説明

水晶デバイスおよび電子機器

【課題】水晶デバイスおよび電子機器の小型化を図ること。
【解決手段】実施形態によれば、容器体と、水晶素子と、電解質部材とを備える水晶デバイスが提供される。容器体は、1または複数のキャビティを有する。水晶素子は、キャビティ内に配置される。電解質部材は、少なくとも一部がキャビティ内に配置される。また、実施形態によれば、これらの容器体と、水晶素子と、電解質部材とを備える水晶デバイスを搭載した電子機器が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水晶デバイスおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック材料等からなる容器体の内部に、水晶素子と水晶素子を発振させるIC(Integrated Circuit)素子とを配置し、これらの素子を金属製の蓋体で気密封止した水晶デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような水晶デバイスは、携帯電話等の電子機器における実装ボード上に搭載され、たとえば、基準信号を出力するタイミングデバイスとして用いられる。
【0004】
ところで、かかる電子機器がメイン電源を落とされた後も、水晶デバイスの動作を継続させるためには、メイン電源とは別のバックアップバッテリである二次電池を実装ボード上に別途搭載し、二次電池の起電力を水晶デバイスへ供給しつづける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−158558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水晶デバイスおよび二次電池をそれぞれ実装ボード上に搭載すると、両者の搭載に要する実装面積がかさんでしまい、実装ボードの小型化、ひいては、電子機器の小型化を図りにくいという問題がある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化を図ることができる水晶デバイスおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る水晶デバイスは、容器体と、水晶素子と、電解質部材とを備える。容器体は、1または複数のキャビティを有する。水晶素子は、前記キャビティ内に配置される。電解質部材は、少なくとも一部が前記キャビティ内に配置される。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、水晶デバイスの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【図2】図2は、パッケージの断面視による説明図である。
【図3】図3は、水晶デバイスの分解斜視図である。
【図4】図4は、第1電極を取り外した状態における水晶デバイスの上面図である。
【図5】図5は、水晶デバイスの下面図である。
【図6】図6は、水晶デバイスの回路ブロック図である。
【図7】図7は、電子機器のブロック図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【図10】図10は、第4の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【図11】図11は、第5の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【図12】図12は、第6の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水晶デバイスおよび電子機器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す各実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る水晶デバイスについて、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。なお、図1では、説明をわかりやすくする観点から、断面の奥側に位置する線の一部を省略している。
【0013】
また、以下の説明においては、水晶デバイスの実装ボードへの搭載面を「下面」と、かかる下面と対向する面を「上面」と、それぞれ記載する。また、以下の説明においては、かかる「下面」あるいは「上面」を「主面」と記載する場合がある。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態に係る水晶デバイス1は、水晶デバイス1を側面と平行な面で切断した場合に、上面側および下面側にそれぞれ凹部(以下、「キャビティ」と記載する)が設けられた容器体であるパッケージ10を備える。
