説明

水晶振動子の支持リード材及び支持リード構造及び接続構造並びに支持リード形状

【目的】従来、実用化されにくいとされていた高次振動や捩り振動を使った数百kHz帯の音叉型水晶振動子を実用化する事を目的とする。
【構成】水晶振動子ユニットを構成する支持リードに関して、損失係数が1/100以上、温度特性がほぼ零、特性インピーダンスが最小の材料及び振動抑制材料により被われ又負荷された構造及び制振材を用いた接続構造及び特定の長さと断面積をもつ形状から成っている。
【効果】上記音叉型水晶振動子を実用化する際に問題となっていた支持リードからの振動の漏洩の問題を解決する事により、時計用に生産されている32kHzの音叉型水晶振動子と同等の小型、低価格の振動子が実現できた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水晶振動子ユニットに関する。更には前記水晶振動子を構成する支持リードの支持リード材料及び支持リード構造及び接続構造並びに支持リード形状に関する。
【0002】
【従来の技術】従来技術としては、水晶振動子ユニットの支持リードは単に水晶振動子を保持する機械的役割と電気的導通をとる部品と考えられ設計されていた。
【0003】図22は従来例の外観図であり、水晶振動子ユニット及びその支持リードの構造を示している。図中101は金属カプセルで、ベース107にかぶせて真空封止されている。カプセルの中は通常、真空に封止されている。リード103、104はベース107とハーメチックシールされている。このリードは通常金属のコバール材により作られている。この金属材料を振動させたとき、その共振周波数の温度特性は−100ppm/゜Cから−1000ppm/゜C程度である。このリードの材料については、弾性定数は特に注意されて設計、選択されてはいない。108、109はインナーリードと呼ばれ上記リードのカプセルの内側部分を指している。カプセル101の中に音叉型水晶振動子102が封入された構造となっている。音叉型水晶振動子102はインナーリードリード108及び109とそれぞれ105及び106の部分に於いて半田により接続(接着)固定されている。この接続材料はリード103及び104は発振回路に接続される構造となっている。この接続材料については、接続強度の観点と電気的導通性の観点からのみ設計選択されている。一例として、AuSnハンダやその他の共晶ハンダ、更には導電ペーストが用いられている。本具体例に於いてはカプセル101の寸法は円柱の高さが6mm程度、直径が2mm程度である。又、インナーリード108、109の長さは数百μ程度で水晶振動子の支持部分の大きさや半田による接着の強さや全体の大きさから決められた設計値となっている。又、断面形状についても同様の観点のみで設計されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水晶振動子の周波数を上げるため屈曲の基本振動ではなく高次振動(オーバートーン)を使うようになり、更には高精度が要求されるにともない単なる上記の考えでは済まなくなってきた。即ち、この従来の構造に於いては以下のような問題点を有している。
【0005】■水晶振動子の振動が接合部15、16を通して支持リード18、19に漏洩しやすく振動が不安定になる。
【0006】■その結果、水晶振動子ユニットを発振回路につなぎ水晶発振器を構成した時発振周波数が不安定でばらつく。
【0007】図23は従来例の特性図で、図22に於ける発振周波数の不安定さを表すグラフである。
【0008】縦軸は、水晶振動子ユニットのカプセル(図22の101)をクリップで挟んだときの周波数の変化を挟む前の周波数を基準にして規格化したものである。クリップで挟む前をフリーと呼びクリップで挟んだ時をクランプと呼び横軸に記入してある。図中、121はフリーの時で、122はクランプしたときである。122の黒丸は実験データの平均値を表し、棒線はプラス及びマイナスの標準偏差を表している。この時、平均値は13.4ppm、標準偏差は2.4ppmである。
【0009】図からわかるように大きく周波数が変化しており、又、変化量のばらつきも大きく、非常に不安定である。
【0010】■水晶振動子の等価抵抗(CI値)が支持リードの振動の影響を受け、不安定にばらつく。
【0011】図24は従来例の他の特性図で、図22に於けるCI値の不安定さを表すグラフである。
【0012】縦軸は、水晶振動子ユニットのカプセル(図22の101)をクリップで挟んだときのCI値の変化の割合である。クリップで挟む前をフリーと呼びクリップで挟んだ時をクランプと呼び横軸に記入してある。131はフリーの時で、132はクランプした時である。132の黒丸は実験データの平均値を表し、棒線はプラス及びマイナスの標準偏差を表している。この時、平均値は49%、標準偏差は24%である。図からわかるように大きくCI値が変化しており、又、変化量のばらつきも大きく、非常に不安定である。
【0013】■上記CI値のばらつきにより発振そのものが不安定となり、発振が停止する事もあった。
【0014】■支持リードと振動が結合しているため温度が変化すると支持リードの特性の温度変化により、水晶振動子の周波数が突然ジャンプして変化する。
【0015】図25は従来例の他の特性図で、図22における水晶振動子の周波数温度特性異常を示すグラフである。横軸は温度、縦軸は正常な放物線上の温度特性(図8)からのずれの周波数偏差である。ここで言う周波数偏差とは周波数のずれを25゜Cの周波数を基準に規格化した量である。図中141に示すように、周波数は温度によって異常にジャンプしている。
【0016】■支持リードと振動が結合しているため温度が変化すると支持リードの特性の温度変化により、水晶振動子のCI値が突然ジャンプして変化する。
【0017】図26は従来例の他の特性図で、図22における水晶振動子のCI値の温度特性異常を示すグラフである。横軸は温度、縦軸は水晶振動子のCI値である。図中151に示すようにCI値が異常にジャンプする。
【0018】このように高次の屈曲振動や捩り振動を利用して高い共振周波数をもつ水晶振動子ユニットを実用化しようとした時、従来の水晶振動子ユニットにおける支持リードでは課題を抱えていた。
