説明

水洗トイレにおける排水リサイクル方法及び水洗トイレ

【課題】装置の小型化及びコストの低減を図りながら、安定的に屎尿を処理して、便器の水洗として再利用することができる水洗トイレにおける排水リサイクル方法及び水洗トイレを提供する。
【解決手段】便器からの尿を回収手段としての回収タンク3に回収し、この回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することによって酵素による尿素の分解を阻止すると共に、当該電解処理された尿素が残存する被処理水により便器を水洗し、再度回収タンク3に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器からの尿を便器の水洗に利用して節水効果を得ることができる水洗トイレにおける排水リサイクル方法及び水洗トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水資源の有効利用への関心の高まりと共に、水洗トイレにおいて便器の洗浄に屎尿排水を再利用する試みがなされている。この場合、排出された屎尿を回収してそのままの状態で貯溜すると、屎尿中に含まれる尿素が、自然界や大便中に含まれるウレアーゼなどの尿素分解酵素により分解されてアンモニアとなり、悪臭を発生させたり、このアンモニアによって貯溜排水がアルカリ性となり、尿中のカルシウムなどのミネラル分がリン酸塩や炭酸塩などの尿石として析出して付着するなどの問題が生じる。
【0003】
そこで、然るべき処理を行って、尿石や悪臭の発生を未然に防ぐ必要があった。そこで、従来から係る屎尿排水を生物学的分解手段によって処理して、この処理水を循環させて便器の洗浄水としてリサイクルする試みがなされていた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特に、特許文献2に記載の処理では、屎尿を生物処理した後、電気分解手段により生成される次亜塩素酸によって被処理水に含まれる微生物を殺菌し、屎尿中の尿素がアンモニアに分解される作用を阻害している。アンモニアの生成が抑制されることで屎尿のpHの上昇を抑制し、延いては、尿石の生成を回避可能としている。
【特許文献1】特開平5−230858号公報
【特許文献2】特開平8−294691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した生物学的処理では細菌を保有するための大容量の処理槽が必要となり、設備建設コストの高騰、装置設置面積の拡大を招く問題があった。また、係る生物学的処理は処理時間がかかるとともに、細菌が周囲の温度環境等により活動に影響が生じるため、処理効率が不安定となる問題も生じていた。
【0006】
また、特許文献2に記載の処理では、電気分解手段により次亜塩素酸が生成された屎尿は、排水リサイクルされ、再び生物学的処理に付されるため、次亜塩素酸濃度が高まると、生物処理における微生物の成育障害を招く問題があった。
【0007】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、装置の小型化及びコストの低減を図りながら、安定的に便器からの尿を処理して、これを便器の水洗に再利用することができる水洗トイレにおける排水リサイクル方法及び水洗トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、便器からの尿を回収手段に回収し、この回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することによって酵素による尿素の分解を阻止すると共に、当該電解処理された尿素が残存する被処理水により便器を水洗し、再度回収手段に回収することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、上記発明において被処理水の酸化還元電位に基づいて当該被処理水の電解処理を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、請求項1に記載の発明において、被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて被処理水の電解処理を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、請求項1に記載の発明において被処理水の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて被処理水の電解処理を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、上記各発明において被処理水による便器の水洗後、すすぎ水によって当該便器をすすぐことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の発明において被処理水により定期的に便器を水洗することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法は、上記各発明において被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収手段の被処理水を廃棄することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の水洗トイレは、便器と、この便器から回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を貯溜するための回収タンクと、便器から尿及び/又は被処理水を回収タンクに回収し、当該回収タンク内の尿素が残存する被処理水を便器に流して水洗する循環式水洗経路と、回収タンク内の被処理水を電解処理する少なくとも一対の電極と、該電極への通電を制御することによって酵素による尿素の分解を阻止する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明の水洗トイレは、上記発明において、回収タンク内の被処理水の酸化還元電位を検出する酸化還元電位検出手段を備え、制御装置は、酸化還元電位検出手段が検出した被処理水の酸化還元電位に基づいて電極への通電を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明の水洗トイレは、請求項8に記載の発明において回収タンク内の被処理水の酸化還元電位を検出する酸化還元電位検出手段と、被処理水の全塩素濃度を検出する全塩素濃度検出手段とを備え、制御装置は、酸化還元電位検出手段及び全塩素濃度検出手段が検出した被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて電極への通電を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明の水洗トイレは、請求項8に記載の発明において回収タンク内の被処理水の遊離塩素濃度を検出する遊離塩素濃度検出手段と、被処理水の全塩素濃度を検出する全塩素濃度検出手段とを備え、制御装置は、遊離塩素濃度検出手段及び全塩素濃度検出手段が検出した被処理水の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて電極への通電を制御することを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明の水洗トイレは、請求項8、請求項9、請求項10又は請求項11に記載の発明に加えて便器にすすぎ水を流すすすぎ水供給装置を備え、制御装置は、被処理水による便器の水洗後、すすぎ水供給装置によりすすぎ水を便器に流してすすぐことを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明の水洗トイレは、請求項8、請求項9、請求項10又は請求項11に記載の発明において制御装置は、回収タンク内の被処理水により定期的に便器を水洗することを特徴とする。
【0021】
