説明

水抜き穴用クリップ

【課題】水抜き性能を損ねることなく、ラッゲージドア内への水の浸入防止を兼ね備えた水抜き穴用クリップを提供する。
【解決手段】水抜き穴を覆う蓋本体部51と、水抜き穴から所定の間隔をおいた位置に蓋本体部51を保持し、蓋本体部51の裏面51bから立設していて水抜き穴に係合する一対の爪部52,52と、水抜き穴に装着した状態で、蓋本体部51と水抜き穴周辺のパネルとの隙間を介してラッゲージドア外から水抜き穴内への水の浸入を規制すると共に、ラッゲージドア内から水抜き穴を介して水を排水するよう、蓋本体部51の裏面51bで一対の爪部52,52間に形成された凸部53と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水抜き穴の上方にリアランプのコネクターを配設したラッゲージドアに係り、とくに、当該水抜き穴に装着されるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のラッゲージドアには、その周縁にドアを構成するドアインナーとドアアウターとで画成される空間内に入った水を排出するために水抜き穴が形成されている。
この種のラッゲージドアとして、リアランプを一体に備えたタイプもある。たとえば、図6及び図7に示すラッゲージドア100は、その下縁部に水抜き穴130が形成されている。具体的には、ドアインナパネル120の下縁部に水抜き穴130が形成されている。そして、この水抜き穴130の上方にリアコンビネーションランプ140が配設されている。
【0003】
水抜き穴にグロメットを装着する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−91633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図7に示すラッゲージドア100では、水抜き穴130の上方にリアコンビネーションランプ140のコネクター141が配設されているため、例えば車両を高圧で洗車した場合、当該水抜き穴130からリッド閉断面S内に水が浸入し、さらに水圧が高いとその勢いで水がコネクター141に付着する虞がある。水が付着すると、当該コネクター141が腐食してしまう。ところが、このようなコネクター141の腐食を防止するために、図8に示すように水抜き穴130をキャップ150などで塞いでしまうと、水抜き性能を確保できなくなってしまう。
【0005】
本発明は以上の点にかんがみ、水抜き性能を損ねずに、ラゲッージドア内への水の浸入の防止を兼ね備えた水抜き穴用クリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ラッゲージドアにおける水抜き穴に装着するクリップであって、水抜き穴を覆う蓋本体部と、水抜き穴から所定の間隔をおいた位置に蓋本体部を保持し蓋本体部の裏面から立設していて水抜き穴に係合する一対の爪部と、水抜き穴に装着した状態で蓋本体部と水抜き穴周辺のパネルとの隙間を介してラッゲージドア外から水抜き穴内への水の浸入を規制すると共に、ラッゲージドア内から水抜き穴を介して水を排水するよう蓋本体部の裏面で一対の爪部間に形成された凸部と、を備えていることを特徴としている。
本発明の水抜き穴用クリップにおいて、好ましくは、水抜き穴に装着した状態で本体部のがたつきを防止するがたつき防止部材が蓋本体部の裏面に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラッゲージドアに取り付けた状態では蓋本体部と水抜き穴周辺のラッゲージインナパネルとの隙間を介してラッゲージドア外から水抜き穴内に水が浸入しようとしても、当該水は蓋本体部の裏面の凸部に当たり水抜き穴内へ、即ちラッゲージドア内への浸入が規制される。また、ラッゲージドア内の水は凸部とラッゲージインナパネルとの隙間及び前述の蓋本体部と水抜き穴周辺のラッゲージインナパネルとの隙間を介してラッゲージドア外へ排出される。よって、本発明によれば、水抜き性能を損ねずに、例えば、高圧洗車時の水がドアとボディとの間隙を通過しさらに水抜き穴を介してラッゲージドア内へ浸入するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。図中の矢印、FRは車両前方、UPは車両上方、LHは車幅方向であって左方を示す。
図1は本発明の実施形態に係るラッゲージドア1の斜視図であり、図2は図1のA−A線断面図である。図1はラッゲージアウターパネル10を省略した状態を表している。
ラッゲージドア1は、ラッゲージインナパネル20の下縁であって、左右の端寄りの位置にラッゲージドア1内の水を排出するための水抜き穴30を有する。本実施形態に係るラッゲージドア1には、図2に示すように、水抜き穴の上方にリアランプ40のコネクター41が配設されていることを特徴としている。
これらの図に示されるように、ラッゲージインナパネル20のフランジとラッゲージアウターパネル10のフランジとがヘミングによって形成される下縁部2に隣接したラッゲージインナパネル20の傾斜部21に、水抜き穴30が形成されている。
【0009】
本実施形態では、この水抜き穴30に、図3に示す水抜き穴用クリップ(以下、単にクリップと言う場合がある)50が装着されることを特徴としている。
この水抜き穴用クリップ50は、蓋本体部51と、一対の爪部52,52と、凸部53と、がたつき防止部材54と、から構成されている。なお、図3における二点鎖線の円は、水抜き穴30のラッゲージインナパネル20外側の縁を表している。
【0010】
蓋本体部51は、水抜き穴30をラッゲージインナパネル20の外側から覆うもので、円板状に形成されており、その直径は水抜き穴よりも大きい寸法に設定されている。
一対の爪部52,52は、水抜き穴30から所定の間隔をおいた位置に蓋本体部51を保持するためのものであり、蓋本体部51の裏面51Bから立設している。具体的には、図3に示すように、蓋本体部51の裏面51Bにおいて、一対の爪部52,52は、距離をおいた蓋本体部51の同じ直径線上であって円周縁に隣接した位置に設けられている。各爪部52は、断面四角形の柱部52Aと、この柱部52Aの下部から柱部52Aに直交する方向へ突出した台部52Bと、柱部52Aの上部から台部52B側へ突出した係合部52Cと、から構成されている。