【0019】そこで、本発明はこれらの課題をことごとく解決することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は水晶振動子ユニットの支持リードの材料、構造、接続構造並びに形状に関して斬新な工夫を凝らす事により上記課題を解決するものである。
【0021】本発明における支持リード材は、振動に対する損失係数が1/100以上の損失を有する材料より構成され、その振動の共振周波数の温度特性がほぼ零となる材料より作られ、水晶振動子から支持リードに漏洩する振動モードに関して前記支持リードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする密度及び弾性定数を有する材料により作られている。
【0022】本発明に於ける支持リードの構造は、支持リードが振動を抑制する材料により被われている構造を有し、前記支持リードの一部分又は全部分がチューブ状の振動抑制材により被われ、前記支持リードの一部分又は全部分が振動を抑制する膜によってクラッドされ、前記支持リードの一部分に振動を抑制する負荷物が付けられている事を特徴とする構造をもっている。
【0023】本発明に於ける水晶振動子と支持リードの接続構造は、接続部分にリードよりも振動に対する損失の大きい制振材を用い、前記接続部分にリードよりも振動に対する損失の大きい接着剤を用い、前記接続部分に於いて振動の減衰が1/2以上となる厚みからなる構造を有している。
【0024】本発明に於ける支持リードの形状は、水晶振動子から支持リードにもっとも漏洩する振動モードの支持リードに於ける波長に対して、前記支持リードの長さがその波長の1/64〜1/4の長さの形状を有し、水晶振動子から支持リードに漏洩する二つ以上の振動モードの波長の内、最も長い波長に対して前記リードの長さがその波長の1/64〜1/4の長さの形状を有し、かつ他の振動モードに対して共振しない長さを有し、水晶振動子から支持リードに漏洩する振動モードに関してリードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする断面形状を有している。
【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0026】(実施例1)図1は本発明の実施例の外観図で、本発明の支持リード材を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中11は金属カプセルで、ベース17にかぶせて真空封止されている。カプセルの中は真空に封止されている。リード13、14、17、18はベース17とハーメチックシールされている。リードのカプセル内部にある部分18及び19を、以降インナーリードと呼ぶ。カプセル11の中に音叉型水晶振動子12が封入された構造となっている。音叉型水晶振動子12はリード18及び19とそれぞれ15及び16の部分に於いて半田または導電ペースト等により接着固定されている。リード13及び14は発振回路に接続される構造となっている。本具体例に於いてはカプセル11の寸法は円柱の高さが4〜6mm程度、直径が1.5〜2mm程度で非常に小さいものである。又、本発明は振動子12が屈曲の基本振動をする場合にも効果があるが高次振動(オーバートーン)をする場合には、その効果は絶大である。
【0027】支持リード17及び18は、従来から使われてきたコバールとは違って、単位長あたりの損失の大きい材料が使われている。ここで言う損失の大きい材料とは、振動エネルギーを材料自身が吸収して熱エネルギーに変換する能力で、制振性能と呼び、損失係数ηで表すと、ηの大きな材料のことで、本発明ではηが102以上の材料である。図2は本発明になる材料の実施例である。図中、縦軸は損失係数ηである。21は本発明に相当する材料の領域の具体例である。22は複合型制振鋼材、23はダンピング処理鋼材、24はMn−Cu合金、25はFe−Cr合金、26は鋳鉄そして27はAl,Ti等の金属を表している。従来の金属材料のコバール等はηが10-3程度で、図中、27の領域に含まれる。それに対して本発明の材料はηが10-2より大きい事を特徴としている。具体的な合金系の例では制振合金と呼ばれるものでMn−CuやFe−Cr合金などである。鋼材にダンピング処理したものであれば101程度のものが得られ、更に金属と高分子の複合系の制振鋼材を使えば5×101程度のものが得られ、更に良い効果が得られる。図3は本発明の効果の説明図である。図中、横軸は損失係数ηを表し、縦軸はエネルギー吸収量を表している。図中、曲線37は損失係数ηとエネルギー吸収量の関係を表している。31は本発明の領域、32は複合型制振鋼材、33はダンピング処理鋼材、34は木材、35はコンクリート、36は金属を表している。図中、本発明の領域31のように損失係数ηが102以上であるとエネルギー吸収量が7%以上あり従来の材料よりも2倍近い吸収量となる。
【0028】次に損失係数又は振動の吸収を大きくすると従来例の欠点が克服できる理由を説明する。図4及び図5は本発明の原理の説明図である。図中、41は水晶振動子、42はインナーリード、43はプラグを表している。本発明の図1は力学的モデルでは、水晶振動子11、支持リード18(19)とプラグ17の3体のモデルで表せるから、これは図4のように水晶振動子41の振動ξt2がインナーリード42の中を波動として伝わっていきプラグ43の境界で透過波ξt3及び反射波ξr2となる力学モデルに置き換えられる。インナーリードの中の任意の点をxとし、x=0は水晶振動子41とインナーリード42境界で、x=Lはインナーリード42とプラグ43の境界を表している。この機械的な力を電圧に、変位速度を電流に対応させるとこの機械的モデルは図5のように力Fを電圧とし変位速度Vを電流とする伝送線路の伝搬モデルに等価的に置き換えられる。この図5R>5を解くと次式になる。
【0029】
【数1】


【0030】ここで、Fは力[N/m2]、Vは変位速度[m/s]で図4の変位ξを時間微分したもの、mはリードの単位長質量[Kg/m2]、Cは単位長コンプライアンス[1/N]、Rはリードの単位長当たりの抵抗[Ns/m]、Gは単位長機械コンダクタンス[1/Ns]である。
【0031】又、αは減衰定数、βは位相定数、γは伝搬定数、exp(−γx)は正の方向に伝搬する波を表し、exp(γx)は負の方向に伝搬する波である。但し上記は、ωm≫RかつωC≫Gとした近似式である。境界条件としてx=0における力をFs、x=Lにおける力をFrとした。
