下する場合がある。
【0068】
<ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの製造方法について>
次に、本発明に係るビニルアルコール系ポリマー(I)、特に、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの製造方法の一例について説明する。
【0069】
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを製造するには、まず連鎖移動重合法等により、例えば以下の一般式(3)で表される、片末端にハロゲン原子Zを有するポリビニルエステル系ポリマーを得る。
【0070】
【化6】

【0071】
(式中、A’は以下の一般式(4)で表されるビニルエステル構造単位を含むポリビニルエステル系ポリマーを示し(一般式(4)中の、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)、X、X、X、及びX、ならびにm1、m2は、一般式(2)におけると同義であり、ZはF、Cl、Br、I等のハロゲン原子を示す。
【化7】

一般式(3)におけるZとしては、中でも塩素原子が好ましい。)
【0072】
このポリビニルエステル系ポリマーは、片末端にハロゲン原子が結合していることを除くと、前述のポリビニルアルコール系ブロックAに類似した構造を有する。
【0073】
次いで、このポリビニルエステル系ポリマーをマクロ開始剤として用い、原子移動ラジカル重合法等によりラジカル重合性モノマーを重合してポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーを得る。その後、このブロックポリマー中のポリビニルエステル部分を鹸化することで、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを得ることができる。但し、鹸化は重合前に行なうこともでき、この場合は、鹸化で得られたポリビニルエステルがマクロ開始剤として使用され原子移動型ラジカル重合が行なわれる。
【0074】
なお、一般式(4)におけるRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基などが挙げられる。中でも、水素原子又は炭素数が少ないアルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特に水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0075】
また、一般式(4)におけるRのアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、直鎖、分岐又は環状の何れでもよく、炭素原子は置換基を有していてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基や置換アルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、3−メチルアリル基、2,3−ジメチルアリル基、3,3−ジメチルアリル基、シンナミル基、3−シクロヘキシルアリル基等のアルケニル基や置換アルケニル基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
フェニル基、ナフチル基等のアリ−ル基における1〜3個の水素原子をメチル基、エチル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等の官能基で置換した置換アリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルブチル基、ジフエニルメチル基、トリフエニルメチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基や置換アラルキル基、等
が挙げられる。
中でもRとしてはメチル基、クロロメチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基が好ましく、更には炭素数の少ない、アルキル基又は置換アルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3の、アルキル基又はハロゲン原子で置換された置換アルキル基が好ましく、特にメチル基又はクロロメチル基が好ましい。
【0076】
(ポリビニルエステル系ポリマーの調製)
連鎖移動重合法による一般式(3)で表されるポリビニルエステル系ポリマーの調製法について以下に説明する。
【0077】
上記の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステル系ポリマーは、テロメリゼーションと呼ばれる連鎖移動重合法により合成することができる(Eur.Polym.J.,18,779 1982)。即ち、連鎖移動剤(テローゲン)と呼ばれる、ラジカル連鎖移動定数の大きいポリハロゲン化炭化水素の存在下、ビニルエステル系モノマーのラジカル重合を行なうことにより、片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステル系ポリマーが定量的に得られる。なお、一般式(3)において、A’とZの間の連結基は、一般式(1)におけるA−Bの連結基に相当し、連鎖移動剤によって誘導される。即ち、一般式(1)中のX、X、X、及びXは連鎖移動剤に由来する。
【0078】
先述の連鎖移動剤としては、メチレンクロライド、エチレンクロライド、ジクロロエタン、エチリデンクロライド、エチリデンブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、メチルクロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、アリルクロライド、ブチルクロライド、ブチルブロマイド、ブチルアイオダイド、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンジルクロライド、メタアリルクロライド等が挙げられる。
【0079】
先述のビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、これらのα置換体などが挙げられる。これらの中では、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ギ酸ビニルのような側鎖の嵩高いビニルエステル系モノマー又は極性の高いビニルエステル系モノマー類が好適である。
【0080】
連鎖移動重合法では、連鎖移動剤とビニルエステル系モノマーの比を選択することにより、また、重合溶媒を使用する場合はモノマー濃度を変化させることにより、分子量を任意に調節することができる。
【0081】
連鎖移動重合法におけるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤、UV系開始剤などの公知のものを使用することができる。また、放射線や電子線も使用することができる。これらの中では、アゾ系開始剤が取扱い易くて好ましい。
【0082】
重合反応は、無溶媒又は溶媒の存在下に行なうことができる。重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類の1種又は2種以上が挙げられる。
また、使用する連鎖移動剤が液体である場合には、これを重合反応溶媒として使用してもよい。溶媒として使用される連鎖移動剤としては、好ましくはハロゲン化炭化水素であり、更に好ましくはクロロホルムである。
【0083】
重合反応を行う際、ビニルエステル系モノマー、連鎖移動剤、重合溶媒、ラジカル開始剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、ビニルエステル系モノマー、連鎖移動剤、重合溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させ重合反応を行う方法が挙げられる。また、別の方法としては、ビニルエステル系モノマー、連鎖移動剤、重合溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液や連鎖移動剤、重合溶媒、又はこれらの混合物を、連続的に又は分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。中でも、ビニルエステル系モノマー、連鎖移動剤、重合溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有する重合溶媒を分割して添加する方法が、重合反応時の発熱を制御できるので好ましい。
【0084】
連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、ビニルエステル系モノマー100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
溶媒の使用量は特に限定されないが、ビニルエステル系モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
重合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
【0085】
このようにして得られたポリビニルエステル系ポリマーは、定法に従って精製し、次の工程へ供される。この精製方法としては例えば、モノマーと重合溶媒が可溶でポリビニルエステル系ポリマーが不溶な溶媒中へ重合溶液を投入し、ポリビニルエステル系ポリマーを沈殿させ、濾別後、乾燥させる方法が挙げられる。また、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後に、反応溶媒を置換する精製方法なども挙げられる。中でも、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後、反応溶媒を置換する精製方法が好ましく、特にこの精製方法においては、未反応モノマーの除去操作時にポリビニルエステル系ポリマーを含む溶液にアルカリ成分を添加することで、蒸留等によって生成する系内の酸を中和し、この酸によるポリビニルエステル系ポリマーの分解が抑制できるので好ましい。
蒸留によって未反応モノマーや反応溶媒を除去する際には、減圧下で蒸留を行うことが好ましい。減圧蒸留時は未反応モノマーの重合とポリビニルエステル系ポリマーの分解を避けるために、50℃以下で行うことが好ましく、中でも40℃以下で減圧蒸留を行うことが好ましい。
【0086】
(ポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーの調製)
次に、先述の原子移動ラジカル重合法、即ち、片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステル系ポリマーをマクロ開始剤として、ポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーを調製する原子移動ラジカル重合法について説明する。
原子移動型ラジカル重合法は、リビングラジカル重合法の1つの方法であり、次のような図式で表される。
【0087】
【化8】

【0088】
(上述の図式において、Pはポリマー又は開始剤、Mは遷移金属、Q及びQはハロゲン原子、LはMに配位可能な配位子、s及びs+1は遷移金属の原子価であり、低原子価錯体[1]と高原子価錯体[2]とはレドックス共役系を構成する。)
【0089】
最初に、低原子価錯体[1]がハロゲンを含有する重合開始剤P−Qからハロゲン原子Qをラジカル的に引き抜いて、高原子価錯体[2]及び炭素中心ラジカルP・を形成する。尚、この反応の速度はKactで表される。このラジカルP・は、図示のようにモノマーと反応して同種の中間体ラジカル種P・を形成する。尚、この反応の速度はKpropagaionで表される。
【0090】
高原子価錯体[2]とラジカルP・との間の反応は、生成物P−Qを生ずると同時に、低原子価錯体[1]を再生する。この反応の速度はKdeactで表される。そして、低原子価錯体[1]はP−Qと更に反応して新たな反応を進行させる。本反応においては、成長ラジカル種P・の濃度を低く抑制することが重合を制御することにおいて最も重要である。
【0091】
なお、上記の原子移動型ラジカル重合法の具体例としては、次のような報告(1)、(2)がある。
【0092】
(1)CuCl/ビピリジル錯体の存在下、α−クロロエチルベンゼンを開始剤としたスチレンの重合(J.WangandK.Matyjaszewski,J.Am.Chem.Soc.117,5614(1995))
(2)RuCl(PPh、有機アルミ化合物の存在下でのCClを開始剤とするメタクリル酸メチルの重合(M.Kato,M.Kamigaito,M.Sawamoto,T.Higashimura,Macromolecules,28,1821(1995))
【0093】
従って、上述の原子移動型ラジカル重合法のマクロ開始剤(P−Q)として、先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステル系ポリマーを使用し、原子移動型ラジカル重合法によってラジカル重合性モノマーを重合させることにより、ポリビニルエステル系ポリマーブロックと他のブロックBを含むブロックコポリマーが得られる。
【0094】
原子移動型ラジカル重合法に使用する遷移金属Mとしては、特に制限されないが、周期表7〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属が好適である。
レドックス触媒(レドックス共役錯体)においては、先述の図式に示すように低原子価錯体[1]と高原子価錯体[2]とが可逆的に変化する。具体的に使用される低原子価金属(M)としては、Cu、Ni、Ni、Ni2+、Pd、Pd、Pt、Pt、Pt2+、Rh、Rh2+、Rh3+、Co、Co2+、Ir、Ir、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+の群から選ばれる金属であり、中でも、Cu、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましく、特にCuが好ましい。1価の銅化合物の具体例としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅などが挙げられる。
【0095】
配位子Lとしては、一般的には有機配位子が使用される。具体的には例えば2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられるが、特にトリス(ジメチルアミノエチル)アミンのような脂肪族ポリアミン類が好ましい。
【0096】
溶媒としては、連鎖移動重合に使用する重合溶媒として挙げた溶媒を同様に使用することができる。中でもアルコール類が好ましく、特にメタノール、イソプロピルアルコール、又はその混合溶媒が好ましい。
【0097】
ラジカル重合性モノマーとしては、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、スチレン系モノマ−などが挙げられ。また、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルエステル等の単独ではラジカル重合し難いモノマーもラジカル重合性モノマーの共重合成分として使用することができる。
【0098】
上述のアクリレート系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0099】
上述のメタクリレート系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0100】
上述のスチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0101】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、好ましくは100重量部以上であり、その上限は通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
【0102】
低原子価金属(M)の使用量は、特に限定されないが、重合反応系中の濃度として、通常10−6モル/リットル以上、好ましくは10−5モル/リットル以上であり、その上限は通常10−1モル/リットル以下である。そして、開始剤1モルに対し、通常0.001モル以上、好ましくは0.005モル以上であり、その上限は通常100モル以下、好ましくは50モル以下である。
また、重合温度は、特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は200℃以下、好ましくは150℃である。本発明において、重合はリビング的に進行する。
【0103】
ブロックBは、先述したようなラジカル重合性モノマーを構成成分とするポリマーであることが好ましく、用途に応じ、その変性物であってもよい。
具体的には、ブロックBの主鎖にカルボン酸エステル基を側鎖として導入したり、カルボン酸エステル基を酸又はアルカリ条件下で加水分解してカルボン酸構造にしたり、更に、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどで中和し、カルボン酸塩構造にすることができる。カルボン酸エステル基を酸又はアルカリ条件下で加水分解してカルボン酸構造にする場合には、ブロックAであるポリビニルエステル系ポリマーの鹸化反応と同工程で行ってもよく、また別工程で行ってもよい。また、ジメチルアミノエチル基のような3級アミン構造を有するポリマーブロックBの場合は、3級アミンをベンジルクロライド等と反応させて4級塩構造構造としてもよい。
【0104】
更に、ブロックBとしては、ラジカル重合性モノマーとして反応性の異なる複数のラジカル重合性モノマーを重合して得られる、グラジエントコポリマーであることが好ましい。グラジエントコポリマーの製造方法としては、例えば、上述の原子移動型ラジカル重合法において、マクロ開始剤(P−Q)として先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルを使用し、反応性が異なる2つ又はそれ以上のモノマーを用いた共重合化により合成する方法が挙げられる。
【0105】
反応性が異なる2つ又はそれ以上のモノマーの重合反応系への導入方法は任意である。具体的な方法としては例えば、重合開始時に、反応に用いる全種類のモノマーを同時に反応器内へ導入する方法が挙げられる。別の方法として、重合開始時に、反応に用いるモノマーを単独及び/又は混合物として連続的に又は分割して反応器内へ導入する方法が挙げられる。更に、重合開始時に、反応に用いるモノマーを2つ又はそれ以上の組成比の異なる混合物として連続的に又は分割して反応器内へ導入する方法等が挙げられる。中でも、重合開始時に反応に用いる全種類のモノマーを同時に反応器内へ導入する方法が好ましい。
【0106】
この際、反応性の異なる複数種のモノマーとしては、疎水性モノマーと親水性モノマー(親水性モノマーには重合後の変性反応により親水性を示すモノマーも含む。)とを用いることが好ましい。中でも反応性の高い疎水性モノマーと、この疎水性モノマーに比べて反応性の低い親水性モノマーを用いることが好ましい。このような疎水性モノマーと親水性モノマーとを用いることで、ブロックBはその末端(連結基と反対方向の末端)に向かって、疎水性モノマー組成が一定の割合で減少し、逆に親水性モノマー組成が一定の割合で増加するグラジエントコポリマー構造となる。
