説明

水抜き管のフィルタ手段及び水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法

【課題】水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても装着可能で、かつ汎用性のある水抜き管のフィルタ手段とする。
【解決手段】基端開口32が背土Gに面する水抜き管30内に先端開口31から挿入されるフィルタ手段1であって、水抜き管30に固定される固定部(11)及びこの固定部(11)と一体化された押圧部(12)が備わる本体部材10と、押圧部(12)の先方側において水抜き管30内に挿入され、当該押圧部(12)に押圧されて背土Gに押し当てられる金属束子20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂礫等が水抜き管内に流入するのを防止する水抜き管のフィルタ手段、及び水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤、擁壁、石積壁等に埋め込まれた水抜き管内には、この水抜き管の基端開口に面する背土から水(排水)が流入する。この排水は、水抜き管内を流れた後、先端開口から排出される。しかしながら、水抜き管内に排水が流入するに際しては、当該水抜き管内に砂礫等も流入してしまい、この砂礫等の堆積によって当該水抜き管内を排水が流れなくなるおそれがある。また、水抜き管内に砂礫等が流入すると、背土に空洞が形成され、例えば、背土の崩壊や当該背土を覆う補強層の剥離等が生じるおそれがある。そこで、水抜き管の基端開口にフィルタ手段を装着し、水抜き管内に砂礫等が流入するのを防止するのが一般的になりつつある。
【0003】
水抜き管に装着するフィルタ手段としては、例えば、水抜き管の基端部内に嵌合する筒状部とこの筒状部内に形成された網状部とを有するもの(特許文献1参照)、水抜き管の基端部内に挿入されるカップ状容体とこのカップ状容体内に嵌装されるフィルタ材とを有するもの(特許文献2参照)等が存在する。特許文献1の網状部はフィルタとして機能するとされており、また、特許文献2のフィルタ材としては、カール状の合成樹脂細線をテーパ柱状に絡合させたものや合成樹脂繊維よりなる不織布を重ね合わせたもの等を使用することができるとされている。
【0004】
しかしながら、これらのフィルタ手段は、水抜き管の基端開口に装着された後に背土が埋め戻されることを前提としている。つまり、水抜き管の基端開口が背土に面していない状態において装着されることを前提としている。したがって、フィルタ手段の装着を忘れたまま背土を埋め戻してしまった場合等においては、フィルタ手段の装着を諦めるか、背土を再度掘り起こす必要が生じる。また、そもそも背土を掘り起こすことができない場合は、フィルタ手段を水抜き管に装着することができない。
【0005】
そこで、現在では、背土を掘り起こすことなく水抜き管に装着することができるフィルタ手段の提案が、つまり水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても当該水抜き管に装着することができるフィルタ手段の提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献3は、フィルタ手段を縮径可能とする提案であり、当該フィルタ手段を縮径させた状態で水抜き管内に挿入し、水抜き管の基端部において当該縮径を解くことによって当該フィルタ手段を水抜き管の基端部に固定するとしている。また、特許文献4は、水抜き管を塞ぐフィルタ部と水抜き管の内壁に当接して弾性変形する固定部とを有するフィルタ手段を提案している。このフィルタ手段は、固定部の弾性力によってフィルタ部が水抜き管内に固定されるとするものである。
【0007】
これら特許文献3や特許文献4のフィルタ手段は、縮径や弾性変形を利用して水抜き管の先端開口から挿入することができるようにしたものであり、水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても装着することができる。しかしながら、これらのフィルタ手段は、砂礫等の流入は防止しつつ、排水は通すというフィルタ機能について特に改良がされたものではない。例えば、特許文献3は、筒状部の底面が格子状とされることによってフィルタ機能が発揮されるとし、また、筒状部内に繊維状フィルタ(透水マット)を配置して二重フィルタとするのが好ましいとするにすぎない。一方、特許文献4も、フィルタ部を厚手のフェルト製にするとするにすぎない。
