説明

水洗便器

【課題】上下回動式のトラップ部による節水機能を低下させずに、従来のものに比べて汚物の搬送距離を延ばした水洗便器を提供する。
【解決手段】この課題を解決するために、水を溜めるボウル部1と、ボウル部1の底部2に形成されボウル部1内の水を排出する排水口10と、ボウル部1内に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、排水口10に上端部が連なり下流端が側方に開口した排水筒20と、排水筒20の下流端に接続された上下回動式のトラップ部30と、を備え、底部2の前底面3が排水口10に向けて下向き傾斜し、底部2の後底面4が、排水口10に向けて下向き傾斜すると共に前方開口縁11より上方に位置し、該後底面4が汚物40を受ける水跳ね防止部5となり、排水筒20の前方開口縁11に連なる内面が、下流側に向けて下向き傾斜した傾斜面21となると共に、該傾斜面21の傾斜角が前底面3の傾斜角より大きいものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下回動式のトラップ部を備えた水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上方に開口し水を溜めるボウル部と、ボウル部内の水と共に汚物を外部の下水管に排出する排水部と、を備えた水洗便器において、排水部が上下回動式のトラップ部を有した所謂ターントラップ式のものがある(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
従来のターントラップ式のものでは、図2に示すように、排水部が、上下回動式のトラップ部83に加え、ボウル部71の底部72に連なる排水筒80と、を有している。該排水筒80は後方(側方)に下流端が開口すると共に、該下流端にトラップ部83が接続されている。そして、ボウル部71は、排水筒80の下方側の内面81に連なる底部72の前底面73と、排水筒80の上方側の内面82に連なる底部72の後底面74と、が夫々下向きに傾斜している。更に、前底面73は排水筒80の下方側の内面81と略同じ傾斜角で略面一に連続しており、緩やかに傾斜した連続面78となっている。
【0004】
また、後底面74は傾斜下端周辺が前底面73より上方に位置し、該部位が、ボウル部71内の水の跳ね返りを抑えて汚物40を受ける水跳ね防止部75となっている。該水跳ね防止部75は、水跳ねを防止して受けた汚物40を、水跳ね防止部75の前方に位置する連続面78の前下方位置に落下させるものとなっている。
【0005】
そして、水跳ね防止部75から落下した汚物40は、トラップ部83が回動して排水状態に切り替わるまで、該前下方位置に留まり、排水状態に切り替わると、排水部及びボウル部71内の水と共に下水管に排出される。
【0006】
ところで、汚物40の排出において、汚物40の搬送距離は、図3に示すように、汚物40を基準に、汚物40より下流側の水52に比べて、汚物40より上流側の水51の影響を強く受けており、上流側の水51が多い程搬送距離が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−291568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来のものは、ボウル部の底部である水跳ね防止部の前下方位置に汚物が留まるため、排出時の汚物の搬送距離を長くするには、ボウル部を大型化する等でボウル部内の水を増加させる必要がある。そのため、搬送距離を長くすると、排出時に流す水の総量(洗浄水量)が増加してしまい、洗浄水量を低減したターントラップ式ならではの節水機能が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、この事情を鑑み、上下回動式のトラップ部による節水機能を低下させずに、従来のものに比べて汚物の搬送距離を延ばした水洗便器を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の水洗便器は、水を溜めるボウル部と、前記ボウル部の底部に形成され前記ボウル部内の水を排出する排水口と、前記ボウル部内に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記排水口に上端部が連なり下流端が側方に開口した排水筒と、前記排水筒の前記下流端に接続された上下回動式のトラップ部と、を備え、前記底部の前記排水口の前方開口縁に連なる前底面が、前記排水口に向けて下向き傾斜し、前記底部の前記排水口の後方開口縁に連なる後底面が、前記排水口に向けて下向き傾斜すると共に前記前方開口縁より上方に位置し、該後底面が汚物を受ける水跳ね防止部となり、前記排水筒の前記前方開口縁に連なる内面が、下流側に向けて下向き傾斜した傾斜面となると共に、該傾斜面の傾斜角が前記前底面の傾斜角より大きいものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成としたことで、上下回動式のトラップ部による節水機能を低下させずに、従来のものに比べて汚物の搬送距離を延ばすことができる。