説明

水晶振動子

【課題】 不要モードの影響を極力排除した、良好な特性の水晶振動子を提供する。
【解決手段】 水晶振動板1はATカット水晶振動板からなり、平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有している。厚肉部11の両主面には励振電極12,13が対向して形成され、各々接続電極12b、13bに接続されている。接続電極12b、13bは水晶振動板1の角部C1に偏在し、厚肉部11および励振電極12,13は角部C2に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる厚みすべり振動を用いた水晶振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子において不要モードの抑制は所望の特性を確保するために重要である。この不要モードは主振動以外の他の振動モードあるいは高調波振動モード等からなるが、このような不要モードの抑制を目途として、メサ型構成(厚肉部を有する構成)が開示されている。このような構成例を特開2008−263387号に示す。本構成では、圧電振動板の板面の中央部分に周辺部よりも厚み寸法の大きい振動部を形成したメサ型の圧電振動板が開示され、当該圧電振動板はその一辺が保持された片保持構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、メサの堀込み量に関連する特定をすることにより、駆動時に生じることのある不要モードの抑制を行っているが、少なからず振動領域のメサ部分(厚肉部分)からの振動が薄肉部に伝搬することがあった。このような場合、水晶振動板(圧電振動板)をベース等に固定する保持を行った場合、保持部の影響が水晶振動板の特性に悪影響を与えることがあった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、超小型化した場合でも、不要モードの影響を極力排除した、良好な特性の水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水晶振動子は、上記目的を達成するためになされたもので、厚肉部と、薄肉部と、外部と導電接合材により接続される接続電極を含む矩形の水晶振動板を有し、前記厚肉部には前記励振電極が形成され、当該励振電極は前記接続電極に接続されており、前記励振電極と接続電極は各々水晶振動板の対角方向に偏って離間配置されていることを特徴としている。
【0007】
励振電極の形成された領域は、水晶振動子の駆動時においてその周囲に較べて強勢に振動しており、厚肉部の形成により振動エネルギの閉じ込めを行った場合でも、薄肉部に振動エネルギが伝搬することがある。このような励振電極の形成された領域と接続電極の形成された領域とを対角方向に離間させることによって振動エネルギが減衰し、接続電極の接合すなわち水晶振動板の保持(固着)の影響を極力抑制することができる。
【0008】
また、本発明による水晶振動子は、上記目的を達成するためになされたもので、厚肉部と、薄肉部と、外部と導電接合材により接続される接続電極を有する水晶振動板を有し、前記厚肉部には前記励振電極が形成され、当該励振電極は前記接続電極に接続されており、前記厚肉部と接続電極は各々水晶振動板の対角方向に偏って離間配置されていることを特徴としている。
【0009】
厚肉部の励振電極形成領域は、水晶振動子の駆動時においてその周囲に較べて強勢に振動しており、厚肉部の形成により振動エネルギの閉じ込めを行った場合でも、薄肉部に振動エネルギが伝搬することがある。このような励振電極の形成された厚肉部と接続電極の形成された領域とを対角方向に離間させることによって、振動エネルギが減衰し、接続電極の接合すなわち水晶振動板の保持(固着)の影響を極力抑制することができる。
【0010】
また、上記各構成において、前記導電接合材は金属バンプからなり、前記接続電極は外部と前記金属バンプにより電気的機械的接続されている構成であってもよい。
【0011】
前記金属バンプによる電気的機械的接続は、超音波を用いたFC接合(フリップチップ接合)を用い、強固な接合を行うができ、このため金属バンプによる導電接合は安定するという利点を有している。しかしその反面強固な接合であるが故に、緩衝機能が小さく、例えば振動エネルギが伝搬した際、これを十分に吸収することができず、当該接合により水晶振動子の特性が大きく変動することがあった。本構成によれば駆動する励振電極形成領域と接続電極形成領域が対角方向に離間しているので、水晶振動子の特性劣化を抑制することができる。
【0012】
また、上記各構成において、厚肉部と薄肉部の境界はテーパが形成されている構成であってもよい。
【0013】
