説明

水栓装置

【課題】操作性が良好で、平常時は操作キーで隠されている部分の清掃が容易な水栓装置を提供する。
【解決手段】水栓装置1は、流路を開閉する2つの開閉弁ユニットと、これらを覆うカバー9とを備え、開閉弁ユニットの上部には、それぞれに内蔵された開閉弁を作動させるための操作部7a,8aが設けられている。カバー9は、水栓装置1の正面に位置する正面カバー9aと、その左右に位置する側面カバーとで構成されている。また、開閉弁ユニットの操作部7a,8aを押圧して開閉操作を行うため、正面カバー9aに開設された2つの開口部9s,9tにそれぞれ操作キー2,3が起伏可能に軸支されている。操作キー2に設けられたストッパを弾性係止片から離脱させ、操作キー3のアームに設けられたストッパをアーム挿通口から離脱させると、操作キー2,3を大きく開くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室などに設置される水栓装置、特に、押圧操作により吐水、止水の切り替えを行うことのできる水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室や洗面化粧台などに設置される水栓装置としては、従来、様々な方式のものが開発されてきたが、近年は、押圧操作をすることによって吐水、止水の切り替えを行う機能を備えた水栓装置の採用が増加している(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載された水栓装置(吐水装置)は、支軸を中心にシーソー状に揺動するレバーを備え、このレバーを押圧操作すると、ダイヤフラム式の開閉弁の弁体が開位置、閉位置に交互に移動し、これによって吐水状態と止水状態との切り替えを行うものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−169801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された水栓装置(吐水装置)の場合、操作レバーの下側に水が流れ込んで、水垢などの汚れが溜まり易いので、清掃をしないまま長期間経過すると、不衛生な状態になったり、動作トラブルが生じたりするおそれがある。また、これらの汚れを除去するには、操作レバー周辺の操作パネル全体を取り外す必要があるが、これらの作業は一般人にとって面倒で困難な作業であり、操作パネルの着脱に伴う取付けミスなどが生じる可能性もある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、操作性が良好で、平常時は操作キーで隠されている部分の清掃が容易な水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、操作キーの押圧操作により吐水状態と止水状態とを交互に切り替える機能を有する水栓装置であって、流路を開閉する開閉弁ユニットと、前記開閉弁ユニットの少なくとも一部を覆うカバーと、前記開閉弁ユニットの開閉操作を行うため前記カバーに開設された開口部に起伏可能に軸支された操作キーと、前記操作キーの起伏角度を所定の範囲内に規制する設定・解除可能な規制手段とを備え、前記規制手段を解除すると前記操作キーが前記所定の範囲を超えて起立可能であることを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、通常は、その起伏角度が規制手段により所定の範囲内に規制された状態にある操作キーを押圧操作するだけで操作キーが一定角度範囲内で起伏して、吐水状態と止水状態とが交互に切り替わるため、操作性は良好である。ここで言う「所定の範囲」とは、開閉弁ユニットの開閉操作を実施可能な操作キーの移動範囲であり、操作キーの起立角度を極力小さくするように規制されていることが望ましい。また、規制手段を解除すれば、操作キーは前記所定の範囲を超えて起立させることが可能となるため、これによって、平常時は操作キーで隠されている部分の清掃が容易となる。なお、前記所定の範囲を超えたときの操作キーの起立角度は、例えば、開口部に手指が挿入可能な角度とすることができるが、操作キーの閉止状態から少なくとも70度程度とすることが望ましい。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記開閉弁ユニットに対する前記カバーの固定手段を、前記操作キーで覆われる位置に設けたことを特徴とする。このような構成とすれば、通常の開閉操作の範囲内においては、開閉弁ユニットに対するカバーの固定手段(例えば、ネジ)が外から見えなくなるため、外観品位が向上する。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記操作キーの周囲に位置する前記カバーの露出面に、前記操作キーの露出面より突出した保護突起を設けたことを特徴とする。