説明

水抜き用バルブ

【課題】自動的にトランクルームの車体下部に溜った水を排出出来ると共に、自動車等の車両のトランクルーム全体が水に浸かる状態においては、確実にトランクルーム内に水が浸入する事を阻止可能な水抜き用バルブを提供する。
【解決手段】車体下部1の水抜き用孔11に取り付けられ、車室内X側の水を車室外Yに排出する為の水抜き用バルブにおいて、バルブ本体2の窪み部26に溜った水の浮力により弁体3が車室内X側に引き上げられ、上部フロート弁32と車室内X側弁座部24との密閉状態を解いて、窪み部26に溜った水を車室外Y側に排出出来る様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き用バルブに関する。
また、本発明は、自動車等の車両に用いられる水抜き用バルブに関する。
更に、本発明は、トランクルーム内に溜った水を自動的に外部に排出する水抜き用バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のトランクルーム内に溜った水を外部に排出する仕組みとしては、図4に示す様に、トランクルームの車体下部100に設けた水抜き用孔110に、ゴム状弾性材製のグロメット10を着脱自在に装着した構造のものが知られている。(特許文献1)
しかし、定期的にトランクルームの車体下部100に水が溜っているか否かを確認する必要が有り、水が溜っている場合には、グロメット10を水抜き用孔110から取り外したり、装着し直したりする手間が掛った。
【0003】
そこで、アヒルの口の様な形状をしたバルブを使用して、自動的にトランクルームの車体下部に溜った水を排出する構造が提案された。(特許文献2)
しかし、バルブの先端を、常に開口した状態にしておく必要がある為、自動車等の車両のトランクルーム全体が水に浸かる状態においては、確実にトランクルーム内に水が浸入する事を阻止する事は困難で有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2001−124246号公報
【特許文献2】特開平2005−14764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、自動的にトランクルームの車体下部に溜った水を排出出来ると共に、自動車等の車両のトランクルーム全体が水に浸かる状態においては、確実にトランクルーム内に水が浸入する事を阻止可能な水抜き用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水抜き用バルブは、車体下部の水抜き用孔に取り付けられ、車室内側の水を車室外に排出する為の水抜き用バルブにおいて、その外周部が前記水抜き用孔に液密に嵌着され、その底部に貫通孔を形成した椀形状のバルブ本体と、前記貫通孔を貫通して伸びる弁軸と、前記弁軸の前記バルブ本体の前記車室内側端部に一体的に設けられた上部フロート弁と、前記弁軸の前記バルブ本体の前記車室外側端部に一体的に設けられた下部フロート弁とより成る弁体とより構成され、前記貫通孔近傍の前記車室内側及び前記車室外側には車室内側弁座部と車室外側弁座部とが形成され、前記上部フロート弁若しくは前記下部フロート弁が当接することにより、密閉状態が達成されると共に、前記バルブ本体の窪み部に溜った水の浮力により前記弁体が前記車室内側に引き上げられ、前記上部フロート弁と前記車室内側弁座部との密閉状態を解いて、前記窪み部に溜った水を前記車室外側に排出出来る様にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の水抜き用バルブによれば、自動的にトランクルームの車体下部に溜った水を排出出来ると共に、自動車等の車両のトランクルーム全体が水に浸かる状態においては、確実にトランクルーム内に水が浸入する事を阻止できる。
また、請求項2記載の発明の水抜き用バルブによれば、上部フロート弁全体を浮力として利用できる為、弁体を確実に作動させることが出来る。
【0008】
更に、請求項3記載の発明の水抜き用バルブによれば、浮力により弁体を確実に作動させることが出来る。
また、請求項4記載の発明の水抜き用バルブによれば、下部フロート弁の弁座部との当接面に土砂等が付着する事を回避出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る水抜き用バルブの縦断面図。
【図2】図1の水抜き用バルブが溜った水を排出している状態を示す縦断面図。
【図3】図1の水抜き用バルブが外部からの水の浸入を防いでいる状態を示す縦断面図。
【図4】従来技術に係る水抜き用グロメットの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図に基づき説明する。
【0011】
図1乃至図3において、本発明に係る水抜き用バルブは、車体下部1の水抜き用孔11に取り付けられ、車室内X側の水を車室外Yに排出する為のものである。
そして、この水抜き用バルブの構造は、その外周部21が水抜き用孔11に液密に嵌着され、その底部22に貫通孔23を形成した椀形状のバルブ本体2と、貫通孔23を貫通して伸びる弁軸31と、この弁軸31のバルブ本体2の車室内X側端部に一体的に設けられた上部フロート弁32と、弁軸31のバルブ本体2の車室外Y側端部に一体的に設けられた下部フロート弁33とより成る弁体3とより構成されている。
【0012】
更に、貫通孔23近傍の車室内X側及び車室外Y側には、車室内側弁座部24と車室外側弁座部25とが形成され、上部フロート弁32若しくは下部フロート弁33が当接することにより、密閉状態が達成されると共に、バルブ本体2の窪み部26に溜った水の浮力により弁体3が車室内X側に引き上げられ、上部フロート弁32と車室内側弁座部24との密閉状態を解いて、窪み部26に溜った水を車室外Y側に排出出来る様にしている。
【0013】
具体的には、図2に示す様に、バルブ本体2の窪み部26に溜った水の浮力により弁体3が車室内X側に引き上げられ、上部フロート弁32と車室内側弁座部24との密閉状態を解いて、貫通孔23から窪み部26に溜った水が車室外Y側に排出される。
【0014】
また、バルブ本体2は、金属材製の椀形状部材全体が、車室内側弁座部24と車室外側弁座部25を形成しているゴム状弾性材により被覆された構造となっている。