テーパは厚肉部から薄肉部に至る斜面を有する傾斜部であるが、このようなテーパ形成により、厚肉部の振動がスムーズに薄肉部に対して減衰して伝搬させることができ、駆動する励振電極形成領域と接続電極形成領域が対角方向に離間していることと相俟って、接続電極への振動エネルギの伝搬を抑制することができる。
【0014】
さらに、上記各構成において、水晶振動板の1辺または相互に隣接する2辺に張り出し部が形成され、前記接続電極が当該張り出し部に形成されている構成であってもよい。
【0015】
上記構成により、張り出し部が矩形の水晶振動板の外側に突出して形成されており、接続電極が当該張り出し部に形成されている構成である。このため前述の駆動する励振電極形成領域と接続電極形成領域が対角方向に離間していることと相俟って、厚肉部の振動が接続電極により伝搬しにくい構成となっている。
【0016】
また上記各構成において、前記接続電極は一対からなる構成であり、また各接続電極は前記導電接合材により外部と接合され、かつ前記励振電極に近い導電接合材の外形サイズが前記励振電極に遠い導電接合材の外形サイズより小さい構成であってもよい。
【0017】
前述のとおり、励振電極形成領域は水晶振動子の駆動時においてその周囲に較べて強勢に振動しており、厚肉部の形成により振動エネルギの閉じ込めを行った場合でも、薄肉部に振動エネルギが伝搬することがある。この振動エネルギは漸次減衰して伝搬するが、励振電極に近い導電接合材の外形サイズが励振電極に遠い導電接合材の外形サイズより小さい構成とすることにより、比較的減衰していない領域を小さいサイズの導電接合材で接合することにより、主振動を阻害することなく振動の減衰をスムーズに行わしめることができる。また励振電極に遠い導電接合材の外形サイズを大きくすることにより、接合強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超小型化した場合でも、不要モードの影響を極力排除した、良好な特性の水晶振動子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す水晶振動板の斜視図
【図2】図1の平面図
【図3】図2のA−A断面図の水晶振動板をパッケージに気密収納した状態を示す図
【図4】本発明による第2の実施形態を示す水晶振動板の断面図
【図5】本発明による第3の実施形態を示す水晶振動板の平面図
【図6】本発明による第4の実施形態を示す水晶振動板の平面図
【図7】本発明による第5の実施形態を示す水晶振動板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態をATカット水晶振動板を用いた水晶振動子を例にとり、図1乃至図3とともに説明する。
【0021】
水晶振動子は図3に示すように、水晶振動板1がベース2に金属バンプ13cにより電気的機械的接合され、リッド3により気密封止された構成である。
【0022】
水晶振動板1はATカット水晶振動板からなり、水晶の結晶軸X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺、Y軸方向に厚さを有する構成で、全体として矩形の水晶振動板である。また水晶振動板は平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有し、本実施の形態では薄肉部10の内側に厚肉部が形成された構成である。厚肉部は長辺と短辺を有し、水晶振動板1の一つの角部C2に偏って形成されている。具体的には厚肉部の1つの長辺11aは水晶振動板1の一つの長辺1aと平行な状態で近接し、厚肉部の1つの短辺11bは水晶振動板1の一つの短辺1bと平行な状態で近接した構成となっている。なお、前記長辺1aと前記長辺11a、前記短辺1bと前記短辺11bとは各々平行に配置されていなくてもよい。このように平行配置しない場合、例えば輪郭系振動に関連する振動モードが抑制されることがある。
【0023】
なお、本実施の形態において厚肉部11は図3に示すように水晶振動板1の一主面のみ厚さが増加した厚肉構成(プラノメサ構成)である。この場合、厚肉部を一主面にだけ形成すればよいので、製造が容易であり、また製造誤差が少なくエネルギ閉じ込め領域の位置決めが容易となる利点を有している。
【0024】
また両主面(表裏面)に厚さが増加した厚肉構成(バイメサ構成)であってもよい。この場合、振動エネルギの閉じ込め効率が向上し、特性の良好な水晶振動子を得ることができる。
【0025】
厚肉部11の両主面には励振電極12,13が対向して形成されている。これら励振電極12,13は平面視矩形形状であり、各々同形状、同サイズで厚肉部の表裏で正対向している。また各辺は平面視矩形の厚肉部11の各辺に平行な配置となってる。なお、励振電極は表裏で形状を異ならせてもよい。例えば、平面で見て表面の電極長方形状とし、裏面の電極を菱形の構成であってもよい。この場合、不要モードの抑制に寄与することがある。