【0015】
そして、パッケージ10における上面側キャビティには、水晶素子20および電解質部材30が配置され、下面側キャビティには、IC(Integrated Circuit)素子40が配置される。
【0016】
また、パッケージ10の上面には電極51が、下面には電極53が、それぞれ設けられる。なお、パッケージ10の内部には、配線(図示せず)が形成されているが、この点については、図2を用いて後述する。
【0017】
上面側キャビティは、第1の凹部における底面をさらに深くした形状の第2の凹部を有している。そして、第1の凹部には電解質部材30が、第2の凹部には水晶素子20が、それぞれ配置される。なお、第1の凹部および第2の凹部は、連続した空間である。
【0018】
上面側キャビティにおける第2の凹部の底面には、電極52が設けられており、水晶素子20は、第2の凹部の底面とのクリアランスを確保するための接続用バンプ経由で、電極52へ接続される。
【0019】
また、上面側キャビティにおける第1の凹部の底面には、第2電極32が設けられており、電解質部材30の底面の一部は、導電性接着剤(たとえば、銀ペースト)によって第2電極32へ接続される。
【0020】
一方、電解質部材30の上面の一部は、導電性接着剤によって第1電極31へ接続される。ここで、第1電極31は、たとえば、コバルトなどの導電体であり、電極としての役割に加え、パッケージ10における上面側キャビティを塞ぐ「蓋体」の役割を兼ねる。
【0021】
そして、第1電極31は、パッケージ10における略枠状の上面に設けられた電極51へ、たとえば、シーム溶接によって接合される。具体的には、第1電極31を、パッケージ10における上面の電極51上へ配置し、第1電極31をGND(グランド)へ接続した状態で、高周波電圧を印加したローラによって第1電極31を電極51側へ押圧する。
【0022】
これにより、第1電極31と電極51とが接する部分が溶融し、両者が結合される。すなわち、パッケージ10の上面側キャビティは気密封止される。なお、上記した第2電極32は、上面側キャビティの段差部分に第1電極31と対向するように設けられる。
【0023】
したがって、かかる段差部分に配置された電解質部材30を、導電性接着剤を介して第1電極31と第2電極32とで挟み込むことができるので、電解質部材30を第1電極31および第2電極32へ確実に導通させることが可能となる。また、上面側キャビティに段差部分を設けることで電解質部材30のパッケージ10への組み込みが容易となる。
【0024】
電解質部材30は、正極層30aと負極層30bとの間に固体電解質層30cを挟んだ部材である。ここで、固体電解質層30cは、たとえば、酸化物系無機固体電解質である結晶質固体電解質および非晶質固体電解質の混合体に成形助剤を加えて成形体を生成し、生成した成形体を熱処理することによって得られる。
【0025】
なお、結晶質固体電解質としては、たとえば、Li1.3l0.3Ti1.7(PO、Li3.6Ge0.60.4などがある。また、非晶質固体電解質としては、たとえば、30LiI−41LiO−29P、40LiO−35B−25LiNbO、10LiO−25B−15SiO−50ZnOなどがある。
【0026】
正極層30aは、正極活物質および酸化物ガラスに成形助剤を加えて加圧成形し、熱処理した多孔質体である。また、負極層30bは、正極層30a中における正極活物質の充放電電位よりも卑な充放電電位を有する遷移金属酸化物を活物質とした多孔質体である。なお、正極層30aおよび負極層30bの一方または双方を省略した電解質部材30を構成することとしてもよい。
【0027】
また、図1では、固体電解質層30cの下面側に正極層30aを、上面側に負極層30bを設けた電解質部材30を例示したが、下面側に負極層30bを、上面側に正極層30aを設けることとしてもよい。なお、電解質部材30、第1電極31および第2電極32は、二次電池に対応する。
【0028】
パッケージ10における下面側キャビティの上面には、IC(Integrated Circuit)素子40が設けられる。IC素子40は、水晶素子20の発振動作を制御するとともに、電解質部材30の充電動作および放電動作を制御する。
【0029】
IC素子40は、パッケージ10における下面側キャビティの上面にアレイ状に並んだバンプ経由でパッケージ10へ接続される(いわゆる、「フリップチップ実装」)。なお、他の手法(たとえば、「ワイヤボンディング」)によってIC素子40を実装してもよい。