この事により、バルブ本体2が腐食する事を効果的に防ぐと共に、バルブ本体2の外周部21と水抜き用孔11との間からの水漏れを阻止している。
【0015】
また、バルブ本体2の外周部には、鍔部27を形成して、車体下部1との位置決めを確実に行える構造としている。
本実施態様では、鍔部27を車室内X側に配置する構成としたが、鍔部27を車室外Y側に配置する構成として、水抜き用バルブを車室外Y側から組み込める構成としても良い。
更に、本実施態様の様に、鍔部27を車室内X側に配置する構成とした場合は、鍔部27に放射状の切欠きを設け、車体下部1に溜った水が確実に、窪み部26内に入り込む構成とする事が好ましい。
【0016】
窪み部26の深さは、上部フロート弁32全体が収まる深さを備えている。
この事により、上部フロート弁32全体を浮力として利用できる為、弁体3を確実に作動させることが出来る。
【0017】
更に、上部フロート弁32は、上部フロート弁3が水に沈んだ際、弁体3を車室内X側に引き上げるのに十分な浮力を生じさせる能力を備えている。
具体的には、上部フロート弁32を、合成樹脂材製の中空体や発泡体で製作する事により、比重を1以下として、弁体3全体の重量及び上部フロート弁32と車室内側弁座部24との固着力に打ち勝つだけの浮力を生じさせるものである。
【0018】
また、下部フロート弁33の車室外側弁座部25と当接する面331は、弁軸31に向かって収斂する円錐形状面としている。
この為、下部フロート弁33の弁座部25との当接面331に土砂等が付着する事を回避出来る。
【0019】
この結果、図3に示す様に、自動車等の車両のトランクルーム全体が水に浸かる状態においては、一部の外部の水が貫通孔23を介して窪み部26に入り込むと、この入り込んだ水により上部フロート弁32に浮力が与えられ、弁体3が車室内X側(図上上方)に引き上げられ、下部フロート弁33の当接面331が弁座部25と当接して、更なる水の浸入を阻止する。
この際、車室外Y側の水圧が、下部フロート弁33の下端面を押圧する為、下部フロート弁33の当接面331と弁座部25との密着を確実にしている。
そして、自動車等の車両のトランクルームが水に浸かる状態から回避されると、車室外Y側の水圧が、下部フロート弁33の下端面を押圧する力が作用しなくなる為、弁体3が図上下方に移動し、下部フロート弁33の当接面331と弁座部25との当接状態を解いて、図2に示す状態となり、窪み部26内に溜った水を排出する。
【0020】
車室内側弁座部24と車室外側弁座部25を形成しているゴム状弾性材弾性材の材質としては、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ビニル変性ブチルゴム、エチレンプロピレン系ゴム、フッ素ゴム、アクリル系ゴムまたは水素添加二トリルゴム等の飽和系ゴムが挙げられ、架橋剤、充填剤、可塑剤または老化防止剤等を適宜配合する。
【0021】
上部フロート弁32の材質としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂材製の中空体や発泡体が適宜選択して用いられる。
【0022】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
自動車等の車両のトランクルーム内に溜った水を自動的に外部に排出する水抜き用バルブとして有効に利用出来る。
【符号の説明】
【0024】
1 車体下部
2 バルブ本体
3 弁体
11 水抜き用孔
21 外周部
22 底部
23 貫通孔
24 車室内側弁座部
25 車室外側弁座部
26 窪み部
27 鍔部
31 弁軸
32 上部フロート弁
33 下部フロート弁
331当接する面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部(1)の水抜き用孔(11)に取り付けられ、車室内(X)側の水を車室外(Y)に排出する為の水抜き用バルブにおいて、その外周部(21)が前記水抜き用孔(11)に液密に嵌着され、その底部(22)に貫通孔(23)を形成した椀形状のバルブ本体(2)と、前記貫通孔(23)を貫通して伸びる弁軸(31)と、前記弁軸(31)の前記バルブ本体(2)の前記車室内(X)側端部に一体的に設けられた上部フロート弁(32)と、前記弁軸(31)の前記バルブ本体(2)の前記車室外(Y)側端部に一体的に設けられた下部フロート弁(33)とより成る弁体(3)とより構成され、前記貫通孔(23)近傍の前記車室内(X)側及び前記車室外(Y)側には車室内側弁座部(24)と車室外側弁座部(25)とが形成され、前記上部フロート弁(32)若しくは前記下部フロート弁(33)が当接することにより、密閉状態が達成されると共に、前記バルブ本体(2)の窪み部(26)に溜った水の浮力により前記弁体(3)が前記車室内(X)側に引き上げられ、前記上部フロート弁(32)と前記車室内側弁座部(24)との密閉状態を解いて、前記窪み部(26)に溜った水を前記車室外(Y)側に排出出来る様にしたことを特徴とする水抜き用バルブ。
【請求項2】
前記窪み部(26)の深さは、前記上部フロート弁(32)全体が収まる深さを備えていることを特徴とする請求項1記載の水抜き用バルブ。
【請求項3】
前記上部フロート弁(32)は、前記上部フロート弁(32)が水に沈んだ際、前記弁体(3)を前記車室内(X)側に引き上げるのに十分な浮力を生じさせる能力を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の水抜き用バルブ。
【請求項4】
前記下部フロート弁(33)の前記車室外側弁座部(25)と当接する面(331)が、前記弁軸(31)に向かって収斂する円錐形状面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水抜き用バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96424(P2013−96424A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236568(P2011−236568)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】