水晶振動片、および水晶振動子
【課題】低ドライブレベル時に、過電流が発生するのを抑制する。
【解決手段】 水晶振動片3には、一主面5および他主面6それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51は、コンベックス加工されている。また、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。
【解決手段】 水晶振動片3には、一主面5および他主面6それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51は、コンベックス加工されている。また、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動片、および水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動片(例えば、水晶振動片)は、圧電振動片を搭載する圧電振動デバイス(例えば、水晶振動子)の小型化にともない、小型化を図る必要があるが、圧電振動片のサイズを小さくすると、直列共振抵抗値(CI値)が大きくなったり、圧電振動デバイスのベースへの保持の影響を受けてヒステリシスが大きくなるといった問題が生じる。
【0003】
そこで、この問題を解決したものに、片主面にコンベックス加工を施した圧電振動片がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−60481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の圧電振動片(具体的に、水晶振動片)では、片主面にコンベックス加工を施すことで、当該水晶振動片の振動エネルギーを閉じ込めている。
【0005】
ところで、上記したように現在水晶振動片の小型化が図られており、この小型化に対応させるために、特許文献1に記載の水晶振動片についてコンベックス曲率を小さくするなどの手法が用いられている。
【0006】
しかしながら、コンベックス曲率を小さくするに比例して、エネルギートラップが入り易くなる。その結果、ドライブレベルが低いにもかかわらずに過励振が発生し、振動波形が非線形な変動を起こす。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制する水晶振動片、および水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる水晶振動片は、一主面および他主面それぞれに、メサ形状の凸部が形成され、前記一主面に形成された凸部は、コンベックス加工され、前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一主面および他主面(両主面)それぞれにメサ形状の凸部が形成され、前記一主面に形成された凸部はコンベックス加工され、前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さい。すなわち、本発明にかかる水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることが可能となり、エネルギー振動漏れを抑制することが可能となる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することが可能となり、過励振が発生するのを抑制することが可能となる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0010】
具体的に、水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することが可能となり、当該水晶振動片の基板の端部での振動影響を受け難くすることが可能となる。その結果、当該水晶振動片を外部装置(水晶振動子のベースなど)に搭載する際の保持位置を当該水晶振動片の基板の端部と設定することで、保持位置での振動影響はなく、当該水晶振動片の保持安定を図ることが可能となる。
【0011】
また、当該水晶振動片の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収することが可能となり、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことが可能となる。
【0012】
なお、本発明では、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。例えば、両主面それぞれの凸部がプラノコンベックス加工されたバイコンベックスの形態では、偏心が大きくなり振動変位の誤差が大きくなり、更にプラノコンベックス加工によるバイコンベックスの形成も難しい。
【0013】
具体的に、プラノコンベックス加工では、コンベックス加工を施す主面においてコンベックス形状の中心が形成されるが、バイコンベックスの場合、各主面それぞれにおいてコンベックス形状の中心が形成される。そのため、各主面それぞれにおけるコンベックス形状の中心(中心位置)を完全に一致させることは難しく、各主面それぞれに形成されたコンベックス形状の中心間で偏心が生じやすくなる。そして、各主面におけるコンベックス形状の中心が偏心すると、振動変位の双方の誤差が大きくなり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)が生じやすくなる。
【0014】
これに対して、本発明に示すように、前記一主面のみにプラノコンベックス加工が施される場合、コンベックス形状の中心を制御しながらコンベックス加工を施すことが可能であり、コンベックス形状の中心位置を特定することが容易となる。その結果、振動変位の誤差の発生を抑えることが可能となり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を抑制することが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は、多段形成されてもよい。
【0016】
この場合、前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することが可能となり、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0017】
前記構成において、前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であってもよい。
【0018】
この場合、前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であるので、前記一主面に形成されたコンベックス加工された凸部と異なり中心を有しない。そのため、前記両主面に形成された凸部の中心間の偏心が生じることはなく、偏心による振動変位の双方の誤差は生じない。
【0019】
前記構成において、前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されてもよい。
【0020】
この場合、前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されるので、当該水晶振動片の基板である水晶が結晶構造を有しており、フォトリソグラフィ法により前記両主面の凸部を突起形成する場合、結晶方向によってエッチングレート差が生じるので、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる可能性がある。しかしながら、本発明によれば、前記一主面に形成された凸部は、前記他主面に形成された凸部に対して、突起底面の主面上の寸法が小さいので、フォトリソグラフィ法により当該水晶振動片の基板をエッチングして凸部を形成する際、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる場合があっても、このずれによる当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を防ぐことが可能となる。
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる水晶振動子は、上記した本発明にかかる水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されたことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、上記した本発明にかかる水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されるので、上記した本発明にかかる水晶振動片が有する作用効果を有することが可能となり、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる水晶振動片および水晶振動子によれば、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することが可能となる。特に、本発明は、小型の水晶振動片および水晶振動子に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例1にかかる水晶振動子1は、図1に示すように、金属材料からなる金属ベース11と金属材料からなる金属キャップ12とから本体筐体が構成されており、本体筐体の内部空間13に水晶振動片3が気密封止されている。
【0026】
次に、水晶振動子1の各構成について説明する。
【0027】
金属ベース11は、低背の長円柱形状のベース本体111からなり、このベース本体111に金属リード端子14が貫通して植設されている。なお、ベース本体111は、鉄、コバール等からなる。
【0028】
図1に示すベース本体111の下部であってその平面視外周に沿って、ベース本体111から平面視外方に延出したフランジ112が形成されている。このフランジ112の上部には、突起113が形成されている。
【0029】