または、上下回動式のトラップ部による節水機能を向上させ、従来のものに比べて少ない洗浄水量で汚物を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の一例の水洗便器の要部の側断面図である。
【図2】従来の水洗便器の要部の側断面図である。
【図3】汚物の搬送距離における洗浄水の影響の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を例示して説明する。
【0014】
一実施例の水洗便器は、図1に示すように、内側に水を溜めるボウル部1と、ボウル部1の上方に配置された便座(図示せず)と、ボウル部1内の水を排出する排水部と、ボウル部1に洗浄水を供給する洗浄水供給部(図示せず)と、を備えている。排水部は、ボウル部1に開口して形成された排水口10と、排水口10に上端部が接続された排水筒20と、前記排水筒20の下流端に接続された上下回動式のトラップ部30と、を有している。そのため、本水洗便器は、トラップ部30の上下回動に伴って、排水部の封水状態と排水状態を切り替える所謂ターントラップ式のものとなっている。なお、本発明において
は、便座に着座した使用者を基準に脚側を前方とし背中側を後方とする。
【0015】
ボウル部1は上方に開口し内側に水を溜める椀形状のものとなっており、椀の喫水線6より下方が底部2となっている。そして、底部2の中央より後方側には排水口10が略円形状で開口すると共に、該排水口10を介して排水筒20が連なっている。そのため、ボウル部1の内側と排水筒20の内側が排水口10を介して連通すると共に、ボウル部1と排水筒20が一体で形成された構成となっている。
【0016】
また、底部2内面のうち、排水口10の前方側の開口縁に連なる前底面3と、排水口10の後方側の開口縁に連なる後底面4は、緩やかに排水口10に向けて下向き傾斜しており、各傾斜の下端が排水口10に至る構成となっている。そのため、ボウル部1内の水は、排水時に、排水口10に向かって流れる構成となっている。なお、底部2内面は前底面3と後底面4のみが排水口10に向けて下向き傾斜したものに限らず、底部2内面全体が排水口10に向けて下向き傾斜したものであってもよい。
【0017】
そして、後底面4は後方開口縁12周辺部が前底面3より上方に位置しており、該周辺部が便等の汚物40を受けてボウル部1内の水の利用者(上方)への跳ね返りを防止する水跳ね防止部5となっている。該水跳ね防止部5は傾斜によって、受けた汚物40を水跳ね防止部5の前方下方に位置する排水口10に落下させる。
【0018】
また、排水筒20は略円筒形状となっており、円筒の一端である上流端が排水口10を介してボウル部1内に連なり、他端である下流端が後方(側方)に開口してトラップ部30に接続されている。そして、排水筒20は内面のうち、排水口10の前方開口縁11に連なる面が、面一の連続面とならずに、前底面3に比べて大きい傾斜角を有して下流側に向けて下向き傾斜した傾斜面21となっている。
【0019】
この前底面3より急な傾斜面21は、下端が平面視後方開口縁12と並ぶ位置或いは後方開口縁12より後方の位置にあり、該傾斜面21は平面視排水口10の下方全体に形成されている。そのため、傾斜面21は、水跳ね防止部5から排水口10へ落下した汚物40を、傾斜面21の下端である排水口10の後方開口縁12の下方或いは後方開口縁12より後方に移動させる。
【0020】
また、排水筒20はトラップ部30との接続部位である下流端が平面視水跳ね防止部5より後方に位置しており、該下流端と傾斜面21の下端の間の下流内面22は、傾斜面21に比べて緩やかな傾斜角で且つ下流に向かって下向きの傾斜を有している。そして、下流内面22の緩やかな傾斜角は、例えば、前底面3と略同じ傾斜角となっている。
【0021】
