説明

水栓用発電機

【課題】水栓用発電機に対するノズル部の位置決めを確実に行うことができる水栓用発電機を提供する。
【解決手段】給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒部と、前記給水流路に対して略平行な回転中心軸を有し、前記回転中心軸のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられた動翼羽根部を有する動翼部と、前記動翼部と一体に回転可能に設けられたマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、前記回転中心軸に対して略平行な方向から流れてくる水を、前記回転中心軸に対して略垂直な平面内において、前記動翼羽根部の径外方向から前記動翼羽根部に向けて噴出する複数の噴射孔12aを有するノズル部12と、を備え、前記ノズル部は、径外方向に突出し前記筒部の内壁と当接する複数の突出部12cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、水栓用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水栓装置に電気システムが組み込まれるようになってきている。例えば、蛇口の下に差し出された手を感知するセンサ、センサからの信号に基づいて給水路の開閉を行う電磁弁が組み込まれた水栓装置が知られている。また、この他にもLED(Light Emitting Diode)照明を吐水口の近傍に組み込んで、吐水の温度に応じて吐水にあてる光の色を変えるようなことも行われている。
【0003】
この様な電気システムを水栓装置に組み込む場合には、電気システムを動作させるための電源が必要となる。この場合、商用電源を使用することもできるが水栓装置の設置時に電気配線工事が別途必要となる。また、水栓装置の外部において配線を行うことになるので見栄えが悪くなったり、配線が邪魔になったりする。一方、電源として電池を用いるようにすれば水栓装置の設置時に電気配線工事を行う必要がなくなる。また、水栓装置の外部において配線を行う必要もなくなる。しかしながら、電源として電池を用いるようにすれば、電池の交換が必要となりメンテナンスの手間がかかるという新たな問題が生ずる。また、商用電源、電池のいずれを用いても省資源、省エネルギーの観点からの問題が生ずることになる。
【0004】
そのため、水栓装置に組み込まれた電気システムの動作に必要な電力を得るために、水栓装置の流路に小型の水力発電機が配設されるようになってきている。
そして、水栓装置に組み込まれる水力発電機(水栓用発電機)として、配管の径寸法と同程度のコンパクトさを有し、且つ高い発電効率を有する水力発電機が求められるようになってきている。
【0005】
ここで、コンパクトな水栓用発電機としては、いわゆる軸流式の水栓用発電機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1(特開2004−336982号公報)の図4、図5などには、いわゆる軸流式の水栓用発電機が開示されている。この様な軸流式の水栓用発電機は、動翼部(水車31)の上流側において、水流の流速を高めるとともに、その水流が動翼部(水車31)の軸方向に対して旋回するようにしている。そのため、噴出孔である流出口4は、軸穴5を中心として円周方向に複数(例えば、2〜4個)設けられた小孔(例えば、φ2〜3ミリ程度)とされ、これらの小孔が斜め(例えば、45°程度)に傾けて形成されるようにしている(特許文献1(特開2004−336982号公報)の[0034]段落を参照)。
この様な軸流式の水栓用発電機とすれば、流れ方向に略直角な方向の寸法(径方向寸法)を小さくすることができる。
【0006】
しかしながら、動翼部を回転させるために形成される旋回流は遠心力を受けて径外方向に拡散しようとする。そのため、動翼部に流入することなく動翼部を迂回するようにして動翼部の外側を流れる「バイパス流」が発生する。この「バイパス流」は、水力エネルギーを回転エネルギーに変換する際に仕事をしない無駄な水の流れとなる。そのため、特許文献1(特開2004−336982号公報)に開示された軸流式の水栓用発電機では発電効率の向上が図れないおそれがある。
【0007】
そのため、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、羽根部412(動翼羽根部)の径外方向から羽根部412(動翼羽根部)に向けて噴出する軸流式の水力発電機が提案されている(特許文献2を参照)。 特許文献2(特開2005−299634号公報)に開示された水力発電機によれば、径外方向に拡散しようとする旋回流が形成されないので「バイパス流」の形成を抑制することができる。そのため、発電効率の向上を図ることができる。
【0008】
この様な水栓用発電機において、高い発電効率を実現させるためには噴射板23(ノズル部)に設けられた連通孔241(噴射孔)の位置決めが非常に重要となる。例えば、連通孔241(噴射孔)と羽根部412(動翼羽根部)、あるいは連通孔241(噴射孔)と流路の中心がずれた状態で噴射が行われると、羽根部412(動翼羽根部)に適切な力がかからず発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0009】
ここで、特許文献2(特開2005−299634号公報)に開示された水力発電機においては、噴射板23の周縁部は、主流路31を形成する周壁24の一端部と一体に形成されている。また、周壁24は、下流側に設けられた垂直仕切壁25から立設され、周壁24と方形箱部2aの周壁とが一体化されている(特許文献2(特開2005−299634号公報の図4、[0037]段落を参照)。すなわち、噴射板23の周縁部は、方形箱部2aの周壁と直接一体化されておらず、垂直仕切壁25、周壁24を介して方形箱部2aに結合されている。
【0010】
そのため、羽根部412(動翼羽根部)やシャフト44などを取り付ける際に、垂直仕切壁25、周壁24が撓んで噴射板23(ノズル部)の位置、ひいては連通孔241(噴射孔)の位置がずれてしまうおそれがある。また、取り付け後においても水流や水圧により垂直仕切壁25、周壁24が撓んで噴射板23(ノズル部)の位置、ひいては連通孔241(噴射孔)の位置がずれてしまうおそれがある。
【0011】
その結果、連通孔241(噴射孔)と羽根部412(動翼羽根部)、あるいは連通孔241(噴射孔)と流路の中心がずれた状態で噴射が行われ、羽根部412(動翼羽根部)に適切な力がかからず発電効率が低下してしまうおそれがある。
この様な従来技術に対して、水栓用発電機に対するノズル部の位置決め(中心軸合わせ)を確実に行うことができる技術の開発が望まれるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−336982号公報
【特許文献2】特開2005−299634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部の径外方向から動翼羽根部に向けて噴出する軸流式の水栓用発電機において、水栓用発電機に対するノズル部の位置決めを確実に行うことができる水栓用発電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒部と、前記給水流路に対して略平行な回転中心軸を有し、前記回転中心軸のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられた動翼羽根部を有する動翼部と、前記動翼部と一体に回転可能に設けられたマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、前記回転中心軸に対して略平行な方向から流れてくる水を、前記回転中心軸に対して略垂直な平面内において、前記動翼羽根部の径外方向から前記動翼羽根部に向けて噴出する複数の噴射孔を有するノズル部と、を備え、前記ノズル部は、径外方向に突出し前記筒部の内壁と当接する複数の突出部を備えたことを特徴とする水栓用発電機である。
【0015】
本発明における水栓用発電機は、給水流路からの水を動翼羽根部の径外方向から動翼羽根部に向けて噴出させて動翼部を回転させる方式を採用している。そのため、いわゆるバイパス流を抑制することができるので高い発電効率を得ることができる。
この様な水栓用発電機において、高い発電効率を実現させるためにはノズル部12に設けられた噴射孔12aの位置決めが非常に重要となる。例えば、噴射孔12aと動翼羽根部18a、あるいは噴射孔12aと流路の中心がずれた状態で噴射が行われると、動翼羽根部18aに適切な力がかからず発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0016】
そのため、本発明においては、径外方向に突出し筒部11(大径部11a)の内壁と当接する複数の突出部12cをノズル部12に設けるようにした(例えば、図9、図10を参照)。この様なノズル部12を筒部11(大径部11a)の内部に取り付けた際には、筒部11(大径部11a)の中心軸とノズル部12の中心軸とが合うようになる。すなわち、ノズル部12を水栓用発電機1(筒部11)に取り付ける際、筒部11(大径部11a)の内壁に突出部12cの径外方向の端面(外周面)を当接させることができるので、水栓用発電機1(筒部11)に対するノズル部12の位置を確実に規定することができる。
【0017】
