説明

水抜き構造

【課題】簡易な構造でありながら、筐体内の水を排出することができ、かつ、筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たったり、虫や塵芥等が入り込むのを防止できる水抜き構造を提供する。
【解決手段】水抜き構造1は、筐体の底壁100に設けられた水抜き穴101から水を排出する水抜き構造であって、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように水抜き穴101の内壁又は底壁100の筐体外面に管の上端部が連結されて設置される排水管10と、排水管10の管内に下端部が位置するように、かつ、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように、水抜き穴101の内壁、底壁100の筐体外面又は排水管10の管内に、開口した上端部が連結されて設置され、下端部が通常時には閉じており、弁の内部に所定量の水が溜まることにより開放されて水を排出する弁20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内の水を排出する水抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外へ設置する機器類の筐体には、結露等により筐体内に溜まった水を筐体外へ排出するため、筐体の底壁に水抜き穴が設けられていることが多い。
【0003】
従来の水抜き穴は、筐体の底壁に穴を開けただけの構造であるため、下方向から水抜き穴に強い勢いで当たった水は筐体内に浸入し、内部の回路基板等の部品に直接に当たってしまい、故障の原因となる恐れがある。また、虫や塵芥がこの水抜き穴から筐体内に入り込み、内部の回路基板等の部品に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0004】
そこで、上記問題に対処するべく、筐体底壁の水抜き穴に設けられる水抜き穴構造に関する発明がなされている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、ボックス内に浸入した水をボックスの外方へ排出する水抜き穴の水抜き構造であって、水抜き穴の開口周縁に密着・当接して組み付けられて水抜き穴を閉鎖すると共にボックス内に浸入した所定量の水の重さで水抜き穴を開放しボックス内に浸入した水を外方へ排出可能とする弁体を備えた水抜き穴構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ボックス内に浸入または発生した水をボックスの外方へ排出する水抜き穴の水抜き穴構造であって、空気溜まり部を有し前記ボックス内に浸入した水がボックスの外方へ排出可能にボックス内外を連通した状態で前記水抜き穴に設けられる弁体を備えていることを特徴とする水抜き穴構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−353644号公報
【特許文献2】特開2002−354630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1等に記載の水抜き穴構造によれば、ボックス内に浸入した水をボックスの外方へ排出することができると共に、ボックス内への水抜き穴からの水の浸入を阻止することができると考えられるが、水抜き穴構造が複雑な構造であり、製造上の困難性を伴う。また、複雑な構造ゆえに、詰まり等の機能障害が生じる可能性が高い。
【0009】
一方、水抜き穴に金網を設けるだけのような簡易な水抜き穴構造では、水の排出機能は果たせても、外部からの水の浸入や虫等が入り込むのを防止することが難しい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、簡易な構造でありながら、筐体内の水を排出することができ、かつ、筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たったり、虫や塵芥等が入り込むのを防止できる水抜き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[6]の水抜き構造を提供する。
【0012】
[1]筐体の底壁に設けられた水抜き穴から水を排出する水抜き構造であって、
前記水抜き穴の内壁又は前記底壁の筐体外面に上端部が連結されて設置される排水管と、
前記排水管の管内に下端部が位置し、前記水抜き穴の内壁、前記底壁の筐体外面又は前記排水管の管内に、開口した上端部が連結されて設置される弁とを備え、
前記弁は、前記下端部が通常時には閉じており、前記弁の内部に所定量の水が溜まることにより開放されて水を排出することを特徴とする水抜き構造。
【0013】
[2]前記弁は、中空のラッパ形状、中空の円錐形状、又は中空の多角錐形状であることを特徴とする前記[1]に記載の水抜き構造。
【0014】