この金属製のシェルを主とするベース本体111には貫通孔(図示省略)が形成されている。この貫通孔に、水晶振動片3の励振電極71,72(下記参照)を外部電極と接続するための細長い円柱形状の金属リード端子14が貫通して設けられている。具体的に、金属リード端子14が絶縁ガラス(図示省略)を介して貫通孔を貫通してベース本体111に設けられている。なお、絶縁ガラスを貫通孔に充填させて硬化させることで、金属リード端子14が金属ベース11(具体的には貫通孔)に植設される。そして、絶縁ガラスがベース本体111の貫通孔に充填されることにより、金属リード端子14はベース本体111に対して電気的に独立している。
【0030】
また、金属ベース11の少なくともベース本体111の表面には、腐食防止用の金属膜として、ニッケルの金属膜(図示省略)がメッキなどの手法(電解メッキ法と無電解メッキ法)により形成されている。
【0031】
本実施例では、ベース本体111に電解メッキによりニッケルメッキを形成し、その後に金属リード端子14を絶縁ガラスを介して貫通孔に植設し、金属リード端子14を貫通孔に植設した後にニッケルメッキを無電解メッキにより形成して金属膜を形成する。このように本実施例に示すように、電解メッキと無電解メッキとを併用することで、ベース本体111に対して隙間無く金属膜をメッキ形成することができる。なお、金属膜としては、ニッケルメッキに限らず、金メッキ、銅メッキとニッケルメッキの組合せ等により形成してもよく、同様の厚みとすることが好ましい。
【0032】
金属リード端子14のインナーリードに、サポート部15が対向して配置され、スポット溶接法、あるいはレーザー溶接法等により溶接されている。サポート部15には、水晶振動片3が導電樹脂系接着剤やろう材等の導電性接合材(図示省略)を介して搭載保持される。
【0033】
金属キャップ12は、洋白、鉄、コバール等からなり、その下面が開口端121とする中空を有する長円柱の箱状体に成形されている。この開口端121が金属キャップ12に対して折曲されてフランジ122となり、このフランジ122は金属ベース11のフランジ112に対応する。金属キャップ12の表面には腐食防止用の金属膜として、0.5〜4.0μmの厚みでニッケルの金属膜(図示省略)がメッキなどの手法(フラッシュ電解メッキ法、あるいはフラッシュ電解メッキ法と無電解メッキ法)により形成されている。なお、金属膜としては、ニッケルメッキに限らず、金メッキ、銅メッキとニッケルメッキの組合せ等により形成してもよく、金属膜の厚みを同様の0.5〜4.0μmとすることが好ましい。
【0034】
水晶振動片3はATカットからなり、図1〜4に示すように、平面視円形の円盤形状に基板4が加工され、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成されている。なお、このバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視円形に成形されている。
【0035】
基板4の平面視外周端部41(以下、端部とする)に下記する引出電極が引き出し形成され、この端部41においてサポート部15に導電性接合材を介して保持される。すなわち、この端部41が、水晶振動片3の保持位置となる。
【0036】
基板4の両主面5,6のうち、一主面5に形成された凸部51は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形されている。具体的に、この凸部51は、天面52が曲面形成された1つの段部であり、下記する励振電極71は天面52に形成されている。なお、本実施例では、コンベックス加工として、プラノコンベックス加工を用いている。
【0037】
また、他主面6に形成された凸部61は、フォトリソグラフィ法により突起形成された平坦な突起体である。具体的に、この凸部61は、天面62が平坦な1つの段部であり、下記する励振電極72は天面62に形成されている。
【0038】
上記した構成からなる水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法b)より小さい。
【0039】
なお、上記した水晶振動片3の基板4の寸法は、厚さ200〜500μmであり、平面視半径4mmである。また、一主面5に形成された凸部51の寸法は、その最大高さ50〜250μmであり、その突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法a)は、5〜6mmである。また、他主面6に形成された凸部61の寸法は、その高さ3〜50μmであり、その突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法b)は、6〜7mmである。
【0040】
そして、水晶振動片3の両主面5,6には、一対の励振電極71,72が対向して形成され、これら励振電極71,72を外部電極と接続するための引出電極(図示省略)が形成されている。また、励振電極71,72はそれぞれ天面52,62と同様の形状からなり、本実施例では、平面視円形に成形されている。具体的に、これら励振電極71,72と引出電極は、真空蒸着法やスパッタリング等の手段にて形成されている。なお、本実施例では、両主面5,6それぞれに引出電極を形成しているが、電気的接続を確実に行うために水晶振動片3のいずれかの主面(例えば一主面5)に形成された引出電極を、対向する主面(例えば他主面6)に回り込ませてもよい。すなわち、水晶振動片3のいずれかの主面5,6に引出電極を引き出してもよい。
【0041】
上記した構成からなる水晶振動子1では、金属リード端子14に溶接されたサポート部15に水晶振動片3を搭載し、導電性接合材によりサポート部15に水晶振動片3を電気的機械的に接合する。
【0042】
そして、水晶振動片3を搭載した金属ベース11に、水晶振動片3を気密封止するために金属キャップ12で水晶振動片3を覆うように金属キャップ12を配する。
【0043】
金属ベース11に金属キャップ12を配した後、お互いに接合して本体筐体を構成し、その内部空間13に励振電極71,72を形成した水晶振動片3を気密封止して水晶振動子を製造する。なお、本実施例における気密封止の手法として、冷間圧接法、抵抗溶接法、金拡散接合法などがある。
【0044】
本実施例にかかる水晶振動片3によれば、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51はコンベックス加工され、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。すなわち、本実施例にかかる水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることができ、エネルギー振動漏れを抑制することができる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することができ、過励振が発生するのを抑制することができる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0045】
具体的に、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することができ、水晶振動片3の基板4の端部41での振動影響を受け難くすることができる。その結果、水晶振動片3を外部装置(本実施例では金属ベース11)に搭載する際の保持位置を水晶振動片3の基板4の端部41と設定することで、保持位置での振動影響はなく、水晶振動片3の保持安定を図ることができる。
【0046】
また、水晶振動片3の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収することができ、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことができる。
【0047】
なお、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。例えば、両主面それぞれの凸部がプラノコンベックス加工されたバイコンベックスの形態では、偏心が大きくなり振動変位の誤差が大きくなり、更にプラノコンベックス加工によるバイコンベックスの形成も難しい。
【0048】
具体的に、プラノコンベックス加工では、コンベックス加工を施す主面においてコンベックス形状の中心が形成されるが、バイコンベックスの場合、各主面それぞれにおいてコンベックス形状の中心が形成される。そのため、各主面それぞれにおけるコンベックス形状の中心(中心位置)を完全に一致させることは難しく、各主面それぞれに形成されたコンベックス形状の中心間で偏心が生じやすくなる。そして、各主面におけるコンベックス形状の中心が偏心すると、振動変位の双方の誤差が大きくなり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)が生じやすくなる。
【0049】
これに対して、本実施例に示すように、一主面5のみにプラノコンベックス加工が施される場合、コンベックス形状の中心を制御しながらコンベックス加工を施すことができ、コンベックス形状の中心位置を特定することが容易となる。その結果、振動変位の誤差の発生を抑えることができ、水晶振動片3の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を抑制することができる。
【0050】
また、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、他主面6に形成された凸部61は、天面62が平坦な突起体であるので、一主面5に形成されたコンベックス加工された凸部51と異なり中心を有しない。そのため、両主面5,6に形成された凸部51,61の中心間の偏心が生じることはなく、偏心による振動変位の双方の誤差は生じない。
【0051】
