説明

水栓装置

【課題】人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じたタイミングで吐水を開始する水栓装置を提供する。
【解決手段】吐水部と、受水部と、吐水部からの吐止水を切り替えるバルブ250と、電波を放射し、被検知体により反射した反射信号を受信するアンテナ112と、アンテナ112で受信した反射信号によって被検知体の有無を判断する検知部100と、検知部100から出力される検知信号に基づいて被検知体の速度を識別し、その結果に基づき前記バルブ250の開閉を制御する制御部200と、を備えた水栓装置であって、制御部200は被検知体の速度が第一の閾値より高い状態から前記第一の閾値以下の状態に変化した後、所定時間の間、第一の閾値よりも高い速度状態に変化しないことを識別すると、バルブ250を開動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関し、より具体的には、手洗い場やトイレ、キッチンなどに設けられ、マイクロ波などの電波センサを用いて被検知体を検知し、吐水を開始する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐水を開始する水栓装置としては、被検知体である人体が到達点に達したことを検知したら、吐水を開始するものがあった。
また、他の物体を誤検知しないために、人の手のみを検知できる領域に、センサの検知可能範囲を限定し、人の手が吐水口付近の到達点に達したら、吐水を開始するものがあった。
【0003】
マイクロ波などの送信波が被検知体に当たると反射波あるいは透過波を生じる。この反射波あるいは透過波を受信することにより、人体を検知することができ、水栓装置などに使用される。放射したマイクロ波の人体からの反射波を受信して、そのドップラー周波数信号のパワースペクトルを求め、そのピーク値と所定の閾値とを比較することにより、人体を検知する人体検知装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−80150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、身体や人の手などの被検知体が到達点に達したことを検知してから吐水を開始するのでは、吐水のタイミングが遅くなりやすいという問題があった。また、ドップラー周波数信号のパワースペクトルは、センサまでの距離と反射体の面積とに依存する。吐水口の下に挿入された手の掌の向きなどによっては十分な強度の反射波が得られず、挿入された手を確実に検知できない場合もあった。
【0005】
本発明は、人の手が吐水口の下に達する直前など、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、
吐水部と、
受水部と、
前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、
電波を放射し、被検知体により反射した反射信号を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した反射信号によって被検知体の有無を判断する検知部と、
前記検知部から出力される検知信号に基づいて被検知体の速度を識別し、その結果に基づき前記バルブの開閉を制御する制御部と、
を備えた水栓装置であって、
前記制御部は被検知体の速度が第一の閾値より高い状態から前記第一の閾値以下の状態に変化した後、
所定時間の間、前記第一の閾値よりも高い速度状態に変化しないことを識別すると、
前記バルブを開動作させることを特徴とする水栓装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、
前記制御部は、異なる速度を識別できる少なくとも2ヶのフィルタを有しており、
第1のフィルタにて被検知体が吐水部に向かって所定の速度になったことを識別した後、その時の速度よりも早い第2のフィルタによる識別結果を基に前記バルブの開閉を制御することを特徴とする請求項1記載の水栓装置が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、
前記制御部は、異なる速度を識別できる少なくとも2ヶのフィルタを有しており、
第2のフィルタにて速度を識別した後、その時の速度よりも低い第1のフィルタで識別した時に、その所定時間内に第2のフィルタによる識別結果を基に前記バルブの開閉を制御することを特徴とする請求項1記載の水栓装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知したら吐水を開始することにより、被検知体の動きに応じた最適なタイミングで吐水を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる水栓装置の構成を表す図であり、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。この水栓装置は、センサ部100および制御部200を備えており、給水ホース10、吐水口(スパウト)30、陶器製の受水部40等とともに水栓装置を構成している。
なお、以降の各図面については、既出の図面に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0011】
センサ部100は、マイクロ波あるいはミリ波などの高周波の電波を放射(送信)し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、検知可能範囲A内において被検知体の有無を検知し、その検知信号を出力する高周波センサである。
図2及び図3は、センサ部100と制御部200の2つの具体例のブロック図である。
【0012】