【0032】ここでFrが非常に小さい場合を考えると、自由端の条件と同じでFr=0として、x=Lに伝搬してくる波の強さV(x)、即ちV(L)は次式となる。
【0033】
【数2】


【0034】従って、αが大きければ大きいほど、x=L(リードとプラグの接続点)における波動の振幅の速度V(L)は小さくなる。波動の振幅の速度V(L)は変位ξに比例しており、又αは図2、図3の損失係数ηに対応しているから、結局、ηを大きくすれば変位ξを数式7に従って小さくする事ができる。言い換えれば本発明の図1に於いて、損失係数ηの大きなインナーリード18及び19を使えばプラグ17への振動の漏洩を少なくする事ができ、損失係数が従来のインナーリードの2倍以上であれば、従来例の温度特性異常を小さくする事ができる。
【0035】一方、図6は本発明の効果を示すグラフで、水晶振動子ユニットのカプセル(図1の11)をクリップで挟んだ時の挟む前と後の周波数の変化を表したものである。図中、縦軸は周波数の変化で偏差として挟む前の周波数を基準にして規格化してある。クリップで挟む前をフリーと呼び、クリップで挟んだ時をクランプと呼び、横軸に記載してある。図中、54はフリーの時で、55はクランプしたときである。55の黒丸は実験データの平均値である。標準偏差は小さいため、記入していない。この時、平均値は0.7ppm、標準偏差は0.2ppmである。カプセルをクランプした時の周波数変化は、従来例と比べると図23で周波数変化の平均値が13.4ppmもあったものが、本発明により0.7ppmまでに小さくなっている。同様に従来例に於ける周波数変化のばらつきを表す標準偏差が2.4ppmもあったものが、本発明によるとその値は0.2ppmと1/10になっている。このように本発明によると、クリップで挟んだ前後でほとんど周波数は変化しない。
【0036】図7は本発明の他の効果を示すグラフで、水晶振動子ユニットのカプセル(図1の11)をクリップで挟んだ時の挟む前と後のCI値の変化を表したものである。図中、縦軸はCI値の変化の割合を表しており、横軸は図6と同様である。56はフリーの時で、57の黒丸は実験データの平均値である。標準偏差は小さいため記入していない。この時、平均値は4%、標準偏差は1.8%である。カプセルをクランプした時のCI値の変化は、従来例と比べると図24でCI値変化の平均値が49%もあったものが、本発明により4%までに小さくなっている。同様に従来例に於けるCI値変化のばらつきを表す標準偏差が24%もあったものが、本発明によるとその値は1.8%と1/10以下になっている。このように本発明によると、クリップで挟んだ前後でほとんどCI値は変化しない。
【0037】図8は本発明の他の効果を示すグラフで、上記支持リード材を用いた水晶振動子ユニットの周波数温度特性を示すグラフである。横軸は温度、縦軸は周波数偏差で25゜Cの周波数を基準に規格化してある。図中58はその曲線でなめらかな放物線になっている。図9R>9は本発明の他の効果を示すグラフで、CI値の温度特性を示すグラフである。横軸は温度、縦軸はCI値である。曲線59はジャンプしていない事がわかる。両図からわかるように周波数、CI値共に温度に対して、従来例の図25、図26のように異常にジャンプする事がない。
【0038】(実施例2)図1は本発明の他の実施例の外観図で、本発明の支持リード材を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中、13、14は支持リードで、18、19はインナーリードと呼ばれる部分である。本発明に於いてはこのリードの材料は、そのリードの共振周波数の温度特性がほぼ零である材料から作られている。共振周波数温度特性がほぼ零である材料とは具体的には次のような事である。
【0039】図4に於いて、42を伝わる波動を考え、数式1と数式2の結果が得られた。42が共振する条件は数式2に於いて、cos2βL=1 である。
【0040】
βL=nπ n=0,1,2,3・・・従って共振周波数をf、波の伝搬速度をζとするとf=nζ/2L となる。
【0041】室温からの温度偏差をTとすると、室温付近に於けるfの温度係数はdf/dT=(Ldζ/dT−ζdL/dT)n/2L2従って温度係数が零となるのは(dζ/dT)/ζ−(dL/dT)/L=0 (A)
の条件である。この条件を満たす材料を使う事を本発明は特徴としている。
【0042】更に具体的には、図4に於ける42を伝わる波を縦波としたときは、縦波の速度は、密度をρ、ヤング率をEとするとζ=(E/ρ)1/2となり、上記の条件はこの式を代入して近似的に(dE/dT)/E+(dL/dT)/L=0従ってヤング率の温度係数が小さく、かつ線膨張係数の小さい材料を使う事を特徴としている。例えばヤング率の小さな材料としてはFe−Ni系エリンバー合金やCo−Fe系エリンバー合金等がある。
【0043】以上は図4の42を伝搬する波が縦波の場合について説明したが、その他の横波や捩り波についても同様に上記(A)を満たす条件の材料、形状を用いればよい事は言うまでもない。
【0044】このような温度係数の小さな支持リードを用いた時、水晶振動子ユニットの周波数温度特性は、前出の図8のように改善される。
【0045】以下にこの理由を述べる。
【0046】図10は本発明の原理を示す図で、周波数温度特性異常の部分を拡大したグラフである。図11は本発明の他の原理を示す図である。図10は、図4に於ける水晶振動子41とインナーリード42を二つの振動が連成した振動系のモデルと考え、図11のように等価電気回路に変換したモデルで解いたものである。従って図10の記号は図11の記号と一致しており、下記の通りである。
【0047】Ck:結合容量C0:等価並列容量L1:水晶振動子の等価直列インダクタンスC1:水晶振動子の等価容量R1:水晶振動子の等価抵抗L2:支持リードの等価直列インダクタンスC2:支持リードの等価容量R2:支持リードの等価抵抗Q2:支持リードの振動のQ値a:支持リードの1次温度係数T:基準値からの温度偏差δf/f:基準の周波数からの偏差図11のモデルにより連成した振動の周波数温度特性の支持リードによる変化分のみを求めると下式となる。
【0048】
【数3】