また、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、一主面5に形成された凸部51は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、他主面6に形成された凸部61は、フォトリソグラフィ法により突起形成されるので、水晶振動片3の基板4である水晶が結晶構造を有している。そのため、フォトリソグラフィ法により両主面5,6の凸部51,61を突起形成する場合、結晶方向によってエッチングレート差が生じるので、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる可能性がある。しかしながら、本実施例によれば、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さいので、フォトリソグラフィ法により水晶振動片3の基板4をエッチングして凸部51,61を形成する際、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる場合があっても、このずれによる水晶振動片3の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を防ぐことができる。
【0052】
本実施例にかかる水晶振動子1によれば、本実施例の水晶振動片3に形成された励振電極71,72が気密封止されるので、水晶振動片3が有する作用効果を有することができ、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することができる。
【0053】
なお、本実施例では、水晶振動片3は、平面視円形の円盤形状の基板4を用いているが、これに限定されるものではなく、平面視楕円形の円盤形状の基板であってもよく、この場合、バイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視楕円形に成形される。特に、Z’軸方法を長径とする平面視楕円形であることが好ましく、この場合、振動変位を積極的に有効に利用することができる。
【0054】
また、本実施例では、両主面5,6それぞれ一段からなる凸部51,61を形成しているが、その形状はこれに限定されるものではなく、図5〜10に示すように両主面5,6それぞれが多段形成されてもよい。また、図5〜10では示していないが、例えば、一主面5に形成された凸部51は多段で、他主面6に形成された凸部61は1つの段部であってもよく、またその逆の構成であってもよい。
【0055】
具体的に、図5〜7に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は側面視台形に形成され、上層部55である天面は曲面形成されている。また、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0056】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は側面視台形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0057】
なお、図5〜7に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0058】
また、図8〜10に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は下層部53より小さい寸法の側面視長方形に形成されている。また、上層部55である天面は曲面形成され、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0059】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は下層部63より小さい寸法の側面視長方形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0060】
なお、図8〜10に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0061】
また、本実施例にかかる水晶振動片3では、平面視円形の円盤形状の基板4を用いているが、これに限定されるものではなく、図11〜19に示すように、平面視矩形状の基板4を用いてもよい。なお、図11〜19に示すように、この平面視矩形状の基板4に形成するバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視矩形状に成形されている。また、励振電極71,72はそれぞれ天面と同様の形状からなり、本実施例では、平面視矩形状に成形されている。
【0062】
具体的に、図11〜13に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、天面52が曲面形成された1つの段部である。
【0063】
他主面6に形成された凸部61は、天面62が平坦な1つの段部である。
【0064】
なお、図11〜13に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0065】
また、図14〜16に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は側面視台形に形成され、上層部55である天面は曲面形成されている。また、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0066】
また、他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は側面視台形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0067】
なお、図14〜16に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0068】
また、図17〜19に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は下層部53より小さい寸法の側面視長方形に形成されている。また、上層部55である天面は曲面形成され、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0069】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は下層部63より小さい寸法の側面視長方形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0070】
なお、図17〜19に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0071】
上記した図5〜10、14〜19に示す本実施例の他の例にかかる水晶振動片3によれば、一主面5に形成された凸部51は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することができ、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0072】
また、他主面6に形成された凸部61は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することができ、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0073】
なお、上記した本実施例の他の例にかかる水晶振動片3の形態は、上記した図5〜19に限定されるものではなく、例えば、図11〜19に示す平面視矩形状の基板4に対して図5〜10に示すような円盤形状のバイメサ形状の凸部51,61を用いてもよい。
【0074】
また、本発明の実施例では、リード型の水晶振動子を例にして説明したが、これに限られるものではなく、例えば、表面実装型の水晶振動子や発振器などにも適用できる。
【0075】
そこで、具体的に、次に、本発明にかかる水晶振動片を、表面実装型の水晶振動子に適用した場合の実施例を示す。
【実施例2】
【0076】
次に、本実施例2にかかる表面実装型の水晶振動子を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる水晶振動子では、上記した実施例1と同じ構成を有する水晶振動片3を用いる。具体的に、実施例2では、図11〜13に示す実施例1の他の例にかかる水晶振動片3を用いる。そのため、実施例1と同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。なお、上記実施例1と同様の構成については同番号を付すとともに、その説明の一部を割愛する。
【0077】
本実施例2にかかる水晶振動子2では、図11〜13,20に示すように、ATカット水晶振動片3(本発明でいう水晶振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片3を保持するパッケージとしてのベース21と、ベース21に保持した水晶振動片3を気密封止するための金属蓋22(以下、蓋という)と、が設けられている。
【0078】
この水晶振動子2では、ベース21と蓋22とが接合されて本体筐体が構成されている。これらベース21と蓋22とが封止材(下記するベース21に形成されたメタライズ層213と、蓋22に形成されたメッキ層222参照)により接合され、この接合により本体筐体の内部空間23が形成されている。
【0079】
この本体筐体の内部空間23のベース21上に導電性バンプ24を介して水晶振動片3が保持接合されているとともに、この水晶振動片3が搭載された本体筐体の内部空間23が気密封止されている。この際、図20に示すように、ベース21と水晶振動片3とは導電性バンプ24を用いてFCB法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。
【0080】
次に、この水晶振動子2の各構成について説明する。
【0081】
ベース21は、セラミック材料からなり、図20に示すように、底部211とこの底部211から上方に延出した堤部212とから構成される箱状体に形成されている。
【0082】
堤部212は、底部211の平面視外周縁に沿って形成されている。このベース21の堤部212の端面には、蓋22との接合領域となるメタライズ層213が設けられている。具体的に、本実施例にかかるメタライズ層213は、タングステン層上にニッケル層,金層の順で積層されて構成される。なお、タングステン層のかわりにモリブデン層を用いてもよい。
【0083】