このような構成とすれば、誤ってシャワーヘッドが落下したり、地震などの際にシャンプーボトルなどの物品が落下したりすることがあっても、保護突起により、物品が操作キーに当接するのを回避することができるため、誤動作による吐水を防止することができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記開閉弁ユニットの下方に位置する前記カバーの一部に、開閉可能な開口部を設けたことを特徴とする。このような構成とすれば、カバーの内部の止水栓などを目視確認したり、手や道具をカバー内に差し込んだりすることが可能となるため、開閉弁ユニットに対する清掃作業性やメンテナンス性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
操作キーの押圧操作により吐水状態と止水状態とを交互に切り替える機能を有する水栓装置において、流路を開閉する開閉弁ユニットと、前記開閉弁ユニットを覆うカバーと、前記開閉弁ユニットの開閉操作を行うため前記カバーに開設された開口部に起伏可能に軸支された操作キーと、前記操作キーの起伏角度を所定の範囲内に規制する設定・解除可能な規制手段とを備え、前記規制手段を解除すると前記操作キーが前記所定の範囲を超えて起立可能であることにより、操作性は良好であり、平常時は操作キーで隠されている部分の清掃も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態である水栓装置について説明する。図1は本発明の実施の形態である水栓装置を浴室に設置した状態を示す斜視図、図2は図1に示す水栓装置の斜視図、図3は図2に示す水栓装置の分解斜視図、図4は図2に示す水栓装置の一部切欠側面図、図5は図4におけるA−A線断面図、図6は図4におけるB−B線断面図である。
【0013】
本実施形態においては、一例として、図1に示すように、水栓装置1を浴室の壁面Wに設置している。水栓装置1の正面部分には2つの操作キー2,3が上下二段に配置され、これらの操作キー2,3の上方側面には温度調整用ダイヤル4が配置されている。操作キー2を押圧操作するとカラン5からの吐水、止水が交互に繰り返され、操作キー3を押圧操作するとシャワー6からの吐水、止水が交互に繰り返される。そして、温度調整用ダイヤル4を回転操作することにより、カラン5およびシャワー6から吐水される湯水の温度を設定することができる。なお、本実施形態においては、吐水、止水と表現しているが、これらの用語は吐出、停止する対象を水に限定するものではなく、水から湯までを含む広い意味をもっている。
【0014】
図2,図3に示すように、水栓装置1は、流路を開閉する2つの開閉弁ユニット7,8と、これらの開閉弁ユニット7,8を覆うカバー9とを備えている。開閉弁ユニット7,8はパイロット式開閉弁装置と呼ばれるものであり、それぞれの上部には、開閉ユニット7,8に内蔵された開閉弁(図示せず)を作動させるための操作部7a,8aが設けられている。図3に示すように、カバー9は、水栓装置1の正面部分に位置する正面カバー9aと、その左右部分に位置する側面カバー9b,9cとで構成されている。
【0015】
また、開閉弁ユニット7,8の操作部7a,8aを押圧して開閉操作を行うために、正面カバー9aに開設された2つの開口部9s,9tにそれぞれ操作キー2,3が起伏可能に軸支されている。なお、本実施形態においては開閉弁ユニット7,8としてパイロット式開閉弁装置を用いているが、これに限定するものではないので、同様の機能を備えた他の方式の開閉弁ユニットを使用することも可能である。
【0016】
図4〜図6に示すように、これらの操作キー2,3はそれぞれ支軸2a,3aによって起伏可能に軸支されている。操作キー2はその左右両端付近に突設された支軸2aと同軸上に配置されたスプリング2sによって倒伏方向に付勢されており、操作キー2の起伏角度を所定の範囲内(本実施形態では操作キー2の開閉操作の範囲内)に規制するための設定・解除可能な係止手段として、操作キー2の下面には、支軸2aと略同軸上に位置するストッパ2bが下方に向かって突設され、このストッパ2bが係脱可能な弾性係止片10が開口部9s内に設けられている。
【0017】
また、操作キー3は、その左右幅と同程度の長さの支軸3aに軸支されているが、操作キー3の下面の左右両端付近に設けられたアーム3mを介して支軸3aに軸支され、支軸3aと同軸に配置されたスプリング3sによって倒伏方向に付勢されている。これらのアーム3mはそれぞれ、正面カバー9aの内壁部分に開設された2つのアーム挿通口9mを通して支軸3aに軸支されている。そして、操作キー3の起伏角度を一定の開閉操作の範囲内に規制するための設定・解除可能な係止手段として、一方のアーム3mの側面カバー9c側の面に、アーム挿通口9mの周縁部に係脱可能なストッパ3bが突設されている。
