説明

水槽分割方法、水槽および壁体

【課題】貯留された液体を水槽内から排出することなく、水槽を壁体によって分割することができ、壁体の端部と水槽の内壁面又は底面との間の隙間を容易に低減することが可能な水槽分割方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る水槽分割方法は、壁体の端部が水槽の内壁面と水槽の底面に沿うように、液体が貯留された水槽内に壁体を設置する第1ステップと、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方の隙間を低減する第2ステップとを備え、第2ステップは、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って中空の伸張性を有する中空部材を設置する第3ステップと、中空部材内に流体を充填する第4ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの水槽を複数の槽に分割する水槽分割方法、複数の槽に分割された水槽および壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水処理設備等に設置された水槽において、槽内を複数に分割して、より効率的な処理を行う技術がある。例えば、特許文献1では、汚水を無終端水路に循環させながら汚水を処理する下水処理装置において、無終端水路に設けられた隔壁によって水槽が形成され、各水槽が好気状態又は嫌気状態に設定される。
【0003】
特許文献2では、排水処理において、排水原水を、担体を流動させる曝気槽、活性汚泥槽及び沈澱槽の順に流し、沈殿槽で沈降した汚泥の一部を活性汚泥槽へ返送する。曝気槽では、微生物を高濃度で保持する担体が用いられ、大部分の溶解性BODを除去する。また、活性汚泥槽では、曝気槽で発生する微細汚泥を活性汚泥に巻き込ませると同時に汚泥を自己酸化させ、余剰汚泥量を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−15288号公報
【特許文献2】特開2001−347284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既設の鉄筋コンクリート製土木水槽又は鋼板製水槽の槽内を分割する技術としては、以下のものがある。(1)まず、水槽内の排水・処理水・汚泥などを一旦抜き、その後、清掃後に隔壁をコンクリート製土木壁によって構築する。(2)まず、水槽内の寸法調査を実施し、その寸法に基づいて鋼板製などの隔壁を製作する。そして、水槽内の排水・処理水・汚泥などを抜き、清掃後に隔壁を槽内に設置する。隔壁と既設水槽との間の隙間には、コーキングを施し、槽間をシールする。
【0006】
しかし、上記のいずれの従来工法でも、施工前の水槽内の水抜き、槽内清掃、槽寸法調査、施工後養生期間の各工程が必要であり、各工程とも1日〜1週間の期間が必要となる。また、微生物を用いた処理を行う曝気槽などの生物処理槽の場合、運転再開後に馴致期間が更に必要となる。また、曝気槽の場合には、活性汚泥を再活用するため、一旦活性汚泥を大型の仮設タンク等の仮曝気設備に貯留し、仮曝気しておく必要がある。
【0007】
更に、排水や汚泥等を、一旦産業廃棄物として処分する場合には、産廃費用が発生する。また更に、工場等に設置された排水処理設備の場合、排水処理設備が停止になると、その期間、関連する生産ラインに影響を及ぼす。多くの工場は、一つの排水処理設備が、複数の生産ラインから排出される排水をまとめて処理するため、工場全体に影響が出る。そのため、排水処理設備の水槽を分割するような大規模な改修をする場合、別の土地を用意し、同規模の排水処理設備を設置する場合が多い。
【0008】
また、水槽の既設の壁と新たに設置される隔壁との間は、できるだけ隙間が小さいほうが望ましい場合があり、密閉構造が容易に形成されることが求められる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、貯留された液体を水槽内から排出することなく、水槽を壁体によって分割することができ、壁体の端部と水槽の内壁面又は底面との間の隙間を容易に低減することが可能な水槽分割方法、水槽および壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の水槽分割方法、水槽および壁体は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る水槽分割方法は、壁体の端部が水槽の内壁面と水槽の底面に沿うように、液体が貯留された水槽内に壁体を設置する第1ステップと、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方の隙間を低減する第2ステップとを備え、第2ステップは、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って中空の伸張性を有する中空部材を設置する第3ステップと、中空部材内に流体を充填する第4ステップとを有する。