また、ベース21の内部空間23の底面には、図20に示すように、複数の電極パッド(図示省略)が形成され、これら電極パッド上に水晶振動片3が両保持して設けられる。これら電極パッドは、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース21の裏面などの外周面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド、引回電極、端子電極は、タングステンやモリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース21と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0084】
蓋22は、コバールからなり、図20に示すように、平面視矩形状の一枚板からなる。この蓋22の一主面221(図20では下面)の外周縁に沿って、ベース21との接合領域となるメッキ層222が形成されている。具体的に、本実施例にかかるメッキ層222は、ニッケル層上に,金層が積層されてなる。
【0085】
水晶振動片3はATカットからなり、図11〜13,20に示すように、平面視正方形の矩形状体に基板4が加工され、両主面5,6それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成されている。なお、このバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視正方形に成形されている。
【0086】
本実施例にかかる水晶振動子2によれば、上記した実施例1と同様の構成からなる水晶振動片3が搭載されているので、上記した実施例1と同様の作用効果を有する。
【0087】
具体的に、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51はコンベックス加工され、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。すなわち、本実施例にかかる水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることができ、エネルギー振動漏れを抑制することができる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することができ、過励振が発生するのを抑制することができる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0088】
また、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することができ、水晶振動片3の基板4の端部41での振動影響を受け難くすることができる。その結果、水晶振動片3を外部装置(本実施例ではベース21)に搭載する際の保持位置を水晶振動片3の基板4の端部41と設定することで、保持位置での振動影響はなく、水晶振動片3の保持安定を図ることができる。
【0089】
また、水晶振動片3の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収して、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことができる。なお、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。
【0090】
なお、本実施例では、電子部品としてATカット水晶振動子2を適用した場合を示すが、これに限定されるものではなく、例えば、本実施例とは異なるSCカット水晶振動片を搭載した水晶振動子や、水晶振動片およびICチップを搭載した発振器などであってもよい。
【0091】
また、本実施例では、導電性バンプ24を2つとしているが、これに限定されるものではなく、単数でも他の複数個であってもよい。さらに導電性バンプ24としてメッキ状のものを用いてもよい。
【0092】
また、本実施例では、蓋22に金属材料のコバールを用い、ベース21にセラミックを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶やシリコンを用いてもよい。なお、この場合、金属材料と封止材との接着を良好にするためにその間にニッケルなどを介在させたり、水晶と金との接合を良好にするためにクロムを間に介在させるなど、当業者が想到し得る設計的変更を行う必要があることは言うまでもない。
【0093】
また、本実施例では、ベース21が箱状体に形成され、蓋22が平面視矩形状の一枚板からなるが、これに限定されるものではなく、内部空間23が形成され、この内部空間23に水晶振動子2が設けられていればよい。例えば、ベース21が平面視矩形状の一枚板からなり、蓋22が箱状体に形成されてもよい。
【0094】
また、上記した本実施例2によれば、水晶振動片3自体が内部空間23に設けられている(配されている)が、これに限定されるものではなく、例えば、図21に示すように、水晶振動片3の両主面5,6に形成された励振電極71,72が内部空間23内に配され、2つの本体筐体部材25,26の間に水晶振動片3が介在されたサンドイッチ構造であってもよい。なお、2つの本体筐体部材25,26は、ともに水晶からなる。
【0095】
図21に示すように、上記した実施例2にかかる水晶振動片3との差異は、水晶振動片3の平面視外周に沿って堤部8が形成されたことであり、他の構成やその作用効果は上記した実施例2と同じである。
【0096】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、水晶振動片、および水晶振動子に適用できる。特に、本発明は、小型の水晶振動片および水晶振動子に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本実施例1にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図3】図3は、本実施例1にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図4】図4は、本実施例1にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図5】図5は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図6】図6は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図7】図7は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図8】図8は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図9】図9は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図10】図10は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図11】図11は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図12】図12は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図13】図13は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図14】図14は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図15】図15は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図16】図16は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図17】図17は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図18】図18は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図19】図19は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図20】図20は、本実施例2にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図21】図21は、本実施例2の他の例にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
1,2 水晶振動子
3 水晶振動片
4 基板
41 平面視外周端部
5 一主面
51 凸部
52 天面
53 下層部
54 中間層部
55 上層部
6 他主面
61 凸部
62 天面
63 下層部
64 上層部
71,72 励振電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動片、および水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動片(例えば、水晶振動片)は、圧電振動片を搭載する圧電振動デバイス(例えば、水晶振動子)の小型化にともない、小型化を図る必要があるが、圧電振動片のサイズを小さくすると、直列共振抵抗値(CI値)が大きくなったり、圧電振動デバイスのベースへの保持の影響を受けてヒステリシスが大きくなるといった問題が生じる。
【0003】
そこで、この問題を解決したものに、片主面にコンベックス加工を施した圧電振動片がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−60481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の圧電振動片(具体的に、水晶振動片)では、片主面にコンベックス加工を施すことで、当該水晶振動片の振動エネルギーを閉じ込めている。
【0005】
ところで、上記したように現在水晶振動片の小型化が図られており、この小型化に対応させるために、特許文献1に記載の水晶振動片についてコンベックス曲率を小さくするなどの手法が用いられている。
【0006】