【0008】
しかるに、フィルタ機能を発揮する部位(フィルタ機能部)を単にフェルト製や不織布製等とするのでは砂礫等の流入防止及び排水の円滑な流通のいずれかが機能不十分になるおそれがある。また、これらの機能を考慮したうえで、合成繊維や接着剤等を利用して製造するのではコストが嵩む。さらに、いずれのフィルタ機能部も、水抜き管の内径等に応じて大きさを変更しなければならず、汎用性に欠ける。しかも、水抜き管の基端開口に面する背土に凹凸や傾斜等が存在する場合は、この凹凸面や傾斜面等とフィルタ機能部との間に空隙が形成される。したがって、この空隙内に背土が崩れ落ち、この崩れ落ちた背土(砂礫等)が排水と伴に水抜き管内に流入するおそれや、排水の流通を妨げるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公平7−14437号公報
【特許文献2】登録実用新案第3027218号公報
【特許文献3】特開2004−68576号公報
【特許文献4】特開2010−7300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする主たる課題は、水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても装着可能で、かつ汎用性のある水抜き管のフィルタ手段、及び水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
基端開口が背土に面する水抜き管内に先端開口から挿入されるフィルタ手段であって、
前記水抜き管に固定される固定部及びこの固定部と一体化された押圧部が備わる本体部材と、前記押圧部の先方側において前記水抜き管内に挿入され、当該押圧部に押圧されて前記背土に押し当てられる金属束子と、を有する、
ことを特徴とする水抜き管のフィルタ手段。
【0012】
〔請求項2記載の発明〕
前記固定部が前記水抜き管に内接固定される筒体によって構成され、前記押圧部が当該筒体内を横切る網状体によって構成され、前記筒体の内周面と前記網状体の先側面とで囲まれる空間部に前記金属束子の後端部が収容可能とされている、
請求項1記載の水抜き管のフィルタ手段。
【0013】
〔請求項3記載の発明〕
基端開口が背土に面する水抜き管内に先端開口からフィルタ手段を挿入して、当該フィルタ手段を前記水抜き管に装着する方法であって、
前記フィルタ手段として、前記水抜き管に固定される固定部及びこの固定部と一体化された押圧部が備わる本体部材と、金属束子とを用意し、
前記水抜き管内に前記金属束子及び前記本体部材をこの順に挿入し、前記金属束子を前記押圧部で押圧して前記背土に押し当てる、
ことを特徴とする水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法
【0014】
〔請求項4記載の発明〕
前記固定部が前記水抜き管に内接固定される筒体によって構成され、前記押圧部が当該筒体内を横切る網状体によって構成され、
前記水抜き管内に前記筒体を挿入するに先立って当該筒体の外周面に接着剤を塗布しておき、前記筒体の内周面と前記網状体の先側面とで囲まれる空間部に前記金属束子の後端部が収容された状態で前記挿入を行う、
請求項3記載の水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法
【0015】
(主な作用効果)
本発明者等は、現在、市場に流通している金属束子がフィルタ手段の構成要素(フィルタ機能部)とするに好適な特性を有することを知見した。そこで、この金属束子の特性を発揮させるのに必要なさまざまな検討を行い、結果、本発明が創作されるに至ったものである。
すなわち、本発明のフィルタ手段は、金属束子及び本体部材を有するが、これらの部材が水抜き管内に挿入可能とされている。したがって、水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても装着可能である。また、本体部材は固定部及び押圧部を有し、金属束子がこの押圧部に押圧されて背土に押し当てられるため、当該金属束子は押圧方向と直交する方向に広がる。したがって、金属束子は、自動的に水抜き管の内周面にフィットする形状や大きさとなり、汎用性に優れる。しかも、金属束子は柔軟性を有するため、水抜き管の基端開口に面する背土に凹凸や傾斜等が存在する場合においても、この凹凸面や傾斜面等にフィットし、両者の間に空隙が形成されない。