説明

水性顔料分散液

本発明は、少なくとも1つの分散顔料、水性担体、および末端オレフィン性不飽和を有する少なくとも1つのマクロモノマー(1)とオレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)との重合によって調製されたコポリマーを含む水性顔料分散液であって、マクロモノマー(1)は、1a)5〜100重量%の少なくとも1つの重合酸官能性不飽和モノマー、1b)場合によっては少なくとも1つの重合ヒドロキシ官能性不飽和モノマー、および場合によっては1c)少なくとも1つの別の重合オレフィン性不飽和モノマーを含み、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、2a)5〜80重量%の少なくとも1つの不飽和ビニル芳香族モノマー、2b)水素原子と結合していない環窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する少なくとも1つの極性複素環基を含む、5〜50重量%の少なくとも1つのビニルモノマー、および場合によっては2c)他のオレフィン性不飽和モノマーを含む、水性顔料分散液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性顔料分散液、およびこれらの顔料分散液を含有する水系コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水分散性コポリマー、および水性コーティング組成物における顔料分散剤としてのその使用は、当該技術分野でよく知られている。
【0003】
例えば、米国特許第5,231,131号明細書には、疎水性モノマーを含む疎水性ポリマー主鎖と、親水性マクロモノマーの側鎖とを含むグラフトコポリマーをベースとする水性顔料分散剤が記載されている。特に有用なグラフトコポリマーは、重合したメチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、および場合によってはアクリル酸またはアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の主鎖を有する。
【0004】
欧州特許出願公開第1 197 537号明細書には、さらにメタクリル酸エステルおよびスチレン、ならびに場合によってはメタクリル酸から得られたマクロモノマーと、アミノ基、第四級アンモニウム塩基、およびスルホン酸基から選択されるイオン性官能基を有するモノマー、ならびにポリオキシアルキレン鎖を有するモノマーを含む、モノマーをベースとするポリマー主鎖とを含むグラフトコポリマーをベースとする水性顔料分散樹脂が記載されている。
【0005】
そのような既知の顔料分散剤はすべて、共通の欠点を有している。すでに開示されているグラフトコポリマーをベースとする顔料分散液は、不十分な着色度、特に黒色コーティングの場合に不十分な漆黒度のコーティングをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、高い色強度を有するコーティング、特に高い漆黒度を有するコーティングをもたらす顔料含有コーティング組成物、特に黒色顔料を含有するコーティング組成物を調製する際に使用することができる、高い濡れ性および分散安定性を有する顔料分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの分散顔料、水性担体、および少なくとも1つのコポリマーを含む水性顔料分散液であって、前記コポリマーは、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、最も好ましくは30〜70重量%の、末端オレフィン性不飽和を有する少なくとも1つのマクロモノマー(1)と、90〜10重量%、好ましくは80〜20重量%、最も好ましくは70〜30重量%のオレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)を共重合することによって調製され、ここで重量%は(メタ)アクリル酸コポリマーの総量を基準にし、合計100重量%になり、マクロモノマー(1)は、
1a)5〜100重量%の少なくとも1つの重合酸官能性不飽和モノマーと、
1b)場合によっては少なくとも1つの重合ヒドロキシ官能性不飽和モノマーと、
1c)場合によっては、モノマー1a)および1b)と異なる少なくとも1つの重合オレフィン性不飽和モノマーと
を含み、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、
2a)5〜80重量%の少なくとも1つの不飽和ビニル芳香族モノマーと、
2b)水素原子と結合していない環窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する、5〜50重量%の少なくとも1つの極性複素環基を含む少なくとも1つの不飽和ビニルモノマーと、
2c)場合によっては、モノマー2a)および2b)と異なる少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーと
を含み、
ここで成分1a)の重量%はマクロモノマー(1)の総量を基準にし、成分2a、2b、および2cの重量%は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる、水性顔料分散液である。
【0008】
好ましくは、コポリマーの重量平均分子量Mwは3,000〜100,000、最も好ましくは5,000〜70,000であり、酸価は20〜300mgKOH/g、最も好ましくは30〜200mgKOH/gであり、ヒドロキシ価は、0〜300mgKOH/g、最も好ましくは20〜200mgKOH/gである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
明確にするため別々の実施形態の文脈に上述および後述された本発明のいくつかの特徴が、組み合わされて単一の実施形態に記載されることもあり得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈に記載された本発明の様々な特徴が、別々に、または任意の副次的な組合せで記載されることもあり得る。さらに、単数形の言葉は、文脈に複数でないことが具体的に記載されていない限り、複数形も包含することができる(例えば、「a」および「an」は、1つ、または1つもしくは複数を意味することができる)。
【0010】
本明細書に指定される様々な範囲の数値の使用は、特に明示されない限り、記載された範囲内の最小値および最大値が共に「約」という言葉が前置きされたかのように近似値として記載される。したがって、記載された範囲の上下のわずかな差異は、その範囲内の値と実質的に同じ結果を実現するために使用することができる。さらに、これらの範囲の開示においては、最小値と最大値の間のあらゆる値を包含し、範囲の最小端点および最大端点を含む連続した範囲を意図する。
【0011】
ここでかつ以下で使用される(メタ)アクリルという用語は、メタクリルおよび/またはアクリルを意味するように解釈されるべきである。
【0012】