【0030】
ここで、図1では、IC素子40をパッケージ10に実装する場合を示したが、IC素子40を省略した水晶デバイス1を構成することとしてもよい。また、パッケージ10の下面側キャビティは、側面の一部が開放された形状であってもよい。なお、水晶素子20、電解質部材30およびIC素子40の電気的な接続関係や、IC素子40の構成の詳細については図6を用いて後述する。
【0031】
また、図1では、上面側キャビティ内の連続した空間に、水晶素子20および電解質部材30を配置したが、水晶素子20が設置される空間と電解質部材30が設置される空間とを蓋体によって区切ることとしてもよい。
【0032】
次に、図1に示したパッケージ10の詳細な構成について図2を用いて説明する。図2は、パッケージ10の断面視による説明図である。なお、図2では、説明をわかりやすくする観点から、断面のハッチングを省略している。
【0033】
図2に示すように、パッケージ10は、セラミックのシートを所定の形状に切断した部材(以下、「シート部材」と記載する)を積層して圧着させ、加熱することによって得られる。また、各シート部材にはビア穴(以下、「ビア」と記載する)や、配線が形成される。なお、以下の説明では、ビアおよび配線を単に配線と記載する場合がある。
【0034】
パッケージ10は、水晶素子20や電解質部材30といった電子部材を保護する役割と、各電子部材同士を電気的に接続する役割とを兼用する。なお、セラミックは、一般的な樹脂と比較して表面のなめらかさや強度が良好であり、封止性能(キャビティを封止する際の密閉度)が高いため、パッケージ10の素材として好適である。
【0035】
シート部材11、シート部材12およびシート部材14は、平面視した場合に、中央部が開口した略枠状の形状を有しており、シート部材13は、開口がない略矩形平板状の形状を有している。すなわち、シート部材11およびシート部材12の開口部分がパッケージ10の上面側キャビティに、シート部材14の開口部分がパッケージ10の下面側キャビティに、それぞれ対応する。
【0036】
ここで、図2に示すように、シート部材11の上面を面15a、シート部材11とシート部材12との接合面を面15b、シート部材12とシート部材13との接合面を面15cとする。また、シート部材13とシート部材14との接合面を面15d、シート部材14の下面を面15eとする。
【0037】
この場合、電極51(図1参照)は面15a上に、電極53(図1参照)は面15e上に、それぞれ形成される。また、電極52(図1参照)は面15c上に、第2電極32は面15b上に、それぞれ形成される。
【0038】
なお、図2では、ビア16aおよびビア16bを例示している(図2の破線参照)。ここで、ビア16aは、図1に示した電極51と、電極53とを電気的に接続する。また、ビア16aは、各シート部材上に形成された配線と適宜、電気的に接続される。また、ビア16bは、図1に示した第2電極32と、たとえば、シート部材13の面15d上に形成された配線とを電気的に接続する。
【0039】
なお、図2には、4層のパッケージ10を例示したが、層数を制限するものではない。また、図2では、隣接するシート部材の形状がそれぞれ異なる場合を例示したが、同一形状のシート部材を隣接させて積層することとしてもよい。たとえば、図2に示したシート部材13を2層以上のシート部材で構成してもよい。
【0040】
このように、パッケージ10は、複数のシート部材の積層体であるので、各シート部材の切り抜き形状や厚みを調整することで、さまざまな形状のキャビティを容易に得ることができる。
【0041】
次に、水晶デバイス1の斜視図について図3を用いて説明する。図3は、水晶デバイス1の分解斜視図である。図3に示すように、水晶デバイス1は、略直方体状の形状を有している。そして、パッケージ10の上面側キャビティの段差部分には、パッケージ10の長手方向に一対の第2電極32が、底面には、パッケージ10の短手方向に一対の電極52が、それぞれ形成されている。なお、図3では、一対の第2電極32のうち一方は、パッケージ10の側面に隠れているため図示していない。
【0042】
まず、水晶素子20が、パッケージ10における上面側キャビティの第2の凹部に配置される。ここで、水晶素子20は、所定の結晶方位角に従ってカットされた略矩形の水晶基板と、水晶基板の両主面にそれぞれ形成された一対の励振電極と、一対の励振電極にそれぞれ電気的に接続された一対の引出電極とを含む。