【0018】
平常時、操作キー2,3の起伏角度は、それぞれストッパ2b,3bによって開閉操作の範囲内に規制された状態にあるため、操作キー2,3を押圧操作すると、操作キー2,3が前記開閉操作の範囲内で倒伏、起立し、それぞれの下面に設けられた突片2c,3cが操作部7a,8aを押圧することによって開閉弁ユニット7,8を作動させる。このように、操作キー2,3を押圧操作するだけで、カラン5、シャワー6はそれぞれ吐水状態と止水状態とに交互に切り替わるため、操作性は良好である。
【0019】
また、図2,図4に示すように、水栓装置1においては、操作キー2,3の露出面と、操作キー2,3の周囲に位置する正面カバー9aの露出面とが略同一面をなすように形成している。このため、カバー9aと操作キー2,3とは一体感が高く、凹凸感も軽減されるため、外観品位が優れている。
【0020】
次に、図7〜図10を参照して、前述した開閉弁ユニット7,8について説明する。なお、開閉弁ユニット7,8は同一構造であるため、ここでは、開閉弁ユニット7について説明する。図7は図1に示す水栓装置を構成する開閉弁ユニットの基本構造を示す概略図、図8は止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図、図9は吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図、図10は開閉弁ユニットを構成するパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す図である。
【0021】
図7に示すように、開閉弁ユニット7は、使用者がカラン5用の操作キー2を押すことにより下方に押下される操作部7aと、操作部7aにその基端が結合された押し棒38と、この押し棒38の先端に設けられたパイロット弁40とを備え、押し棒38の先端(下端)とパイロット弁40との間には緩衝手段であるコイルばね42が設けられている。
【0022】
開閉弁ユニット7は、パイロット弁40の下方に、パイロット弁口(圧力開放穴)44を備え、パイロット弁40がこのパイロット弁口44に当接および解離するダイヤフラム式の主弁46と、この主弁46の背面に形成され、押し棒38、パイロット弁40およびコイルばね42を収納する圧力室48を形成するためのハウジング50と、主弁46の表面が着座および離座する弁座52とを備えている。ハウジング50の押し棒38が挿通される部分には、シール部材54が設けられている。さらに、主弁46の外周側には、小穴(一次圧流入口)56が形成されている。
【0023】
次に、開閉弁ユニット7の基本動作について説明する。開閉弁ユニット7においては、圧力室48内に設けられたパイロット弁40を、主弁46のパイロット弁口44に当接および解離させることで、パイロット弁40を開閉し、止水状態と吐水状態とを切り替えるようになっている。
【0024】
吐水状態から止水状態に切り替えるときは、押し棒38によりパイロット弁40をパイロット弁口44に当接する方向に押さなければならない。このとき、押し棒38は、その断面積に相当する面積に作用する水圧により上向きの力を受け、さらに、シール部材54による摺動摩擦抵抗があり、これらに抗して操作部7aを押す必要があるが、この操作力は比較的小さな値である。
【0025】
次に、パイロット弁40が主弁46のパイロット弁口44に当接すると、一次側通水路の一次圧の水が小穴56を通って圧力室48内に流入し、これに伴い、主弁46が遅い速度で、弁座52に向かって移動する。これにより、主弁46が弁座52に着座し、止水状態に切り替わる(図8参照)。
【0026】
さらに、開閉弁ユニット7では、緩衝手段であるコイルばね42を、押し棒38とパイロット弁40との間、即ち、圧力室48内に設けたので、このコイルばね42には、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接するまでは力は作用せず、さらに、詳細は後述するように、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接した以降も小さな力を作用させればよい。
【0027】
一方、止水状態から吐水状態に切り替えるときは、操作部7aを押せば、後述するパイロット弁切替保持機構62および付勢用ばね69により、パイロット弁40が主弁46のパイロット弁口(圧力開放穴)44から解離し、それにより、圧力室48が開放され、主弁46が弁座52から解座し、吐水状態となる(図9参照)。
【0028】