請求項14の発明の水洗トイレは、請求項8乃至請求項13の何れかに記載の発明に加えて回収タンク内の被処理水を廃棄する廃棄装置を備え、制御装置は、被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、廃棄装置により回収タンク内の被処理水を廃棄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1又は請求項8の発明によれば、便器からの尿を回収手段に回収し、この回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することによって酵素による尿素の分解を阻止すると共に、当該電解処理された尿素が残存する被処理水により便器を水洗し、再度回収手段に回収するので、便器からの尿を回収し、当該便器の水洗に再利用して節水効果を得ることができるようになる。
【0023】
特に、便器から回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することにより、被処理水中に次亜塩素酸を生成し、該次亜塩素酸によって、ウレアーゼなどの尿素分解酵素を失活させることが可能となる。このため、被処理水中の尿素がウレアーゼなどの尿素分解酵素により分解されてアンモニアとなり、悪臭を発生したり、当該アンモニアによって貯溜排水がアルカリ性となって、尿中のカルシウムなどのミネラル分がリン酸塩や炭酸塩などの尿石として析出して付着するなどの汚れの発生する不都合を未然に防止することができる。
【0024】
そのため、被処理水中に尿素を残存させたまま、尿を便器の水洗に再利用することが可能となり、生物処理手段を不要とすることができる。これにより、装置の大型化や装置設置コストが増大することなく、低コストで安定的に便器からの尿を処理をして、これを便器の水洗に再利用することが可能となる。
【0025】
請求項2又は請求項9の発明によれば、上記電解処理を被処理水の酸化還元電位に基づいて制御するので、電解処理を例えば、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を阻止する程度で止めることができ、電力コストも削減することができる。
【0026】
また、請求項3又は請求項10の発明によれば、上記電解処理を被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて制御するので、電解処理を例えば、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を阻止する程度で止めることができるので、同様に電力コストも削減することができる。
【0027】
請求項4又は請求項11の発明によれば、上記電解処理を被処理水の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて制御するので、電解処理を例えば、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を阻止する程度で止めることができるので、同様に電力コストを削減することができる。
【0028】
請求項5又は請求項12の発明によれば、上記各発明における被処理水による便器の水洗後、すすぎ水によって当該便器をすすぐので、便器に被処理水が残留する不都合も解消できる。
【0029】
請求項6又は請求項13の発明によれば、請求項1乃至請求項4又は請求項8乃至請求項11の発明において被処理水により定期的に便器を水洗するので、便器に長時間被処理水が残留することにより、当該被処理水がアンモニアに分解されて悪臭を発生したり、尿石が発生する不都合も防ぐことができる。
【0030】
請求項7又は請求項14の発明によれば、上記被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収手段の被処理水を廃棄するので、水洗トイレ使用によるコストを最小限に抑えることが可能となり、且つ、被処理水を水洗に再利用することによるコストの低減を確実に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は便器からの尿を安定的に処理して、これを便器の水洗に再利用することができる水洗トイレにおける排水リサイクル方法及び水洗トイレを提供することを主な特徴とする。便器からの尿を処理して便器の水洗に再利用するという目的を便器からの尿を回収手段に回収し、回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することによって酵素による尿素の分解を阻止すると共に、当該電解処理された尿素が残存する被処理水により便器を水洗し、再度回収手段に回収することにより実現した。以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するための水洗トイレの模式図である。本実施例の水洗トイレ1は、便器2と、内部に被処理水の流入口と流出口を有する回収タンク3と、該回収タンク3内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極7、8と、該電極7、8に通電するための図示しない電源と、該電源を制御するための制御装置10などから構成されている。
【0033】
本実施例の便器2は、小便専用の小便器である。また、前記回収タンク3は、便器2から回収された尿から成る被処理水、若しくは、尿を含む被処理水を回収するための回収手段であり、回収タンク3内に便器2からの尿及び被処理水、又は、尿、被処理水、或いは、すすぎ水(水道水)を回収するための図示しない流入口と、当該回収タンク3内の被処理水を便器2に流すための流出口と、回収タンク3内の被処理水を下水などに廃棄するための廃棄口とが設けられている。そして、便器2と回収タンク3とは配管5及び配管6により環状に接続されて、循環式水洗経路4を構成する。
【0034】
即ち、便器2の底部に形成された流出口には、配管5の一端が接続され、当該配管5の他端が回収タンク3の前記流入口に接続され、当該回収タンク3内に連通する。また、回収タンク3の流出口には配管6の一端が接続され、該回収タンク3内と連通し、配管6の他端は便器2に接続され、当該便器2内と連通して、上述の如く便器2から尿及び/又は被処理水を回収タンク3に回収し、当該回収タンク3内の被処理水を便器2に流して水洗する循環式水洗経路4を構成する。また、便器2の底部に形成された廃棄口には、制御手段、本実施例では制御装置10により開閉制御される開閉弁14が介設された配管15が接続されて、廃棄経路16が構成される。尚、回収タンク3内に該回収タンク3内部の被処理水を攪拌するための攪拌手段を設けても良い。
【0035】
前記電極7及び8は、ハロゲン化物イオン存在下で、次亜ハロゲン酸を生成可能な電極で有れば如何なるものでも良く、例えば、白金(Pt)又は白金とイリジウム(Ir)の混合物などの貴金属電極、又は、これらを被覆した不溶性の導電体から構成されている。尚、本実施例では電極7、8として白金焼成電極を白金イリジウム電極で被覆したものを用いる。尚、電極7、8は本実施例のものに限らず、貴金属又はこれらの貴金属を被覆した導体により構成しても良く、当該貴金属又は貴金属を被覆した導電体は、導電体に貴金属をメッキしたものを用いても構わない。
【0036】
一方、本実施例では回収タンク3に連通し、例えば、図示しないポンプなどの循環手段にて循環される循環配管12が設けられており、当該循環配管12には、回収タンク3内から流入する被処理水の酸化還元電位(ORP)を検出するためのORP計17が設けられている。このORP計17は前記制御装置10に接続される。
【0037】
上記制御装置10は、前記電極7、8への通電を制御するための制御手段である。本実施例では当該制御装置10は後述の如くORP計17にて検出される被処理水の酸化還元電位に基づいて電極7、8への通電を制御する。
【0038】