本発明によれば、水栓用発電機1に対するノズル部12の位置決め(中心軸合わせ)を確実に行うことができる。そのため、ノズル部12がずれた状態で取り付けられることで発電効率が低下するという不具合を解決することができる。その結果、軸流発電機の有するコンパクト性と高い性能を備えた水栓用発電機1において、高い発電効率を維持することができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、前記突出部は、前記突出部同士の間が前記噴射孔に水を案内する溝部となり、前記突出部が前記噴射孔に入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁となるように前記噴射孔から前記動翼部の回転方向側にずれた位置に配置されたこと、を特徴とする水栓用発電機である。
【0019】
ノズル部12は、動翼羽根部18aを回転させるために、噴射孔12aより水を噴射する。この際、噴射をより効率よく行う、すなわち、動翼羽根部18aをより効率よく回転させるためには、噴射孔12aに流入する水の流れが極力邪魔されない様な構成とすることが好ましい。
【0020】
そのため、本発明においては、噴射孔12aから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置に突出部12cを配置するようにしている。
ノズル部12の位置決め(中心軸合わせ)のためには突出部12cが必要であるが、この様な配置とすることで、噴射孔12aに流入する水の流れを極力邪魔しないようにすることができる。
【0021】
また、ノズル部12に向けて流れてきた水は、ノズル部12の上流側端面に当たりノズル部12の径外方向に導かれる。そして、ノズル部12の径外方向に導かれた水は、突出部12c同士の間に形成された溝部12eに流入し噴射孔12aに向けて案内される。すなわち、突出部12c同士の間に形成された溝部12eが、噴射孔12aに水を案内する溝としての機能を果たす。
また、溝部12e内を流れる水は、突出部12cの動翼羽根部18aの回転方向とは反対側の側壁12c1に当たり噴射孔12aに入水する。すなわち、噴射孔12aに向けて案内された水が、噴射孔12aに入水せずに通過しようとするのを押しとどめる壁としての機能を果たす。
【0022】
そのため、この様な突出部12cの配置とすれば、噴射孔12aに流入する水の流れが邪魔されることを極力抑えることができるとともに、噴射孔12aに水を案内する溝としての機能と、噴射孔12aに入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁としての機能と、を得ることができる。
【0023】
第3の発明は、第1の発明において、前記ノズル部は、上流側の端面に開口する段付き孔を中央部分に備えた第1のノズル筐体部と、前記第1のノズル筐体部の段付き孔の開口を塞ぐように設けられた第2のノズル筐体部と、を有し、前記噴射孔は、前記第1のノズル筐体部と前記第2のノズル筐体部とを当接させることで形成されたこと、を特徴とする水栓用発電機である。
【0024】
噴射孔を精度よく形成することができれば、水栓用発電機1の性能を向上させることができる。この場合、噴射孔を有するノズル部を一体的に成型するようにすれば、噴射孔を精度よく形成することができる。しかしながら、噴射孔がノズル部の側面に設けられているため、型抜きや成型が困難となるおそれがある。
【0025】
本発明においては、ノズル部33を分割構成とするとともに、第1のノズル筐体部35と第2のノズル筐体部34とによって噴射孔35cを形成するようにしている。そのため、複雑な形状であるノズル部をより簡単に作成することができる。また、噴射孔35cを精度よく形成することができる。
【0026】
第4の発明は、第1の発明において、前記筒部の給水流入口に設けられた封止部を備え、前記ノズル部は、前記ノズル部の軸方向の位置を規制するために前記突出部の上流側の端面を上流側にさらに突出させて、前記突出部の上流側の端面と、前記封止部と、を当接させたこと、を特徴とする水栓用発電機である。
【0027】
ここで、噴射孔35cの軸方向位置がずれると、動翼羽根部18aに噴流が効率よくあたらず、発電効率が落ちるおそれがある。
本発明においては、突出部の上流側の端面を上流側に突出させるようにしているので、突出部の上流側端面と封止部15とを当接させることができる。そのため、大径部11aの上流端の開口に封止部15を固定した際に、封止部15によりノズル部の軸方向の位置を規制することができる。その結果、動翼羽根部18aに噴流を効率よくあてることができるので、発電効率を向上させることができる。
【0028】
またさらに、前述した第3の発明のように、第1のノズル筐体部35と第2のノズル筐体部34とを当接させることで噴射孔35cが形成されるようにすれば以下の効果をも享受することができる。
【0029】
ここで、ノズル部を二分割し、分割された要素を組み付けることで噴射孔を有するノズル部を形成するようにすることができる。
ところが、単に分割された要素を組み付けるようにすれば、組み付け後や組み付け時に噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。例えば、組み付け後においては、水圧などによって分割された要素がぐらついて噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。この場合、分割された要素の周縁の複数の位置を接着剤などで固定すればよいが、その様にすると、はみ出した接着剤によって噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。そして、噴射孔の開口面積が変化すると適切な噴出が行えず、発電効率などが低下するおそれがある。
【0030】
そのため、本発明においては、ノズル部33を、上流側の端面に開口する段付き孔35bを中央部分に備えた第1のノズル筐体部35と、第1のノズル筐体部35の段付き孔35bの開口を塞ぐように設けられた第2のノズル筐体部34と、に分割している。そして、第1のノズル筐体部35の段付き孔35bの開口を塞ぐように第2のノズル筐体部34が設けられた際に、第1のノズル筐体部35と第2のノズル筐体部34とで噴射孔35cが形成されるようになっている(例えば、図11を参照)。
そのため、複雑な形状であるノズル部をより簡単に作成することができる。また、噴射孔35cを精度よく形成することができる。
【0031】
第5の発明は、第2の発明において、前記ノズル部は、上流側の面に設けられた流れてきた水を前記突出部同士の間の前記溝部へ分流するための分流部を有したこと、を特徴とする水栓用発電機である。
【0032】
ノズル部は、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて噴出することができるように水の流れを変換する必要がある。より高い発電効率を得るためには、水の流れを変換する部分、すなわち噴射孔に対して適切に水が導かれるようにする必要がある。
【0033】
そのため、本発明においては、ノズル部の上流側の面に、流れてきた水を突出部34c同士の間の溝部35dへ分流するための分流部34d(例えば、図11を参照)を設けるようにしている。
【0034】
分流部34dを設けるようにすれば、ノズル部に向けて流れてきた水は、それぞれ分流された後に噴射孔に導かれるので、水が導かれずに噴射孔から噴射が行われなかったり、それぞれの噴射孔からの噴出量が偏ったり、動翼羽根部18aに巧く水力エネルギーが伝わらなかったりするなどの不具合を解消することができる。その結果、より効率のよい発電を行うことができる。
【0035】
第6の発明は、第5の発明において、前記分流部は、前記分流部の前記回転中心軸に対して平行な方向の面と、前記突出部の前記回転中心軸に対して平行な方向の面とが、重なるように配置されたこと、を特徴とする水栓用発電機である。
【0036】
本発明においては、分流部34dの回転中心軸に対して平行な方向の面34d1と、突出部34cの回転中心軸に対して平行な方向の面34c1とが、重なるように配置されている(例えば、図11を参照)。
この様にすれば、分流部34dによって分流された水は、突出部34cに邪魔されることなく溝部35dまで導かれ、導かれた水を噴射孔35cから噴射させることができる。そのため、分流されてから動翼羽根部18aに向けて噴射されるまでの間、不要なエネルギーロスやよどみを発生することなく各噴射孔に水を導くことができる。また、噴射される水量の偏りを抑制することができる。その結果、高い効率の発電を実現することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の態様によれば、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部の径外方向から動翼羽根部に向けて噴出する軸流式の水栓用発電機において、水栓用発電機に対するノズル部の位置決めを確実に行うことができる水栓用発電機を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係る水栓用発電機を備えた自動水栓装置を例示するための模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る水栓用発電機を備えた自動水栓装置の模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る水栓用発電機について例示をするための模式断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る水栓用発電機の模式分解図である。
【図5】図3におけるA−A矢視断面図である。
【図6】図3におけるB−B矢視断面図である。
【図7】軸受け部を例示するための模式斜視図である。
【図8】水膜生成部を例示するための模式部分断面図である。
【図9】ノズル部を例示するための模式斜視図である。
【図10】図3におけるC−C矢視断面図である。
【図11】他の実施形態に係るノズル部を例示するための模式斜視図である。
【図12】他の実施形態に係る蓋部を例示するための模式図である。
【図13】傾斜させて設けられた噴射孔を例示するための模式図である。