【0107】
このようなグラジエント構造をポリマー鎖中に導入することにより、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを水性媒体中に存在させたとき、ブロックBにおいて、連結基に近い部分の疎水性セグメントB’はその構造中に親水性基を含有するため、水性媒体中においては水によって可塑化されるので、疎水性セグメントB’が柔軟性を持たせることが可能となる。
【0108】
従って、ブロックBにおける疎水性セグメントB’が柔軟性を有することで、好ましくはブロックBの末端に親水性セグメントB''を有することで、このブロックBを有する本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー(高分子分散剤)と顔料とを、水やアルコール類等の水性媒体中で接触させ、分散させて水性顔料分散液を製造する際に、水性媒体中で疎水性セグメントB’のポリマー鎖自身が、分散時に解けないくらい堅固な凝集体となることを抑制でき、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが顔料表面をより広く覆うこととなる。これによって、そもそも疎水性である顔料表面における疎水性を低減することが可能となり、水性媒体中における顔料の分散安定性が向上すると考えられる。
【0109】
このような疎水性セグメントB’と親水性セグメントB''の組合せは、反応性の高い任意の疎水性モノマーと、この疎水性モノマーに比べて反応性の低い任意の親水性モノマー(親水性モノマーには、重合後の変性反応により親水性を示すモノマーも含む。)を用いて製造すればよい。具体的には例えば、セグメントB’、B''における疎水性セグメントを構成するモノマー構造としては、電荷基を有さない疎水性基を有するモノマー構造が好ましく、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート等のアリール(メタ)アクリレート系モノマー;2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート等の、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン系が好ましい。
【0110】
また、セグメントB''における親水性セグメントを構成するモノマー構造としては、イオン性解離基を有するモノマー構造が好ましく、例えばアクリル酸ナトリウム等のアクリル酸塩モノマー;メタクリル酸ナトリウム等のメタクリル酸塩モノマーが好ましい。
【0111】
このようにして、ポリビニルエステル系ポリマーブロックとグラジエントコポリマー構造を有するブロックBを含む、ブロックコポリマーが得られる。
【0112】
ブロックBをグラジエントコポリマー構造とする際には、上述したように、原子移動型ラジカル重合法のマクロ開始剤(P−Q)として先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルを使用し、複数のラジカル重合性モノマーを、好ましくはこれらモノマーの混合物を原子移動型ラジカル重合法により重合すればよい。
【0113】
この重合を行う際には、マクロ開始剤、複数種のラジカル重合性モノマー、及び触媒の添加順序等は任意である。例えば、反応器内に金属触媒を投入した後に、マクロ開始剤とラジカル重合性モノマー類、重合溶媒の混合物を投入し、その後、有機配位子を混合し、昇温させて重合を行う方法、反応器にマクロ開始剤とラジカル重合性モノマー類、重合溶媒の混合物を投入した後、金属触媒と有機配位子を別々に、もしくはその混合物を含有する溶液を投入する方法等が挙げられる。
【0114】
中でもマクロ開始剤と複数種のラジカル重合性モノマーを含む混合物を、触媒の添加前に、反応開始温度を超えない範囲で、反応開始温度の近傍まで上昇させ、具体的には反応開始温度の20℃以内、中でも好ましくは15℃以内としてから触媒と混合し、次いで温度を上昇させて重合反応を開始することが好ましい。この方法によって、触媒由来の不純物が減少するので好ましい。このような重合反応方法に用いる触媒は任意だが、中でも塩化第一銅や臭化第一銅などの銅触媒を用いると効果が顕著となるので好ましく、更に好ましくは臭化第一銅を用いるのが好ましい。
【0115】
このようにして得られたブロックコポリマーは、定法に従って精製するか、又は未精製のまま次の工程へ供される。精製方法はポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒へブロックコポリマーを沈殿、濾別を繰り返す方法や、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後に反応溶媒を置換する精製方法などが挙げられる。
【0116】
<ポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーの鹸化>
次に、ポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーの鹸化方法について説明する。
ポリビニルエステル系ポリマーを含むブロックコポリマーの鹸化反応は、鹸化触媒の共存下に行われる。通常、鹸化に当たっては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ベンゼン、酢酸メチル等にマクロ開始剤であるポリビニルエステル系ポリマー又はマクロ開始剤から原子移動ラジカル重合法により合成されたブロックコポリマーを溶解する。ブロックコポリマーにおける先述の溶媒への溶解度が低い場合には、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物;などを混合し、鹸化反応の溶媒として使用してもよい。
【0117】
鹸化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒が使用されるが、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒も使用することができる。
アルカリ触媒の使用量は、特に限定されないが、ビニルエステル系モノマー単位1モルに対し、通常1ミリモル当量以上100ミリモル当量以下、好ましくは50ミリモル当量以下、更に好ましくは30ミリモル当量以下である。
酸触媒の使用量は、特に限定されないが、ビニルエステル系モノマー単位1モルに対し、通常1ミリモル当量以上1000ミリモル当量以下、好ましくは500ミリモル当量以下、更に好ましくは300ミリモル当量以下である。
鹸化反応の温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上であり、その上限は100℃以下、好ましくは80℃以下である。
【0118】
鹸化度は、最終的に得られるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの用途によって適宜選択し決定すればよいが、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上である。ここで、鹸化度とは、ビニルエステル系モノマー単位の鹸化によってビニルアルコール単位に変換され得る単位に対する、鹸化後のビニルアルコール単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。
【0119】
更に、Bブロックにカルボン酸エステル基を有するモノマーを導入し、重合後にカルボン酸エステル基を加水分解しカルボン酸構造又はカルボン酸塩構造とする際には、ブロックAの鹸化反応と、加水分解反応を同一工程(ワンポット)で行ってもよい。ワンポットでの鹸化・加水分解反応時には溶媒として、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ベンゼン、酢酸メチル等、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物;水などが挙げられ、これらは単独また混合して使用しても良い。中でも水とメタノール、テトラヒドロフラン等の水溶性有機溶媒を混合して用いることが好ましい。
【0120】
鹸化・加水分解触媒としては、鹸化反応単独工程で行う場合と同様に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒が使用されるが、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒も使用することができる。
アルカリ触媒の使用量は、特に限定されないが、ポリマー中のビニルエステル系モノマー単位とカルボン酸エステル系モノマー単位の合計に対し、通常1/1000当量以上5当量以下、好ましくは2当量以下、更に好ましくは1.5当量以下である。
酸触媒の使用量は、特に限定されないが、ポリマー中のビニルエステル系モノマー単位とカルボン酸エステル系モノマー単位の合計に対し、通常1/1000当量以上5当量以下、好ましくは2当量以下、更に好ましくは1.5当量以下である。
反応の温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上であり、その上限は100℃以下、好ましくは80℃以下である。
【0121】
2.非イオン性親水基を有するポリマー(II)
本発明で用いられる非イオン性親水基を有するポリマー(II)は、ポリマー構造中に、オキシアルキレン基、水酸基、アミド基、ピロリドン基、オキサゾリドン基に代表される非イオン性親水基を有していれば良く、その他は特に限定されない。
例えば、変性・修飾反応により非イオン性親水基である水酸基やアミド基を、非イオン性親水基を有していないポリマーへ導入してもよく、またポリエチレンオキサイド鎖やポリビニルアルコール鎖などに代表される非イオン性親水性ポリマー鎖を非イオン性親水基を有していないポリマーへ導入したものでもよい。また、非イオン性親水基を有するモノマーを重合反応でポリマー構造中に導入した、非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーであってもよい。更には、多糖類等、ポリペプチド等の天然高分子でもよく、それらの誘導体や変性体であってもよい。中でも、非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーであることが好ましい。
【0122】
<非イオン性親水基を有するモノマー構造の説明>
非イオン性親水基を有するモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−N−ピロリドンエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルピペジリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、炭素数4〜9の環状基を含むN−ビニルラクタム、ビニルアルコール、カプロラクトン、変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜6のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜3のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエタノール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−(2−ヒドロキシエチル)スチレン、p−(2−ヒドロキシエチルオキシカルボニル)スチレン、炭素数2〜5のアルキレンオキサイドの開環構造
【0123】
<非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーの説明>
更に前述の非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーは、非イオン性親水基以外のモノマー構造、例えば脂肪族系疎水性基を有するモノマー構造、脂環式系疎水性基を有するモノマー構造、芳香族系疎水性基を有するモノマー構造、酸性基・塩基性基などを有するモノマー構造、イオン性解離基(酸・塩基の塩等)を有するモノマー構造を構成単位としてもよい。
【0124】
(脂肪族系疎水性基を有するモノマー構造の例示)
脂肪族系疎水性基を有するモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、i−デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、i−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレートエステル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;
酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;
マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のジカルボン酸エステル誘導体;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;
酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステル類
【0125】
<脂環式疎水性基を有するモノマー構造の例示>
脂環式系疎水性基を有するモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートエステル類等;
シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸ジメチル等の環状オレフィン類
【0126】
<芳香族系疎水性基を有するモノマー構造の例示>
芳香族系疎水性基を有するモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングレコール(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、9−アントラセニル(メタ)アクリレート、1−ピレニルメチル(メタ)アクリレート;
スチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−メチルスチレンo−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルフェノール、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン、ベンジルビニルエーテル
【0127】
<酸性基・塩基性をもつモノマー構造の例示>
酸性基をもつモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸系モノマー;
ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸等のスルホン酸系モノマー;
ビニルホスホン酸、メタアクリロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等のリン酸系モノマー
【0128】
塩基性をもつモノマー構造としては、以下が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
【0129】
ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン
【0130】
<イオン性解離基を有するモノマー構造の例示>
前述の酸性基をもつモノマー群のアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
また、前述の塩基性をもつモノマーのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、有機酸等による中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等による四級化物等のモノマー構造が例示されるが、これらに限定されるものではなく、従来公知のものが含まれる。
【0131】
前述のように、非イオン性親水基を有するポリマー(II)は、非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーであることが好ましいが、中でも、少なくとも以下の(a)、(b)、(c)のモノマー構造の各々の1種又は2種以上を構成単位とするポリマーであることが好ましい。
【0132】
なお(a)、(b)、(c)を構成単位とするポリマーは、(a)、(b)、(c)以外のモノマー構造を構成単位としていても良い。
【0133】
また、ポリマー中の前記モノマー構造(a)、(b)、(c)中の(a)の組成比率は、特に限定されないが、5〜70モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50モル%である。また、モノマー構造(b)、(c)の組成比率は、特に限定されないが、モノマー構造(b)は20〜80モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、30〜70モル%であり、モノマー構造(c)は1〜50モル%の範囲であることが好ましく、5〜50モル%の範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは5〜40モル%の範囲であり、最も好ましくは10〜40モル%の範囲である。この範囲よりもモノマー構造(a)が多いと水溶性が高くなり過ぎて、ポリマーが顔料から脱離しやすくなるため分散安定性が低下し、少ないと本発明の効果が発現しない。また、モノマー構造(b)が多いとコポリマーの疎水性が強くなりすぎて顔料の分散が困難になり、少ないと顔料への吸着力が弱くなるため分散安定性が低下する。また、モノマー構造(c)が多いと水溶性が高くなり過ぎて、ポリマーが顔料から脱離しやすくなるため分散安定性が低下し、少なすぎると写真専用紙での定着性が低下する。
【0134】
((a)非イオン性親水基を有するモノマー構造の好ましい例)
非イオン性親水基を有するモノマー構造の中でも、N−ビニル−2−ピロリドン、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、エチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表される炭素数2〜5のアルキレンオキサイドの開環構造が好ましく、これらのうち、エチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表される炭素数2〜5のアルキレンオキサイドの開環構造が好ましく、更に好ましくはアルキレンオキサイドの開環構造の重合体であるポリアルキレンオキサイドセグメントとしてポリマー中に導入されることが好ましい。
【0135】
ポリアルキレンオキサイドセグメントをポリマー中に導入する方法としては、例えばポリエチレンオキサイドがアゾ基を介して結合した高分子アゾ化合物(VPE−0201 和光純薬工業株式会社製)を重合開始剤として用いて重合性モノマーを重合することによりポリマー中に導入する方法や、また側鎖にポリアルキレンオキサイドセグメントを持つビニル系モノマーを他の重合性モノマーと重合することにより導入する方法などがある。
【0136】
特に、側鎖にアルキレンオキサイドセグメントを持つビニルモノマーとしては、下記一般式(A)に示されるモノマー構造が好ましく、中でも 下記一般式(B)に示される構造が好ましく、更には、下記一般式(C)に示される構造であることがより好ましい。