[3]前記排水管は、当該排水管の排出穴を上方向へ向ける第1のターン部を有しており、前記排出穴が前記弁の最下部よりも低いことを特徴とする前記[1]又は前記[2]に記載の水抜き構造。
【0015】
[4]前記排水管は、前記第1のターン部により上方向へ向けられた前記排出穴を下方向へ向ける第2のターン部を有しており、前記第2のターン部の最上部が前記弁の最下部よりも低いことを特徴とする前記[3]に記載の水抜き構造。
【0016】
[5]前記弁は、前記下端部の先端にスリットが設けられていることを特徴とする前記[1]乃至[4]の何れか1つに記載の水抜き構造。
【0017】
[6]前記水抜き穴を塞ぐことなく覆うように前記底壁の筐体内面に設置され、かつ前記水を排出するための1つ又は複数の開口部を側壁に有するケースを備えることを特徴とする前記[1]乃至[5]の何れか1つに記載の水抜き構造。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造でありながら、筐体内の水を排出することができ、かつ、筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たったり、虫や塵芥等が入り込むのを防止できる水抜き構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る水抜き構造の外観を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1における弁の形態を示す斜視図であり、(b)は、(a)に記載の弁の変形例を示す斜視図である。
【図3】図1に記載の水抜き構造の変形例の外観を示す斜視図である。
【図4】図1における弁の先端部の形態の変形例を示す正面図である。
【図5】(a)は、図1におけるA−A線切断部端面図であり、(b)は、(a)の第1の変形例を示す切断部端面図であり、(c)は、(a)の第2の変形例を示す切断部端面図であり、(d)は、(a)の第3の変形例を示す切断部端面図である。
【図6】水の排出時における弁の動作を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る水抜き構造の外観を示す斜視図である。
【図8】(a)は、図7におけるA方向から見た正面図であり、(b)は、図7におけるB方向から見た正面図(A方向から見た場合の右側面図)である。
【図9】(a)及び(b)は、図8の第1の変形例を示す正面図である。
【図10】(a)及び(b)は、図8の第2の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔本発明の第1の実施の形態〕
(水抜き構造の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水抜き構造の外観を示す斜視図である。図2(a)は、図1における弁の形態を示す斜視図である。また、図2(b)は、(a)に記載の弁の変形例を示す斜視図である。また、図3は、図1に記載の水抜き構造の変形例の外観を示す斜視図である。
【0021】
本実施の形態に係る水抜き構造1は、筐体の底壁100に設けられた水抜き穴101から水を排出する水抜き構造であって、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように水抜き穴101の内壁又は底壁100の筐体外面に管の上端部が連結されて設置される排水管10と、排水管10の管内に下端部が位置するように、かつ、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように、水抜き穴101の内壁、底壁100の筐体外面又は排水管10の管内に、開口した上端部が連結されて設置される弁20とを備える。
【0022】
水抜き構造1における弁20は、下端部が通常時には閉じており、弁の内部に所定量の水が溜まることにより開放されて水を排出する機能を有するものであり、図1及び図2(a)に示されるように、中空のラッパ形状である。
【0023】
弁の形状は、中空のラッパ形状に限定されるものではなく、例えば、図2(b)に示されるように、中空の円錐形状の弁21であってもよく、また、図3に示されるように、4角形の水抜き穴102及び4角柱形状の排水管11を用いた場合には、中空の4角錐形状などの多角錐形状であってもよい。なお、図3では単なる4角錐形状ではなく、ラッパ形状にした4角錐形状の弁22を示した。
【0024】
弁20〜22の長さは、排水管10の管内に下端部が位置するような長さであればよく、例えば、2〜7cm程度が好ましく、3〜6cm程度がより好ましい。
【0025】
弁20〜22の材質は、種々の材質を用いることができるが、特に、ゴムなどの弾性体が弁の機能を効率的に果たす点で好ましい。
【0026】
弁20〜22は、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように、水抜き穴101の内壁、底壁100の筐体外面又は排水管10の管内に、開口した上端部が連結されて設置されるが、設置する方法は、溶接、接着剤による接着等の種々の方法を用いることができる。