したがって、空隙内に背土が崩れ落ち、この崩れ落ちた背土(砂礫等)が排水と伴に水抜き管内に流入するおそれや、排水の流通を妨げるおそれがない。そして、金属束子は砂礫等の流入防止機能及び排水の円滑な流通機能(排水性)を兼ね備え、フィルタ機能は十分に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、水抜き管の基端開口が背土に面した状態においても装着可能で、かつ汎用性のある水抜き管のフィルタ手段、及び水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本体部材及び金属束子からなるフィルタ手段の斜視図並びにこのフィルタ手段が装着される水抜き管の斜視図である。
【図2】筒体及び網状体からなる本体部材について、筒体の一部を切欠き、網状体を露出させた状態を示す斜視図である。
【図3】金属束子の斜視図及びこの金属束子を構成する金属扁平線を拡大した状態を示す斜視図である。
【図4】フィルタ手段の装着施工例における水抜き管設置前の模式断面図である。
【図5】フィルタ手段の装着施工例における水抜き管設置後の模式断面図である。
【図6】フィルタ手段の装着施工例における増厚補強層形成後の模式断面図である。
【図7】フィルタ手段の装着施工例におけるモルタル注入後の模式断面図である。
【図8】フィルタ手段の装着施工例における封止材破断後の模式断面図である。
【図9】フィルタ手段の装着施工例におけるフィルタ手段装着後の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本形態のフィルタ手段1は、本体部材10及び金属束子20を有する。また、本体部材10は、図2に示すように、水抜き管30に内接固定される筒体11及びこの筒体11内を横切る網状体12で構成されている。
【0019】
水抜き管30は、基端開口32に面する背土G(図5等参照)から流入した排水を先端開口31から排出する管である。この水抜き管30は、例えば、断面真円形状の硬質塩化ビニル管等によって構成される。ただし、フィルタ手段1の金属束子20は柔軟性を有しており、その断面形状が容易に変化する。したがって、本形態のフィルタ手段1は、本体部材10の断面形状を変えるのみでさまざまな断面形状の水抜き管に装着することができる。断面真円形状ではない水抜き管としては、例えば、断面楕円形状、断面方形状の水抜き管や、特開平5−263429号公報等が開示するような断面三角形状の水抜き管等を例示することができる。
【0020】
水抜き管30の外径や内径、厚さ(管厚)等は、特に限定されない。水抜き管30は、強度等を重視して使用されるVP管(いわゆる塩ビ厚肉管)等の厚肉管であっても、排水性等を重視して使用されるVU管(いわゆる塩ビ薄肉管)等の薄肉管であってもよい。また、水抜き管30の素材も特に限定されず、硬質塩化ビニルではなく、例えば、金属等であってもよい。
【0021】
筒体11は、網状体12を水抜き管30に固定して軸方向に動かないようにする固定部としての機能を有する。したがって、筒体11に変えて、例えば、実開平3−62130号公報等が開示するような針金等を適宜の形状に折り曲げたものを固定部として採用することもできる。ただし、固定部が筒体11であると、金属束子20を水抜き管30の先端開口31から挿入し、基端開口32に向けて押し進めるのが容易になるとの利点や、水抜き管30に対する固定強度が高まるとの利点がある。
【0022】
筒体11の断面形状は特に限定されず、水抜き管30の断面形状とは異なる断面形状とすることもできる。ただし、上記固定強度の観点や排水性の観点からは、水抜き管30の相似形状とするのが好ましい。本形態の筒体11は、外周面11bが水抜き管30の内周面30aに内接する断面真円形状とされている。
【0023】
筒体11の厚さは特に限定されないが、排水性の観点からは可及的に薄くするのが好ましい。また、筒体11は、内周面11aや外周面11bに凹凸等が存在してもよく、筒体11を径方向に貫く孔等が存在してもよい。さらに、筒体11の長さは特に限定されず、例えば、3〜15cm、好ましくは5〜10cmとされる。
【0024】