【0137】
10−(C2hO)−(C2jO)−R (A)
(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基を示し、R10はビニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、アクリルアミノ基、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルシリル基、シアノビニル基、又は2−シアノアクリロ基を示し、h、jはそれぞれ独立に1〜5の整数、iは1〜100の整数、kは0〜50の整数である。)
【0138】
10−(CO)−C2q+1 (B)
(式中、R10はビニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルアミノ基、アクリルアミノ基、スチリル基、ビニルエーテル基、ビニルシリル基、シアノビニル基、2−シアノアクリロ基を示し、pは1〜100の整数、qは1〜5の整数である。)
【0139】
11−(CO)−CH (C)
(式中、R11はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基 rは2〜100の整数である。)
【0140】
特に、上記一般式(C)の中でもrが4〜9個であるものがより好ましく、その具体例としては、ライトエステル130MA、ライトアクリレート130A(共栄社化学株式会社製)、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−350、ブレンマーPME−400・ブレンマーAME−400(日本油脂株式会社製)などが挙げられる。
【0141】
((b)芳香族系疎水性基を有するモノマー構造の好ましい例)
芳香族系疎水性基を有するモノマー構造中では、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングレコール(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレンのような 無置換のフェニル基を有するモノマー構造が好ましく、より好ましくはスチレン、ベンジルメタクリレートである。
【0142】
((c)イオン性解離基を有するモノマー構造の好ましい例)
イオン性解離基を有するモノマー構造の中では、酸性基をもつモノマー群のアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩が好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、(メタ)アクリル酸カリウム塩、イタコン酸ナトリウム塩、イタコン酸カリウム塩のカルボン酸系モノマーのアルカリ金属塩が好ましく、より好ましくはアクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムである。
【0143】
上述のようなポリマーの構造は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ジブロックコポリマー、トリブロック以上のマルチブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、スターコポリマー等が挙げられるが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0144】
<非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーの合成法>
非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーの合成法は特に限定されず、例えばラジカル重合、イオン重合、重付加、重縮合などの公知の重合方法を選択でき、またこれらの公知の方法で合成したポリマーの誘導体や変性体であってもよい。中でも合成手法が簡便であることから、ラジカル重合法を用いて合成されるポリマーが好ましい。
【0145】
(ラジカル重合に用いるモノマーの説明)
非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位とするポリマーをラジカル重合法を用いて合成するには、少なくとも一種類のラジカル重合性の非イオン性親水基を有するモノマーを用いればよく、その他の重合性モノマーを用いてもよい。
【0146】
ラジカル重合性の非イオン性親水基を有するモノマーとしては、前述の非イオン性親水基を有するモノマー構造として例示したモノマーを用いることができるが、これらに限られるものではなく従来公知のものが使用できる。
非イオン性親水基を有するモノマーは、少なくとも1種類以上を用いればよく、また2種類以上用いても良い。
【0147】
中でも、側鎖にポリアルキレンオキサイドセグメントを持つビニル系モノマーが好ましく、前述の一般式(C)に示されるモノマー構造が好ましい。具体的には、ライトエステル130MA、ライトアクリレート130A(共栄社化学株式会社製)、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−350、ブレンマーPME−400、ブレンマーAME−400(日本油脂株式会社製)などが好ましい。
【0148】
その他のモノマーとしては、前述の脂肪族系疎水性基を有するモノマー構造、脂環式系疎水性基を有するモノマー構造、芳香族系疎水性基を有するモノマー構造、酸性基・塩基性基などを有するモノマー構造、イオン性解離基(酸・塩基の塩等)を有するモノマー構造として例示したモノマーを用いることができるが、これらに限られるものではなく、従来公知のものが使用できる。
【0149】
中でも、芳香族系疎水性基を有するモノマーとイオン性解離基を有するモノマーを使用することが好ましく、芳香族系疎水性基を有するモノマーとしてはスチレンがより好ましく、イオン性解離基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0150】
(重合反応溶媒)
ラジカル重合反応は、無溶媒又は溶媒の存在下に行なうことができるが、溶媒存在下で重合反応を行うことが好ましい。
重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素の1種又は2種以上が挙げられる。
中でも、重合反応溶媒としては水性溶媒が好ましい。
【0151】
水性溶媒とは、水100%もしくは水と極性有機溶媒を任意の比率で混合した溶媒を指す。極性有機溶媒は、水と任意の比率で混合可能なものであれば良く、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノールアセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が例示される。これらの中で、特にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
これら溶媒は1種類のみからなる単一溶媒でも良いし、2種類以上からなる混合溶媒でも良い。
【0152】
(ラジカル重合開始剤)
非イオン性親水基を有するモノマー構造を構成単位とするポリマーを合成する際のラジカル重合反応には公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤でも油溶性の重合開始剤でも使用できる。
【0153】
<水溶性重合開始剤>
水溶性の重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6,−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ化合物系開始剤、過硫酸カリ、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤単独、又は亜硫酸ソーダ、次亜硫酸ソーダ、硫酸第1鉄、硝酸第1鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオ尿素等の水溶性還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0154】
<油溶性重合開始剤>
油溶性の重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物系開始剤、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド及びクメンパーオキサイド等のパーオキサイド重合開始剤、更にヒドロペルオキサイド(tret−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物と、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤とを併用する油溶性レドックス重合開始剤が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0155】
(重合条件)
重合反応を行う際、モノマー、重合反応溶媒、ラジカル開始剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、モノマー、重合反応溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が挙げられる。また、別の方法としては、重合性モノマー、重合反応溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液、重合反応溶媒、又はこれらの混合物を、連続的に又は分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。中でも操作の簡便性から、原料を一括で仕込んだ後に温度を上昇させて重合反応を行う方法が好ましい。
重合反応溶媒の使用量は特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、通常2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
重合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。
【0156】
<精製>
このようにして得られた非イオン性親水基を有するモノマー構造を構成単位とするポリマーは、未精製のまま使用しても特に問題はないが、常法に従って精製し、次の顔料分散工程へ供されるのが好ましい。精製方法としては、ポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒へポリマー溶液を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す再沈精製、ポリマー溶液にポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒を滴下し、ポリマーの沈澱、濾別を繰り返す分別沈澱精製、加熱蒸留や、減圧蒸留等によって未反応モノマーや反応溶媒を除去した後に、溶媒を水及び/又は水性溶媒に置換する方法、更には限外濾過膜や透析膜などを用いて低分子不純物や低分子量オリゴマー成分を除去する方法などが挙げられる。
【0157】
<分子量>
本発明で用いる非イオン性親水基を有するポリマー(II)、好ましくは非イオン性親水基を有するモノマー構造を構成単位とするポリマーの数平均分子量は、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、特に好ましくは30000以下で、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上である。分子量が小さ過ぎると、顔料への吸着力が弱まるため分散安定性が低下し、大き過ぎると顔料分散液の粘度が増大するため、この顔料分散液を用いた記録液の吐出性が低下する。
【0158】
3.水性顔料分散液、及びインク組成物
本発明に係るビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)は、水溶性か、又は水分散性のポリマーであるので、水性顔料分散液の高分子分散剤として用いると、この水性液において優れた顔料分散性を奏する。また、この水性顔料分散液を記録液用インク組成物として用いることで、特にインクジェット用の記録液用のインク組成物として用いることで、顔料の分散安定性だけでなく、吐出ノズルからの記録液の吐出性や、耐擦過性、印字濃度、光沢性に優れた印刷物を得られるという効果をも同時に奏する。
【0159】
以下、本発明に係るビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)を高分子分散剤として用いた本発明の水性顔料分散液、及びこれを含む顔料分散型のインク組成物について説明する。
【0160】
本発明の水性顔料分散液は、水性媒体中に、少なくとも上述の顔料と、高分子分散剤として先述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)とを含んでなるものである。
【0161】
<顔料について>
本発明に用いられる顔料としては、各用途において一般的なものを適宜選択すればよく、特に限定されないが、代表的なものを例示すると、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカなどを代表とする体質顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、ゲーサイト、マグネタイト、酸化クロムなどを代表とする金属酸化物系顔料;チタンイエロー、チタンバフ、アンチモンイエロー、バナジウムスズイエロー、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、マンガングリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、タングステンブルー、エジプトブルー、コバルトブラックなどを代表とする複合酸化物系顔料;リトボン、カドミウムレッドイエロー、カドミウムレッドなどを代表とする硫化物系顔料;ミネラルバイオレット、コバルトバイオレット、リン酸コバルトリチウム、リン酸コバルトナトリウム、リン酸コバルトカリウム、リン酸コバルトアンモニウム、リン酸ニッケル、リン酸銅を代表とするリン酸塩系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジを代表とするクロム酸塩系顔料;群青、プルシアンブルーを代表とする金属錯塩系顔料;アルミニウムペースト、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレスフレーク、ニッケルフレークを代表とする金属粉系顔料;カーボンブラック、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸塩、二酸化チタン、被覆雲母、ITO、ATOを代表とする真珠光沢顔料・真珠顔導電性顔料等の無機顔料;及びキナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料又はアゾ系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0162】
上記顔料の具体例としては下記に示すピグメントナンバーの顔料及び一般に色材分野で用いられている公知のカーボンブラックを挙げることができる。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0163】
赤色色剤:C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
【0164】
青色色剤:C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
【0165】
緑色色剤:C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55;
【0166】
黄色色剤:C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、23、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208;
【0167】
オレンジ色剤:C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
【0168】
バイオレット色剤:C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50
【0169】
ブラウン色剤:C.I.ピグメントブラウン1、6、11、22、23、24、25、27、29、30、31、33、34、35、37、39、40、41、42、43、44、45
【0170】
黒色色剤:C.I.ピグメントブラック1、31、32
【0171】
上記顔料のうち、赤色顔料として好ましくは、キナクリドン系顔料、キサンテン系顔料、ペリレン系顔料、アンタントロン系顔料及びモノアゾ系顔料が挙げられ、その具体例としては、C.I.ピグメントレッド−5、−7、−12、−112、−81、−122、−123、146、−147、−168、−173、−202、−206、−207、−209、C.I.ピグメントバイオレット−19等が挙げられる。このうちより好ましくはキナクリドン系顔料及びキナクリドン系顔料2種類以上からなる固溶体である。
【0172】
上記顔料のうち、黄色顔料としては、モノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好であることから好ましい。その中でも、C.I.ピグメントイエロー−1、−3、−16、−17、−74、−120、−128、−151、−155、−175、−215は、その色合いの面から特に好ましく、更にその中でもC.I.ピグメントイエロー−74、−155がノンハロゲン化合物であり環境に与える影響が小さいこと、微細化が可能である等のことから特に好ましい。
【0173】
上記顔料のうち、青色顔料として好ましくは、銅フタロシアニン顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.ピグメントブルー−15:3はその色合いの面から好ましい。
【0174】
また、本発明において用いられるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
【0175】
上記のカーボンブラックのDBP吸油量は、印字濃度の観点から、40ml/100g以上が好ましく、50ml/100g以上が更に好ましく、60ml/100g以上が特に好ましい。その上限としては、250ml/100g以下、特に200ml/100g以下が好ましい。
ただし、写真専用紙での光沢性の観点からは、DBP吸油量は30〜100ml/100gの範囲が好ましく、30〜70ml/100gの範囲が特に好ましい。
揮発分は、8重量%以下が好ましく、特に4重量%以下が好ましい。
pHは記録液の保存安定性の観点から3以上、中でも6以上であることが好ましく、その上限は11以下、特に9以下が好ましい。
BET比表面積は、通常100m/g以上であるが、中でも150m/g以上であることが好ましく、その上限は700m/g以下、特に600m/g以下が好ましい。
ここで、DBP吸油量はJISK6221A法で測定した値、揮発分はJISK6221の方法で測定した値、pHはカーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極メーターで測定した値、BET比表面積はJISK6217の方法で測定した値である。