【図14】保持板部を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る水栓用発電機を備えた自動水栓装置(以下、単に自動水栓装置とも称する)を例示するための模式図である。
図2は、本発明の実施の形態に係る水栓用発電機を備えた自動水栓装置の模式断面図である。なお、図中の矢印は流水の方向を表している。
【0040】
図1、図2に示すように、自動水栓装置3は、例えば、洗面台2などに取り付けられる。自動水栓装置3は、配管4を介して、水道水等の流入口5に接続されている。自動水栓装置3は、円筒状の本体3aと、この本体3aの上部に設けられ、本体3aの径外方向に延出する吐水部3bとを有する。吐水部3bの先端には、吐水口6が形成され、さらにこの吐水口6の近傍にはセンサ7が内蔵されている。
【0041】
自動水栓装置3の内部には、流入口5から流入し、配管4内を流れてきた給水を、吐水口6へと導く給水流路10が形成されている。本体3aの内部には、その給水流路10を開閉するための電磁弁8が内蔵され、さらに電磁弁8の下流側には、吐水量を一定に制限するための定流量弁55が内蔵されている。また、水道等の元圧が使用圧よりも高すぎる場合に減圧するための減圧弁または調圧弁(図示省略)が、電磁弁8より上流側に内蔵されている。なお、定流量弁55、減圧弁、調圧弁は、必要に応じて適宜設けるようにすればよい。
【0042】
定流量弁55より下流の吐水部3bの内部には、水栓用発電機1が備えられている。本体3aの内部には、水栓用発電機1で発電された電力を充電しておく充電器56、センサ7の駆動や電磁弁8の開閉などを制御する制御部57が設けられている。水栓用発電機1は、電磁弁8及び定流量弁55よりも下流側に配設されているため、水道の元圧(一次圧)が、水栓用発電機1に直接作用することはない。そのため、水栓用発電機1は、それほど高い耐圧性を要求されず、このような配置は、信頼性やコストの点で有利である。
【0043】
また、充電器56と制御部57とは、図示しない配線を介して接続されている。そして、充電器56及び制御部57は、本体3aの上部であって、給水流路10の最も上方の位置よりもさらに上方の位置に配置されている。そのため、給水流路10を形成する流路管の外面に結露した水滴が、落下または流路管を伝って流れ落ちても、制御部57が浸水することを防ぐことができるので、制御部57の故障を防止することができる。同様に、充電器56も給水流路10の上方に設けているため、充電器56が浸水することを防ぎ、充電器56の故障をも防止することができる。
水栓用発電機1に設けられたコイル27(図4を参照)と制御部57とは、図示しない配線を介して接続され、コイル27の出力(電力)が制御部57を介して充電器56に送られるようになっている。
【0044】
自動水栓装置3は、生活空間において好適に使用される。使用目的としては、例えば、キッチン用水栓装置、リビングダイニング用水栓装置、シャワー用水栓装置、トイレ用水栓装置、洗面所用水栓装置などが挙げられる。また、本実施の形態に係る水栓用発電機1は、人体感知センサを用いた自動水栓装置3に限らず、例えば、手動スイッチのオン/オフによるワンタッチ水栓装置、流量をカウントして止水する定量吐水水栓装置、設定時間を経過すると止水するタイマー水栓装置などにも適用させることができる。また、発電された電力を、例えば、ライトアップ、アルカリイオン水や銀イオン含有水などの電解機能水の生成、流量表示(計量)、温度表示、音声ガイドなどに用いることもできる。
【0045】
また、自動水栓装置3において、吐出流量は、例えば、毎分100リットル以下、望ましくは毎分30リットル以下に設定されている。特に、洗面所用水栓装置においては、毎分5リットル以下に設定されていることが望ましい。また、トイレ用水栓装置のような吐出流量が比較的多い場合には、給水管から、水栓用発電機1に流れる水流を分岐させて、水栓用発電機1を流れる流量を毎分30リットル以下に調整することが望ましい。これは、流量が多い場合に給水管からのすべての水流を水栓用発電機1に流すと、動翼部の回転数が大きくなりすぎて、騒音や軸摩耗が増大するおそれがあるからである。また、回転数が増大しても適正回転数以下でなければ、渦電流やコイル熱によるエネルギー損失が生じるため、結果として発電量が増大しないからでもある。なお、水栓装置が取り付けられる水道管の給水圧としては、例えば、日本においては50kPa(キロパスカル)程度の低水圧である場合もあり得る。
【0046】
ここで、水栓用発電機1を水栓装置3の水栓金具(本体3a及び吐水部3b)の外部に設けるものとすれば、水栓装置3の設置時に電気配線工事が必要となったり、水栓用発電機1の設置場所が別途必要となったりすることになる。そのため、水栓用発電機1を水栓装置3の水栓金具の内部に設けるようにすることが好ましい。ところが、近年における水栓装置3の水栓金具には細身のデザインが採用される傾向にあるので、これに内蔵される水栓用発電機1にはさらなるコンパクト化、高性能化が必要になってきている。
【0047】
次に、本実施の形態に係る水栓用発電機1について例示をする。
図3は、本発明の実施の形態に係る水栓用発電機について例示をするための模式断面図である。なお、図中の矢印は流水の方向を表している。
図4は、本発明の実施の形態に係る水栓用発電機の模式分解図である。
図5は、図3におけるA−A矢視断面図である。
図6は、図3におけるB−B矢視断面図である。
図7は、軸受け部を例示するための模式斜視図である。
水栓用発電機1には、主として、筒部11、ノズル部12、ロータ13、マグネット14、封止部15、ステータ16、ステータケース17が設けられている。
【0048】
筒部11は、大径部11a、中径部11b、小径部11cを有する段付き形状を呈している。筒部11は、給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成されている。筒部11の内部には、上流側から順に、封止部15、ノズル部12、ロータ13、マグネット14が設けられている。また、封止部15、ノズル部12、ロータ13に設けられた動翼部18の動翼羽根部18aは大径部11aの内部に設けられ、ロータ13に設けられた動翼部18の動翼ボス部18b、マグネット14は中径部11bの内部に設けられている。
【0049】
小径部11cの内部には、回転軸19の下流側の一端を支持する軸受け部22が設けられている。
図7に示すように、軸受け部22には、回転軸19の下流側の一端を回転自在に支持するとともに動翼部18の下流側の端部を支持する軸支持部22aと、軸支持部22aの径外方向に設けられた結合部22bと、給水流路に設けられた軸支持部22aと結合部22bとを連結するリブ22cとが設けられている。
軸支持部22aの中心には、軸受け凹部22dが設けられ、回転軸19の一端を回転自在に支持することができるようになっている。また、結合部22bを小径部11cの内部に設けられた段付き孔11c1に圧入させることで、軸受け部22を筒部11に取り付けることができるようになっている。リブ22cは、軸支持部22aの外面と結合部22bの内面との間に放射状に設けられている。リブ22cとリブ22cとの間は、軸受け部22の軸方向に貫通する孔となっており、上流側から流入する水を下流側に流出させることができるようになっている。
【0050】
また、軸支持部22aの上流側端部と保持部21がスペーサ23を介して当接するようになっている。そのため、ロータ13を下流側に押すスラスト力を軸受け部22で支持することができる。すなわち、軸受け部22は、動翼部18(ロータ13)にかかるスラスト力を支持する。
なお、必ずしも軸支持部22aが動翼部18の下流側の端部をも支持する必要はないが、軸支持部22aが、さらに動翼部18の下流側の端部をも支持するようにすれば、軸支持部22aの上流側の端部(平面部分)と、動翼部18の下流側の端部(平面部分)とを保持部21、スペーサ23を介して接触させることができる。そのため、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間にゴミが入り込むことをさらに抑制することができる。
【0051】
また、小径部11cと封止部15には図示しない配管が接続され、筒部11の内部が給水流路に連通するようになっている。この際、例えば、図2に例示をしたように、筒部11の中心軸方向が流水の方向に対して略平行となるようにして配設される。また、筒部11は、小径部11cを下流側に、大径部11aを上流側に向けて配設される。
【0052】
封止部15は、筒部11の給水流入口に設けられている。封止部15の内部には段付き孔が設けられ、段付き孔が給水流路に連通するようになっている。大径部11aの上流端の開口は、Oリング24を介して封止部15により液密となるように塞がれている。また、大径部11aの上流端の開口に封止部15を固定した際には、封止部15によりノズル部12の軸方向の位置が規制されるようになっている。
【0053】
ノズル部12は、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて噴出する複数の噴射孔12aを有する。
また、ノズル部12の中央部分には上流側に向けて突出する軸支持部12bが設けられている。ノズル部12の周縁部分には上流側に向けて突出するとともに径外方向にも突出する複数の突出部12cが設けられている。軸支持部12bの内部には回転軸19の一端を回転自在に支持する軸受け孔12dが設けられている。
なお、ノズル部12に関する詳細は後述する。
【0054】
ロータ13には、蓋部20、動翼部18、回転軸19、保持部21が設けられている。 動翼羽根部18aの上流側端部には、噴射孔12aから噴射された水が動翼羽根部18aから上流側に逃げるのを抑制するために動翼羽根部18aと一体に回転する蓋部20が設けられている。