網状体12は、水抜き管30内に挿入された金属束子20を先端開口31から基端開口32に向けて押し進める機能を有する。また、網状体12は、水抜き管30の基端部において金属束子20を押圧して背土Gに押し当てる押圧部としての機能も有する。したがって、網状体12に変えて、例えば、上記実開平3−62130号公報等が開示するような針金等を適宜の形状に折り曲げたものを押圧部として使用することもできる。ただし、押圧部が網状体12であると、フィルタ性能が高まるとの利点がある。また、押圧部が網状体12であると、金属束子20を押し進めるに際して当該金属束子20と網状体12との間に断面方向に関して大きな摩擦力が生じる。したがって、金属束子20の断面方向へのヨレ等が防止され、当該金属束子20が断面方向の一方に偏ってしまうおそれがない。結果、金属束子20によるフィルタ機能が断面方向に関して均等に発揮される。
【0025】
網状体12の網目の大きさは特に限定されず、以上の押圧機能、フィルタ機能、摩擦機能等を必要により考慮して設計することができる。また、網状体12は、筒体11の軸方向に対して斜めに配置することもできるが、金属束子20のヨレ等を防止するという観点からは、本形態のように、平板状のものを筒体11の軸方向に対して直交するように配置するのが好ましい。
【0026】
本形態の筒体11及び網状体12は、一体化されている。この一体化は、一体成型によるものであっても、接合等によるものであってもよい。接合等による場合は、筒体11として市販化されている硬質塩化ビニル管等を使用することもできる。ただし、筒体11の強度は水抜き管30のように大きく設定する必要がない。したがって、市販化されている硬質塩化ビニル管等を使用する場合は、排水性を重視してVP管(塩ビ厚肉管)よりもVU管(塩ビ薄肉管)を選択するのが好ましい。
【0027】
金属束子20は、水抜き管30内に砂礫等が流入するのを防止しつつ、排水を流入させるフィルタとしての機能を有する(フィルタ機能部)。この金属束子20は、例えば、直径0.5〜3.0mmの金属丸線をダイヤモンドダイス等によって伸線して縮径し、次いで、図3に示すように、圧延等によって扁平化しつつ、螺旋状にカール巻きしてコイル状とし、このコイル状の金属扁平線21を絡み合わることによって形成することができる。このように金属タワシ20は、コイル状の金属扁平線21が単に絡み合うことによって塊状とされているため、極めて柔軟であり、その全体形状が押し当てられた物の形状に沿って容易に変形する。したがって、前述したように、水抜き管30の基端開口32に面する背土Gに凹凸や傾斜等が存在する場合においても、金属束子20は当該凹凸面や傾斜面等に容易にフィットする。
【0028】
金属扁平線21によって形成されるコイルの外径C1は特に限定されないが、好ましくは2.0〜10.0mmである。外径C1が1.0mm未満であると、金属束子20が密になり過ぎ、排水性が低下するおそれがある。また、外径C1が2.0mm未満であると、曲率半径が小さくコイル一巻き当たりにおける背土G(図9参照)との接触面積が狭くなるため、背土Gが削られてしまうおそれがある。他方、外径C1が10.0mmを超えると、水抜き管30内に砂礫等が流入し易くなり、フィルタ性能が不十分になるおそれがある。また、外径C1が10.0mmを超えると、金属束子20の形状保持性が低下し、水抜き管30内に挿入し難くなるおそれがある。
【0029】
金属扁平線21によって形成されるコイルのピッチC2は特に限定されないが、好ましくは0.1〜5.0mmである。ピッチC2が0.1mm未満であると、金属束子20が密になり過ぎ、排水性が低下するおそれがある。他方、ピッチC2が5.0mmを超えると、コイルの絡み合いが悪くなり、金属束子20の形状保持性が低下して水抜き管30内に挿入し難くなるおそれがある。
【0030】
金属扁平線21の断面形状、大きさ等は特に限定されないが、本形態のように断面略方形状とされる場合、その幅C3は、好ましくは0.1〜3.0mmである。幅C3が0.1mm未満であると、金属扁平線21の剛性が低下し、金属束子20の形状保持性が低下して水抜き管30内に挿入し難くなるおそれがある。他方、幅C2が3.0mmを超えると、金属扁平線21の剛性が高くなり、金属束子20の柔軟性が低下するおそれがある。
【0031】
一方、金属扁平線21の厚さC4は、好ましくは0.01〜1.0mmである。厚さC4が0.01mm未満であると、金属扁平線21の剛性が低下し、金属束子20の形状保持性が低下して水抜き管30内に挿入し難くなるおそれがある。また、厚さC4が0.01mm未満であると、コイル一巻き当たりにおける背土Gとの接触面積が狭くなるため、背土Gが削られてしまうおそれがある。他方、厚さC4が1.0mmを超えると、金属扁平線21の剛性が高くなり、金属束子20の柔軟性が低下するおそれがある。
【0032】