【0176】
また、安全性の観点から、600〜1500℃での焼成や、水、温水、溶剤等で洗浄することにより、多環芳香族成分を低減させたカーボンブラックを使用することが好ましい。特に高温での焼成処理は、カーボンブラック表面の官能基が除去されることにより、分散剤がカーボンブラック表面により効率よく、より堅固に吸着されるため、より好ましい。
【0177】
上記カーボンブラックの具体例としては、次の(1)〜(4)に示す商品が挙げられる。
【0178】
(1)#2700B,#2650,#2650B,#2600,#2600B,2450B,2400B,#2350,#2300,#2300B,#2200B,#1000,#1000B,#990,#990B,#980,#980B,#970,#960,#960B,#950,#950B,#900,#900B,#850,#850B,MCF88,MCF88B,MA600,MA600B,#750B,#650B,#52,#52B,#50,#47,#47B,#45,#45B,#45L,#44,#44B,#40,#40B,#33,#33B,#32,#32B,#30,#30B,#25,#25B,#20,#20B,#10,#10B,#5,#5B,CF9,CF9B,#95,#260,MA77,MA77B,MA7,MA7B,MA8,MA8B,MA11,MA11B,MA100,MA100B,MA100R,MA100RB,MA100S,MA230,MA220,MA200RB,MA14,#3030B,#3040B,#3050B,#3230B,#3350B(以上、三菱化学社製品)。
【0179】
(2)Monarch 1400,Black Pearls 1400,Monarch 1300,Black Pearls 1300,Monarch 1100,Black Pearls 1100,Monarch 1000,Black Pearls 1000,Monarch 900,Black Pearls 900,Monarch 880,Black Pearls 880,Monarch 800,Black Pearls 800,Monarch 700,Black Pearls 700,Black Pearls 2000,VulcanXC72R,Vulcan XC72,Vulcan PA90,Vulcan 9A32,Mogul L,Black Pearls L,Regal 660R,Regal 660,Black Pearls 570,Black Pearls 520,Regal 400R,Regal 400,Regal 330R,Regal 330,Regal 300R,Black Pearls 490,Black Pearls 480,Black Pearls 470,Black Pearls 460,Black Pearls 450,Black Pearls 430,Black Pearls 420,Black Pearls 410,Regal 350R,Regal 350,Regal250R,Regal 250,Regal 99R,Regal 99I,Elftex Pellets 115,Elftex 8,Elftex 5,Elftex 12,Monarch 280,Black Pearls 280,Black Pearls 170,Black Pearls 160,Black Pearls 130,Monarch 120,Black Pearls 120(以上、キャボット社製品)。
【0180】
(3)Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Special Black 4,Special Black 4A,Special Black5,Special Black 6,Color Black S160,Color Black S170,Printex U,Printex V,Printex 150T,Printex 140U,Printex 140V,Printex 95,Printex 90,Printex 85,Printex 80,Printex 75,Printex 55,Printex 45,Printex 40,Printex P,Printex 60,Printex XE,Printex L6,Printex L,Printex 300,Printex 30,Printex 3,Printex 35,Printex 25,Printex 200,Printex A,Printex G,Special Black 550,Special Black 350,Special Black 250,Special Black 100(以上、デグッサ製品)。
【0181】
(4)Raven 7000,Raven 5750,Raven 5250,Raven 5000 ULTRA,Raven 3500,Raven 2000,Raven 1500,Raven 1255,Raven 1250,Raven 1200,Raven 1170,Raven 1060 ULTRA,Raven 1040,Raven 1035,Raven 1020,Raven 1000,Raven890H,Raven 890,Raven 850,Raven 790 ULTRA,Raven 760 ULTRA,Raven 520,Raven 500,Raven 450,Raven 430,Raven 420,Raven 410,CONDUCTEX 975 ULTRA,CONDUCTEX SC ULTRA,Raven H2O,Raven C ULTRA(以上、コロンビア社製品)。
【0182】
本発明に係る顔料としては、前記の顔料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の色材と組み合わせて用いることもできる。
【0183】
これらの顔料の一次粒子の大きさは、目的に応じて任意に設定すればよいが、通常、10nm以上であり、且つ、800nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
ここで顔料の一次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)である。
【0184】
また、分散液中の顔料の平均分散粒子径は、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。また下限としては、通常10nm以上である。
上記平均粒子径の測定方法としては、SEMやTEM等の電子顕微鏡を用いて測定するか、市販の動的光散乱測定装置を使用して測定することができる。
【0185】
なお、上記顔料としては、化学修飾がされておらず、また、顔料の小粒径化を促進するための結晶化抑止剤等の、顔料以外の不純物を含まないものが、ポリマーの顔料への吸着を阻害しないことから好ましい。ただし、顔料に自己分散性を持たせるために、予め公知の化学修飾を行った自己分散性を有する顔料も使用できる。即ち、本発明の水性顔料分散液において用いる顔料は、先述したような、未処理の顔料でも、また表面を化学修飾した顔料でも、任意の顔料を使用できる。
【0186】
<水性媒体について>
本発明の水性顔料分散液に用いる水性媒体としては、水及び/又は水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、チオジグリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、トリアゾール、ニコチンアミド、ジメチルアミノピリジン、ε−カプロラクタム、乳酸アミド、1,3−プロパンスルトン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、エチレン尿素、プロピレン尿素、尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
上述の水性媒体としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物であることが好ましい。
【0187】
<水性顔料分散液組成について>
本発明の水性顔料分散液中の顔料濃度としては、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。ここで、顔料濃度が高過ぎると顔料が分散不良となり、ここで、顔料濃度が高すぎると分散液の粘度が増大し、分散液がゲル化したり、また、分散破壊により分散液が使用できなくなる場合があるが、あまり顔料濃度が低すぎるとインク化時に濃縮の手間がかかる等の問題があるので、通常、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0188】
また、本発明の水性顔料分散液中における顔料とビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)の総量との重量比は、適宜選択し決定すればよいが、一般的には顔料1重量部に対してポリマー総量が0.01重量部以上、中でも0.05重量部以上、特に0.1重量部以上であることが好ましく、その上限は2重量部以下、中でも1.5重量部以下であることが好ましい。顔料に対するポリマー総量が少な過ぎると、十分な顔料分散性を得ることができないが、ポリマー総量が多過ぎると分散液の増粘、分散の不安定化を引き起こし好ましくない。
【0189】
また、本発明の水性顔料分散液中のビニルアルコール系ポリマー(I)と非イオン性親水基を有するポリマー(II)との重量比は、適宜選択して決定すればよいが、500:1〜1:500が好ましく、より好ましくは1:1〜1:500である。この範囲よりもビニルアルコール系ポリマー(I)が多く、非イオン性親水基を有するポリマー(II)が少ないと吐出性が低下して印字濃度が下がる場合があり、逆にビニルアルコール系ポリマー(I)が少なく、非イオン性親水基を有するポリマー(II)が多いと、写真専用紙での定着性が低くなる場合がある。
【0190】
<インク組成物(記録液)について>
高分子分散剤として上述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)を併用することを特徴とする本発明のインク組成物は、特に記録液、とりわけインクジェット用記録液として優れた効果を奏する。
即ち、従来、紙への定着性、インキ塗膜の耐水性を目的として添加されていた通常の水溶性樹脂である高分子分散剤と比べて、本発明で用いるビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)を用いた際には、顔料の分散安定性・吐出安定性に優れ、そして印字品質、印字濃度、耐擦過性に優れた印刷物を提供することができる。
記録液等として用いられる本発明のインク組成物(以下「本発明の記録液」と称す)は、上述の本発明の水性顔料分散液の着色剤濃度を必要に応じて調整し、更には用途に応じて各種添加剤を加えて調整される。
【0191】
着色剤としては、上述の本発明の水性顔料分散液中の顔料に加え、更に調色等の目的などで表面処理された自己分散性顔料や、染料、界面活性剤、ポリマー分散剤等で分散された顔料、あるいは、染料等を追加で含んでいても良い。
【0192】
本発明の記録液における全着色剤の濃度は、記録液全量に対する、全着色剤の濃度として0.1重量%以上、中でも0.5重量%以上であることが好ましく、その上限は20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に10重量%以下であることが好ましい。この着色剤濃度が高過ぎると増粘し、かつ吐出性が悪化し、低すぎると印字濃度が低くなりすぎる。一方で、水性顔料分散液に追加する着色剤の量は、水性顔料分散液中の顔料100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは75重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。この着色剤の追加量が多過ぎると本発明の効果が低下する。
【0193】
また、本発明の記録液に用いる溶媒は、水及び水溶性有機溶媒を含むことが好ましく、更に所望により他の成分を含むことができる。
【0194】
本発明の記録液中の水溶性有機溶媒濃度は、適宜選択し決定すればよいが、通常、記録液に対して1重量%以上45重量%以下、中でも40重量%以下であることが好ましい。また記録液における水の含有量は、上述の着色剤や水溶性有機溶媒、及び以下に記載される任意の添加成分の濃度を適宜設定できる量であればよい。
【0195】
水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、チオジグリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、トリアゾール、ニコチンアミド、ジメチルアミノピリジン、ε−カプロラクタム、乳酸アミド、1,3−プロパンスルトン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、エチレン尿素、プロピレン尿素、尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパンが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0196】
本発明の記録液は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいても良い。
このような添加剤としては例えば、浸透促進剤、表面張力調整剤、ヒドロトロピー剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、保湿剤、防黴剤、防錆剤等の記録液用添加剤として公知のものが挙げられる。
本発明の記録液における、これら添加剤の含有量は、記録液の全量に対して、通常その合計で30重量%以下、中でも15重量%以下であることが好ましい。
【0197】
浸透促進剤としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等の低級アルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルグリコールエーテル等のカルビトール類、界面活性剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0198】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤等、任意のものの1種又は2種以上を使用できる。中でも非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤が好ましい。
【0199】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類等が挙げられる。
【0200】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルフォン酸塩類、アルキルナフタレンスルフォン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルフォン酸塩類、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、α−オレフィンスルフォン酸塩等が挙げられる。
【0201】
また、ポリマー系界面活性剤としては、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸/アクリル酸エステル共重合、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸ハーフエステル共重合体、スチレン/スチレンスルフォン酸共重合体、ビニルナフタレン/マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン/アクリル酸共重合体あるいはこれらの塩等が挙げられる。
【0202】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0203】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等の界面活性剤も使用することができる。
【0204】
これらの界面活性剤の含有量は、適宜選択し決定すればよい。通常は記録液に対して0.001重量%以上5重量%以下の範囲で添加することによって、印刷物の速乾性及び印字品位をより一層改良できる。
【0205】
表面張力調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、ノニオン、カチオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤の1種又は2種以上を挙げることができる。
【0206】
ヒドロトロピー剤としては、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等の1種又は2種以上が好ましい。
【0207】
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の1種又は2種以上を水溶性有機溶媒と兼ねるものとして添加することもできる。更に、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類の1種又は2種以上を添加することもできる。
【0208】
キレート剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、記録液に対して0.005重量%以上0.5重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
【0209】
防黴剤としては、特に限定されるものではないが、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、1,2−Benzisothiazoline−3−one(製品名:プロキセルGXL(アーチ・ケミカルズ社製))等の1種又は2種以上が用いられる。これらは、記録液に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0210】
また、記録液のpHを調整し、記録液の安定性を得るため、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、硝酸、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
記録液のpHとしては、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH6〜11程度に調整することが好ましい。
【0211】
また、本発明の記録液においては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)以外の水溶性又は水分散性樹脂を含有しても良い。
このような樹脂としては、具体的には水溶性のビニル系樹脂、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、本発明以外のポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等、及び、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン系樹脂、石油系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の水溶性又は水分散性樹脂が挙げられる。中でもアクリル系樹脂やスチレン−アクリル系樹脂が好ましく、これらは疎水性セグメントとポリマー(I)及びポリマー(II)に含まれる親水性ノニオン性基以外の親水性ユニットを含むコポリマーであることが好ましく、特にランダムコポリマーであることが好ましい。