蓋部20は、円板状を呈し、その中央部分には上流側及び下流側に向けて突出する軸保持部20aが設けられている。また、軸保持部20aの中央部分には回転軸19を圧入するための圧入孔が設けられている。軸保持部20aの下流側部分は、挿通部18fの上流側端部に設けられた段付き部に圧入されるようになっている。
【0055】
動翼部18は、動翼羽根部18a、動翼ボス部18b、保持板部18cを有し、給水流路に設けられている。すなわち、動翼部18(動翼羽根部18a)は、給水流路に対して略平行な回転中心軸を有し、回転中心軸のまわりに回転可能に給水流路に設けられている。
動翼羽根部18aは曲線で構成されており、動翼部18の中心に向けてその先端が接近するような向きに湾曲している。また、動翼羽根部18aの枚数は、噴射孔12aの数の整数倍とは異なる値となっている。例えば、後述する図10に例示をしたものでは、動翼羽根部18aの枚数を11枚、噴射孔12aの数を3箇所としている。動翼羽根部18aの枚数を噴射孔12aの数の整数倍とは異なる値とすれば、噴射孔12aから噴出された水が各動翼羽根部18aの外周縁近傍に衝突する時期をずらすことができるので、動翼部18の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0056】
また、動翼羽根部18aの下流側の端部には、動翼羽根部18aを保持する保持板部18cが設けられている。すなわち、保持板部18cは、動翼羽根部18aの下流側端部に設けられ、動翼羽根部18aと一体に回転する。そして、動翼羽根部18a、保持板部18c、蓋部20で画される空間が動翼流路18hとなる。
また、保持板部18cの中央近傍には動翼流路18hを流れた水を下流側に流すための孔部18dが設けられている。すなわち、保持板部18cの孔部18dは保持板部18cの中央近傍に設けられ、孔部18dと、動翼羽根部18aに向けて噴出された水を下流側に流すための流路(孔部18e)と、が連通している。
【0057】
この様に、動翼羽根部18aに向けて噴出された水が下流側に流れるためには、水を下流側に流すための流路と連通する孔部18dを保持板部18cに設ける必要がある。
本実施の形態においては、保持板部18cの中央近傍に孔部を設けるようにしている。この様にすれば、動翼羽根部18aに噴射された水が流入してから流出するまでの間の寸法を長くすることができる。そのため、発電効率を向上させることができる。
【0058】
動翼羽根部18aの下流側には、動翼ボス部18bが設けられている。動翼ボス部18bの内部には軸方向に貫通する孔部18eが設けられ、孔部18eの一端が孔部18dと連通している。孔部18eは、動翼流路18hを流れた水を下流側に流すための流路となる。動翼ボス部18bの中央部分には回転軸19を挿通させる挿通部18fが設けられている。挿通部18fの上流側端部には、蓋部20の軸保持部20aを圧入させるための段付き部が設けられている。また、挿通部18fの下流側端部には、保持部21のボス部21bを圧入させるための段付き部が設けられている。
【0059】
回転軸19は、円柱状を呈し、給水流路に対して略平行に設けられている。また、回転軸19は、一端が動翼羽根部18aから上流方向に突出し、他端が動翼ボス部18bから下流方向に突出するようにして設けられる。回転軸19の上流側の一端は軸支持部12bに回転自在に保持され、下流側の一端は軸受け部22に回転自在に保持される。
【0060】
保持部21は、鍔部21aとボス部21bとを有し、その中央部分には回転軸19を圧入するための圧入孔が設けられている。ボス部21bは、挿通部18fの下流側端部に設けられた段付き部に圧入されるようになっている。
そのため、動翼部18の挿通部18fに挿通された回転軸19を蓋部20の圧入孔、保持部21の圧入孔に圧入し、蓋部20の軸保持部20aの下流側部分、保持部21のボス部21bを挿通部18fの段付き部に圧入することで、動翼部18、回転軸19、蓋部20、保持部21が一体化されるようになっている。
【0061】
すなわち、蓋部20、動翼部18、回転軸19、保持部21はロータ13として一体化され、一体化されたロータ13が回転軸19を中心として一体に回転するようになっている。
【0062】
動翼ボス部18bの外周面(径外方向の端面)には円筒状のマグネット14が設けられている。そして、マグネット14は、動翼部18と一体に回転可能となっている。マグネット14の外周面(径外方向の端面)は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。
【0063】
筒部11の小径部11cの外側には、ステータ16が設けられている。本実施の形態においては、ステータ16を、マグネット14の軸方向の端面に対向配置させるようにして設けている。そのため、ステータ16をマグネット14の径外方向に対向配置させる場合と比べて、径方向寸法を小さくすることができる。また、動翼部18の径外方向にステータ16を配置しない分、動翼部18の径方向寸法の拡大が図れ、発電量を増加させることができる。
【0064】
ステータ16は、いずれも軟磁性体(例えば、圧延鋼)からなる第1ヨーク25、第2ヨーク26、第1ヨーク25に連設するインダクタ25a及びインダクタ25b、第2ヨーク26に連設するインダクタ26aと、第1ヨーク25と第2ヨーク26とで囲まれた空間内に配置されるコイル27とを有する。導線を円環状に巻回されたコイル27は、その内周面部、外周面部が、第1ヨーク25、第2ヨーク26によって囲まれている。コイル27は、マグネット14の回転により起電力を生ずる。
【0065】
第1ヨーク25は、略円環状を呈し、コイル27の内周面部を囲むようにして配置され、その軸方向の一端部には、径外方向に向けて、複数のインダクタ25aが一体的に設けられている。インダクタ25aは、第1ヨーク25に対して略直角となるように設けられている。インダクタ25aは、コイル27の周方向に沿って等間隔で配置されている。インダクタ25aの一端は、さらにコイル27の軸方向に延出してインダクタ25bを形成している。
【0066】
第2ヨーク26は、略円環状を呈し、コイル27の外周面部を囲むようにして配置され、その軸方向の一端部には、複数のインダクタ26aが軸方向に向けて一体的に設けられている。インダクタ26aは、コイル27の周方向に沿って等間隔で配置されるとともに、第1ヨーク25の各インダクタ25bの間に配置されるようになっている。すなわち、マグネット14の径方向に対向する部分を有して互いに離間して配設された磁気のやり取りを行う複数のインダクタ25b、26aが設けられている。また、インダクタ25b、26aは、コイル27の外周面部を囲むようにして配置された部分(第2ヨーク26)の直上に設けられ、コイル27の中心から各インダクタ25b、26aまでの距離は略同一となっている。
【0067】
ステータケース17の内部には段付き孔が軸方向を貫通するようにして設けられている。そして、大きな径寸法の孔にはステータ16が挿通し、小さな径寸法の孔には小径部11cが挿通するようになっている。そして、ステータケース17の下流側の端面を止め輪28で保持することで、筒部11にステータケース17が取り付けられるようになっている。
【0068】
ここで、本実施の形態に係る水栓用発電機1のように、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて噴出するものにおいては、軸受け部分などの損耗が問題となる。
すなわち、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて水を噴出すれば、軸周りの水流が増加することになる。この場合、軸が固定され、固定された軸を中心に動翼部が回転するものの場合は、固定された軸と動翼部との間に設けられた隙間に水が流れることになる。そのため、水に含まれた錆などのゴミが軸と動翼部との間の隙間に入り込み、損耗や損耗によるガタツキなどが生じて発電効率が低下するなどの不具合が生じるおそれがある。
【0069】
本実施の形態においては、前述したように、動翼部18と回転軸19とが一体化され、一体化された動翼部18と回転軸19とが回転軸19を中心として一体に回転するようになっている。そのため、回転軸19と動翼部18との間に水が流れることがなく、また回転軸19と動翼部18とが相対的に移動することもないので、損耗や損耗によるガタツキなどが生じることがない。
ところが、動翼部18と回転軸19とを一体化すれば回転軸19が回転することになるため、回転軸19と回転軸19を支持する部材(軸支持部12b、軸受け部22)との間に隙間を設ける必要がある。そのため、この様な場合には、回転軸19とそれを支持する部材(軸支持部12b、軸受け部22)における損耗が問題となる。
【0070】
この場合、動翼流路18hの上流側は蓋部20で覆われている。そのため、回転軸19と軸受け孔12dとの間に流れ込む水が少なくなるので、水に含まれた錆などのゴミが入り込むことも少なくなる。その結果、この部分に生じる損耗は少なくなる。
【0071】
一方、図5、図7に示すように、軸受け部22にはリブ22cが設けられており、リブ22cとリブ22cとの間が給水流路となっている。そのため、リブ22cにより流水が妨げられ、リブ22cの上流側端部近傍において水圧が上昇することになる。そして、リブ22cの上流側端部近傍において水圧が上昇すると、回転軸19と軸受け部22との間に水とともに錆などのゴミが押し込まれるおそれがある。すなわち、リブ22cが給水流路を狭めることになるから、給水流路を流れる水が、回転軸19と軸受け部22との間に流れ込みやすくなる。
そのため、本実施の形態においては、水を利用して回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に錆などのゴミが侵入するのを防止する侵入防止手段を備えるようにしている。
【0072】
次に、侵入防止手段についてさらに説明をする。