金属扁平線21の素材は特に限定されず、例えば銅、亜鉛、スズ又はこれらの合金等を使用することができる。ただし、耐久性や防錆性等の観点からは、ステンレス鋼を使用するのが好ましい。
【0033】
次に、図4〜9を参照しながら、水抜き管30に対するフィルタ手段1の装着方法について説明する。なお、地山(背土)Gの法面にモルタルやコンクリート等からなる既設補強層M1が存在する場合において、この既設補強層M1を補修や補強等するに際しては、新たな水抜き管の設置やこの水抜き管に対するフィルタ手段の装着等が行われることがある。そこで、以下では、この場合を例に説明する。ただし、本発明のフィルタ手段やこのフィルタ手段を水抜き管に装着する方法は、この場合に限定して適用可能なものではない。本発明は、既設補強層等が存在しない場合においても適用することができ、また、既設の水抜き管に対しても適用することができる。
【0034】
本形態の施工例においては、まず、図4に示すように、水抜き管30の基端開口32をビニールテープ等の封止材32Tによって塞いでおく。この封止により、空洞Aに注入したモルタル等からなる注入材S(図7参照)が水抜き管30の基端開口32から当該水抜き管30内に流入するのが防止される。なお、この注入材Sの注入に関する詳細は後述する。
【0035】
基端開口32が封止材32Tによって塞がれた水抜き管30は、図5に示すように、封止材32Tが地山(背土)Gに面するように埋め込む。この埋設方法は、特に限定されるものではないが、通常、既設補強層M1に孔を形成し、この孔に水抜き管30を挿入する方法による。また、この水抜き管30の埋設は、通常、幅方向や高さ方向に適宜の間隔をおいて複数箇所に行う。
【0036】
水抜き管30の埋設が終了したら、図6に示すように、既設補強層M1の表面にモルタルやコンクリート等を吹き付けて増厚補強層M2を形成する。この増厚補強層M2の形成によって劣化した既設補強層M1が補修・補強され、地山Gの法面保護が図られる。この増厚補強層M2の形成は、水抜き管30の先端開口31が覆われないように行う必要がある。したがって、水抜き管30の長さは、増厚補強層M2の設計厚さに応じて設計しておく。
【0037】
本形態において、水抜き管30の先端部は、増厚補強層M2の表面に沿うように傾斜するテーパ状とされている。ただし、水抜き管30の先端部は、テーパ状とされていなくてもよく、また、増厚補強層M2を形成した後、当該水抜き管30の先端部を増厚補強層M2の表面に沿うようにカットしてもよい。
【0038】
増厚補強層M2の形成が終了したら、図7に示すように、地山Gと既設補強層M1との間に形成された空洞Aにモルタル等のセメント系グラウトからなる注入材Sを注入する。この注入材Sの注入によって劣化した既設補強層M1の滑落防止や地山Gの補修・補強等が図られる。この注入材Sの注入に際しては、水抜き管30の基端開口32が封止材32Tによって塞がれているため、注入材Sが基端開口32から水抜き管30内に流入するおそれがない。
【0039】
注入材Sの注入方法は、特に限定されるものではなく、例えば、地山Gに向かって増厚補強層M2及び既設補強層M1を削孔し、必要によっては地山Gまで削孔し、この削孔を通して注入することができる。図示例では、当該削孔に注入管40を挿入し、この注入管40の注入口41を空洞Aに臨ませ、当該注入口41から空洞Aに注入材Sを注入する形態を示している。この注入材Sの注入に際しては、注入圧の管理等を行い、注入状態を把握するのが好ましい。
【0040】
この注入材Sの注入は、地山Gに対しても行い、地山Gの補強を同時に図ることもできる。また、注入管40として、注入管としての機能のほか、ロックボルトとしての機能も有するものを使用し、地山Gに対する既設補強層M1等の固定力を高めることもできる。なお、図示例では、空洞Aが地山Gと既設補強層M1との間全域にわって存在しているが、通常は一部である。
【0041】
モルタルSの注入が終了したら、図8に示すように、封止材32Tを破断し、水抜き管32の基端開口32を露出させる。封止材32Tを破断する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水抜き管30内に棒材、パイプ材等の部材を差し込み、これらの部材の先端部で封止材32Tを引っ掻くことによって破断することができる。
【0042】
他方、この破断作業と同時に、又は前後して本体部材10及び金属束子20からなるフィルタ手段1を用意する。そして、本体部材10を構成する筒体11の外周面11bに塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤等からなる接着剤を塗布する。