センサ部100には、アンテナ112、送信部114、受信部116、差分検出部118が設けられている。送信部114に接続されたアンテナ112からは、高周波、マイクロ波あるいはミリ波などの10kHz〜100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、アンテナ112からは、例えば10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。身体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ112を経由して受信部116に入力される。ここで、アンテナは、図2に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図3に表したように、送信部114にはアンテナ112aを接続し、受信部116にはアンテナ112bを接続してもよい。
送信波の一部と受信波とは、差分検出部118にそれぞれ入力されて合成され、ドップラー効果が反映された出力信号が出力される。差分検出部118から出力された検出信号は、制御部200に出力される。制御部200には、フィルタ210、周波数検出部220、判定部230、記憶手段240、バルブ250が設けられている。差分検出部118から出力された検出信号は、まずフィルタ210において高周波数成分が取り除かれる。この際のフィルタリング周波数は、例えば100Hzとすることができる。自動水栓(水栓装置)を使用する使用者の身体や手の接近や離遠の速度は、100Hz以下である場合が多いので、このようにすれば、外乱を除去して精度よく検知できる。差分検出部118から出力された検出信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。高周波数成分には、ドップラー効果に関する情報が含まれる。すなわち、身体などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c 式(1)
但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×106m/s)
センサ部100に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより速度vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜10.55GHzの範囲、または24.05〜24.25GHzの範囲の周波数が使用できる。
【0013】
図4は、フィルタ210から出力される検知信号の特性を説明する図である。
図4(a)は、被検知体としての人体の速度の時間特性の例であり、時間経過とともに減速している。使用者が水栓装置に接近してきて使用位置で止まる場合の使用者の人体速度や、使用位置で止まっている使用者が吐水口下に手を挿入して止める場合の手の速度は、目標とする到達地点に穏やかに到達しようとするため、到達地点に近づくにつれて減速する特性を示す。
逆に、被検知体が上記の到達地点から離遠する動作をする場合には、到達地点から離れるに従って加速し、その速度を上げる特性を示すことになる。
【0014】
図4(b)は、使用者の人体などの被検知体のセンサ部100からの距離に対する検知信号(フィルタ210からの出力信号)の振幅(電圧値)を示す図である。検知信号の振幅は、被検知体がセンサ部100に接近して、その被検知体からの反射波が大きくなるに従って大きくなる。
従って、被検知体がセンサ部100から離遠していく場合には、検知信号の振幅は、徐々に小さくなる。
【0015】
図4(c)は、被検知体の速度が図4(a)に表したように減速したときの検知信号の周波数の変化を示す図である。図4(a)および図4(c)から、被検知体の速度に応じて検知信号の周波数が変化し、被検知体が減速すると検知信号の周波数は減少することが判る。
従って、検知信号の周波数から被検知体の速度を検知できるとともに、検知信号の周波数の減少により、被検知体の減速を検知でき、逆に検知信号の周波数の増加により、被検知体の加速を検知できることとなる。本実施形態においては、例えば、判定部220(図2、図3)においてこの判断をすることができる。
【0016】
図5は、被検知体の動作を説明する図である。図5(a)および図5(b)は、人の手、あるいはその手に持たれた歯ブラシやコップなどの被洗浄体を被検知体aとして、被検知体aが減速して所定速度以下になったことを検知する場合を表し、図5(a)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置している状態、図5(b)はセンサ部100の検知可能範囲A内に使用者の人体が位置していない状態を表す。使用者は、通常は、水栓装置から離れた位置から水栓装置に接近し、使用可能な位置まで近づくと減速して水栓装置の前に立ち止まる。つまり、図5(a)及び(b)のいずれの場合についても、これらの状態になる前に使用者の身体が自動水栓に対して接近し、減速する。
また、図5(c)は、使用者の人体を被検知体aとして、接近して来た被検知体aの減速を検知する場合を表す。この場合にも、使用者の身体は水栓装置に接近すると減速し、水栓装置を使用可能な位置まで近づくと停止する。
本実施形態においては、このように使用者の身体や手が自動水栓に接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。つまり、被検知体の吐水部への接近、すなわち、受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点へ被検知体が接近する際に減速することを検知して吐水を制御する。
【0017】
図6は、被検知体(検知対象物)が目標とする到達地点までの距離に対する検知信号の周波数の変化を例示するグラフ図である。
