説明

水栓装置

【課題】コストや設置場所の問題を解消し、ウォーターハンマーを抑制することのできる水栓装置を提供すること。
【解決手段】給水路2に、給水量の調節を行う電動式給水弁6が設けられ、給湯路3には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁7が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁8が、吐水路に設けられるか、または給水路および給湯路のそれぞれに設けられ、電動式給水弁および前記電動式給湯弁の下流側に配置され、電動式給水弁による給水量の低減および前記電動式給湯弁による給湯量の低減を行わせた後に、電磁弁による水、湯または混合水の供給停止を行わせる制御手段15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーターハンマーが抑制された水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォーターハンマーは、水撃作用などとも称され、管内を流れる水などの加圧された流体を急に止めたときに、流体の慣性によって管内に衝撃や振動が発生する現象である。たとえば、給水路を電磁弁で開閉するときに発する音としてウォーターハンマーは認識される。このようなウォーターハンマーは、単に音や振動といった問題にとどまらず、流体を圧送するポンプなどの各種機器の故障の原因となっている。
【0003】
下記特許文献1に記載された自動混合水栓は、湯を供給する湯側流路に設けられ、湯の供給を停止する電動式の湯側止水栓と、水を供給する水側流路に設けられ、水の供給を停止する電動式の水側止水栓とを備えている。また、自動混合水栓は、湯側流路と水側流路が合流する合流路に設けられ、湯側流路内の湯と水側流路内の水との混合湯の流量を計測する電気式の流量計を備えている。さらに、自動混合水栓は、流量計の計測結果に基づいて、湯側止水栓と水側止水栓を単独または同時に閉じて混合湯の供給を停止させる制御部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−165457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自動混合水栓では、混合湯が設定湯量に達したと制御部が判断した場合に、制御部が、水側止水栓および湯側止水栓を同時に閉鎖させて注水を停止させるが、水側止水栓および湯側止水栓には、一般に、パルス駆動の電磁弁が使用される。このため、特許文献1に記載された自動混合水栓でもウォーターハンマーの発生が懸念される。
【0006】
ウォーターハンマーの抑制には、一次側の流路に、圧力を逃がしたり、段階的に電磁弁を締め切ったりするなどのウォーターハンマー防止器を設置することが一般に行われている。しかしながら、このようなウォーターハンマー防止器を設置すると、その分水栓装置のコストが高騰し、また、ウォーターハンマー防止器を設置するための場所を確保しなければならないなどの不都合が生じている。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、コストや設置場所の問題を解消し、ウォーターハンマーを抑制することのできる水栓装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の水栓装置は、水を供給する給水路と、湯を供給する給湯路と、給水路および給湯路に連通し、給水路から供給される水、給湯路から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する吐水路とを備えた水栓装置において、給水路には、給水量の調節を行う電動式給水弁が設けられ、給湯路には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁が、吐水路に設けられるか、または給水路および給湯路のそれぞれに設けられ、電動式給水弁および電動式給湯弁の下流側に配置され、電動式給水弁による給水量の低減および電動式給湯弁による給湯量の低減を行わせた後に、電磁弁による水、湯または混合水の供給停止を行わせる制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この水栓装置においては、制御手段は、湯水が混合された混合水の流量または温度を設定する設定部を備え、この設定部で設定された混合水の流量または温度に応じて、制御手段は、電動式給水弁による給水量の調節および電動式給湯弁による給湯量の調節を行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水栓装置によれば、コストや設置場所の問題が解消され、ウォーターハンマーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の水栓装置の第1実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】図1に示した水栓装置に設けられた電動式給水弁および電動式給湯弁の一形態を示した要部斜視図である。
【図3】図1に示した水栓装置において、電動式給水弁による給水量の低減および電動式給湯弁による給湯量の低減にともなう給水路および給湯路内の水圧変化を示したグラフである。
【図4】図1に示した水栓装置において、電動式給水弁による給水量の低減および電動式給湯弁による給湯量の低減の後に、電磁弁による水、湯または混合水の供給停止を行うときの吐水路内の水圧変化を概略的に示したグラフである。
【図5】本発明の水栓装置の第2実施形態を概略的に示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の水栓装置の第1実施形態を概略的に示した構成図である。
【0013】
