説明

水栓装置

【課題】
最適なタイミングで吐水可能な水栓装置を提供する。
【解決手段】
水を吐出する吐水口と、電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動に関する情報を検知信号として出力するセンサ部と、前記検知信号に基づいて、前記吐水口からの吐水、止水を切替えるバルブを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知信号の周波数に基づいて検知エリア内における被検知体が停止する直前の速度となったか否かを判定するとともに、前記検知信号の電圧値に基づいて前記検知エリア内における被検知体が吐水口の近傍にあるか否かを判定する判定部を有しており、被検知体が吐水口に向かって減速しながら接近して停止する際の動作において、被検知体が停止する直前の速度となり、且つ被検知体が前記吐水口の近傍にあることを判定した場合に、吐水が開始されるようバルブを制御することを特徴とする水栓装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関し、より具体的には、手洗い場やトイレ、キッチンなどに設けられ、マイクロ波などを利用した電波センサを用いて吐水流の吐水を制御する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓装置に配設されたセンサにより、手やその他洗浄物などの被検知体を検知し吐水及び止水を行う技術が知られている。例えば、光電センサを吐水口近傍に設置し、吐水部近傍のみを吐水及び止水を判断する検知エリアに設定し、吐水部近傍に到達した被検知体からの反射信号を検知して吐水、吐水部近傍から離遠し被検知体からの反射信号が検知されなくなったら止水を行う技術がある(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1(実開昭61−75570号公報)に開示された技術によれば、検知エリアを吐水部近傍のみに限定していることから、吐水口近傍以外の動きで誤検知することがない。例えば、バルブが閉時には、受水部の使用者側で行われる、石鹸を使用した手洗い時の手を揉むなどの動作で誤検知することなく、確実に吐水口近傍に到達した後の被検知体を検知して吐水させることができる。また、バルブが開時には水を使用後に吐水口近傍から被検知体が離遠した瞬間に止水させることができ、バルブが閉時になった後も受水部内の使用者側で濡れた被検知体の水を掃う動作や被検知体を拭く動作、コップや手に溜めた水を捨てる動作などを検知し、吐水してしまうことがなく使用できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、検知エリアを吐水部近傍のみに限定していることから、吐水させる際に、被検知体が到達地点に到達した後に検知が行われ吐水が開始されるため、吐水のタイミングが遅れてしまい、素早く手を洗いたい場合などに不快に感じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−75570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、最適なタイミングで吐水可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、水を吐出する吐水口と、電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動に関する情報を検知信号として出力するセンサ部と、前記検知信号に基づいて、前記吐水口からの吐水、止水を切替えるバルブを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知信号の周波数に基づいて検知エリア内における被検知体が停止する直前の速度となったか否かを判定するとともに、前記検知信号の電圧値に基づいて前記検知エリア内における被検知体が吐水口の近傍にあるか否かを判定する判定部を有しており、被検知体が吐水口に向かって減速しながら接近して停止する際の動作において、被検知体が停止する直前の速度となり、且つ被検知体が前記吐水口の近傍にあることを判定した場合に、吐水が開始されるようバルブを制御することを特徴とする水栓装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最適なタイミングで吐水可能な水栓装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】水栓装置の第1の実施例の概観図である。
【図2】電波センサを例示するためのブロック図である。
【図3】制御部を例示するためのブロック図である。
【図4】水栓装置の使用者が吐水させるために被検知体を到達地点に停止させようとするときの一連動作を示した図である。
【図5】被検知体と到達地点の距離に対する速度または周波数の変化を例示するグラフ図である。
【図6】周波数帯域毎に検知信号から減速を判断する方法を説明するための模式図である。
【図7】被検知体の減速動作において、高い周波数帯域と低い周波数帯域で得られる検知信号の振幅の電圧値の時間変化を例示するグラフ図である。
【図8】周波数帯域毎に検知信号から略静止を判断する方法を説明するための模式図である。
【図9】被検知体の略静止状態において低い周波数帯域で得られる検知信号の振幅の電圧値の時間変化を例示するグラフ図である。
【図10】吐水流のみの場合と吐水を使用中の場合の水栓装置を表す模式図である。
【図11】図10(a)〜(c)に表したそれぞれの場合において、電波センサから得られる検知信号から直流成分を除去するハイパスフィルタを通過した検知信号を例示するグラフ図である。
【図12】各吐水流の状態における検知信号のパワースペクトルを例示するグラフ図である。
【図13】任意の周波数帯域における各吐水流の状態を示した図である。
【図14】0−5Hzの周波数帯域のフィルタで得られる検知信号の電圧値を示した図である。
【図15】水栓装置に電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に吐水禁止エリアsが設定されている図である。