【0212】
本発明の記録液において、先述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)と、これ以外の水溶性又は水分散性樹脂を含む全ての水溶性又は水分散性樹脂の含有量は、通常、0.05重量%以上、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、その上限は通常20重量%以下、中でも10重量%以下であることが好ましい。また、公知の水性樹脂の使用量としては、上述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)との重量比が99:1〜1:99の範囲で適宜選択し決定すれば良く、具体的にはビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)の総量の1重量部に対して、他の水溶性又は水分散性樹脂が1重量部以下、中でも0.5重量部以下、特に0.3重量部以下であることが好ましい。
【0213】
また、本発明の記録液には、記録媒体への画像の定着性や耐擦性を更に向上させるためにポリマー微粒子を添加しても良い。ポリマー微粒子としては特に限定されないが、表面にイオン性基を有し、粒子径が10〜150nmのものが好ましい。
ポリマー微粒子の使用量としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、決定すればよく、具体的には記録液中の顔料に対して、1〜100重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
【0214】
<水性顔料分散液及びインク組成物の製造方法>
高分子分散剤として、先述のビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)を含む本発明の水性顔料分散液の製造方法において、顔料、水性媒体、及び高分子分散剤等の混合方法や添加順序は任意である。
例えば、未処理の顔料や、先述のように表面を化学修飾した顔料、界面活性剤等の公知の分散剤で処理された顔料、又は染料を吸着させた顔料等の処理顔料とを、高分子分散剤であるポリマー(I),(II)とを接触させてから、水性媒体と接触させ、混合、分散処理する方法が挙げられる。また、先述のような処理顔料を水性媒体中で分散した後に、高分子分散剤であるポリマー(I),(II)と接触させて、水性顔料分散液としても良い。
【0215】
中でも、未処理の顔料を高分子分散剤であるポリマー(I),(II)とを接触させてから、水性媒体と接触させ、混合、分散処理する方法が、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0216】
分散処理に用いる分散機としては、通常、顔料分散に使用される各種分散機が使用できる。
【0217】
分散機としては、特に限定されるものではないが、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライター、パールミル、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、超音波ホモジナイザー等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。このうち、特に好ましい分散処理方法としては、ビーズをメディアとしてミルで分散後、超音波ホモジナイザーで分散する方法である。
【0218】
好ましい粒径を有する顔料分散体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、分散機の分散メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、分散液中の顔料濃度を高くする、処理時間を長くする、粉砕後フィルターや遠心分離機等で分級する等の方法が用いられる。又は、それらの手法の組み合わせが挙げられる。特に規定されるものではないが、分散時における発熱により、分散液が増粘する場合は、冷却しながら分散処理をすることが望ましい。
【0219】
なお、ビニルアルコール系ポリマー(I)と非イオン性親水基を有するポリマー(II)が、顔料と接触する際の順序には特に制限はなく、顔料とポリマー(I)とを接触させた後ポリマー(II)を接触させてもよく、逆に顔料とポリマー(II)とを接触させた後ポリマー(I)を接触させてもよい。この接触の間に水性媒体を供給してもよい。また、顔料にポリマー(I)とポリマー(II)とを同時に接触させてもよく、この際、ポリマー(I)とポリマー(II)とを予め混合して顔料と混合してもよく、顔料とポリマー(I)とポリマー(II)とを同時に混合してもよい。
【0220】
本発明のインク組成物は、前述の如く、このようにして製造された水性顔料分散液に、必要に応じて着色剤や各種添加剤を加えて同様に混合、分散処理することにより調製される。
【実施例】
【0221】
以下に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0222】
なお、以下の諸例においては、数平均分子量(Mn)の測定は、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して行った。また、以下の表記において、「b」はブロックを意味し、「co」はcopolymerの「co」を意味する。
【0223】
[ビニルアルコール系ポリマー(I)の合成]
<合成例1>
ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)(ポリマーB−A)の合成
【0224】
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル3587g、連鎖移動剤及び溶媒としてクロロホルム1907gを仕込み、1時間掛けて70℃に昇温した。次いで、クロロホルム534gに触媒(重合開始剤)としてアゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.3gを溶解した触媒溶液を、6時間かけて滴下した。その後、クロロホルム444.5gに、触媒としてアゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gを溶解した触媒溶液を、5時間かけて滴下した。触媒溶液の滴下後、加熱し、還流条件下、10時間重合反応を行った。反応終了後反応溶液中に0.01N水酸化ナトリウム/メタノール溶液を連続的に滴下しながら、内温40℃で未反応の酢酸ビニルとクロロホルムを減圧留去し、ポリ酢酸ビニルメタノール溶液(ポリマー濃度74重量%)を得た。このポリ酢酸ビニルは数平均分子量3500、分子量分布(Mw/Mn)が2.4であった。
【0225】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CClであった。これは、H−NMR(溶媒CDCl)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CClとして計算される数平均分子量(3500)とGPCから求めた数平均分子量が一致することに基き、これにより、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl)を有するポリ酢酸ビニルが合成できたことを確認した。
【0226】
次いで、内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール17g、及びイソプロピルアルコール1048.5gモノマーとしてアクリル酸メチル2623g、メタクリル酸ベンジル2142g、及びスチレン63.5g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニルメタノール溶液1353gを仕込み、室温から60℃まで1時間で昇温した。内温が60℃に達した時点で、メタノール30gに触媒として臭化第一銅0.6g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン12.0gを溶解した触媒溶液を添加した。触媒溶液添加後、加熱し、還流条件下、30時間重合反応を行った。
【0227】
得られるポリマーの数平均分子量(Mn)は重合反応時間の経過とともに増大した。
ガスクロマトグラフィーより求めた、重合溶液中のモノマー消費量から計算されるポリマー中のアクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、スチレン(St)の各モノマーのモル比率を表1に示す。
【0228】
【表1】

【0229】
表1から明らかな通り、ポリ酢酸ビニルと連結したブロックコポリマーは、その数平均分子量の増加とともに組成が変化し、このブロックコポリマー中のモノマー組成が、末端に向かって変化している(グラジエントである)ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)であることを確認した。またそのポリマーの数平均分子量は16300、分子量分布(Mw/Mn)は1.63であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0230】
次いで、コンデンサー、撹拌機及び温度計付きの反応釜中でメタノール276gとテトラヒドロフラン552g、水138gの混合溶媒に上記の重合溶液502gを溶解した後、60℃まで昇温し、5N水酸化ナトリウム728g加え、65℃で7時間反応を行った。反応終了後、上澄み液を除去して得られたポリマー塊にテトラヒドロフラン(THF)550g、水140gを加え、懸濁させた後に、メタノール280gを加えてポリマーを沈殿させた。再度上澄み液を除去し、水300gを加えた後、酢酸で中和し、溶液を90℃まで加熱し、残THFとメタノールを留去し、ポリマー水溶液を得た。その後、限外濾過膜(ACP−1050旭化成株式会社製)を用いてポリマー水溶液から不純物を除去した。限外濾過後のポリマー水溶液を濃縮、乾固することにより、ポリビニルアルコール系ブロックと連結したコポリマーがグラジエントコポリマーであるポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)を得た。
このポリビニルアルコール系ブロックコポリマーにおいて、ポリビニルアルコール系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0231】
上記のブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位、スチレン単位の組成比は、25:26:21:2:21:5(モル比)であった。またポリマーの数平均分子量は14000、分子量分布(Mw/Mn)は1.59であった。
【0232】
[非イオン性親水基を有するポリマー(II)の合成]
<合成例2>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−A)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15.6gを仕込み、溶媒としてメタノール1722.5g、モノマーとしてスチレン324.9g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)751.9g、アクリル酸112.3gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6.5gをメタノール65gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0233】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液312.3gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリマーR−Aを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる、数平均分子量は8000、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0234】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、52/19/29(モル比)であった。
【0235】
<合成例3>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−B)の合成
【0236】
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.7gを仕込み、溶媒としてメタノール240g、モノマーとしてスチレン60.8g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ブレンマーPME−200・日本油脂(株)製)89.0g、アクリル酸45.3gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.5gをメタノール15gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0237】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液126gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリマーを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は5000、分子量分布(Mw/Mn)は2.7であった。
【0238】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、39/19/42(モル比)であった。
【0239】
<合成例4>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−C)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.6gを仕込み、溶媒としてメタノール232g、モノマーとしてスチレン67.2g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ブレンマーPME−200・日本油脂(株)製)93.3g、アクリル酸39.8gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.6gをメタノール15gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0240】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液110.5gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固しポリマーを得た。このポリマーの数平均分子量は4700、分子量分布(Mw/Mn)は3.0であった。
【0241】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、42/20/38(モル比)であった。
【0242】
<合成例5>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−D)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.3gを仕込み、溶媒としてメタノール210g、モノマーとしてスチレン75.0g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ブレンマーPME−200・日本油脂(株)製)99.3g、アクリル酸25.9gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.6gをメタノール15gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0243】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液72gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリマーを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は5000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であった。
【0244】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、47/21/32(モル比)であった。
【0245】
[その他のポリマーの合成]
<合成例6>
ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−スチレン)(ポリマーP−A)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15.75gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン1922.0g、モノマーとしてアクリル酸381.9g、スチレン368.1gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を70℃まで上昇させた後、70℃で8時間保持し、重合反応を行った。
【0246】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液を、水酸化ナトリウムが仕込みアクリル酸に対してモル比で1当量になるように添加した後、イオン交換水を重合液に対して重量比で2倍量添加した。エバポレーターを用いて残存スチレン及び重合溶媒であるTHFを減圧留去し、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固することにより、ポリマーを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる、数平均分子量は8700、分子量分布(Mw/Mn)は1.55であった。またH−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、スチレン単位の組成比は、50:50(モル比)であった。
【0247】
[非イオン性親水基を有するポリマー(II)の合成]
<合成例7>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−E)の合成
