説明

水没危険車輌特定装置及びその方法、並びに水没危険車輌を特定するためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】豪雨等により、水没の危険性のある車輌を特定し、当該水没危険車輌情報を自動的に作成する装置及びその方法を提供する。
【解決手段】降雨予測データと水没履歴データとを照合した結果に基づき、水没危険地域を抽出し、車輌の駐車位置データとを比較することにより、当該駐車位置における車輌の水没危険性を検証し、水没危険車輌を特定する。当該水没危険車輌に関して予め保存された通知先にメッセージを通知する。したがって、当該通知を受けた利用者は、当該特定された車輌を移動させる等、適宜対応することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水没危険車輌特定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲリラ豪雨のような局所的な大雨の頻発により、人的・物的被害が多発している。ゲリラ豪雨は短時間のうちに道路や駐車場等を冠水させるため、災害情報提供者からの情報が入る前に駐車車輌等が被害を受ける可能性が高い。
このような被害を回避するため特許文献1では、気象データ及び車輌に対する天災を発生させる要因となる傾向データに基づいて所望の駐車場所の天災危険度を推定し、当該危険度が許容範囲外であるとき、車輌が天災を受けるおそれがある旨の通知を行う技術が提案されている。すなわち、気象データに、駐車場所が有する地理的特性を示す地形データ等の傾向データを組み合わせることで、当該駐車場所の天災危険度を正確に推定しようとするものである。
本件発明に関連する従来技術を開示する特許文献2及び特許文献3も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−3173号公報
【特許文献2】特開2007−205983号公報
【特許文献3】特開2004−341795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術において、気象データと組み合わせるデータとして採用する、駐車場所が有する地理的特性を示す地形データ等は、天災等の危険度を直接的に反映したデータではない。そこで本発明では、水没等の危険性を直接的に反映したデータを採用し、より精度良く、水没危険のある車輌を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はかかる目的を達成すべくなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
車輌の駐車位置を保存する駐車位置データ保存部と、
降雨予測データを保存する降雨予測データ保存部と、
過去に水没した箇所のデータを保存する水没履歴データ保存部と、
前記駐車位置データと、前記降雨予測データと、前記水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証手段と、
前記比較・検証手段による比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定手段と、
を備える、ことを特徴とする水没危険車輌特定装置。
【0006】
このように規定される第1の局面の水没危険車輌特定装置によれば、車輌の駐車位置データ、降雨予測データ及び水没履歴データに基づき、水没危険車輌を特定する。このように、過去実際に車輌が水没した箇所のデータである水没履歴データを用いることにより、精度良く、また、実態に即して、水没危険車輌を特定することが可能となる。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の水没危険車輌特定装置において、前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出手段と、を備え、
前記比較・検証手段は、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する。
このように規定される第2の局面の水没危険車輌特定装置によれば、駐車位置データは、降雨予測データと水没履歴データとを照合して抽出された水没危険地域と比較・検証されるため、水没危険車輌の特定にかかる処理の負担が軽減され、短時間での処理が可能となる。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1又は第2の局面に規定の水没危険車輌特定装置において、前記比較・検証手段を作動させるためのトリガ信号を出力するトリガ部を備え、
前記トリガ部は、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する。
このように規定される第3の局面の水没危険車輌特定装置によれば、降雨予測が所定条件のとき、比較・検証手段を作動させる。すなわち、当該所定条件外のとき、例えば、一時間あたりの雨量が少ない降雨予測であるとき等には、当該水没危険車輌の特定処理を実行しないため、装置にかかる負担が低減される。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3のいずれかの局面に規定の水没危険車輌特定装置において、前記水没危険車輌特定手段による特定の結果を通知する通知手段と、
前記通知手段が通知するためのメッセージを保存するメッセージ保存部と、を備える。
このように規定される第4の局面の水没危険車輌特定装置によれば、当該水没危険車輌が特定されると、予め保存された通知先にメッセージを通知する。したがって、当該通知を受けた利用者は、当該特定された車輌を移動させる等、適宜対応することが可能となる。
【0010】