水栓装置1は、水を供給する給水路2と、湯を供給する給湯路3と、給水路2および給湯路3に連通する吐水路4とを備えている。給水路2と給湯路3は、それぞれの下流端において接続し、吐水路4の上流端に接続されている。吐水路4は、給水路2および給湯路3の下流側に位置している。このため、吐水路4には、給水路2から供給される水、給湯路3から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する。吐水路4には、給湯路3から湯が供給されないときに水のみが流通し、給水路2から水が供給されないときに湯のみが流通する。給水路2および給湯路3のそれぞれから水および湯が供給されるときは、湯水が混合された混合水が吐水路4を流通する。このような吐水路4は、下流端に吐水口5を有し、吐水口5は大気に開放されている。給水路2、給湯路3および吐水路4は、いずれも配管により形成されている。
【0014】
また、水栓装置1では、給水路2に、給水量の調節を行う電動式給水弁6が設けられ、給湯路3に、給湯量の調節を行う電動式給湯弁7が設けられている。吐水路4には、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁8が設けられている。
【0015】
図2は、図1に示した水栓装置に設けられた電動式給水弁および電動式給湯弁の一形態を示した要部斜視図である。
【0016】
電動式給水弁6および電動式給湯弁7は、給水路2または給湯路3に接続される接続口9を有する外筒10と、外筒10の内部に回動自在に設けられた内筒11とを備えている。外筒10および内筒11は、ともに有底円筒状の部材であり、各々の側面部には開口12、13が形成されている。内筒11の底部には、外筒10の底部から外方に突出する回転軸14が設けられており、回転軸14は、モータの回転軸に減速機構などを介して接続される。回転軸14の突出を可能とするために、外筒10の底部には、回転軸14を通すことのできる貫通孔が形成されている。回転軸14は、その貫通孔を通じて外筒10の底部から外方に突出している。
【0017】
モータに電力が供給されると、モータの回転力が回転軸14に伝達され、回転軸14が回動して内筒11が、外筒10の内部を回動する。内筒11の回動にともない、内筒11の側面部に形成された開口13が外筒10の側面部に形成された開口12と重なる面積が変化する。開口12、13の重なり合う面積が大きいときには、接続口9を通じて外筒10、内筒11の順に流入し、開口13から流出する水または湯の流量が多くなる。逆に開口12、13の重なり合う面積が小さいときには、開口13から流出する水または湯の流量が少なくなる。このようにして、電動式給水弁6および電動式給湯弁7は、給水量または給湯量の調節を行う。
【0018】
なお、内筒11の開口13の下流側は、給水路2または給湯路3に接続され、この接続部は、外筒10の接続口9よりも下流側に位置している。また、内筒11の開口13の大きさは、必ずしも外筒10の開口12よりも小さくする必要はなく、開口12と同じ大きさとすることができる。また、開口13は、大きさの異なるものを内筒11の側面部に間隔をあけて形成することもできる。この場合には、外筒10の開口12に一致させる開口13を変えるように内筒11が回動して給水量および給湯量の調節を行うことができる。
【0019】
一方、図1に示した水栓装置1では、電磁弁8は、水、湯または混合水の量の調節を行うものではなく、電力のON/OFFにより開閉し、水、湯または混合水の供給の開始および停止のみを行う。
【0020】
また、水栓装置1では、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作を制御する制御手段15が設けられている。制御手段15は、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8と電気的に接続されている。
【0021】
制御手段15は、吐水路4を流通する、湯水が混合された混合水の流量または温度を設定する設定部16を備えている。混合水の流量または温度の設定は、水栓装置1のユーザーが設定部16において直接入力することができるようになっている。設定部16で設定された混合水の流量または温度に応じて、制御手段15は、電動式給水弁6による給水量の調節および電動式給湯弁7による給湯量の調節を行わせる。電動式給水弁6および電動式給湯弁7では、設定部16で設定された混合水の流量または温度に見合うように、外筒10および内筒11の開口12、13が重なり合う面積が、内筒11の回動により変更される。その結果、吐水路4を流通する水と湯の流量比が調節され、水栓装置1は、所望の流量または温度の混合水を吐水口5から吐水することができる。
【0022】
また、制御手段15は、水栓装置1の吐水を停止する際に、電動式給水弁6による給水量の低減および電動式給湯弁7による給湯量の低減を先に行わせ、その後、電磁弁8による水、湯または混合水の供給停止を行わせる。すなわち、制御手段15は、吐水停止が制御手段15に入力されると、図2に示した電動式給水弁6および電動式給湯弁7では、内筒11が回動し、開口12、13が重なる面積を小さくして給水量の低減および給湯量の低減が行われる。
【0023】
なお、制御手段15への吐水停止の入力は、たとえば、吐水のON/OFFスイッチを介したユーザーによる直接入力、人感センサからの自動入力などとすることができる。
【0024】
図3は、図1に示した水栓装置において、電動式給水弁による給水量の低減および電動式給湯弁による給湯量の低減にともなう給水路および給湯路内の水圧変化を示したグラフである。
【0025】
図1に示した電磁弁8による水、湯または混合水の供給停止を行わせるに先立って、電動式給水弁6による給水量の低減および電動式給湯弁7による給湯量の低減を行わせると、図3に示したような水圧変化が給水路2および給湯路3で起こる。図3に示した水圧変化は、図2に示した電動式給水弁6および電動式給湯弁7における外筒10および内筒11の開口12、13が重なり合う面積を最大で42mmとしたときの、給水路2および給湯路3内の圧力上昇値と開口面積率の関係として示している。
【0026】
