説明

水洗便器

【課題】規定通りの洗浄水の吐水量をより小さい貯水タンクから得ることが出来る水洗便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗便器は、貯水タンク20への水の供給源34と、貯水タンク内の水を便器本体に圧送する加圧ポンプ22と、ポンプ給水管46aとを備え、上方水位検出手段64aと、上方水位検出手段より所定量上方でその一端70aが開口し、貯水タンク内の水をジェット側又はリム側の給水路に逃がすオーバーフロー管70と、上方水位検出手段による水位検出後にタンク水供給源から所定量の水を追加給水させる追加給水手段34と、下方水位検出手段64bとを有し、追加給水手段により追加される水量は、その追加により上昇する水位がオーバーフロー管の一端と一致し或いは上回るような量に設定され、このオーバーフロー管により定められる水位が貯水水位となり、下方水位検出手段により水位が検出されると加圧ポンプを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器に係り、特に、洗浄水を貯水する貯水タンク及びこの貯水タンク内の水を上記便器本体に圧送する加圧ポンプを備える水洗便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水洗大便器において、貯水タンク内の洗浄水をポンプにより加圧し便器に供給するようになっている水洗便器が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−264469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは、たとえポンプの駆動量が正確であり、そのようなポンプにより供給される洗浄水が一定であっても、便器への吐水口、例えばジェット口から吐出される吐出量が、ジェット口などの寸法誤差などにより規定どおりの吐水量が得られない場合があることを見出した。
また、近年、便器本体や貯水タンクの他に、洗浄水を加圧する加圧ポンプや、ジェット給水路側とリム給水路側とを切り替える切替弁などの機器、さらに、これらの作動状態を制御する基板や、温水洗浄便座などの電装品などが設けられるようになっている。それに伴い、より少ないスペースで貯水タンクを設け、限られた貯水タンクの容量で最大限の吐水量を確保したい、という課題が明らかになってきた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、規定通りの洗浄水の吐水量をより小さい貯水タンクから得ることが出来る水洗便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、便器本体と、この便器本体の洗浄をするための洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンクへ水を供給するタンク水供給源と、この貯水タンク内の水を便器本体に圧送する加圧ポンプと、貯水タンクから加圧ポンプへ水を供給するポンプ給水管と、ジェット側へ洗浄水を供給するジェット側給水管と、リム側へ洗浄水を供給するリム側給水管と、を備える水洗便器であって、貯水タンク内の上方に設けられタンク水供給源により貯水タンク内に供給される水の水位を検出する上方水位検出手段と、この上方水位検出手段より所定量上方でその一端が開口し、貯水タンク内の水をジェット側給水路又はリム側給水路に逃がすことが出来るオーバーフロー管と、上方水位検出手段による水位検出後にタンク水供給源から所定量の水を追加給水させる追加給水手段と、貯水タンク内の下方に設けられ貯水タンクから加圧ポンプに供給されるときの貯水タンクの水の水位を検出する下方水位検出手段と、を有し、追加給水手段により追加される水量は、その追加により上昇する水位がオーバーフロー管の一端と一致し或いは上回るような量に設定されて、このオーバーフロー管により定められる水位が貯水水位となるようになっており、且つ、下方水位検出手段により水位が検出されると加圧ポンプを停止させるようになっていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、上方水位検出手段による水位検出後にタンク水供給源から所定量の水を追加給水させる追加給水手段により、ほぼ確実に、上方のオーバーフロー管の一端の高さを貯水水位とすることが出来、さらに、下方水位検出手段により水位が検出されると加圧ポンプが停止されて、加圧ポンプから貯水タンク内への水の圧送が停止するので、ほぼ常に規定通りの水量を便器本体に供給することが出来る。また、オーバーフロー管の一端の高さで貯水水位を定めることが出来るので、貯水タンク上部の空間を最小限に留めた比較的小さな貯水タンクでも、上述したように規定通りの水量を確保することが出来る。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、貯水タンクへ水を供給するタンク水供給源の吐水及び止水はダイヤフラム式バルブにより行われ、追加給水手段は、このダイヤフラム式バルブの閉止後の自閉吐水量を所定量の水として追加給水させる。