【0011】
台部52Bの上面52Dは平坦に形成されており、この上面52Dにラッゲージインナパネル20の外側の面が当たる。係合部52Cの下面52Eも平坦に形成されており、この下面52Eにラッゲージインナパネル20の内側の面が当たる。よって、各爪部52における台部52Bと係合部52Cとの間隔D[mm](図3参照)は、ラッゲージインナパネル20の厚みt[mm](後述の図4参照)程度に設定されている。間隔Dは、好ましくは厚みtよりも若干短く設定される。
また、係合部52Cの上面52Fは、その先端部分が切り欠かれて、図3に示すように、傾斜面52Gとして形成されている。
このように構成される一対の爪部52,52は、図3に示すように、蓋本体部51の裏面51Bにおいて、蓋本体部51の中心Cを通る同一直線L1、即ち直径上で、台部52Bと係合部52Cとの延出方向が当該仮想直線L1に沿うように設けられている。
【0012】
凸部53は、蓋本体部51の裏面51Bで上記一対の爪部52,52間に形成されている。具体的には、凸部53は蓋本体部51の中心Cを通る裏面に垂直な仮想線L2を中心軸とした円柱部53Aと、この円柱部53Aの上面から張り出した半球状又はドーム状の膨出部53Bと、から構成されている。
なお、円柱部53Aの直径は、水抜き穴30よりも小さく設定されており、円柱部53Aの高さH1[mm]は、台部の高さH2[mm]と同じ或いは同程度に設定されている。
【0013】
また、蓋本体部51の裏面51Bには、水抜き穴30に装着した状態で蓋本体部51のがたつきを防止するためのがたつき防止部材54が設けられている。具体的には、図3に示すように、蓋本体部51の裏面51Bにおいて、蓋本体部51の中心Cを通る仮想直線L1と直交する仮想直線L3上で、円周縁の位置で、蓋本体部51の裏面51Bから起立した突片54Aが設けられている。
【0014】
このように形成されたクリップ50は、蓋本体部51の裏面51Bを水抜き穴30に対向させた状態で、爪部52,52を押し込み、各爪部52,52における台部52Bと係合部52Cとが水抜き穴周辺のラッゲージインナパネル20を挟持することで、図4に示すようにラッゲージドア1に取り付けられる。
【0015】
このように、ラッゲージドア1に取り付けた状態では、図5に示すように、蓋本体部51と水抜き穴周辺のラッゲージインナパネル20との隙間S1を介してラッゲージドア外から水抜き穴内に水が矢印Aとして示すように浸入しようとしても、当該水は蓋本体部51の裏面51Bの凸部53に当たり水抜き穴30内へ、即ちラッゲージドア内への浸入が規制される。また、本実施形態では、ラッゲージドア内の水は凸部53とラッゲージインナパネル20との隙間S2及び前述の隙間S1を介してラッゲージドア外へ排出される。
本実施形態に係るクリップ50によれば、水抜き性能を損ねずに、例えば、高圧洗車時の水がドアとボディとの間隙を通過しさらに水が水抜き穴30を介してラッゲージドア内へ入ることを防止できる。
【0016】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
前述の実施形態に係るクリップではがたつき防止部材を有する場合を前提としたが、がたつき防止部材を設けずに構成されてもよい。この場合、爪部の台部の幅を広くするのが望ましい。凸部の形状は、前述の構成例に限定されるものではない。本発明におけるリアランプはリアコンビネーションランプに限るものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るラッゲージドアの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る水抜き穴用クリップを示す斜視図である。
【図4】図3の水抜き穴用クリップの取付状態を示す断面図である。
【図5】図3の水抜き穴用クリップの機能を説明するための断面図である。
【図6】従来のラッゲージドアの斜視図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6の水抜き穴にキャップを装着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ラッゲージドア
2 下縁部
10 ラッゲージアウターパネル
20 ラッゲージインナパネル
21 傾斜部
30 穴
40 リアランプ
41 コネクター
50 クリップ
51 蓋本体部
51B 裏面
52 爪部
52A 柱部
52B 台部
52C 係合部
52D 上面
52E 下面
52F 上面
52G 傾斜面
53 凸部
53A 円柱部
54 防止部材
54A 突片
C 中心
D 間隔
S1,S2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラッゲージドアの水抜き穴に装着するクリップであって、
上記水抜き穴を覆う蓋本体部と、
上記水抜き穴から所定の間隔をおいた位置に上記蓋本体部を保持し該蓋本体部の裏面から立設していて上記水抜き穴に係合する一対の爪部と、
水抜き穴に装着した状態で、上記蓋本体部と水抜き穴周辺のパネルとの隙間を介してラッゲージドア外から水抜き穴内への水の浸入を規制すると共に、ラッゲージドア内から水抜き穴を介して水を排水するよう上記蓋本体部の裏面で上記一対の爪部間に形成された凸部と、を備えていることを特徴とする、水抜き穴用クリップ。
【請求項2】
前記水抜き穴に装着した状態で前記蓋本体部のがたつきを防止するためのがたつき防止部材が該蓋本体部の裏面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の水抜き穴用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−13079(P2010−13079A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177436(P2008−177436)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】