【0026】
これら励振電極12,13は各々引出電極12a,13a(13aは図示せず)と接続されている。また引出電極12a,13aは励振電極より細い幅を有しており、厚肉部11から薄肉部10に伸長し、各々接続電極12b、13bに接続されている。
【0027】
接続電極12b、13bは引出電極より広い幅の領域を有しており、外部と接続される。図1および図2に示す接続電極13bは裏面の接続電極から水晶振動板1の側面を介して表面に回り込んで形成されている。(図3参照)
【0028】
また接続電極12b、13bは水晶振動板1の1つの短辺1bとは異なる他の短辺の角部に偏在して形成され、かつ両接続電極12b、13bは相互に近接して設けられている。
【0029】
以上の構成により、接続電極12b、13bは水晶振動板1の角部C1に偏在し、厚肉部11および励振電極12,13は角部C2に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。前述の励振電極、引出電極、接続電極は例えば各々複数の金属による同一の積層構成とされている。例えば励振電極、引出電極、接続電極を、各々水晶振動板1の表面にクロム(Cr)を膜状に形成したクロム層、その上面に金(Au)からなる金層または銀(Ag)を膜状に形成した銀層を形成した積層構成からなる二層構成としてもよい。なお、これら電極膜の積層構成は上記例に限定されるものではなく、例えばクロム層またはチタン層、金層、銀層またはクロム層の三層構成であってもよい。
【0030】
なお本実施の形態において接続電極12b、13bは、導電接合材として金属バンプ12c、13c(13cは図示せず)を形成し外部との接続を行っている。当該金属バンプ12c、13cはメッキを用いて厚膜状に形成されており、その平面視形状は円形または多角形であり、接続電極12b、13bの上面に形成されている。当該金属バンプ(導電接合材)は小さな金属バンプを接続電極上に複数設ける構成であってもよい。このように小さな金属バンプを複数設ける構成であれば、FC接合時の単位面積あたりの加圧力を小さくすることができ、また接合の信頼性も向上する。なお、金属バンプは金(Au)や金合金等が用いられる。
【0031】
図3に示すように、水晶振動板1はパッケージに気密封入される。パッケージはベース2とリッド3とからなる。ベース2は断面で見て凹形の収納部21と収納部の外側に周状に形成された堤部22を有している。また収納部21の底面には電極パッド20が形成され、当該電極パッド20がベース外側(裏面)において、図示しない外部接続端子とつながっている。なお、当該外部接続端子がプリント配線基板等の実装基板の搭載電極と導電接合される。
【0032】
ベース2の電極パッド20に水晶振動板1の金属バンプ12c、13cをFC接合し、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気でリッド3とベース2の堤部の上面を接合部21で気密的に接合して水晶振動子を得る。
【0033】
次に水晶振動子の製造方法についてフォトリソグラフィ技術を用いた加工を例にとり、以下に説明する。水晶振動板はフォトリソグラフィ技術を用いることにより、形状加工および電極形成をすることができる。
【0034】
水晶振動板を多数得ることのできる外形サイズのATカット水晶ウェハを用意し、水晶ウェハの表面を精密に所定厚さまで研磨加工する。次にフォトリソグラフィ技術を用いて、各水晶振動板毎に厚肉部と薄肉部を形成するレジスト膜のパターニングを行う。その後形成されたレジスト膜を用いて、水晶ウェハをエッチングすることにより、厚肉部と薄肉部を有する多数個の矩形水晶振動板を得る。この時各水晶振動板は水晶ウェハに連結された状態となっている。
【0035】
次に水晶ウェハに電極材料としてクロム膜、金膜の順で真空蒸着法またはスパッタリング法を用い、電極の積層膜を形成する。次にフォトリソグラフィ技術を用いて、電極形成用のレジスト膜のパターニングを行い、その後パターニングに従ってエッチングを行うことにより各水晶振動板毎に所定の電極パターンを形成することができる。
【0036】
そして接続電極部分のみを開口したレジスト膜のマスキングをフォリリソグラフィ技術を用いて行い、当該開口に対して金膜をメッキ形成することにより金属バンプを形成する。なお、この金属バンプは接続電極と同等の大きさかあるいは接続電極より小さいサイズで形成される。また小さな金属バンプを接続電極上に複数形成し、多点金属バンプ構成としてもよい。
【0037】