特に記載のない限り、本明細書に記載されるすべての分子量(数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの両方)は、ポリスチレンを標準として使用したGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定する。
【0013】
漆黒度は、黒度、すなわち黒色顔料で実現可能な黒色表面の着色度を表す。漆黒度は、黒色着色の色深度を評価するときの主観的な感覚印象である。漆黒度は、生成物の特性ではなく、系の特性であり、例えば分散性バインダーに依存する。
【0014】
一般に、光屈折および光拡散の程度が低いほど、着色度が高くなる。色強度は、黒色顔料が他の着色構成要素を暗黒化または黒色化することができる程度である。漆黒度および色強度は、顔料の一次粒子径が低下するにつれて増大する傾向がある。様々な漆黒度測定方法を使用することができる。通常、顔料製造業者は独自の方法を提供する。
【0015】
本発明による顔料分散剤として使用されるコポリマーは、水溶性または水分散性である。コポリマーは、重合のための末端オレフィン性不飽和を有する少なくとも1つのマクロモノマーの存在下で、エチレン性不飽和モノマーの混合物の共重合によって生成される。得られたコポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの混合物によって生成された主鎖から構成され、その主鎖には複数のマクロモノマー「アーム」または側鎖が結合していると想定することができる。
【0016】
主鎖および主鎖に結合しているマクロモノマー側鎖を含むコポリマーの一般的調製は、当業者に知られている。
【0017】
本組成物では、マクロモノマー側鎖および/またはポリマー主鎖は、架橋剤と反応することができる反応性官能基を有することができる。しかし、このような反応性官能基はマクロモノマー側鎖上だけに存在することが好ましい。
【0018】
好ましくは、ポリマー主鎖は、マクロモノマー側鎖に比べて疎水性であり、好ましくは、ポリマー主鎖は、本質的に重合エチレン性不飽和酸含有モノマーを含まない。側鎖は親水性マクロモノマーであり、重合エチレン性不飽和酸含有モノマーを含む。
【0019】
マクロモノマーが、主鎖モノマーと重合して最終コポリマーを生成する末端オレフィン性不飽和基を1つ有するだけであることを確実にするために、ラジカル開始剤、および触媒連鎖移動剤、特にCo(II)またはCo(III)キレート連鎖移動剤を使用することによって、マクロモノマーを重合する。
【0020】
典型的には、マクロモノマーを調製する方法の第1のステップにおいて、モノマーと、水混和性または水分散性である不活性有機溶媒、および連鎖移動剤、好ましくはコバルト連鎖移動剤をブレンドし、通常、反応混合物の還流温度に加熱する。後続のステップにおいて、追加のモノマー、連鎖移動剤、および従来の重合開始剤を添加し、所望の分子量のマクロモノマーが生成されるまで重合を継続する。
【0021】
適当なコバルト連鎖移動剤は、米国特許第4,680,352号明細書および米国特許第4,722,984号明細書に記載されている。ペンタシアノコバルテート(IIまたはIII)、ジアクアビス(ボロンジフルオロジメチル−グリオキシマト)コバルテート(IIまたはIII)、およびジアクアビス(ボロンジフルオロフェニルグリオキシマト)コバルテート(IIまたはIII)が最も好ましい。典型的には、これらの連鎖移動剤を、使用するモノマーの総量を基準にして約5〜1000ppmの濃度で使用する。
【0022】
側鎖を形成するマクロモノマーは、溶媒または溶媒ブレンド中、ラジカル開始剤およびCo(IIまたはIII)キレート連鎖移動剤を使用して生成されることが好ましい。
【0023】
マクロモノマーの合成において、アゾ開始剤、例えば2,2′−アゾビス(2,4 ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、1,1′−アゾ(シクロヘキサンカルボニトリル)、および4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン)酸(モノマーの総量に対して0.5〜5重量%)を、ラジカル開始剤として使用することができる。
【0024】
マクロモノマーを生成するのに使用することができる典型的な溶媒は、芳香族物質、脂肪族物質、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、エチルアミルケトン、アセトンなどのケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノールなどのアルコール、酢酸エチルなどのエステル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルなどである。
【0025】
マクロモノマーを上述されたように生成した後、場合によっては溶媒を除去し、主鎖モノマーを、追加の溶媒およびラジカル開始剤と共にマクロモノマーに添加する。上記のアゾ型開始剤はいずれも、ペルオキシドおよびヒドロペルオキシドなど他の適当な開始剤と同様に使用することができる。ジ−第三級ブチルペルオキシド、ジ−クミルペルオキシド、第三級アミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ酢酸アミルなどの過エステルなどが、このような開始剤の典型である。重合は、所望の分子量のグラフトコポリマーが生成されるまで、通常、反応混合物の還流温度で継続する。
【0026】
コポリマーをアミンまたは無機塩基で中和し、次いで水を通常は添加して、分散液を生成する。コポリマーの中和は、生成後であるが、水相への転相の前および/または最中に行うことができる。好ましくは、酸基を含むマクロモノマーは、調製後、および主鎖モノマーとの重合の前にすでに中和されている。後者は、マクロモノマーを主鎖モノマーと重合させるとき、塩基基、例えばアミノ基またはイミダゾール基との内部塩形成を回避する。塩が形成されると、例えば最終グラフトコポリマー分散液の望ましくない粘度上昇を招く恐れがある。
【0027】
酸基の中和剤として、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを含めて、無機塩基を使用することができる。中和剤として使用することができる典型的アミンとしては、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノメチルプロパノール、およびアミノメチルプロパノールなどが挙げられる。好ましい一アミンは、アミノメチルプロパノールであり、好ましい無機塩基は水酸化アンモニウムである。
【0028】
マクロモノマー(1)は、5〜100重量%の少なくとも1つの酸官能性不飽和モノマー1a)と、場合によっては少なくとも1つのヒドロキシ官能性不飽和モノマー1b)と、場合によってはモノマー1a)および1b)と異なる少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマー1c)との重合によって調製される。ここで、成分1a)の重量%はマクロモノマーの総量を基準にしている。好ましくは、マクロモノマーは、10〜80重量%、最も好ましくは15〜60重量%の成分1a)と、0〜60重量%、最も好ましくは0〜40重量%の成分1b)と、0〜90重量%、最も好ましくは0〜85重量%の成分1c)との重合によって調製される。ここで、成分1a)、1b)、および1c)の重量%は、マクロモノマー(1)の総量を基準にし、合計100重量%になる。