次に、本実施例の水洗トイレ1における回収タンク3内の被処理水の電解処理の制御方法について説明する。本発明では、回収タンク3に回収された尿(尿素とその他の成分から成る)から成る被処理水、若しくは、尿(尿素を含む)を含む被処理水をウレアーゼ酵素による尿素の分解を阻止可能な程度に電解処理することが最も望ましい。即ち、電解処理を従来の如く長時間連続して行うことで、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を抑えてアンモニアの発生を未然に防ぐことは勿論可能であるが、長時間電解処理することで、ウレアーゼ活性を抑制する以外に、有機物の分解にも電力が消費されるため、電解処理に要する電力コストがかかり過ぎて、消費電力が著しく増大してしまう。
【0039】
他方、電解処理の時間が短すぎると、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を十分に抑制できない恐れがある。そこで、本実施例では電解処理を被処理水の酸化還元電位に基づいて制御する。
【0040】
即ち、被処理水中におけるアンモニアの発生を阻止するために、被処理水を電解処理して塩素を発生させ、被処理水中に酸化力の強い遊離塩素、即ち、塩素(Cl2)、塩化物イオン(CL-)、次亜塩素酸(HClO)、又は、次亜塩素酸イオン(ClO-)を生成して、ウレアーゼ等の尿素分解酵素を分解、或いは、不活性化する必要がある。このとき、電解処理により被処理水中の塩素を発生させることにより、被処理水の酸化還元電位が上昇するので、当該酸化還元電位に基づいて被処理水の電解処理を行うことで、ウレアーゼの活性を抑えて尿素の分解を阻止することができるものと考えられる。
【0041】
ここで、実際に電解処理を制御するに際して、具体的な酸化還元電位を以下の実験に基づき決定した。先ず、被処理水を所定時間電解処理して、各電解時間毎に酸化還元電位及びpHを測定し、その後、被処理水を1mLサンプリングしてここに尿素分解酵素であるウレアーゼ水溶液(1mg/mL)を2.2uL添加して100時間後のpHを測定した。
【0042】
この場合、当該被処理水として、尿の原液(導電率σ=1.3S/m)を300mMの塩化ナトリウムで10倍、20倍、30倍にそれぞれ希釈した溶液を用いた。また、電極7、8として上述の如く白金焼成電極を白金イリジウム電極で被覆したものを使用し、各電極間の距離を5mmとして、0.8A/80mLで電解処理した。尚、各電解時間は上記希釈倍率により異なるが20秒乃至60秒とした。
【0043】
上記電解処理を行った結果を図2に示す。図2において横軸は酸化還元電位(mV)、縦軸は初期のpHと100時間後に測定したpHの変化量ΔpHを示す。ここで、ΔpHが正であればウレアーゼの活性が残っており、0又は負であればウレアーゼの活性が消失(不活性)している。
【0044】
従って、ΔpHが0、若しくは、それより低い領域では、被処理水中のウレアーゼの活性が十分に抑えられて、被処理水中の尿素がアンモニアに分解されなかったものと考えられる。
【0045】
図2に示すように、本実験の結果、酸化還元電位が240mVより大きくなるとΔpHが0以下となるので、被処理水中の尿素がウレアーゼによりアンモニアに分解されなかったことがわかる。これにより、酸化還元電位が240mVより大きくなると、ウレアーゼの活性が十分に抑えられて、尿素をアンモニアに分解する反応を阻止できることが明らかである。
【0046】
次に、処理した後の尿による新鮮尿の10倍希釈液を繰り返し電解処理して、前記同様に100時間後のpH変化を測定した。即ち、原尿(導電率σ=2.6S/m)8mLを300mMの塩化ナトリウム水溶液72mLで希釈したものを被処理水(第1の被処理水)として、前記同様の実験を行い、次に、原尿8mLを上記被処理水(第1の被処理水)72mLで希釈したものを被処理水として同様の実験を行った。更に、原尿8mLを直前の被処理水で希釈して同様の実験を行うことを繰り返した(38回繰り返した)。尚、電解処理条件は上記実験同様に電極7、8として白金焼成電極を白金イリジウム電極で被覆したものを使用し、各電極間の距離を5mmとして、0.8A/80mL(電圧4V)で電解処理した。尚、この場合の電解時間は最初の被処理水(第1の被処理水)では5秒であり、それ以降、処理回数を重ねる毎に処理時間を増加させて行き、38回目の被処理水では2.5分間電解を行った。この結果を図3に示す。尚、図3において横軸は酸化還元電位(mV)、縦軸は初期のpHと100時間後に測定したpHの変化量ΔpHを示す。
【0047】
図3に示すように、酸化還元電位が240mVより小さい場合には、ΔpHが0より大きくなった。ウレアーゼにより被処理水中の尿素がアンモニアに分解されて、該アンモニアが被処理水中でアンモニウムイオンの形で存在するため、被処理水がアルカリ性となったことを示している。一方、酸化還元電位が240mVより大きくなると、ΔpHが0以下となった。従って、酸化還元電位が240mVより大きくなると、ウレアーゼの活性が抑えられていることがわかる。このように、繰り返して電解処理を行った場合であっても酸化還元電位が240mVより大きい値となるように電解を制御することで、被処理水中の尿素はウレアーゼ酵素によってアンモニアに分解されないことが明らかとなった。
【0048】
以上の結果から、被処理水の酸化還元電位が240mV以上を維持するように電解処理することで当該被処理水を便器2の水洗に繰り返し利用できるので、本実施例の水洗トイレ1では制御装置10により酸化還元電位が240mV以上となるように被処理水の電解処理を行うものとする。
【0049】
以上の構成により、本実施例における水洗トイレ1における排水処理動作について説明する。この場合、回収タンク3内には水道配管11から予め1.8Lの水道水が供給されて、貯溜されているものとする。
【0050】
そして、使用者が便器2にて排尿(例えば200mL程度)し、便器2の洗浄スイッチを押すと(或いは、洗浄用レバーを操作すると)、制御装置10は、回収タンク3に予め貯溜された1.8Lの被処理水(この場合、被処理水は回収タンク3内に予め貯溜された水道水であって、平均排尿量の約10倍)が配管6を介して便器2の水洗として供給される。これにより、便器2の洗浄が行われる。そして、便器2を洗浄した尿を含む被処理水は、配管5を介して回収タンク3内に回収される。
【0051】
このように回収タンク3内に被処理水(便器に排出された尿を含む被処理水)が回収されると、制御装置10は電解処理を開始する。即ち、制御装置10は電極7、8に電源を供給する。このとき、プラス電位が印加される電極7がアノード、マイナス電位が印加される電極8がカソードとなる。これにより、カソードとなる電極8では水素イオンが電子を受け取り水素を生成し、アノードとなる電極7では塩化物イオンが電子を放出して塩素を生成する(反応式(1)、(2))。以下に反応式(1)、(2)を示す。
2H++2e-→H2↑・・・(1)
2Cl-→Cl2+2e-・・・(2)
【0052】
このように、当該電解処理により被処理水中に塩素が生成されるため、被処理水は酸性となる。また、その後、この塩素は水中に溶解して次亜塩素酸を生成する(反応式(3))。以下に反応式(3)を示す。
Cl2+H2O→HClO+HCl・・・(3)
【0053】
そして、本実施例では、制御装置10は図4のフローチャートに示す如く、電極7、8への通電を開始し(ステップS1)、ORP計17により被処理水の酸化還元電位を検出する(ステップS2)。制御装置10は、当該検出された酸化還元電位が上述した如くウレアーゼの活性が十分に抑えられ、被処理水中の尿素をアンモニアに分解する反応を阻止することができる240mVを上回る値、例えば250mVよりも高いか否かを判断する(ステップS3)。検出された酸化還元電位が250mV以上であるならばステップS4に進み、電極7、8への通電を停止し、再びステップS2に移行する。他方、検出された酸化還元電位が250mVに満たない場合には、ステップS1に進み、電極7、8への通電を継続する。
【0054】