図6に表したように、被検知体(人の手、被洗浄体、身体)が動いて、目標とする到達地点に達する場合には、被検知体の速度は到達地点に近づくにつれて遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなる。そして、やがて到達地点の直前に達すると、検知信号の周波数は、所定の閾値周波数f1以下となる。なお、ここでの目標とする到達地点は、人の手や被洗浄体の場合には、例えば吐水口30の近傍であり、身体の場合には、例えば水栓装置の前である。
【0018】
このような特性は、被検知体が、人の手または被洗浄体(図5(a)または図5(b))、あるいは身体(図5(c))のいずれであっても、使用者がセンサ部100の検知可能範囲A内においては、到達地点に近づくと減速することになる。
【0019】
図7は、受水部40で行われる使用者の手洗い行為以外の動作について説明する、この動きは、使用者にとっては水栓装置を利用する意思の無い動作であるため、センサ部100は、誤検知しないようにする必要がある。
図7(a)は、使用者が手洗いを完了した直後に行う、水きり動作を示した図である。この行為は使用者によって様々な周期や動かし方があり、指先だけではじく場合や手を振る場合更には、腕全体を高さ方向に振る場合もある。いずれにしてもこれらの動作は、動き始めの動作は加速している動きになり、受水部に近づくにつれて減速しやがて止まる。また、引き戻すときに加速し、使用者の体付近に戻るときに減速し、やがて停止する。
また、図7(b)は、使用者が水石鹸などを利用し、掌や手の甲に満遍なく石鹸を広げて汚れを落とす手もみ行為を示している。この動きも掌や甲を重ねてこすり洗いする際に、高さ方向に上下動させたり、前後方向に振動させたりする。いずれにしても、図7(a)と同様動き始めは加速し、やがて減速後停止する。次の手を戻し側に動かすときに動き始めに加速し、止まるときに減速する。
【0020】
図8は、使用者が図7(a)、図7(b)の動作を行ったときの検知信号の周波数の変化を例示するグラフ図である。
図8(a)は、図7の動きがはっきり検知信号として捕らえられたときであり、センサ部に対して加速後減速しながら接近や離遠を繰り返す動きを示している。このように、P2点において所定の周波数f1を下回るため、この時点で検知/非検知の判断を決定すると誤検知につながるため、次に加速が生じるかどうかを見極めることが、必要になる。
また、図8(b)は、センサ部100から放射された電波が手や指先やあるいは腕の一部に照射され、あらゆる部位からの反射信号を受信したときに得られる検知信号の周波数変化を例示するグラフ図である。ドップラーセンサーは、移動体とセンサの電波放射方向(本実施例では、パッチアンテナを利用しているため、アンテナを配置している面)とが一直線方向である場合、移動体の速度とセンサが得られる信号とは式(1)の通りであるが、移動体と電波の放射方向との間に所定の角度θが存在すると、ドップラー周波数△Fは、下記の式(2)のような三角関数の係数が付与される。
ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c ×cos(θ)式(2)
従って、人体のいろんな面に電波が照射されると、センサ部と反射電波の方向とに様々な角度が生じるため、一定速度で動いた場合でも様々な周波数の検知信号を得ることになり、しかも人の動きが脈動している場合には、図8(b)のように広い周波数の信号が一度に検知されることになる。
【0021】
そのため、所定の周波数f1を下回った後の動きが到達点に向かって止まろうとしている動きなのか、それとも繰り返し動作の瞬間的な低速の動きなのかをを見極めることが重要であり、以下図6と図8で得られる信号について制御部200の動作を説明する。
【0022】
図6に表した具体例においては、被検知体が動いてセンサ部100の検知可能範囲内に入り、到達地点からの距離がe1のときに、センサ部100から制御部200に出力される検知信号の被検知体についての周波数が閾値f1となる(図6のポイントp1)。このときに図8のポイントp2でも所定の閾値f1を下回っているが、図8(a)の場合、その所定時間t1後に検知信号の周波数は上昇し、やがてポイントP3にて周波数f1を上回ることになる。ここで、f1よりも高い周波数f2を設定し、f2よりも上回るかどうか確認すると、よりf1近傍の検知精度が向上し、f1より高い周波数の見極め精度が高くなる。この結果によりこのポイントP3のタイミングで、判定部230は、バルブ250を開いて吐水を開始させる。同じように、図8(b)では、ポイントp4にて閾値f1を下回っているが、ここでは、ほぼ同タイミングで周波数f1及びf2をも超えた検知信号を得ているため、このt1の時間は、人それぞれ様々な時間になる。従って、同タイミングから周期的な図6のポイントp1から到達地点(e1)に達するまでの時間に比べて短くなるように、f1の閾値が高い場合は、受水部の前面側で減速を検知することができるため、t1は長めに設定することがよく、f1の閾値が低い場合は、スパウトに近い側で減速を検知することになるため、t1は短めに設定すると良い。好都合なのは、手の差し出す速度の早い人と遅い人用に2つの判断アルゴリズムを用意しておき、早い人には閾値f1を高めにし、遅い人には低めに設定すると良い。また、加速している動きか否かをより精度を高めて判断する閾値f2は、f1と少し離したほうがよく、離すほど減速と加速の違いを確実に判別できるが、スパウトからの吐水を開始する判断が遅れるため、使用者が到達地点に達する前に吐水開始ができない可能性があるため、注意して設定した方が良い。本発明では、f1を10Hz,f2を15Hz、t1を0.3秒に設定すると、被検知体は、さらに減速して到達地点に達しても、その直前に達したとき(e1)にバルブ250を開いて吐水を開始させるように判定部230が吐水開始タイミングを制御することになり、誤検知無く被検知体が到達地点に達したときに、遅れることなく、吐水が開始される。
【0023】