その後、水晶ウェハから各水晶振動板を切り離し、電極形成された矩形の水晶振動板を得る。なお、上記電極形成、金属バンプの形成手順は一例であり、例えば、まず金属バンプを形成し、その後多の電極パターンの形成を行ってもよい。
【0038】
次にベース2を用意し、電極パッドに対して金属バンプが接合するよう水晶振動板を保持して、FC接合(フリップチップボンディング)を行う。その後リッドにてベースの堤部を接合し、気密封止を行う。なお、リッドとベースの気密接合は、シーム溶接を用いた接合や金属ろう材を用いた接合、あるいはガラスろう材を用いた接合を用いることができる。
【0039】
本発明による第2の実施の形態を図4とともに説明する。
【0040】
水晶振動子は図4に示すように、水晶振動板4がベース2に電気的機械的接合された構成である。基本構成は第1の実施形態と同じであるが、厚肉部41が両主面に形成されている点、厚肉部41と薄肉部40の境界にテーパ41aが形成されている点、水晶振動板4とベース2との接合を導電性樹脂接合材Sを用いている点で相違している。
【0041】
水晶振動板4はATカット水晶振動板からなり、水晶の結晶軸X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺、Y軸方向に厚さを有する構成で全体として矩形の水晶振動板である。また水晶振動板4は平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有し、本実施の形態では薄肉部40の内側に厚肉部が形成された構成である。厚肉部は長辺と短辺を有し、水晶振動板4の一つの角部に偏って形成されている。
【0042】
なお、本実施の形態において厚肉部41は図4に示すように水晶振動板4の両主面(表裏面)に厚さが増加した厚肉構成(バイメサ構成)としている。この場合、振動エネルギの閉じ込め効率が向上し、特性の良好な水晶振動子を得ることができる。
【0043】
また厚肉部41と薄肉部40との境界はテーパ41aが形成されている。当該テーパ41aは漸次厚さが変化する構成であり、前記境界の全周に亘って形成してもよいし、例えば対向する2辺のみに形成するように一部のみに形成してもよい。
【0044】
厚肉部41の両主面には励振電極42,43が対向して形成されている。これら励振電極42,43は平面視矩形形状であり、かつ各辺は平面視矩形の厚肉部41の各辺に平行な配置となってる。なお、励振電極は表裏で形状を異ならせてもよい。例えば、平面で見て表面の電極を長方形とし、裏面の電極を菱形の構成であってもよい。この場合、不要モードの抑制に寄与することがある。
【0045】
これら励振電極42,43は各々引出電極42a,43a(43aは図示せず)と接続されている。また引出電極42a,43aは励振電極より細い幅を有しており、厚肉部41から薄肉部40に伸長し、各々接続電極42b、43b(42bは図示せず)に接続されている。
【0046】
接続電極42b、43bは前記引出電極より広い幅の領域を有しており、外部と接続される。図1および図2に示す接続電極43bは裏面の接続電極から水晶振動板4の側面を介して表面に回り込んで形成されている。(図3参照)
【0047】
また接続電極42b、43bは水晶振動板4の1つの短辺4bとは異なる他の短辺の角部に偏在して形成され、かつ両接続電極42b、43bは相互に近接して設けられている。
【0048】
以上の構成により、接続電極42b、43bは水晶振動板4の角部に偏在し、厚肉部41および励振電極42,43は角部に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。前述の励振電極、引出電極、接続電極は例えば各々複数の金属による同一の積層構成とされている。例えば励振電極、引出電極、接続電極を、各々水晶振動板1の表面にクロム(Cr)を膜状に形成したクロム層、その上面に金(Au)からなる金層または銀(Ag)を膜状に形成した銀層を形成した積層構成からなる二層構成としてもよい。なお、これら電極膜の積層構成は上記例に限定されるものではなく、例えばクロム層またはチタン層、金層、銀層またはクロム層の三層構成であってもよい。
【0049】
なお本実施の形態においては導電接合材として導電性樹脂接合材S(導電フィラーを含有した樹脂接合材)を用いてベースの電極パッドを導電接合することにより外部との接合を行っている。導電性樹脂接合材の例として、シリコーン系樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂を用いた導電性樹脂接合材をあげることができる。
【0050】
図4に示すように、水晶振動板4はパッケージに気密封入される。パッケージはベース2とリッド3とからなる。ベース2は断面で見て凹形の収納部21と収納部の外側に周状に形成された堤部22を有している。また収納部21の底面には電極パッド20が形成され、当該電極パッド20がベース外側(裏面)において、図示しない外部接続端子とつながっている。