【図16】10−20Hzの周波数帯域のフィルタにより、手につけた石鹸などを手全体に伸ばすために受水部の使用者側で手を揉む動作において得られる検知信号を示した図である。
【図17】50−90Hzの周波数帯域のフィルタにより、洗浄後に濡れた被検知体の水を掃う動作や、コップや両手に溜めた水を受水部内に捨てる動作や、口に含んだ水を受水部内に吐く水の動作において得られる検知信号を示した図である。
【図18】直流成分を含む低い周波数帯域0−5Hzのフィルタにより、電波センサが配置された前記受水部の壁面近傍に付着し、壁面を伝う水の動作において得られる検知信号を示した図である。
【図19】本発明の水栓装置をキッチン水栓装置で構成した第2の実施例の概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる自動水栓装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
(第1の実施例)
【0011】
図1(a)に水栓装置の第1の実施例の概観図を示し、図1(b)に図1(a)の上視図を示し、図1(c)に図1(b)のA視断面図を示す。
【0012】
図1に示す水栓装置10は、吐水流を吐出するための吐水部1及び吐水口100と、吐水部1から吐出される水を受ける受水部2と、受水部2の内部に使用者の手、歯ブラシ、コップ、雑巾等の被検知体が侵入してきたことや吐水流の状態を検知する電波センサ3と、吐水部1からの吐水、止水を切替えるバルブ部4と、電波センサ3からの信号に基づいて、バルブ部4の開閉を制御する制御部5とで構成されている。
ここで、電波センサ3は、使用者が受水部2に接近する際に対面する側である前側2aに配設されており、電波ビームは吐水口100近傍に向かって放射される。
【0013】
また、電波ビームは吐水部1上方に向けては放射されないように設定することができる。これにより、吐水部1の奥に設置される棚への物取りや鏡の覗き込みなどを誤検知することがない。
さらに、電波センサ3は電波ビームの励振方向が略鉛直方向になるように受水部2に設置することができる。電波センサ3が受水部2の前側2aに設置される場合、吐水させようとする被検知体は電波センサ3の上方から電波センサ3の前方へと向かうため、電波センサ3の励振方向が略鉛直方向であると、被検知体の上下の動きが検知しやすくなるため、検知信号が大きく得られるとともに、受水部2の前側2aに設置された電波センサ3近傍を横切る受水部2の横方向の拭き動作や、水栓装置10の外側近傍を横切る動作などの吐水させようとしない動作で得られる検知信号が小さくなるため、吐水させる被検知体の動作のみを精度良く検知することができる。
【0014】
ここで、水栓装置10はバルブ部4の閉状態(吐水前に止水から吐水させる状態)または開状態(吐水中から吐水継続または止水を判断する状態)に応じて、検知エリアがそれぞれ設定されている。
バルブ部4が閉時においては、受水部2全体が検知エリアとなる吐水エリアaが設定されている。これにより、身長の違いなどによって、使用者が被検知体(手、歯ブラシ、コップなど)を吐水口100近傍に到達させようと様々な高さや角度から差し出されても確実に検知できる。
また、バルブ部4が開時においては、吐水口100近傍のみが検知エリアとなる止水エリアbが設定されている。これにより、吐水中に使用者が洗浄行為などを終えて、手などを
受水部2の使用者側に移動し、使用後の行為(水を掃う、手を拭く、水を捨てる、水を吐くなど)を行っても、これらの行為を誤検知して、吐水を継続してしまうことがない。
ここで、バルブ部4が開時においては、被検知体を主に吐水流として、使用者が吐水流を使用しているか(手などに当たって乱れた水やコップなどに溜まった水)、使用していないか(吐水流のみ)を吐水流の状態から判断し、吐水を継続するか、あるいは止水を行うかを判断している。
【0015】
このように、バルブ部4の開閉に応じて電波センサ3が被検知体の検知を判断する制御(アルゴリズム)を切り替えることにより、吐水エリアaと止水エリアbを切り替えることができる。バルブ部4の開閉時それぞれにおける制御方法の詳細については後述する。
【0016】
また、前述したように電波センサ3は受水部2に配置され、吐水部1(吐水口100近傍)に向かって電波を放射しており、吐水エリアaは受水部2全体をエリアとし、止水エリアbは吐水口100近傍のみをエリアとしているため、バルブ部4開閉時において、電波ビームの放射方向を変化する必要がないため、電波を可変できるように電波センサ3の回路構成を複雑に形成する必要がなく、簡易な回路構成で実現できる。
【0017】
図2は、電波センサ3を例示するためのブロック図である。
電波センサ3には、アンテナ112、送信部114、受信部116、ミキサ部118が設けられている。送信部114に接続されたアンテナ112からは、高周波、マイクロ波あるいはミリ波などの10kHz〜100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、アンテナ112からは、たとえば、10.525GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。人体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ112を経由して受信部116に入力される。ここで、アンテナは、図2(a)に表したように送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図2(b)に表したように、送信部114にはアンテナ112aを接続し、受信部116にはアンテナ112bを接続してもよい。
送信波の一部と受信波とは、ミキサ部118にそれぞれ入力されて合成され、たとえばドップラー効果が反映された検知信号が出力される。ミキサ部118から出力された検知信号は制御部5に向けて出力される。
【0018】
次に、制御部5について説明をする。
図3は、制御部5を例示するためのブロック図である。
図3に示すように、制御部5には、フィルタ部210、判定部230、バルブ制御部240、バルブ部4、記憶手段260が設けられている。また、フィルタ部210には、フィルタ210aと、フィルタ210bとが設けられている。フィルタ210aは、例えば、所定の周波数帯域の検知信号を通過させるフィルタとすることができる。そして、フィルタ210bはフィルタ210aの周波数帯域よりも高い周波数帯域の検知信号を通過させるフィルタとすることができる。