このように、本発明の実施の形態1では、被検知体が減速して所定速度(v1とする)以下になったことを検知したら、所定時間内に第1の所定速度以上の速度が無いことを確認できたときに、被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。精度を上げるためには、第2の所定速度(v2)を設定し、v1より低い速度を検知した後にv2以上の信号の有無から判断するとよい。これにより、被検知体が到達地点に達すると同時に吐水が開始されるので、快適に使用できる。
【0024】
図9は、本発明の第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
図9(a)に表した具体例においては、人の手を被検知体aとし、手が減速して速度v1以下になったことを検知し、その所定時間以内に速度v2以上の検知信号を得られなかったら、手が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0025】
図9(b)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体を持った手を被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知しにくいものもあるが、これら被洗浄体の動きや速度は、それを持っている人の手と同じである。
そこで、上記の検知しにくい被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについては、それを持っている手が減速して速度v1以下になったことを検知したら、被洗浄体が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)の直前に達したものと考えることができる。
【0026】
図9(c)に表した具体例においては、歯ブラシやコップなどの被洗浄体そのものを被検知体aとしている。手に持つ歯ブラシやコップなどの被洗浄体には、センサ部100によって検知できる(検知しやすい)ものもある。
そこで、上記の検知できる被洗浄体については、これらの被洗浄体を被検知体aとして、これら被洗浄体の洗浄のための吐水開始タイミングについて、被洗浄体が減速して速度v1以下になったことを検知し、その所定時間以内に速度v2以上の検知信号を得られなかったら、被洗浄体が吐水口30の下や吐水流の軌跡上の直前に達したものとして、吐水を開始する。
【0027】
図9(d)に表した具体例においては、吐水口30が受水部40に突出していない場合に、身体を被検知体aとしている。図9(d)に示すように吐水口30が受水部40に突出していない場合など、吐水口30が使用者に判りにくい場合には、使用者は水がどのように出るか判らないため、手を出しにくい。
そこで、このような場合には、身体を被検知体aとして、身体が減速をして速度v1以下になったことを検知し、その所定時間以内に速度v2以上の検知信号を得られなかったら、バルブ250を開いて吐水を開始させ、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
これにより、使用者は吐水流の軌跡が判り、ためらわずに手を出すことができる。
【0028】
図9(e)に表した具体例においては、使用者が車椅子に乗った方である場合に、身体を被検知体aとしている。図9(e)に示すように使用者が車椅子に乗った方である場合など、使用者が受水部40の奥まで手を出すことが困難な場合にも、上記と同様に、身体を被検知体aとして、身体が減速して速度v1以下になったことを検知し、その所定時間以内に速度v2以上の検知信号を得られなかったら、バルブ250を開き、あらかじめ瞬間的または連続的に吐水をする。
車椅子などの使用者は、あらかじめ吐水された場所に手やコップなどを出せばよいので、受水部40の奥まで手を延ばさなければ、検知されずに吐水が開始されないことがなくなり、楽な姿勢で使用できる。
【0029】
図10は、本発明の第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から被検知体の周波数を求めて記憶する(ステップS2)。
【0030】
この場合、例えば、検知信号の全周波数帯域(0〜100Hz)の内で最大の振幅を有する周波数を、その被検知体の周波数として求める。
【0031】
次に、制御部200は、求めた被検知体の周波数をもとに、被検知体が減速して所定速度v1以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この被検知体の減速判定は、今回求めた被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f1と比較することによって判定される。
【0032】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた被検知体の周波数が閾値f1を超えており、かつ今回求めた被検知体の周波数が閾値f1以下(従って前回の検知信号の周波数よりも低くなっている)であれば、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定し、そうでなければ、被検知体の速度は速度v1を超えていることとなるので、被検知体は減速して速度v1以下にはなっていないと判定する。なお、前回および前々回に求めた被検知体の周波数は、記憶手段240(図2、図3参照)に記憶させ、読み出すことができる。
【0033】
その結果、被検知体が減速して速度v1以下になっていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って、再び検知信号を取得する。
また、被検知体が減速して速度v1以下になったと判定した場合には(ステップS3でYES)、で次のステップに行く。
【0034】
次に、制御部200は、求めた被検知体の周波数をもとに、被検知体が加速して所定速度v1以上(ここではv2と設定)になったか否かを判定する(ステップS4)。