本発明における侵入防止手段は、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に単に水が入らないようにするわけではなく、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間にすでにある水を利用して大量の水が流入してくるのを防止するという全く新しい技術思想に基づくものである。
【0073】
侵入防止手段としては、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に水を充填するものを例示することができる。すなわち、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に水を充填することで、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間が流路とならないようにして、大量の水が流入、通過することを防止するようにしたものである。これは、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に単に水が入らないようにするのではなく、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に充填された水を流さない(流路としない)ようにするという全く新しい技術発想に基づいて、錆などのゴミが侵入してくることを防止したものである。
【0074】
この様な侵入防止手段としては、軸支持部22aの下流側を封止してなるもの(回転軸19を支持する孔の下流側端部を封止したもの)を例示することができる。なお、軸支持部22aの下流側の封止は、回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間が流路とならないように軸支持部22aの下流側を封止するようにすればよい。例えば、以下に例示をするように支持部22aの下流側の端部を封止するようにすることができる。
本実施の形態においては、軸受け部22に設けられた回転軸19を支持する孔を有底の軸受け凹部22dとしている。
【0075】
ここで、侵入防止手段としての軸受け凹部22dの作用について説明する。
水栓用発電機1の稼動開始時(水の流れ始め)においては、水栓用発電機1の給水流路は空気のみが入っている状態にある。
水栓用発電機1に流入した水は、動翼部18を回転させた後、軸方向に沿って下流側へ流れる。
下流側においては、軸受け部22に設けられたリブ22cによって給水流路が狭められているため、水は回転軸19と軸受け凹部22dとの間に入り込むことになる。
この際、軸受け凹部22dの下流側が封止されているため、入り込んだ水が軸受け凹部22dから流出することが抑制されて回転軸19と軸受け凹部22dとの間に水が充填されていく。
また、軸受け凹部22dに入っていた空気は、回転軸19の回転によって積極的に軸受け凹部22dの外に排出される。すなわち、回転軸19の回転によって回転軸19と軸受け凹部22dとの間への水の充填が促進されることになる。
この様にして、回転軸19と軸受け凹部22dとの間に水が充填されると、それ以降は充填された水により新たな水の侵入が阻害されることになる。すなわち、新たに侵入しようとする水は回転軸19と軸受け凹部22dとの間に入れず、給水流路を下流側に流れることになる。つまり、回転軸19と軸受け凹部22dとの間が流路とならないので、新たな水の侵入を阻害することができる。
本実施の形態においては、回転軸19を支持する孔の下流側端部を封止するという簡単な構成により、水を利用したゴミの侵入防止を可能としている。そのため、軸受け部などの損耗という発電性能を低下させる不具合を防ぎ、高効率かつコンパクトな水栓用発電機を実現することができる。
【0076】
侵入防止手段の他の実施形態としては、動翼部18の回転による遠心力により水膜32を生成して回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間にゴミが侵入するのを防止するものを例示することができる。
【0077】
図8は、水膜生成部29を例示するための模式部分断面図である。
図8に示すように、保持部30は、鍔部30a、ボス部30b、第1の水膜保持部30cを有し、その中央部分には回転軸19を圧入するための圧入孔が設けられている。
ボス部30bは、鍔部30aから上流側に向けて突出するようにして設けられ、挿通部18fの下流側端部に設けられた段付き部に圧入されるようになっている。
第1の水膜保持部30cは、鍔部30aから下流側に向けて突出するようにして設けられている。また、第1の水膜保持部30cの外周面は鍔部30aから径外方向に向けて突出するようにして設けられている。第1の水膜保持部30cの内部には凹部30dが設けられている。
【0078】
前述した軸受け部22と同様に、軸受け部31には、回転軸19の一端を支持する支持部31aと、支持部31aと同芯に設けられた円筒状の結合部31bと、支持部31aと結合部31bとを連結するリブ31cとが設けられている。また、支持部31aの上流側端部から上流側に向けて突出する第2の水膜保持部31eが設けられている。
支持部31aの中心には、軸受け凹部31dが設けられ、回転軸19の一端を回転自在に支持することができるようになっている。また、結合部31bを小径部11cの内部に設けられた段付き孔11c1に圧入させることで、軸受け部31を筒部11に取り付けることができるようになっている。リブ31cは、支持部31aの外面と結合部31bの内面との間に放射状に設けられている。リブ31cとリブ31cとの間は、軸受け部31の軸方向に貫通する孔となっており、上流側から流入する水を下流側に流出させることができるようになっている。
【0079】
また、第2の水膜保持部31eの上流側端部と保持部30がスペーサ23を介して当接するようになっている。そのため、ロータ13を下流側に押すスラスト力を軸受け部31で支持することができる。すなわち、軸受け部31は、動翼部18(ロータ13)にかかるスラスト力を支持する。
第2の水膜保持部31eの外面寸法は、第1の水膜保持部30cに設けられた凹部30dの内面寸法よりも小さくなっており、第2の水膜保持部31eの外面と凹部30dの内面との間には、隙間が設けられるようになっている。すなわち、第1の水膜保持部30cに設けられた凹部30dの内面と、第2の水膜保持部31eの外面とが隙間を介して対向している。
そして、第1の水膜保持部30cに設けられた凹部30dの内面と、第2の水膜保持部31eの外面との間に水膜32が生成されるようになっている。
すなわち、本実施の形態においては、第1の水膜保持部30cと第2の水膜保持部31eとが水膜生成部29を構成する。
【0080】
次に、水膜生成部29の作用について説明をする。
水栓用発電機1に流入した水は、動翼部18を回転させた後、軸方向に沿って下流側へ流れる。
下流側においては、軸受け部31に設けられたリブ31cによって給水流路が狭められているため、水は凹部30dの内面と第2の水膜保持部31eの外面との間の隙間に入り込むことになる。
この際、凹部30dの上流側が封止されているため、入り込んだ水が凹部30dから流出することが抑制されて凹部30dの内面と第2の水膜保持部31eの外面との間に水が充填されていく。また、前述したものと同様に支持部31aの中心に設けられた軸受け凹部31dと回転軸19との間の隙間にも水が充填されていく。
【0081】
そして、動翼羽根部18aと一体化されている保持部30、回転軸19が回転すると遠心力が働き、水を径外側へ流そうとする。そのため、凹部30dの内面と第2の水膜保持部31eの外面との間の隙間に侵入しようとする水と流出しようとする水とにより滞留しようとする水、すなわち水膜32が生成される。
水膜32が生成された後は水栓用発電機1内を流れる水が、凹部30dの内面と第2の水膜保持部31eの外面との間の隙間に侵入することが阻害される。そのため、支持部31aの中心に設けられた軸受け凹部31dと回転軸19との間が流路とならないので、ゴミの侵入や蓄積が防止されることになる。
本実施の形態においては、水膜生成部29により水を利用したゴミの侵入防止を可能としている。そのため、軸受け部などの損耗という発電性能を低下させる不具合を防ぎ、高効率かつコンパクトな水栓用発電機を実現することができる。
【0082】
次に、ノズル部12についてさらに説明をする。
ノズル部12は、動翼羽根部18aに水を噴射するための部材である。そのため、噴射孔12aと動翼羽根部18a、あるいは噴射孔12aと流路の中心がずれた状態で噴射が行われると、動翼羽根部18aに適切な力がかからず発電効率が低下してしまうおそれがある。
そのため、ノズル部12は、径外方向に突出し筒部11の内壁と当接する複数の突出部12cを備えている。また、ノズル部12の軸方向の位置を規制するために突出部12の上流側の端面を上流側にさらに突出させている。すなわち、ノズル部12は、上流側に向けて突出するとともに径外方向にも突出する複数の突出部12cを周縁部分に備えている。
【0083】
図9は、ノズル部を例示するための模式斜視図である。
図10は、図3におけるC−C矢視断面図である。
【0084】
図9に示すように、ノズル部12の周縁部分には上流側に向けて突出するとともに径外方向にも突出する複数の突出部12cが設けられている。
図3に示すように、突出部12cの上流側端面は封止部15と当接するようになっている。
そのため、大径部11aの上流端の開口に封止部15を固定した際には、封止部15によりノズル部12の軸方向の位置が規制されるようになっている。
【0085】
また、図10に示すように、突出部12cの径外方向の端面(外周面)は大径部11aの内壁と当接するようになっている。すなわち、ノズル部12は、径外方向に突出し筒部11の内壁と当接する複数の突出部12cを備えている。そのため、ノズル部12を大径部11aの内部に取り付けた際には、大径部11aの中心軸とノズル部12の中心軸とが合うようになる。すなわち、ノズル部12を水栓用発電機1(大径部11a)に取り付ける際、大径部11aの内壁に突出部12cの径外方向の端面(外周面)を当接させることができるので、水栓用発電機1(筒部11)に対するノズル部12の位置を確実に規定することができる。