このように構成された本発明においては、貯水タンクへ水を供給するタンク水供給源の止水はダイヤフラム式バルブにより行われるので、止水は緩停止して、止水時のウォーターハンマー現象のような騒音が生じることを抑制することが出来る。さらに、ダイヤフラム式バルブの閉止後の自閉吐水量を所定量の水として追加給水させるので、ダイヤフラム式バルブの閉止後の自閉吐水量を有効に利用して、追加給水を行うことが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、貯水タンクから加圧ポンプへ水を供給するポンプ給水管の給水口は、下方水位検出手段より所定量下方の位置で下方に向けて開口している。
このように構成された本発明においては、所定量(例えば、毎回ほぼ一定である加圧ポンプの慣性吐水量より大きい量)下方の位置にポンプ給水管の給水口を下方に向けて開口すれば、エアの巻き込みによる加圧ポンプのエア噛を防止することが出来る。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、ポンプ給水管の給水口には、貯水タンクから給水管への水の流れを規制せず、給水管から貯水タンクへの水の流れを規制する逆止弁として作用するフラッパー弁が設けられている。
このように構成された本発明においては、圧損の少ないフラッパー弁により給水管から貯水タンクへの水の流れを確実に規制して、加圧ポンプからの水抜けを防止することにより、連続駆動時でも加圧ポンプのエア噛を防止することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、規定通りの洗浄水の吐水量をより小さい貯水タンクから得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗便器を説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図であり、図3は本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0014】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された配水管15と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水するようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0015】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。トラップ下降管14cの下端に上述した配水管15が接続されている。
【0016】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0017】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。
【0018】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、図3に示すように、バルブユニット37として、一体的に組み立てられたものとなっている。また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0019】
ここで、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側であるリム給水路38からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路40から貯水タンク20に供給されるようになっている。給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への吸水量の割合を任意に変更出来る切替弁である。
これらの電磁開閉弁34の開閉操作、及び、給水路切替弁36の切替操作は、機能部10のコントローラ62により制御される。そして、電磁開閉弁34を開弁して給水路切替弁36がタンク側給水路40に連通させることにより貯水タンクへ水を供給することができ、タンク水供給源に該当する。
【0020】
また、貯水タンク20の下部には、ジェット側給水路46が接続されており、このジェット側給水路46の下流端は、ジェット吐水口16に接続されている。また、ジェット側給水路46の途中に上述した加圧ポンプ22が設けられている。この加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。加圧ポンプ22の回転数や作動時間等は、機能部10に設けられたコントローラ62により制御される。
【0021】
ジェット側給水路46は、加圧ポンプ22より上流側の上流ジェット側給水路46aと下流側の下流ジェット側給水路46bとから構成されている。ここで、下流ジェット側給水路46bは、図3に示すように、先ず、加圧ポンプ22から上方に延び、大便器1のボウル部12の溜水面Aよりも上方に配管が配置され、その後、配管が下方に向けて延びて構成されている。このように上方に向けた凸型に形成されている下流ジェット側給水路46bにおいて、その凸型部分の最も高い部分である頂部46cは、貯水タンク20からジェット吐水口16に至るジェット側給水路46の中で最も高い部分になっている。なお、上流ジェット側給水路46aが貯水タンク20から加圧ポンプ22へ水を供給するポンプ給水管に該当する。