しかしながら、コンベックス曲率を小さくするに比例して、エネルギートラップが入り易くなる。その結果、ドライブレベルが低いにもかかわらずに過励振が発生し、振動波形が非線形な変動を起こす。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制する水晶振動片、および水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる水晶振動片は、一主面および他主面それぞれに、メサ形状の凸部が形成され、前記一主面に形成された凸部は、コンベックス加工され、前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一主面および他主面(両主面)それぞれにメサ形状の凸部が形成され、前記一主面に形成された凸部はコンベックス加工され、前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さい。すなわち、本発明にかかる水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることが可能となり、エネルギー振動漏れを抑制することが可能となる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することが可能となり、過励振が発生するのを抑制することが可能となる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0010】
具体的に、水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することが可能となり、当該水晶振動片の基板の端部での振動影響を受け難くすることが可能となる。その結果、当該水晶振動片を外部装置(水晶振動子のベースなど)に搭載する際の保持位置を当該水晶振動片の基板の端部と設定することで、保持位置での振動影響はなく、当該水晶振動片の保持安定を図ることが可能となる。
【0011】
また、当該水晶振動片の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片の両主面には非対称のバイメサ形状の凸部が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収することが可能となり、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことが可能となる。
【0012】
なお、本発明では、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。例えば、両主面それぞれの凸部がプラノコンベックス加工されたバイコンベックスの形態では、偏心が大きくなり振動変位の誤差が大きくなり、更にプラノコンベックス加工によるバイコンベックスの形成も難しい。
【0013】
具体的に、プラノコンベックス加工では、コンベックス加工を施す主面においてコンベックス形状の中心が形成されるが、バイコンベックスの場合、各主面それぞれにおいてコンベックス形状の中心が形成される。そのため、各主面それぞれにおけるコンベックス形状の中心(中心位置)を完全に一致させることは難しく、各主面それぞれに形成されたコンベックス形状の中心間で偏心が生じやすくなる。そして、各主面におけるコンベックス形状の中心が偏心すると、振動変位の双方の誤差が大きくなり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)が生じやすくなる。
【0014】
これに対して、本発明に示すように、前記一主面のみにプラノコンベックス加工が施される場合、コンベックス形状の中心を制御しながらコンベックス加工を施すことが可能であり、コンベックス形状の中心位置を特定することが容易となる。その結果、振動変位の誤差の発生を抑えることが可能となり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を抑制することが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は、多段形成されてもよい。
【0016】
この場合、前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することが可能となり、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0017】
前記構成において、前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であってもよい。
【0018】
この場合、前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であるので、前記一主面に形成されたコンベックス加工された凸部と異なり中心を有しない。そのため、前記両主面に形成された凸部の中心間の偏心が生じることはなく、偏心による振動変位の双方の誤差は生じない。
【0019】
前記構成において、前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されてもよい。
【0020】
この場合、前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されるので、当該水晶振動片の基板である水晶が結晶構造を有しており、フォトリソグラフィ法により前記両主面の凸部を突起形成する場合、結晶方向によってエッチングレート差が生じるので、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる可能性がある。しかしながら、本発明によれば、前記一主面に形成された凸部は、前記他主面に形成された凸部に対して、突起底面の主面上の寸法が小さいので、フォトリソグラフィ法により当該水晶振動片の基板をエッチングして凸部を形成する際、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる場合があっても、このずれによる当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を防ぐことが可能となる。
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる水晶振動子は、上記した本発明にかかる水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されたことを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、上記した本発明にかかる水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されるので、上記した本発明にかかる水晶振動片が有する作用効果を有することが可能となり、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる水晶振動片および水晶振動子によれば、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することが可能となる。特に、本発明は、小型の水晶振動片および水晶振動子に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例1にかかる水晶振動子1は、図1に示すように、金属材料からなる金属ベース11と金属材料からなる金属キャップ12とから本体筐体が構成されており、本体筐体の内部空間13に水晶振動片3が気密封止されている。
【0026】
次に、水晶振動子1の各構成について説明する。
【0027】
金属ベース11は、低背の長円柱形状のベース本体111からなり、このベース本体111に金属リード端子14が貫通して植設されている。なお、ベース本体111は、鉄、コバール等からなる。
【0028】
図1に示すベース本体111の下部であってその平面視外周に沿って、ベース本体111から平面視外方に延出したフランジ112が形成されている。このフランジ112の上部には、突起113が形成されている。
【0029】
この金属製のシェルを主とするベース本体111には貫通孔(図示省略)が形成されている。この貫通孔に、水晶振動片3の励振電極71,72(下記参照)を外部電極と接続するための細長い円柱形状の金属リード端子14が貫通して設けられている。具体的に、金属リード端子14が絶縁ガラス(図示省略)を介して貫通孔を貫通してベース本体111に設けられている。なお、絶縁ガラスを貫通孔に充填させて硬化させることで、金属リード端子14が金属ベース11(具体的には貫通孔)に植設される。そして、絶縁ガラスがベース本体111の貫通孔に充填されることにより、金属リード端子14はベース本体111に対して電気的に独立している。
【0030】
また、金属ベース11の少なくともベース本体111の表面には、腐食防止用の金属膜として、ニッケルの金属膜(図示省略)がメッキなどの手法(電解メッキ法と無電解メッキ法)により形成されている。
【0031】
本実施例では、ベース本体111に電解メッキによりニッケルメッキを形成し、その後に金属リード端子14を絶縁ガラスを介して貫通孔に植設し、金属リード端子14を貫通孔に植設した後にニッケルメッキを無電解メッキにより形成して金属膜を形成する。このように本実施例に示すように、電解メッキと無電解メッキとを併用することで、ベース本体111に対して隙間無く金属膜をメッキ形成することができる。なお、金属膜としては、ニッケルメッキに限らず、金メッキ、銅メッキとニッケルメッキの組合せ等により形成してもよく、同様の厚みとすることが好ましい。
【0032】
金属リード端子14のインナーリードに、サポート部15が対向して配置され、スポット溶接法、あるいはレーザー溶接法等により溶接されている。サポート部15には、水晶振動片3が導電樹脂系接着剤やろう材等の導電性接合材(図示省略)を介して搭載保持される。
【0033】
