説明

水晶結晶の評価方法

【課題】 水晶結晶の結晶欠陥を調べる安易な評価方法が求められていた。
【解決手段】 本発明は、被検査品である水晶結晶の主面を金属板で挟み加熱しながら金属板に導通することにより、金属板の金属イオンが水晶結晶にドピングされて発色する。その発色の均一性により結晶欠陥を評価する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶結晶とりわけ広く利用される人工水晶の結晶欠陥を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶結晶には、不純物を含む欠陥や結晶性が正しくない欠陥などがある。従来、例えばアルミニウムが多く含まれる水晶結晶では、被検査品にガンマ線を照射することにより、色が変色することで、評価している。しかし結晶欠陥すなわち結晶性の正確さを判断するには、シュリーレン法によって光学的に判断する方法があるが、検体を作るためにサンプルを精度良くポリッシュ研磨しなければならないので、工数がかかる欠点がある。また大きなサンプルを見るには不向きである。
【0003】
アルミニウム濃度のように、ガンマ線照射による発色で判断する方法が簡便であり、判断しやすいので、簡便な評価方法が求められていた。
しかし、現在の評価方法では手間がかかり、評価するまでに時間と手間がかかっていた。
【0004】
そこで本発明にあたり、視覚的に結晶欠陥をとらえることによって、工数のかからず、またインゴットごと測定できる方法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2004―317473号公報
【0006】
なお出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、結晶欠陥を工数をかけずに簡易に評価することにある。
【0008】
特許文献1には、線状欠陥やエッチチャンネルなどの結晶欠陥をビジュアル的に評価する方法が発表されている。ここでは例えば線状欠陥の場合には、水晶表面に現れるコブルの大きさや量によって水晶結晶の良否を判断している。しかし結晶欠陥を光学的に調べるには、この方法では評価できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水晶結晶の欠陥を検出する評価方法において、被検査品を金属板で挟み加熱ながら該金属板に通電し、被検査品に金属イオンをドーピングすることにより、該被検査品の発色によって水晶の結晶欠陥を検出することにより評価することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の評価方法によって、人工水晶をロット単位での結晶欠陥を容易に見つけだすことが出来るようになったため、評価された品質のいい人工水晶を安価で提供することが出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
水晶結晶は、シリコンSiと酸素Oとからなり、六角柱状(三方晶系)の結晶体であり、特に転移点が573℃より低い温度で安定な状態のα水晶と言われる水晶は、電子業界で水晶振動子や水晶発振器などで広くクロック源として利用されている。結晶は、完璧なほど純粋な結晶で、結晶構造も欠陥の無いものが求められており、安定な周波数を得るためには、結晶性のいい水晶結晶が必要である。
シリコンと酸素が結合し三回らせん軸対称構造であり、結晶成長時にこの構造が歪み等により欠陥を生じ成長した場合に不完全結晶となる。図4は、欠陥のない水晶結晶構造を示す模式図である。
【0012】
そこで本発明では、図1の手順に従い評価を行っている。(1)被検査品の主面を金属板で挟み固定する。(2)加熱しながら金属板に通電して、金属イオンを被検査品である水晶結晶にドーピングする。(3)金属イオンをドーピングされた水晶結晶が発色している発色の仕方により、結晶欠陥を判定する。
図2のように測定サンプルとなる水晶結晶1の主面を簡単に研磨して面を出し、そこを金属板2で挟む。この場合、水晶結晶1と金属膜2とは互いの表面が強く密着させておく必要がある。機械的に圧着させておかなくてはならない。端子1,2に直流または交流の電源を接続し、金属板2に電圧をかける。金属板の金属イオンが水晶結晶にドーピングされる。金属イオンは、結晶の格子に沿ってドーピングされるため、もし結晶欠陥があるとその部分だけ色に濃淡が出来るので水晶結晶の結晶欠陥のある部分がわかる。
【0013】
金属イオンの種類によって色が異なる。本発明は、水晶結晶をロット単位でサンプリングすることにより、結晶欠陥有無を評価をすることが出来る。
判定としては、均一に発色している場合には、格子軸に沿って金属イオンがドーピングされている。しかし部分的に色にむらや不均一な部分は結晶欠陥があり、水晶結晶としては特性が期待できない結晶である。この被検査品は、金属がドーピングされているため、振動子や光学素子に加工するには不向きであり、同一ロットの抜き取り検査に本発明を利用することが出来る。
【0014】
この評価法によって大きな人工水晶全体を一度に評価することが出来るため、例えば従来のシュリーレン法による評価では光の当たった狭い範囲の評価しか出来ないが、本発明では従来に比べサンプルが大きなまま、人工水晶のインゴットごと評価できる。
また金属板で挟んだ水晶結晶をチャンバーに入れ、温度と圧力を加えながら、金属板に電流を流すと更に金属イオンを多く早く水晶結晶にドーピングすることが出来る。
本発明で使用される金属板は、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル等がよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、人工水晶の量産化における品質を維持するため、また人工水晶の製法を変えたときの結晶の比較評価のために活用すると有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の評価方法の手順を示す。
【図2】図2は、本発明の評価方法の実施例を示す図である。
【図3】図3は、銅イオンをドーピングした水晶結晶構造を示す模式図である。
【図4】図4は、欠陥のない水晶結晶構造を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶結晶の欠陥を検出する評価方法において、
被検査品を金属板で挟み加熱ながら該金属板に通電し、金属イオンを被検査品にドーピングすることにより、該被検査品の発色によって水晶の結晶欠陥を検出する水晶結晶の評価方法。
【請求項2】
該金属板が、銅、チタン、アルミニウム又はニッケルであることを特徴とする請求項1の水晶結晶の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−40707(P2007−40707A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221909(P2005−221909)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】