【0011】
この発明によれば、壁体が水槽内に設置され、壁体の端部が水槽の内壁面と底面に沿って配置されつつ、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方の隙間が低減されることによって、水槽が分割される。このとき、中空部材が、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って設置され、中空部材に流体が充填される。中空部材は、伸張性を有することから、流体が充填されることによって伸張し、隙間が確実に低減される。また、水槽から液体を排出することなく、液体が貯留された水槽を容易に分割できる。
【0012】
上記発明において、第1ステップは、壁体の両側端部間の距離が二つの内壁面間の距離よりも短縮された壁体を水槽内に挿入する第5ステップと、壁体を伸長し、壁体の両側端部を内壁面に沿って設置する第6ステップとを有してもよい。
【0013】
この発明によれば、壁体が水槽内に挿入されるとき、壁体の両側端部間の距離が二つの内壁面間の距離よりも短縮されていることから、容易に水槽内に壁体を設置でき、更に壁体を伸長することによって、速やかに壁体の両側端部を内壁面に沿って設置できる。
【0014】
上記発明において、水槽内に貯留された2以上の物質を含む液体を、壁体を隔てて少なくとも1の物質とその他の物質とに分離する第7ステップを更に備えてもよい。
【0015】
この発明によれば、水槽から液体を排出することなく、2以上の物質を含む液体が貯留された水槽を容易に分割でき、壁体を隔てて、一つの区画には少なくとも1の物質を含む液体が貯留され、別の区画にはその他の物質を含む液体が貯留されるようになる。
【0016】
また、本発明に係る水槽は、内壁面と底面とを有する水槽であって、その端部が内壁面と底面に沿うように設置された壁体と、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って設置され、流体が充填された中空部材とを備える。
【0017】
この発明によれば、内壁面と底面とを有する水槽は、壁体によって分割されており、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って中空部材が設置される。中空部材には流体が充填されていることから、壁体の端部と内壁面との間、及び壁体の端部と底面との間の少なくともいずれか一方の隙間が確実に低減される。
【0018】
また、本発明に係る壁体は、内壁面と底面とを有する水槽を分割する壁体であって、枠部材と、枠部材に接合される面状の隔壁と、枠部材の端部と内壁面との間及び枠部材の端部と底面との間の少なくともいずれか一方に沿って設置され流体が充填される中空部材を内部に設置することができるように、枠部材の端部に設けられたガイド部材とを備える。
【0019】
この発明によれば、枠部材に接合された面状の隔壁によって水槽を分割可能であり、更に枠部材の端部には中空部材を内部に設置できるガイド部材が設けられている。そして、中空部材に液体が充填されることによって、枠部材の端部と内壁面との間及び枠部材の端部と底面との間の少なくともいずれか一方の隙間を確実に低減できる。
【0020】
上記発明において、枠部材は、前記水槽への挿入方向に分割された複数の分割枠部材からなり、分割枠部材は、互いに相対移動可能であってもよい。
【0021】
この発明によれば、壁体が水槽内に挿入されるとき、壁体の両側端部間の距離が二つの内壁面間の距離よりも短縮させることができる。その結果、容易に水槽内に壁体を設置できる。また、壁体を伸長することによって、速やかに壁体の両側端部を内壁面に沿って設置できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、貯留された液体を水槽内から排出することなく、水槽を壁体によって分割することができ、壁体の端部と水槽の内壁面又は底面との間の隙間を容易に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る排水処理設備を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る隔壁が設置された水槽を示す縦断面図である。
【図3】図2のA−A線で切断した部分拡大断面図である。