この被検知体の加速判定は、今回求めた被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f2と比較することによって判定される。
【0035】
この場合の加速判定の手順も減速の場合と同様、例えば、前回および前々回求めた被検知体の周波数が閾値f2を下回っており、かつ今回求めた被検知体の周波数が閾値f2以上(従って前回の検知信号の周波数よりも高くなっている)であれば、被検知体が加速して速度v2以上になったと判定し、そうでなければ、被検知体の速度は速度v2を下回っていることとなるので、被検知体はそのまま減速して速度v2以上にはなっていないと判定する。
【0036】
その結果、被検知体が加速して速度v2以上になった場合には(ステップS4でNO)、上記ステップS1に戻って、再び検知信号を取得する。
また、被検知体が速度v2以下であると判定した場合には(ステップS4でYES)、でバルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS5)。
【0037】
以上説明した第1の実施の形態によれば、被検知体が減速して所定速度以下になったことを検知し、その所定時間以内に速度v2以上の検知信号を得られなかったら、吐水を開始させることにより、被検知体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、快適に使用できる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
使用者が歩いてきて水栓装置に接近し、手やコップなどを差し出して使用する場合のように、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、の2回の動きがある場合には、身体の減速と手の減速の2度の減速が検知される。
そこで、本発明の第2の実施の形態では、1回目の減速を検知しても、それは身体の減速であるとして吐水を開始せず、続けて2度目の減速を検知したら、それは手や被洗浄体の減速であるものとして、吐水を開始させる。
【0039】
つまり、第1の被検知体を身体、第2の被検知体を手やコップなどとして、第1の被検知体が減速して第1の所定速度(v3とする)以下になったこと(第1回目の減速)を検知したあと、第2の被検知体が減速して第2の所定速度(v4とする)以下になったことを検知したら、判定部230は、第2の被検知体が目標とする到達地点の直前に達したものとして、吐水を開始させる。
これにより、身体の接近と、手やコップなどの挿入と、を識別でき、身体の接近のみによって吐水を開始することはなく、手や被洗浄体が到達地点(例えば吐水口下や吐水流の軌跡上))に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制して快適に使用できる。
【0040】
図11は、本発明の第2の実施の形態における被検知体の動作を説明するための上面図である。使用者は、水栓装置に接近して、その手あるいは手に持った被洗浄体(歯ブラシ)やコップなどを出す一連の動作をする。
まず、図11(a)に示すように、第1の被検知体(身体)b1である使用者は、歩いて水栓装置に接近し、水栓装置に接近するにつれて減速し、水栓装置前の到達地点に達する。次に、図11(b)に示すように、使用者が第2の被検知体b2である手または被洗浄体を動かし、この手または被洗浄体は、吐水部への接近、すなわち受水部40や吐水口30の下や吐水流の軌跡上や吐水口30からの吐水の受水部40への着水地点などの到達地点に接近するにつれて減速する。
【0041】
図12は、被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。この具体例では、到達地点は、第2の被検知体(使用者の手など)の到達地点である吐水口30の下や吐水流の軌跡上であるものとする。
【0042】
図12に示すように、使用者が動いて水栓装置に接近するにつれて、第1の被検知体(使用者の身体)の速度は遅くなり、それに従って検知信号の周波数は低くなり、やがて水栓装置の直前まで達すると、使用者は減速してその速度が第1の所定速度v3以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f3以下となる(図12のポイントp5)。使用者の速度がv3で、検知信号の周波数がf3のとき、第2の被検知体の上記到達地点からの使用者の距離はe2である。
【0043】
次に、使用者が手を動かすと、第2の被検知体(使用者の手など)の速度は、上記使用者の身体の場合と同様に、上記到達地点に近づくにつれて遅くなり、やがて到達地点の直前まで達すると、使用者の手などは減速してその速度が第2の所定速度v4以下になり、検知信号の周波数は低くなって閾値周波数f4以下となる。第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)の速度がv4で、検知信号の周波数がf4のとき、上記到達地点からの第2の被検知体の距離はe3(<e2)である。なお、所定速度v3とv4の大小関係や、閾値周波数f3とf4との大小関係については、図12に例示したものには限定されず、略同一でもあってもよく、あるいは図12に表した具体例とは逆の大小関係であってもよい。
【0044】
第2の実施の形態においては、第2の被検知体が減速して速度v4になった後、所定時間t2以内に加速を見極める速度v5を検知しないタイミングでバルブ250を開く。これにより、第2の被検知体(使用者の手、被洗浄体)が到達地点(吐水口30の下や吐水流の軌跡上)に達したときに、吐水を開始できる。
【0045】
図13は、第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
制御部200は、センサ部100から検知信号を取得し(ステップS1)、この検知信号から第1の被検知体の周波数を求めて記憶手段240に記憶する(ステップS2)。