なお、開閉弁ユニット7では、前述したように、主弁46の移動速度を意図的に小さくしているが、これは主弁46の閉止時のウォーターハンマーの発生を抑えるためである。即ち、主弁46に設けられた小穴56から圧力室48に一次側の水が流入することで圧力室48内が一次圧の水で満たされ、主弁46が弁座52の方向へ移動するが、小穴56を、通常、非常に小さな径としているので、圧力室48への水の流入速度が抑えられ、これにより、主弁46の移動速度(閉止速度)を抑え、主弁閉止時のウォーターハンマーの発生を抑えるようにしている。
【0029】
次に、図8,図9を参照し、開閉弁ユニット7について詳しく説明する。前述したように、図8は止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図であり、図9は吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。
【0030】
図8に示す開閉弁ユニット7は、既述したように、操作部7a、押し棒38、パイロット弁40、緩衝手段であるコイルばね42、パイロット弁口(圧力開放穴)44を備えたダイヤフラム式の主弁46、圧力室48を形成するためのハウジング50(50a,50b)、弁座52、シール部材54、小穴56を備えている。
【0031】
前述した小穴(一次圧流入口)56には、クリーニング用のピン58が挿入されており、小穴56の一次圧流入口の通水面積を絞っている。これにより、前述したように、一次圧の圧力室48への流入速度を抑制することで主弁46の閉止速度を緩やかにし、閉止時に発生するウォーターハンマーを低減できるようにしている。
【0032】
圧力室48を形成するハウジング50は、主にパイロット弁40が配置された空間を取り囲む第1ハウジング50aと、主弁46の背面側の空間を取り囲む第2ハウジング50bとから構成されている。また、最外周側には、操作部7a、第1ハウジング50a、第2ハウジング50b、弁座52の4つの部品を組み付けることにより、開閉弁ユニット7を組み立てるための組付ナット60が配置されている。
【0033】
さらに、開閉弁ユニット7は、パイロット弁切替保持機構62を備えている。このパイロット弁切替保持機構62は、前述した、操作キー2に連動しており、操作キー2を押すたびに、即ち、操作キー2で操作部7aが押されるたびに、パイロット弁40の吐水状態位置と止水状態位置の切り替えを繰り返すとともに、パイロット弁40を吐水状態位置または止水状態位置に保持する機能を有する。
【0034】
このパイロット弁切替保持機構62は、一般にノック式ボールペンのノック機構などで使用されている機構でもよいが、本実施形態では、図8,図9に示すように、操作部7aと連動して移動するピン64と、第1ハウジング50aの外周面に形成されピン64の下方側が弾性変形しながら、これに沿って移動する逆ハート形状のカム溝66と、止水状態(閉状態)でピン64を保持する保持用突起68とによって形成されたハートカム機構を採用している。
【0035】
ここで、図10により、パイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)62について詳しく説明する。図10は、開閉弁ユニット7に採用されているパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す拡大図である。
【0036】
図10に示すように、使用者が操作キー2を押圧操作するたびに、ピン64の下端部64aは、a位置(止水状態)、b位置(押込み状態)、c位置(吐水位置)、d位置(押込み状態)の順序に従って移動する。a位置(止水状態)においては、ピン64の下端部64aが保持用突起68により保持されており、これによって止水状態が保たれている。次に、止水状態から吐水状態に吐水操作すると、ピン64の下端部64aは、カム溝66の形状に沿って移動し、b位置(押込み状態)まで下がり、その後、c位置(吐水状態)まで移動し、この位置で吐水状態が保たれる。次に、吐水状態から止水状態に止水操作すると、ピン64の下端部64aはc位置(吐水状態)からカム溝66の形状に沿って移動し、d位置(押込み状態)まで下がり、その後、a位置(吐水状態)まで移動し、この位置で、止水状態が保たれる。
【0037】
このように、パイロット弁切替保持機構62がハートカム機構であるため、圧力室48をシールするシール部材54に、押し棒38の往復運動(上下運動)のみが作用し、前述したノック機構のように、押し棒38の回転運度が作用しないため、シール部材54への負担が少なくなり、高い信頼性を得ることができる。
【0038】
また、図8,図9に示すように、付勢用ばね69により止水状態から吐水状態に切替操作する際、即ち、操作キー2が押圧された際、パイロット弁切替保持機構62による止水状態位置における保持が解除され、操作部7aが上方へ付勢され、パイロット弁40がパイロット弁口(圧力開放穴)44から解離し、容易に吐水状態に切り替えることができるようになっている。