いずれの場合であっても、制御装置10は、ステップS2において1分間隔で酸化還元電位の検出を行う。そのため、例えば図5に示す如く、1分毎に検出される被処理水の酸化還元電位が250mVに満たない場合には、電極7、8へ通電され、被処理水の電解処理が行われ、酸化還元電位が250mV以上となった場合には、電極7、8への通電が停止される。従って、被処理水の酸化還元電位は、1分間隔で行われる検出に基づき、常時240mVを上回る値に維持されることとなる。尚、被処理水の塩素濃度によっては、酸化還元電位が急激に低下する場合があるが、この場合であっても、1分間隔でORP計17によって、酸化還元電位の検出が行われるため、直ぐに電解を開始でき、酸化還元電位を240mV以上に維持することが可能となる。
【0055】
このように、酸化還元電位が250mVに達した時点で、電解を停止することにより、前記図2乃至図3に示す実験結果の如くウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を抑えて尿素の分解を確実に阻止することが可能となる。そのため、尿素がアンモニアに分解されて、異臭を発生する不都合を未然に回避することができ、電解処理された尿素が残存する被処理水により便器2を水洗しても、尿中にアンモニアが生成されることによる悪臭の発生を効果的に抑制することが可能となる。従って、悪臭を発生させることなく、便器2からの尿を回収し、当該尿素が残存する被処理水を、便器2の水洗に再利用することで、節水効果を得ることができるようになる。
【0056】
更に、尿素がアンモニアに分解される不都合を阻止することで、回収タンク3内の被処理水がアルカリ性となることが防止される。これにより、尿中のカルシウムなどのミネラル分がリン酸塩や炭酸塩などの尿石として析出する不都合を防ぐことができるので、汚れの付着も未然に解消できる。
【0057】
更に、上述したように、尿素を残存させた被処理水中には、電解処理により強い殺菌力を有する次亜塩素酸が生成され、当該次亜塩素酸を含む被処理水が便器2の水洗に利用される場合には、上記尿素分解酵素の活性を抑制する効果に加えて、除菌効果も得られる。従って、当該被処理水で便器2を水洗することで、便器2の除菌も行うことが可能となる。
【0058】
尚、以降、便器2に排尿が行われる度に、排尿分だけ回収タンク3に回収される被処理水の量が多くなってしまうので一回の水洗毎に例えば、開閉弁14を開放し、図示しない廃棄口より配管15を介して廃棄経路16より増加分だけ下水に廃棄するものとしても構わない。
【0059】
一方、尿を被処理水で便器2を水洗する毎に、回収タンク3内の尿が濃くなるため、電解処理に要する時間が長くなってしまう。電解処理の時間が長くなると、被処理水の電解処理に要する電力コストが、被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回ってしまう。このため、本実施例では被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収タンク3の被処理水を図示しない廃棄口から廃棄するものとする。
【0060】
図6は、便器2の洗浄回数に対する電力コストを示した図である。尚、比較対象として、便器の洗浄回数に対する一般的な尿をリサイクルしない場合における水道コストを示す。尚、図6では、1人の人間の排尿量が一回当たり200mL、一日当たり平均10回として、一日当たりの全排尿量を2.0Lとする。電解条件としては、定電流10A/L(電圧:4V)、回収タンク3の容量を20Lとする。また、コストの比較では、水道代150円/m3、電気代13円/kWhであるものとして算出する。
【0061】
本発明を用いた場合における節水コストは、水洗回数×一回の水量、即ちすべて水道水を使用して便器2の水洗を行った場合における全水道料金となる(節水コスト=水洗回数×一回の水量=全水道料金)。そのため、上記条件では、全回(初回を除く)を尿を含む被処理水により便器2の水洗を行うと、一日当たり20Lの節水となり、節水コストは、当該20Lの水道水量に対する料金となる。
【0062】
これに対し、上述したように、被処理水の尿の濃度が高くなると、電解処理に要する時間が長くなり、必然的に、排尿回数(サイクル数)が増加するに従って、消費電力量が上昇し、電力コストが上昇する。
【0063】
そのため、本発明における被処理水の尿の濃度増加(サイクル)に対する電力コストをしめす曲線と、すべて水道水により便器2を水洗した場合に要する水道料金を示す直線とが交わる点が、サイクル数に対する電力コストと水道料金が同額となる点である。図6では、62回が電力コストと、水道料金が同額となる。
【0064】
従って、この場合、電解処理に要する電力コストが節水によるコスト減を上回る洗浄回数は、63回となり、制御装置10は、当該洗浄回数(63回)に至る以前(62回以下)に、開閉弁14を開放し、回収タンク3内に貯溜された被処理水を外部に廃棄するものとする。
【0065】
これにより、被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収タンク3の被処理水を廃棄することで、従来のように尿を貯溜すること無しに下水に廃棄した場合に使用する水道水のコストより、本発明の如く便器2からの尿を回収して電解して再度、便器2の水洗に再利用する方がコストを確実に抑えることができる。そのため、本発明により水資源の有効利用を図りながらコストの低減を確実に図ることができるようになる。
【0066】
尚、上記実験では、電解処理に要する電力コストが節水によるコスト減を上回る洗浄回数は、63回としているが、これに限定されるものではなく、それぞれの電解条件に応じて予め実験により求められた当該洗浄回数を用いて、制御装置10が当該洗浄回数に至る以前に回収タンク3内に貯溜された被処理水を廃棄するものとしても良いし、電極に通電した電力量を積算した電力コストと水洗回数を把握しておき、節水コストを、電力コストが上回る以前に廃棄するものとしても構わない。
【0067】
一方、回収タンク3内の被処理水が廃棄経路16を介して廃棄されると、水道配管11を介して当該回収タンク3内に1.8Lの水道水が供給される。これにより、次回の便器2の水洗には該回収タンク3内に貯溜された当該水道水が便器2に供給され、便器2の水洗を行う。
【0068】
尚、上記では回収タンク3内の被処理水が廃棄経路16から廃棄されると、水道配管11から当該回収タンク3内に水道水が供給されるものとしたが、これに限らず、便器2に水道水を供給するための水道配管13を設けておき、回収タンク3内の被処理水が廃棄された場合には、回収タンク3内に水道水を供給すること無く、次回の水洗時に当該水道配管13から直接便器に所定量(1.8L)の水道水が供給され便器2が水洗されるものとしても構わない。
【0069】
他方、水洗後の便器2には、回収タンク3から便器2に供給された被処理水が残留することとなるが、この場合、被処理水が便器2に残留することで、当該便器2に残留した被処理水中の尿素がアンモニアに分解され、異臭を発生させたり、尿石が生成する恐れがある。
【0070】
このため、便器2の水洗後にすすぎ水により便器2をすすぐものとしても構わない。即ち、この場合、便器2にすすぎ水(例えば、水道水)を流すためのすすぎ水供給装置としての水道配管13を備えて、回収タンク3からの被処理水で水洗した後に、当該水道配管13から少量の水道水をすすぎ水として便器2に供給し、当該すすぎ水により便器2をすすぐものとする。これにより、便器2に被処理水が残留しないので、当該便器2に残留した被処理水中の尿素がアンモニアに分解され、異臭を発生させたり、尿石が生成する不都合を確実に回避することができる。
【0071】
更に、前記回収タンク3における電解は、ウレアーゼの活性を抑えることができる程度の最小限のものであるため、当該電解では被処理水中の尿の特有の着色を消すことが困難である。従って、便器2洗浄後に当該便器2内に残留する被処理水は無色でないため、使用者に不快感を与えたり、便器2が着色される恐れがある。しかしながら、上述の如く水洗時に回収タンク3からの被処理水で水洗した後に、少量のすすぎ水で便器2を洗浄することで、便器2内には無色透明の水道水が貯溜されることとなるので、このような不都合を解消することができる。