【0043】
この接着剤の塗布が終了したら、水抜き管30内に金属束子20及び本体部材10をこの順に挿入し、水抜き管30の基端開口32に向かって挿入し続ける(押し進める)。この挿入は、筒体11の内周面11aと網状体12の先側面12aとで囲まれる空間部11Xに金属束子20の後端部が収容された状態で行われるため、極めて円滑・迅速に行うことができる。
【0044】
金属束子20及び本体部材10を押し進める方法は、特に限定されるものではなく、例えば、金属束子20及び本体部材10が挿入された水抜き管30内に棒材、パイプ材等の部材を差し込み、これらの部材の先端部で本体部材10を突く方法によることができる。この挿入のための部材と前述封止材32Tを破断するための部材とは、同じものであっても異なるものであってもよい。
【0045】
金属束子20及び本体部材10の挿入は、図9に示すように、金属束子20が網状体12に押圧されて背土Gの基端開口32に面する面Gaに押し当てられるまで行う。金属束子20は反発力(バネ効果)を有するため、この押し当てによって背土Gの緩み等が防止される。
【0046】
この状態で適宜の時間、例えば、10〜180秒保持する。この保持により、筒体11の外周面11bに塗布した接着剤によって筒体11の外周面11bが水抜き管30の内周面30aに接着され、筒体11が水抜き管30に内接固定された状態になる。これにより、水抜き管30に対するフィルタ手段1の装着が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、砂礫等が水抜き管内に流入するのを防止する水抜き管のフィルタ手段、及び水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法として適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…フィルタ手段、10…本体部材、11…筒体、12…網状体、20…金属束子、21…金属扁平線、30…水抜き管、31…先端開口、32…基端開口、32T…封止材、40…注入管、41…注入口、A…空洞、G…背土(地山)、M1…既設補強層、M2…増厚補強層、S…注入材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端開口が背土に面する水抜き管内に先端開口から挿入されるフィルタ手段であって、
前記水抜き管に固定される固定部及びこの固定部と一体化された押圧部が備わる本体部材と、前記押圧部の先方側において前記水抜き管内に挿入され、当該押圧部に押圧されて前記背土に押し当てられる金属束子と、を有する、
ことを特徴とする水抜き管のフィルタ手段。
【請求項2】
前記固定部が前記水抜き管に内接固定される筒体によって構成され、前記押圧部が当該筒体内を横切る網状体によって構成され、前記筒体の内周面と前記網状体の先側面とで囲まれる空間部に前記金属束子の後端部が収容可能とされている、
請求項1記載の水抜き管のフィルタ手段。
【請求項3】
基端開口が背土に面する水抜き管内に先端開口からフィルタ手段を挿入して、当該フィルタ手段を前記水抜き管に装着する方法であって、
前記フィルタ手段として、前記水抜き管に固定される固定部及びこの固定部と一体化された押圧部が備わる本体部材と、金属束子とを用意し、
前記水抜き管内に前記金属束子及び前記本体部材をこの順に挿入し、前記金属束子を前記押圧部で押圧して前記背土に押し当てる、
ことを特徴とする水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法
【請求項4】
前記固定部が前記水抜き管に内接固定される筒体によって構成され、前記押圧部が当該筒体内を横切る網状体によって構成され、
前記水抜き管内に前記筒体を挿入するに先立って当該筒体の外周面に接着剤を塗布しておき、前記筒体の内周面と前記網状体の先側面とで囲まれる空間部に前記金属束子の後端部が収容された状態で前記挿入を行う、
請求項3記載の水抜き管に対するフィルタ手段の装着方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−53474(P2013−53474A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193117(P2011−193117)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】