【0029】
好ましくは、マクロモノマーの重量平均分子量は、約1,000〜20,000、最も好ましくは2,000〜10,000である。
【0030】
酸官能性不飽和モノマー1a)の例は、オレフィン性不飽和カルボン酸、ホスホン酸、リン酸、およびスルホン酸である。オレフィン性不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸である。オレフィン性不飽和リン酸、ホスホン酸、およびスルホン酸の例は、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、メタクリルオキシエチルホスフェートビニルホスホン酸などである。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が最も好ましい。
【0031】
適当なヒドロキシ官能性オレフィン性不飽和モノマー1b)の例は、第一級または第二級ヒドロキシル基を有するα,β−オレフィン性不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステルである。例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、および/またはイタコン酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。ヒドロキシアルキル基は、例えば1〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を含むことができる。第一級ヒドロキシル基を有するα,β−オレフィン性不飽和モノカルボン酸の適当なヒドロキシアルキルエステルの例は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、2,3−(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−および4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアミル、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシルである。第二級ヒドロキシル基を有する適当なヒドロキシアルキルエステルの例は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、および(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチルである。
【0032】
使用することができる別のヒドロキシ官能性不飽和モノマーは、α,β−不飽和モノカルボン酸と、α位において分枝している飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、例えば飽和α−アルキルアルカンモノカルボン酸またはα,α′−ジアルキルアルカンモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物である。これらは、(メタ)アクリル酸と、分子中に7〜13個の炭素原子を有する、特に好ましくは分子中に9〜11個の炭素原子を有する飽和α,α′−ジアルキルアルカンモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物であることが好ましい。他のヒドロキシ官能性不飽和モノマーは、ポリエチレンオキシドおよび/または(メタ)アクリレートで修飾したポリプロピレンオキシドである。
【0033】
好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを使用する。
【0034】
適当な別のオレフィン性不飽和モノマー1c)の例は、オレフィン性二重結合に加えて、別の官能基を含んでもよく、またはオレフィン性二重結合以外には別の官能基を含まなくてもよいモノマーである。
【0035】
オレフィン性二重結合以外には別の官能基を含んでいない適当なエチレン性不飽和モノマーの例は、オレフィン性不飽和カルボン酸のエステルである。これらは、オレフィン性不飽和カルボン酸と脂肪族、芳香族、および/または脂環式アルコールとのエステルである。適当なオレフィン性不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸が挙げられる。アルコールは、特に分子中に1〜20個の炭素原子を有する脂肪族分枝または非分枝1価アルコールである。好ましい例は、アクリル酸およびメタクリル酸と脂肪族アルコールとのエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、および対応するメタクリル酸エステルである。
【0036】
アルコールは、分子中に1〜20個の炭素原子を有する芳香族または脂環式の分枝または非分枝1価アルコールでもよい。置換基は、例えば1個または複数、例えば3個までのアルキル基、特に1〜4個の炭素原子を有するものである。脂環式アルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの例は、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、および対応するメタクリル酸エステルである。脂肪族および脂環式(メタ)アクリル酸エステルは、ハロゲンおよびエーテルなどヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。
【0037】
適当なモノマー1c)の別の例は、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルシラン、ならびにα位で分枝している飽和モノカルボン酸のビニルエステル、例えば飽和α,α’−ジアルキルアルカンモノカルボン酸のビニルエステル、および飽和α−アルキルアルカンモノカルボン酸のビニルエステルであり、いずれの場合にも分子中に5〜13個の炭素原子、好ましくは9〜11個の炭素原子を有する。
【0038】
オレフィン性二重結合に加えて、別の官能基を含む適当な別のエチレン性不飽和モノマー1c)の例は、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートおよびメタクリルオキシエチルトリアルコキシシランなどアセトアセテートおよびシラン官能性不飽和モノマーである。
【0039】
さらに、分子中に1個を超える、例えば2個のオレフィン性二重結合を有するモノマーを使用することが可能である。
【0040】
好ましくは、マクロモノマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および第三級ブチルアミノエチルメタクリレートなど、アミノ基などの塩基基を有するモノマーを本質的に含まない。これは、重合中のin−situ塩形成を回避するには重用である。
【0041】