【0072】
また、被処理水により便器2を定期的に洗浄するものとしても、当該便器2に残留した被処理水中の尿素がアンモニアに分解され、異臭を発生させたり、尿石が生成する不都合を解消することができる。この場合、制御装置10は、例えば、水洗が行われてから時間をカウントし、カウントを開始してから所定時間経過するまでに再度水洗が行われない場合には、回収タンク3内の被処理水を便器2に流し、便器2を洗浄するものとする。
【0073】
これにより、便器2に長時間被処理水が残留することにより、当該被処理水がアンモニアに分解されて悪臭を発生したり、尿石が発生する不都合も防ぐことができる。
【実施例2】
【0074】
次に、他の実施例の水洗トイレについて図7を用いて説明する。図7は本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するための水洗トイレの模式図である。尚、図7において図1と同一の符号が付されているものは、同一或いは類似の効果を奏するものとして説明を省略する。
【0075】
係る実施例における循環配管12には、回収タンク3内から流入する被処理水の酸化還元電位(ORP)を検出するためのORP計17と回収タンク3内に貯溜された被処理水の全塩素濃度を検出するための全塩素濃度検出手段としての全塩素濃度計18が設けられている。これらORP計17及び全塩素濃度計18は電極7、8への通電を制御する制御装置20に接続される。
【0076】
係る実施例では制御装置20は後述の如く前記ORP計17にて検出される被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度計18にて検出される被処理水の全塩素濃度に基づいて電極7、8への通電を制御する。
【0077】
次に、本実施例の水洗トイレ1における回収タンク3内の被処理水の電解処理の制御方法について説明する。係る実施例においても上記実施例と同様に、回収タンク3に回収された尿から成る被処理水、若しくは、尿を含む被処理水を酵素による尿の分解を阻止可能な程度に電解処理することが最も望ましい。即ち、電解処理を従来の如く長時間連続して行うことで、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を抑えてアンモニアの発生を未然に防ぐことは勿論可能であるが、長時間電解処理することで、電解処理に要する電力コストがかかり過ぎて、消費電力が著しく増大してしまう。
【0078】
他方、電解処理の時間が短すぎると、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を充分に抑制できない恐れがあった。そこで、係る実施例では電解処理を被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて制御するものとする。
【0079】
即ち、上記アンモニアの発生を阻止するために、被処理水を電解処理して塩素を発生させて、ウレアーゼ等の尿素分解酵素を分解、或いは、不活性化する必要があるが、係る電解処理により被処理水中の塩素の増加に伴い被処理水の酸化還元電位が上昇するので、当該酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて、被処理水の電解処理を行うことで、ウレアーゼの活性を抑えて尿の分解を阻止することができるものと考えられる。
【0080】
ここで、実際に電解処理を制御するに際して、具体的な酸化還元電位と全塩素濃度の値を以下の実験に基づいて決定した。先ず、被処理水を所定時間電解処理して、各電解時間毎に全塩素濃度、酸化還元電位及びpHを測定し、その後、被処理水を1mLサンプリングしてここに尿素分解酵素であるウレアーゼ水溶液(1mg/mL)を2.2uL添加して100時間後のpHを測定した。
【0081】
この場合、当該被処理水として、尿の原液(導電率σ=1.3S/m)を300mMの塩化ナトリウムで10倍、20倍、30倍にそれぞれ希釈した溶液を用いた。また、電極7、8として上述の如く白金焼成電極を白金イリジウム電極で被覆したものを使用し、各電極間の距離を5mmとして、0.8A/80mLで電解処理した。尚、各電解時間は上記希釈倍率により異なるが20秒乃至60秒とした。
【0082】
上記電解処理を行った結果を図8に示す。図8において横軸は酸化還元電位と全塩素濃度の積(実際の図8の横軸は、酸化還元電位(mV)と全塩素濃度(mg/L)の積を1000で割った数値)、縦軸は初期のpHと100時間後に測定したpHの変化量ΔpHを示す。ここで、ΔpHが正であればウレアーゼの活性が残っており、0又は負であればウレアーゼの活性が消失している。
【0083】
従って、ΔpHが0、若しくは、それより低い領域では、被処理水中のウレアーゼの活性が充分に抑えられて、被処理水中の尿がアンモニウムに分解されなかったものと考えられる。
【0084】
図8に示すように、本実験の結果、酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より大きくなるとΔpHが0以下となるので、被処理水中の尿がアンモニウムに分解されなかったことがわかる。これにより、酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より大きくなると、ウレアーゼの活性が充分に抑えられて、尿をアンモニウムに分解する反応を阻止できることが明らかである。
【0085】
次に、前記10倍希釈被処理水を繰り返し電解処理して、前記同様に100時間後のpH変化を測定した。即ち、原尿(導電率σ=2.6S/m)8mLを300mMの塩化ナトリウム水溶液72mLで希釈したものを被処理水(第1の被処理水)として、前記同様の実験を行い、次に、原尿8mLを上記被処理水(第1の被処理水)72mLで希釈したものを被処理水として同様の実験を行った。更に、原尿8mLを上記被処理水で希釈して同様の実験を行うことを繰り返した(38回繰り返した)。尚、電解処理条件は上記実験同様に電極7、8として白金焼成電極を白金イリジウム電極で被覆したものを使用し、各電極間の距離を5mmとして、0.8A/80mLで電解処理した。尚、この場合の電解時間は最初の被処理水(第1の被処理水)では5秒であり、それ以降、処理回数を重ねる毎に処理時間を増加させて行き、38回目の被処理水では2.5分間電解を行った。この結果を図9に示す。尚、図9において横軸は酸化還元電位(mV)と全塩素濃度(mg/L)の積、縦軸は初期のpHと100時間後に測定したpHの変化量ΔpHを示す。
【0086】
図9に示すように、酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より小さい場合には、ΔpHが0より大きくなった。ウレアーゼにより被処理水中の尿素がアンモニアに分解されて、該アンモニアが被処理水中でアンモニウムイオンの形で存在するため、被処理水がアルカリ性となったことを示している。一方、酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より大きくなると、ΔpHが0以下となった。従って、酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より大きくなると、ウレアーゼの活性が抑えられていることがわかる。このように、繰り返して電解処理を行った場合であっても酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000より大きい値となるように電解を制御することで、尿素がアンモニアに分解されないことが明らかとなった。
【0087】
以上の結果から、被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度の積が7000以上を維持するように電解処理することで当該被処理水を便器2の水洗に繰り返し利用できるので、本実施例の水洗トイレ1では制御装置20により酸化還元電位と全塩素濃度の積が10000となるように被処理水の電解処理を行うものとする。