【0086】
本実施の形態によれば、水栓用発電機1に対するノズル部12の位置決め(中心軸合わせ)を確実に行うことができる。そのため、ノズル部12がずれた状態で取り付けられることで発電効率が低下するという不具合を解決することができる。その結果、軸流発電機の有するコンパクト性と高い性能を備えた水栓用発電機1において、高い発電効率を維持することができる。
【0087】
図10に示すように、動翼羽根部18aを回転させるために、噴射孔12aより動翼羽根部18aに向けて水が噴射される。
この際、噴射をより効率よく行う、すなわち、動翼羽根部18aをより効率よく回転させるためには、噴射孔12aに流入する水の流れが極力邪魔されない様な構成とすることが好ましい。
そのため、本実施の形態においては、噴射孔12aから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置に突出部12cを配置するようにしている。
【0088】
図10に示すように、突出部12cは、噴射孔12aから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置に配置されている。この場合、図10に例示をしたものでは、噴射孔12aの動翼羽根部18aの回転方向側の側壁12a1と、突出部12cの動翼羽根部18aの回転方向とは反対側の側壁12c1と、が面一となるように配置されている。
【0089】
この場合、封止部15内を流れてきた水は、ノズル部12の上流側端面に当たりノズル部12の径外方向に導かれる。そして、ノズル部12の径外方向に導かれた水は、突出部12c同士の間に形成された溝部12eに流入し噴射孔12aに向けて案内される。すなわち、突出部12c同士の間に形成された溝部12eが、噴射孔12aに水を案内する溝としての機能を果たすことになる。
また、溝部12e内を流れる水は、突出部12cの動翼羽根部18aの回転方向とは反対側の側壁12c1に当たり噴射孔12aに入水する。すなわち、噴射孔12aに向けて案内された水が、噴射孔12aに入水せずに通過しようとするのを押しとどめる壁としての機能を果たすことになる。
【0090】
つまり、突出部12cは、突出部同士の間が噴射孔12aに水を案内する溝となり、突出部12cが噴射孔12aに入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁となるように噴射孔12aから動翼部18の回転方向側にずれた位置に配置されている。
【0091】
本実施の形態によれば、突出部12cが噴射孔12aから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置に配置されているので、噴射孔12aに流入する水の流れが邪魔されることを極力抑えることができる。また、この様な配置とすることで、噴射孔12aに水を案内する溝としての機能と、噴射孔12aに入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁としての機能と、を得ることができる。
【0092】
図11は、他の実施形態に係るノズル部を例示するための模式斜視図である。
図11に例示をするノズル部33は、前述したノズル部12を二分割構成としたものである。
噴射孔を精度よく形成することができれば、水栓用発電機1の性能を向上させることができる。この場合、噴射孔を有するノズル部を一体的に成型するようにすれば、噴射孔を精度よく形成することができる。しかしながら、噴射孔がノズル部の側面に設けられているため、型抜きや成型が困難となるおそれがある。この場合、ノズル部を二分割し、分割された要素を組み付けることで噴射孔を有するノズル部を形成するようにすることができる。
【0093】
ところが、単に分割された要素を組み付けるようにすれば、組み付け後や組み付け時に噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。例えば、組み付け後においては、水圧などによって分割された要素がぐらついて噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。この場合、分割された要素の周縁の複数の位置を接着剤などで固定すればよいが、その様にすると、はみ出した接着剤によって噴射孔の開口面積が変化してしまうおそれがある。そして、噴射孔の開口面積が変化すると適切な噴出が行えず、発電効率などが低下するおそれがある。
【0094】
そのため、本実施の形態においては、ノズル部33を、上流側の端面に開口する段付き孔35bを中央部分に備えるとともに上流側の端面に開口する複数のノズル溝35aを周縁部分に備えた第1のノズル筐体部35と、第1のノズル筐体部35の段付き孔35bの開口を塞ぐように嵌め込まれた第2のノズル筐体部34と、に分割している。そして、第1のノズル筐体部35の段付き孔35bの開口を塞ぐように第2のノズル筐体部34が嵌め込まれた際に、第1のノズル筐体部35のノズル溝35aと第2のノズル筐体部34とで噴射孔35cが形成されるようになっている。すなわち、ノズル部33を分割構成とするとともに、第1のノズル筐体部35のノズル溝35aと第2のノズル筐体部34とによって噴射孔35cを形成するようにしている。
また、突出部34cの上流側の端面を上流側に突出させて封止部15により第2のノズル筐体部34と第1のノズル筐体部35の軸方向の位置を規制するようにしている。
【0095】
図11に示すように、ノズル部33には、第2のノズル筐体部34、第1のノズル筐体部35が設けられている。
第2のノズル筐体部34の中央部分には上流側に向けて突出する軸支持部34bが設けられている。また、第2のノズル筐体部34の周縁部分には、ノズル部33の軸方向の位置を規制するために上流側に向けて突出する複数の突出部34cが設けられている。軸支持部34bの内部には回転軸19の一端を回転自在に支持する軸受け孔部が設けられている。また、突出部34cの上流側端面は封止部15と当接するようになっている。
【0096】
第1のノズル筐体部35の内部には段付き孔35bが設けられている。また、第1のノズル筐体部35の周面には段付き孔35bに貫通する複数のノズル溝35aが設けられている。そして、封止部15により突出部34cの軸方向の位置が規制されることで、第2のノズル筐体部34が第1のノズル筐体部35の上流端の開口を塞ぐように固定されるようになっている。また、第2のノズル筐体部34が第1のノズル筐体部35に固定された際には第2のノズル筐体部34とノズル溝35aとで噴射孔35cが形成されるようになっている。第2のノズル筐体部34が第1のノズル筐体部35に固定されることで第1のノズル筐体部35の内部に形成された空間には、動翼部18の動翼羽根部18aが設けられる。そして、噴射孔35cは、第1のノズル筐体部35の内部に形成された空間に収納された動翼羽根部18aに向けて開口されている。
【0097】
また、第1のノズル筐体部35の径外方向の端面(外周面)は大径部11aの内壁と当接するようになっている。そのため、ノズル部33を大径部11aの内部に取り付ける際には、大径部11aの中心軸とノズル部33の中心軸とが合うようになっている。この様に、ノズル部33を水栓用発電機1(大径部11a)に取り付ける際、大径部11aの内壁に第1のノズル筐体部35の径外方向の端面(外周面)を当接させることができるので、水栓用発電機1(筒部11)に対するノズル部33の位置を確実に規定することができる。
【0098】
また、突出部34cは、噴射孔35cから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置となるように配置されている。
また、第1のノズル筐体部35の径外方向の端面(外周面)には、噴射孔35cと連通する溝部35dが設けられている。溝部35dは、突出部34cと突出部34cとの間に位置するように設けられている。
本実施の形態においては、周方向に沿った溝部35d同士の間が、図9において例示をした径外方向に突出し筒部11の内壁と当接する複数の突出部12cに相当する。
【0099】
また、第2のノズル筐体部34の上流側の面には分流部34dが設けられている。
ノズル部33は、回転中心軸に対して平行な方向から流れてくる水を、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて噴出することができるように水の流れを変換する必要がある。より高い発電効率を得るためには、水の流れを変換する部分、すなわち噴射孔に対して適切に水が導かれるようにする必要がある。
そのため、ノズル部33の上流側の面(第2のノズル筐体部34の上流側の面)に、流れてきた水を突出部34c同士の間の溝部35dへ分流するための分流部34dを設けるようにしている。ノズル部33に向けて流れてきた水は、分流部34dによりそれぞれ分流された後に噴射孔に導かれる。また、分流部34dの回転中心軸に対して平行な方向の面34d1と、突出部34cの回転中心軸に対して平行な方向の面34c1とが、略一直線上となるようになっている。なお、面34d1と、面34c1と、が略一直線上となる場合を例示したが、分流部34dによって分流された水が、突出部34cに邪魔されることなく溝部35dまで導かれ、導かれた水が噴射孔35cから噴射することができる程度に面34d1と、面34c1と、が重なっていればよい。
また、前述した突出部34cは、ノズル部33のガタツキ等を抑えるための部材(ノズル部33の軸方向の位置を規制する部材)であるが、突起状となっているので突出部34c同士の間を水が流れることができる。
【0100】