金属キャップ12は、洋白、鉄、コバール等からなり、その下面が開口端121とする中空を有する長円柱の箱状体に成形されている。この開口端121が金属キャップ12に対して折曲されてフランジ122となり、このフランジ122は金属ベース11のフランジ112に対応する。金属キャップ12の表面には腐食防止用の金属膜として、0.5〜4.0μmの厚みでニッケルの金属膜(図示省略)がメッキなどの手法(フラッシュ電解メッキ法、あるいはフラッシュ電解メッキ法と無電解メッキ法)により形成されている。なお、金属膜としては、ニッケルメッキに限らず、金メッキ、銅メッキとニッケルメッキの組合せ等により形成してもよく、金属膜の厚みを同様の0.5〜4.0μmとすることが好ましい。
【0034】
水晶振動片3はATカットからなり、図1〜4に示すように、平面視円形の円盤形状に基板4が加工され、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成されている。なお、このバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視円形に成形されている。
【0035】
基板4の平面視外周端部41(以下、端部とする)に下記する引出電極が引き出し形成され、この端部41においてサポート部15に導電性接合材を介して保持される。すなわち、この端部41が、水晶振動片3の保持位置となる。
【0036】
基板4の両主面5,6のうち、一主面5に形成された凸部51は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形されている。具体的に、この凸部51は、天面52が曲面形成された1つの段部であり、下記する励振電極71は天面52に形成されている。なお、本実施例では、コンベックス加工として、プラノコンベックス加工を用いている。
【0037】
また、他主面6に形成された凸部61は、フォトリソグラフィ法により突起形成された平坦な突起体である。具体的に、この凸部61は、天面62が平坦な1つの段部であり、下記する励振電極72は天面62に形成されている。
【0038】
上記した構成からなる水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法b)より小さい。
【0039】
なお、上記した水晶振動片3の基板4の寸法は、厚さ200〜500μmであり、平面視半径4mmである。また、一主面5に形成された凸部51の寸法は、その最大高さ50〜250μmであり、その突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法a)は、5〜6mmである。また、他主面6に形成された凸部61の寸法は、その高さ3〜50μmであり、その突起底面の主面上の寸法(図3に示す寸法b)は、6〜7mmである。
【0040】
そして、水晶振動片3の両主面5,6には、一対の励振電極71,72が対向して形成され、これら励振電極71,72を外部電極と接続するための引出電極(図示省略)が形成されている。また、励振電極71,72はそれぞれ天面52,62と同様の形状からなり、本実施例では、平面視円形に成形されている。具体的に、これら励振電極71,72と引出電極は、真空蒸着法やスパッタリング等の手段にて形成されている。なお、本実施例では、両主面5,6それぞれに引出電極を形成しているが、電気的接続を確実に行うために水晶振動片3のいずれかの主面(例えば一主面5)に形成された引出電極を、対向する主面(例えば他主面6)に回り込ませてもよい。すなわち、水晶振動片3のいずれかの主面5,6に引出電極を引き出してもよい。
【0041】
上記した構成からなる水晶振動子1では、金属リード端子14に溶接されたサポート部15に水晶振動片3を搭載し、導電性接合材によりサポート部15に水晶振動片3を電気的機械的に接合する。
【0042】
そして、水晶振動片3を搭載した金属ベース11に、水晶振動片3を気密封止するために金属キャップ12で水晶振動片3を覆うように金属キャップ12を配する。
【0043】
金属ベース11に金属キャップ12を配した後、お互いに接合して本体筐体を構成し、その内部空間13に励振電極71,72を形成した水晶振動片3を気密封止して水晶振動子を製造する。なお、本実施例における気密封止の手法として、冷間圧接法、抵抗溶接法、金拡散接合法などがある。
【0044】
本実施例にかかる水晶振動片3によれば、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51はコンベックス加工され、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。すなわち、本実施例にかかる水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることができ、エネルギー振動漏れを抑制することができる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することができ、過励振が発生するのを抑制することができる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0045】
具体的に、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することができ、水晶振動片3の基板4の端部41での振動影響を受け難くすることができる。その結果、水晶振動片3を外部装置(本実施例では金属ベース11)に搭載する際の保持位置を水晶振動片3の基板4の端部41と設定することで、保持位置での振動影響はなく、水晶振動片3の保持安定を図ることができる。
【0046】
また、水晶振動片3の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収することができ、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことができる。
【0047】
なお、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。例えば、両主面それぞれの凸部がプラノコンベックス加工されたバイコンベックスの形態では、偏心が大きくなり振動変位の誤差が大きくなり、更にプラノコンベックス加工によるバイコンベックスの形成も難しい。
【0048】
具体的に、プラノコンベックス加工では、コンベックス加工を施す主面においてコンベックス形状の中心が形成されるが、バイコンベックスの場合、各主面それぞれにおいてコンベックス形状の中心が形成される。そのため、各主面それぞれにおけるコンベックス形状の中心(中心位置)を完全に一致させることは難しく、各主面それぞれに形成されたコンベックス形状の中心間で偏心が生じやすくなる。そして、各主面におけるコンベックス形状の中心が偏心すると、振動変位の双方の誤差が大きくなり、当該水晶振動片の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)が生じやすくなる。
【0049】
これに対して、本実施例に示すように、一主面5のみにプラノコンベックス加工が施される場合、コンベックス形状の中心を制御しながらコンベックス加工を施すことができ、コンベックス形状の中心位置を特定することが容易となる。その結果、振動変位の誤差の発生を抑えることができ、水晶振動片3の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を抑制することができる。
【0050】
また、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、他主面6に形成された凸部61は、天面62が平坦な突起体であるので、一主面5に形成されたコンベックス加工された凸部51と異なり中心を有しない。そのため、両主面5,6に形成された凸部51,61の中心間の偏心が生じることはなく、偏心による振動変位の双方の誤差は生じない。
【0051】
また、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、一主面5に形成された凸部51は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、他主面6に形成された凸部61は、フォトリソグラフィ法により突起形成されるので、水晶振動片3の基板4である水晶が結晶構造を有している。そのため、フォトリソグラフィ法により両主面5,6の凸部51,61を突起形成する場合、結晶方向によってエッチングレート差が生じるので、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる可能性がある。しかしながら、本実施例によれば、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さいので、フォトリソグラフィ法により水晶振動片3の基板4をエッチングして凸部51,61を形成する際、所望の凸部形成の位置に対してわずかに凸部形成の位置がずれる場合があっても、このずれによる水晶振動片3の特性の劣化(CI値やDLD特性やスプリアスとのカップリング等)を防ぐことができる。
【0052】
本実施例にかかる水晶振動子1によれば、本実施例の水晶振動片3に形成された励振電極71,72が気密封止されるので、水晶振動片3が有する作用効果を有することができ、低ドライブレベル時に過励振が発生するのを抑制することができる。
【0053】
なお、本実施例では、水晶振動片3は、平面視円形の円盤形状の基板4を用いているが、これに限定されるものではなく、平面視楕円形の円盤形状の基板であってもよく、この場合、バイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視楕円形に成形される。特に、Z’軸方法を長径とする平面視楕円形であることが好ましく、この場合、振動変位を積極的に有効に利用することができる。
【0054】
また、本実施例では、両主面5,6それぞれ一段からなる凸部51,61を形成しているが、その形状はこれに限定されるものではなく、図5〜10に示すように両主面5,6それぞれが多段形成されてもよい。また、図5〜10では示していないが、例えば、一主面5に形成された凸部51は多段で、他主面6に形成された凸部61は1つの段部であってもよく、またその逆の構成であってもよい。
【0055】