なお、本実施の形態においては、被検知体の動きに対して得られた検知信号から制御を行うようにしているが、その際100Hz未満の信号を検知することにより識別を行うようにしている。
使用者が通常行う動作、例えば手の挿入や引き抜き、歩行等は100Hz未満の信号となる。そのため、100Hz未満の信号を検知することにより、一般的な人体の動作を判別することが可能となる。また、100Hz以上の高い周波数を検知すると、近傍にある蛍光灯ノイズ(100Hz、120Hz)や、通信機等で使用される通信ノイズ等から得られる検知信号をキャンセルすることが可能となる。
【0019】
ミキサ部118から出力された検知信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。この高い周波数成分には、ドップラー効果に関する情報が含まれている。そのため、フィルタ部210においてドップラー効果に関する情報を含む高い周波数成分(ドップラー周波数信号)を取り出すようにしている。
【0020】
ここで、人体などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。

ΔF=Fs−Fb=2×Fs×v/c …式(1)

但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×10m/s)

電波センサ3に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表わされるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む検知信号が得られる。検知信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。そのため、電波センサ3(ミキサ部118)から出力された検知信号の高い周波数成分をフィルタ210a、フィルタ210bを介することで所定の周波数帯域に分割し、ドップラー周波数ΔFを測定するようにすれば、速度vを求めることができる。また、各周波数帯域の移り変わりなどを見れば、速度の変化(減速/加速)を知ることができる。そして、例えば、判定部230において水栓装置を使用するための検知動作を行っていると判定された場合には、バルブ制御部240によりバルブ部4を開放して吐水を行うようにすることもできる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50〜10.55Hzまたは24.05〜24.25GHzの周波数が使用できる。また、説明の便宜上、検知信号を2つの周波数帯域に分割する場合を例示したが、これに限定されるわけではない。例えば、検知信号を3つ以上の周波数帯域に分割することもできる。周波数帯域の分割数を多くすれば、被検知体の動作状況の解析をさらに詳細に行うことができる。
【0021】
また、フィルタ部210の前段に低い周波数成分を取り除くためのフィルタを設けることもできる。ミキサ部118から出力された検知信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。そのため、低い周波数成分を取り除くためのフィルタを設けるようにすれば、ドップラー効果に関する情報を含む高い周波数成分(ドップラー周波数信号)のみを取り出すことができる。なお、この際のフィルタリング周波数は、例えば、0.1〜5Hz程度とすることができる。
【0022】
また、被検知体が略静止したことを検知するために、直流成分を含む低い周波数帯域の検知信号を通過させるフィルタをフィルタ部210に設けることもできる。この場合、直流成分を含む低い周波数帯域の検知信号としては、例えば、直流成分(0Hz)と0Hzを越え、10Hz以下の周波数成分とを含む検知信号を例示することができる。ここで、略静止とは、静止状態のみならず、静止しようとしている直前の人体の僅かな揺らぎなどを含んだ状態を言う。
【0023】
ここでフィルタはハードウェアまたはソフトウェアにより構成させることができる。フィルタをハードウェアにより構成させたものとしては、例えば抵抗器(R)とキャパシタ(C)を構成要素として備えたものを例示することができる。そして、例えば、電波センサ3からの検知信号に対して抵抗器(R)、キャパシタ(C)で構成したハイパスフィルタ、及びローパスフィルタを組み合わせることで、必要な周波数帯を分別及び抽出するフィルタを構成することが可能である。ハードウェアによりフィルタを構成した場合には、安価で簡易的な構成のフィルタを得ることが可能となる。ただし、各電子部品(抵抗器(R)、キャパシタ(C))の抵抗値や容量値のバラツキの影響を受けて設定した周波数に変動を生じるおそれがあるので、より厳密な周波数設定を行う場合、抵抗及びキャパシタの抵抗値や容量値の持つ公差が小さいものを選択するようにすれば、設定した周波数帯域に近い値でフィルタリングを行うことが可能となる。
【0024】
フィルタをソフトウェアにより構成したものとしては、例えばマイクロコンピュータを用いた演算処理によってフィルタリングを行うディジタルフィルタを例示することができる。ディジタルフィルタを用いるようにすれば、フィルタリングする周波数を厳密に設定することができる。そのため、細かい周波数区分を行うことができるので、使用者の動作を的確に判断するのに適しているといえる。ただし、マイクロコンピュータのような演算素子を用いたフィルタリングのため、フィルタの数が多くなると演算時間が長くなる場合もある。この場合、演算時間が長くなると、バルブ部4の開閉時間が遅くなるなどの問題が発生するおそれがある。また、直流(DC)や直流(DC)近傍の周波数に対してフィルタリングを行うことが出来ないなどの問題もある。そのため、ソフトウェアにより演算処理を高速化する場合、フィルタの数を少なくしたり、演算素子の演算速度が速いものを選択したりすれば、演算処理を高速化し、詳細なフィルタリング処理を高速にて行うことが可能となる。
また、ハードウェアまたはソフトウェアにより構成されたフィルタを適宜選択するようにするか、両者を組み合わせることでフィルタ部210を構成するようにしてもよい。