【0049】この式でa≠0の時のグラフが図10である。上式に於いてa=0の時は周波数の偏差δf/fは零となり、温度変化による周波数の異常なジャンプは無くなる事がわかる。従って支持リードの共振周波数の温度係数がほぼ零に近いような小さな値の材料を使えば水晶振動子ユニットの温度特性異常は無くす事ができる。これが本発明の原理である。このようにリードの共振周波数の1次温度係数が零の材料を用いる事により周波数ジャンプをなくす事ができる。
【0050】(実施例3)図1は本発明の他の実施例の外観図で、本発明の支持リード材を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中、13、14は支持リードで、18、19はインナーリードと呼ばれる部分である。本発明に於いてはこのリードの材料は、支持リードに漏洩する振動モードに関して前記支持リードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする密度及び弾性定数を有する材料より作られている。
【0051】以下、理由と具体的材料例について述べる。
【0052】既に説明したように、リードを伝わる波については、本発明の説明図である図4及び図5を解くことによって得られる。図15は本発明の原理を示すグラフで、負荷ZRがついたとき、リードが振動をどれだけ伝えるかを表したものである。横軸はリードの長さを表し、注目する振動モードの波長で表している。リードの機械等価回路の特性インピーダンスをZ0とする。図5のZRがZ0に比べて大きくなると図15で、曲線は71、72、73、74の順に移っていく。このようにZRがZ0に比べて大きければ大きいほど波動は伝搬しなくなる。前述したようにZRはプラグ17とケース11の質量で決まるものである。従って、この質量を大きくする代わりに、逆にZ0を小さくすれば相対的にZRはZ0よりも大きくすることができ、上記ZRを大きくしたと同様の効果が得られる。例えば、リードを伝わる縦波を考えると、数式1よりZ0=S(ρE)1/2であるから、ρとEを小さくすればするほどZ0を小さくする事ができる。ちなみに従来例の図22においては、S=30000μm2、ρ=8310kg/m3、E=1.37*1011N/m2であるから、例えばリードのρEを1/4程度にすればそれだけで、Z0を約1/2にすることができる。この時の、図1における11のカプセルをクリップで挟んだときの周波数の変化とCI値の変化は図6及び図7となり、従来例の図23、図24とは異なり、はるかに優れた特性が得られる。このことは実施例1で詳述したと同様の結果である。
【0053】又、図8は本発明の効果を示すグラフで、上記支持リード材を用いた水晶振動子ユニットの周波数温度特性を示すグラフである。横軸は温度、縦軸は周波数偏差で25゜Cの周波数を基準に規格化してある。図中58はその曲線でほぼ放物線になっている。図9は本発明の他の効果を示すグラフで、CI値の温度特性を示すグラフである。横軸は温度、縦軸はCI値である。両図からわかるように周波数、CI値共に温度に対して、従来例の従図4、従図5のように異常にジャンプする事がない。
【0054】上記は縦波を例に取り説明したが本発明は縦波に限らず、他の波、例えば屈曲波、捩り波にたいしても上述の特性インピーダンスZ0を求め、これを小さくするようにρ、Eを決めればよい事は言うまでもない。
【0055】(実施例4)図12は本発明の他の実施例の外観図で、本発明になる支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中、11、12、13、14、15、16、17、18、19は実施例1の図1と同様である。リード13、14及びインナーリード18、19は既述の実施例1、2、3と組み合わせて使えば更に効果は増大するが、従来例のリードを使っても十分に効果がある。以下の説明は、従来例のリードを用いたとして本実施例について説明する。
【0056】図12において、65及び66はチューブ状の振動抑制材で、インナーリード18及び19に密着させてかぶせたものである。この材料の具体例としては、実施例1に述べた材料である。この時の振動抑制の作用と効果は実施例1で述べた事と同じである。実施例1においては、リードは機械的に水晶振動子12を支える役目と、電気的導通をとる役目も兼ねていたため使える材料に制限があり、金属を中心としたものにならざるをえなかった。しかし本実施例に於いては、振動抑制用チューブ65、66は機械的に水晶振動子12を支える役目はなく、又電気的導通をとる役目も無いため、上記二つの観点を考慮せずすべての材料が使える利点がある。金属以外の材料の具体例として損失係数の大きなプラスティック、ゴムなどの高分子材料がある。又、カーボンファイバー材やコーン紙、液晶などもある。その損失係数は金属の100倍程度あり、これにより充分な振動抑制効果があり図6、図7、図8及び図9の効果が得られる。この方法の利点は、リードの材料を変える事なく充分な制振効果が得られるところにある。従って、現有の設計方法や製造方法を変える事なく実施できる、しかもコストもほとんど上げなくて済む。
【0057】(実施例5)図13は本発明の他の実施例の外観図で、本発明になる支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中、11、12、13、14、15、16、17、18、19は実施例1の図1と同様である。リード13、14及びインナーリード18、19は既述の実施例1、2、3と組み合わせて使えば更に効果は増大するが、従来例のリードを使っても十分に効果がある。以下の説明は、従来例のリードを用いたとして本実施例について説明する。
【0058】図13において、67及び68は振動抑制用に被覆(クラッド)された膜である。この膜の材料は実施例1及び実施例4に於いて述べられたものと同じである。膜の製造方法は、塗布やラミネートによるほかスパッターや真空蒸着も可能である。本実施例の特徴は数μから数十μmの比較的薄い膜厚でも制振効果があることである。又、被覆された膜であるため制振性能が安定しており、経時変化も少ない。