【0051】
ベースの電極パッド20に水晶振動板4を導電性樹脂接合材Sにて導電接合し、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気でリッド3とベース2の堤部の上面を接合部21で気密的に接合して水晶振動子を得る。
【0052】
本発明による第3の実施の形態を図5とともに説明する。図5は水晶振動板の構成を示す平面図である。
【0053】
水晶振動子は水晶振動板5がベースに金属バンプ52c、53cにより電気的機械的接合された構成である。基本構成は第1の実施形態と同じであるが、水晶振動板5の構成、接続電極52b、53bの配置と金属バンプの構成が異なっている。
【0054】
水晶振動板5はATカット水晶振動板からなり、水晶の結晶軸X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺、Y軸方向に厚さを有する構成で全体として矩形の水晶振動板5である。また水晶振動板5は平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有し、本実施の形態では薄肉部50の内側に厚肉部が形成された構成である。厚肉部51は長辺と短辺を有し、水晶振動板5の一つの角部C2に偏って形成されている。具体的には厚肉部の1つの長辺51aは水晶振動板5の一つの長辺5aと平行な状態で近接し、厚肉部51の1つの短辺51bは水晶振動板5の一つの短辺5bと平行な状態で近接した構成となっている。なお、この水晶振動板50の四角には面取り501が形成されている。この面取り501により例えば輪郭系振動に関連する振動モードが抑制されることがある。
【0055】
なお、本実施の形態において厚肉部51は図3に示すように水晶振動板5の一主面のみ厚さが増加した厚肉構成(プラノメサ構成)であるが、この場合、厚肉部を一主面にだけ形成すればよいので、製造が容易であり、また製造誤差が少なくエネルギ閉じ込め領域の位置決めが容易となる利点を有している。
【0056】
また両主面(表裏面)に厚さが増加した厚肉構成(バイメサ構成)であってもよい。この場合、振動エネルギの閉じ込め効率が向上し、特性の良好な水晶振動子を得ることができる。
【0057】
厚肉部51の両主面には励振電極52,53(53は図示せず)が対向して形成されている。これら励振電極52,53は平面視矩形形状であり、かつ各辺は平面視矩形の厚肉部51の各辺に平行な配置となっている。
【0058】
これら励振電極52,53は各々引出電極52a,53a(53aは図示せず)と接続されている。また引出電極52a,53aは励振電極より細い幅を有しており、厚肉部51から薄肉部50に伸長し、各々接続電極52b、53bに接続されている。
【0059】
接続電極52b、53bは引出電極より広い幅の領域を有しており、外部と接続される。図1および図2に示す接続電極53bは裏面の接続電極から水晶振動板5の側面を介して表面に回り込んで形成されている。(図3参照)
【0060】
また接続電極52b、53bは水晶振動板5の1つの短辺5bとは異なる他の短辺の角部に偏在して形成され、かつ両接続電極52b、53bは相互に近接して設けられている。
【0061】
以上の構成により、接続電極52b、53bは水晶振動板1の角部C1に偏在し、厚肉部51および励振電極52,53は角部C2に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。前述の励振電極、引出電極、接続電極は例えば各々複数の金属による同一の積層構成とされている。例えば励振電極、引出電極、接続電極を、各々水晶振動板5の表面にクロム(Cr)を膜状に形成したクロム層、その上面に金(Au)からなる金層または銀(Ag)を膜状に形成した銀層を形成した積層構成からなる二層構成としてもよい。なお、これら電極膜の積層構成は上記例に限定されるものではなく、例えばクロム層またはチタン層、金層、銀層またはクロム層の三層構成であってもよい。
【0062】
なお本実施の形態においては接続電極52b、53bに導電接合材として金属バンプ52c、53c(53cは図示せず)を形成し外部との接続を行っている。当該金属バンプ52c、53cはメッキを用いて厚膜状に形成されており、その平面視形状は円形または多角形であり、接続電極52b、53bの上面に形成されている。
【0063】