また、この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
車輌の駐車位置を示す駐車位置データと、降雨予測データ保存部に保存される降雨予測データと、過去に水没した箇所のデータを示す水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証ステップと、
前記比較・検証ステップによる比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定ステップと、
を備える、ことを特徴とする水没危険車輌特定方法。
このように規定される第5の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0011】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第5の局面に規定の水没危険車輌特定方法において、前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合ステップと、
前記照合ステップによる照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出ステップと、を備え、
前記比較・検証ステップは、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する。
このように規定される第6の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0012】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第5又は第6の局面に規定の水没危険車輌特定方法において、前記比較・検証ステップを実行させるためのトリガ信号を出力するトリガステップを備え、
前記トリガステップは、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する。
このように規定される第7の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0013】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第5〜第7のいずれかの局面に規定の水没危険車輌特定方法において、前記水没危険車輌特定ステップによる特定の結果を通知する通知ステップ、を備え、
前記通知ステップは、メッセージ保存部に保存されたメッセージを通知する。
このように規定される第8の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0014】
更に、この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
水没危険車輌を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
車輌の駐車位置を示す駐車位置データと、降雨予測データ保存部に保存される降雨予測データと、過去に水没した箇所のデータを示す水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証手段と、
前記比較・検証手段による比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第9の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0015】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出手段、として機能させ、
前記比較・検証手段は、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する。
このように規定される第10の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0016】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第9又は第10の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記比較・検証手段を実行させるためのトリガ信号を出力するトリガ手段、として機能させ、
前記トリガ手段は、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する。
このように規定される第11の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0017】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第9〜第11のいずれかの局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記水没危険車輌特定手段による特定の結果を通知する通知手段、として機能させ、
前記通知手段は、メッセージ保存部に保存されたメッセージを通知する。
このように規定される第12の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0018】