【0059】(実施例6)図14は本発明の他の実施例の外観図で、本発明になる支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットを示している。図中、11、12、13、14、15、16、17、18、19は実施例1の図1と同様である。リード13、14及びインナーリード18、19は既述の実施例1、2、3と組み合わせて使えば更に効果は増大するが、従来例のリードを使っても十分に効果がある。以下の説明は、従来例のリードを用いたとして本実施例について説明する。
【0060】図14において、69及び70は振動抑制用に付けられた負荷物である。この負荷物の材料は実施例1及び実施例4に於いて述べられたものと同じで、金属でも高分子物質でもよい。図15は負荷物による効果を示したグラフである。縦軸はリードを伝わる波の伝達率を示している。図14に於けるインナーリード18の長さをLとし、水晶振動子15との接続側端点の変位速度をVsとし、プラグ17側端点の変位速度をV(L)として、その比V(L)/Vsを表している。横軸はリード長さLで、リードを伝わる波の波長をλとし、このλに対する倍数で表してある。これは本発明の説明図、図4と図5を解いて得られたものである。リードの機械特性インピーダンスをZ0とすると、図15に於いて71は5Z0の質量をつけた時、72は50Z0、73は100Z0、74は300Z0の時である。この図から分かるように質量を増やす事により振動の伝搬を抑制することができる。例えば、リードの長さがλ/64以上であれば、リードの機械特性インピーダンスの50倍以上の負荷を着けると効果がある事が分かる。このように、つける負荷質量の大きさ及び場所はリードの長さに依存する。
【0061】又、負荷物を制振材料にし前述したような制振効果と相乗効果をだすことも可能である。
【0062】(実施例7)図16は本発明の他の実施例の外観図で、水晶振動子と支持リードとの接続部分にリードよりも損失の大きい接続材を用いた構造からなる水晶振動子ユニットである。図中、11、12、13、14、15、16、17、18、19は実施例1の図1と同様である。リード13、14及びインナーリード18、19は既述の実施例1、2、3、4、5、6と組み合わせて使えば更に効果は増大する。しかし本発明は従来例のリードを使っても十分に効果があるため、以下の説明は、従来例のリードを用いたとして、本実施例について説明する。
【0063】図16において、61及び62は本発明になる接続材を表している。図17は前出図16の61及び62の部分の拡大図である。図中、12は水晶振動子、18、19はインナーリード、15、16は水晶振動子とインナーリードを接着する接着剤である。これは、従来のようにハンダや導電ペーストである。75、76は接続材で、リードより損失の大きい接続材を使用している。これにより水晶振動子の基部に残っている振動は、この接続材により吸収されリード18や19にはほとんど伝達されない。これによって水晶振動子の振動は外部へ漏れる事がない。従って図23や図24で述べたようにケースをクランプする事による周波数の変化やCI値の変化は無くなり、図6、図7で述べた効果が得られる。又当然の事ながら、図25、図26で述べたような周波数やCI値の温度特性異常も無くなる。
【0064】75、76の厚みdは厚ければ厚いほど効果がある。特に振動の減衰が1/2以上に成ると効果として現れる。本発明の場合水晶振動子とリードの接着剤15、16と別部材のため厚みを任意にする事ができ、振動の漏れに応じて厚みを自由に設計できる特徴がある。又、この材料は損失の大きいハンダや図2で述べた制振用金属材料でも良いし、高分子の中に電気的導通を取るため金属粉をバインドしたいわゆる導電ペーストでもよい。
【0065】(実施例8)図18は本発明の他の実施例の外観図で、水晶振動子と支持リードとの接続部分にリードよりも損失の大きい接続材を用いた構造からなる水晶振動子ユニットである。当然の事ながら、リード13、14及びインナーリード18、19は既述の実施例1、2、3、4、5、6と組み合わせて使えば更に効果は増大する。しかし本発明は従来例のリードを使っても十分に効果があるため、以下の説明は、従来例のリードを用いたとして、本実施例について説明する。
【0066】図中、12は水晶振動子、18、19はインナーリード、77、78は水晶振動子とインナーリードを接着する本発明の接(続)着材である。本発明は実施例7と違って中間に入る接続材を用いず、水晶振動子12とリード18、19を直接に接続する接続材(接着剤もこれに含む)で、ハンダや導電ペーストである。しかし、その材料はリードより損失が大きいもので、通常の鉛錫ハンダ、や金錫ハンダ、金ゲルマニウムハンダ等を含んでいる。例えば、鉛錫半田の場合には損失の大きい鉛の量を減らす事無いようにしたものである。また、損失の大きい金属や高分子を混ぜたものである。更には、ハンダよりも損失の大きい導電接着剤がより好ましい。この例としては高分子に導電材として銀やその他の金属を混合したものである。図中の厚みdはできるだけ厚くする。これにより水晶振動子の基部に残っている振動は、この接続材により吸収されリード18や19にはほとんど伝達されない。これによって水晶振動子の振動は外部へ漏れる事がない。従って従図2や従図3で述べたようにケースをクランプする事による周波数の変化やCI値の変化は無くなり、図6、図7で述べた効果が得られる。又当然の事ながら、従図4、従図5で述べたような周波数やCI値の温度特性異常も無くなる。
【0067】75、76の厚みdは厚ければ厚いほど効果がある。本発明の場合水晶振動子とリードの接着剤そのものが制振材であるため、部材を増やす事無く、又従来の製造工程を変更する事無くできる特徴がある。