具体的に、図5〜7に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は側面視台形に形成され、上層部55である天面は曲面形成されている。また、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0056】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は側面視台形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0057】
なお、図5〜7に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0058】
また、図8〜10に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は下層部53より小さい寸法の側面視長方形に形成されている。また、上層部55である天面は曲面形成され、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0059】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は下層部63より小さい寸法の側面視長方形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0060】
なお、図8〜10に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0061】
また、本実施例にかかる水晶振動片3では、平面視円形の円盤形状の基板4を用いているが、これに限定されるものではなく、図11〜19に示すように、平面視矩形状の基板4を用いてもよい。なお、図11〜19に示すように、この平面視矩形状の基板4に形成するバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視矩形状に成形されている。また、励振電極71,72はそれぞれ天面と同様の形状からなり、本実施例では、平面視矩形状に成形されている。
【0062】
具体的に、図11〜13に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、天面52が曲面形成された1つの段部である。
【0063】
他主面6に形成された凸部61は、天面62が平坦な1つの段部である。
【0064】
なお、図11〜13に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0065】
また、図14〜16に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は側面視台形に形成され、上層部55である天面は曲面形成されている。また、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0066】
また、他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は側面視台形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0067】
なお、図14〜16に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0068】
また、図17〜19に示す水晶振動片3では、一主面5に形成された凸部51は、下層部53と中間層部54と上層部55との3段からなり、その下層部53は側面視長方形に形成され、中間層部54は下層部53より小さい寸法の側面視長方形に形成されている。また、上層部55である天面は曲面形成され、上層部55の最長径は下層部53の最長径より小さい寸法となっている。
【0069】
他主面6に形成された凸部61は、下層部63と上層部64との2段からなり、その下層部63は側面視長方形に形成され、上層部64は下層部63より小さい寸法の側面視長方形に形成され、その天面は平坦面に形成されている。
【0070】
なお、図17〜19に示す水晶振動片3の基板4の寸法は、上記した図2〜4に示す水晶振動片3の基板4の寸法と同様の寸法からなる。
【0071】
上記した図5〜10、14〜19に示す本実施例の他の例にかかる水晶振動片3によれば、一主面5に形成された凸部51は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することができ、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0072】
また、他主面6に形成された凸部61は多段形成されるので、急激なエネルギートラップが生じるのを抑制することができ、振動変位を段階的に減衰するのに好適である。
【0073】
なお、上記した本実施例の他の例にかかる水晶振動片3の形態は、上記した図5〜19に限定されるものではなく、例えば、図11〜19に示す平面視矩形状の基板4に対して図5〜10に示すような円盤形状のバイメサ形状の凸部51,61を用いてもよい。
【0074】
また、本発明の実施例では、リード型の水晶振動子を例にして説明したが、これに限られるものではなく、例えば、表面実装型の水晶振動子や発振器などにも適用できる。
【0075】
そこで、具体的に、次に、本発明にかかる水晶振動片を、表面実装型の水晶振動子に適用した場合の実施例を示す。
【実施例2】
【0076】
次に、本実施例2にかかる表面実装型の水晶振動子を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる水晶振動子では、上記した実施例1と同じ構成を有する水晶振動片3を用いる。具体的に、実施例2では、図11〜13に示す実施例1の他の例にかかる水晶振動片3を用いる。そのため、実施例1と同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。なお、上記実施例1と同様の構成については同番号を付すとともに、その説明の一部を割愛する。
【0077】
本実施例2にかかる水晶振動子2では、図11〜13,20に示すように、ATカット水晶振動片3(本発明でいう水晶振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片3を保持するパッケージとしてのベース21と、ベース21に保持した水晶振動片3を気密封止するための金属蓋22(以下、蓋という)と、が設けられている。
【0078】
この水晶振動子2では、ベース21と蓋22とが接合されて本体筐体が構成されている。これらベース21と蓋22とが封止材(下記するベース21に形成されたメタライズ層213と、蓋22に形成されたメッキ層222参照)により接合され、この接合により本体筐体の内部空間23が形成されている。
【0079】
この本体筐体の内部空間23のベース21上に導電性バンプ24を介して水晶振動片3が保持接合されているとともに、この水晶振動片3が搭載された本体筐体の内部空間23が気密封止されている。この際、図20に示すように、ベース21と水晶振動片3とは導電性バンプ24を用いてFCB法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。
【0080】
次に、この水晶振動子2の各構成について説明する。
【0081】
ベース21は、セラミック材料からなり、図20に示すように、底部211とこの底部211から上方に延出した堤部212とから構成される箱状体に形成されている。
【0082】
堤部212は、底部211の平面視外周縁に沿って形成されている。このベース21の堤部212の端面には、蓋22との接合領域となるメタライズ層213が設けられている。具体的に、本実施例にかかるメタライズ層213は、タングステン層上にニッケル層,金層の順で積層されて構成される。なお、タングステン層のかわりにモリブデン層を用いてもよい。
【0083】
また、ベース21の内部空間23の底面には、図20に示すように、複数の電極パッド(図示省略)が形成され、これら電極パッド上に水晶振動片3が両保持して設けられる。これら電極パッドは、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース21の裏面などの外周面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド、引回電極、端子電極は、タングステンやモリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース21と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0084】
蓋22は、コバールからなり、図20に示すように、平面視矩形状の一枚板からなる。この蓋22の一主面221(図20では下面)の外周縁に沿って、ベース21との接合領域となるメッキ層222が形成されている。具体的に、本実施例にかかるメッキ層222は、ニッケル層上に,金層が積層されてなる。
【0085】
水晶振動片3はATカットからなり、図11〜13,20に示すように、平面視正方形の矩形状体に基板4が加工され、両主面5,6それぞれにバイメサ形状の凸部51,61が形成されている。なお、このバイメサ形状の凸部51,61も基板4と同様に平面視正方形に成形されている。
【0086】
本実施例にかかる水晶振動子2によれば、上記した実施例1と同様の構成からなる水晶振動片3が搭載されているので、上記した実施例1と同様の作用効果を有する。
【0087】
具体的に、本実施例にかかる水晶振動片3によれば、両主面(一主面5および他主面6)それぞれにメサ形状の凸部51,61が形成され、一主面5に形成された凸部51はコンベックス加工され、一主面5に形成された凸部51の突起底面の主面上の寸法(寸法a)は、他主面6に形成された凸部61の突起底面の主面上の寸法(寸法b)より小さい。すなわち、本実施例にかかる水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、従来技術のようにコンベックス曲率を小さくすることなく、エネルギートラップを入り難くすることができ、エネルギー振動漏れを抑制することができる。その結果、振動波形が非線形な変動を起こすのを抑制することができ、過励振が発生するのを抑制することができる。特に、ドライブレベルが低い時に過励振となるのを防止するのに好適である。