以上のような回路構成により、被検知体を検知することができる。
【0025】
ここから、バルブ部4の開閉時それぞれにおける制御方法について説明する。
前述したように、制御部5はバルブ部4の閉状態(吐水前に止水から吐水させる状態)または開状態(吐水中から吐水継続または止水を判断する状態)に応じて、被検知体の検知を判断する制御(アルゴリズム)がそれぞれ設定されている。
まず、バルブ部4の閉時における制御方法を説明する。
図4は水栓装置10の使用者が吐水させるために被検知体(手や歯ブラシやコップなど)を到達地点(吐水口100近傍)に停止させようとするときの一連動作を示したものである。
まず、使用者は被検知体を受水部2の前側2aの上方から受水部2に進入させ、被検知体は電波センサ3の電波ビームに当たり始める(図4(a))。続いて、使用者は被検知体を到達地点(吐水口100近傍)に停止させようと減速させながら接近させる(図4(b))。その後、被検知体は到達地点(吐水口100近傍)に停止する直前に略静止状態となり、最終的に到達地点に揺らいだ状態になる。(図4(c))。
【0026】
図5は、被検知体と到達地点の距離に対する速度または周波数の変化を例示するグラフ図である。使用者が被検知体を到達地点に停止させようとするとき、図4で前述したように使用者は被検知体を到達地点に減速させながら接近させ、最終的に略静止状態にさせる。
このとき、たとえば、図4(a)の状態では、図5における周波数fAが得られる(A地点)。次に、図4(b)の状態では、図5におけるfAよりも小さい周波数fBが得られる(B地点)。さらに、図4(c)の状態では略静止状態となり、到達地点に停止する直前にfBよりも小さい周波数fC(C地点)が得られる。
このように、使用者が吐水させるために被検知体を到達地点に到達させようとする動作は、減速して最終的に所定速度以下(略静止状態)になる。上記のような特徴から、使用者が被検知体を到達地点へ差出して吐水させようとする動作を識別することができるとともに、制御部5にて、バルブ部4を開させるための、検知信号のアルゴリズムに応じて、吐水を開始させるタイミングを制御できる。このとき、電波センサ3から得られる検知信号の周波数は高い側から徐々に低い側にシフトし、停止する直前で略静止状態となり、低周波数(0〜10Hz)程度の検知信号が制御部5に出力される。
制御部5はバルブ部4が閉時においては、このような吐水させるための被検知体の特有の動作に応じた速度や速度変化のアルゴリズムが設定され、バルブ部4を開させる判定を行う。
【0027】
バルブ部4の閉時における制御フローを詳細に説明する。
バルブ部4の閉時において、制御部5は被検知体の減速を検知したらバルブ部4を開し、吐水口100からの吐水を開始させる第1吐水検知モードと、被検知体が所定速度以下になったらバルブ部4を開し、吐水口100からの吐水を開始させる第2吐水検知モードを備えている。
第1吐水検知モードと第2吐水検知モードについてそれぞれ説明する。
まず、第1吐水検知モードについて説明する。
図6は図5に表した具体例について、周波数帯域毎に検知信号から減速を判断する方法を説明するための模式図である。
制御部5の第1吐水検知モードでは、直流成分を取り除いた高い周波数帯域fBPFHと低い周波数帯域fBPFLのフィルタが設定されている。図4、図5から、被検知体は吐水させる一連動作で減速動作となるため、電波センサ3からは周波数が時間とともに減少する検知信号が得られる。これは、換言すると、時系列的に高い周波数帯域fBPFHから低い周波数帯域fBPFLへ検知信号の振幅の電圧値が順次表れることに対応することとなるため、高い周波数帯域fBPFHにおいてA地点付近における検知信号の振幅の電圧値が得られ、続いて、低い周波数帯域fBPFLにおいてB地点付近における検知信号の振幅の電圧値が順次得られる。
図7は、図6に表した被検知体の減速動作において、高い周波数帯域fBPFHと低い周波数帯域fBPFLで得られる検知信号の振幅の電圧値の時間変化を例示するグラフ図である。
ここでフィルタは、例えば、検知信号を各周波数帯域に対応するデジタル・フィルタを介してフィルタリングすることにより精度良く検知信号を得ることができる。
ここでは、高い周波数帯域fBPFHには20〜30Hz(図7(a))、低い周波数帯域fBPFLには10〜20Hz(図7(b))のそれぞれにおける検知信号の振幅の電圧値を表した。
ここで、高い周波数帯域fBPFHには電圧値の閾値VBPFH1及びVBPFH2が設定されており、低い周波数帯域fBPFLには電圧値の閾値VBPFL1及びVBPFL2が設定されている。
まず、高い周波数帯域fBPFHにおいて、得られる検知信号の電圧値VsがVs>VBPFH1または、Vs<VBPFH2となり、次に低い周波数帯域fBPFLにおいて、VsがVs>VBPFL1または、Vs<VBPFL2となったら減速したと判断し、バルブ部4を開させることができる。これにより、被検知体が到達地点に到達する前に早いタイミングで吐水を開始させることができる。
次に、第2吐水検知モードについて説明する。
図8は図5に表した具体例について、低い周波数帯域の検知信号から略静止を判断する方法を説明するための模式図である。
制御部5の第2吐水検知モードでは、直流成分を含む低い周波数帯域fBPFRのフィルタが設定されている。図4、5で説明したように、被検知体は一連動作の最後で略静止状態となるため、被検知体の検知信号の周波数は低い周波数となり、低い周波数帯域fBPFRにおいてC地点付近における検知信号の振幅の電圧値を得ることができる。
図9は、図8に表した被検知体の略静止状態において低い周波数帯域fBPFRで得られる検知信号の振幅の電圧値の時間変化を例示するグラフ図である。
ここでは、低い周波数帯域fBPFRには0〜10Hzにおける検知信号の振幅の電圧値を表した。
ここで、低い周波数帯域fBPFRには電圧値の閾値VBPFR1及びVBPFR2が設定されている。
低い周波数帯域fBPFRにおいて、得られる検知信号の電圧値VsがVs>VBPFR1または、Vs<VBPFR2となったら略静止状態になったと判断し、バルブ部4を開させることができる。これにより、被検知体が到達地点に停止する直前に吐水を開始させることができる。
【0028】