【0068】(実施例9)図19は本発明の他の実施例の外観図で、その構造を示している。当然の事ながら、本発明は既述の実施例1、2、3、4、5、6、7、8と組み合わせて使えば更に効果は増大する。しかし本発明は上記従来例と組み合わせなくとも十分に効果があるため、以下の説明は組み合わせをしない例について説明する。図中、79、80は本発明になるリードで、長さL、断面積Sの構造である。水晶振動子から支持リードに漏洩する振動モードの中でもっとも大きく漏洩するモードに注目し、その波長をλとしたとき、Lはλ/64〜λ/4に設計されている。振動漏れを図4の波動の伝搬として解くと、等価的に図5の機械回路の伝送モデルとなる。図中ZRは負荷で、図19のプラグ17とケース11を合わせたものに相当する。又、等価機械回路の特性インピーダンスをZ0とする。これを解いた結果が図20である。図19に於けるインナーリード79の長さはLであるから、水晶振動子15との接続側端点の変位速度をVsとし、プラグ17側端点の変位速度をV(L)として、その比V(L)/Vsを表している。横軸はリード長さLで、リードを伝わる波の波長をλとし、このλに対する倍数で表してある。図20に於いて、81は負荷ZRが零の時、82は負荷ZRが0.5Z0の時、83は負荷ZRがZ0の時、84は負荷ZRが5Z0零の時、85は負荷ZRが50Z0の時を表している。この図よりZRが零の時、即ちプラグとケースの質量がない仮想的な場合、81の曲線になり、Lが零以外ではλ/2で最小になる。プラグとケースの質量が増えていくに従い最小点を与えるLは短くなり、ZR=Z0の時図中83の曲線となり、Lがλ/4以上でλ/2以下であれば充分小さな値である。更にZRが大きくなってZR=5Z0の時は曲線84となり、Lがλ/8以上かつλ/2以下であれば充分小さな値となる。更にZRが大きくなってZR=50Z0になると、曲線85となりLがλ/64以上であれば充分小さな値となる。ケースもプラグも小型化されてきた今日、通常使用されるシリンダー状のケースとプラグは概略この程度である事から、Lがλ/64以上でλ/4以下である事が良い。ちなみに図1515はλが小さい時の図20の拡大図である。勿論、大きなケースやプラグについてはこの限りではないが、本発明と同様の考え方は成立する。
【0069】これにより水晶振動子の基部に残っている振動は、このリードを伝わる内に小さくなりプラグ17やケース11にはほとんど伝達されない。これによって水晶振動子の振動は外部へ漏れる事がない。従って従図2R>2や従図3で述べたようにケースをクランプする事による周波数の変化やCI値の変化は無くなり、図6、図7で述べた効果が得られる。又当然の事ながら、従図4、従図5で述べたような周波数やCI値の温度特性異常も無くなる。本発明の場合、リードの長さを適切に選ぶだけであるため、部材を増やす事無く、又従来の製造工程を変更する事無くできる特徴が更にある。
【0070】(実施例10)図21は本発明の他の実施例の外観図である。図21に於いて、11、12、13、14、15、16、17は実施例1の図1と同様である。86、87は本発明になるリードである。本発明は既述の実施例1、2、3、4、5、6、7、8と組み合わせて使えば更に効果は増大するが、組み合わせなくても十分に効果があるため、以下は組み合わせない場合について説明する。既述の実施例9に於いては図19のリード79及び80を通してもっとも漏洩する振動モードに注目し、その波長λとリードの長さLとが特定の関係を持つ構造について示した。水晶振動子によっては複数の振動が比較的大きく漏洩する場合がある。本実施例はこのような場合を対象としたものである。このような場合に、本発明は支持リードから漏洩する二つ以上の振動モードの波長の内、もっとも波長の長いモードに着目し、リード長はその波長の1/64〜1/4を満たし、かつ他のモードが共振しない長さをもつ事を特徴とする支持リード形状となっている。即ちリード86、87の長さをLとし断面積をSとすると、LとSは上記を満たすように設計されている。具体的には、図21に於いて、水晶振動子12が300kHz程度でオバートン(基本振動より1次次数が高い)屈曲振動をする例をとりあげる。図21に於いてはリード86、87は丸棒断面の例を示したが、角棒断面でも構わない。この場合、リードを通して漏洩する振動モードは屈曲振動モード、捩り振動モード、縦振動モードである。リードを伝搬するこれらの波の中で最も波長の長いものは縦振動モードである。リードがコバール材でできているとすれば、この波長は約13238μmである。この波長に対してリードの長さはまず1/64以上である必要があるから207μm以上となる。次に波長の長いものは捩り振動モードで、最も短いものは屈曲振動モードである。例えばこの屈曲振動モードは500〜600μmで共振する。従って、Lは前述の値を避けなければならず、結局207μm以上で500μmを越えないできるだけ長い設計値を選び、400μm程度が最適値となる。近年、素子の小型化の要求に応えるため図21に於けるケース11の寸法をできるだけ小さくしなければならず、その結果リード86、87の長さも短くしなければならなくなってきている。このように本発明はその際のリード長の最適設計値を与えるもので重要である。
【0071】(実施例11)図21は更に本発明の他の実施例の外観図である。図中、リード86、87は水晶振動子からこの支持リードに漏洩する振動モードに関してリードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする断面形状を有している。図21に於いて86、87の断面積をSとしこのリードの機械等価回路の特性インピーダンスをZ0とする。図5のZRがZ0に比べて大きくなると図15で述べたように、曲線は71、72、73、74の順に移っていく。このようにZRがZ0に比べて大きければ大きいほど波動は伝搬しなくなる。前述したようにZRは図21に於けるプラグ17とケース11の質量で決まるものである。従って、この質量を大きくする代わりに、逆にZ0を小さくすれば相対的にZRはZ0よりも大きくすることができ、上記ZRを大きくしたと同様の効果が得られる。例えば、リードを伝わる縦波を考えると、数式1よりZ0=S(ρE)1/2であるから、Sを小さくすればするほどZ0を小さくする事ができる。従って、本発明では水晶振動子ユニットを落下したときの衝撃でリード86、87がたわんで水晶振動子12がケース11に衝突して破損する事のない程度にSを小さくしてある。ちなみに前述の実施例10に於けると同様に水晶振動子が300kHz程度でオーバートン屈曲振動をしているときは、リード断面の直径は100〜200μmで、Sは0.008〜0.03μm2程度となる。このようにSを小さくする事によりリード86、87の長さをできるだけ短くする事ができ、その結果ケース11の長さを短くでき小型化におおいに寄与できる。この際、リード長さは既述の実施例10に従う事は言うまでもない。
【0072】