【0039】
次に、押し棒38とパイロット弁40の結合部について説明する。図8,図9に示すように、押し棒38の先端(下端)であって圧力室48の内部には、前述したように、押し棒38のストローク方向の移動距離(変位量)を吸収する緩衝手段であるコイルばね42が設けられている。押し棒38の先端(下端)に大径部38aが形成され、さらに、パイロット弁40の先端には、パッキン40aが装着されている。パイロット弁40は、中空部40bを有し、この中空部40bにコイルばね42が内蔵されている。
【0040】
パイロット弁40の上側には、押し棒38が摺動可能に挿入される挿入穴40cが形成されている。パイロット弁40は、弾性変形可能な樹脂材料で形成されており、組立て時は、パイロット弁40を変形させながら、押し棒38を挿入穴40cに挿入し、中空部40b内に押し棒38の大径部38aを収納するようにしている。ここで、コイルばね42は押し棒38とパイロット弁40とを引き離す方向に付勢している。
【0041】
これにより、止水状態から吐水状態に切り替える吐水操作時には、コイルばね42の付勢力により押し棒38の先端の大径部38aとパイロット弁40の上側とが係合し、それによって、パイロット弁40は押し棒38の動きと連動し、主弁46に形成されたパイロット弁口44から離座する(図9参照)。
【0042】
一方、吐水状態から止水状態に切り替える止水操作時には、パイロット弁40が主弁46に形成されたパイロット弁口44に当接し、押し棒38の大径部38aはパイロット弁40の上側から離れて下降するが、押し棒38のストローク方向の移動距離(変位量)はコイルばね42によって吸収される(図8参照)。
【0043】
このように、止水操作時においてパイロット弁40がパイロット弁口44に当接するまでの過程と、パイロット弁40がパイロット弁口44に当接した以降の過程との両方において、操作力に格差(ムラ)がなくなり、好ましい操作感が得られる。
【0044】
ここで、図11〜図13を参照して、操作キー2,3の開放機構について説明する。図11は水栓装置1を示す側面図、図12は水栓装置1の斜視図、図13は図12に示す水栓装置の一部切欠側面図である。前述した図4〜図6および図13に示すように、操作キー2に設けられているストッパ2bを弾性係止片10から離脱させ、操作キー3のアーム3mに設けられているストッパ3bをアーム挿通口9mから離脱させると、それぞれ係止手段が解除された状態となり、図12に示すように、それぞれの開閉操作の範囲を超えて操作キー2,3を起立させ、開口部9s,9tを大きく開くことができる。
【0045】
即ち、係止手段を解除すれば、操作キー2,3は、開閉操作時における一定の操作角度範囲を超えて大きく起立させることができ、これによって開口部9s,9tに手指を挿入できるようになるため、平常時は操作キー2,3で隠されている部分を容易に清掃することができる。この場合、操作キー3はアーム3mを介して支軸3aに軸支されているため、操作キー2よりも大きく開くことができる。平常時は操作キー2,3で隠されている部分には、隙間から流入した湯水によって湯垢が発生していることが多いが、操作キー2,3を開閉操作の範囲より大きく起立させることによって、このような部分の清掃を容易に行うことができるため、衛生的である。
【0046】
操作キー2,3を、一定の開閉操作の範囲を超えて大きく起立させたときの起立角度については特に限定するものではないが、本実施形態においては、操作キー2,3の起立角度をそれぞれの閉止状態から少なくとも70度となるように設定したところ、開口部9s,9tに対して手指をスムーズに挿入することが可能であり、容易に清掃を行うことができた。
【0047】
また、図12,図13に示すような状態に操作キー2,3を起立させたときに外から見える位置に、開閉弁ユニット7,8に対するカバー9(正面カバー9a)の固定手段であるネジ13を配置している。ネジ13はカバー9(正面カバー9a)を金属プレート15に固定している。また、これらのネジ13は、操作キー2,3が開閉操作の範囲内にあるときは、それぞれ操作キー2,3で覆われる位置に設けられている。このような構成とすれば、通常の使用状態においては、開閉弁ユニット7,8に対するカバー9の固定手段であるネジ13が外から見えることがなく、優れた外観品位を呈する。
【0048】
また、図11に示すように、操作キー2,3の周囲に位置する正面カバー9aの露出面に、操作キー2,3の露出面より突出した複数の保護突起12を設けている。したがって、誤ってシャワー6のヘッド(図1参照)が落下したり、地震などの際にシャンプーボトルなどの物品が落下したりすることがあっても、これらの保護突起12により、物品が操作キー2,3に当接するのを回避することができるため、誤動作による吐水を防止することができる。
【0049】