図3に示したように、開口12、13が重なり合う面積が小さくなるにつれて圧力上昇値が徐々に減少し、開口面積率が約25%(面積が10.5mm)になると、圧力上昇値は7割減少して0.3MPaになり、開口面積が0%、すなわち、電動式給水弁6および電動式給湯弁7の閉鎖状態では、圧力上昇値は0MPaになる。
【0027】
このように、給水路2および給湯路3の圧力上昇値が減少した状態では、図1に示した電磁弁8による給水停止を行わせても、電磁弁8の閉鎖にともなう吐水路4の水圧の上昇を低く抑えることができる。
【0028】
図4は、図1に示した水栓装置において、電動式給水弁による給水量の低減および電動式給湯弁による給湯量の低減の後に、電磁弁による水、湯または混合水の供給停止を行うときの吐水路内の水圧変化を概略的に示したグラフである。
【0029】
吐水路4の水圧を測定する水圧センサは、吐水路4において電磁弁8の上流側に配置して水圧変化を測定する。図4に示したように、電磁弁8による水、湯または混合水の供給停止に先立って、電動式給水弁6による給水量の低減および電動式給湯弁7による給湯量の低減を行わせると、電磁弁8に流れる水、湯または混合水の流量と圧力が下がり、圧力上昇値をウォーターハンマーが発生しない程度に抑えることができる。
【0030】
図1に示した水栓装置1では、制御手段15の上記のとおりの電動式給水弁6、電動式給湯弁7おおび電磁弁8の動作制御によって、電動式給水弁6および電動式給湯弁7自体の圧力損失を大きくし、電磁弁8に流れる水、湯または混合水の流量を減少させることができる。このため、電磁弁8が閉鎖状態となったときに発生するエネルギーを減少させることができ、ウォーターハンマーを抑制することができる。
【0031】
水栓装置1は、一次側の流路に、圧力を逃がしたり、段階的に電磁弁8を締め切ったりするなどのウォーターハンマー防止器を設置せずにウォーターハンマーの抑制を実現することができる。したがって、水栓装置1は、ウォーターハンマー防止器の設置にともなうコスト高騰の問題や、ウォーターハンマー防止器を設置するための場所を確保しなければならないなどの不都合を解消することができる。
【0032】
なお、制御手段15は、電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作制御を行うように、あらかじめプログラミングされたマイクロコンピュータなどを備えることができる。
【0033】
図5は、本発明の水栓装置の第2実施形態を概略的に示した構成図である。
【0034】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分には図5図中に同一の符号を付し、以下においてその説明を省略する。
【0035】
水栓装置17では、電磁弁8が、吐水路4に設けられているのではなく、給水路2および給湯路3のそれぞれに設けられ、電磁弁8は、電動式給水弁6および電動式給湯弁7の下流側に配置されている。いずれの電磁弁8も制御手段15に電気的に接続されている。
【0036】
一方、水栓装置17においても制御手段15は、水栓装置17の吐水を停止する際に、電動式給水弁6による給水量の低減および電動式給湯弁7による給湯量の低減を先に行わせ、その後、電磁弁8による水、湯または混合水の供給停止を行わせる。
【0037】
したがって、水栓装置17は、第1実施形態の水栓装置1と同様に、制御手段15の上記のとおりの電動式給水弁6、電動式給湯弁7および電磁弁8の動作制御によって、電動式給水弁6および電動式給湯弁7自体の圧力損失を大きくし、電磁弁8に流れる水、湯または混合水の流量を減少させることができる。このため、電磁弁8が閉鎖状態となったときに発生するエネルギーを減少させることができ、ウォーターハンマーを抑制することができる。
【0038】
本発明は、以上の実施形態によって限定されるものではない。電動式給水弁、電動式給湯弁および電磁弁の構成および構造の細部については様々な態様が可能である。また、制御手段についてもその構成および構造には様々なものが採用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1、17 水栓装置
2 給水路
3 給湯路
4 吐水路
6 電動式給水弁
7 電動式給湯弁
8 電磁弁
15 制御手段
16 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を供給する給水路と、湯を供給する給湯路と、給水路および給湯路に連通し、給水路から供給される水、給湯路から供給される湯、または湯水が混合された混合水が流通する吐水路とを備えた水栓装置において、
前記給水路には、給水量の調節を行う電動式給水弁が設けられ、前記給湯路には、給湯量の調節を行う電動式給湯弁が設けられ、水、湯または混合水の供給の開始および停止を行う電磁弁が、前記吐水路に設けられるか、または前記給水路および前記給湯路のそれぞれに設けられ、前記電動式給水弁および前記電動式給湯弁の下流側に配置され、
前記電動式給水弁による給水量の低減および前記電動式給湯弁による給湯量の低減を行わせた後に、電磁弁による水、湯または混合水の供給停止を行わせる制御手段が設けられている
ことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記制御手段は、湯水が混合された混合水の流量または温度を設定する設定部を備え、この設定部で設定された混合水の流量または温度に応じて、制御手段は、電動式給水弁による給水量の調節および電動式給湯弁による給湯量の調節を行わせることを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2158(P2013−2158A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134993(P2011−134993)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】