第9〜第12のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第13の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の水没危険車輌特定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の水没危険車輌特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施の形態の水没危険車輌特定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施の形態の水没危険車輌特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態の水没危険車輌特定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の水没危険車輌特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例の水没危険車輌特定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例の水没危険車輌特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施例の水没危険車輌特定装置を構成するコンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態の水没危険車輌特定装置を説明する。
図1に、この発明の実施の形態の水没危険車輌特定装置1の概略構成を示す。図2には水没危険車輌特定装置1の動作に対応するフローチャートを示す。
図1に示すように、この水没危険車輌特定装置1は駐車位置データ保存部2、降雨予測データ保存部3、水没履歴データ部4、比較・検証部5、水没危険車輌特定部6を備える。
駐車位置データ保存部2には、水没危険車輌の特定対象となる車輌の現在の駐車位置を示す座標情報が保存されている。当該駐車位置データは、車輌に備えられた位置検出機能を有する装置を用いて受信される。当該位置検出機能を有する装置として、GPS装置やジャイロ装置等が挙げられる。また、当該駐車位置データは、当該車輌を特定するための車輌ID等と関連付けて保存されていることが好ましい。さらには、当該水没危険車輌特定装置1が、車輌からのプローブ情報を定期的に受信している場合には、当該車輌から最後に通信が行われた時点の位置を駐車位置と推定し、当該駐車位置の座標情報が保存されることとなる。
【0021】
降雨予測データ保存部3には、降雨予測データが保存される。当該降雨予測データは、一定時間経過の降雨予測が座標情報と関連付けられたデータであれば、特に制限されない。降雨予測データとして、例えば、気象庁の提供する降水短時間予報や降水ナウキャストを用いることができる。
水没履歴データ保存部4には、過去に水没した車輌が発生した箇所を示す水没履歴データが、座標情報と関連付けて保存されている。また、水没履歴データには、水没車輌発生時の当該箇所における降雨量が関連付けられていることが好ましい。
比較・検証部5は、上記車輌の駐車位置データ、降雨予測データ、水没履歴データを比較し、当該駐車位置において車両が水没する危険性を検証する。比較・検証は、上記3つのデータの座標情報を比較し、当該3つの座標情報が合致するか否か、検証を行うことができる。
【0022】
水没危険車輌特定部6は、比較・検証部5による比較・検証の結果に基づき、当該車輌を水没危険車輌と特定する。例えば、上記3つの座標情報が合致したとき、当該車輌を水没危険車輌と特定する。
他の例として、比較・検証部5が、降雨予測データの座標情報と水没履歴データの座標情報とを比較し、当該2つの座標情報が合致したとき、当該座標情報を中心とする所定範囲に駐車位置データの座標情報が存在するか否か、検証を行うこととしても良い。この場合、水没危険車輌特定部6は、上記所定範囲に存在する駐車位置データを有する車輌を水没危険車輌と特定する。
当該水没危険車輌特定装置1は、所定時間間隔(例えば、10分間隔等)で作動させて、装置にかかる負担を軽減させることができる。
【0023】
図2を用いて、図1に示す水没危険車輌特定装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、水没危険性の特定対象となる車輌の駐車位置データを検出し、当該車輌のID等に関連付け、駐車位置データ保存部2へ保存する。続くステップ3では、降雨予測データを受信し、降雨予測データ保存部3に保存する。
ステップ5では、ステップ1で得られた駐車位置データ及びステップ3で得られた降雨予測データと、水没履歴データ保存部3に予め保存された水没履歴データとを比較する(ステップ5)。比較の結果、当該3つのデータが合致したとき(ステップ7:Yes)、当該駐車位置データを有する車輌を水没危険車輌と特定する(ステップ9)。
【0024】
図3に、他の実施の形態の水没危険車輌特定装置21を示す。図3において、図1と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図3に示す水没危険車輌特定装置21では、図1に示す水没危険車輌特定装置1において、照合部7及び水没危険地域抽出部8を更に備えている。
照合部7は、降雨予測データ保存部3に保存される降雨予測データと、水没履歴データ保存部4に保存される水没履歴データとを照合する。
水没危険地域抽出部8は、照合部7の照合結果に基づき、上記降雨予測データと水没履歴データとが合致した座標情報を、水没危険地域として抽出する。
水没危険車輌特定装置21において、比較・検証部9は、駐車位置データ保存部2に保存された駐車位置データと、水没危険地域抽出部8で抽出された水没危険地域データとを比較し、当該駐車位置における車輌の水没危険性を検証する。
【0025】