【発明の効果】近年、電子機器の小型化は目ざましいものがあり、これに使われる標準周波数発生デバイスとしての水晶振動子に対しても一層の小型化が要求されている。特に新しい機器としての超小型ページャー等の携帯通信機器や無線制御機器に於いては従来あまり使われていなかった数百kHzの周波数を必要としている。この周波数帯の振動子として従来は輪郭振動系の水晶振動子が実用化されていたが大きすぎて使われなかった。そこで新しくこの周波数帯の小型な水晶振動子として高次振動(オーバートーン)を使った音叉型水晶振動子や捩り振動音叉型水晶振動子が注目された。しかしこの水晶振動子は、水晶振動子の振動がそれを支持するリードを介して外部へ漏洩しやすく、その結果、諸特性が悪く、ほとんど実用化されていなかった。本発明はこのような市場の要求に応えるべく、実用化されにくいとされていた高次振動を使った音叉型水晶振動子を提供する事を狙いとしており、本発明の効果はこの意味で絶大である。即ち、■高次振動音叉型水晶振動子や捩り振動音叉型水晶振動子では、従来技術では水晶振動子の振動が支持リードに漏洩しやすく、これにより振動が不安定であったが本発明の技術を用いる事により、振動の漏洩を阻止でき安定な振動をもつ高次振動音叉型水晶振動子や捩り振動音叉型水晶振動子を実現する事ができた。
【0073】■前述のような振動が安定な水晶振動子を実用化する事ができたため、この水晶振動子を発振器に接続し水晶発振器を構成したとき、非常に安定した発振周波数を得る事ができるようになった。
【0074】■従来技術では水晶振動子の振動が支持リードに漏洩しやすく、これにより水晶振動子の等価抵抗(CI値)が高くなり、発振器を構成する際、大きな発振電流を必要としたが、本発明の技術により等価抵抗(CI値)を下げる事ができ、その結果発振電流を下げる事ができた。
【0075】■従来技術では水晶振動子の振動が支持リードに漏洩しやすく、これにより水晶振動子の等価抵抗(CI値)のばらつきが大きく、発振器を構成した際、発振が不安定なものができ、発振が停止することがあったが、本発明の技術を用いる事により等価抵抗のばらつきの少ない水晶振動子を提供でき、その結果ばらつきの少ない安定な発振器を構成することができた。
【0076】■ 従来技術では水晶振動子の振動が支持リードに漏洩しやすく、これにより水晶振動子の周波数温度特性が突然ジャンプする事があったが、本発明の技術を用いる事により、このジャンプをなくす事ができ、広い温度範囲にわたって安定な周波数を得る事ができた。
【0077】■従来技術では水晶振動子の振動が支持リードに漏洩しやすく、これにより水晶振動子のCI値の温度特性が突然ジャンプし発振が停止する事があったが、本発明の技術を用いる事により、このジャンプをなくす事ができ、広い温度範囲にわたって安定な発振を得る事ができた。
【0078】このように高次の屈曲振動や捩り振動を利用して数百kHzの周波数をもつ音叉型水晶振動子を実用化しようとしたときに種々問題となる点を、本発明はことごとく解決した。これにより市場の要求に応えた小型な水晶振動子の実用化を可能にした。更に当然の事ながら、時計用に生産されコストが非常に安い32kHzの音叉型水晶振動子ユニットと、水晶振動子、プラグやリードのすべての点で形状が同じのため、そのまま同じように製造でき従来にないコストの安い数百kHz帯の水晶振動子を実用化できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1、実施例2及び実施例3に係り、本発明の支持リード材を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図2】本発明の実施例1に係り、本発明になる材料の説明図。
【図3】本発明の実施例1に係り、本発明の効果の説明図。
【図4】本発明の実施例1に係り、本発明の原理の説明図。
【図5】本発明の実施例1に係り、本発明の原理の説明図。
【図6】本発明の実施例1〜実施例11に係り、本発明の効果を示すグラフ。
【図7】本発明の実施例1〜実施例11に係り、本発明の効果を示すグラフ。
【図8】本発明の実施例1〜実施例11に係り、本発明の効果を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例1〜実施例11に係り、本発明の効果を示すグラフ。
【図10】本発明の実施例2に係り、本発明の原理を示すグラフ。
【図11】本発明の実施例2に係り、本発明の原理を示すグラフ。
【図12】本発明の実施例4に係り、本発明の支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図13】本発明の実施例5に係り、本発明の支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図14】本発明の実施例6に係り、本発明の支持リード構造を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図15】本発明の実施例3、実施例6、実施例9、実施例10、及び実施例11に係り、本発明の原理を示すグラフ。
【図16】本発明の実施例7に係り、本発明の接続構造を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図17】本発明の実施例7に係り、図16の拡大図。
【図18】本発明の実施例8に係り、本発明の接続構造を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図19】本発明の実施例9に係り、本発明の支持リード形状を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図20】 本発明の実施例3、実施例6、実施例9、実施例10及び実施例11に係り、本発明の原理を示すグラフ。
【図21】本発明の実施例10及び実施例11に係り、本発明の支持リード形状を用いた水晶振動子ユニットの外観図。
【図22】従来例の外観図。
【図23】従来例の特性図。
【図24】従来例の特性図。
【図25】従来例の特性図。
【図26】従来例の特性図。
【符号の説明】
11 カプセル(ケース)
12 音叉型水晶振動子
13 リード(アウターリード)
14 リード(アウターリード)
15 接合部
16 接合部
17 ベース(プラグ)
18 リード(インナーリード)
19 リード(インナーリード)
21 本発明に相当する材料の領域
22 複合型制振鋼材
23 ダンピング処理鋼材
24 Mn−Cu合金
25 Fe−Cr合金
26 鋳鉄