本実施の形態によれば、ノズル部33を第2のノズル筐体部34と第1のノズル筐体部35とに分割するようにしているので型抜きや成型を容易とすることができる。
また、第2のノズル筐体部34を第1のノズル筐体部35の段付き孔35bに嵌め込むことで、第2のノズル筐体部34とノズル溝35aとで噴射孔35cが形成されるようになっている。そのため、噴射孔35cを精度よく形成することができる。
【0101】
また、封止部15により、突出部34cを介して、第2のノズル筐体部34を第1のノズル筐体部35に当接している。そのため、接着剤などを用いていないので噴射孔35cの開口面積が変化するおそれがない。
また、第2のノズル筐体部34と第1のノズル筐体部35とを当接させているため、水圧などで第2のノズル筐体部34や第1のノズル筐体部35が変形するおそれがない。そのため、発電中に噴射孔35cの開口面積が変化するおそれがなく、安定した発電を行うことができる。
なお、水流により水圧がかかる場合、封止部15が持ち上げられ封止部15と当接している突出部34cが離れてしまうが、その場合は第2のノズル筐体部34が水圧により第1のノズル筐体部35に押し付けられることになるので、噴射孔35cの開口面積の変化を抑制することができる。
【0102】
また、第2のノズル筐体部34を第1のノズル筐体部35の段付き孔35bに嵌め込むようになっているので、第2のノズル筐体部34と第1のノズル筐体部35との径方向の位置ずれを抑制することができる。また、第2のノズル筐体部34と第1のノズル筐体部35との径方向の位置ずれにより、噴射孔35cの開口面積がばらついてしまうことを抑制することができる。
【0103】
また、第2のノズル筐体部34の上流側の面には分流部34dが設けられているので、流れてきた水を分流した後に噴射孔35cに導くようにすることができる。そのため、水が導かれずに噴射孔35cから噴射が行われなかったり、それぞれの噴射孔35cからの噴出量が偏ったり、動翼羽根部18aに巧く水力エネルギーが伝わらなかったりするなどの不具合を解消することができる。その結果、より効率のよい発電を行うことができる。
【0104】
また、分流部34dの回転中心軸に対して平行な方向の面34d1と、突出部34cの回転中心軸に対して平行な方向の面34c1とが、略一直線上となるようになっている。そのため、分流されてから動翼羽根部18aに向けて噴射されるまでの間、不要なエネルギーロスやよどみを発生することなく各噴射孔35cに水を導くことができる。また、噴射される水量の偏りを抑制することができる。その結果、高い効率の発電を実現することができる。
【0105】
また、以下のような前述したノズル部12と同様の効果を享受することができる。
第1のノズル筐体部35の径外方向の端面(外周面)は大径部11aの内壁と当接するようになっている。そのため、ノズル部33を大径部11aの内部に取り付ける際には、大径部11aの中心軸とノズル部33の中心軸とが合うようになっている。この様に、ノズル部33を水栓用発電機1(大径部11a)に取り付ける際、大径部11aの内壁に第1のノズル筐体部35の径外方向の端面(外周面)を当接させることができるので、水栓用発電機1(筒部11)に対するノズル部33の位置を確実に規定することができる。そのため、ノズル部33がずれた状態で取り付けられることで発電効率が低下するという不具合を解決することができる。その結果、水栓用発電機1のようなコンパクト且つ高性能な水栓用発電機において、高い発電効率を維持することができる。
また、突出部34c、溝部35dは、噴射孔35cから動翼羽根部18aの回転方向側にずれた位置に配置されている。そのため、噴射孔35cに流入する水の流れが邪魔されることを極力抑えることができる。また、噴射孔35cに水を案内する溝としての機能と、噴射孔35cに入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁としての機能と、を有するものとすることができる。
【0106】
なお、分割構成とされたノズル部33の上流側の面(第2のノズル筐体部34の上流側の面)に分流部34dを設ける場合(図11の場合)を例示したが、一体構成とされたノズル部12(図9の場合)の上流側の面に分流部34dを設けるようにすることもできる。この場合、分流部34dと突出部12cとの配置関係は、前述した分流部34dと突出部34cとの配置関係と同様とすることができる。
【0107】
次に、蓋部20についてさらに説明をする。
動翼羽根部18aの上流側の端部が開放されている場合には、噴射孔12aから噴出され、動翼羽根部18aの径内方向へと流れる水が、ノズル部12の上流側の内壁(天井部分)と動翼羽根部18aとの間の隙間に入り込んでよどみを発生させるおそれがある。そして、この様なよどみが発生すると動翼羽根部18aに水力を伝える水流に対し、それを邪魔するような水の流れが発生してしまうことになる。その結果、効率的に水力エネルギーを動翼羽根部18aに伝えることができないため、発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0108】
またさらに、ノズル部12の上流側の内壁(天井部分)は筒部11に対して固定されているため、動翼羽根部18aが回転している際にもノズル部12の上流側の内壁(天井部分)は静止している。そして、動翼羽根部18aに当たった水が上流側に逃げようとした際に、静止物であるノズル部12の上流側の内壁(天井部分)に衝突すると水力エネルギーが過度に奪われてしまうことになる。この場合、水力エネルギーが過度に奪われた水により動翼羽根部18aが引き続き回転されることになるため回転効率の低下、ひいてはそれに伴う発電効率の低下を引き起こすことになる。
【0109】
そのため、本実施の形態においては、動翼羽根部18aの上流側を覆うようにして蓋部20を設けている。この様にすれば、噴射孔12aから噴出された水がノズル部12の上流側の内壁(天井部分)と動翼羽根部18aとの間の隙間に入り込むことを防止することができる。また、噴射孔12aから噴出された水は、綺麗な流れのまま動翼流路18hを通過することができる。また、動翼流路18hを流れる水の量が減少することを抑制することができる。そのため、発電効率を向上させることができる。
また、蓋部20は動翼羽根部18aと一体に回転するので、動翼流路18hを流れる水が蓋部20に当たったとしても水力エネルギーが過度に奪われることがない。その結果、発電効率を更に向上させることができる。
【0110】
図12は、他の実施形態に係る蓋部を例示するための模式図である。
蓋部36は、円板状を呈し、その中央部分には上流側及び下流側に向けて突出する軸保持部36aが設けられている。また、軸保持部36aの中央部分には回転軸19を挿通するための孔が設けられている。軸保持部36aの下流側部分は、挿通部18fの上流側端部に設けられた段付き部に圧入されるようになっている。また、蓋部36は、蓋部36の下流側の面に設けられた下流側に向かって突出する円環状の方向変換部36bを備えている。そして、方向変換部36bは、流れる水を下流側に誘導するための面36b1を下流側の端部に備えている。
なお、図12に例示をした面36b1は、テーパ面であるが、流れる水を下流側に誘導することができるような面であればよい。例えば、「R面」などとすることができる。
【0111】
ここで、噴射孔12aから噴出された水は動翼羽根部18aの径内方向へと流れる。この場合、動翼羽根部18aに水力を伝えた後の水がすみやかに下流側に流れるようにすることが好ましい。しかしながら、水の流れ方向が回転中心軸に対して略垂直な方向へと変換され、さらに後述する第2の蓋部(保持板部18c)により動翼羽根部18aの径内方向へと誘導された水は、動翼部18の中心付近で直に下流側に流れずによどむおそれがある。そして、動翼流路18h内で水がよどむと、噴射孔12aから噴射された水の流れが阻害されるので発電効率が低下するおそれがある。
【0112】
そのため、本実施の形態においては、蓋部36の下流側の面に下流側に向かって突出する円環状の方向変換部36bを設けるようにしている。そして、方向変換部36bの端部には、動翼流路18h内を流れる水の流れ方向が下流側を向くように変換させる面36bを設けるようにしている。
【0113】
この様な面36b1を有する方向変換部36bを設けるようにすれば、動翼羽根部18aに水力を伝えた後の水をスムーズに下流側に流すようにすることができる。そのため、発電効率を向上させることができる。
また、方向変換部36bは回転する蓋部36に設けられるので、単に板状のものを設けるようにすれば乱流が生じるおそれがある。そのため、本実施の形態においては、方向変換部36bを円環状とすることで乱流の発生を抑制するようにしている。
また、蓋部36に「動翼流路18h内を流れる水の流れ方向が下流側を向くように変換させる」という機能を兼用させることができるので、無駄な部材等を追加することなく「コンパクト」な構成を実現できる。
【0114】
また、動翼羽根部18aの径内方向へと水を誘導する後述する第2の蓋部(保持板部18c)と、動翼流路18h内を流れる水の流れ方向が下流側に向くように変換させる面36b1とによるそれぞれの流れが干渉すると、水の流れによどみが生じて発電効率が低下するおそれがある。そのため、第2の蓋部(保持板部18c)と方向変換部36b(面36b1)とが、軸方向視において重ならないように配置されている。すなわち、方向変換部36bは、軸方向視において第2の蓋部(保持板部18c)と重ならないように配置されている。
その様にすれば、水の流れのよどみを防止することができるので発電効率の低下を抑制することができる。
【0115】
また、高効率な水栓用発電機とするためには、回転軸19の位置決めが非常に重要となる。また、回転軸19のふらつきは、発電効率にも悪影響を及ぼす。