特に好ましいマクロモノマーは、5〜100重量%、より好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは15〜60重量%の(メタ)アクリル酸1a)、0〜80重量%、より好ましくは0〜60重量%、最も好ましくは0〜40重量%の少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル1b)、および0〜95重量%、より好ましくは0〜90重量%、最も好ましくは0〜85重量%の成分1b)と異なる他の(メタ)アクリル酸エステル1c)の重合によって調製されたものであり、ここでモノマー1a)、1b)、および1c)の重量%は、マクロモノマー(1)の総量を基準にし、合計100重量%になる。
【0042】
最も好ましいマクロモノマーは、15〜60重量%の(メタ)アクリル酸、0〜40重量%の少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル1b)、および40〜80重量%の成分1b)と異なる他の(メタ)アクリル酸エステル1c)に基づく。
【0043】
好ましくは、モノマー1b)および1c)は、アミノ基を含まない。
【0044】
一般に、適当な相溶性マクロモノマーの混合物を使用して、(メタ)アクリル酸コポリマーを調製することができる。カルボン酸官能性を有すると言われるマクロモノマーは、その一部がいずれのカルボン酸官能基も、または可変量のカルボン酸官能基も有していないマクロモノマーの混合物の一部分であってもよいことも理解されたい。
【0045】
少なくとも1つのマクロモノマー(1)とオレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)を重合して、最終コポリマーを調製する。オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、5〜80重量%の少なくとも1つのビニル芳香族モノマー2a)、環の一部分として窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する少なくとも1つの極性複素環基を含む、5〜50重量%の少なくとも1つのビニルモノマー2b)、および場合によっては少なくとも1つの別のオレフィン性不飽和モノマー2c)を含み、成分2a)、2b)、および2c)の重量%は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる。
【0046】
オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは20〜60重量%の成分2a)、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは15〜35重量%の成分2b)、および0〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは10〜65重量%の成分2c)を含み、ここで成分2a)、2b)、および2c)の重量%は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる。
【0047】
ビニル芳香族モノマー2a)の例は、分子中に8〜12個の炭素原子を有するものである。このようなモノマーの好ましい例は、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、2,5−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、および第三級ブチルスチレンである。最も好ましいスチレンをモノマー2a)として使用する。
【0048】
モノマー2b)を使用して、コポリマーの主鎖に、水素原子と結合していない環窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する少なくとも1つの極性複素環基を導入する。極性複素環基は、環の一部分として1個を超える窒素原子を含むことができ、環中に硫黄および/または酸素原子も含むことができる。極性複素環基は、単核または二核基とすることができであってもよく、環の少なくとも1つは、上記に定義した5員または6員環でなければならない。本明細書では、「単核」という用語は、孤立した5員または6員環を指し、「二核」という用語は、他の5員または6員環に縮合している5員または6員環を指す。単核の複素環基が好ましい。
【0049】
好ましい複素環基は、トリアゾール基、ピリミジン基、イミダゾール基、ピリジン基、モルホリン基、ピロリジン基、ピペラジン基、ピペリジン基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、およびトリアジン基である。これらの基は非置換であってもよく、または例えばアルキル基、アリール基、ハロゲン基、およびアルコキシ基などの置換基を含んでもよい。2−メチルイミダゾールおよび4−メチルイミダゾールなど低級アルキルで置換されたイミダゾール誘導体が好ましい。
【0050】
モノマー2b)は、それ自体上記に定義した少なくとも1つの極性複素環基を含む不飽和ビニルモノマーとすることができる。モノマー2b)として使用することができる適当なビニルモノマーは、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、およびビニルピロリドンである。
【0051】
モノマー2b)は、上記に定義した少なくとも1つの極性複素環基を有する予反応した化合物とすることもできる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ官能性不飽和モノマーと、エポキシ基と反応することができるヘテロ環官能性化合物との反応生成物とすることができる。エポキシ基は、例えば−−NH−−、−−NH2、−−COOH、および−−SHのような活性水素原子を有するヘテロ環式化合物と反応することができる。活性H原子を有するヘテロ環式化合物の例は、ピロリジン、モルホリン、ピペリジン、イミダゾール、ピペラジン、2−メルカプトベンズチアゾール、1,2,4−トリアゾール、およびピラゾールである。
【0052】
エポキシ基は、カルボキシル官能性ヘテロ環誘導体とも反応して、予反応した不飽和化合物を生成することもできる。
【0053】
上記に定義した極性複素環基を主鎖に組み込むために使用することができるモノマー2b)としては、主鎖中で重合され、引き続いて上記に定義した極性複素環基で修飾されるモノマーも挙げられる。引き続いて、複素環基を、例えばウレタン結合および/または尿素結合によって間接的に組み込むことができる。一例として、N−(3−アミノプロピル)イミダゾールを、モル基準でジイソシアン酸イソホロンと反応させて、中間体として未反応イソシアネート官能基1個を有するイミダゾール官能性尿素を生成することができ、これは後続のステップで、主鎖中で重合したモノマーのアミノ基と反応することができる。このアミノ官能基は、例えばt−ブチルアミノエチルメタクリレートの共重合によって得ることができる。イソシアネート官能性ヘテロ環式尿素中間体は、主鎖上のヒドロキシル基と反応して、ウレタン結合を形成することもできる。ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを有する2−ヒドロキシエチルモルホリンなどイソシアネート官能基を有するヘテロ環官能性中間体は、ヒドロキシル官能性ヘテロ環誘導体の反応によっても生成することができる。
【0054】