内部が窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.8gを仕込み、溶媒としてメタノール1817.2g、モノマーとしてスチレン455.0g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)805.0g、アクリル酸49.0gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7.0gをメタノール70gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0248】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液95.2gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリマーR−Eを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる、数平均分子量は10000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0249】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、61/20/19(モル比)であった。
【0250】
<合成例8>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−F)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.57gを仕込み、溶媒としてメタノール278g、モノマーとしてスチレン41.28g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)153.01g、アクリル酸5.71gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で5時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.07gをメタノール10gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に3時間重合反応を行った。
【0251】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液13.18gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は12800、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0252】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、54/29/17(モル比)であった。
【0253】
<合成例9>
ポリ(スチレン−co−イソボルニルメタクリレート−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−G)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.57gを仕込み、溶媒としてメタノール278g、モノマーとしてスチレン62.04g、イソボルニルメタクリレート11.04g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)119.77g、アクリル酸7.15gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で5時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.07gをメタノール9gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に3時間重合反応を行った。
【0254】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液16.47gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−イソボルニルメタクリレート−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は12500、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0255】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒とした13C−NMRにより確認した。13C−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、イソボルニルメタクリレート単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、63/6/21/10(モル比)であった。
【0256】
<合成例10>
ポリ(スチレン−co−ビニルピロリドン−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−H)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.77gを仕込み、溶媒としてメタノール200g、モノマーとしてスチレン50.4g、ビニルピロリドン60.0g、アクリル酸40.0gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で7時間重合反応を行った。
【0257】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液124.17gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−ビニルピロリドン−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は15300、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であった。
【0258】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、ビニルピロリドン単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、50/8/42(モル比)であった。
【0259】
<合成例11>
ポリ(アクリル酸イソボルニル−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−I)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール135g、THF315g、モノマーとしてアクリル酸イソボルニル71.62g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)82.96g、アクリル酸45.42gを加え、室温から60℃まで昇温した。触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9409gを加え、60℃で2時間重合反応を行った。内温を65℃まで上昇させ、さらに2時間反応を行った。
【0260】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら14重量%水酸化ナトリウムメタノール溶液163.3gを加えて中和した。中和液をヘキサンに注いで再沈殿させ、得られた沈殿を乾燥させ租ポリマーを得た。租ポリマーを水に溶解させ、限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(アクリル酸イソボルニル−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は7600、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0261】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸イソボルニル単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、29/15/56(モル比)であった。
【0262】
<合成例12>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−J)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.6gを仕込み、溶媒としてメタノール700g、モノマーとしてスチレン349.9g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)809.8g、及びアクリル酸121.0gを仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。その後、触媒である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.6gをメタノール56gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0263】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液78.4gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、水溶性のポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は15000、重量平均分子量は31000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
【0264】
このランダムコポリマーの構造を、d−DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒としたH−NMRにより確認したところ、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、56/21/23(モル比)=33/58/9(重量比)であった。
【0265】
<合成例13>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−K)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.7gを仕込み、溶媒としてメタノール422.4g、モノマーとしてスチレン101.5g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)378.7g、及びアクリル酸14.2gを仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで50分かけて上昇させ、70℃で4時間重合反応を行った。その後、触媒である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.7gをメタノール17.0gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に6時間重合反応を行った。
【0266】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液32.7gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、水溶性のポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は18550、重量平均分子量は33000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0267】
このランダムコポリマーの構造を、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認したところ、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、60/35/5(モル比)=26/72/2(重量比)であった。
【0268】
<合成例14>
ポリ(スチレン−co−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−L)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.85gを仕込み、溶媒としてメタノール416g、モノマーとしてスチレン63.04g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド43.50g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)182.55g、アクリル酸10.90gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で5時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.60gをメタノール14gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に3時間重合反応を行った。
【0269】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液28.70gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる、数平均分子量は10100、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0270】
このランダムコポリマーの構造は、DOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、47/13/22/18(モル比)であった。
【0271】
<合成例15>
ポリ(スチレン−co−N−ビニルピロリドン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−M)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.85gを仕込み、溶媒としてメタノール416g、モノマーとしてスチレン63.04g、N−ビニルピロリドン42.25g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)183.44g、アクリル酸10.96gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で5時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.60gをメタノール14gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に3時間重合反応を行った。
【0272】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液29.00gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−N−ビニルピロリドン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は10500、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であった。
【0273】
このランダムコポリマーの構造は、DOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、N−ビニルピロリドン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、47/38/4/11(モル比)であった。
【0274】
<合成例16>
ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)(ポリマーR−N)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.31gを仕込み、溶媒としてメタノール250g、モノマーとしてスチレン69.62g、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ライトアクリレート130A・共栄社化学(株)製)99.26g、アクリル酸11.12gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで30分かけて上昇させ、70℃で5時間重合反応を行った。触媒2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.96gをメタノール9gに溶かした溶液を反応系中に添加し、更に3時間重合反応を行った。
【0275】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、攪拌しながら5Nの水酸化ナトリウム水溶液25.59gを加えた後、エバポレーターでメタノールを除去しながら蒸留水を加水することにより、租ポリマー水溶液を得た。租ポリマー水溶液より限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固し、ポリ(スチレン−co−メトキシポリエチレングリコールアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められる数平均分子量は13100、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0276】
このランダムコポリマーの構造は、d−DMSOを溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のスチレン単位、メトキシポリエチレングリコールアクリレート単位、アクリル酸ナトリウム単位の組成比は、65/17/18(モル比)であった。
【0277】
[ビニルアルコール系ポリマー(I)の合成]
<合成例17>
ポリ(スチレン−co−アクリル酸ナトリウム−g−ポリビニルアルコール)(ポリマーV−A)の合成
内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール200g、モノマーとして酢酸ビニル800gを仕込み、室温から60℃まで昇温した。昇温後、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール0.52gをメタノール16.72gに溶かした溶液、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.32gをメタノール16.77gに溶かした溶液を加えて反応を開始した。反応開始後、温度を60℃に保ったまま、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール16.35gをメタノール200gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで冷却し、反応を終了させた。反応終了後、反応液をヘキサンに注ぎ沈殿させ、真空乾燥し、末端に水酸基を有するポリ酢酸ビニルを得た。NMRから求められた、ポリ酢酸ビニルの数平均分子量は、2900であった。
【0278】
次いで、コンデンサー、撹拌機及び温度計付きのフラスコにポリ酢酸ビニルを仕込み、トルエン375gに溶解させ、触媒としてピリジン69.53gを加えて氷冷した。フラスコを氷冷したままメタクリル酸クロライド68.61gをトルエン51.60gに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、フラスコを室温に戻し、更に5時間反応を継続させた。その後、メタノール17.27gを加えて反応を終了させた。生成した塩を濾過により除去した後、濾液にトルエンを加えながらエバポレーションで濃縮後、氷冷にて静置し、溶解していた塩を析出させ、再度濾過して除去した。濾液をトルエンで希釈した溶液をヘキサンに注いで再沈殿させ、得られた沈殿をアセトンに再溶解させた後再度ヘキサンに再沈殿し、真空乾燥させることで、末端にメタクリロイル化ポリ酢酸ビニルマクロモノマーを得た。H−NMR測定で、末端ビニル基ピークを検出されたことにより末端メタクリロイル化を確認した。