【0043】
そして、水晶素子20における一対の引出電極は、パッケージ10における一対の電極52へそれぞれ接続される。なお、図3では、いわゆる「平板型」の水晶素子20を例示したが、「音叉型」の水晶素子20を用いることとしてもよい。
【0044】
次に、電解質部材30が、パッケージ10における上面側キャビティの第1の凹部(図1あるいは図2に示した段差部分参照)に配置される。また、電解質部材30における下面の一部は、上記した一対の第2電極32へそれぞれ電気的に接続される。
【0045】
このように、パッケージ10における上面側キャビティに水晶素子20および電解質部材30が配置された後、電解質部材30における上面の一部に導電性接着剤が塗布される。そして、第1電極31は、パッケージ10の上面に形成された電極51へ接合される。
【0046】
このようにすることで、電解質部材30における上面側が第1電極31と、下面側が第2電極32と、それぞれ電気的に接続される。また、パッケージ10における上面側キャビティが気密封止される。
【0047】
また、図3に示すように、パッケージ10における下面側キャビティ(図示せず)には、IC素子40が配置される。なお、パッケージ10の下面に形成された電極53は、実装ボード上の配線へ接続されることになる。
【0048】
次に、水晶デバイス1を上面側からみた構成について図4を用いて説明する。図4は、第1電極31を取り外した状態における水晶デバイス1の上面図である。すなわち、図4は、水晶デバイス1を平面透視した図に相当する。
【0049】
図4に示すように、水晶デバイス1を上面側からみると、パッケージ10の上面側キャビティには、電解質部材30が配置されている。ここで、水晶素子20は、電解質部材30と重なって目視できない。また、パッケージ10の上面側キャビティにおける段差部分(図3参照)には一対の第2電極32の一部が目視される。
【0050】
なお、図4では、水晶素子20が、完全に電解質部材30と重なっている場合を例示したが、水晶素子20および電解質部材30の一部同士が重なるように両電子部材を配置することとしてもよい。
【0051】
次に、水晶デバイス1を下面側からみた構成について図5を用いて説明する。図5は、水晶デバイス1の下面図である。図5に示すように、水晶デバイス1を下面側からみると、パッケージ10の下面側キャビティには、IC素子40が配置されている。また、パッケージ10の四隅部分には、図1および図3に示した電極53が配置されている。
【0052】
なお、図5には、電極53a、電極53b、電極53cおよび電極53dの4つの電極53を例示しているが、電極53の数については任意の個数とすることができる。
【0053】
次に、水晶デバイス1の回路構成について図6を用いて説明する。図6は、水晶デバイス1の回路ブロック図である。なお、図6では、説明をわかりやすくする観点から主な構成要素のみを示している。
【0054】
図6に示すように、水晶デバイス1は、水晶素子20と、電解質部材30と、IC素子40とを備える。また、IC素子40は、電源制御部41と、発振回路42とをさらに備える。
【0055】
まず、IC素子40の端子について説明する。図6に示すように、IC素子40は、端子Vddと、端子Batと、端子GNDと、端子Vcと、端子Outと、端子TX1と端子TX2とを備える。
【0056】
なお、IC素子40の端子Vc、端子Vdd、端子Outおよび端子GNDは、水晶デバイス1の外部電極である電極53a、電極53b、電極53cおよび電極53d(図5参照)へそれぞれ接続される。なお、各端子と各外部電極との接続関係は、例示した組み合わせ以外であってもよい。
【0057】
ここで、IC素子40の端子Vddには、電極53b経由で外部の電源電圧が印加され、端子Vcには、電極53a経由で外部からの制御信号やデータが入力される。また、IC素子40の端子Outからは、電極53c経由で発振信号に基づく信号が外部へ出力され、端子GNDは、外部のGND(グランド)へ接続される電極53dと、電解質部材30とを結ぶ配線へ接続される。
【0058】
また、IC素子40の端子TX1および端子TX2は、水晶素子20における一対の引出電極へ接続され、端子Batは、電解質部材30へ接続される。そして、電解質部材30は、電極53d経由で外部のGND(グランド)へ接続される。
【0059】
次に、IC素子40の電源制御部41および発振回路42について説明する。電源制御部41は、端子Vddへ外部の電源電圧が印加されているか否かに関わらず、IC素子40内の他の回路(図6では、発振回路42を例示)へ電圧が供給されるように制御する。
