説明

水晶発振器及びその製造方法

【課題】
本発明の目的は、低背化が可能で、かつ、生産性にも優れた小型の水晶発振器を提供することにある。
【解決手段】
絶縁性基体6の表主面に凹形状の第1の空間部15が設けられ、第1の空間部15内の絶縁性基体6の表主面上には発振回路が組み込まれた集積回路素子7、及び電子部品素子が搭載され、絶縁性基体6の第1の空間部15上面には集積回路素子7、及び電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子5が収容される凹形状の第2の空間部16が設けられ、第2の空間部16の開口上縁部に蓋体4を載置して気密封止して成る水晶発振器において、集積回路素子7、及び電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点と、第2の空間部16の取り付けに用いられる第2接合部材の融点が異なることで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用通信機器等の電子機器に用いられる水晶発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に水晶発振器が用いられている。
【0003】
かかる従来の水晶発振器としては、例えば図4に示す如く、内部に図中には示されていないが、水晶振動素子が収容されている第1の容器体23を、キャビティ部25内に前記の水晶振動素子の振動に基づいて発振出力を制御する集積回路素子26やコンデンサ等の電子部品素子が収容されている第2の容器体21上に取着させた構造のものが知られており、かかる水晶発振器をマザーボード等の外部配線基板上に載置させた上、第2の容器体21の下面に設けられている外部端子を外部配線基板の配線に半田接合することにより外部配線基板上に実装される。
【0004】
なお、第1の容器体23や第2の容器体21は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。
【0005】
また、前記集積回路素子26の内部には、水晶振動子の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて水晶発振器の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており、水晶発振器を組み立てた後、上述の温度補償データを集積回路素子26のメモリ内に格納すべく、第2の容器体21の下面や外側面等には温度補償データ書込用の書込制御端子27が設けられていた。この書込制御端子27に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てて集積回路素子26内のメモリに温度補償データを入力することにより、温度補償データが集積回路素子26のメモリ内に書込まれる。
【特許文献1】特開2004−222206号公報
【0006】
なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の水晶発振器の集積回路素子26が第2の容器体21のキャビティ部25に搭載させてある場合、集積回路素子26が最も背の高い部品となり、第2の容器体21の低背化が困難となり、その結果、第2の容器体21の上に水晶振動素子が収容されている第1の容器体23を搭載する水晶発振器の構造においては、水晶振動子と最も背の高い部品とが接触するおそれがあり、その為に水晶発振器の低背化が抑制されるといった問題があった。
【0008】
本発明は上記欠点に鑑み考え出されたものであり、従ってその目的は、低背化が可能で、かつ、生産性にも優れた小型の水晶発振器、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水晶発振器は、絶縁性基体の表主面に凹形状の第1の空間部が設けられ、該第1の空間部内の該絶縁性基体の表主面上には発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載されており、該絶縁性基体の第1の空間部上面には該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子が収容される凹形状の第2の空間部が設けられ、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止して成る水晶発振器において、該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点と、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点が異なることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の水晶発振器の製造方法は、絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部部内の該絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び該電子部品素子を搭載し、該絶縁性基体の第1の空間部上面に、凹形状の第2の空間部内に該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子を収容し、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止した水晶振動子を搭載する水晶発振器の製造方法において、
該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いる第1接合部材の融点より、高い融点の第2接合部材を用いて、該絶縁性基体の第1の空間部上面への該水晶振動子の取り付けをすることを特徴とする。
【0011】
本発明の水晶発振器は、上記構成において、該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点が、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点よりも低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】