これにより、使用者が吐水させようと被検知体を電波ビームの範囲外である吐水部1の斜め上方の高さから吐水口100近傍に停止させるように差し出されても、電波ビームに進入したときには被検知体の周波数は10Hz以下になっていることから、到達地点に到達する直前に検知でき、制御部5がバルブ部4を開するため、早いタイミングで吐水が開始され、使用者が快適に使用することができる。
【0029】
以上のように、電波センサ3を受水部2内に配置し、吐水部1に向けて電波ビームを放射する場合、制御部5において第1吐水検知モードと第2吐水検知モードを設定しておくことにより、吐水エリアaを設定することができる。
これにより、使用者が吐水させるために被検知体を到達地点に停止させる前に確実に検知し、最適な早いタイミングで吐水を開始できるため、使用者が快適に使用することができる。また、減速や略静止を検知して吐水を開始するようにすることで、受水部2を手が一瞬横切ったり、水栓装置10の周辺を横切るなどの通過する動きは減速や略静止する動作とはならないため、これらの誤検知を防ぐことができる。
【0030】
次に、バルブ部4の開時における制御方法を説明する。
バルブ部4の開時においては、制御部5は主に吐水口100近傍の吐水流の状態を電波センサ3で検知し、得られる検知信号をもとに吐水部1からの吐水の継続(バルブ部4を開状態のまま)にするか、または止水するか(バルブ部4を閉状態にするか)を判断する。
ここで、吐水流の状態とは、吐水流のみの状態と、被検知体(手、歯ブラシ、コップなど)が吐水流に当たって吐水流が乱れた状態と、被検知体(手やコップ内)に吐水流を溜めている状態を判断する。
【0031】
図10は、吐水流のみの場合と吐水を使用中の場合の水栓装置を表す模式図であり、
図10(a)は吐水流のみの状態、図10(b)は被検知体(手、歯ブラシ、コップなど)に吐水流が当たって乱れている状態、図10(c)は被検知体(コップや両手など)に水を溜めている状態をそれぞれ表す。
図10(a)における吐水流のみの状態は使用者が水を使用していない時であり、図10(b)及び図10(c)における水が被検知体に当たっている状態は使用者が水を使用している状態であることがわかる。
ここで、制御部5は、バルブ部4が開時においては、吐水流のみの状態と水が被検知体に当たっている状態を識別し、吐水流のみの状態になったら止水と判断し、バルブ部4を閉する止水検知モードを備えている。
なお、本発明において、吐水流の流量は、図示しない定量弁によって一定流量である。
【0032】
図11は、図10(a)〜(c)に表したそれぞれの場合において、電波センサ3から得られる検知信号から直流成分を除去するハイパスフィルタを通過した検知信号を例示するグラフ図である。フィルタの周波数は、例えば、0.1〜5Hz程度とすることができる。
ここで、被検知体が吐水流に当たって乱れた場合、乱れた吐水流の一部は、電波センサ3に接近する方向にも飛散することから、電波センサ3と吐水流との距離が近くなるため、吐水流のみの検知信号よりも電圧値よりも大きくなる。
また、吐水流をコップなどに水溜めしている場合、吐水流はコップ内で落ち着き、0〜5Hz程度のゆっくり揺れる動きとなることから、吐水流のみの検知信号よりも電圧値は小さくなる。
ただし、コップなどがたとえば金属で構成されている場合には、電波ビームが金属で反射してコップ内の水が見えない場合がある。その場合には、吐水流の状態でなく、コップを持つ手やコップ自身の揺らぎが吐水口100近傍で同様に0〜5Hz程度のゆっくり揺れる動きで観測されることから、水を溜めている状態として判断することができる。
【0033】
ここで、制御部5には、吐水流のみの振幅よりも大きい閾値VM1、VM2及び、吐水流のみの振幅よりも小さい閾値VC1、VC2が設定されている。
制御部5は検知信号VsがVs>VM1またはVs<VM2の場合には、被検知体が吐水流に当たっていると判断し、バルブ部4を開状態のままにし、吐水を継続させることができる。
また、検知信号VsがVC2<Vs<VC1の場合には、被検知体に吐水流が溜まっていると判断し、バルブ部4を開状態のままにし、吐水を継続させることができる。
しかし、検知信号VsがVC1<Vs<VM1またはVM2<Vs<VC2の場合には、吐水流のみの状態であると判断し、バルブ部4を閉状態にし、止水を行うことができる。
これにより、吐水が開始された後、使用者が図10(b)や図10(c)のように水を使用している状態では確実に吐水を継続し、図10(a)のように吐水流を使用しなくなったら、迅速に止水を開始できるため、快適に使用できる。
【0034】
また、制御部5の止水検知モードにおける別の判定方法として、特定の周波数帯域における検知信号の電圧値に基づいて吐水流の状態を判定することもできる。
図12は、上述した各吐水流の状態における検知信号のパワースペクトルを例示するグラフ図であり、図12(a)は吐水流のみの状態、図12(b)は被検知体(手、歯ブラシ、コップなど)に吐水流が当たって乱れている状態、図12(c)は被検知体(コップや両手など)に水を溜めている状態をそれぞれ表す。
図12(a)の吐水流のみの状態では、吐水流が規則的であることから、ある所定範囲の周波数(5〜30Hz程度)が現れる。
また、図12(b)の被検知体に水が当たって乱れている状態では、被検知体の表面を伝う低周波程度(0〜10Hz程度)の吐水流や、被検知体を伝った後に流れ落ちる中周波程度(10〜50Hz程度)の吐水流や、被検知体に衝突して飛散する高周波程度の吐水流(50〜100Hz程度)など、低周波〜高周波(0〜100Hz程度)までが同時に現れる。
また、図12(c)の被検知体(コップや両手など)に水を溜めている状態では、水がコップなどの中で落ち着く、または、コップなどを持つ手やコップ自身の揺らぎのため、低周波程度(0〜5Hz程度)が現れる。
即ち、図12(a)〜(c)において、周波数帯域がそれぞれ異なることがわかる。
【0035】
図13は、任意の周波数帯域における各吐水流の状態を示した図である。
ここでは、制御部5は、20−30Hzの周波数帯域のフィルタと、60−70Hzの周波数帯域のフィルタを備えている。
図12と図13から各吐水流の状態に応じたバルブ開閉の状態を説明する。
制御部5は、吐水流のみを基準として各周波数帯域に設定された電圧値の閾値を越えたか否かの組み合わせによって、吐水流の状態を判断する。
