説明

水晶ウエハ

【課題】 水晶ウエハから
水晶片を折り取る際に、水晶片に連結部の一部であるバリが残ることがない水晶ウエハを提供することを課題とする。
【解決手段】 水晶ウエハは、支持部2と、連結部3を介して支持部1と一体的に形成された水晶片2とを備えている。連結部3の第1の主面及び第2の主面のそれぞれは、平面透視において、連結部3の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部K1を有していることを特徴とするものである。連結部3の第1の主面及び第2の主面のそれぞれが平面透視において、連結部3の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部K1を有していることによって、連結部3の厚みを十分に確保して意図せず折れる可能性を低減させつつ、連結部3の幅方向に割れやすくしてバリが生じる可能性を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶片を含む水晶ウエハに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶ウエハは、例えば水晶振動素子等の水晶片を有しており、水晶片は連結部を介して支持部と一体的に形成されている。水晶片は、例えば治具等によって力が加えられることによって、連結部において折られて支持部から取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−134364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水晶ウエハから水晶片を折り取る際に、水晶片に連結部の一部であるバリが残る可能性があった。もし、水晶片にバリが残っている場合、例えば、水晶片をパッケージに実装する際に、水晶片を所望の位置に実装することが困難になる等の不具合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、折り取った際に水晶片にバリが残る可能性が低減された水晶ウエハを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様による水晶ウエハは、連結部を介して支持部と一体的に形成された水晶片を備え、連結部の第1の主面及び第2の主面のそれぞれが、平面透視において、連結部の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様による水晶ウエハにおいて、連結部の第1の主面及び第2の主面のそれぞれが平面透視において、連結部の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部を有していることによって、連結部の厚みを十分に確保して意図せず折れる可能性を低減させつつ、連結部の幅方向に割れやすくしてバリが生じる可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態における水晶ウエハを示す斜視図である。
【図2】図1に示された水晶ウエハの部分拡大図である。
【図3】図2に示された水晶ウエハの部分平面透視図である。
【図4】図2に示された水晶ウエハの凹部形状を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における変形例の凹部形状が示された水晶ウエハの部分平面透視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における水晶ウエハを示す部分平面透視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における変形例の凹部形状が示された水晶ウエハの部分平面透視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における水晶ウエハを示す部分平面透視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態における水晶ウエハを示す部分平面透視図である。
【図10】本発明の他の実施形態における水晶ウエハを示す部分平面透視図である。
【図11】本発明の他の実施形態における水晶ウエハを示す部分平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における水晶ウエハは、図1〜図3に示されているように、支持部1と、水晶片2と、連結部3とを含んでいる。
【0011】
支持部1は、例えば枠形状を有している。図1〜図3において、水晶ウエハは、仮想のXYZ空間に設けられている。支持部1は、連結部3によって一体的に連結された水晶片2と連結されている。
【0012】