【0060】
具体的には、電源制御部41は、端子Vddへ印加される外部の電源電圧が所定値以上の場合には、かかる電圧を発振回路42へ供給するとともに、端子Bat経由で電解質部材30へ供給する。これにより、電解質部材30は充電される。
【0061】
一方、電源制御部41は、端子Vddへ印加される外部の電源電圧が所定値を下回った場合には、電解質部材30の起電力を発振回路42へ供給する。これにより、電解質部材30は放電する。また、この場合、電源制御部41は、端子Vddと発振回路42との電気的接続を切り離す。
【0062】
このように、電源制御部41は、水晶デバイス1に設けられた電解質部材30の充電および放電を制御することによって、発振回路42、ひいては、水晶素子20を継続的に動作させる。なお、外部の電源電圧と対比される所定値は、0としてもよいし、水晶素子20を正常に発振させるために必要な電圧値としてもよい。
【0063】
発振回路42は、電源制御部41から電圧を供給されることによって動作し、水晶素子20を所定の周波数で発振させる。また、発振回路42は、端子Vc経由で外部からの制御信号やデータを受け取り、水晶素子20の発振周波数を調整するとともに、端子Out経由で発振信号に基づく信号を外部へ出力する。なお、発振回路42は、温度補償回路を含んでいてもよい。
【0064】
また、図6では、電源制御部41から電圧を供給される回路として発振回路42を例示したが、その他の回路が電源制御部41に接続されていてもよい。たとえば、発振回路42から出力された発振周波数を分周する分周回路や、分周回路から出力された分周信号を計数して年月日や時分秒といった日時データを生成するロジック回路を電源制御部41へ接続してもよい。
【0065】
次に、水晶デバイス1が搭載される電子機器100について図7を用いて説明する。図7は、電子機器100のブロック図である。なお、電子機器100は、たとえば、携帯電話機や、スマートフォンといったモバイル端末をはじめとする電子装置である。
【0066】
図7に示すように、電子機器100は、メイン電源101と、水晶デバイス1とを備える。なお、その他の電子部材(たとえば、プロセッサやディスプレイなどのデバイスや回路)については記載を省略している。また、図7には、1つの水晶デバイス1を例示しているが、2つ以上の水晶デバイス1を設けることとしてもよい。
【0067】
メイン電源101は、電子機器100のメインバッテリである。メイン電源101から供給される電源電圧は、水晶デバイス1へ供給される。水晶デバイス1は、電子機器100内部に設けられた実装ボード上に搭載される。そして、水晶デバイス1の出力は、図示しない回路やデバイスへ入力される。
【0068】
既に説明したように、水晶デバイス1は、電解質部材30を内蔵しているため、水晶デバイス1用のバックアップバッテリを実装ボード上に搭載する必要がない。このため、水晶デバイス1は、実装ボードの小型化に寄与し、実装ボードの小型化によって電子機器100の小型化を図ることが可能となる。
【0069】
上述してきたように、第1の実施形態に係る水晶デバイスでは、パッケージに設けたキャビティに、水晶素子および電解質部材を配置することとした。また、かかる水晶デバイスでは、外部からの電源電圧によって電解質部材を充電するとともに、外部からの電源電圧が低下した場合に、電解質部材の起電力を水晶デバイスへ向けて供給することとした。
【0070】
したがって、第1の実施形態に係る水晶デバイスによれば、外部から電源電圧の供給がない場合であっても継続した動作が可能であるとともに、水晶デバイス自体の小型化、ひいては、水晶デバイスが搭載される電子機器の小型化を図ることができる。
【0071】
ところで、上述した第1の実施形態では、水晶素子、電解質部材あるいはIC素子の配置についての一例を例示した。しかしながら、これらの電子部材の配置には種々のバリエーションが存在する。そこで、以下に示す各実施形態では、その他の配置例について示すこととする。
【0072】
また、以下に示す各実施形態においては、上述した第1の実施形態の構成要素に対応する構成要素には同一の符合を付し、第1の実施形態と重複する説明については適宜、省略する。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る水晶デバイスについて、図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。図8に示すように、第2の実施形態に係る水晶デバイス1aは、電解質部材30における負極層30bを蓋体として用いる点が、第1の実施形態に係る水晶デバイス1(図1参照)とは異なる。