【0046】
この場合、例えば、検知信号の周波数帯域(0〜100Hz)の内、振幅のピーク値を有する周波数を、その第1の被検知体の周波数とする。
【0047】
次に、判定部230は、求めた第1の被検知体の周波数をもとに、第1の被検知体(身体)が減速して所定速度v3以下になったか否かを判定する(ステップS3)。
この第1の被検知体の減速判定は、今回求めた第1の被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある第1の被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f3と比較することによって判定される。なお、前回以前にすでに求めた第1の被検知体の周波数や、あらかじめ設定されている閾値f3などは、記憶手段240(図2、図3)に格納しておくことができる。
【0048】
この場合の減速判定の手順としては、例えば、前回および前々回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f3を超えており、かつ今回求めた第1の被検知体の周波数が閾値f3以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第1の被検知体が減速して速度v3以下になった(第1回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第1の被検知体は減速して速度v3以下にはなっていない(第1回目の減速検知をしていない)と判定する。このとき第1の実施例と同様、速度v3より高い速度に相当する閾値f3+αを設定し、f3+αを所定時間以内(t1)に超えなければ減速確定とし、超えた場合はステップS1に戻る。
【0049】
その結果、第1の被検知体(身体)が減速して速度v2以下になっておらず、第1回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS3でNO)、上記ステップS1に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第1の被検知体が減速して速度v3以下になり、第1回目の減速検知をしたと判定した場合には(ステップS3でYES)、制御部200は、例えば第1回目の減速検知をしたことを記憶した上で、ステップS10に進む。
【0050】
制御部200は、ステップS10で再び検知信号を取得し、この取得した検知信号から、今度は第2の被検知体(使用者の手やその手に持ったコップなど)の周波数を求める(ステップS11)。
【0051】
この場合、第1回目の減速検知をしたあとに、判定の対象とする周波数を第1の被検知体のものから第2の被検知体のものに切り換えることが必要となる。そこで、第1の被検知体の周波数はすでに第1の閾値f3以下になっていると考えられるので、第1回目の減速検知をしたあと、最初に第2の被検知体の周波数を求めるときには、例えば、所定時間t1以上経過した後、検知信号のf3を超える周波数帯域の内で最大の振幅を有する周波数を、第2の被検知体の周波数として検知を続ける。
【0052】
次に、判定部230は、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して所定速度v4以下になったか否かを判定する(ステップS12)。
この第2の被検知体の減速判定は、例えば、今回検知した第2の被検知体の周波数を、前回以前に検知した第2の被検知体の周波数や、あるいはあらかじめ設定されている閾値f4と比較することによって判定することができる。
【0053】
そして、第1の被検知体(手やコップなど)が減速して速度v4以下になったか否かを、第1回目の身体の減速検知判定と同様の手順で判定する(ステップS12)。ただし、周波数の閾値としてはf4を用いる。
【0054】
この第2回目の減速検知の判定手順としては、例えば、前回および前々回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f4を超えており、かつ今回検知した第2の被検知体の周波数が閾値f4以下(従って前回の周波数よりも低くなっている)であれば、第2の被検知体が減速して速度v4以下になった(第2回目の減速検知をした)と判定し、そうでなければ、第2の被検知体は減速して速度v4以下にはなっていない(第2回目の減速検知をしていない)と判定する。
【0055】
その結果、第2の被検知体(手や被洗浄体)が減速して速度v3以下になっておらず、第2回目の減速検知が未だなされていないと判定した場合には(ステップS12でNO)、上記ステップS10に戻って再び検知信号を取得する。
一方、第2の被検知体が減速して速度v3以下になり、第2回目の減速検知をしたと判定した場合には、(ステップS12でYES)、で次のステップに行く。
【0056】
次に、制御部200は、求めた被検知体の周波数をもとに、被検知体が加速して所定速度v5以上になったか否かを判定する(ステップS13)。
この被検知体の加速判定は、今回求めた被検知体の周波数を、前回以前にすでに求めてある被検知体の周波数や、およびあらかじめ設定されている閾値f5と比較することによって判定される。
【0057】
この場合の加速判定の手順も減速の場合と同様、例えば、前回および前々回求めた被検知体の周波数が閾値f5を下回っており、かつ今回求めた被検知体の周波数が閾値f5以上(従って前回の検知信号の周波数よりも高くなっている)であれば、被検知体が加速して速度v5以上になったと判定し、そうでなければ、被検知体の速度は速度v5を下回っていることになるので、被検知体はそのまま減速して速度v5以上にはなっていないと判定する。
【0058】
その結果、被検知体が加速して速度v5以上になった場合には(ステップS13でNO)、上記ステップS10に戻って、再び検知信号を取得する。