【0027】
図4は、図1における弁の先端部の形態の変形例を示す正面図であり、弁は、図4に示されるように、下端部の先端にスリット23aが設けられている弁23としてもよい。先端にスリット23aが設けられることで、スリットを設けない場合に比べて、より少量の水で水が排出可能となる。スリットの長さは、例えば、0.5〜2cmとする。
【0028】
図5(a)は、図1におけるA−A線切断部端面図であり、(b)〜(d)のそれぞれは、(a)の変形例を示す切断部端面図(但し、図5(c)の排水管13の部分は概略構成図)である。
【0029】
水抜き構造1における排水管10は、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように水抜き穴101の内壁又は底壁100の筐体外面に管の上端部が連結されて設置されるものであり、図1及び図5(a)に示されるように、直線状の円筒形状の管である。
【0030】
排水管の形状は、直線状の円筒形状に限定されるものではなく、前述の図3に示される四角柱形状など種々の形状をとり得る。例えば、図5(b)に示される排水管12のように、水を外部へ排出する排出穴12aを上方向へ向けるターン部を有しており、排出穴12aが弁20の最下部20aよりも低い形状とすることができる。
【0031】
また、排水管の形状は、図5(c)、(d)に示される排水管13,14ように、ターン部により下方向から上方向へ向けられた排出穴を再び下方向へ向けるターン部を有しており、再び下方向へ向けるターン部の最上部が弁20の最下部20aよりも低い形状とすることもできる。
【0032】
排水管12〜14は、ターン部に弁20から排出された水や外部からの水を溜めることができ、これにより外部からの水や虫等をブロックすることができる。
【0033】
また、排水管10〜14は、排出穴に向かうほど徐々に細くする形状とすることもできる。これにより外部からの水や虫等が入りづらくすることができる。
【0034】
排水管10の長さは、例えば、3〜10cm程度が好ましく、3〜8cm程度がより好ましい。
【0035】
排水管10〜14の材質は、金属、合成樹脂等を用いることができる。
【0036】
排水管10〜14は、水抜き穴101から排出される水が連結部から漏れないように水抜き穴101の内壁又は底壁100の筐体外面に管の上端部が連結されて設置されるが、設置する方法は、溶接、接着剤による接着等の種々の方法を用いることができる。
【0037】
なお、本実施の形態に係る水抜き構造は、アンテナ等の電子機器類を収容する筐体のほか、屋外へ設置する種々の筐体に適用可能である。筐体の底壁100に設けられた水抜き穴101の直径は、通常、2mm〜20mm程度であるが、これに限定されるものではない。また、穴の形状も円形に限られず、前述の図3に示される四角形など種々の形状をとり得る。
【0038】
(水の排出時における弁の動作)
図6は、水の排出時における弁の動作を示す説明図である。
弁20を使用した場合を例に説明すると、水抜き穴101から排出された水40が弁20の内部に所定量、溜まることで、水に働く重力により、図6(a)のように下端部が閉じていた状態から、図6(b)のように下端部が開放されて水40が排出される。
【0039】
通常時は、弁20の下端部は閉じているため、外部からの水や虫等をブロックすることができる。
【0040】
(本発明の第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)簡易な構造でありながら、筐体内で発生した水を排出することができ、かつ、筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たったり、虫や塵芥等が入り込むのを防止できる水抜き構造を提供することができる。
【0041】
〔本発明の第2の実施の形態〕
(水抜き構造の構成)
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る水抜き構造の外観を示す斜視図である。図8(a)は、図7におけるA方向から見た正面図であり、(b)は、図7におけるB方向から見た正面図(A方向から見た場合の右側面図)である。また、図9〜10は、本発明の第2の実施の形態に係る水抜き構造の変形例を示す図である。
【0042】
本発明の第2の実施の形態に係る水抜き構造は、水抜き穴101を塞ぐことなく覆うように底壁100の筐体内面に設置され、かつ水を排出するための1つ又は複数の開口部を側壁に有するケースを備えること以外は、前述の第1の実施の形態に係る水抜き構造と同様である。
【0043】
図7〜10の水抜き構造6〜8は、水抜き構造1を利用するものであるが、水抜き構造2〜5を利用するものであってもよい。
【0044】