【0088】
即ち、本実施例の水洗トイレ1では便器2の水洗を行い、回収タンク3に被処理水が回収されてから制御装置20により、電極7、8の通電を開始して、ORP計17にて検出される酸化還元電位(mV)と全塩素濃度計18にて検出される全塩素濃度(mg/L)の積が10000に上昇したところで電極7、8の通電を停止するものとする。
【0089】
このように、被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて、当該被処理水の電解処理を制御するものとすれば、電解処理をウレアーゼの活性を阻止する程度で停止することができる。これにより、尿の分解を確実に阻止しながら、節水効果に加えて電力コストも削減することができる。
【0090】
以上の構成により、本実施例における水洗トイレ1における排水処理動作について説明する。この場合、回収タンク3内には水道配管12から予め1.8Lの水道水が供給されて、貯溜されているものとする。
【0091】
そして、使用者が便器2にて排尿し、便器2の洗浄スイッチを押すと(或いは、洗浄用レバーを操作すると)、制御装置20は、回収タンク3に予め貯溜された1.8Lの被処理水(この場合、被処理水は回収タンク3内に予め貯溜された水道水)が配管6を介して便器2の水洗として供給される。これにより、便器2の洗浄が行われる。そして、便器2を洗浄した尿を含む被処理水は、配管5を介して回収タンク3内に回収される。
【0092】
このように回収タンク3内に被処理水が回収されると、上記実施例と同様に制御装置20は電解処理を開始する。即ち、制御装置20は電極7、8に電源を供給する。当該電解処理により被処理水中に塩素が生成されるため、被処理水は酸性となる。また、その後、この塩素は水中に溶解して次亜塩素酸を生成する。
【0093】
そして、制御装置20はORP計17にて検出される酸化還元電位と全塩素濃度計18にて検出される全塩素濃度に基づいて、これらの積が10000に上昇すると電極7、8への通電を停止する。これにより、被処理水の電解が停止する。このように、酸化還元電位と全塩素濃度とが10となるところで、電解を停止することにより、前記図8乃至図9に示す実験結果の如くウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を抑えて尿の分解を確実に阻止することが可能となる。このように、強い殺菌力を有する次亜塩素酸が生成され、当該次亜塩素酸を含む被処理水が便器2の水洗に利用される場合には、上記尿素分解酵素の活性を抑制する効果に加えて、除菌効果も得られる。これにより、当該被処理水で便器2を水洗することで、便器2の除菌も行うことが可能となる。
【0094】
これにより、尿素がアンモニアに分解して、異臭を発生する不都合を未然に回避することができる。更に、尿素がアンモニアに分解される不都合を阻止することで、回収タンク3内の被処理水がアルカリ性となることが防止される。これにより、尿中のカルシウムなどのミネラル分がリン酸塩や炭酸塩などの尿石として析出する不都合を防ぐことができるので、汚れの付着も未然に解消できる。
【0095】
次に、再び水洗トイレ1が使用され、使用者により便器2の洗浄スイッチが押されると、制御装置20により当該回収タンク3内の被処理水1.8Lが配管6を介して便器2に供給され、尿素が残留する被処理水により便器2の水洗が行われる。そして、便器2を洗浄した被処理水及び排出された尿は配管5を経て再度、回収タンク3内に回収される。
【0096】
そして、回収タンク3に被処理水(便器に排出された尿を含む被処理水)が回収されると、制御装置20は上述同様の電解処理を開始する。そして、制御装置20は、酸化還元電位と全塩素濃度の積が10000に上昇すると電解を停止する。以降、便器の水洗が行われる度に制御装置20は上記電解処理を繰り返す。このとき、便器2の水洗を行う度に、便器2からの尿の分、回収タンク3に回収される被処理水の量が多くなってしまうので一回の水洗毎に例えば、図示しない廃棄口から増加分だけ下水に廃棄するものとしても構わない。
【0097】
尚、係る実施例においても、尿を被処理水で便器2を水洗する毎に、回収タンク3内の尿が濃くなるため、電解時間に要する時間が長くなってしまう。そのため、上記実施例と同様に、被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収タンク3の被処理水を廃棄経路16から廃棄するものとする。
【実施例3】
【0098】
次に、他の実施例の水洗トイレについて図10を用いて説明する。図10は本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するための他の実施例としての水洗トイレの模式図である。尚、図10において図1又は図7と同一の符号が付されているものは、同一或いは類似の効果を奏するものとして説明を省略する。
【0099】
図10において50は、本実施例の水洗トイレであり、便器52と、回収タンク3と、該回収タンク3内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極7、8と、該電極7、8に通電するための図示しない電源と、該電源を制御するための制御装置20などから構成されている。
【0100】
本実施例の便器52は、屎尿分離型の便器である。即ち、便器52は、該便器52内の前方と後方とを仕切る仕切部材53が設けられており、当該仕切部材53の前方の空間54を小便用、後方の空間55を大便用として使用するものである。
【0101】
便器52の小便用空間54の底部には循環式水洗経路4の一部を構成する配管57が接続され、当該配管57は回収タンク3の図示しない流入口に至り、当該回収タンク3内と連通する。また、回収タンク3の流出口には配管58の一端が接続され、当該配管58の他端は便器52に接続され、当該便器52内に連通する。このように、便器52と回収タンク3とは配管57及び配管58により環状に接続されて、循環式水洗経路4を構成する。
【0102】
一方、便器52の大便用空間55の底部に接続された配管59は下水配管に接続されており、当該空間55の排出物は回収されること無く下水に至る。即ち、本実施例の水洗トイレ50は、空間55に排出された大便は回収すること無しに廃棄され、空間54に排出された尿のみを回収して、前記実施例の如く電解処理して再度便器52の水洗に再利用するものである。
【0103】
この場合、使用後に便器52の空間54或いは空間55のどちらに水を流して、洗浄するかは、予め空間54洗浄用のスイッチと、空間55洗浄用のスイッチを別々に設けておき、制御装置がどちらのスイッチが押されたか判断して、水洗を行う空間を判断し、選択された空間のみを洗浄するものとしても良い。或いは、従来の使用後にレバーを操作することで水洗が行われるものとして、レバーを操作する方向により洗浄空間を異ならしめるものとしても構わない。
【0104】
本実施例の水洗トイレ50における回収タンク3内の被処理水の電解処理の制御方法についも上記実施例2と同様に電解処理を被処理水の酸化還元電位(ORP)と全塩素濃度に基づいて制御するものとする。即ち、便器52の水洗が行われて、回収タンク3に被処理水が回収されると、制御装置20は電極7、8の通電を開始して、ORP計17にて検出される酸化還元電位(mV)と全塩素濃度計18にて検出される全塩素濃度(mg/L)の積が10000に上昇したところで電極7、8の通電を停止するものとする。
【0105】
ここで、本実施例における水洗トイレ50における排水処理動作について説明する。この場合、前記実施例2と同様に回収タンク3内には予め水道水が1.8L貯溜されているものとする。
【0106】
そして、使用者が小便用の空間54に排尿して、小便用の洗浄スイッチを押すと(或いは、洗浄用のレバーを小便用の方向に操作すると)、制御装置20は、回収タンク3に予め貯溜された1.8Lの被処理水(この場合、被処理水は回収タンク3内に予め貯溜された水道水)が配管58を介して便器52の空間55に洗浄水として供給される。これにより、便器52の空間55の洗浄が行われる。そして、便器52を洗浄した尿を含む被処理水は、配管57を介して回収タンク3内に回収される。