極性複素環基としてイミダゾール基を使用することが好ましい。特に好ましい1−ビニルイミダゾールをモノマー2b)として使用する。コポリマー分散剤中モノマー2b)として1−ビニルイミダゾールを使用すると、最終コーティングの漆黒度の最善の改善がもたらされる。
【0055】
モノマー2b)、特に1−ビニルイミダゾールは、他のオレフィン性不飽和モノマー、例えばジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および第三級ブチルアミノエチルメタクリレートなどアミノ官能性(メタ)アクリレートと組み合わせて使用してもよい。
【0056】
別のオレフィン性不飽和モノマー2c)の例は、ラジカル重合が可能な、モノマー2a)および2b)と異なる任意のオレフィン性不飽和モノマーであるが、好ましくはポリマー主鎖を形成するモノマーは、オレフィン性不飽和酸含有モノマーを含まない。
【0057】
適当な別のエチレン性不飽和モノマー2c)の例は、オレフィン性二重結合に加えて、別の官能基を含んでもよく、またはオレフィン性二重結合以外には別の官能基を含まなくてもよいモノマーである。これらのモノマーはすべて、本明細書でマクロモノマーを形成するためのモノマー1c)として上述されたように使用することができる。
【0058】
好ましくない場合でさえ、マクロモノマーを形成するためのモノマー1b)として上述されたようにヒドロキシル官能性モノマーを使用することもできる。
【0059】
好ましくは、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは20〜60重量%のスチレン(成分2a)、5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは15〜35重量%のビニルイミダゾール(成分2b)、および0〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは10〜65重量%の(メタ)アクリル酸エステル(成分2c)を含み、ここで成分2a)、2b)、および2c)の重量%は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる。
【0060】
好ましいコポリマーは、30〜70重量%の上記に定義したオレフィン性不飽和モノマー(2)の好ましい混合物と70〜30重量%の上記に定義した好ましいマクロモノマー(1)の重合によって調製され、ここで重量%は、コポリマー全体の量を基準にし、合計100重量%になる。
【0061】
最も好ましい(メタ)アクリル酸コポリマーは、30〜70重量%の上記に定義したオレフィン性不飽和モノマー(2)の最も好ましい混合物と70〜30重量%の上記に定義した最も好ましいマクロモノマー(1)の重合よって調製され、ここで重量%は、コポリマー全体の量を基準にし、合計100重量%になる。
【0062】
本発明の顔料分散液は、水性担体を含む。水性担体は、100重量%の水とすることができ、または少量の有機溶媒を含有してもよい。
【0063】
顔料分散液は、顔料分散液の全重量を基準にして、好適には約2〜98%、好ましくは5〜90%、最も好ましくは10〜40%の指定された(メタ)アクリル酸コポリマー、および30〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、最も好ましくは70〜85重量%の水を含む。得られた顔料分散液は、顔料と分散剤バインダーの重量比が約0.1:100〜1500:100、好ましくは1:100〜100:100である。
【0064】
本発明の顔料分散液を生成するには、顔料を水性コポリマー分散液に添加し、次いで高速混合、ボールミルによる粉砕、サンドグラインダーによる粉砕、アトライターによる粉砕、または2本もしくは3本ロールミルによる粉砕など従来の技法を使用して顔料を分散する。二酸化チタン、様々な色の酸化鉄、酸化亜鉛のような金属酸化物;カーボンブラック;タルク、チャイナクレー、重晶石、カーボネート、シリケートなどの充填剤顔料;およびキナクリドン、フタロシアニン、ペリレン、アゾ顔料、インダントロン、イソインドリノン、イソインドロン、チオインディゴレッド、ベンゾイミタゾリノンなどの広範囲の種々の有機顔料など、塗料、特に水系塗料中で使用される従来の顔料のいずれも、顔料分散液を生成するために使用することができる。
【0065】
最大の利点は、黒色顔料を含む顔料分散液を調製し、黒色に着色した水系コーティング組成物の処方にそれを使用する際に実現することができる。黒色顔料として、いずれの黒色顔料、例えばカーボンブラック、または有機黒色顔料、例えばペリレンもしくはアジン黒色顔料でも使用することができる。しかし、特にカーボンブラックが使用される。
【0066】
一般に、水性コポリマー分散液は、水性媒体中で顔料用の分散剤として優れた性能を示し、安定した顔料分散液および安定した水系コーティング組成物の処方が可能になる。
【0067】
酸化防止剤、フローコントロール剤、ヒュームドシリカなどのレオロジー調節剤、ミクロゲル、UV安定剤、スクリーン剤、および吸収剤など他の任意選択の材料を、顔料分散液に添加することが望ましいことがある。
【0068】
本発明の水性顔料分散液は、水系コーティング組成物を生成するために使用することができる。これらは、例えば水系プライマー、プライマーサーフェーサー、およびトップコートを形成するために使用することができる。後者は、モノコートでも、またはクリアコート/ベースコート仕上げのベースコートでもよい。特に、本発明の顔料分散液は、水系顔料含有モノコート組成物、またはクリアコート/ベースコート仕上げの水系ベースコート組成物を生成するために使用することができる。
【0069】
一般に、水系コーティング組成物は、皮膜形成構成要素として(メタ)アクリル酸コポリマー、ポリエステル、および/またはポリウレタンバインダーなどの水希釈性バインダーを含有してもよく、1成分または2成分コーティング組成物として処方することができる。これらは、ブロックまたは非ブロックポリイソシアネート、メラミン、エポキシ樹脂などの架橋剤を含有してもよい。顔料分散液と相溶性があるアクリロウレタンおよびポリエーテルなど他の皮膜形成ポリマーを使用することもできる。コーティング組成物の皮膜形成ポリマーを顔料分散液のコポリマーに類似させておくことが望ましい。硬化時には、顔料分散液のコポリマーと皮膜形成バインダーが架橋剤で硬化することが好ましく、例えば硬化は、顔料分散液のコポリマーのヒドロキシル基と皮膜形成バインダーのヒドロキシル基と架橋剤との間で起こり得る。
【0070】
水系コーティング組成物は、色を付与する顔料を含有する。これらの顔料は、通常、本発明の顔料分散液によって導入される。さらに、特殊効果を付与する顔料を必要に応じて別々に添加してもよい。特殊効果を付与する顔料の例は、例えばアルミニウム、銅、または他の金属で作製された金属顔料;例えば金属酸化物で被覆された金属顔料、例えば二酸化チタンで被覆されたまたは混合酸化物で被覆されたアルミニウムなどの干渉顔料、例えば二酸化チタン被覆マイカなどの被覆マイカ、およびグラファイト効果顔料である。
【0071】
水系コーティング組成物は、水、ならびに場合によっては従来のコーティング添加剤および有機溶媒も含有する。水系ベースコート組成物またはモノコート組成物は、完成したコーティング組成物に対して、好ましくは50〜80重量%の水、特に好ましくは60〜75重量%の水を含有する。