図13(a)は20−30Hzの周波数帯域のフィルタで得られる検知信号の電圧値を示したものである。ここでは被検知体が水に当たったときの検知信号は、吐水流と大差がなく、吐水流のみとの識別の判定に使用しないため、図示しない。
20−30Hzの周波数帯域における閾値VTC1及びVTC2は、吐水流のみの状態で得られる検知信号の振幅よりも低めの値に設定される。このとき、コップなどに水を溜めている状態では20−30Hzの周波数成分がないことから、電圧値はほとんど現れない。
また、図13(b)は60−70Hzの周波数帯域のフィルタで得られる検知信号の電圧値を示したものである。ここでは、コップなどに水を溜めるときの検知信号は、吐水流と大差がなく、吐水流のみとの識別の判定に使用しないため、図示しない。
60−70Hzの周波数帯域における閾値VTM1及びVTM2は、吐水流のみの状態で得られる検知信号の振幅よりも高めの値に設定される。このとき、被検知体が水に当たった状態では60−70Hzの周波数成分が多く含まれることから、大きい電圧値が現れる。
【0036】
上記のように、各周波数帯域において、吐水流のみの検知信号を基準とした閾値を設定することにより、20−30Hzにおいては、得られる検知信号Vsが、Vs>VTC1、またはVs<VTC2の場合には吐水流のみとコップなどに水を溜める状態とから吐水流のみを識別できる。
また、60−70Hzにおいては、得られる検知信号Vsが、Vs<VTM1、またはVs>VTM2の場合には吐水流のみと被検知体が水に当たった状態とから吐水流のみを識別できる。
したがって、20−30Hz及び、60−70Hzの周波数帯域を用いることにより、各吐水流の状態を識別することができる。
ここで、制御部5はVs>VTC1またはVs<VTC2、且つ、Vs<VTM1またはVs>VTM2において、バルブ部4を閉するように設定することができる。
これにより、使用者が洗浄行為などを終えて、手などが吐水流から離れた瞬間に吐水流のみの状態(使用者が水栓装置10を使用していない状態)を判断し、迅速に止水を行うことができるため、快適に使用できる。
一方、被検知体が水に当たった状態や、コップなどに水が溜まっている状態では、吐水流のみを判定する条件とはならないため、制御部5はバルブ部4を開状態のままにし、吐水を継続することができる。
【0037】
以上のように、任意の周波数帯域で比較することにより精度良く各吐水流の状態を識別し、吐水流のみの状態を判断し、迅速に止水を行うことができる。
なお、本発明では、2つの周波数帯域を用いて吐水流の状態を比較したが、フィルタの数に限定はなく、比較できれば1つでも良いし、3つ以上でも構わない。
また、上述したハイパスフィルタとの組み合わせで判断しても良い。
【0038】
ここで、周波数帯域の選択の仕方によっては、各吐水流の状態の振幅が、上述したハイパスフィルタと同様の大小関係とはならない場合もある。
図14は、0−5Hzの周波数帯域のフィルタで得られる検知信号の電圧値を示した図である。
たとえば、0−5Hzの周波数帯域を用いる場合には、吐水流のみの状態よりも、被検知体(コップや両手など)に水を溜めている状態の方が振幅が大きくなる。
この場合には、制御部5は0−5Hzの周波数帯域の閾値を、吐水流のみの状態の振幅よりも大きいVCT1、VCT2に設定することができる。
これにより、得られる検知信号Vsが、Vs<VCT1、またはVs>VCT2の場合には吐水流のみとコップなどに水を溜める状態とから吐水流のみを識別できる。
【0039】
ここで、制御部5の止水検知モードにおいて吐水流のみを基準に設定される電圧値の閾値の設定方法について説明する。
制御部5は記憶手段260(図2参照)を備え、閾値は記憶手段260に格納される。
判定部230は、電波センサ3から取得した検知信号の電圧値と、記憶手段260に格納されている閾値とを比較してバルブ部4の開閉を制御する。吐水検知モードも同様の制御を行う。
【0040】
止水検知モードで用いる閾値の設定は、たとえば、現場で水栓装置1が使用者に初めて使用される前に予め決定して記憶手段260に格納しておいてもよく、または、使用者が使用し始めた後でも学習により閾値を適宜決定して記憶手段260に格納することができる。
【0041】
閾値を予め決定する場合は、例えば、水栓装置10を設計する際に予め実験などにより閾値を決定して、記憶手段260に格納することができる。
または、水栓装置10を工場で製造し出荷する前、あるいは水栓装置10を現場に設置した際に、吐水させて閾値を決定し、記憶手段260に格納することができる。
【0042】
一方、学習により閾値を決定する場合は、例えば、水栓装置10を現場で稼働開始した後に、制御部5によって所定の時間毎に吐水部に吐水させ、その状態での検知信号に基づいて閾値を決定し、記憶手段260に格納することができる。このような閾値の決定と格納は、水栓装置10の使用頻度が低い時間帯(例えば、夜間)などに実行するとよい。
また、水栓装置10の使用頻度が低い時間帯を制御部5(図2、図3参照)が学習し、このようにして決定された使用頻度が低い時間帯に閾値の決定と格納を実行することもできる。また、吐水や止水のいずれか一方または両方を所定の回数だけ実行した場合に、閾値を新たに決定し格納することができる。
【0043】
水栓装置10が稼働開始した後に、閾値を適宜学習するようにすることにより、例えば、使用環境(供給水圧など)が途中で変動することで、吐水流から得られる検知信号が変動してしまうような現場においても、常に最適の閾値に基づいて水栓装置10を動作させることができる。
【0044】
以上のように、電波センサ3を受水部2内に配置し、吐水部1に向けて電波ビームを放射する場合、制御部5において止水検知モードを設定しておくことにより、止水エリアbを設定することができる。
これにより、使用者が洗浄行為を終了し、手などを吐水流から離した直後に吐水流のみを確実に検知し迅速に止水を行うことができるため、使用者が快適に使用することができる。
【0045】
また、図15は、水栓装置10に、吐水エリアaと止水エリアBに加え、電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に吐水禁止エリアsが設定されている図である。