また、図14に示すように、水栓装置1においては、開閉弁ユニット7,8(図13参照)の下方に位置する正面カバー9aの一部に、開閉蓋9dによって開閉可能な開口部14を設けている。開閉蓋9dの下縁部分には複数の係止用爪9eが設けられており、正面カバー9aの開口部14に対して開閉蓋9dを水平に装入すると、係止用爪9eが撓んで正面カバー9eの突起(図示せず)に係合して取り付けられ、逆に、開閉蓋9dを水平に引っ張れば係止用爪9eが撓んで正面カバー9aの突起(図示せず)から離脱して開閉蓋9dを取り外すことができる。
【0050】
このように、開閉蓋9dは開口部14に着脱可能であるため、必要に応じて、正面カバー9aから開閉蓋9dを取り外せば、カバー9の内部の止水栓などを目視確認したり、手や道具をカバー9内に差し込んだりすることが可能であり、開閉弁ユニット7,8に対する清掃作業性やメンテナンス性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態である水栓装置を浴室に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水栓装置の斜視図である。
【図3】図2に示す水栓装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示す水栓装置の一部切欠側面図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【図7】図1に示す水栓装置を構成する開閉弁ユニットの基本構造を示す概略図である。
【図8】止水状態(閉状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。
【図9】吐水状態(開状態)にある開閉弁ユニットを示す断面図である。
【図10】開閉弁ユニットを構成するパイロット弁切替保持機構(ハートカム機構)を示す図である。
【図11】図2に示す水栓装置の側面図である。
【図12】図2に示す水栓装置の斜視図である。
【図13】図12に示す水栓装置の一部切欠側面図である。
【図14】図2に示す水栓装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 水栓装置
2,3 操作キー
2a,3a 支軸
2b,3b ストッパ
2c,3c 突片
2s,3s スプリング
3m アーム
4 温度調整用ダイヤル
5 カラン
6 シャワー
7,8 開閉弁ユニット
7a,8a 操作部
9 カバー
9a 正面カバー
9b,9c 側面カバー
9d 開閉蓋
9e 係止用爪
9m アーム挿通口
9s,9t,14 開口部
10 弾性係止片
12 保護突起
13 ネジ
38 押し棒
38a 大径部
40 パイロット弁
40a パッキン
40b 中空部
40c 挿入穴
42 コイルばね
44 パイロット弁口(圧力開放穴)
46 主弁
48 圧力室
50 ハウジング
50a 第1ハウジング
50b 第2ハウジング
52 弁座
54 シール部材
56 小穴(一次圧流入口)
58,64 ピン
60 組付ナット
62 パイロット弁切替保持機構
64a 下端部
66 カム溝
68 保持用突起
69 付勢用ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作キーの押圧操作により吐水状態と止水状態とを交互に切り替える機能を有する水栓装置であって、流路を開閉する開閉弁ユニットと、前記開閉弁ユニットの少なくとも一部を覆うカバーと、前記開閉弁ユニットの開閉操作を行うため前記カバーに開設された開口部に起伏可能に軸支された操作キーと、前記操作キーの起伏角度を所定の範囲内に規制する設定・解除可能な規制手段とを備え、前記規制手段を解除すると前記操作キーが前記所定の範囲を超えて起立可能であることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記開閉弁ユニットに対する前記カバーの固定手段を、前記操作キーで覆われる位置に設けた請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記操作キーの周囲に位置する前記カバーの露出面に、前記操作キーの露出面より突出した保護突起を設けた請求項1または2記載の水栓装置。
【請求項4】
前記開閉弁ユニットの下方に位置する前記カバーの一部に、開閉可能な開口部を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−16811(P2006−16811A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194119(P2004−194119)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】