図4を用いて、図3に示す水没危険車輌特定装置21の動作を説明する。図4において、図2と同一のステップには同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図4において、ステップ21は、ステップ1で得られた駐車位置データと、ステップ3で得られた降雨予測データとを照合する。照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出すると(ステップ23)、当該水没地域の座標情報と駐車位置データの座標情報とを比較する(ステップ25)。ステップ25における2つの座標情報が合致するとき(ステップ27:Yes)、当該駐車位置データを有する車輌を水没危険車輌と特定する(ステップ29)。
【0026】
図5に、他の実施の形態の水没危険車輌特定装置31を示す。図5において、図1及び図3と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図5に示す水没危険車輌特定装置31では、図1に示す水没危険車輌特定装置1において、更にトリガ部10を備えている。
トリガ部10は、降雨予測データ保存部3を参照し、降雨予測が所定条件のとき、比較・検証部5へトリガ信号を出力する。比較・検証部5は、当該トリガ信号を受けたとき、作動することとなる。当該所定条件は、車輌の水没危険性が考えられる条件を適宜定めればよく、例えば、降雨予測50mm/h以上のとき、とすることができる。
車輌水没の危険性には、降雨量のみならず、地形も大きく影響する。そのため、水没履歴データ保存部4を参照することにより、トリガ部10における所定条件を規定しても良い。すなわち、トリガ部10は、水没履歴データ保存部4を参照し、車輌水没発生箇所における当該発生時の降雨量を所定条件と規定することができる。
【0027】
図6を用いて、図5に示す水没危険車輌特定装置31の動作を説明する。図6において、図2及び図4と同一のステップには同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
ステップ31では、トリガ部10は降雨予測データ保存部3の降雨予測を参照し、当該降雨予測が所定条件を満たすとき(ステップ31:Yes)、駐車位置データ、降雨予測データ、水没履歴データを比較する(ステップ5)。当該3つのデータが合致したとき(ステップ7:Yes)、当該駐車位置データを有する車輌は水没危険車輌と特定される(ステップ9)。
【実施例】
【0028】
図7に、実施例の水没危険車輌特定装置41を示す。図7において、図1、図3及び図5と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図7に示す水没危険車輌特定装置41は、図1に示す水没危険車輌特定装置1において、更に、降雨予測メッシュ抽出部11、水没危険メッシュ抽出部12、水没危険車輌保存部13、通知先情報保存部14、判定部18、判定結果保存部19、通知部15、メッセージ保存部16及び地図データ保存部17を備えている。
降雨予測メッシュ抽出部11は、地図データ保存部17に保存される、所定サイズのメッシュに区切られた地図データと、降雨予測データ保存部3に保存される降雨予測データを照合し、所定条件を満たす降雨予測データが存在するメッシュを地図データから抽出する。当該メッシュが降雨予測メッシュとなる。
【0029】
水没危険メッシュ抽出部12は、降雨予測メッシュ抽出部11で抽出された降雨予測メッシュと、水没履歴データ保存部4に保存された水没履歴データとを照合し、降雨予測メッシュから、水没履歴データが存在するメッシュを水没危険メッシュとして抽出する。当該抽出された水没危険メッシュは、比較・検証部9に送られる。
比較・検証部9では、水没危険メッシュ内に駐車位置データを有する車輌が存在するか否か、検証することとなる。
【0030】
水没危険車輌保存部13には、水没危険車輌特定部6で特定された車輌情報が、水没危険車輌保存部13内に格納される通知先情報保存部14に保存の通知先と関連付けられて保存される。水没危険車輌保存部13には、例えば、10分間隔で水没危険車輌の特定が行われた場合、前回水没危険車輌と特定された車輌情報Aaを保存する水没危険車輌Aa保存部131と、今回、すなわち10分後に特定された車輌情報Abを保存する水没危険車輌Ab保存部132とを備えることができる。
【0031】
判定部18は、今回特定された水没危険車輌Abが前回(例えば10分前に)に特定された水没危険車輌Aaと一致するか否かを判定する。当該判定結果は、判定結果保存部19に保存される。
判定結果保存部19には、前回判定された水没危険車輌Aaと一致しなかった今回判定分の水没危険車輌Abを保存する最初の水没危険車輌保存部191と、水没危険車輌Aaと一致した水没危険車輌Abを保存する重複水没危険車輌保存部192とが備えられる。このように重複して水没危険車輌と特定された車輌は、水没の危険が迫ってきているにもかかわらず、回避手段をとっていない車輌と考えられる。
【0032】
通知先情報保存部14には、当該特定の対象となる車輌に関連付けて、予め登録された移動体端末等のメールアドレスや電話番号等が登録されている。
通知部15は、当該通知先へ、メッセージ保存部16に予め保存されるメッセージを通知する。メッセージとしては、例えば、「車輌水没の危険性があります。」(第1メッセージ)、「車輌水没の危険性が迫っています。」(第2メッセージ)、「降雨予測50mm/hの範囲から回避されました。」(第3メッセージ)等とすることができる。
通知部15は、最初の水没危険車輌保存部191に保存された車輌に対して当該車輌に関連付けられた通知先へ第1メッセージを通知し、重複水没危険車輌保存部192に保存された車輌に対して当該車輌に関連付けられた通知先へ第2メッセージを通知することができる。このように車輌水没の危険性があるにもかかわらず、未だ車輌を移動させていない等、回避手段をとっていない車輌に対して、繰り返しメッセージを通知することが可能となる。
【0033】