図5に示すように、接続電極52bに形成された金属バンプ52cは接続電極53bに形成された金属バンプ53cよりも小さく形成されている。励振電極形成領域は水晶振動子の駆動時においてその周囲に較べて強勢に振動しており、厚肉部の形成により振動エネルギの閉じ込めを行った場合でも、薄肉部に振動エネルギが伝搬することがある。この振動エネルギは漸次減衰して伝搬するが、励振電極に近い導電接合材の外形サイズが励振電極に遠い導電接合材の外形サイズより小さい構成とすることにより、比較的減衰していない領域を小さいサイズの導電接合材で接合することにより、主振動を阻害することなく振動の減衰をスムーズに行わしめることができる。また励振電極に遠い導電接合材の外形サイズを大きくすることにより、接合強度を向上させることができる。
【0064】
なお、当該金属バンプは小さな金属バンプを接続電極上に複数設ける構成であってもよい。このように小さな金属バンプを複数設ける構成であれば、FC接合時の単位面積あたりの加圧力を小さくすることができ、また接合の信頼性も向上する。なお、金属バンプは金(Au)や金合金等が用いられる。
【0065】
水晶振動板5は図3に示したようなパッケージに気密封入される。 ベースの電極パッドに水晶振動板をFC接合し、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気でリッドとベースの堤部の上面を接合部で気密的に接合して水晶振動子を得る。
【0066】
なお、面取り501により水晶振動板をベースの収納部に収納する際、角部が収納部に接触することを抑制し、製造歩留まりを向上させることができる。
【0067】
本発明による第4の実施の形態を図6とともに説明する。図6は水晶振動板の構成を示す平面図である。
【0068】
水晶振動子は水晶振動板6がベースに金属バンプ62c、63cにより電気的機械的接合された構成である。基本構成は第1の実施形態と同じであるが、水晶振動板の形状と引出電極の構成が異なっている。
【0069】
水晶振動板6はATカット水晶振動板からなり、水晶の結晶軸X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺、Y軸方向に厚さを有する構成で全体として矩形の水晶振動板6である。また水晶振動板6は平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有し、本実施の形態では薄肉部60の内側に厚肉部が形成された構成である。厚肉部61は長辺と短辺を有し、水晶振動板6の一つの角部C2に偏って形成されている。具体的には厚肉部の1つの長辺61aは水晶振動板6の一つの長辺6aと平行な状態で近接し、厚肉部の1つの短辺61bは水晶振動板6の一つの短辺6bと平行な状態で近接した構成となっている。なお、前記長辺6aと前記長辺61a、前記短辺6bと前記短辺61bとは各々平行に配置されていなくてもよい。このように平行は位置しない場合、例えば輪郭系振動に関連する振動モードが抑制されることがある。
【0070】
なお、本実施の形態において厚肉部61は図3に示すように水晶振動板6の一主面のみ厚さが増加した厚肉構成(プラノメサ構成)であるが、この場合、厚肉部を一主面にだけ形成すればよいので、製造が容易であり、また製造誤差が少なくエネルギ閉じ込め領域の位置決めが容易となる利点を有している。
【0071】
また両主面(表裏面)に厚さが増加した厚肉構成(バイメサ構成)であってもよい。この場合、振動エネルギの閉じ込め効率が向上し、特性の良好な水晶振動子を得ることができる。
【0072】
水晶振動板6の他方の角部C1には張り出し部60aが形成されている。当該張り出し部60aは短辺の一部が短辺方向に伸長した平面視矩形の構成である。なお、張り出し部は上記構成に限定されるものではなく、相互に隣接する二辺に張り出し部が形成された構成であってもよいし、その形状も平面視で見て多角形、円形であってもよい。
【0073】
厚肉部61の両主面には励振電極62,63(63は図示せず)が対向して形成されている。これら励振電極62,63は平面視矩形形状であり、かつ各辺は平面視矩形の厚肉部61の各辺に平行な配置となっている。
【0074】
これら励振電極62,63は各々引出電極62a,63a(63aは図示せず)と接続されている。また引出電極62a,63aは励振電極より細い幅を有しており、厚肉部61から薄肉部60に伸長し、各々接続電極62b、63bに接続されている。図6においては引出電極は厚肉部の短辺から薄肉部に伸長するとともに、長辺の張り出し部に至る構成となっている。
【0075】
接続電極62b、63bは引出電極より広い幅の領域を有しており、外部と接続される。図1および図2に示す接続電極63bは裏面の接続電極から水晶振動板6の側面を介して表面に回り込んで形成されている。(図3参照) また接続電極62b、63bは前記張り出し部に並列して形成されている。
【0076】