本発明の水晶発振器によれば、絶縁性基体の表主面に凹形状の第1の空間部が設けられ、該第1の空間部内の該絶縁性基体の表主面上には発振回路が組み込まれた該集積回路素子、及び該電子部品素子が搭載されており、該絶縁性基体の第1の空間部上面には該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子が収容される凹形状の第2の空間部が設けられ、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止して成る水晶発振器において、該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点と、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点が異なることから、第1の空間部内の該集積回路素子、及び該電子部品素子の取り付けに用いられるハンダ、またはバンプ等の第1接合部材から溶融することで第1の空間部内の該集積回路素子、及び該電子部品素子を低背化することができ、その結果、第1の空間部の上面に搭載される水晶振動子と集積回路素子、及び該電子部品素子が接触することのない水晶発振器を得ることが可能となる。
【0013】
また、本発明の水晶発振器の製造方法によれば、絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部部内の該絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた該集積回路素子、及び該電子部品素子を搭載し、該絶縁性基体の第1の空間部上面に、凹形状の第2の空間部内に該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子を収容し、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止した水晶振動子を搭載する水晶発振器の製造方法において、該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いる第1接合部材の融点より、高い融点の第2接合部材を用いて、該絶縁性基体の第1の空間部上面への該水晶振動子の取り付けをすることから、第1の空間部内の該集積回路素子、及び該電子部品素子と、第1の空間部上面の水晶振動子とを2段階で取り付けを行うことで、第1の空間部内の該集積回路素子、及び該電子部品素子の取り付けを行った後に、第1の空間部内の上面に水晶振動子を取り付けるので、水晶振動子と第1の空間部上面との接合を確実に行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明の水晶発振器によれば、上記構成において該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点が、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点よりも低いことから、該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで、最も背の高い部品のハンダ、またはバンプなどの第1接合部材を先に溶融させることで最も背の高い部品高さを低くできるので、第1の空間部内の上面に搭載する水晶振動子と最も背の高い部品との接触をなくすことが可能となり、水晶振動子の搭載作業を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。
【0016】
図1は本発明の水晶発振器の断面図であり、図2は図1の水晶発振器の集積回路素子7及び、電子部品素子(不図示)搭載面の上面図である。また、図3は水晶発振器の製造方法を示した概略の断面図である。図1に示す水晶発振器は、下面に外部端子10が設けられ、上面に複数個のスペーサ部材13、集積回路素子7が取着され搭載されている絶縁性基体6上に、水晶振動素子5が収容されている容器体1を載置して固定した構造を有している。また、図2に示す水晶発振器の集積回路素子7及び、電子部品素子(不図示)搭載面の上面図では、四隅部にスペーサ部材13、スペーサ部材13の上面に第2接合部材11が形成されている。また、スペーサ部材13は外部端子10にビアホール等で接続されている。
【0017】
図1において前記容器体1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板2と、42アロイやコバール,リン青銅等の金属から成るシールリング3と、シールリング3と同様の金属から成る蓋体4とから成り、前記の基板2の上面にシールリング3を取着させ、その上面に蓋体4を載置して固定させることによって容器体1が構成され、シールリング3の内側に位置する基板2の上面に水晶振動素子5が実装される。
【0018】
前記容器体1は、その内部に、具体的には、基板2の上面とシールリング3の内面と蓋体4の下面とで囲まれる空間内に水晶振動素子5を収容して気密封止するためのものであり、基板2の上面には水晶振動素子5の振動電極に接続される一対の電極パッド等が、基板2の下面には後述する絶縁性基体6上のスペーサ部材13に接続される複数個の接合電極がそれぞれ設けられ、これらのパッドや電極は基板表面の配線パターンや基板内部に埋設されているビアホール等を介して、対応するもの同士、相互に電気的に接続されている。
【0019】
一方、前記容器体1の内部に収容される水晶振動素子5は、所定の結晶軸でカットした水晶片の両主面に一対の振動電極を被着・形成して成り、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して水晶片に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0020】
ここで容器体1の蓋体4を容器体1の配線導体8や絶縁性基体6の配線導体9を介してグランド端子に接続させておけば、その使用時に、金属から成る蓋体4が基準電位に接続されてシールド機能が付与されることと成るため、水晶振動素子5や集積回路素子7を外部からの不要な電気的作用から良好に保護することができる。従って、容器体1の蓋体4は容器体1の配線導体8や絶縁性基体6の配線導体9を介してグランド端子に接続させておくことが好ましい。
【0021】
そして、上述した容器体1が取着される絶縁性基体6は概略矩形状を成しており、ガラス布基材エポキシ樹脂やポリカーボネイト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の樹脂材料やガラス−セラミックアルミナセラミックス等のセラミック材料等によって平板状を成すように形成されている。
【0022】
また、図1、及び図2に示すように絶縁性基体6には、絶縁性基体6の下面の四隅部に4つの外部端子10が形成され、絶縁性基体6の上面の四隅部には誘電体部材等から成る4つのスペーサ部材13が、またスペーサ部材13の上面には第2接合部材11が設けられている。
【0023】
絶縁性基体6の下面に設けられている4つの外部端子10は、水晶発振器をマザーボード等の外部配線基板に接続するための端子として機能するものであり、水晶発振器を外部配線基板上に搭載する際、外部配線基板の回路配線と半田等の導電性接合材を介して電気的に接続されるように成っている。
【0024】