水晶片2は、枠状の支持部1の内側に設けられている。図2に示されているように、水晶片2は、基部21と振動腕部22とからなり、振動腕部22が第一の振動腕部22a及び第二の振動腕部22bとから成る。
【0013】
第一の振動腕部22a及び第二の振動腕部22bは、基部21の一辺から仮想Y軸の方向に平行に延設されている。
【0014】
このような水晶片2は、基部21と各振動腕部22とが一体となって音叉形状を有しており、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術により形成されている。
【0015】
図2に示されているように、水晶片2は、励振用電極23a、23b、24a及び24bと、接続用電極25a及び25bと、周波数調整用金属膜26a及び26bと、導配線パターン27、28とを有している。
【0016】
図2に示されているように、励振用電極23aは、第一の振動腕部22aの表裏主面に設けられている。また、励振用電極23bは、第一の振動腕部22aの対向する両側面に設けられている。周波数調整用金属膜26aは、第一の振動腕部22aの表主面及び両側面の先端部に設けられている。接続用電極25aは、基部21の第一の振動腕部22a側であって、基部21の表裏主面に設けられている。
【0017】
また、図2に示されているように、励振用電極24aは、第二の振動腕部22bの表裏主面に設けられている。また、励振用電極24bは、第二の振動腕部22bの対向する両側面に設けられている。周波数調整用金属膜26bは、第二の振動腕部22bの表主面及び側面の先端部に設けられている。また、接続用電極25bは、基部21の第二の振動腕部22b側であって、基部21の表裏主面に設けられている。
【0018】
なお、周波数調整用金属膜26a及び26bは、構成する金属の量を増減させることにより、振動周波数値を所望する値に調整することができる。
【0019】
図2に示されているように、励振用電極23a及び24bと、周波数調整用金属膜26bと接続用電極25bとは、水晶片2表面に設けられた、例えば導配線パターン27により電気的に接続している。接続用電極25bは、基部21に設けられている導配線パターン27により励振用電極23aと電気的に接続している。また、接続用電極25bは、励振用電極24bと電気的に接続している。
【0020】
また、図2に示されているように、励振用電極23b及び24aと、周波数調整用金属膜26aと接続用電極25aとは、水晶片2の表面に設けられた、例えば導配線パターン28により電気的に接続している。接続用電極25aは、励振用電極23b及び周波数調整用金属膜26aと電気的に接続している。また、基部21の表主面に設けられた導配線パターン28は、励振用電極24a及び励振用電極23bと電気的に接続している。
【0021】
なお、各励振用電極23a、23b、24a及び24bと、接続用電極25a、25bと、周波数調整用金属膜26a、26bと、導配線パターン27、28とは、複数の金属膜を積層してなる多層構造体であり、水晶片2に第1の金属膜が形成され、第1の金属膜の上面に第2の金属膜が積層するように形成されている。第1の金属膜は、例えば、Cr(クロム)から構成され、第2の金属膜は、例えば、金により構成されている。
【0022】
また、励振用電極23a、23b、24a及び24b及び接続用電極25a、25bは、フォトリソグラフィー技術、蒸着技術やスパッタリング技術によって、所定のパターン形状にパターン形成される。
【0023】
水晶片2を振動させる場合、接続用電極25a及び25bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的にとらえると、第一の振動腕部22aの励振用電極23bは+(プラス)電位となり、励振用電極23aは−(マイナス)電位となり、+から−に電界が生じる。一方、このときの第二の振動腕部22bの励振用電極は、第一の振動腕部22aの励振用電極に生じた極性とは反対の極性となる。これらの印加された電界により、第一の振動腕部22a及び第二の振動腕部22bに伸縮現象が生じ、各振動腕部22に設定した共振周波数の屈曲振動を得る。
【0024】
図1及び図2に示されているように、連結部3は、水晶片2と支持部1が連結されるように設けられている。連結部3は、水晶片2と支持部1とをつなぐ役割を果たしている。図3において、連結部3の幅方向とは、仮想X軸方向であり、連結部3の長さ方向とは、仮想Y軸方向である。
【0025】
図2及び図3に示されているように、連結部3は、第1の主面3a(図2参照)及び第2の主面3b(図2参照)のそれぞれに、平面透視において、連結部3の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部K1を有している。図3に示されているように凹部K1の開口の形状は、例えば四角形状になっている。
【0026】