【0072】
適当な顔料は、実際上、色および/または特殊効果を付与する任意の顔料、例えばすでに上記および顔料分散液の説明に記載のものである。
【0073】
場合によっては存在している有機溶媒は、従来のコーティング溶媒を含む。これらは、バインダーの調製に由来してよく、または別々に添加されてもよい。水混和性溶媒が好ましい。適当な溶媒の例は、1価または多価アルコール、例えばプロパノール、ブタノール、ヘキサノール;グリコールエーテルまたはエステル、例えばジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル(いずれの場合も、C1〜C6アルキルを有する)、エトキシプロパノール、ブトキシエタノール、グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、およびケトン、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンである。
【0074】
従来のコーティング添加剤の例は、レベリング剤、高分散シリカまたは重合体尿素化合物などのレオロジー剤、部分架橋ポリカルボン酸またはポリウレタンなどの増粘剤、消泡剤、湿潤剤、クレーター防止剤、分散剤、および触媒である。添加剤は、当業者に知られている従来の量で使用される。
【0075】
特に好ましくは、本発明の顔料分散液は、黒色顔料、特にカーボンブラックを含有し、黒色顔料含有水系ベースコート組成物またはモノコート組成物を生成するために使用される。これらの黒色顔料含有水系ベースコート組成物またはモノコート組成物によって、優れた色強度および優れた漆黒度を有するコーティングが生じる。
【0076】
一般に、黒色顔料粒子、特にカーボンブラック粒子の耐凝集性が増大するとき、漆黒度は増大する傾向がある。したがって、本発明の顔料分散剤によって、特にカーボンブラック粒子の耐凝集性が改善されると想定される。本発明の顔料分散液、特にコポリマー顔料分散剤は、一般に水系コーティング組成物中で使用される異なる多数の皮膜形成バインダーと相溶性がある。安定性、色の強度、および漆黒度の点から見て、優れた結果は、ブロックまたは非ブロックポリイソシアネートおよび/またはメラミン樹脂などの架橋剤と場合によっては組み合わせて、異なるいくつかのバインダー系、例えばポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、および/またはポリエステルバインダーをベースとするバインダー系と組み合わせて実現することができる。
【0077】
本発明の水系コーティング組成物は、自動車用および工業用コーティングにおいて多層塗布プロセスで塗布することができる。特に、これらは、場合によってはプレコートされた基材上にベースコート層またはモノコート層として塗布してもよい。適当な基材は、金属およびプラスチック基材、特に自動車業界で知られている基材、例えば鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼など、またはそれらの合金、およびポリウレタン、ポリカーボナート、またはポリオレフィンである。しかし、工業用塗布プロセスによる他のいかなる所望の工業用品も、基材として被覆してもよい。
【0078】
自動車または自動車部品のコーティング場合は、水系ベースコート組成物または水系モノコート組成物を、従来のようにプライマーおよび/またはプライマーサーフェーサーでプレコートした基材に、例えば噴霧、静電噴霧、浸漬、刷毛塗り、フローコーティングなどによって塗布する。
【0079】
ベースコート/クリアコート仕上げの場合には、乾燥または硬化またはウエット・オン・ウエットの後、場合によっては短時間のフラッシングオフの後に、クリアコートをベースコート層に塗布してもよい。適当なクリアコートは、原理的には、例えば車両コーティングにおいて一般的であるような任意の周知の顔料不含または透明顔料含有コーティング組成物である。これらは、本明細書では単一もしくは二成分溶媒系または水系クリアコート組成物、あるいは透明粉体コーティングを含むことができる。
【0080】
得られたコーティングを室温で硬化し、または例えば80℃までのより高い温度、例えば40〜60℃で強行することができる。しかし、これらは、例えば80〜160℃のより高い温度でも硬化することができる。硬化温度は、使用分野および架橋剤のタイプで決定する。モノコート仕上げの場合には、同じ硬化温度が使用される。
【0081】
本発明による顔料分散液を使用することによって調製された顔料含有水系コーティング組成物は、優れた色の強度を有する均一で高品質のコーティングを生じる。特に、黒色顔料含有水系コーティング組成物は、優れた漆黒度を有するコーティングを生じる。
【0082】
意外にも、本発明の顔料分散液を含有する水系コーティング組成物は、自動車コーティングにおけるラインでの補修コーティング用のクリアコート/ベースコート仕上げのベースコートとして使用するとき、改善された補修接着性能を示すこともわかった。
【0083】
本発明によるコーティング組成物は、本来の車両生産ライン塗装、ならびにトラック、バス、および貨車などの大型車両および運搬用車両の被覆、ならびに車両補修コーティングで使用することができる。車両のコーティングとしては、車両部品のコーティングも挙げることができる。
【0084】
下記の実施例は、本発明をより詳細に示すよう意図されている。部および百分率はすべて、特に記載のない限り重量を基準にしている。分子量は、ポリスチレンを標準として、かつテトラヒドロフランを担体溶媒として使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定する。
【実施例】
【0085】
実施例1:
(1−ビニルイミダゾールおよびスチレンを用いた)分散剤1の調製
1a)マクロモノマーの調製
撹拌機、モノマーおよび開始剤用滴下漏斗、ならびに冷却器を装備した反応器中で、311.79グラムのメチルエチルケトン(MEK)と0.01グラムのコバルト連鎖移動剤(ビス(ボロンジフルオロジフェニルグリオキシメート)コバルテートII)の混合物を約80℃まで加熱して還流した。223.61グラムのメチルメタクリレート(MMA)、120.4グラムの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、86グラムのメタクリル酸(MAA)、および98.47グラムのMEKに基づいて、モノマー混合物を調製し、モノマー滴下漏斗に加えた。91.72グラムのMEK、0.05グラムのコバルト連鎖移動剤、7.74グラムのVazo 67(DuPont)から構成された別の混合物を開始剤滴下漏斗に加えた。20%のモノマー混合物を反応器に添加し、窒素パージ下ですべて還流させ、続いて開始剤漏斗の含有量の20%を添加した。モノマー混合物の残部を3時間かけて添加した。この添加は3時間30分間にわたる開始剤フィードの添加と同時に開始し、これは反応器中で還流を維持しながら行われた。両方のフィード槽を50.21グラムのMEKですすぎ、反応器の内容物を還流状態でさらに30分間保持した。最後に10グラムのMEKを添加した。
Mn/Mw(GPCによる):1500/2800
【0086】
1b)最終コポリマーの調製