【0074】
図8に示すように、電解質部材30における固体電解質層30cと、固体電解質層30cの下面側に設けられる正極層30aとは、パッケージ10aの上面側キャビティの幅よりも狭い。そして、固体電解質層30cの上面側に設けられる負極層30bは、上面側キャビティをパッケージ10aの上面側から塞ぐ幅を有する。
【0075】
ここで、電解質部材30をパッケージ10aへ取り付ける際には、電解質部材30における正極層30aの底面の一部は、導電性接着剤(たとえば、銀ペースト)によって第2電極32へ接続される。一方、負極層30bにおける底面の外枠部分は、電極51へ接合される。
【0076】
このように、第2の実施形態に係る水晶デバイス1aでは、電解質部材30における負極層30bを蓋体として用いたので、第1の実施形態に係る水晶デバイス1における第1電極31(図1参照)が不要となる。そして、電解質部材30と第1電極31(図1参照)とを接続する導電性接着剤も不要となる。
【0077】
したがって、第2の実施形態に係る水晶デバイス1aのパッケージ10aは、第1の実施形態に係る水晶デバイス1のパッケージ10よりも高さを低く抑えることができる。すなわち、第2の実施形態に係る水晶デバイス1aは、第1の実施形態に係る水晶デバイス1よりも低背化することができる。
【0078】
なお、図8には示していないが、電解質部材30を、パッケージ10aへ取り付けた後、電解質部材30を外側から覆うように樹脂等の素材でモールドすることとしてもよい。また、図8では、電解質部材30の負極層30bを蓋体とした場合について示したが、電解質部材30の正極層30aと負極層30bとを入れ替えて正極層30aを蓋体としてもよい。
【0079】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る水晶デバイスについて、図9を用いて説明する。図9は、第3の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。図9に示すように、第3の実施形態に係る水晶デバイス1bは、水晶素子20が電解質部材30よりも上面側に配置される点、水晶素子20および電解質部材30が個別の気密空間に配置される点が第1の実施形態に係る水晶デバイス1(図1参照)とは異なる。
【0080】
図9に示すように、パッケージ10bにおける上面側キャビティは、第1の凹部における底面をさらに深くした形状の第2の凹部を有しており、第2の凹部における底面をさらに深くした形状の第3の凹部を有している。
【0081】
そして、第1の凹部には水晶素子20が、第2の凹部には第1電極31が、第3の凹部には電解質部材30が、それぞれ配置される。なお、第1の凹部、第2の凹部および第3の凹部は連続した空間であるが、第2の凹部に配置される第1電極31によって2つの空間に区切られる。
【0082】
上面側キャビティにおける第3の凹部の底面には、第2電極32が設けられており、電解質部材30の底面の一部は、導電性接着剤によって第2電極32へ接続される。一方、電解質部材30の上面の一部は、導電性接着剤によって第1電極31へ接続される。そして、第1電極31は、第2の凹部の底面に設けられた電極51へ接合される。これにより、電解質部材30が配置された空間は、気密封止される。
【0083】
また、上面側キャビティにおける第1の凹部の底面には、電極52が設けられており、水晶素子20は、第2の凹部の底面とのクリアランスを確保するための接続用バンプ経由で、電極52へ接続される。そして、パッケージ10bの上面には、上面側キャビティを塞ぐ蓋体61が接合される。これにより、水晶素子20が配置された空間は、気密封止される。なお、蓋体61の材質は金属のような導電体でもよいし、セラミックのような非導電体でもよい。
【0084】
このように、第3の実施形態に係る水晶デバイス1bは、水晶素子20および電解質部材30が個別の気密空間に配置される。したがって、仮に、電解質部材30に液体や粉体が含まれる場合であっても、電解質部材30に由来する物質が、水晶素子20に付着する事態を防止することができるので、水晶素子20の発振周波数が変動する可能性を低減することが可能となる。
【0085】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る水晶デバイスについて、図10を用いて説明する。図10は、第4の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。図10に示すように、第4の実施形態に係る水晶デバイス1cは、水晶素子20、電解質部材30およびIC素子40を、1つのキャビティ内に配置した点で、第1の実施形態に係る水晶デバイス1(図1参照)とは異なる。