図4に示されているように、凹部K1の断面形状は、例えばU字形状になっている。凹部K1の断面形状を例えばU字形状にすることによって、水晶片2を連結部3から折り取る際に、凹部K1の底面に応力が集中してかかることになり、その集中した箇所を起点にしてクラックが連結部3の深さ方向へ向かって進展しやすいので、バリが発生する可能性を低減することができる。連結部3の深さが、例えば、100μmであり、凹部K1の深さは、例えば、10〜30μmである。
【0027】
図5に示されているように、第1の実施形態における水晶ウエハの変形例は、凹部K1の開口形状が円形状になっている。また、凹部K1の開口形状を円形状とすることによって、水晶片2を連結部3から折り取る際に、応力が集中する箇所が幅方向に並んでいるため、クラックが他方の凹部K1へ向かって進展しやすいので、クラックは幅方向に進展することになる。
【0028】
水晶片2の連結部3からの折り取り方法は、連結部3に対応する箇所に開口部が設けられているマスク治具と折り取った後の収納部が設けられているトレイ治具とで水晶ウエハを挟みこむ。次に、折り取り用ピンをマスク治具の開口部を通るようにして連結部3に押し付けることで、水晶ウエハから水晶片2が折り取られる。
【0029】
このようにして水晶ウエハから折り取られた水晶片2(すなわち水晶振動素子)を、導電性接着剤によってパッケージの搭載パッドに搭載することによって、水晶振動子を得ることができる。
【0030】
ちなみに、水晶振動子に用いられるパッケージは、例えば、平板状の絶縁基体の上面に搭載パッドが設けられており、この搭載パッドを囲むようにして絶縁基体に枠体が設けられている構造を有している。
【0031】
第1の実施形態の水晶ウエハにおいて、平面透視した際に、連結部3の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部K1を有していることによって、凹部K1が連結部3の幅方向において同じ位置に設けられているのと比して、表裏の凹部K1間が厚くなり不用意に割れることを低減することができる。
【0032】
また、凹部K1が幅方向にずれていることによって、一方の凹部K1を起点としたクラックは、他方の凹部K1へ向かって進展しやすいので、クラックは幅方向に進展することになる。よって、凹部K1の位置で連結部3の幅方向に割れるので、バリが発生する可能性を低減することができる。
【0033】
また、連結部3の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部K1を有していることによって、水晶片にバリが発生する可能性を低減できるので、例えば、水晶片をパッケージの搭載パッドに実装する際に、バリがパッケージの枠体の内壁にぶつかることがなく、パッケージの所望の位置に実装することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における水晶ウエハは、図6に示されているように、凹部K1が、連結部3の幅方向に延びる形状を有している点で第1の実施形態と異なる。なお、第2の実施形態においては、凹部K1が、連結部3の幅方向に延びる形状を有していること以外は第1の実施形態と同様であるため、この同様の部分についての説明は省略する。
【0035】
図6に示されているように、凹部K1の開口形状は、例えば長方形状にように、連結部3の幅方向に延びる形状を有している。つまり、図6に示されているように、凹部K1の開口は、水晶片2側に位置する線分と、連結部3側に位置する線分と、2つの線分の両端をそれぞれつなげた2本の線分とで囲まれた位置に一定の間隔を空けて設けられている。
【0036】
また、図6に示されているように、第1の主面及び第2の主面のそれぞれの凹部K1は、平面透視して、一部だけが重なるようにして設けられていることにより、不用意に割れやすくなることを防ぎ、水晶片2を連結部3から折り取りする際には、重なった部分が割れやすいため、生産性を向上させることができる。したがって、第1の主面及び第2の主面のそれぞれの凹部K1は、平面透視して、一部だけが重なるようにして設けられていることが好ましい。
【0037】
図7に示されているように、第2の実施形態における水晶ウエハの変形例は、凹部K1の開口形状が楕円形状になっている。このようにすることでも、水晶片2を連結部3から折り取る際に、一方の凹部K1を起点としたクラックは、他方の凹部K1へ向かって進展しやすいので、クラックは幅方向に進展することになる。また、凹部K1の開口形状が幅方向に延びる楕円状になっており、応力が集中しやすい曲率半径の小さい部分が幅方向に並んでいることによって、クラックは幅方向に進展することになる。
【0038】
第2の実施形態における水晶ウエハは、凹部K1が、連結部3の幅方向に延びる形状を有していることによって、凹部K1を起点としたクラックは、幅方向に進展することになる。よって、凹部K1の位置で幅方向に割れるので、水晶片2にバリが発生する可能性を低減することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