水栓装置10は、制御部5により、バルブ部4が閉時に、電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に吐水禁止エリアsを設定することができる。
吐水禁止エリアsでは、吐水検知モードにおいて被検知体が検知されても、制御部5はバルブ部4の開動作を行わない。
これにより、たとえば、吐水前に使用者が石鹸を使って手の洗浄行為を行うとき、手につけた石鹸を手全体に伸ばすために受水部2の使用者側で手を揉む動作において誤検知することなく、その後、手を吐水口100近傍に差し出すときには早いタイミングで吐水を開始することができる。
また、使用者が洗浄行為などを終了し、手やコップなどが吐水流から離れることで止水検知モードによってバルブが閉し止水が行われ、再び吐水検知モードに戻った後、受水部2内の使用者側において行われる、洗浄後に濡れた被検知体の水を掃う動作や、コップに溜めた水を捨てる動作や、口に含んだ水を吐く動作や、ハンカチなどで手を拭く動作や、電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に付着し、壁面を伝う水などを誤検知して吐水継続してしまうことなく、早い止水を実現することができる。
【0046】
図16は、10−20Hzの周波数帯域のフィルタにより、手につけた石鹸などを手全体に伸ばすために受水部2の使用者側で手を揉む動作において得られる検知信号を示した図である。
手を揉む動作は、10―20Hz程度であり、電波センサ3近傍での動作であるから、電波センサ3との距離が近いため、検知信号が大きく現れる。
したがって、制御部5は検知信号の電圧値Vsが、Vs>BPFT1または、Vs<BPFT2になったら、手を揉む動作であると判断し、バルブ部4を開させることを禁止することができる。
【0047】
また、図17は50−90Hzの周波数帯域のフィルタにより、洗浄後に濡れた被検知体の水を掃う動作や、コップや両手に溜めた水を受水部2内に捨てる動作や、口に含んだ水を受水部2内に吐く水の動作において得られる検知信号を示した図である。
これらの動作は50−90Hz程度であり、電波センサ3近傍での動作であるから、電波センサ3との距離が近いため、検知信号が大きく現れる(図14のM部分であり、水を掃う動作はこれが繰り返し数回行われる)。
したがって、制御部5は検知信号の電圧値Vsが、Vs>BPFM1または、Vs<BPFM2になったら、吐水流を掃う動作や吐水流を受水部2に捨てるまたは吐く動作であると判断し、バルブ部4を開させることを禁止することができる。
【0048】
また、図18は直流成分を含む低い周波数帯域0−5Hzのフィルタにより、電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に付着し、壁面を伝う水の動作において得られる検知信号を示した図である。
受水部2の壁面を伝う水の動作は0−5Hz程度であり、電波センサ3近傍での動作であるから、電波センサ3との距離が近いため、検知信号が大きく現れる。
したがって、制御部5は検知信号の電圧値Vsが、Vs>VMTになったら、受水部2の壁面を伝う水の動作であると判断し、バルブ部4を開させることを禁止することができる。
【0049】
以上のことより、制御部5により、バルブ部4の閉時に電波センサ3が配置された前記受水部2の壁面近傍に吐水禁止エリアsが設定されることで、吐水検知モードを判断する前に吐水させる動作以外の動作を判断することができるため、誤検知を防止しつつ、第1及び第2吐水検知モードにより、到達地点に到達(停止)する前にバルブ部4を開し、最適な早いタイミングで吐水を開始することができるため、使用者が快適に使用できる。
【0050】
図19に、本発明の水栓装置10をキッチン水栓装置30で構成した第2の実施例の概観図を示す。
キッチン水栓装置30は、吐水口101から吐水流を吐出するための吐水部21と、吐水部21から吐出される吐水流を受ける受水部22と、受水部22の内部に使用者の手や包丁やまな板などの調理器具や食材などの被検知体が進入してきたことを検知する電波センサ23と吐水部21からの吐止水を切り替えるバルブ部24と、電波センサ23からの検知信号に基づき、バルブ部24の開閉を制御する制御部25とで構成されている。また、受水部22に隣接するように料理作業台31が備えられている。
ここで、電波センサ23は受水部22の吐水部1が配置される面や使用者が接近する面以外の側面且つ料理作業台31の下方側に隠蔽された状態で設置されている。
【0051】
制御部25は、バルブ部24が閉時には、被検知体の減速を検知して吐水を開始する第1吐水検知モードと、被検知体が所定速度以下になったこと(略静止)を検知して吐水を開始する第2吐水検知モードを備えている。
第1実施例と同様、第1吐水検知モードは高い周波数帯域と低い周波数帯域のフィルタを用いて減速を判断し、第2吐水検知モードは低い周波数帯域の検知信号を通過させるフィルタを用いて、略静止状態を判断することでバルブ部4を開し、吐水口101からの吐水を開始させることができる。これにより、被検知体が到達地点に到達する前に吐水口101からの吐水を開始することができるため、最適な早いタイミングで吐水が開始される。
したがって、たとえば料理作業台31側から、食材を切っている途中で包丁の汚れを素早く水で洗い流したいときなどに快適に使用できる。また、減速や略静止を検知して吐水を開始するようにすることで、受水部22を手が一瞬横切るなどの動きは減速や略静止する動作とはならないため、これらの誤検知を防ぐことができる。以上のように、電波センサ23を受水部22内に配置し、吐水部21に向けて電波ビームを放射する場合、制御部25において第1吐水検知モードと第2吐水検知モードを設定しておくことにより、吐水エリアcを設定することができる。
【0052】
また、制御部25は、バルブ部24が開時にも、第1実施例と同様、主に吐水口100近傍の吐水流の状態(吐水流のみの状態と、被検知体(手、食器類、食材など)が吐水流に当たって吐水流が乱れた状態と、被検知体(手や容器内)に吐水流を溜めている状態)を電波センサ3得られる検知信号をもとに、各吐水流の状態を識別し、被検知体に水が当たって乱れている状態や、被検知体に水を溜めている状態(吐水流を使用している状態)を判断した場合にはバルブ部24を開状態のままにして吐水を継続し、吐水流のみ(吐水流を使用していない状態)を判断した場合にはバルブ部24を閉状態にして止水を行う。