【0086】
図10に示すように、パッケージ10cにおける上面側キャビティは、第1の凹部における底面をさらに深くした形状の第2の凹部を有しており、第2の凹部における底面をさらに深くした形状の第3の凹部を有している。
【0087】
そして、上面側キャビティにおける第3の凹部の底面には、アレイ状に並んだバンプが設けられており、IC素子40は、かかるバンプへ接続される。また、第2の凹部の底面には電極52が設けられており、水晶素子20は、第2の凹部の底面とのクリアランスを確保するための接続用バンプ経由で、電極52へ接続される。
【0088】
このように、第4の実施形態に係る水晶デバイス1cは、1つのキャビティ内に、水晶素子20、電解質部材30およびIC素子40が配置される。
【0089】
したがって、第4の実施形態に係る水晶デバイス1cのパッケージ10cは、第1の実施形態に係る水晶デバイス1のパッケージ10(図1参照)よりも高さを低く抑えることができる。すなわち、第4の実施形態に係る水晶デバイス1cは、第1の実施形態に係る水晶デバイス1よりも低背化することができる。
【0090】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る水晶デバイスについて、図11を用いて説明する。図11は、第5の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。図11に示すように、第5の実施形態に係る水晶デバイス1dは、水晶素子20および電解質部材30を、別々のキャビティ内にそれぞれ配置した点で、第1の実施形態に係る水晶デバイス1(図1参照)とは異なる。
【0091】
図11に示すように、パッケージ10dにおける上面側キャビティには、電解質部材30が配置され、第1電極31によって気密封止される。一方、下面側キャビティには、水晶素子20およびIC素子40が配置され、下面側キャビティは蓋体62によって気密封止される。
【0092】
具体的には、パッケージ10dにおける下面側キャビティは、第1の凹部における底面をさらに深くした形状の第2の凹部を有しており、第2の凹部における底面をさらに深くした形状の第3の凹部を有している。
【0093】
そして、下面側キャビティにおける第3の凹部の底面(図11では上面側)には、アレイ状に並んだバンプが設けられており、IC素子40は、かかるバンプへ接続される。また、第2の凹部の底面には電極52が設けられており、水晶素子20は、第2の凹部の底面(図11では上面側)とのクリアランスを確保するための接続用バンプ経由で、電極52へ接続される。
【0094】
そして、第1の凹部の底面(図11では上面側)には、下面側キャビティを塞ぐ蓋体62が接合される。これにより、水晶素子20およびIC素子40が配置された空間は、気密封止される。なお、蓋体62の材質は金属のような導電体でもよいし、セラミックのような非導電体でもよい。
【0095】
このように、第5の実施形態に係る水晶デバイス1dは、水晶素子20および電解質部材30が、それぞれ別々のキャビティ内に配置される。したがって、仮に、電解質部材30に液体や粉体が含まれる場合であっても、電解質部材30に由来する物質が、水晶素子20に付着する事態を防止することができるので、水晶素子20の発振周波数が変動する可能性を低減することができる。
【0096】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る水晶デバイスについて、図12を用いて説明する。図12は、第6の実施形態に係る水晶デバイスの断面視による説明図である。図12に示すように、第6の実施形態に係る水晶デバイス1eは、2分割したパッケージを接合する点で、第1の実施形態に係る水晶デバイス1(図1参照)とは異なる。
【0097】
図12に示すように、2分割された一方のパッケージ10eのキャビティには、水晶素子20および電解質部材30が配置され、第1電極31によって気密封止される。また、2分割された他方のパッケージ10fのキャビティには、IC素子40が配置される。
【0098】
そして、各電子部材が配置されたパッケージ10eおよびパッケージ10fは、導電性の接合部材71によって電気的かつ機械的に接合され、水晶デバイス1eが完成する。これにより、パッケージ10fのキャビティ、すなわち、IC素子40が配置されたキャビティは気密封止される。