また、前回は水没危険車輌と特定されたにもかかわらず今回の判定においては水没危険車輌とは特定されなかった車輌であって、駐車位置データが一致している車輌については、それに関連付けられた通知先へ第3メッセージを通知できる。この場合、駐車位置における降雨予測が移動したことにより、車輌水没の危険性が低まったと考えられるためである。
地図データ保存部17には、地図データが保存される。地図データは、所定サイズのメッシュに区切った領域単位で格納されている。
【0034】
図8を用いて、図7に示す水没危険車輌特定装置41の動作を説明する。図8において、図2、図4及び図6と同一のステップには同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
ステップ41では、地図データから降雨予測メッシュを抽出する。すなわち、所定サイズ(例えば、1km四方)のメッシュに区切られた地図データと降雨予測データとを照合し、地図データの各メッシュ内に、所定条件(例えば、降雨予測50mm/h以上)を満たす降雨予測データが存在するメッシュを抽出する。当該メッシュが降雨予測メッシュとなる。
続くステップ43では、ステップ41で抽出された降雨予測メッシュと水没履歴データとを照合し、降雨予測メッシュ内に水没履歴データが存在するメッシュを抽出する。当該メッシュが水没危険メッシュとなる。
当該抽出された水没危険メッシュ内に駐車位置データを有する水没危険車輌Abを特定する(ステップ45)。特定された水没危険車輌Abが存在するとき(ステップ47:Yes)、ステップ49へ進む。
【0035】
ステップ49では、今回特定した水没危険車輌Abが、前回特定された水没危険車輌Aaと一致するか否か判定部18により判定される。すなわち、今回特定水没危険車輌Abが前回特定水没危険車輌Aaと一致しない場合(ステップ49:No)、今回特定水没危険車輌Abは初めて水没危険車輌と特定された車輌と判定され、判定結果保存部19の最初の水没危険車輌保存部191に一旦保存される。このようにして保存された車輌の連絡先へメッセージ保存部16から読みだされた第1のメッセージが通知される(ステップ51)。第1メッセージとして、例えば、「車輌水没の危険性があります。」等が挙げられる。
【0036】
一方、今回特定水没危険車輌Abが前回特定水没危険車輌Aaと一致する場合(ステップ49:Yes)、今回特定水没危険車輌Abは重複して特定された車輌と判定され、判定結果保存部19の重複水没危険車輌保存部192に一旦保存される。このようにして保存された車輌の連絡先へメッセージ保存部16から読みだされた第2のメッセージが通知される。(ステップ53)。第2メッセージとして、例えば、「車輌水没の危険性が迫っています。」等が挙げられる。このように前回及び今回とも水没危険車輌と特定された車輌は、前回特定時にメッセージを通知したにもかかわらず、回避手段をとっていない車輌と考えられる。したがって、繰り返し注意喚起のためのメッセージを通知することが好ましい。
【0037】
今回特定された全ての水没危険車輌につきステップ49、51、53を実行する(ステップ55、57)。
ステップ47でNOのとき、即ち今回特定の水没危険車輌がゼロのとき、ステップ59へ進む。
【0038】
ステップ59では、今回特定水没危険車輌Abと一致しない前回特定水没危険車輌Aaを抽出する。ここで抽出されるのは、前回(例えば、10分前)には水没危険車輌と特定されたものの、今回は水没危険車輌とは特定されなかった車輌である。この場合、車輌の駐車位置における降雨予測が移動したことにより、車輌水没の危険性が低まったと考えられる。したがって、このように抽出された車輌につき、通知部15は、メッセージ保存部16内の第3メッセージを通知する(ステップ63)。第3メッセージとして、例えば、「降雨予測50mm/hの範囲から回避されました。」等とすることができる。
【0039】
図9は水没危険車輌特定装置41のハード構成を示すブロック図である。
この装置41のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを水没危険車輌特定装置41として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域が、駐車位置データ保存部2、降雨予測データ保存部3及び水没履歴データ保存部4用に割り付けられる。
【0040】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0041】
この装置41はネットワークアダプタ261を介して、ネットワークNに接続される。このネットワーク(インターネット)Nには、車輌の駐車位置を検出するための車載位置検出装置や、降雨予測データを受信するための気象データサーバ等が連結されている。また、このネットワークNにはプローブカーが連結されていてもよい。当該プローブカーからセンター(装置41)へプローブ情報を定期的に送信している場合、当該プローブカーから最後の通信が行われた時点の位置を駐車位置と推定し、当該駐車位置のデータを用いることができる。
【0042】
このコンピュータシステムからなる水没危険車両特定装置41を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態及び実施例について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0044】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 21 31 41 水没危険車輌特定装置
2 駐車位置データ保存部
3 降雨予測データ保存部
4 水没履歴データ保存部
5 9 比較・検証部
6 水没危険車輌特定部
7 照合部
8 水没危険地域抽出部
10 トリガ部
11 降雨予測メッシュ抽出部
12 水没危険メッシュ抽出部