【0022】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、給水路24に負圧が発生したときに洗浄水のリム吐出口18からの逆流を防止している。また、リム吐出用バキュームブレーカ48は、図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
タンク側給水路40にも、逆止弁であるバキュームブレーカ42が設けられており、洗浄水の貯水タンクからの逆流を防止している。
【0023】
ここで、貯水タンク20は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路40と貯水タンク20との接続部には、ボール式逆止弁43が設けられている。このボール式逆止弁43により、貯水タンク20が満水状態になった場合でも、ボール90が浮上して、タンク側給水路40との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路40に逆流することがないようになっている。
同様に、戻り管路50と貯水タンク20の接続部にも、ボール式逆止弁44が設けられており、貯水タンク20が満水状態となった場合でも、洗浄水が戻り管路50に逆流することはないようになっている。
【0024】
さらに、ジェット側給水路46の上流ジェット側給水路46aには、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている(図5参照)。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58(図5参照)を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排水することができるようになっている。
【0025】
また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け、加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0026】
さらに、貯水タンク20の上方フロートスイッチ64aよりも上方位置に、その一端70aが開口し、他端70bが下流ジェット側給水路64bに接続されたオーバーフロー流路70が設けられている。このオーバーフロー流路70には、逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。
このオーバーフロー流路70は、貯水タンク20において、水が開口70aより高くなるような場合、その貯水タンク20内の水をジェット側給水路46に逃がして、貯水タンク20から水が溢れ出すことがないようにするものである。
【0027】
また、このオーバーフロー流路70及びフラッパー弁72により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。また、オーバーフロー流路70の他端70bが、ボウル部12内の溜水の水位よりも上方に設けられているため、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流をより確実に防止するようにしている。
【0028】
上述した電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22などの動作内容を説明する。コントローラ62は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36を作動させ、先ずリム吐水口18から吐水し、リム吐水を継続させながら、次に加圧ポンプ22を作動してジェット吐水口からの吐水を開始させて、サイホン作用を発生させてボウル部12の溜水を汚物と共に排出洗浄する。さらに、コントローラ62は、加圧ポンプ22の作動停止した後もリム吐水を継続してボウル部12に溜水を貯めて洗浄終了する。その洗浄終了後、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上方フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0029】
次に、貯水タンク20の内部には、上方フロートスイッチ64a、及び、下方フロートスイッチ64bが配置されている。上方フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内の水位が所定の上方位置L1に達するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。下方フロートスイッチ64bは、貯水タンク20内の水位が所定の下方水位L3まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0030】
これらの作動内容を図4に示す。図4は、本発明の実施形態における水洗便器の基本動作を示すタイムチャートである。なお、このタイムチャートでは、リム吐水の動作の図示を省略しており、概略的なタイムチャートとなっている。
ここで、本発明の実施形態においては、満水時の水位が、後述するようにウォーターフローラインWFL(図3参照)となっている。ウォーターフローラインWFLの高さは、オーバーフロー流路70の一端部70aの高さに一致する。
【0031】