これにより、使用者が洗浄行為を終了し、手などを吐水流から離した直後に吐水流のみを確実に検知し迅速に止水を行うことができるため、使用者が快適に使用することができる。
以上のように、電波センサ23を受水部22内に配置し、吐水部21に向けて電波ビームを放射する場合、制御部25において止水検知モードを設定しておくことにより、止水エリアdを設定することができる。
【0053】
さらに、キッチン水栓装置30は制御部25により、バルブ部24が閉時には、第1実施例と同様、電波センサ23が配置された前記受水部22の壁面近傍に吐水禁止エリアtを設定することができる。
吐水禁止エリアsでは、吐水検知モードにおいて被検知体が検知されても、制御部5はバルブ部4の開動作を行わない。
これにより、様々なキッチン道具を受水部22内の電波センサ23近傍に置こうとしたり、受水部内22から取り上げるときの行為などでは誤検知せず、その後、手などを吐水口100近傍に差し出すときには早いタイミングで吐水を開始することができる。
また、使用者が洗浄行為などによって吐水流を使用し、被検知体が吐水口100近傍から離れることで、止水検知モードによってバルブが閉し止水が行われ、再び第1及び第2吐水検知モードに戻った後、受水部22内の電波センサ23が設置されている側面近傍において行われる、洗浄後に濡れた被検知体の水を掃う動作や、コップに溜めた水を捨てる動作や口に含んだ水を吐く動作や、タオルなどで手を拭く動作や、電波センサ23が配置された前記受水部2の壁面近傍に付着し、壁面を伝う水などを誤検知ししてしまうことなく、その後、手などを吐水口101近傍に差し出すときには最適な早いタイミングで吐水を開始することができる。
【0054】
以上のように、電波センサ23を受水部22の側面の下方側に設置したキッチン水栓装置30のような構成でも、第1実施例のように前側に設置した水栓装置10の場合と同様に、最適なタイミングで吐水及び止水できる水栓装置が提供できる。
【0055】
以上のように、本発明によれば、バルブ部4や24が閉時には、使用者が吐水させるために被検知体を到達地点に停止させようとする際の減速や略静止の動作に応じて、電波センサ3から得られる速度や速度変化のアルゴリズムにより吐水エリアaやcと、使用者が受水部2や22の使用者側で行う、吐水前の準備(手全体に石鹸を伸ばすなど)や、使用後の行為(水を掃う、手を拭く、水を捨てる、水を吐く)や受水部2や22を伝う水に応じて、電波センサ3から得られる速度や速度変化のアルゴリズムにより吐水禁止検知エリアsやtとを形成し、バルブ部4や24が開時には、吐水口100や101近傍の吐水流の状態に応じて、電波センサ3から得られる速度や速度変化のアルゴリズムにより止水エリアbやdを形成することで、最適なタイミングで吐水及び止水できる水栓装置が提供できる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定
されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備
えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、水栓装置10やキッチン水栓装置30などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、フィルタの数、周波数帯域、接続形態なども例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、バルブ制御部240には、分別された検知信号に基づいて吐水部からの吐水の可否を判定する部分と、バルブ部4や24の開閉を制御する部分とが一体に設けられていてもよいし、両部分が別々に設けられていてもよい。例えば、1個のCPUで吐水の可否の判定とバルブ部4や24の開閉制御を行ってもよいし、複数のCPUを設けて吐水の可否の判定とバルブ部4や24の開閉制御を別のCPUで行ってもよい。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1 21 吐水部
2 22 受水部
3 23 電波センサ
4 24 バルブ部
5 25 制御部
30 キッチン水栓装置
31 料理作業台
100 101 吐水口
112 アンテナ
114 送信部
116 受信部
118 ミキサ部
210 フィルタ部
230 判定部
240 バルブ制御部
260 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吐出する吐水口と、
電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動に関する情報を検知信号として出力するセンサ部と、
前記検知信号に基づいて、前記吐水口からの吐水、止水を切替えるバルブを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知信号の周波数に基づいて検知エリア内における被検知体が停止する直前の速度となったか否かを判定するとともに、前記検知信号の電圧値に基づいて前記検知エリア内における被検知体が吐水口の近傍にあるか否かを判定する判定部を有しており、
被検知体が吐水口に向かって減速しながら接近して停止する際の動作において、被検知体が停止する直前の速度となり、且つ被検知体が前記吐水口の近傍にあることを判定した場合に、吐水が開始されるようバルブを制御する
ことを特徴とする水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−19265(P2013−19265A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240941(P2012−240941)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2008−325473(P2008−325473)の分割
【原出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】