以上の構成により、全体として接続電極62b、63bは水晶振動板6の角部C1に偏在し、厚肉部61および励振電極62,63は角部C2に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。前述の励振電極、引出電極、接続電極は例えば各々複数の金属による同一積層構成とされる。例えば水晶振動板の表面にクロム(Cr)を膜状に形成したクロム層、その上面に金(Au)を膜状に形成した金層または銀(Ag)を膜状に形成した銀層を形成した積層構成をあげることができる。
【0077】
なお本実施の形態においては接続電極62b、63bに導電接合材として金属バンプ62c、63c(63cは図示せず)を形成し外部との接続を行っている。当該金属バンプ62c、63cはメッキを用いて厚膜上に形成されており、その平面視形状は円形または多角形であり、接続電極の上面に形成されている。
【0078】
図6に示すように、接続電極62bに形成された金属バンプ62cは接続電極63bに形成された金属バンプ63cよりも小さく形成されている。励振電極形成領域は水晶振動子の駆動時においてその周囲に較べて強勢に振動しており、厚肉部の形成により振動エネルギの閉じ込めを行った場合でも、薄肉部に振動エネルギが伝搬することがある。この振動エネルギは漸次減衰して伝搬するが、励振電極に近い導電接合材の外形サイズが励振電極に遠い導電接合材の外形サイズより小さい構成とすることにより、比較的減衰していない領域を小さいサイズの導電接合材で接合することにより、振動の減衰をスムーズに行わしめることができる。また励振電極に遠い導電接合材の外形サイズを大きくすることにより、接合強度を向上させることができる。
【0079】
なお、当該金属バンプは小さな金属バンプを接続電極上に複数設ける構成であってもよい。このように小さな金属バンプを複数設ける構成であれば、FC接合時の単位面積あたりの加圧力を小さくすることができ、また接合の信頼性も向上する。なお、金属バンプは金(Au)や金合金等が用いられる。
【0080】
図3に示すように、水晶振動板6はパッケージに気密封入される。ベースの電極パッドに水晶振動板をFC接合し、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気でリッドとベースの堤部の上面を接合部で気密的に接合して水晶振動子を得る。本実施の形態によれば張り出し部60aにより、厚肉部からの振動が伝搬しにくい構成となっており、接続電極により水晶振動板の支持を行った場合でも特性を低下させることがなく、良好な特性の水晶振動子を得ることができる。
【0081】
本発明による第5の実施の形態を図7とともに説明する。図7は水晶振動板の構成を示す平面図である。
【0082】
水晶振動子は水晶振動板7がベースに金属バンプ72c、73cにより電気的機械的接合された構成である。基本構成は第1の実施形態と同じであるが、厚肉部の71の構成と励振電極の構成が異なっている。
【0083】
水晶振動板7はATカット水晶振動板からなり、水晶の結晶軸X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺、Y軸方向に厚さを有する構成で全体として矩形の水晶振動板7である。また水晶振動板7は平面視矩形の薄肉部10と、当該薄肉部10より厚く平面視矩形の厚肉部11を有し、本実施の形態では薄肉部70の内側に厚肉部が形成された構成である。本実施の形態においては、厚肉部71は長辺と短辺を有し、水晶振動板7の幅方向の中央部分に形成されている。
【0084】
なお、本実施の形態において厚肉部71は図3に示すように水晶振動板7の一主面のみ厚さが増加した厚肉構成(プラノメサ構成)であるが、この場合、厚肉部を一主面にだけ形成すればよいので、製造が容易であり、また製造誤差が少なくエネルギ閉じ込め領域の位置決めが容易となる利点を有している。
【0085】
また両主面(表裏面)に厚さが増加した厚肉構成(バイメサ構成)であってもよい。この場合、振動エネルギの閉じ込め効率が向上し、特性の良好な水晶振動子を得ることができる。
【0086】
厚肉部71の両主面には励振電極72,73(73は図示せず)が対向して形成されている。これら励振電極72,73は平面視矩形形状であり、かつ各辺は平面視矩形の厚肉部71の各辺に平行な配置となっている。本実施の形態においては励振電極72,73は厚肉部71の一方の角部C21に偏って形成されている。この構成により励振電極72,73は水晶振動板の角部C2に偏って配置される。
【0087】
これら励振電極72,73は各々引出電極72a,73a(73aは図示せず)と接続されている。また引出電極72a,73aは励振電極より細い幅を有しており、厚肉部71から薄肉部70に伸長し、各々接続電極72b、73bに接続されている。