先ず、図4に示すように、満水状態において、t1で示す時刻で加圧ポンプ22が作動し、ジェット吐水が開始される。このとき、貯水タンク20内の水位がウォーターフローラインWFLを下回る。次に、加圧ポンプ22が作動中でジェット吐水が行われているとき(時刻t2)、貯水タンク20内の水位が上方フロートスイッチ64aを下回り、上方フロートスイッチ64aがONからOFFとなる。
【0032】
次に、t3で示す時刻において、下方フロートスイッチ64bがOFFからONになると、加圧ポンプ22が停止するとともにジェット吐水が終了する。なお、加圧ポンプ22の流量は70L/minと多い。従って、便器に供給する水量を一定に保つには時間制御では難しく、下方フロートスイッチ64bによる検知により、加圧ポンプ22を停止させるようにしている。ここで、貯水タンク20内の水位は、加圧ポンプ22の作動慣性量により下方フロートスイッチ64bよりも下方となる。この下方の位置をウォーターデッドラインWDLとして図3に示す。なお、この加圧ポンプ22の慣性量はばらつきが非常に少ないので、ウォーターデッドラインWDLの位置も毎回ほぼ同じ位置となる。
【0033】
その後、t4で示す時刻において、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34が作動(OFF→ON)して、貯水タンクへの給水が開始される。このとき、貯水タンク20内の水位は、ウォーターデッドラインWDLである。そして、電磁開閉弁34が作動して所定時間後のt5の時刻に、下方フロートスイッチ64bがONからOFFとなる。
【0034】
その後、貯水タンク20内の水位が上方フロートスイッチ64aの位置まで上昇すると、上方フロートスイッチ64aがONとなり、電磁開閉弁34が停止する。ここで、本実施形態では、電磁開閉弁34は、ウォーターハンマー現象が起こりにくいダイヤフラム式の電磁開閉弁としている。従って、そのダイヤフラム式の特性により、電磁開閉弁34を停止しても、所定の追加吐水量の水が貯水タンク20内へと流れる。即ち、電磁開閉弁34が本発明の追加給水手段に該当する。そして、本実施形態では、この所定の追加吐水量が、上方フロートスイッチ64aを超えて且つオーバーフロー流路70の一端部70aを超えるように設定されている。
なお、追加給水手段としては、電磁開閉弁34の代わりに電動式のボールバルブを用い、上方フロートスイッチ64aがONとなってからその電動式ボールバルブを閉弁動作させるまでに所定のディレイ時間を設定しておき、そのディレイ時間追加給水するように構成することもできる。
【0035】
従って、時刻t7で示すように、貯水タンク20内の水位が、電磁開閉弁34を停止(t6)した後の所定の時間経過後にウォーターフローラインWFLを超えることになる。ここで、ウォーターフローラインWFLはオーバーフロー流路70の一端部70aにより形成されるので、ウォーターフローラインWFLを超えて供給された余剰となる水は、ジェット側給水路46に流出することになる。なお、オーバーフロー流路70をリム吐水供給路38に接続して、余剰となる水をリム吐水口18から流出させるようにしても良い。いずれにしても、余剰となった溜水は、復水に使用することが出来る。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、この所定の追加吐水量が、上方フロートスイッチ64aを超えて且つオーバーフロー流路70の一端部70aを超えるように設定されており、洗浄開始時の水位が常にウォーターフローラインWFLとなるようにしている。また、また、加圧ポンプ22の慣性量はばらつきが非常に少ないので、洗浄終了時の水位がウォーターデッドラインWDLとなる。従って、便器に吐水させる水量を常に一定に保つことが出来る。
【0037】
次に、図5及び図6により、貯水タンクの構造を説明する。図5は、本発明の実施形態による貯水タンクの構造を一方の側から見た側面断面図であり、図6は、本発明の実施形態による貯水タンクの構造を他方の側から見た側面断面図である。
先ず、図5及び図6に示すように、貯水タンク20の上方には、上述したボール式逆止弁43、44が設けられている。ボールは、内部が空気で満たされているボール(浮き球)90、92であり、これらのボール90、92を保持する籠部材94、96が設けられている。上方に突出した部分の上部空間S内が空気で満たされている場合には、ボール90、92が籠部材94、96により受け止められて、タンク側給水路40の吐水口80b及び通水路50への出口82bが開放状態になっている。従って、タンク側給水路40の吐水口80bから水が吐水可能となり、また、水蒸気や空気の出口80bから水蒸気や空気が流れ出ることが可能になる。
【0038】
また、水路系統の1次側であるタンク側給水路40が負圧になったときには、タンク側給水路40は、貯水タンク20内の水を吸引するのではなく、その通気管50から空気を吸引するので、貯水タンク20内の水がタンク側給水路40に逆流することを防止することが出来る。一方、便器詰まり時などに使用されるラバーカップ(図示せず)によりジェット吐水口16から貯水タンク20に水圧がかかったときには、その水圧を受けて貯水タンク20内の水が上昇し、ボール90、92自身の浮力により浮き上がり、吐水口80b及び出口82bを塞いて、貯水タンク20内の水がタンク側給水路40及び通水路50に逆流するのを防止するようになっている。