13 水没危険車輌保存部
14 通知先情報保存部
15 通知部
16 メッセージ保存部
17 地図データ保存部
18 判定部
19 判定結果保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌の駐車位置を保存する駐車位置データ保存部と、
降雨予測データを保存する降雨予測データ保存部と、
過去に水没した箇所のデータを保存する水没履歴データ保存部と、
前記駐車位置データと、前記降雨予測データと、前記水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証手段と、
前記比較・検証手段による比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定手段と、
を備える、ことを特徴とする水没危険車輌特定装置。
【請求項2】
前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出手段と、を備え、
前記比較・検証手段は、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水没危険車輌特定装置。
【請求項3】
前記比較・検証手段を作動させるためのトリガ信号を出力するトリガ部を備え、
前記トリガ部は、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水没危険車輌特定装置。
【請求項4】
前記水没危険車輌特定手段による特定の結果を通知する通知手段と、
前記通知手段が通知するためのメッセージを保存するメッセージ保存部と、
を備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水没危険車輌特定装置。
【請求項5】
車輌の駐車位置を示す駐車位置データと、降雨予測データ保存部に保存される降雨予測データと、過去に水没した箇所のデータを示す水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証ステップと、
前記比較・検証ステップによる比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定ステップと、
を備える、ことを特徴とする水没危険車輌特定方法。
【請求項6】
前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合ステップと、
前記照合ステップによる照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出ステップと、を備え、
前記比較・検証ステップは、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する、
ことを特徴とする請求項5に記載の水没危険車輌特定方法。
【請求項7】
前記比較・検証ステップを実行させるためのトリガ信号を出力するトリガステップを備え、
前記トリガステップは、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の水没危険車輌特定方法。
【請求項8】
前記水没危険車輌特定ステップによる特定の結果を通知する通知ステップ、を備え、
前記通知ステップは、メッセージ保存部に保存されたメッセージを通知する、
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の水没危険車輌特定方法。
【請求項9】
水没危険車輌を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
車輌の駐車位置を示す駐車位置データと、降雨予測データ保存部に保存される降雨予測データと、過去に水没した箇所のデータを示す水没履歴データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する比較・検証手段と、
前記比較・検証手段による比較・検証の結果に基づき、前記車輌を水没危険車輌と特定する水没危険車輌特定手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、更に、
前記降雨予測データと前記水没履歴データとを照合する照合手段と、
前記照合手段による照合の結果に基づき、水没危険地域を抽出する水没危険地域抽出手段、として機能させ、
前記比較・検証手段は、前記抽出された水没危険地域と、前記駐車位置データとを比較し、前記車輌の水没危険性を検証する、
ことを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、更に、
前記比較・検証手段を実行させるためのトリガ信号を出力するトリガ手段、として機能させ、
前記トリガ手段は、前記降雨予測データ保存部を参照し、降雨予測が所定条件のとき前記トリガ信号を出力する、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを、更に、
前記水没危険車輌特定手段による特定の結果を通知する通知手段、として機能させ、
前記通知手段は、メッセージ保存部に保存されたメッセージを通知する、
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項9〜請求項12のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−128789(P2011−128789A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285391(P2009−285391)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】