撹拌機、モノマーおよび開始剤用滴下漏斗、ならびに冷却器を装備した反応器中で、227.83グラムのn−ブタノール(nBAl)、399.76グラムの実施例1aのマクロモノマー、および29.35グラムのジメチルアミノエチルアミン(DMEA)の混合物を約90℃まで加熱した。約228グラムのMEKを除去し、反応器内容物の温度を約110℃にした。96.26グラムのスチレン(S)、34.38グラムのn−ブチルアクリレート(nBA)、41.26グラムの1−ビニルイミダゾール(VIM)、および7.65グラムのnBAlのモノマー混合物をモノマーフィード槽に添加した。32.89グラムのイソプロパノール(IPAl)中5.84グラムのVAZO 67(DuPont)の溶液を開始剤フィード槽に添加し、両方のフィード槽の内容物を3時間かけて添加し、続いて17.21グラムのnBAlですすぐステップを行った。還流状態で約30分保持した後、76.45グラムのIPAl中19.65グラムのVAZO 67の溶液をできるだけ速く添加し、続いて7.65グラムのnBAlですすぐステップを行った。反応器内容物を還流状態でさらに1時間保持した後、そのバッチを38.2グラムのnBAlで希釈した。
試験結果:
固形分:47.74%
粘度:Y+1/2
酸価 77.8
GPCによるMn/Mw 4000/20700
【0087】
実施例2:
(1−ビニルイミダゾールおよびスチレンを用いた)分散剤2の調製
撹拌機、モノマーおよび開始剤用滴下漏斗、ならびに冷却器を装備した反応器中で、227.83グラムのn−ブタノール(nBAl)、399.76グラムの実施例1aのマクロモノマー、および29.35グラムのジメチルアミノエチルアミン(DMEA)の混合物を約90℃まで加熱した。約228グラムのMEKを除去し、反応器内容物の温度を約110℃にした。61.88グラムのスチレン(S)、68.76グラムのn−ブチルアクリレート(nBA)、41.26グラムの1−ビニルイミダゾール(VIM)、および7.65グラムのnBAlのモノマー混合物をモノマーフィード槽に添加した。32.89グラムのイソプロパノール(IPAl)中5.84グラムのVAZO 67(DuPont)の溶液を開始剤フィード槽に添加し、両方のフィード槽の内容物を3時間かけて添加し、続いて17.21グラムのnBAlですすぐステップを行った。還流状態で約30分保持した後、76.45グラムのIPAl中19.65グラムのVAZO 67の溶液をできるだけ速く添加し、続いて7.65グラムのnBAlですすぐステップを行った。反応器内容物を還流状態でさらに1時間保持した後、そのバッチを38.2グラムのnBAlで希釈した。
試験結果:
固形分:47.38%
粘度:X+1/2
酸価 77.7
GPCによるMn/Mw 4200/24100
【0088】
比較例1:
(t−アミンおよびスチレンを用いた)比較分散剤1の調製
撹拌機、モノマーおよび開始剤用滴下漏斗、ならびに冷却器を装備した反応器中で、227.83グラムのn−ブタノール(nBAl)、399.76グラムの実施例1のマクロモノマー、および29.35グラムのジメチルアミノエチルアミン(DMEA)の混合物を約90℃まで加熱した。約228グラムのMEKを除去し、反応器内容物の温度を約110℃にした。96.26グラムのスチレン(S)、34.38グラムのn−ブチルアクリレート、41.26グラムのジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、および7.65グラムのnBAlのモノマー混合物をモノマーフィード槽に添加した。32.89グラムのイソプロパノール(IPAl)中5.84グラムのVAZO 67(DuPont)の溶液を開始剤フィード槽に添加し、両方のフィード槽の内容物を3時間かけて添加し、続いて17.21グラムのnBAlですすぐステップを行った。還流下で約30分保持した後、76.45グラムのIPAl中19.65グラムのVAZO 67の溶液をできるだけ速く添加し、続いて7.65グラムのnBAlですすぐステップを行った。反応器内容物を還流状態でさらに1時間保持した後、そのバッチを38.2グラムのnBAlで希釈した。
試験結果:
固形分:51.3%
粘度:Z2+1/4
酸価 68.2
GPCによるMn/Mw 4300/18400
【0089】
顔料分散液の調製
下記の材料を使用して、本発明によるカーボンブラック顔料分散液1(分散剤1を使用)および2(分散剤2を使用)、ならびに比較カーボンブラック顔料分散液1(比較分散剤1を使用)を調製した。唯一の相違は、分散剤のタイプである。
【0090】
下記の材料(重量%)を含有する分散液:

【0091】
分散液の固形分は18.5%であり、分散剤と顔料の比は85/100であった。
【0092】
コーティング組成物の調製
High Speed Disperserを1時間使用して、それぞれ11800g(3ガロン)のプレミックスを調製した。次いで、これらのプレミックスをミル(Netzsch,Inc.(Exton,PA)の2.0リットルのLMZ(liegende muhle zeta)ミル)で処理した。処理パラメータは以下の通りである:媒体85%、ロータ回転速度2250RPM、および生成物流量525グラム/分、粉砕時間240分間。漆黒度評価のため、30分ごとに、分散液試料を採取した。
【0093】
下記の材料を使用して、コーティング組成物1(顔料分散液1を使用)および2(顔料分散液2を使用)、ならびに比較コーティング組成物1(比較顔料分散液1を使用)を調製した。唯一の相違は、顔料分散液のタイプである。
【0094】
下記の材料(単位:g)を含有するコーティング組成物:

【0095】
自動車用電着コートおよび溶媒系プライマーでプレコートした金属パネルに、コーティング組成物1および2、ならびに比較コーティング組成物1を乾燥膜厚20μmで噴霧塗布した。
【0096】
周囲条件で2分間フラッシュし、続いて80℃で5分間乾燥した後、通常の市販1成分アクリル酸−シラン−メラミンクリアコート(DuPont Gen(登録商標)IVesw Clear)を塗布した。最終コーティング組成物を周囲条件でフラッシュし、次いで140℃で30分間焼成した。
【0097】
各パネルについて、漆黒度を測定した。Degussaによって提供された漆黒度の測定方法を使用した。その方法の完全な説明は、“Coloristic Measurements of Jet−Black and Grey Coatings,”Technical Bulletin on Pigments,No.37,1994で見ることができる。
【0098】
漆黒度は、皮膜の色測定である。漆黒度番号は、標準的分光光度計を使用して10°角で測定されたL、a、およびbの値の関数であり、上記の刊行物中の数式を使用して漆黒度番号を算出する。L、a、およびb値が下がると共に、漆黒度番号は上がる。したがって、望ましい黒色ベースコートは暗青色になるほど、かつ赤色が弱くなるほど、漆黒度数が高くなる。
【0099】
各試料の漆黒度数を下記に示す。
コーティング組成物1:314.5
コーティング組成物2:313.4
比較コーティング組成物1:309.4
【0100】
上記の結果から、本発明による黒色顔料分散液で調製したコーティング組成物は、比較黒色顔料分散液で調製したコーティング組成物より良好な漆黒度(約4〜5単位良好)を示すことがわかる。
【0101】