また、前記絶縁性基体6の上面に設けられる複数個のスペーサ部材13は、絶縁性基体6と容器体1との間に、集積回路素子7を配置させるのに必要な所定の間隔を確保しつつ、絶縁性基体6の配線導体9を容器体1の配線導体8に接続するためのものである。
【0025】
更に、図示していないが前記絶縁性基板6には、絶縁性基板6の側面または下面に設けられる複数個の書込制御端子が形成されており、書込制御端子は絶縁性基体6の配線導体9を介して集積回路素子7の電極パッド(不図示)と電気的に接続されている。
【0026】
更に、上述した絶縁性基体6の中央域には、複数個の電極パッド(不図示)が設けられており、これら電極パッドに集積回路素子7の電極パッドと第1接合部材12を介して電気的、及び機械的に接続させることによって集積回路素子7が絶縁性基体6上の所定位置に取り付けされる。
【0027】
前記の集積回路素子7は、その回路形成面(下面)に、周囲の温度状態を検知する感温素子、水晶振動素子5の温度特性を補償する温度補償データを格納するメモリ、メモリ内の温度補償データに基づいて水晶振動素子5の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、先の温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
【0028】
なお、上述した集積回路素子7と絶縁性基体6との間にはエポキシ樹脂等から成る樹脂材14が介在されており、この樹脂材14は集積回路素子7の全下面と側面の一部を被覆するように被着されている。
【0029】
ここで、本発明の特徴部分は図3に示すように集積回路素子7下面に形成された第1接合部材12と絶縁性基板6とを集積回路素子7下面に形成された第1接合部材12を溶融することで、集積回路素子7と絶縁性基板6を先に取り付けた後に絶縁性基板6の第1の空間部15上面に形成された第2接合部材11で水晶振動子と絶縁性基板6の第1の空間部15上面とを第2接合部材11で取り付ける点である。即ち、本発明においては集積回路素子7下面に形成された第1接合部材12の融点を絶縁性基板6の第1の空間部15上面に形成された第2接合部材11の融点より低く設定している。これにより、第2接合部材がハンダの場合、ハンダを接合するためのリフロー炉を通した際に、集積回路素子7下面に形成された第1接合部材12から先に溶融させ集積回路素子7を先に絶縁性基板6に取り付け、集積回路素子7の高さを低くしてから、絶縁性基板6の第1の空間部15上面に形成された第2接合部材11を溶融して第1の空間部15上面と水晶振動子を取り付けているので、集積回路素子7と水晶振動子が接触することのない水晶発振器構造とすることが可能となる。
また、集積回路素子7下面に形成された第1接合部材12として用いられる低融点ハンダとしては、Sn―Zn系半田等があり、絶縁性基板6の第1の空間部15上面と水晶振動子を接合する第2接合部材11として用いられる高融点ハンダとしては、鉛フリー半田のSn―Ag系半田等がある。
【0030】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0031】
例えば、上述の実施形態においては、低融点ハンダと高融点ハンダの組み合わせを示しているが、低融点ハンダ同士の組み合わせで融点の異なるハンダを用いても良い。また、同様に高融点ハンダ同士の組み合わせで融点の異なるハンダを用いても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態にかかる水晶発振器の概略の断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる水晶発振器を構成する絶縁性基板に集積回路素子とハンダを搭載した状態を示す概略の上面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる水晶発振器の製造方法を示す概略の断面図である。
【図4】従来の水晶発振器の斜め上方からみた概略の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・容器体
2・・・基板
3・・・シールリング
4・・・蓋体
5・・・水晶振動素子
6・・・絶縁性基体
7・・・集積回路素子
8・・・容器体の配線導体
9・・・絶縁性基体の配線導体
10・・・外部端子
11・・・第2接合部材
12・・・第1接合部材
13・・・スペーサ部材
14・・・樹脂
15・・・第1の空間部
16・・・第2の空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基体の表主面に凹形状の第1の空間部が設けられ、該第1の空間部内の該絶縁性基体の表主面上には発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子が搭載されており、該絶縁性基体の第1の空間部上面には該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子が収容される凹形状の第2の空間部が設けられ、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止して成る水晶発振器において、
該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点と、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点が異なることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
絶縁性基体の表主面に設けられた凹形状の第1の空間部部内の該絶縁性基体の表主面上に、発振回路が組み込まれた集積回路素子、及び電子部品素子を搭載し、
該絶縁性基体の第1の空間部上面に、凹形状の第2の空間部内に該集積回路素子、及び該電子部品素子と電気的に接続する水晶振動素子を収容し、該第2の空間部の開口上縁部に蓋体を載置して気密封止した水晶振動子を搭載する水晶発振器の製造方法において、
該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いる第1接合部材の融点より、高い融点の第2接合部材を用いて、該絶縁性基体の第1の空間部上面への該水晶振動子の取り付けをする水晶発振器の製造方法。
【請求項3】
該集積回路素子、及び該電子部品素子のうちで最も背の高い部品の取り付けに用いられる第1接合部材の融点が、該第2の空間部の取り付けに用いられる第2接合部材の融点よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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