【0279】
次いで、内部が窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7.84gを仕込み、溶媒としてTHF171g、モノマーとしてスチレン186.2g、アクリル酸41.38g、マクロモノマーとして前記の末端アクリロイル化ポリ酢酸ビニルマクロモノマーの50重量%THF溶液435.65gを仕込み、室温から60℃まで1時間で昇温し、さらに8時間重合反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、反応液をメタノール/水混合溶媒中に注いでポリマーを沈殿させ、回収した。この操作を三回繰り返すことで未反応のモノマー及びマクロモノマーを除去し、ポリ(スチレン−co−アクリル酸−g−ポリ酢酸ビニル)を得た。H−NMRにより求められたこのランダムコポリマーの中のスチレン単位、アクリル酸単位、酢酸ビニル単位の組成比は、61/37/2(モル比)であった。
【0280】
次いで、コンデンサー、撹拌機及び温度計付きのフラスコに上記のランダムコポリマーを仕込み、溶媒としてメタノール362.88g、THF36.34gを加えて溶解させ、15重量%水酸化ナトリウムメタノール溶液103.32gを加え、室温で2時間反応を行った。反応液をヘキサン/アセトン混合溶媒中へ注いでポリマーを沈殿させ、70℃で真空乾燥することにより、租ポリマーを得た。得られた租ポリマーを水に溶解させ、限外濾過処理にて不純物を除去後、ポリ(スチレン−co−アクリル酸ナトリウム−g−ポリビニルアルコール)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より求められた数平均分子量は78500、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であった。
【0281】
[実施例及び比較例]
以下に、合成例1〜5及び合成例7〜17で得られた本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー及び非イオン性親水基を有するポリマーと、合成例6で得られた本発明外のポリマーを用いた、水性顔料分散液の製造例を示す。尚、以下の実施例1〜22、及び比較例1〜12においては、先述の合成例1で得られたPVA系ブロックコポリマーを、B−Aと表記し、合成例2〜5にて得られた非イオン性親水基を有するポリマーについては、各々、R−A〜R−D、合成例7〜16で得られたポリマーについては、各々、R−E〜R−N、合成例17で得られたポリマーについてはV−Aと表記する。合成例6で得られた本発明外のランダムコポリマーについては、P−Aと表記する。
【0282】
[実施例1]
カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−A水溶液(R−A濃度10.5重量%)106.7g、脱イオン水131.3gを混合し、ホモミキサーとしては上記においても同様のものを用いた。ホモミキサー(オムニホモジナイザー GLH,ゼネレーター G20−195ST,OMNI International社製)で10000rpmにて10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)14.0gを添加した後、更にビーズミルを用いて60℃で3時間分散後、40℃で1時間分散して分散液を得た。
【0283】
上記分散液を500mlトールビーカーに秤量し、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ。超音波ホモジナイザーとしては以下においても同様のものを用いた。)で30分間分散して顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Aとした。この顔料分散液Aを用いて、以下の処方により、インクを製造した。
【0284】
(記録液の調製)
顔料分散液A 3.75g
脱イオン水 4.00g
2−ピロリドン 0.22g
グリセリン 0.57g
トリエチレングリコール 0.48g
エチレン尿素 0.88g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.1g
【0285】
上記成分を混合し、15分マグネチックスターラーで撹拌後、30分間超音波分散処理をして記録液Aを得た。この記録液Aについて、以下の方法で特性を評価した。結果を表2に示す。
なお、プリンターとして、インクジェット記録方式プリンタ(キヤノン社製BJ−S700)を用い、印字用紙として市販の普通紙(キヤノン(株)社製GF−500)及び光沢紙(キヤノン(株)社製SP−101)を用いた。
【0286】
(a)記録液の安定性
記録液について、調製直後の顔料の分散粒径及び粘度と、70℃で15時間保持した後の顔料の分散粒径及び粘度を測定した。保持後の粒径及び粘度の増大が小さいほど安定である。
顔料の分散粒径は、記録液を脱イオン水で10000倍に希釈し、大塚電子(株)FPAR−1000で希釈用プローブを使用して測定し、平均粒径の値はCumulant法により算出した。また、粘度はレオメーター(REOLOGICA AB Insturuments;VAR−100;コーン1°/55φ)を使用して測定し、剪断速度100/秒の時の値を読み取った。
【0287】
(b)記録画像の光学濃度(OD値)測定
記録液をカートリッジに充填した後、プリンターで普通紙(キャノン(株)社製GF500)に印字を行い、1日間室温で乾燥させたもののOD値を測定した。測定は、マクベス濃度計(Gretag−Macbeth AG:SpectroEye)を用いて行った。
【0288】
(c)記録画像のグロス測定
記録液で印字した光沢紙(キヤノン(株)社製SP−101)を、1日間室温で乾燥させたもののグロス及びヘーズを測定した。グロス測定及びヘーズ測定は、Haze−Glossメーター(BYK Gardner社製 Cat.No.4601)を用いて行い、グロス値は20°の測定値を採用した。一般にグロスが高くなると、ヘーズも高くなる傾向があるため、それぞれの値の比較だけでは、光沢性の優劣がつけにくいため、ヘーズ/グロスの値の比較を行った。この数値が小さいほど光沢性が高いことを示す。
【0289】
[実施例2]
R−A水溶液の代りにR−B水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−B水溶液(R−B濃度10.2重量%)109.8g、脱イオン水128.2gを混合し、その他は実施例1と同様な処方で分散し、顔料分散液Bを得た。この顔料分散液Bを用いて、実施例1と同様に記録液Bを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0290】
[実施例3]
R−A水溶液の代りにR−C水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−C水溶液(R−C濃度11.1重量%)100.9g、脱イオン水137.1gを混合し、その他は実施例1と同様な処方で分散し、顔料分散液Cを得た。この顔料分散液Cを用いて、実施例1と同様に記録液Cを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0291】
[実施例4]
R−A水溶液の代りにR−D水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−D水溶液(R−D濃度12.1重量%)92.6g、脱イオン水145.4gを混合し、その他は実施例1と同様な処方で分散し、顔料分散液Dを得た。この顔料分散液Dを用いて、実施例1と同様に記録液Dを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0292】
[実施例5]
R−A水溶液の代りにR−E水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−E水溶液(R−E濃度10.5重量%)106.7g、脱イオン水131.3gを混合し、その他は実施例1と同様な処方で分散し、顔料分散液Lを得た。この顔料分散液Lを用いて、実施例1と同様に記録液Lを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0293】
[実施例6]
R−A水溶液の代りにR−E水溶液を用い、焼成品カーボンブラック(#2300B(三菱化学株式会社製)を窒素雰囲気下で1200℃、1ヶ月間焼成;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−E水溶液(R−E濃度10.5重量%)106.7g、脱イオン水131.3gを混合し、その他は実施例1と同様な処方で分散し、顔料分散液Mを得た。この顔料分散液Mを用いて、実施例1と同様に記録液Mを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0294】
[実施例7]
焼成品カーボンブラック(#2300B(三菱化学株式会社製)を窒素雰囲気下で1200℃、1ヶ月間焼成;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−E水溶液(R−E濃度10.5重量%)93.3g、脱イオン水130.7gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で4時間分散し、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)28.0gを添加した後、更にビーズミルを用いて60℃で3時間分散後、40℃で1時間分散して分散液を得た。
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で30分間分散して顔料分散液Nを得た。この顔料分散液Nを用いて、実施例1と同様に記録液Nを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0295】
[実施例8]
焼成品カーボンブラック(#2300B(三菱化学株式会社製)を窒素雰囲気下で1200℃、1ヶ月間焼成;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−F水溶液(R−F濃度13.3重量%)84.2g、脱イオン水153.8gを混合し、ホモミキサー(CLEARMIX CLM−0.8S;エムテクニック(株)社製)で15000rpmで60分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて60℃で4時間分散し、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)14.0gを添加した後、更にビーズミルを用いて60℃で3時間分散後、40℃で1時間分散して分散液を得た。
【0296】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで90分間分散して顔料分散液Pを得た。この顔料分散液Pを用いて、実施例1と同様に記録液Pを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0297】
[実施例9]
R−F水溶液の代りにR−G水溶液を用い、焼成品カーボンブラック(#2300B(三菱化学株式会社製)を窒素雰囲気下で1200℃、1ヶ月間焼成;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−G水溶液(R−G濃度13.2重量%)84.8g、脱イオン水153.2gを混合し、その他は実施例8と同様な処方で分散し、顔料分散液Qを得た。
この顔料分散液Qを用いて、実施例1と同様に記録液Qを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0298】
[実施例10]
B−A水溶液の代りにV−A水溶液(V−A濃度10.9重量%)12.8gを用い、最初に仕込む脱イオン水を146.6gに変更した以外は、実施例4と同様な処方で分散し、顔料分散液Rを得た。
この顔料分散液Rを用いて、実施例1と同様に記録液Rを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0299】
[実施例11]
カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−H水溶液(R−H濃度10.8重量%)13.0g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)112.0g、脱イオン水127gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散し、分散液を得た。
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで30分間分散して顔料分散液Sを得た。この顔料分散液Sを用いて、実施例1と同様に記録液Sを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0300】
[実施例12]
R−H水溶液の代りにR−I水溶液(R−I濃度18.9)7.4gを用い、最初に仕込む脱イオン水を132.6gに変更した以外は、実施例11と同様な処方で分散し、顔料分散液Tを得た。この顔料分散液Tを用いて、実施例1と同様に記録液Tを調製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0301】
[実施例13]
C.I.ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−J水溶液(R−J濃度10.2重量%)109.8g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)14.0g、脱イオン水128.2gを混合し、ホモミキサーで15000rpmで60分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0302】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで180分間分散して顔料分散液Uを得た。この顔料分散液Uを用いて、以下の処方としたこと以外は実施例1と同様にインク(記録液U)を製造した。
【0303】
(記録液の調製)
顔料分散液U 3.75g
脱イオン水 4.40g
2−ピロリドン 0.51g
グリセリン 0.75g
1,6−ヘキサンジオール 0.49g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.10g
【0304】
この記録液Uについて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0305】
[実施例14]
R−J水溶液の代りにR−K水溶液(R−K濃度12.9重量%)153.0gを用い、脱イオン水を85.0gに変更した以外は、実施例13と同様な処方で分散し、顔料分散液Vを得た。
この顔料分散液Vを用いて、実施例13と同様に記録液Vを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0306】
[実施例15]
R−J水溶液の代りにR−L水溶液(R−L濃度18.3重量%)86.8gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を42.0g、脱イオン水を123.2gに変更した以外は、実施例13と同様な処方で分散し、顔料分散液Wを得た。
この顔料分散液Wを用いて、実施例13と同様に記録液Wを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0307】
[実施例16]
R−J水溶液の代りにR−M水溶液(R−M濃度16.9重量%)66.3gを用い、脱イオン水を171.7gに変更した以外は、実施例13と同様な処方で分散し、顔料分散液Xを得た。
この顔料分散液Xを用いて、実施例13と同様に記録液Xを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0308】
[実施例17]
C.I.ピグメントイエロー−74(大日精化工業株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−E水溶液(R−E濃度10.5重量%)41.2g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)56.0g、脱イオン水154.8gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0309】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで120分間分散して顔料分散液Yを得た。この顔料分散液Yを用いて、実施例13と同様に記録液Yを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0310】
[実施例18]
C.I.ピグメントイエロー−74の代わりにC.I.ピグメントイエロー−155(Ink Jet Yellow 4G VP2532;Clariant Inc.製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−E水溶液の代りにR−A水溶液(R−A濃度10.5重量%)26.7gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を70.0g、脱イオン水を155.3gに変更した以外は、実施例17と同様な処方で分散し、顔料分散液Zを得た。
この顔料分散液Zを用いて、実施例13と同様に記録液Zを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0311】
[実施例19]
R−A水溶液の代りにR−E水溶液(R−E濃度10.5重量%)26.7gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を84.0g、脱イオン水を141.3gに変更した以外は、実施例18と同様な処方で分散し、顔料分散液AAを得た。
この顔料分散液AAを用いて、実施例13と同様に記録液AAを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0312】
[実施例20]
R−A水溶液の代りにR−F水溶液(R−F濃度13.3重量%)42.1gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を42.0g、脱イオン水を167.9gに変更した以外は、実施例18と同様な処方で分散し、顔料分散液ABを得た。
この顔料分散液ABを用いて、実施例13と同様に記録液ABを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0313】
[実施例21]