【0088】
また、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、振動変位を段階的に減衰することができ、水晶振動片3の基板4の端部41での振動影響を受け難くすることができる。その結果、水晶振動片3を外部装置(本実施例ではベース21)に搭載する際の保持位置を水晶振動片3の基板4の端部41と設定することで、保持位置での振動影響はなく、水晶振動片3の保持安定を図ることができる。
【0089】
また、水晶振動片3の寸法誤差が生じた場合であっても、水晶振動片3の両主面5,6には非対称のバイメサ形状の凸部51,61が形成されているので、寸法誤差によって中心が変位することで生じる偏心(中心ずれ)の中心を吸収して、さらに効率的なエネルギー閉じ込めを行うことができる。なお、特に、コンベックス加工としてプラノコンベックス加工を用いることが好ましい。
【0090】
なお、本実施例では、電子部品としてATカット水晶振動子2を適用した場合を示すが、これに限定されるものではなく、例えば、本実施例とは異なるSCカット水晶振動片を搭載した水晶振動子や、水晶振動片およびICチップを搭載した発振器などであってもよい。
【0091】
また、本実施例では、導電性バンプ24を2つとしているが、これに限定されるものではなく、単数でも他の複数個であってもよい。さらに導電性バンプ24としてメッキ状のものを用いてもよい。
【0092】
また、本実施例では、蓋22に金属材料のコバールを用い、ベース21にセラミックを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶やシリコンを用いてもよい。なお、この場合、金属材料と封止材との接着を良好にするためにその間にニッケルなどを介在させたり、水晶と金との接合を良好にするためにクロムを間に介在させるなど、当業者が想到し得る設計的変更を行う必要があることは言うまでもない。
【0093】
また、本実施例では、ベース21が箱状体に形成され、蓋22が平面視矩形状の一枚板からなるが、これに限定されるものではなく、内部空間23が形成され、この内部空間23に水晶振動子2が設けられていればよい。例えば、ベース21が平面視矩形状の一枚板からなり、蓋22が箱状体に形成されてもよい。
【0094】
また、上記した本実施例2によれば、水晶振動片3自体が内部空間23に設けられている(配されている)が、これに限定されるものではなく、例えば、図21に示すように、水晶振動片3の両主面5,6に形成された励振電極71,72が内部空間23内に配され、2つの本体筐体部材25,26の間に水晶振動片3が介在されたサンドイッチ構造であってもよい。なお、2つの本体筐体部材25,26は、ともに水晶からなる。
【0095】
図21に示すように、上記した実施例2にかかる水晶振動片3との差異は、水晶振動片3の平面視外周に沿って堤部8が形成されたことであり、他の構成やその作用効果は上記した実施例2と同じである。
【0096】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、水晶振動片、および水晶振動子に適用できる。特に、本発明は、小型の水晶振動片および水晶振動子に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本実施例1にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図3】図3は、本実施例1にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図4】図4は、本実施例1にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図5】図5は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図6】図6は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図7】図7は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図8】図8は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図9】図9は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図10】図10は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図11】図11は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図12】図12は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図13】図13は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図14】図14は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図15】図15は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図16】図16は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図17】図17は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の一主面を示す概略平面図である。
【図18】図18は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の側面を示す概略側面図である。
【図19】図19は、本実施例1の他の例にかかる水晶振動片の他主面を示す概略裏面図である。
【図20】図20は、本実施例2にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図21】図21は、本実施例2の他の例にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【符号の説明】
【0099】
1,2 水晶振動子
3 水晶振動片
4 基板
41 平面視外周端部
5 一主面
51 凸部
52 天面
53 下層部
54 中間層部
55 上層部
6 他主面
61 凸部
62 天面
63 下層部
64 上層部
71,72 励振電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動片において、
一主面および他主面それぞれに、メサ形状の凸部が形成され、
前記一主面に形成された凸部は、コンベックス加工され、
前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さいことを特徴とする水晶振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶振動片において、
前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は、多段形成されたことを特徴とする水晶振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶振動片において、
前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であることを特徴とする水晶振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の水晶振動片において、
前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、
前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されたことを特徴とする水晶振動片。
【請求項5】
水晶振動子において、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項1】
水晶振動片において、
一主面および他主面それぞれに、メサ形状の凸部が形成され、
前記一主面に形成された凸部は、コンベックス加工され、
前記一主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法は、前記他主面に形成された凸部の突起底面の主面上の寸法より小さいことを特徴とする水晶振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶振動片において、
前記一主面と前記他主面との少なくとも一方に形成された凸部は、多段形成されたことを特徴とする水晶振動片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶振動片において、
前記他主面に形成された凸部は、天面が平坦な突起体であることを特徴とする水晶振動片。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の水晶振動片において、
前記一主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成され、かつ、コンベック加工されて成形され、
前記他主面に形成された凸部は、フォトリソグラフィ法により突起形成されたことを特徴とする水晶振動片。
【請求項5】
水晶振動子において、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の水晶振動片に形成された励振電極が気密封止されたことを特徴とする水晶振動子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−246645(P2009−246645A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90119(P2008−90119)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】
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