ケース30は、図7等に示されるように、筐体内から水を排出する水抜き穴101の直上に設置される直方体形状のケースである。直方体形状の側壁の1つの一部が開口されて開口部30aが形成されている。また、ケース30は、底壁の全体が開口しているため、水抜き穴101を塞ぐことなく覆うことができる。開口部30a以外の部分は、水の浸入や虫などの侵入を阻止するために隙間無く形成されている。
【0045】
なお、開口部30aの形状、大きさ等は特に限定されるものではなく、水抜き穴101へ水を流すことが可能な形態であればよい。
【0046】
また、側壁に複数の開口部を設けてもよく、例えば、図9に示される水抜き構造7では、1つの側壁に開口部31aを設け、別の側壁に開口部31bを設けたケース31を使用し、図10に示される水抜き構造8では、1つの側壁に開口部32aを設け、別の側壁に開口部32b及び32cを設けたケース32を使用している。
【0047】
また、ケース30〜32は、直方体形状の底壁の全体が開口している形態に限られるものではなく、水抜き穴101を塞ぐことなく開口部30a等からケース30〜32内に流れ込んだ水を水抜き穴101へ流すことが可能な形態であれば、底壁の一部のみを開口した形態であってもよい。
【0048】
また、ケース30〜32は、直方体(立方体含む)形状に限られず、多角柱、多角錐、円柱、円錐、半球等の形状であってもよい。
【0049】
ケース30〜32の大きさは、水抜き穴101を覆うことができ、かつ、筐体内で邪魔にならない程度の大きさであれば特に限定されるものではない。
【0050】
ケース30〜32の材質としては、金属、合成樹脂等を用いることができる。
【0051】
ケース30〜32を筐体の底壁100に設置する方法は、溶接、接着剤による接着等の種々の方法を用いることができる。ケース30〜32の側壁は、水の浸入や虫などの侵入を阻止するために筐体の底壁100(筐体内面100A)に隙間無く設置される。
【0052】
(本発明の第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)簡易な構造でありながら、筐体内で発生した水を排出することができ、かつ、筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たったり、虫や塵芥等が入り込むのを防止できる水抜き構造を提供することができる。
【0053】
(2)ケース30〜32が設置されているため、ケース30〜32を超えて筐体内に水が浸入することが困難となるので、本発明の第1の実施の形態よりもさらに確実に筐体内の機器類に筐体外部からの水が直接に当たることを防止できる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0055】
100:筐体の底壁、101,102:水抜き穴
1〜8:水抜き構造
10〜14:排水管
20〜23:弁
23a:スリット
30〜32:ケース
30a,31a〜31b,32a〜32c:開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底壁に設けられた水抜き穴から水を排出する水抜き構造であって、
前記水抜き穴の内壁又は前記底壁の筐体外面に上端部が連結されて設置される排水管と、
前記排水管の管内に下端部が位置し、前記水抜き穴の内壁、前記底壁の筐体外面又は前記排水管の管内に、開口した上端部が連結されて設置される弁とを備え、
前記弁は、前記下端部が通常時には閉じており、前記弁の内部に所定量の水が溜まることにより開放されて水を排出することを特徴とする水抜き構造。
【請求項2】
前記弁は、中空のラッパ形状、中空の円錐形状、又は中空の多角錐形状であることを特徴とする請求項1に記載の水抜き構造。
【請求項3】
前記排水管は、当該排水管の排出穴を上方向へ向ける第1のターン部を有しており、前記排出穴が前記弁の最下部よりも低いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水抜き構造。
【請求項4】
前記排水管は、前記第1のターン部により上方向へ向けられた前記排出穴を下方向へ向ける第2のターン部を有しており、前記第2のターン部の最上部が前記弁の最下部よりも低いことを特徴とする請求項3に記載の水抜き構造。
【請求項5】
前記弁は、前記下端部の先端にスリットが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の水抜き構造。
【請求項6】
前記水抜き穴を塞ぐことなく覆うように前記底壁の筐体内面に設置され、かつ前記水を排出するための1つ又は複数の開口部を側壁に有するケースを備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の水抜き構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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