27 Al、Ti等金属
31 本発明の領域
32 複合型制振鋼材
33 ダンピング処理鋼材
34 木材
35 コンクリート
36 金属
37 損失係数曲線
41 水晶振動子
42 インナーリード
43 プラグ
51 水晶振動子
52 インナーリード
53 プラグ
54 フリーの時の特性
55 クランプした時の特性
56 フリーの時の特性
57 クランプした時の特性
58 周波数温度特性
59 等価抵抗(CI値)の温度特性
61 本発明になる接続材
62 本発明になる接続材
65 振動抑制材
66 振動抑制材
67 振動抑制用被覆膜
68 振動抑制用被覆膜
69 振動抑制用負荷物
70 振動抑制用負荷物
71 リード伝わる波の伝達率曲線
72 リード伝わる波の伝達率曲線
73 リード伝わる波の伝達率曲線
74 リード伝わる波の伝達率曲線
75 本発明になる接続材
76 本発明になる接続材
77 本発明になる接続材(接着剤)
78 本発明になる接続材(接着剤)
79 本発明になる接続材(接着剤)
80 本発明になる接続材(接着剤)
81 リード伝わる波の伝達率曲線
82 リード伝わる波の伝達率曲線
83 リード伝わる波の伝達率曲線
84 リード伝わる波の伝達率曲線
85 リード伝わる波の伝達率曲線
86 本発明のリード
87 本発明のリード
101 カプセル(ケース)
102 音叉型水晶振動子
103 リード(アウターリード)
104 リード(アウターリード)
105 接合部
106 接合部
107 ベース(プラグ)
108 リード(インナーリード)
109 リード(インナーリード)
121 フリーの時の特性
122 クランプした時の特性
131 フリーの時の特性
132 クランプした時の特性
141 周波数温度特性
151 等価抵抗(CI値)の温度特性
η 損失係数
L リードの長さ
F 力[N/m2]
V 変位速度[m/s]
m リードの単位長質量[Kg/m2]
C 単位長コンプライアンス[1/N]
R リードの単位長当たりの抵抗[Ns/m]
G 単位長機械コンダクタンス[1/Ns]
α 減衰定数
β 位相定数
γ 伝搬定数
exp(−γx) 正の方向に伝搬する波
exp(γx) 負の方向に伝搬する波である。
0 等価機械回路に於ける特性インピーダンス
φ 位相角
θ 位相角
CI 等価抵抗
ζ 波の伝搬速度
f 共振周波数
T 温度偏差
0 等価並列容量
k 結合容量
1 水晶振動子の等価直列インダクタンス
1 水晶振動子の等価容量
1 水晶振動子の等価抵抗
2 支持リードの等価直列インダクタンス
2 支持リードの等価容量
2 支持リードの等価抵抗
2 支持リードの振動のQ値
a 支持リードの1次温度係数
δf/f 基準の周波数からの偏差
S 断面積
ρ 密度
E ヤング率
V(L)X=に於ける変位速度
Fs X=0に於ける変位速度
ξ 変位速度
d 接続部材の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水晶振動子ユニットを構成する支持リード材において、該支持リード材は振動に対する損失係数が1/100以上の損失を有する材料より構成されている事を特徴とする水晶振動子の支持リード材。
【請求項2】 前記支持リード材は、その振動の共振周波数の温度特性がほぼ零となる材料より作られている事を特徴とする請求項1記載の水晶振動子の支持リード材。
【請求項3】 水晶振動子から支持リードに漏洩する振動モードに関して前記支持リードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする密度及び弾性定数を有する材料より作られる事を特徴とする請求項1記載の水晶振動子の支持リード材。
【請求項4】 水晶振動子の支持リードが振動を抑制する材料により被われている構造を有する事を特徴とする水晶振動子の支持リード構造。
【請求項5】 前記支持リードの一部分又は全部分がチューブ状の振動抑制材により被われている事を特徴とする請求項4記載の水晶振動子の支持リード構造。
【請求項6】 前記支持リードの一部分又は全部分が振動を抑制する膜によってクラッドされている事を特徴とする請求項4記載の水晶振動子の支持リード構造。
【請求項7】 前記支持リードの一部分に振動を抑制する負荷物が付けられている構造を有する事を特徴とする請求項4記載の水晶振動子の支持リード構造。
【請求項8】 水晶振動子と支持リードとの接続部分に前記リードよりも振動に対する損失の大きい制振材を用いた構造からなる事を特徴とする水晶振動子の接続構造。
【請求項9】 前記接続部分にリードよりも振動に対する損失の大きい接着剤を用いた構造からなる事を特徴とする請求項8記載の水晶振動子の接続構造。
【請求項10】 前記接続部分に於いて振動の減衰が1/2以上となる厚みからなる構造を有する事を特徴とする請求項8記載の水晶振動子の接続構造。
【請求項11】 水晶振動子から支持リードにもっとも漏洩する振動モードの支持リードに於ける波長に対して、前記支持リードの長さがその波長の1/64〜1/4の長さである事を特徴とする水晶振動子の支持リード形状。
【請求項12】 水晶振動子から支持リードに漏洩する二つ以上の振動モードの波長の内、最も長い波長に対して前記リードの長さがその波長の1/64〜1/4の長さを有し、かつ他の振動モードに対して共振しない長さを有する事を特徴とする請求項11記載の水晶振動子の支持リード形状。
【請求項13】 水晶振動子から支持リードに漏洩する振動モードに関してリードを伝わる波の特性インピーダンスを最小にする断面形状を有する事を特徴とする請求項11記載の水晶振動子の支持リード形状。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図15】
image rotate


【図23】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【図14】
image rotate


【図16】
image rotate


【図19】
image rotate


【図24】
image rotate


【図20】
image rotate


【図21】
image rotate


【図22】
image rotate


【図25】
image rotate


【図26】
image rotate