C.I.ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−N水溶液(R−N濃度12.9重量%)43.4g、脱イオン水166.6gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて60℃で4時間分散し、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)42.0gを添加した後、更にビーズミルを用いて60℃で3時間分散後、40℃で1時間分散して分散液を得た。
【0314】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで180分間分散して顔料分散液ACを得た。この顔料分散液ACを用いて、実施例13と同様に記録液ACを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0315】
[実施例22]
キナクリドン顔料(CROMOPHTAL Jet Magenta 2BC;Ciba Inc.製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−L水溶液(R−L濃度12.9重量%)43.4g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)42.0g、脱イオン水166.6gを混合し、ホモミキサーで15000rpmで30分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて60℃で7時間分散後、40℃で1時間分散して分散液を得た。
【0316】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで120分間分散して顔料分散液ADを得た。この顔料分散液ADを用いて、実施例13と同様に記録液ADを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0317】
[比較例1]
カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−A水溶液(R−A濃度10.5重量%)106.7g、脱イオン水145.3gを混合し、ホモミキサーで10分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0318】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例1におけると同様に分散して顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Eとした。この顔料分散液Eを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Eを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0319】
[比較例2]
R−A水溶液の代りにR−B水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−B水溶液(R−B濃度10.2重量%)109.8g、脱イオン水142.2gを混合した以外は、比較例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Fを得た。この顔料分散液Fを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Fを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0320】
[比較例3]
R−A水溶液の代りにR−C水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−C水溶液(R−C濃度11.1重量%)100.9g、脱イオン水151.1gを混合した以外は、比較例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Gを得た。この顔料分散液Gを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Gを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0321】
[比較例4]
R−A水溶液の代りにR−D水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−D水溶液(R−D濃度12.1重量%)92.6g、脱イオン水159.4gを混合した以外は、比較例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Hを得た。この顔料分散液Hを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Hを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0322】
[比較例5]
R−A水溶液の代りにP−A水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、P−A水溶液(P−A濃度16.3重量%)68.7g、脱イオン水183.3gを混合した以外は、比較例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Iを得た。この顔料分散液Iを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Iを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0323】
[比較例6]
R−A水溶液の代りにP−A水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、P−A水溶液(P−A濃度16.3重量%)68.7g、脱イオン水169.3gを混合した以外は、実施例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Jを得た。この顔料分散液Jを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Jを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0324】
[比較例7]
R−A水溶液の代りにB−A水溶液を用い、カーボンブラック(#990 三菱化学株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)112.0g、脱イオン水140.0gを混合した以外は、比較例1と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Kを得た。この顔料分散液Kを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Kを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0325】
[比較例8]
カーボンブラックとして#990の代わりに焼成品カーボンブラック(#2300B(三菱化学株式会社製)を窒素雰囲気下で1200℃、1ヶ月間焼成;パウダー;固形分量100重量%)を用いた以外は、比較例6と同様な処方で分散を行い、顔料分散液Oを得た。この顔料分散液Oを用いて、実施例1と同様な処方で記録液Oを調製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0326】
[比較例9]
C.I.ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、P−A水溶液(P−A濃度16.3重量%)103.1g、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)14.0g、脱イオン水134.9gを混合し、ホモミキサーで15000rpmで60分間予備分散後、0.5mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で2時間分散して分散液を得た。
【0327】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで120分間分散して顔料分散液AEを得た。この顔料分散液AEを用いて、実施例13と同様に記録液AEを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0328】
[比較例10]
C.I.ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;パウダー;固形分量100重量%)28.0g、R−L水溶液(R−L濃度12.9重量%)86.8g、脱イオン水165.2gを混合し、ホモミキサーで15000rpmで60分間予備分散後、0.3mmφのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0329】
上記分散液を実施例1と同様にして、超音波ホモジナイザーで120分間分散して顔料分散液AFを得た。この顔料分散液AFを用いて、実施例13と同様に記録液AFを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0330】
[比較例11]
R−A水溶液の代りにP−A水溶液(P−A濃度16.3重量%)34.4gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を42.0g、脱イオン水を175.6gに変更した以外は、実施例18と同様な処方で分散し、顔料分散液AGを得た。
この顔料分散液AGを用いて、実施例13と同様に記録液AGを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0331】
[比較例12]
R−N水溶液の代りにP−A水溶液(P−A濃度16.3重量%)68.7gを用い、B−A水溶液(B−A濃度10.0重量%)を14.0g、脱イオン水を169.3gに変更した以外は、実施例21と同様な処方で分散し、顔料分散液AHを得た。
この顔料分散液AHを用いて、実施例13と同様に記録液AHを調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0332】
【表2】

【0333】
【表3】

【0334】
表2より次のことが明らかである。
比較例1はポリマー(I)を用いず、ポリマー(II)のR−Aのみを用いたものであるが、OD値が若干低く、ヘーズ/グロスが高い。これに対して、R−Aにポリマー(I)のB−Aを併用した実施例1では、この比較例1に比べてOD値が高く、またヘーズ/グロスは低くなっている。この実施例1は、B−Aのみを用いた比較例7に比べても、OD値、ヘーズ/グロスが良好な結果が得られている。
【0335】
同様に実施例2,3もポリマー(I)とポリマー(II)の一方のみを用いた比較例2,3,7に比べて良好な結果が得られている。
【0336】
実施例4、10〜12は、ポリマー(I)とポリマー(II)の併用で普通紙のOD値がやや低下しているが、光沢紙では、高いグロスと低いヘーズを達成しており、ヘーズ/グロスはとりわけ低く、対応する比較例4,7に比べて印字特性の向上効果が非常に高いことが分かる。
【0337】
なお、P−Aのみを用いた比較例5は、OD値、ヘーズ/グロスがともに実施例1〜4に比べて非常に劣る。また、ポリマー(I)のB−Aと、ポリマー(II)以外のポリマーP−Aとを併用した比較例6は、これらを併用していないもの、即ち、ポリマーP−Aのみの比較例5やポリマーB−Aのみの比較例7に比べて、ヘーズ/グロスは低くなっているもののOD値が低くなっている。
【0338】
実施例5〜9は、ポリマー(I)とポリマー(II)の併用により光沢紙においてさらに顕著な高グロス、低ヘーズを示しており、ヘーズ/グロスも極めて低い値を示している。実施例6と、ポリマー(II)をP−Aに置き換えた比較例8とを比較しても、その印字特性の向上効果は極めて高い。
【0339】
実施例13〜22は、カラー有機顔料に対して、ポリマー(I)とポリマー(II)を併用したものだが、ポリマー(I)のB−Aと、ポリマー(II)以外のポリマーP−Aとを併用した比較例9、11、12と比較して、いずれもそれぞれの顔料に関して、グロスが非常に高い値を示しており、かつ、ヘーズ/グロスは非常に低い値を示していることから、顕著な光沢性の向上が認められる。
【0340】
比較例10はポリマー(II)のR−Lのみを用いたものであるが、グロスが高く、ヘーズ/グロスは低い値を示しており良好な光沢性を示しているが、記録液の安定性が低く、同じポリマー(II)のR−Lとポリマー(I)のB−Aを併用した実施例15のように高い光沢性と記録液の安定性の両立がなされていない。
【0341】
以上の結果から、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)により分散された顔料分散液を使用した記録液は安定性に優れ、それぞれのポリマーを単独で使用した分散液で調製した記録液と比較して、得られる印刷物は印字濃度、グロス、ヘーズといった印字特性がより一層優れた性能を示すことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に、
1)顔料と、
2)下記一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位と疎水性基を有するビニルアルコール系ポリマー(I)と、
3)非イオン性親水基を有するポリマー(II)と
を含有することを特徴とする水性顔料分散液。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表す)
【請求項2】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)が、イオン性解離基を有することを特徴とする請求項1に記載の水性顔料分散液。
【請求項3】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)が、ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性顔料分散液。
【請求項4】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)が、下記一般式(2)で表されるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項3に記載の水性顔料分散液。
【化2】

(式中、Aは一般式(1)で表されるビニルアルコール構造単位を含むポリビニルアルコール系ブロックを示し、
Bは疎水性基を有するモノマー構造及びイオン性解離基を有するモノマー構造を含むブロックであって、Bは疎水性セグメントB’と、ブロックA、セグメントB’以外の親水性又は疎水性セグメントB''とを含むブロックを示し、
、X、X及びXは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基を示し、
m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【請求項5】
前記一般式(2)におけるポリビニルアルコール系ブロックAの数平均分子量が、500以上100000以下であることを特徴とする請求項4に記載の水性顔料分散液。
【請求項6】
前記ブロックBにおけるセグメントB’及びB''が、Aに近い方からB’、B''の順に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の水性顔料分散液。
【請求項7】
前記ブロックBがグラジエントコポリマー構造であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコール系ブロックAの数平均分子量が500以上50000以下、ブロックBの数平均分子量が500以上50000以下であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項9】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)中の疎水性基が芳香族系化合物由来の疎水性基であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項10】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)中のイオン性解離基がカルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の酸性基のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項2ないし9のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項11】
前記非イオン性親水基を有するポリマー(II)が、非イオン性親水基を有するモノマー構造を1構成単位として有することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項12】
前記非イオン性親水基を有するポリマー(II)が、次の(a)〜(c)のモノマー構造を構成単位として有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の水性顔料分散液。
(a)非イオン性親水基を有するモノマー構造
(b)芳香族系疎水性基を有するモノマー構造
(c)イオン性解離基を有するモノマー構造
【請求項13】
前記非イオン性親水基を有するポリマー(II)中の非イオン性親水基が、ポリオキシアルキレン基を含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項14】
前記非イオン性親水基を有するモノマー構造が、ビニル系モノマー構造であることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項15】
前記非イオン性親水基を有するポリマー(II)がランダムコポリマーであることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項16】
前記ビニルアルコール系ポリマー(I)と前記非イオン性親水基を有するポリマー(II)との重量比がポリマー(I):ポリマー(II)=500:1〜1:500であることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項17】
前記顔料と、ビニルアルコール系ポリマー(I)及び非イオン性親水基を有するポリマー(II)の総和との重量比が1:0.01〜1:2であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の水性顔料分散液。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の水性顔料分散液を含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項19】
請求項18に記載のインク組成物の液滴をインクジェットヘッドから吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2009−67980(P2009−67980A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67996(P2008−67996)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】