【図4】同実施形態の第1変形例に係る隔壁と既設水槽の壁との接続部分を示す横断面図である。
【図5】同実施形態の第2変形例に係る隔壁と既設水槽の壁との接続部分を示す横断面図である。
【図6】同実施形態に係る水槽分割方法を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す平面図である。
【図8】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す正面図である。
【図9】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す平面図である。
【図10】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す正面図である。
【図11】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す平面図である。
【図12】同実施形態に係る隔壁の枠部材を示す正面図である。
【図13】同実施形態に係る隔壁の枠部材及び面部材を示す平面図である。
【図14】同実施形態に係る隔壁の枠部材及び面部材を示す正面図である。
【図15】従来の排水処理設備を示す概略図である。
【図16】図3に示す鋼管杭ジョイント止水袋に水中モルタルが充填された状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係る水槽分割方法は、例えば排水処理設備などにおいて運用中の処理槽1を水抜きせずに分割する方法であって、かつ処理槽1を分割する隔壁3の端部と処理槽1の内壁面又は底面との間の隙間を容易に低減することができる。
【0025】
処理槽1は、鉄筋コンクリート製土木水槽、鋼板製水槽又は合成樹脂製水槽である。処理槽1を分割する壁体は、隔壁3と、枠部材6と、ガイド部材7などからなる(なお、水槽分割時に処理槽1に挿入される隔壁3設置前の枠部材6とガイド部材7を壁体という場合もある)。処理槽1を分割する隔壁3は、例えば鋼製又は合成樹脂製であり、図2に示すように、ガイド部材7と枠部材6等を介して、処理槽1の既設の内壁面に支持される。
【0026】
図3及び図16を参照して、本実施形態に係る処理槽1の既設の内壁面と隔壁3の接合部分について説明する。なお、以下では、処理槽1の内壁面を処理する場合について説明するが、処理槽1の既設の底面と隔壁3の接合部分についても同様に処理してもよい。
【0027】
接合部分には、ガイド部材7が処理槽1の内壁面に接触するように設置される。ガイド部材7は、例えば断面がコ字形状のC形鋼であり、図2に示すように、処理槽1の底面から上に向かって配置される。
【0028】
ガイド部材7の内部には、図3に示すように、鋼管杭ジョイント止水袋9が配置される。鋼管杭ジョイント止水袋9は、布製、合成樹脂製又は合成ゴム製などの伸張性を有する中空部材であり、ガイド部材7と同様に、内壁面に沿って、処理槽1の底面から上に向かって配置される。鋼管杭ジョイント止水袋9は、図3及び図16に示すように、内部に水中モルタル10が注入される。鋼管杭ジョイント止水袋9の上端は、水中モルタル10注入前は開口しており、注入後に塞がれる。鋼管杭ジョイント止水袋9の底面側は、注入される水中モルタル10が漏れないように塞がれている。底面の接合部分を鋼管杭ジョイント止水袋9と水中モルタル10によって処理する場合は、鋼管杭ジョイント止水袋9が、内壁面の接合部分を処理するものと連通するようにしておく。
【0029】
水中モルタル10は、図3に示すように、ホース11によって、鋼管杭ジョイント止水袋9の内部に注入される。ホース11は、水中モルタル10の注入前は、先端が鋼管杭ジョイント止水袋9内の底面近くに設置され、水中モルタル10が注入されるにしたがって、先端が上方に抜かれていく。水中モルタル10が注入されることによって、鋼管杭ジョイント止水袋9内は水中モルタル10によって充填される。そして、鋼管杭ジョイント止水袋9が伸張性を有することから、図16に示すように、鋼管杭ジョイント止水袋9がガイド部材7内面に接触するまで、水中モルタル10が充填される。
【0030】
また、鋼管杭ジョイント止水袋9が伸張性を有し、水中モルタル10が流動性を有することから、図16に示すように、水中モルタル10が処理槽1の内壁面にある損傷部分14を埋めるように充填される。なお、鋼管杭ジョイント止水袋9をガイド部材7内部に配置する際に、鋼管杭ジョイント止水袋9の表面に両面テープなどによって接着層を設けて、鋼管杭ジョイント止水袋9の外面とガイド部材7の内面との接触性を高めるようにしてもよい。なお、水中モルタル10は、流体の一例であり、本発明の流体は、水中モルタル10に限定されず、例えば空気でもよい。