【0107】
このように回収タンク3内に被処理水が回収されると、制御装置20は電解処理を開始する。即ち、制御装置20は電極7、8に電源を供給する。尚、電解処理については上記実施例2と同様であるため説明を省略する。このように、酸化還元電位と全塩素濃度とが10000となるところで、電解を停止することにより、上記実施例と同様にウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を確実に阻止することが可能となる。
【0108】
これにより、尿素がアンモニアに分解されて、異臭を発生する不都合を未然に回避することができる。更に、尿素がアンモニアに分解される不都合を阻止することで、回収タンク3内の被処理水がアルカリ性となることが防止される。これにより、尿中のカルシウムなどのミネラル分がリン酸塩や炭酸塩などの尿石として析出する不都合を防ぐことができるので、汚れの付着も未然に解消できる。
【0109】
尚、本実施例においても上記各実施例と同様に被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収タンク3の被処理水を廃棄するものとする。このように、被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を便器2の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、回収タンク3の被処理水を廃棄することで、水資源の有効利用を図りながらコストの低減を確実に図ることができる。また、回収タンク3内の被処理水が廃棄されると、次回の便器52の水洗には水道配管13から便器52に所定量(1.8L)の水道水が直接供給され、便器52の水洗に利用される。
【0110】
他方、使用者が大便用の空間55に排便して、大便用の洗浄スイッチを押すと(或いは、洗浄用のレバーを大便用の方向に操作すると)、制御装置20は、回収タンク3に貯溜された1.8Lの被処理水が配管58を介して便器52の空間55に供給される。これにより、便器52の空間55の洗浄が行われる。そして、便器52を洗浄した被処理水及び大便は、配管59を介して下水に廃棄される。
【0111】
これにより、回収タンク3内の被処理水は、大便と共に配管59から下水に廃棄されるので、次回の便器52の水洗には便器52に所定量(1.8L)の水道水が直接供給され、便器52の水洗に利用される。この場合、小便用の洗浄スイッチが押された場合には(或いは、洗浄用のレバーが小便用の方向に操作された場合には)空間54を洗浄した後、配管57を介して回収タンク3内に回収され、前述の如き電解処理が行われる。他方、大便用の洗浄スイッチが押された場合には(或いは、洗浄用のレバーが大便用の方向に操作された場合には)空間55を洗浄した後、配管59を介して下水に廃棄される。
【0112】
このように、本実施例の水洗トイレ50においても、便器52の小便用の空間54からの尿を回収して電解処理し、便器52の水洗に再利用することができる。
【0113】
尚、本実施例において回収タンク3内の被処理水が廃棄された場合には、次回の便器52の洗浄には回収タンク3内に水道水を供給すること無く、次回の水洗時に直接便器に所定量(1.8L)の水道水が供給され便器52が水洗されるものとしたが、これに限らず、回収タンク3内の被処理水が廃棄経路16から廃棄されると、水道管から当該回収タンク3内に水道水が供給されるものとしても構わない。
【0114】
また、本実施例では、大便用の洗浄スイッチが押されると(或いは、洗浄用のレバーが大便用の方向に操作されると)、制御装置20は、回収タンク3に貯溜された1.8Lの被処理水が配管58を介して便器52の空間55に供給され、便器52の空間55の洗浄が行われるものとしたが、この場合には、回収タンク3からの被処理水が供給されることなく、水道配管13から水道水が供給されて、便器52の空間55が水洗されるものとしても良い。
【実施例4】
【0115】
尚、上記実施例3では水洗トイレ50が仕切部材53により小便用の空間54と大便用の空間55とに仕切られたものを用いて説明したが、図11に示すような家庭等で一般的に使用される大便と小便とが分離されていない形式の便器102(図11に示す通常トイレ)を用いた場合であっても本発明は有効である。図11は、本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するためのもう一つの他の実施例の水洗トイレの模式図である。尚、図11において図1、図7又は図10と同一の符号が付されているものは、同一或いは類似の効果を奏するものとして説明を省略する。
【0116】
図10において、100は本実施例の水洗トイレであり、便器102、回収タンク3と、該回収タンク3内の被処理水中に少なくとも一部が浸漬するように対向して配置された一対の電極7、8と、該電極7、8に通電するための図示しない電源と、該電源を制御するための制御装置20などから構成されている。
【0117】
本実施例の場合、大便と小便の両方が同じ便器102内の空間に排出されるため、再利用することが困難な大便が排出される場合には、前記実施例3と同様に回収せずに下水に放出することが望ましい。
【0118】
そこで、本実施例の便器102の底部には、下水と接続される配管59と、回収タンク3と接続される配管103とが配設される。そして、例えば、これら配管103及び配管59の便器102と連通する連通口にそれぞれ図示しない蓋部材等を設けると共に、小便時に便器102の洗浄を行うスイッチと、大便時に洗浄を行うスイッチとを別途設けるものとする。そして、使用者により小便用のスイッチが投入されると、制御装置20は、回収配管103の前記蓋部材を開放して、便器102内の尿を含む被処理水を当該回収配管103に流し、回収タンク3に再度回収する。
【0119】
一方、使用者により大便用のスイッチが投入されると、制御装置20は、下水と連通する配管59の前記蓋部材を開放し、便器102内の大便及び前記回収タンク3からの被処理水を配管59に流して、下水へと放出する。
【0120】
これにより、大便を下水へと放出して廃棄し、小便のみを回収タンク3に回収して電解処理し、再度便器102の洗浄に再利用することができる。
【0121】
尚、本実施例における水洗トイレ100の被処理水の電解処理方法は、前記各実施例と同様であるため説明を省略する。また、水洗トイレ100における排水処理動作についても前記実施例3と同様であるため省略する。
【0122】
また、本実施例では、上述の如く小便用の洗浄スイッチと大便用の洗浄スイッチとを設けてこれらを操作することで、制御装置20が回収タンク3に回収するか下水に放出するかを判別するものとしたが、本発明はこのように小便用の洗浄スイッチと大便用の洗浄スイッチとを別途設けるものに限定されるものではない。例えば、レバーを操作することで水洗が行われるものとして、レバーを操作する方向により制御装置20が回収タンク3に回収するか、下水に放出するかを判別するものとしても良いし、便座に着座を感知するセンサを取り付けて、制御装置20は当該センサが着座を感知してから洗浄スイッチ或いは洗浄用のレバーが操作された場合には下水と連通する配管59の前記蓋部材を開放し、便器102内の大便及び前記回収タンク3からの被処理水を配管59に流して、下水へと放出し、センサによる着座を感知すること無しに洗浄スイッチ或いは洗浄用のレバーが操作された場合にのみ便器102内の尿を被処理水とを当該回収配管103に流し、回収タンク3に再度回収するものとしても有効である。
【実施例5】
【0123】
尚、上記実施例2乃至実施例4では電解処理を被処理水の酸化還元電位(ORP)と全塩素濃度に基づいて制御するものとするものとしたが、次亜塩素酸、塩素、次亜塩素酸イオン等の遊離塩素の濃度と全塩素濃度に基づいて被処理水の電解処理を制御するものとしても構わない。この場合、制御装置20は、遊離塩素濃度計21を用いて遊離塩素濃度を測定し、全塩素濃度計22を用いて全塩素濃度を測定するものとする。