そのため、本実施の形態においては、動翼部18の回転中心軸に設けられた動翼部18と一体に回転する回転軸19の固定と位置決めとを行うかしめ部を蓋部36に設けるようにしている。この場合、軸保持部36aの下流側部分をかしめ部として兼用させるようにすることができる。すなわち、蓋部36は、動翼部18の回転中心軸に設けられた動翼部と一体に回転する回転軸19の固定と位置決めとを行うかしめ部を有するものとすることができる。
なお、前述した蓋部20にもかしめ部を設けるようにすることができる。
【0116】
かしめ部を設けるようにすれば、回転軸19と蓋部36とを確実に固定することができるので、回転軸19と動翼部18とは一体に回転し、回転中心軸がズレることがない。また、発電効率も低下することがない。さらに、蓋部36によってノズル部12や流路に対して好適な位置に回転軸19が位置決めされるので、より高い発電効率を得ることができる。また、これらの機能(固定・位置決め)を蓋部36に兼用させることにより、「コンパクト」な構成を実現することができる。
【0117】
次に、噴射孔についてさらに説明をする。
図3に示すように、動翼部18に蓋部20を設けた場合、動翼羽根部18aの上流側が蓋部20によって覆われることになるので、水は下流に流れようとする。そのため、動翼羽根部18aに水が当たった後、水がすぐに下流側に流れてしまうおそれがある。この様になると、動翼羽根部18aに水力を充分に伝えることができず、発電効率が低下するおそれがある。
【0118】
図13は、傾斜させて設けられた噴射孔を例示するための模式図である。
図13に示すように、ノズル部37には、動翼羽根部18aに対する噴射方向が上流側を向くように傾斜させた噴射孔37aが設けられている。
動翼羽根部18aに対する噴射方向が上流側を向くように傾斜させて設けられた噴射孔37aから噴射された水は、蓋部20に沿うようにして動翼羽根部18aの径内方向へと流れる。そのため、すぐに下流側に流出することが抑制されるので、水力を充分に動翼羽根部18aに伝えることができる。その結果、発電効率を向上させることができる。
【0119】
次に、保持板部18cについてさらに説明をする。
図3に示すように、動翼部18に蓋部20を設けた場合、動翼羽根部18aの上流側が蓋部20によって覆われることになるので、水は下流に流れようとする。そのため、動翼羽根部18aに水が当たった後、水がすぐに下流側に流れてしまうおそれがある。この様になると、動翼羽根部18aに水力を充分に伝えることができず、発電効率が低下するおそれがある。
【0120】
図14は、保持板部を例示するための模式図である。
動翼羽根部18aの下流側の端部には、動翼羽根部18aを保持する保持板部18cが設けられている。また、保持板部18cは動翼羽根部18aの外周近傍に設けられている。保持板部18cは、動翼羽根部18aを保持するとともに動翼流路18hの底板、すなわち下蓋部(第2の蓋部)の役割をも果たす。つまり、動翼羽根部18aの下流側端部の外周近傍に噴射孔12aから噴射された水を動翼部18の中心に向けて誘導するための第2の蓋部(保持板部18c)が設けられている。
【0121】
この様な第2の蓋部(保持板部18c)を設けるものとすれば、噴射孔12aから噴射された水を動翼部18の中心に向けてある程度の距離誘導することができる。そのため、水力を充分に動翼羽根部18aに伝えることができるので、発電効率を向上させることができる。
【0122】
また、第2の蓋部(保持板部18c)は、蓋部20と同様に動翼部18に設けられるので、第2の蓋部(保持板部18c)、蓋部20、動翼羽根部18aを一体に回転させることができる。そのため、噴射された水が第2の蓋部(保持板部18c)や蓋部20に当たったとしてもこれらは相対的に静止しているため過度に水力エネルギーが奪われることがない。また、動翼流路18hの底板となる部材を別途設ける必要もないので、「コンパクト」な構成を実現できる。
【0123】
次に、水栓用発電機1の作用について例示をする。
封止部15に接続された図示しない配管などから筒部11内に流れ込んだ流水は、ノズル部12により径外方向に拡散される。そして、図3に表したように、回転中心軸(回転軸19)に対して平行な方向から流れてくる水は、回転中心軸に対して略垂直な平面内において、動翼羽根部18aの径外方向から動翼羽根部18aに向けて噴出される。
動翼羽根部18aに向けて噴出された水は、動翼羽根部18aの入口側から出口側に向けて動翼羽根部18aに沿って動翼流路18h内を流れ、孔部18d、孔部18e、小径部11cを通過して水栓用発電機1の外部に排出される。
【0124】
この際、前述した侵入防止手段の作用により回転軸19と軸支持部22aの摺動面との間に錆などのゴミが侵入することが防止される。そのため、軸受け部などの損耗という発電性能を低下させる不具合を防ぎ、高効率かつコンパクトな水栓用発電機を実現することができる。
また、前述した蓋部の作用により、噴射孔12aから噴出された水がノズル部12の上流側の内壁(天井部分)と動翼羽根部18aとの間の隙間に入り込むことが防止される。また、噴射孔12aから噴出された水は、綺麗な流れのまま動翼流路18hを通過することができる。また、動翼流路18hを流れる水の量が減少することを抑制することができる。そのため、水力エネルギーを効率よく回転エネルギーに変換することができる。
また、前述したようにノズル部に設けられた突出部12cの径外方向の端面(外周面)が大径部11aの内壁と当接するようになっているので、水栓用発電機1に対するノズル部12の位置決め(中心軸合わせ)を確実に行うことができる。そのため、噴射孔12aと動翼羽根部18a、あるいは噴射孔12aと流路の中心が合った状態で噴射が行われるので、動翼羽根部18aに適切な力がかかり発電効率を向上させることができる。
【0125】
一方、動翼羽根部18aに向けて噴出された水の力により動翼部18が回転すると、これに固定されたマグネット14も回転する。マグネット14の径外方向の端面(外周面)は、N極とS極とが周方向(回転方向)に沿って交互に着磁されているため、マグネット14が回転すると、マグネット15の径外方向の端面(外周面)に対向しているインダクタ25a、25b、26a及びこれらに連接する第1ヨーク25、第2ヨーク26の極性が変化していく。これにより、コイル27に対する鎖交磁束の向きが変化し、コイル27に起電力が生じて発電が行われる。
【符号の説明】
【0126】
1 水栓用発電機、11 筒部、11a 大径部、11b 中径部、11c 小径部、12 ノズル部、12a 噴射孔、12c 突出部、12e 溝部、13 ロータ、14 マグネット、15 封止部、16 ステータ、17 ステータケース、18 動翼部、18a 動翼羽根部、18b 動翼ボス部、18c 保持板部、18h 動翼流路、19 回転軸、21 保持部、22 軸受け部、22a 軸支持部、22b 軸受け凹部、22c リブ、22d 軸受け凹部、29 水膜生成部、30c 第1の水膜保持部、30d 凹部、31e 第2の水膜保持部、33 ノズル部、34 第2のノズル筐体部、34c 突出部、34c1 面、34d 分流部、34d1 面、35 第1のノズル筐体部、35a ノズル溝、35c 噴射孔、35d 溝部、36 蓋部、36b 方向変換部、36b1 面、37 ノズル部、37a 噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水流入口と、給水流出口とを有し、内部に給水流路が形成された筒部と、
前記給水流路に対して略平行な回転中心軸を有し、前記回転中心軸のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられた動翼羽根部を有する動翼部と、
前記動翼部と一体に回転可能に設けられたマグネットと、
前記マグネットの回転により起電力を生ずるコイルと、
前記回転中心軸に対して略平行な方向から流れてくる水を、前記回転中心軸に対して略垂直な平面内において、前記動翼羽根部の径外方向から前記動翼羽根部に向けて噴出する複数の噴射孔を有するノズル部と、
を備え、
前記ノズル部は、径外方向に突出し前記筒部の内壁と当接する複数の突出部を備えたことを特徴とする水栓用発電機。
【請求項2】
前記突出部は、前記突出部同士の間が前記噴射孔に水を案内する溝部となり、前記突出部が前記噴射孔に入水せずに通過しようとする水を押しとどめる壁となるように前記噴射孔から前記動翼部の回転方向側にずれた位置に配置されたこと、を特徴とする請求項1記載の水栓用発電機。
【請求項3】
前記ノズル部は、上流側の端面に開口する段付き孔を中央部分に備えた第1のノズル筐体部と、前記第1のノズル筐体部の段付き孔の開口を塞ぐように設けられた第2のノズル筐体部と、を有し、
前記噴射孔は、前記第1のノズル筐体部と前記第2のノズル筐体部とを当接させることで形成されたこと、を特徴とする請求項1記載の水栓用発電機。
【請求項4】
前記筒部の給水流入口に設けられた封止部を備え、
前記ノズル部は、前記ノズル部の軸方向の位置を規制するために前記突出部の上流側の端面を上流側にさらに突出させて、前記突出部の上流側の端面と、前記封止部と、を当接させたこと、を特徴とする請求項1記載の水栓用発電機。
【請求項5】
前記ノズル部は、上流側の面に設けられた流れてきた水を前記突出部同士の間の前記溝部へ分流するための分流部を有したこと、を特徴とする請求項2記載の水栓用発電機。
【請求項6】
前記分流部は、前記分流部の前記回転中心軸に対して平行な方向の面と、前記突出部の前記回転中心軸に対して平行な方向の面とが、重なるように配置されたこと、を特徴とする請求項5記載の水栓用発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−160581(P2011−160581A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21089(P2010−21089)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】