【0031】
ガイド部材7は、図3に示すように、両端部で固定部材8によって支持され、固定される。固定部材8は、例えば断面がL字形状の山形鋼である。処理槽1の内壁面と固定部材8、固定部材8とガイド部材7は、それぞれ例えばボルト結合によって接合される。
【0032】
ガイド部材7における処理槽1の内部側の面は、枠部材6が設置される。枠部材6は、例えば断面がL字形状の山形鋼である。枠部材6には、隔壁3が更に設置される。ガイド部材7と枠部材6、枠部材6と隔壁3は、それぞれ例えばボルト結合によって接合される。上記構成によって、処理槽1の既設の内壁面と新たに設置される隔壁3との間は、隙間が小さくなるように塞がれる。また、処理槽1内の液面が上下して損傷が激しい部分についても、鋼管杭ジョイント止水袋9と水中モルタル10によって隙間を低減できる。
【0033】
以上、鋼管杭ジョイント止水袋9と水中モルタル10を用いて、処理槽1の内壁面と隔壁3とを接合する方法について説明したが、図4及び図5に示すような構成で、両者が接合されてもよい。
【0034】
まず、図4及び図5に示すように処理槽1の内壁面は、損傷部分14を塞ぐように、水中パテ、水中モルタル、粘土セメントなどによって表面が平らになるように仕上げられる。そして、内壁面又は損傷部分の修復部分の表面に、断面がL字形状の枠部材6、又は断面がI字形状の枠部材12が設置される。
【0035】
そして、処理槽1の内壁面と枠部材6,12は、例えばボルト結合によって接合される。また、内壁面と枠部材6,12は、図4及び図5に示すように水中パテ13が枠部材6,12の長さ方向に沿って設置され、枠部材6と枠部材12との間は、枠部材6,12の長さ方向に沿って溶接される。これにより、処理槽1の既設の内壁面と新たに設置される隔壁3との間は、隙間が小さくなるように塞がれる。
【0036】
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る水槽分割方法について説明する。
【0037】
まず、本工事よりも事前に事前調査工が実施される(ステップS1)。事前調査工は、処理槽1内部に処理水等が満たされた状態で行われる。事前調査工は、例えば水上から水準器と棒尺を用いることによって、又は潜水士が水中に潜ることによって、処理槽1の内壁面の損傷状況、不純物の付着状況を調査する。また、処理槽1の内壁面及び底面の正確な寸法や傾斜等による形状も測定される。
【0038】
そして、測定された処理槽1の内壁面及び底面の寸法や形状に基づいて、隔壁3が陸上の工場等で製作される(ステップS2)。隔壁3は、枠部材6や枠部材6に設置される鋼板や、担体を通過させず処理水のみを通過させるスクリーンなどの面部材と共に製作される。
【0039】
また、処理槽1の内部では、処理水等が満たされた状態で、表面処理工が実施される(ステップS3)。表面処理工では、処理水等が満たされた状態で、内壁面が補修される。例えば、本来の内壁面よりも削れて凹状になっている部分では、水中パテ、粘土セメント、水中モルタルなどによって、表面が平らになるように修繕される。耐水性のある材料によって修繕することで、工期の短縮化を図ることができる。また、内壁面に不純物が付着している部分では、ケレン棒などを使用して凸状部分が削り落とされる。更に、処理槽1の底面に堆積物がある場合は、堆積物を隔壁3の設置部分以外の場所へ除外する。
【0040】
表面処理工が完了した時点で、処理槽1内部に処理水等が満たされた状態で、隔壁3の設置位置が確定される(ステップS4)。例えば、隔壁3の設置位置を考慮して、内壁面や底面にアングル部材(図示せず。)がアンカー等によって固定される。
【0041】
一方、陸上では、隔壁3の設置のため、工場等で製作された隔壁3の骨格(枠部材6等)が組み立てられる(ステップS5)。この組み立て時点で、隔壁3に図3及び図16で示したガイド部材7も枠部材6に取り付けられてもよい。また、水中モルタル10の注入のための段取りが行われる(ステップS6)。すなわち、鋼管杭ジョイント止水袋9がガイド部材7の内側に沿って配置される。また、鋼管杭ジョイント止水袋9の内部にホース11を設置しておく。
【0042】
そして、隔壁3の骨格が、クレーン車等によって吊り込まれて、処理水等が満たされた処理槽1内部に据え付けられる(ステップS7)。このとき、枠部材6やガイド部材7が、事前にステップS4で設置しておいたアングル部材に固定される。また、枠部材6やガイド部材7が、内壁面や底面にアンカー等によって固定される。その後、仕切り用の鋼板製の面部材が枠部材6に取り付けられる(ステップS8)。
【0043】