【0124】
このように、酸化還元電位に代用して被処理水中の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて、電解処理を制御するものとしても前記図8乃至図9に示すような傾向が得られる。即ち、この場合、ΔpHが0以下となる値は、上記実施例2の酸化還元電位と全塩素濃度の積とは異なる数値であるが、遊離塩素濃度と全塩素濃度の積が所定値以下ではΔpHが0以上となり、所定値を超えると0以下となるため、被処理水中の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて、電解処理を制御するものとしても、ウレアーゼ等の尿素分解酵素の活性を抑える程度に電解処理を制御することが可能となり、電力コストも抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するための水洗トイレの模式図である。(実施例1)
【図2】各希釈倍率の被処理水の酸化還元電位及び全塩素濃度に基づくpH変化を示す図である。
【図3】繰り返し電解処理した被処理水の酸化還元電位及び全塩素濃度に基づくpH変化を示す図である。
【図4】電解制御のフローチャートである。
【図5】酸化還元電位の変化に対する電解制御のタイミングを示す図である。
【図6】便器の洗浄回数に対する電力コストを示した図である。
【図7】本発明の水洗トイレにおける排水リサイクル方法を実現するための水洗トイレの模式図である。(実施例2)
【図8】各希釈倍率の被処理水の酸化還元電位及び全塩素濃度に基づくpH変化を示す図である。
【図9】繰り返し電解処理した被処理水の酸化還元電位及び全塩素濃度に基づくpH変化を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例の水洗トイレの模式図である。(実施例3)
【図11】本発明のもう一つの他の実施例の水洗トイレの模式図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0126】
1、50、100 水洗トイレ
2、52、102 便器
3 回収タンク
4 循環式水洗経路
5、6、15、57、58、59、103 配管
7、8 電極
10、20 制御装置
11、13 水道配管
12 循環配管
14 開閉弁
16 廃棄経路
17 ORP計(酸化還元電位検出手段)
18 全塩素濃度計(全塩素濃度検出手段)
53 仕切部材
54 小便用空間
55 大便用空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器からの尿を回収手段に回収し、該回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を電解処理することによって酵素による尿素の分解を阻止すると共に、当該電解処理された尿素が残存する被処理水により前記便器を水洗し、再度前記回収手段に回収することを特徴とする水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項2】
前記被処理水の酸化還元電位に基づいて当該被処理水の電解処理を制御することを特徴とする請求項1に記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項3】
前記被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて当該被処理水の電解処理を制御することを特徴とする請求項1に記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項4】
前記被処理水の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて当該被処理水の電解処理を制御することを特徴とする請求項1に記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項5】
前記被処理水による前記便器の水洗後、すすぎ水によって当該便器をすすぐことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項6】
前記被処理水により定期的に前記便器を水洗することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項7】
前記被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を前記便器の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、前記回収手段の被処理水を廃棄することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の水洗トイレにおける排水リサイクル方法。
【請求項8】
便器と、該便器から回収された尿から成る被処理水、若しくは、当該尿を含む被処理水を貯留するための回収タンクと、前記便器から尿及び/又は前記被処理水を前記回収タンクに回収し、当該回収タンク内の尿素が残存する被処理水を前記便器に流して水洗する循環式水洗経路と、前記回収タンク内の前記被処理水を電解処理する少なくとも一対の電極と、該電極への通電を制御することによって酵素による尿素の分解を阻止する制御装置とを備えたことを特徴とする水洗トイレ。
【請求項9】
前記回収タンク内の被処理水の酸化還元電位を検出する酸化還元電位検出手段を備え、
前記制御装置は、前記酸化還元電位検出手段が検出した前記被処理水の酸化還元電位に基づいて前記電極への通電を制御することを特徴とする請求項8に記載の水洗トイレ。
【請求項10】
前記回収タンク内の被処理水の酸化還元電位を検出する酸化還元電位検出手段と、前記被処理水の全塩素濃度を検出する全塩素濃度検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記酸化還元電位検出手段及び全塩素濃度検出手段が検出した前記被処理水の酸化還元電位と全塩素濃度に基づいて前記電極への通電を制御することを特徴とする請求項8に記載の水洗トイレ。
【請求項11】
前記回収タンク内の被処理水の遊離塩素濃度を検出する遊離塩素濃度検出手段と、前記被処理水の全塩素濃度を検出する全塩素濃度検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記遊離塩素濃度検出手段及び全塩素濃度検出手段が検出した前記被処理水の遊離塩素濃度と全塩素濃度に基づいて前記電極への通電を制御することを特徴とする請求項8に記載の水洗トイレ。
【請求項12】
前記便器にすすぎ水を流すすすぎ水供給装置を備え、
前記制御装置は、前記被処理水による前記便器の水洗後、前記すすぎ水供給装置によりすすぎ水を前記便器に流してすすぐことを特徴とする請求項8、請求項9、請求項10又は請求項11に記載の水洗トイレ。
【請求項13】
前記制御装置は、前記回収タンク内の被処理水により定期的に前記便器を水洗することを特徴とする請求項8、請求項9、請求項10又は請求項11に記載の水洗トイレ。
【請求項14】
前記回収タンク内の被処理水を廃棄する廃棄装置を備え、
前記制御装置は、前記被処理水の電解処理に要する電力コストが、当該被処理水を前記便器の水洗に利用することによる節水効果を上回る以前に、前記廃棄装置により前記回収タンク内の被処理水を廃棄することを特徴とする請求項8乃至請求項13の何れかに記載の水洗トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−146628(P2007−146628A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242873(P2006−242873)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】