また、被検知体が速度v5以下であると判定した場合には(ステップS13でYES)、で制御部200は、バルブ250を開いて吐水を開始させる(ステップS4)。
【0059】
第2の実施の形態によれば、第1の被検知体(使用者の身体)と第2の被検知体(使用者の手やその手に持った被洗浄体)についての2度の減速検知を検知したら、吐水を開始させることにより、身体と手や洗浄体とを区別して、手や洗浄体が目標とする到達地点に達すると同時に吐水がなされ、無駄な吐水を抑制しつつ快適に使用できる。
【0060】
(第3の実施例)
図14(a)に水栓装置の第3の実施例の概観図を示し、図14(b)に図14(a)の上視図を示し、図14(c)に図14(b)のA視断面図を示す。
【0061】
図14に示す水栓装置500は、水道水を供給するためのスパウト510と、スパウト510から吐水される水を受ける陶器性の受水部520と、受水部520の内部に利用者の手やコップや雑巾等の被洗浄物である被検知体が侵入してきたことを検知する電波センサ530と、スパウト510からの吐止水を切替えるバルブ540と、センサ部530からの信号に基づき、バルブ540のon,offを制御する制御部550とで構成されている。ここで、第1、第2実施例とはことなり電波センサ530は、受水部520の前面側520aに配設されている。
【0062】
水栓装置500は、受水部520の近傍のみを検知したときにスパウトからの吐水を開始する吐水開始用スイッチとして利用する吐水口近傍の検知エリアと、手を差し出せば即差し出した手に水を供給できるように吐水口近傍の検知エリアと、の二つの検知エリアを設定でき、前者を第一検知エリアa、後者を第ニ検知エリアbとして以下説明する。
センサ部530は、水あるいは金属に対して反射するため、被検知体の素材によらず検知することができ、第一検知エリアaを設定した場合では、利用者の手などの被洗浄物が侵入されると、センサ部530が被検知体を検知して、その結果が制御部550に転送され、制御部550がバルブ540を開動し、スパウト510から水道水を吐水する。したがって、第一検知エリアaは、スイッチ機能を有しているエリアであり、利用者が手を差し出しやすいように受水部520の手前の端部520aにマーカー560を釉薬を用いて設けた方が使いやすく、他の方法としては、樹脂製やガラス製の可視光を透過する素材で受水部2を形成し、内部にLED等の発光部材を点灯させて利用者の洗浄行為を誘導してもよい。その場合は、第ニ検知エリアbは、スパウト510からの給水を継続するか、止水に切替えるかを識別するための自動止水機能を有しているエリアとなる。この検知方法の利点は、使用者がスパウトから吐水を開始させたいとき意外である、例えば物を受水部に置くための行為や受水部に置かれたものを取り上げる行為に対しては、スパウト510から水道水を供給することはないため、袖や服を濡らすことなく節水性の高い水栓装置を提供することができる。
一方、第ニ検知エリアbに検知エリアを設定した場合は、手を差し出す行為と洗浄行為が一つのアクションで成立するため、さっと手洗い動作を行うことができるため、手先のみをすばやく洗いたいときには好都合の水栓装置となる。
【0063】
本実施例における使用者の手が第一,第二検知エリアの双方に向かってくる手の速度は、第一の実施例で説明した図4(a)と同じ挙動を示す。ただし、手のセンサ部530からの距離に対する検知信号の振幅(電圧)を図15に示すと、手がセンサ部530に近づくまで、即ち第一の検知エリアに接近するまでは、手からの反射波が大きくなるため振幅が大きくなっている。その後第二検知エリアに向かっていくと、センサ部530から離遠する動きとなるため、振幅が減少する方向になる。
【0064】
従って、第一検知エリアに差し出された被検知体をトリガにして、スパウト510から制御する場合は、第一実施例で示した図10のフローチャートにしたがい制御部550が実施すると、被検知体が第一検知エリアに到達する前に水が供給される使い勝手の良い水栓装置500を提供することができる。また、第二検知エリアに差し出された被検知体をトリガにして、水を供給する場合にも制御部550は、第一実施例で示した図10のフローチャートに基づく制御を行えばよいが、被検知体から得られる振幅が減衰していくため、所定の周波数(例えばf1)の有無を判断する電圧値の閾値は、第一の実施例や第一検知エリアに近づく場合に比べて下げるか、振幅の低下した分、増幅回路を設けて増加した方が良い。尚、この振幅値と周波数は、センサ部530から電波の送受信する方向と、使用者が差し出す被検知体の方向とのなす角度によって、被検知体が到達点に達する時にセンサ部530が得られる信号の周波数と振幅は変化するため、受水部520、スパウト510、センサ部530の位置関係により適宜調整することは言うまでも無い。
いずれにしても、本発明によれば、被検知体が目標物に到達する前の早いタイミングで使用者に水を供給することができるため、水に対して被洗浄物を差し出すような感覚になり、使い勝手の良い水栓装置を提供することができる。
【0065】
(第4の実施例)
図16に水栓装置の第4の実施例の断面図を示しす。
【0066】
水栓装置700は、水道水を供給するためのスパウト710と、スパウト710から吐水される水を受ける受水部720と、制御部750と、スパウト710からの吐止水を切替えるバルブ740とで構成されている。スパウト710は、内部にセンサ部730と、電波センサ730のアンテナから送受信する電波をスパウト730の吐水出口735まで導く導波管760と、バルブから吐水口まで水を搬送する給水ホース770とが内蔵されている。
【0067】