次に、処理槽1内部に処理水等が満たされた状態で、ガイド部材7の内側に沿って配置された鋼管杭ジョイント止水袋9の内部に水中モルタル10が注入される(ステップS9)。水中モルタル10が、鋼管杭ジョイント止水袋9の上端まで注入され、鋼管杭ジョイント止水袋9がガイド部材7内面に接触したと判断されたときに、水中モルタル10の注入が完了する。そして、処理槽1の底面と枠部材6との間の隙間部分について、水中パテ等を施すことによって、水や粒子の往来を遮断する(ステップS10)。
【0044】
次に、図7〜図14を参照して、隔壁3の骨格の吊り込み工程から、処理槽1内部への隔壁3の設置工程までについて説明する。なお、図8、図10、図12及び図14では、処理槽1内に満たされている処理水等は省略されているが、下記の各工程は、処理槽1内に処理水等が満たされた状態で行われる。
【0045】
図7〜図14に示す例では、枠部材6は、第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17から構成される。第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17は、分割枠部材の一例であり、処理槽1への挿入方向に分割されていて、互いに相対移動可能である。
【0046】
まず、図7及び図8に示すように、第1枠部材15、第2枠部材16、第3枠部材17が吊り込み用部材18に沿って配置される。図7は、図8を上から見た図である。第1枠部材15と第3枠部材17は、処理槽1の内壁面に沿って配置される部材であり、第2枠部材16は、第1枠部材15と第3枠部材17の間に設置される部材である。このとき、図7及び図8には、図示しないが、第1枠部材15と第3枠部材17の内壁面側端部には、上述したガイド部材7や鋼管杭ジョイント止水袋9、ホース11が設置される。
【0047】
そして、処理槽1の挿入前に、第1枠部材15と第3枠部材17を第2枠部材16側へ移動する。これにより、第1枠部材15の内壁面側端部から第3枠部材17の内壁面側端部までの距離が、処理槽1の二つの対向する内壁面間の距離よりも短縮される。その結果、第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17からなる枠部材6が、容易に処理槽1内に設置される。
【0048】
次に、図9に示すように、仮固定部材19によって、第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17それぞれと、吊り込み用部材18が仮固定される。そして、図9及び図10に示すように、第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17が、クレーン車等によって吊り込まれて、処理槽1内へ挿入される。図9は、図10を上から見た図である。
【0049】
その後、図11及び図12に示すように、第1枠部材15と第3枠部材17が、処理槽1の両内壁面側へそれぞれ移動されて、枠部材6全体が伸長される。図11は、図12を上から見た図である。第1枠部材15の内壁面側端部と、第3枠部材17の内壁面側端部は、処理槽1の内壁面に沿って配置される。そして、内壁面と第1枠部材15又は第3枠部材17との間、第1枠部材15と第2枠部材16との間、第2枠部材16と第3枠部材17との間が、本固定部材20、例えばアンカーやボルト及びナット等によって固定される。このとき、予め測定した寸法に基づいて、枠部材6が製作されていることによって、処理槽1内に適切に隔壁3を設置できる。
【0050】
そして、図13及び図14に示すように、面部材21が第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17それぞれに設置される。面部材21は、鋼板や、担体を通過させず処理水のみを通過させるスクリーン等である。また、第1枠部材15、第2枠部材16及び第3枠部材17それぞれと内壁面又は底面の間の隙間は、上述した方法によって隙間が塞がれる。図13は、図14を上から見た図である。
【0051】
以上、本実施形態によれば、処理槽1内に処理水等が満たされた状態で、水抜きせずに、処理槽1を分割できる。その際、上述したように、鋼管杭ジョイント止水袋9や水中モルタル10を用いる方法によって、枠部材6と処理槽1の内壁面との間の隙間を迅速かつ簡易に低減できる。また、図7〜図14を参照して説明したように、枠部材6を分割して長さ方向を縮小したり、折り畳んだりする方法によって、処理槽1内へ隔壁3が容易に設置される。その結果、短期間で処理槽1を分割できることから、工場等の停止期間が、従来工法に比べて短縮される。
【0052】