【0099】
このように、水晶デバイス1eは、2分割したパッケージを接合して得られるので、パッケージ10eに対して水晶素子20や電解質部材30を搭載する工程と、パッケージ10fに対してIC素子40を搭載する工程とを同時進行で進めることができる。
【0100】
したがって、第6の実施形態に係る水晶デバイス1eによれば、デバイスの生産性を向上させることができる。なお、このようにパッケージを複数に分割し、各パッケージへの電子部材の組み込みを並行して行う手法は、複数のキャビティを有するパッケージをもつ水晶デバイス(たとえば、上記した各実施形態に係る水晶デバイス)へ広く適用することができる。
【0101】
なお、上述した各実施形態では、水晶デバイスを平面透視した場合に、電解質部材が、水晶素子の少なくとも一部と重なるように配置される場合について説明した。しかしながら、これに限らず、水晶デバイスを平面透視した場合に、電解質部材が、水晶素子と重ならないように配置されるようにしてもよい。この場合、電解質部材および水晶素子を同一のキャビティ内に配置してもよいし、それぞれ別々のキャビティ内に配置してもよい。
【0102】
また、上述した各実施形態では、平板状の第1電極を用いる場合について説明した。しかしながら、これに限らず、湾曲した形状の第1電極を用いることとしてもよい。たとえば、パッケージ側からみて中央部が凹んだ第1電極を用い、かかる凹みに電解質部材の一部または全部が位置するように水晶デバイスを構成してもよい。また、かかる凹みに沿った形状の電解質部材を用いることとしてもよい。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1、1a、1b、1c、1d、1e 水晶デバイス
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f パッケージ
20 水晶素子
30 電解質部材
30a 正極層
30b 負極層
30c 固体電解質層
31 第1電極
32 第2電極
40 IC(Integrated Circuit)素子
41 電源制御部
42 発振回路
51、52、53、53a、53b、53c、53d 電極
61、62 蓋体
100 電子機器
101 メイン電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のキャビティを有する容器体と、
前記キャビティ内に配置される水晶素子と、
少なくとも一部が前記キャビティ内に配置される電解質部材と
を備えることを特徴とする水晶デバイス。
【請求項2】
前記電解質部材は、
前記容器体の主面を平面透視した場合に、前記水晶素子の少なくとも一部と重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
前記キャビティを塞ぐ第1電極
をさらに備え、
前記容器体は、
前記第1電極と対向するように前記キャビティ内に配置される第2電極を備え、
前記電解質部材は、
前記第1電極および前記第2電極の双方と導通するように前記キャビティに配置されること
を特徴とする請求項1または2に記載の水晶デバイス。
【請求項4】
前記水晶素子を発振させる発振回路を含み、かつ、前記電解質部材による起電力が供給されるIC素子
をさらに備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記IC素子は、
前記キャビティに配置されることを特徴とする請求項4に記載の水晶デバイス。
【請求項6】
前記電解質部材および前記水晶素子は、
同一の前記キャビティに配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の水晶デバイス。
【請求項7】
前記電解質部材および前記水晶素子は、
別々の前記キャビティに配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の水晶デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の水晶デバイス
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−80993(P2013−80993A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218421(P2011−218421)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】