さらに、本発明による黒色顔料分散液で調製した水系ベースコートは、優れた補修接着性能を示す。試験パネルを調製して、自動車OEMコーティングシステムをシミュレートした。すなわち、ホスフェート処理、電着コート被着、および溶媒系自動車プライマーを施した冷間圧延鋼を、上述するベースコート組成物で被覆した。パネルを周囲条件で5分間、次いで80℃で5分間フラッシュ乾燥した。次いで、これらにGen(登録商標)IVeswクリアコート(DuPont)を噴霧し、周囲条件でフラッシュ乾燥させ、次いで140℃で30分間焼成した。ベースコートおよびクリアコートの操作を繰り返して、自動車OEM補修をシミュレートした。
【0102】
クロスハッチ接着性試験(DIN ISO 2409またはASTM D3359に準拠)を被覆パネルについて行った。次いで、パネルを43℃で100%凝縮湿度に96時間曝露した。クロスハッチ接着性を再び試験した。
【0103】

【0104】
試験結果から、本発明による分散液を使用すると全体の接着性が改善されたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分散顔料、水性担体、および少なくとも1つのコポリマーを含む水性顔料分散液であって、前記コポリマーは、末端オレフィン性不飽和を有する少なくとも1つのマクロモノマー(1)10〜90重量%と、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)90〜10重量%を共重合することによって調製され、ここで重量%はコポリマーの総量を基準にし、合計100重量%になり、少なくとも1つのマクロモノマー(1)は、
1a)5〜100重量%の少なくとも1つの重合酸官能性不飽和モノマーと、
1b)場合によっては少なくとも1つの重合ヒドロキシ官能性不飽和モノマーと、
1c)場合によっては、モノマー1a)および1b)と異なる少なくとも1つの重合オレフィン性不飽和モノマーと
を含み、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)は、
2a)5〜80重量%の少なくとも1つの不飽和ビニル芳香族モノマーと、
2b)水素原子と結合していない環窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する少なくとも1つの極性複素環基を含む、5〜50重量%の少なくとも1つのビニルモノマーと、
2c)場合によっては、モノマー2a)および2b)と異なる少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーと
を含み、
ここで成分1a)の重量%はマクロモノマー(1)の総量を基準にし、成分2a、2b、および2cの重量%は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる、水性顔料分散液。
【請求項2】
前記コポリマーの重量平均分子量Mwが3,000〜100,000である、請求項1に記載の水性顔料分散液。
【請求項3】
前記コポリマーの重量平均分子量Mwが5,000〜70,000である、請求項1に記載の水性顔料分散液。
【請求項4】
前記コポリマーが、20〜80重量%の少なくとも1つのマクロモノマー(1)、および80〜20重量%のオレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項5】
前記コポリマーが、30〜70重量%の少なくとも1つのマクロモノマー(1)、および70〜30重量%のオレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項6】
前記マクロモノマー(1)が、
1a)10〜80重量%の少なくとも1つの重合酸官能性不飽和モノマーと、
1b)0〜60重量%の少なくとも1つの重合ヒドロキシ官能性不飽和モノマーと、
1c)モノマー1a)および1b)と異なる、0〜90重量%の少なくとも1つの重合オレフィン性不飽和モノマーと
を含み、ここで成分1a)、1b)、および1c)の重量%は前記マクロモノマー(1)の総量を基準にし、合計100重量%になる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項7】
成分1a)が(メタ)アクリル酸であり、成分1b)が少なくとも1つのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルであり、成分1c)が成分1b)と異なる少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項8】
前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)が、
2a)10〜70重量%の少なくとも1つの不飽和ビニル芳香族モノマーと、
2b)環の一部分として窒素原子を少なくとも1個含む5員または6員環を有する少なくとも1つの極性複素環基を含む、10〜40重量%の少なくとも1つのビニルモノマーと、
2c)モノマー2a)および2b)と異なる、10〜80重量%の少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーと
を含み、ここで成分2a)、2b)、および2c)の重量%は前記オレフィン性不飽和モノマーの混合物(2)の総量を基準にし、合計100重量%になる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項9】
成分2a)がスチレンであり、成分2b)が1−ビニル−イミダゾールであり、成分2c)が成分2a)および2b)と異なる少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項10】
前記顔料がカーボンブラックである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性顔料分散液。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性顔料分散液を含む水系コーティング組成物。
【請求項12】
ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのバインダーを含む、請求項11に記載の水系コーティング組成物。
【請求項13】
ブロックポリイソシアネート、非ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤を含む、請求項11または請求項12に記載の水系コーティング組成物。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の水系コーティング組成物の車両コーティングにおける使用。

【公表番号】特表2010−519384(P2010−519384A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550899(P2009−550899)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/002190
【国際公開番号】WO2008/103356
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】