【0088】
接続電極72b、73bは引出電極より広い幅の領域を有しており、外部と接続される。図1および図2に示す接続電極73bは裏面の接続電極から水晶振動板7の側面を介して表面に回り込んで形成されている。(図3参照)
【0089】
また接続電極72b、73bは水晶振動板7の1つの短辺7bとは異なる他の短辺の角部に偏在して形成され、かつ両接続電極72b、73bは相互に近接して設けられている。
【0090】
以上の構成により、接続電極72b、73bは水晶振動板7の角部C1に偏在し、厚肉部71および励振電極72,73は角部C2に偏在し、対角方向に離間した配置となっている。前述の励振電極、引出電極、接続電極は例えば各々複数の金属による同一積層構成とされる。例えば水晶振動板の表面にクロム(Cr)を膜状に形成したクロム層、その上面に金(Au)を膜状に形成した金層または銀(Ag)を膜状に形成した銀層を形成した積層構成をあげることができる。
【0091】
なお本実施の形態においては接続電極72b、73bに導電接合材として金属バンプ72c、73c(73cは図示せず)を形成し外部との接続を行っている。当該金属バンプ72c、73cはメッキを用いて厚膜上に形成されており、その平面視形状は円形または多角形であり、接続電極の上面に形成されている。
【0092】
図3に示すように、水晶振動板7はパッケージに気密封入される。パッケージはベース2とリッド3とからなる。ベースは断面で見て凹形の収納部21と収納部の外側に周状に形成された堤部22を有している。収納部の底面には電極パッド20が形成され、当該電極パッドがベース外側(裏面)で、図示しない外部接続端子とつながっている。
【0093】
ベースの電極パッドに水晶振動板をFC接合し、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気でリッドとベースの堤部の上面を接合部で気密的に接合して水晶振動子を得る。
【0094】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
水晶振動子の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0096】
1、4、5,6,7 水晶振動板
11,41,51,61,71 厚肉部
10,40,50,60,70 薄肉部
12,13,42,43,52,53,62,63,72,73 励振電極
12b、13b、42b、43b、52b、53b、62b、63b、72b、73b 接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚肉部と、薄肉部と、外部と導電接合材により接続される接続電極を含む矩形の水晶振動板を有し、
前記厚肉部には前記励振電極が形成され、当該励振電極は前記接続電極に接続されており、
前記励振電極と接続電極は各々水晶振動板の対角方向に偏って離間配置されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
厚肉部と、薄肉部と、外部と導電接合材により接続される接続電極を有する水晶振動板を有し、
前記厚肉部には前記励振電極が形成され、当該励振電極は前記接続電極に接続されており、
前記厚肉部と接続電極は各々水晶振動板の対角方向に偏って離間配置されていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項3】
前記導電接合材は金属バンプからなり、前記接続電極は外部と前記金属バンプにより電気的機械的接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記厚肉部と前記薄肉部の境界はテーパが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項5】
水晶振動板の1辺または相互に隣接する2辺に張り出し部が形成され、前記接続電極が当該張り出し部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項6】
前記接続電極は一対からなる構成であり、また各接続電極は前記導電接合材により外部と接合され、かつ前記励振電極に近い導電接合材の外形サイズが前記励振電極に遠い導電接合材の外形サイズより小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−195711(P2012−195711A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57337(P2011−57337)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】