該下流内面22を具備したことで、傾斜面21に落下して傾斜面21に沿って移動した汚物40が下流内面22上または排水筒20の下流端で止まる構成となり、汚物40のトラップ部30への衝突やトラップ部30の回動への干渉を抑制している。なお、下流内面22は、傾斜の無い略水平のものであってもよい。そして、トラップ部30が傾斜面21に沿って移動してきた汚物40の影響を受け難いものであれば、傾斜面21の下端が排水筒20の下流端に至り下流内面22を備えない構成としてもよい。
【0022】
また、トラップ部30は、外部の下水管(図示せず)に接続された排水室31と、排水室31内に配置され排水筒20に一端が連通固定された円筒部32と、排水室31内で円筒部32の他端側を回動させる回動機構部(図示せず)と、で主体が構成されている。そして、円筒部32は排水筒20に固定された一端が固定端となっているのに対して、他端が回動機構部の回動動作で円弧状の軌跡を描いて上下方向に動く自由端33となっている。
【0023】
そのため、トラップ部30は、図1に示すように、自由端33を上向きとした状態が、ボウル部1内等に水を溜めると共に下水管等からの異臭のボウル部1側への漏出を防止する封水状態となっている。そして、封水状態から自由端33を回動させて、自由端33を下向きとした状態が、ボウル部1及び排水部内の水や汚物40を排水室31を介して下水管に排出する排水状態となっている。
【0024】
このように、本水洗便器は、傾斜面21によって汚物40を水跳ね防止部5の前下方位置より後方に移動させるため、従来のものに比べて、汚物40を下流側に位置させることができる。
【0025】
ところで、汚物40排出時に、汚物40の搬送距離は、下水管の形状や構成等の配管条件、また汚物40の量や排水時に用いる洗浄水量等の影響を受ける。このうち洗浄水量の影響は、図3に示すように、下水管の配管条件や汚物40の量を一定としたとき、搬送距離は汚物40の位置を基準に汚物40より上流側の水51の量の影響を強く受けるものとなっており、上流側の水51の量が多い程搬送距離が長くなる。
【0026】
そして、本水洗便器は、ターントラップ式の従来のものに比べて、汚物40の停留位置を下流側としたことで、ボウル部1内の洗浄水の貯留容積の増大等の行わなくても、汚物40より上流側の水51の量を増加させるものとなっている。つまり、汚物40の上流側の水51と下流側の水52の両水量を合わせた排水時の洗浄水量を略変えずに、上流側の水51の量を増加させている。そのため、トラップ部30の節水機能や洗浄水による洗浄機能を略低下させずに略維持して、汚物40の搬送距離を延ばすことができる。
【0027】
また、上流側の水51の量を増加させたことで、洗浄水供給部から供給する洗浄水の量を低減することも可能である。このものでは、低減した洗浄水量で、従来のものと略同様の搬送距離を維持することができ、上下回動式のトラップ部30による節水機能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ボウル部
2 底部
3 前底面
4 後底面
5 水跳ね防止部
10 排水口
11 前方開口縁
12 後方開口縁
20 排水筒
21 傾斜面
30 トラップ部
40 汚物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜めるボウル部と、前記ボウル部の底部に形成され前記ボウル部内の水を排出する排水口と、前記ボウル部内に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記排水口に上端部が連なり下流端が側方に開口した排水筒と、前記排水筒の前記下流端に接続された上下回動式のトラップ部と、を備え、
前記底部の前記排水口の前方開口縁に連なる前底面が、前記排水口に向けて下向き傾斜し、
前記底部の前記排水口の後方開口縁に連なる後底面が、前記排水口に向けて下向き傾斜すると共に前記前方開口縁より上方に位置し、該後底面が汚物を受ける水跳ね防止部となり、
前記排水筒の前記前方開口縁に連なる内面が、下流側に向けて下向き傾斜した傾斜面となると共に、該傾斜面の傾斜角が前記前底面の傾斜角より大きいものであることを特徴とする水洗便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172340(P2012−172340A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33635(P2011−33635)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】