第3の実施形態における水晶ウエハは、図8に示されているように、凹部K1が、第1の主面及び第2の主面の端部に設けられている点で第1の実施形態と異なる。なお、第3の実施形態においては、凹部K1が、第1の主面及び第2の主面の端部に設けられていること以外は第1の実施形態と同様であるため、この同様の部分についての説明は省略する。
【0040】
第3の実施形態における水晶ウエハは、凹部K1が連結部3の幅方向における端部から内側に向かうように設けられていることによって、凹部K1の外側端部から連結部3の長さ方向にクラックが進展する可能性が低減されているので、連結部3の幅方向における一方端部から他方の端部にかけて割れやすくなっている。したがって、凹部K1が幅方向の端部から内側に向かうように設けられていることが好ましい。
【0041】
(第4の実施形態)
第4の実施形態における水晶ウエハは、図9に示されているように、連結部3の第1の主面及び第2の主面のそれぞれの凹部K1が平面透視において、連結部3の長さ方向において互いに異なる位置に設けられている点で第1の実施形態と異なる。なお、第4の実施形態においては、凹部K1が、連結部3の第1の主面及び第2の主面のそれぞれの凹部K1が平面透視において、連結部3の長さ方向において互いに異なる位置に設けられていること以外は第1の実施形態と同様であるため、この同様の部分についての説明は省略する。
【0042】
凹部K1の開口形状は、例えば楕円形状、四角形状のような形状を有している。凹部K1は、連結部3の長さ方向において互いに異なる位置に設けられている。
【0043】
第4の実施形態における水晶ウエハは、凹部K1が連結部3の長さ方向において互いに異なる位置に設けられていることによって、長さ方向のクラックの進展は、長さ方向にずれている表裏の凹部間で発生しやすく、凹部間以外の長さ方向へのクラックの進展の可能性を低減することができる。
【0044】
また、第4の実施形態における水晶ウエハは、凹部K1が連結部3の幅方向における端部から内側に向かうように設けられていることによって、凹部間でクラックが進展した後、さらに長さ方向へのクラックの進展の可能性を低減することができる。
【0045】
尚、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。図10に示されているように、第1の主面に設けられている凹部K1は、一方の端部側から複数並んで設けられており、第2の主面に設けられている凹部K1は、他方の端部側から複数並んで設けられていても構わない。
【0046】
また、図11に示されているように、第1の主面に設けられている凹部K1は、複数設けられており、第2の主面に設けられている凹部K1は、平面透視して、第1の主面に設けられている凹部K1の間の位置になるように設けられていても構わない。
【0047】
また、上述した実施形態では、音叉型の水晶片について説明したが、矩形状の水晶片でもかまわない。
【符号の説明】
【0048】
1・・・支持部
2・・・水晶片
21・・・基部
22a・・・第一の振動腕部
22b・・・第二の振動腕部
23a、23b、24a、24b・・・励振用電極
25a、25b・・・接続用電極
26a、26b・・・周波数調整用金属膜
27、28・・・導配線パターン
3・・・連結部
3a・・・第1の主面
3b・・・第2の主面
K1・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
連結部を介して前記支持部と一体的に形成された水晶片とを備え、
前記連結部の第1の主面及び第2の主面のそれぞれが、平面透視において、前記連結部の幅方向において互いに異なる位置に設けられた凹部を有していることを特徴とする水晶ウエハ。
【請求項2】
前記凹部が、前記連結部の前記幅方向に延びる形状を有していることを特徴とする請求項1記載の水晶ウエハ。
【請求項3】
前記凹部が、前記第1の主面及び前記第2の主面の端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の水晶ウエハ。
【請求項4】
前記第1の主面及び第2の主面のそれぞれの凹部が平面透視において、前記連結部の長さ方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水晶ウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98738(P2013−98738A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239535(P2011−239535)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】