導波管760は、使用する電波の周波数と通過させたい発振モードに基づきそのサイズは決定されており、ここではサイズを最も小さくできるTE10モードを想定した形状にしている。形状は方形でも円形でも良く、スパウト710のデザインにより決定すればよくここでは方形型を採用している。また、導波管760の吐水出口735側の開放端760aには、水道水の進入を防ぐための封し部材780が挿入されている。尚、導波管760は、直線構造だけでなく、屈曲させたり、湾曲させてもその内部の電波の通過するを使用する周波数に対して確保すれば、アンテナからの電波をほとんど減衰することなく吐水口まで伝達することが可能なため、導波管はセンサ部と吐水口を連結するようにスパウト構造に併せて構成すればよく、センサ部は図面に示した受水部側に配置したり、受水部の上面のスパウト内部に配置したり、スパウト内部に拘らず、受水部に配置しても良い。いずれにしても、センサ部に故障があったときにはメンテナンスしやすい構造を提供できる。
【0068】
このように配置したことにより、センサ部730のアンテナから放射された電波は、導波管760の内部を通過し、封し部材780を通過後、受水部720に向かって放射される。被洗浄体である手がスパウト710近傍に存在すると、手から反射した電波が封し部材780、導波管760を通過し、センサ部730のアンテナで受信できる。
このように水栓装置を構成しても、センサ部730の構成や制御部750が実行する吐水アルゴリズムは、第1の実施例と同様につき省略するが、差し出す手が到達地点に到達する前にスパウト710から早いタイミングで水を供給することができるため、使い勝手の良い水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる水栓装置の構成を表す図である。
【図2】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図3】センサ部100と制御部200の具体例のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態においてのセンサ部100から出力される上記検知信号の特性を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態においての被検知体の動作を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態においての被検知体の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態においての被検知体の洗浄行為以外の説明する図である。
【図8】図7の洗浄行為以外の1検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態においての被検知体の具体例を説明する側面図である。
【図10】第1の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態においての被検知体の動作を説明する上面図である。
【図12】第2の実施の形態においての被検知体(検知対象物)の目標とする到達地点からの距離に対する検知信号の周波数の変化の例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態においての制御部200による吐水開始手順を説明するフローチャートである。
【図14】第3の実施の形態を示す図である。
【図15】第3の実施の形態においてのセンサ部から出力される上記検知信号の特性を説明する図である。
【図16】第4の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10,770 給水ホース、
30,510,710吐水口(スパウト)、
40,520,720 受水部、
100,530,730 センサ部、
112、112a、112b アンテナ、
114 送信部、
116 受信部、
118 差分検出部、
200,550,750 制御部、
210 フィルタ、
220 周波数検出部、
230 判定部、
250,540,740 バルブ、
500,700 水栓装置、
760 導波管、
780 封し部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部と、
受水部と、
前記吐水部からの吐止水を切り替えるバルブと、
電波を放射し、被検知体により反射した反射信号を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した反射信号によって被検知体の有無を判断する検知部と、
前記検知部から出力される検知信号に基づいて被検知体の速度を識別し、その結果に基づき前記バルブの開閉を制御する制御部と、
を備えた水栓装置であって、
前記制御部は被検知体の速度が第一の閾値より高い状態から前記第一の閾値以下の状態に変化した後、
所定時間の間、前記第一の閾値よりも高い速度状態に変化しないことを識別すると、
前記バルブを開動作させることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記制御部は、異なる速度を識別できる少なくとも2ヶのフィルタを有しており、
第1のフィルタにて被検知体が吐水部に向かって所定の速度になったことを識別した後、その時の速度よりも早い第2のフィルタによる識別結果を基に前記バルブの開閉を制御することを特徴とする請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
前記制御部は、異なる速度を識別できる少なくとも2ヶのフィルタを有しており、
第2のフィルタにて速度を識別した後、その時の速度よりも低い第1のフィルタで識別した時に、その所定時間内に第2のフィルタによる識別結果を基に前記バルブの開閉を制御することを特徴とする請求項1記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−144496(P2010−144496A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326546(P2008−326546)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】