【0039】
次に、図5に示すように、上方フロートスイッチ64aは貯水タンク20の蓋部に下向きに取り付けられ、下方フロートスイッチ64bはタンクの底部に上向きに取り付けられている。さらに、図6には、オーバーフロー流路70、及び、上方に向けて開口した一端部70aが示されている。
【0040】
次に、図5に示し、上述したように、ジェット側給水路46の上流ジェット側給水路46aには、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56が設けられている。フラッパー弁56は、この開口部64dの近傍に設けられている。図5では、フラッパー弁56が開放した状態で示されている。このフラッパー弁56は、圧力損失が少ない弁であるので、ポンプ給水口(上流ジェット側給水路64aの開口部)64dからポンプ22までの間の管における水抜けを防止することが出来る。その結果、連続駆動時にも加圧ポンプ22のエア噛を防止することが出来る。
【0041】
また、上流ジェット側給水路64aは、下方フロートスイッチ64bよりも下方、具体的には、ウォーターデッドラインWDLより下方で、下側に向けて開口している。従って、下方フロートスイッチ64bがOFFからONになるとき(図4のt3)において、加圧ポンプ22が停止する際、加圧ポンプ22の慣性量分の水が上流ジェット側給水路64aに流出しても、開口部64dから空気が上流ジェット側給水路64aに入り込むのを防止することが出来る。その結果、加圧ポンプ22のエア噛を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態における水洗便器の基本動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態による貯水タンクの構造を一方の側から見た側面断面図である。
【図6】本発明の実施形態による貯水タンクの構造を他方の側から見た側面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 水洗大便器
2 便座本体
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 給水路
38 リム側給水路
40 タンク側給水路
46 ジェット側給水路
46a 上流ジェット側給水路
46b 下流ジェット側給水路
46d 下流ジェット側給水路の開口部
43、44 ボール式逆止弁
56 ジェット吐水用フラッパー弁
64a 上方フロートスイッチ
64b 下方フロートスイッチ
70 オーバーフロー流路
72 フラッパー弁
80b 吐水口
82b 出口
86 貯水タンクの上方突出部
S 貯水タンクの上方突出部の上部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、この便器本体の洗浄をするための洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内の水を上記便器本体に圧送する加圧ポンプと、上記貯水タンクから上記加圧ポンプへ水を供給するポンプ給水管と、ジェット側へ洗浄水を供給するジェット側給水管と、リム側へ洗浄水を供給するリム側給水管と、を備える水洗便器であって、
上記貯水タンクへ水を供給するタンク水供給源と、
上記貯水タンク内の上方に設けられ上記タンク水供給源により上記貯水タンク内に供給される水の水位を検出する上方水位検出手段と、
この上方水位検出手段より所定量上方でその一端が開口し、上記貯水タンク内の水を上記ジェット側給水路又は上記リム側給水路に逃がすことが出来るオーバーフロー管と、
上記上方水位検出手段による水位検出後に上記タンク水供給源から所定量の水を追加給水させる追加給水手段と、
上記貯水タンク内の下方に設けられ上記貯水タンクから上記加圧ポンプに供給されるときの上記貯水タンクの水の水位を検出する下方水位検出手段と、を有し、
上記追加給水手段により追加される上記所定量の水は、その追加により上昇する水位が上記オーバーフロー管の一端と一致し或いは上回るような量に設定されて、このオーバーフロー管により定められる水位が貯水水位となるようになっており、且つ、上記下方水位検出手段により水位が検出されると上記加圧ポンプを停止させるようになっていることを特徴とする水洗便器。
【請求項2】
上記貯水タンクへ水を供給する上記タンク水供給源の吐水及び止水はダイヤフラム式バルブにより行われ、
上記追加給水手段は、このダイヤフラム式バルブの閉止後の自閉吐水量を上記所定量の水として追加給水させる請求項1に記載の水洗便器。
【請求項3】
上記貯水タンクから上記加圧ポンプへ水を供給するポンプ給水管の給水口は、上記下方水位検出手段より所定量下方の位置で下方に向けて開口している請求項1又は請求項2に記載の水洗便器。
【請求項4】
上記ポンプ給水管の給水口には、貯水タンクから給水管への水の流れを規制せず、給水管から貯水タンクへの水の流れを規制する逆止弁として作用するフラッパー弁が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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