また、本実施形態は、図15に示す排水処理設備における処理槽1の分割にも適用できる。処理槽1を隔壁3によって分割することによって、図1に示すような、より効率的な処理が可能となる排水処理設備へ容易に改修することができる。すなわち、図15に示す例では、排水原水を活性汚泥槽としての処理槽1へ流し、処理槽1で処理された処理水を沈澱槽2へ流している。そして、沈澱槽2で処理された処理水を更に後段へ排出したり、汚泥を処理槽1へ返送したりする。
【0053】
一方、図1に示す排水処理設備では、隔壁3による分割後、処理槽1の第1段を担体流動槽4とし、第2段を活性汚泥槽5とする。具体的には、担体流動槽4には、微生物を高濃度で保持する担体が投入される。担体流動槽4(曝気槽)では、担体が流動しており、微細汚泥が発生する。そして、担体流動槽4で発生した微細汚泥が、担体の無い活性汚泥槽5へ流される。隔壁3や上述した密閉構造、更に担体越流防止スクリーン等を設置することによって、担体は、担体流動槽4から活性汚泥槽5へ流入しない。
【0054】
これにより、分割前に排水・処理水・汚泥など2以上の物質を含む液体が貯留された処理槽1を容易に分割でき、隔壁3を隔てて、担体流動槽4には、排水原水、担体、微細汚泥などが貯留され、活性汚泥槽5には微細汚泥、活性汚泥などが貯留されるようになる。
【0055】
活性汚泥槽5では、微細汚泥が処理されることから、図15に示す排水処理設備に比べて汚泥の沈降性が高められる。沈澱槽2で生じた汚泥は、活性汚泥槽5へ返送されたり、余剰汚泥として排出されたりする。
【0056】
従来工法では、活性汚泥を処理槽1へ戻して性能を復帰するまで、馴致期間が必要であったが、本実施形態では、処理槽1の分割に要する期間が短期間であるため、馴致期間を不要又は従来に比べて短期間とすることができる。また、本実施形態によれば、処理槽1の分割の際に、活性汚泥を貯留する仮曝気設備が不要であり、費用面でも比較的安価に実施できる。
【符号の説明】
【0057】
1 処理槽(水槽)
2 沈澱槽
3 隔壁
4 担体流動槽
5 活性汚泥槽
6,12 枠部材
7 ガイド部材
8 固定部材
9 鋼管杭ジョイント止水袋(中空部材)
10 水中モルタル(流体)
11 ホース
13 水中パテ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の端部が水槽の内壁面と前記水槽の底面に沿うように、液体が貯留された前記水槽内に前記壁体を設置する第1ステップと、
前記壁体の端部と前記内壁面との間、及び前記壁体の端部と前記底面との間の少なくともいずれか一方の隙間を低減する第2ステップと、
を備え、
前記第2ステップは、
前記壁体の端部と前記内壁面との間、及び前記壁体の端部と前記底面との間の少なくともいずれか一方に沿って中空の伸張性を有する中空部材を設置する第3ステップと、
前記中空部材内に流体を充填する第4ステップと、
を有する水槽分割方法。
【請求項2】
前記第1ステップは、
前記壁体の両側端部間の距離が二つの前記内壁面間の距離よりも短縮された前記壁体を前記水槽内に挿入する第5ステップと、
前記壁体を伸長し、前記壁体の前記両側端部を前記内壁面に沿って設置する第6ステップと、
を有する請求項1に記載の水槽分割方法。
【請求項3】
前記水槽内に貯留された2以上の物質を含む前記液体を、前記壁体を隔てて少なくとも1の物質とその他の物質とに分離する第7ステップを更に備える請求項1又は2に記載の水槽分割方法。
【請求項4】
内壁面と底面とを有する水槽であって、
その端部が前記内壁面と前記底面に沿うように設置された壁体と、
前記壁体の端部と前記内壁面との間、及び前記壁体の端部と前記底面との間の少なくともいずれか一方に沿って設置され、流体が充填された中空部材と、
を備える水槽。
【請求項5】
内壁面と底面とを有する水槽を分割する壁体であって、
枠部材と、
前記枠部材に接合される面状の隔壁と、
前記枠部材の端部と前記内壁面との間及び前記枠部材の端部と前記底面との間の少なくともいずれか一方に沿って設置され流体が充填される中空部材を内部に設置することができるように、前記枠部材の端部に設けられたガイド部材と、
を備える壁体。
【請求項6】
前記枠部材は、複数の分割枠部材からなり、
前記分割枠部材は、互いに相対移動可能である請求項5に記載の壁体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−103176(P2013−103176A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248939(P2011−248939)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【出願人】(312002358)海洋土木株式会社 (1)
【Fターム(参考)】